189-衆-財務金融委員会-12号 平成27年06月10日
平成二十七年六月十日(水曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 古川 禎久君
理事 神田 憲次君 理事 土屋 正忠君
理事 藤井比早之君 理事 御法川信英君
理事 山田 美樹君 理事 鈴木 克昌君
理事 丸山 穂高君 理事 伊藤 渉君
井上 貴博君 井林 辰憲君
鬼木 誠君 勝俣 孝明君
金子万寿夫君 神山 佐市君
黄川田仁志君 工藤 彰三君
國場幸之助君 佐々木 紀君
柴山 昌彦君 鈴木 隼人君
田野瀬太道君 竹本 直一君
谷川 とむ君 津島 淳君
中村 裕之君 中山 展宏君
根本 幸典君 福田 達夫君
藤丸 敏君 前田 一男君
牧島かれん君 宮内 秀樹君
宮路 拓馬君 務台 俊介君
宗清 皇一君 大島 敦君
玄葉光一郎君 古川 元久君
前原 誠司君 鷲尾英一郎君
伊東 信久君 吉田 豊史君
岡本 三成君 宮本 岳志君
宮本 徹君 小泉 龍司君
…………………………………
財務大臣
国務大臣
(金融担当) 麻生 太郎君
内閣府副大臣 西村 康稔君
財務副大臣 菅原 一秀君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 増島 稔君
政府参考人
(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官) 道上 浩也君
政府参考人
(金融庁総務企画局総括審議官) 三井 秀範君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 福島 靖正君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 武田 俊彦君
参考人
(日本銀行総裁) 黒田 東彦君
参考人
(日本銀行理事) 雨宮 正佳君
参考人
(日本銀行理事) 櫛田 誠希君
参考人
(日本銀行理事) 武田 知久君
財務金融委員会専門員 関根 弘君
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委員の異動
六月十日
辞任 補欠選任
鬼木 誠君 黄川田仁志君
田野瀬太道君 金子万寿夫君
中山 展宏君 宮路 拓馬君
牧島かれん君 中村 裕之君
宗清 皇一君 谷川 とむ君
山田 賢司君 工藤 彰三君
同日
辞任 補欠選任
金子万寿夫君 宮内 秀樹君
黄川田仁志君 鬼木 誠君
工藤 彰三君 前田 一男君
谷川 とむ君 宗清 皇一君
中村 裕之君 佐々木 紀君
宮路 拓馬君 中山 展宏君
同日
辞任 補欠選任
佐々木 紀君 牧島かれん君
前田 一男君 神山 佐市君
宮内 秀樹君 田野瀬太道君
同日
辞任 補欠選任
神山 佐市君 山田 賢司君
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五月二十一日
消費税の増税反対に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一〇一九号)
同(斉藤和子君紹介)(第一〇七七号)
同月二十八日
消費税率を五%に戻し、増税中止を求めることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第一二三二号)
六月八日
消費税の増税の中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五八五号)
同(池内さおり君紹介)(第一五八六号)
同(梅村さえこ君紹介)(第一五八七号)
同(大平喜信君紹介)(第一五八八号)
同(笠井亮君紹介)(第一五八九号)
同(穀田恵二君紹介)(第一五九〇号)
同(斉藤和子君紹介)(第一五九一号)
同(志位和夫君紹介)(第一五九二号)
同(清水忠史君紹介)(第一五九三号)
同(塩川鉄也君紹介)(第一五九四号)
同(島津幸広君紹介)(第一五九五号)
同(田村貴昭君紹介)(第一五九六号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第一五九七号)
同(畑野君枝君紹介)(第一五九八号)
同(畠山和也君紹介)(第一五九九号)
同(藤野保史君紹介)(第一六〇〇号)
同(堀内照文君紹介)(第一六〇一号)
同(真島省三君紹介)(第一六〇二号)
同(宮本岳志君紹介)(第一六〇三号)
同(宮本徹君紹介)(第一六〇四号)
同(本村伸子君紹介)(第一六〇五号)
消費税率を五%に戻し、増税中止を求めることに関する請願(池内さおり君紹介)(第一六〇六号)
同(梅村さえこ君紹介)(第一六〇七号)
同(笠井亮君紹介)(第一六〇八号)
同(塩川鉄也君紹介)(第一六〇九号)
同(田村貴昭君紹介)(第一六一〇号)
同(畑野君枝君紹介)(第一六一一号)
同(畠山和也君紹介)(第一六一二号)
同(堀内照文君紹介)(第一六一三号)
同(真島省三君紹介)(第一六一四号)
同(宮本徹君紹介)(第一六一五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)
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○古川委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、日銀報告を受けて質問をいたします。
量的・質的金融緩和が始められてから二年が過ぎました。
この異次元の金融緩和策と言われる政策は、消費者物価の前年比上昇率二%の物価安定目標を二年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現する、こういうことでとられた手段であります。当初は、マネタリーベース及び長期国債、ETF等の保有額を二年間で二倍に拡大する、こういう措置が導入されたわけでありますが、その後、さらなる緩和措置として年間八十兆円とする長期国債の買い入れ拡大を行いました。
そこで、まず日銀の黒田総裁にお伺いしますけれども、二年たった今、ことし四月の消費者物価の前年比は、消費税増税の影響を除けば、〇%程度でありました。これは明らかに失敗ではなかったのか、もともとこういう事態を想定しておられたのか。これについてお答えいただけますか。
○黒田参考人 量的・質的金融緩和を導入する直前の二〇一三年三月時点で、消費者物価の前年比、生鮮食品を除くでマイナス〇・五%でございました。その後、量的・質的金融緩和が所期の効果を発揮するもとで、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで、昨年、二〇一四年四月にはプラス一・五%まで改善したわけであります。
しかしながら、消費税引き上げ後の需要面での弱目の動きそれから昨年夏場以降の原油価格の大幅下落などを背景に伸び率が鈍化してまいりまして、御指摘のとおり、直前の二〇一五年四月はゼロ%となっております。この点、原油価格の下落による物価上昇率の低下というのは世界的に見られている現象でありまして、米国、英国、ユーロ圏の消費者物価の前年比はゼロないし小幅のマイナスまで低下いたしました。
もっとも、昨年十月の量的・質的金融緩和の拡大の効果もありまして、我が国経済が緩やかに回復する中で需給ギャップは改善しておりますし、原油価格の下落にもかかわらず、予想物価上昇率はやや長い目で見ますと全体として上昇しておりまして、物価の基調は着実に改善しているというふうに見ております。先行きにつきましても、物価の基調が着実に高まり、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、消費者物価の前年比は物価安定の目標である二%に向けて上昇率を高めていくというふうに見ております。
消費税率引き上げ後の需要面の弱さあるいは原油価格の大幅下落というのは想定外ではあったんですけれども、物価の基調は、二年程度の期間を念頭にできるだけ早期にという、量的・質的金融緩和導入当初からのコミットメントに沿った動きであるというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 総裁は冒頭の説明でも、個人消費の底がたさは増し、景気の総括判断として緩やかな回復を続けている、こうおっしゃいましたけれども、多くの国民の実感は真逆だと思うんですね。物価上昇率はゼロ%程度だというんですけれども、この二年間の急激な円安により生活必需品の値段が大幅に高騰しております。国民にとっては、輸入物価の上昇で生活が苦しくなったという実感だと思うんですね。
そこで、配付した資料一を見ていただきたいと思います。
みずほ総合研究所の調べでは、昨年からことしにかけて、牛丼、即席麺、パスタ、レトルト食品、冷凍食品、アイスクリームなどの国内販売価格が値上げされました。最近でも、六月にヤクルト本社が飲むヨーグルトなど四品を一一%、七月からは山崎製パンが食パンなどを一から七%値上げ、日清フーズ、日本製粉、昭和産業が家庭用小麦粉などを一から八%値上げし、明治や森永製菓も一〇%から二〇%の値上げ、もしくは内容量を削減、減量するなどの措置を公表しております。
この値上げの主な要因として、円安に伴う原材料コストなどの上昇というのが多くのエコノミストや有識者の認識でありますけれども、黒田総裁の認識を問いたいと思います。
○黒田参考人 消費者物価指数の動きを見ますと、昨年来、食料工業製品の前年比は確かにプラスで推移しております。これらを含めまして、財やサービスの価格に為替相場あるいは国際商品市況などの要因が影響することは事実でございます。
もっとも、物価全体の基調が高まっているという基本的な背景には、我が国経済が緩やかに回復を続けるというもとで需給バランスが改善している、あるいは人々の予想物価上昇率が高まるもとで、企業の価格戦略において、単なる低価格戦略から付加価値を高めつつ販売価格を引き上げるという動きが見られることなどがあるというふうに見ております。ただ、そういった中でも、全体として、消費者物価の上昇率が、原油価格の大幅下落などを受けまして足元ではゼロ%程度で推移しているということでございます。
○宮本(岳)委員 全体としてゼロ%でも、国民生活にとったら、物価上昇が非常に悪い形で打撃になっているというふうに思うんですね。
みずほ総合研究所によれば、日銀短観の二〇一四年十二月調査によると、食料品、製造業の二〇一四年度の想定為替レートは一ドル百五・一円でありますけれども、二〇一五年に入り実勢水準は一ドル百二十円程度と、想定レートよりも円安方向に振れております。
一部の食品メーカーからは、企業努力だけでは円安によるコスト上昇分を吸収できないんだという声が上がっているようでありまして、実際に山崎製パンは、二〇一五年七月からの値上げについて「世界的な食料需要の増加や急激な円安の影響等により、パン製品の主要原料である小麦粉価格をはじめ油脂類、乳製品、砂糖類、小豆、レーズンなど様々な輸入原料の価格が上昇しており、コスト増加を吸収すべく企業努力を続けておりますが、大変厳しい状況となってまいりました。」と説明をしております。山崎製パンは二〇一三年にも値上げをしておりますけれども、そのときも円安による輸入原料価格の上昇が原因でありました。
現在、一ドル百二十五円と、この時点よりさらに円安が進んでおりますけれども、今後も輸入物価の上昇は避けられないという情勢だと思います。
四月の毎月勤労統計調査を見ますと、物価変動の影響を除いた実質賃金が前年同月比で〇・一%増とプラスに転じておりますけれども、二〇一三年四月以来、これまで二年間、ずっとマイナスが続いてきたわけですね。まさにこの二年間、実質賃金を上回る物価上昇が起こって、多くの国民、庶民の生活を一層厳しくさせてきたということをはっきり示していると思います。
次の質問は、財務大臣、それから黒田総裁、お二人にお答えいただきたいんですが、こういう物価に対する庶民の皮膚感覚、生活が苦しくなっている、こういう感覚を財務大臣や日銀総裁は共有しておられますか。
○麻生国務大臣 御指摘のとおり、約二割少々円安に振れておりますので、そういった意味では、円安によります輸入物価の上昇とか、消費者に対しましては消費税率の引き上げ等々によって影響が出てきて、物価の上昇というものがいわゆる家計の所得に追いつけていなかったということを言われたいんだと思いますが、そこは結果として生活は苦しくなるというように感じていらっしゃる方が多い、これは事実だと思いますね。そういった国民の声を直接私ども後援会等で伺うこともあるんです。
しかしながら、賃金というものに関しましては、ことしの春闘での賃上げの引き上げ率というのは経団連の調査によりますと二・五六ということになっておりまして、過去十六年間で今までで最高と言われたのは昨年の二・二八だったと記憶しますから、それを上回る勢いになっているということなど、近年にない成果も上がっていることも事実だろうと思っております。
したがって、政府としては引き続き、労働生産性の向上というものが上がらないと賃金も払えないので、生産性を上げて企業収益というものを拡大させて、それが内部留保ではなくて賃金に回る、結果として賃金上昇また雇用の拡大等々につなげていくことによって景気の好循環をということを考えておるわけでして、賃金の上昇が物価の上昇を上回る姿というものを実現するように取り組んでいかなければならぬものだ、私どもそう思っております。
○黒田参考人 従来から申し上げておりますとおり、日本銀行は、量的・質的金融緩和によって、雇用、賃金あるいは企業収益の増加を伴いながら物価上昇率が徐々に高まっていくという好循環をつくり出していくことが重要であるというふうに考えております。
この点、昨年四月以降の消費者物価の上昇率は、御案内のとおり、消費税率引き上げによって一時的にかさ上げされていたということに留意する必要があろうというふうに思っております。消費税率引き上げの影響を除きますと、このところ、物価上昇率と賃金上昇率はおおむね見合った状況になっているというふうに認識をいたしております。
なお、円安の影響につきましては、輸出産業等々に対するプラスの影響と、輸入をしている企業に対する輸入コストの増というマイナスの影響等々ございますけれども、これまでのところ、全体として、行き過ぎた円高が是正されたことは経済全体にとってプラスであったし、それは企業、家計の所得から支出へという前向きの循環メカニズムをよりしっかりさせてきたというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 先ほど指摘したように、実質賃金が上向いたのは四月の毎勤統計ですから、それまではずっと実質賃金は下がっていたわけですから、これからはともかく、今までこの二年間、庶民にとっては物価の上昇というのは本当に生活を苦しめてきた、したがって、二年間は黒田総裁がおっしゃるようなルートをたどるのではなく、実際に賃金は本当になかなか上がらない状況のもとでの物価上昇だったと言わなければならないと思うんです。
白川前日銀総裁は二〇一三年三月七日の記者会見で、物価上昇のメカニズムについて、四通りの過程が論理的には考えられると述べて、第一は、円安や国際商品市況の上昇によって輸入物価が先行的に上昇するケース、第二は、賃金が先行して上昇するケース、第三は、予想物価上昇率が先行して上昇するケース、第四は、企業や家計の成長期待が高まっていくケースだと説明をしております。
同時に、白川前総裁は、第一の、円安や国際商品市況の上昇によって輸入物価が先行的に上昇するケースについて、実質的な所得が圧迫されるため私どもが望んでいる姿ではないと断言をされました。
しかし、この二年間、実際にたどったことは、まさに白川氏の第一に挙げた望まないケースそのものではなかったのか。これは、黒田総裁、そうではありませんか。
○黒田参考人 量的・質的金融緩和のもとでの物価上昇のメカニズムというのは以下のとおりであります。
まず、大規模な長期国債の買い入れによってイールドカーブ全域にわたって名目金利を引き下げる、それと同時に、二%の物価安定の目標に強くコミットするということによって人々のデフレマインドを転換して、予想物価上昇率を引き上げる、これによって物価上昇率を勘案した実質金利が引き下げられて、設備投資その他の民間需要が刺激される、そして我が国の経済の需給ギャップが改善して、雇用、賃金あるいは企業収益の増加を伴いつつ現実の物価が上昇していく、そして現実の物価上昇が人々の予想物価上昇率をさらに引き上げるという、一種の前向きの循環メカニズムといったものを想定しておりました。実際、こうしたメカニズムは想定どおりに働いていると思います。
我が国経済が回復する中で、需給ギャップはおおむね過去平均並みのゼロ%程度まで改善しておりますし、人々の予想物価上昇率もやや長い目で見れば全体として上昇しているということでありまして、この結果、需給ギャップと人々の予想物価上昇率に規定される物価の基調は着実に改善してきているというふうに見ております。ただ、足元で原油価格の大幅な下落の影響がまだ残っておりますので、物価上昇率自体はゼロ%程度でとどまっているということでございます。
○宮本(岳)委員 そういうシナリオで、果たして物事が動いているかということですね。
内閣府の日本経済二〇一四―二〇一五、いわゆるミニ経済白書は、世帯収入別に、消費税率引き上げ以降に見られる消費の弱さについて分析をしております。
内閣府に聞きますけれども、低所得層での消費抑制について、二十五ページの九行目から十二行目までを紹介していただけますか。
○増島政府参考人 御指摘の内閣府、日本経済二〇一四―二〇一五では、「消費税率引上げ後の収入・支出の動向について、調査世帯を世帯主の年間収入によって五分割した「年間収入五分位階級」別にみると、相対的に収入が少ない「第一分位」では、他の所得層と比べても、収入の低下以上に支出が落ち込んでおり、消費税率引上げ後に消費支出が抑制されていることが分かる。」と分析しております。
○宮本(岳)委員 二つ、総裁に聞きます。
このミニ経済白書が明らかにした、低所得層に収入の落ち込みとそれ以上の消費の抑制が起こっていることを総裁はどう認識しておられるか。また、その原因について、ミニ経済白書では、消費税増税や非正規労働者の賃金上昇の展望がないことが原因と分析をしておりますが、総裁はどのようにお考えになりますか。
○黒田参考人 消費税引き上げの影響につきましては、雇用・所得環境あるいはそれを受けた消費マインドの違いなどを反映して、家計によって異なる面があったというふうに思います。もっとも、景気の緩やかな回復が続く中で雇用・所得環境は着実に改善しており、その好影響は幅広く波及していくというふうに見ております。
実際、最近では、マインド関連指標の改善も明確になっておりますし、個人消費の底がたさも全体として増しているのではないかというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 改善したとおっしゃるわけですけれども、私は、低所得層ほど生活が苦しくなり、将来見通しについても悪化する傾向は今でも大きく変わっていないと思います。
内閣府の消費動向調査について聞きます。
この二年間の比較のために、二〇一三年四月と二年後、二〇一五年の四月の暮らし向き、総世帯を比較して、よくなる、ややよくなるの合計から、やや悪くなる、悪くなるの合計を差し引いた数値は、年収九百五十万以上千二百万円未満、年収五百五十万以上七百五十万円未満、年収三百万円未満のそれぞれで、どのように推移しておりますか。
○道上政府参考人 消費動向調査で調査しております意識指標のうち、暮らし向きにつきまして世帯の年間収入階級別に捉えますと、通常内閣府で公表している方法ではなく、委員から御指示の方法により、よくなる、ややよくなると回答した者の割合の合計から悪くなる、やや悪くなると回答した者の合計の割合を引いて計算しましたところ、年間収入階級三百万円未満の総世帯におきましては、平成二十五年四月のマイナス三四・五%ポイントから平成二十七年四月にマイナス四九・一%ポイントとなり、一四・六%ポイントの低下。それから、年間収入階級五百五十万円以上七百五十万円未満の総世帯におきましては、平成二十五年四月のマイナス一七・五%ポイントから平成二十七年四月にはマイナス三一・二%ポイントとなり、一三・七%ポイントの低下。それから、年間収入階級九百五十万円以上千二百万円未満の総世帯におきましては、平成二十五年四月のマイナス一二・六%ポイントから平成二十七年四月にマイナス一六・五%ポイントとなり、三・九%ポイントの低下というふうになっております。
○宮本(岳)委員 暮らし向きについて、所得が低くなるほど危機感はこの二年間で強くなっているということが示されております。
同調査では、収入のふえ方、雇用環境、資産価値のいずれも所得が低いほど楽観的な見方は少ない。さらに、インフレ予想の相違、これも拡大をしております。五%以上という高インフレを予想する人の比率を二〇一三年四月と二〇一五年三月で比較すると、年収九百五十万から千二百万円未満では一六・五%が一七・五%とほぼ変わらないのに対し、三百万円未満は二〇・五%から三二・二%にはね上がっております。
東短リサーチの加藤出代表取締役社長は、この調査結果について、低所得層ほど支出に占める食料品の比率は高い、円安による食品価格の上昇を深刻な脅威と受けとめている人が多いのだと思われると分析をしております。
低所得層でインフレ予想がなぜ高くなっているのか。これはひとつ、日銀総裁の御見解をお伺いしたいと思います。
○雨宮参考人 お答え申し上げます。
先ほど総裁から申し上げましたとおり、家計の消費者マインドは雇用・所得環境など、さまざまな要因によって異なり得るものでございます。特に、御質問のありました物価に対する感じ方という点で申し上げますと、一般的に、身近なもの、頻度高く購入するものに影響される程度が高いですとか、あるいは購入する財やサービスの違い以上に、やはり御指摘のありましたとおり、所得階層により物価に対する警戒感というものが変わってくるということはあり得るかなというふうに思います。
したがって、これも繰り返しになりますけれども、企業収益や雇用、賃金の増加を伴うそうした好循環の中で物価上昇率が高まっていくという姿が実現すれば、その影響はより幅広い世帯に波及していくものと見てございます。
○宮本(岳)委員 円安による物価上昇の悪影響、これは個人消費だけではありません。輸入物価全体の上昇は輸入原材料価格の上昇となり、企業にも深刻な影響を与えております。消費者や販売先に転嫁できる大企業にみずからの負担は発生しませんけれども、中小零細業者では価格への転嫁が困難であり、円安廃業や円安倒産が拡大をしております。
帝国データバンクのことし五月十三日のレポートによりますと、円安倒産は十六カ月連続の前年同月比増加、累計で六百件突破、全国四十六都道府県で判明したということであります。これも一ドル百二十円前後の円安水準までのことでありまして、さらなる円安が進む現在では、足元では円安倒産がさらに拡大するのではないか、こう思いますけれども、これについても日銀総裁の御見解をお伺いしたい。
○黒田参考人 過去二、三年の間に行き過ぎた円高が是正されて円安が進んできたわけですが、そのもとで、企業の倒産件数は大幅に減少して、バブル期以来の歴史的な低水準で推移しております。
そうした中で、円安関連倒産というものが幾分増加しているようですが、全体の倒産件数に占める割合はごく小さいと認識をいたしております。かつて、円高が進んでおりました際には円高倒産というのがあったわけですが、そのころは全体としても倒産が多かったわけですけれども、先ほど申し上げたように、現時点では倒産は歴史的な低水準で推移しているというのが現状でございまして、円安によって中小企業も含めて倒産が拡大しているということはございません。
○宮本(岳)委員 結局、二〇一二年秋からの急激な円安というのは、輸出大企業を中心に、このことが過去最高水準の利益を企業にもたらした面があります。一方、輸入価格の上昇により、個人消費の低迷と中小企業の倒産をやはり生み出した。結局は、円安による負担を個人や中小企業がかぶって、その分が輸出大企業の利益に転嫁しただけとも言えると思うんですね。
異次元緩和の二年間で、富裕層、資産家の生活は大幅に改善され、低所得層では生活が苦しくなった。つまり、経済の好循環どころか、この二年間で所得階層の間に収入や消費など生活水準の格差が拡大したというのは私は事実だと思います。
為替相場を見ますと、さらに円安傾向が進んでおります。年内にも一ドル百三十円程度まで、こういう予測もあります。米国との金利差拡大予測が原因という指摘もあります。
これは財務大臣に聞きます。なぜ足元でこんな急激な円安が進んでいるのか、麻生大臣の考えをお聞きしたい。
○麻生国務大臣 これはたびたび申し上げておるので、宮本先生御存じのとおり、為替の動向とか背景とかいうものについて述べるということは、これは市場に不測の事態また影響を与えるおそれがあるために言及は差し控えたいと申し上げております。
いずれにしても、引き続き市場の動向というものには注意を払ってまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 先ほどもそういうやりとりがありましたけれども、麻生大臣は、荒い動きがあると見ているが、今後も市場の動きを注意深く監視したいと。荒い動きはお認めになったわけでありますし、先ほどそういうやりとりもありました。ただ、一部の報道では、政府はこの円安を容認しているという報道もあるんですね。
財務大臣に聞きますけれども、円安を容認している、この報道については事実ですか。
○麻生国務大臣 形を変えた、前の質問と言っておられることは同じことだと存じますので、為替の水準につきましては、市場に不測の影響を与えるおそれがありますので、言及は差し控えたい。先ほどとは違った言い方をしておりますけれども、内容は同じであります。
○宮本(岳)委員 結局、今進行している円安は、コストプッシュを招き、個人消費を冷やすだけではないかというふうに思います。少なくとも、こういう水準、円安がこれ以上続いていくということについては望ましくないと私は思います。
これは日銀の総裁にお伺いしてもこれまた同じような答弁かと思いますけれども、では、日銀の総裁、ひとつお答えいただけますか。
○黒田参考人 為替水準あるいは動きについて具体的なコメントは差し控えさせていただきますが、その上で、一般論として申し上げますと、円安は、輸出の増加、グローバルに展開している企業の収益の改善、株価の上昇といったプラス効果を持つ一方で、輸入コストの上昇あるいは価格転嫁を通じて、非製造業の収益あるいは家計の実質所得に対して押し下げ圧力として作用するという面があるわけでございます。
このように、円安の影響は経済主体によって異なり得るものでありますが、従来から申し上げていますとおり、これまでの円安というか行き過ぎた円高の是正ということは、経済全体にとってはマイナスでなかったというか、むしろプラスであったというふうに思っております。
いずれにいたしましても、為替相場は経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移するのが望ましいということは言えるというふうに思います。
○宮本(岳)委員 この問題についても、実際に庶民に与える悪影響ということはぜひ念頭に置いていただきたいと思うんですね。
次に、日本銀行の長期国債等の大量購入、買い入れの影響について聞きたいと思います。
量的・質的金融緩和がどのようなメカニズムで二%の目標を達成するかについて、黒田総裁は三つの経路ということをお話しになって、二年前に説明をされました。その内容を説明していただきたいと思うんです。
○黒田参考人 この三つは相互に関係はしておりますけれども、まず第一に、長期国債あるいはETF、J―REITの買い入れというものが長目の金利の低下を促して資産価格のプレミアムに働きかける効果を持つ、これが資金調達コストの低下を通じて民間の資金需要を喚起するというのが第一の波及メカニズムであります。
第二には、日本銀行が長期国債を大量に買い入れる結果といたしまして、これまで長期国債の運用を行っていた投資家あるいは金融機関が株式、外債その他のリスク資産へ運用をシフトさせたり、あるいは貸し出しをふやしていくという効果であります。
第三には、物価安定目標の早期実現を約束して、次元の異なる金融緩和を継続することによって市場や経済主体の期待を抜本的に転換する、デフレマインドを転換するということであります。こうして予想物価上昇率が上昇すれば、現実の物価に影響を与えるというだけではなくて、先ほど申し上げた第一の点とあわせて、実質金利の低下、民間需要の刺激につながるというふうに御説明をいたしました。
○宮本(岳)委員 今の御説明の二つ目、日本銀行が長期国債を大量に買い入れる結果として、これまで長期国債の運用を行っていた投資家や金融機関が株式や外債等のリスク資産へ運用をシフトさせたり貸し出しをふやしていくことが期待されると。これはつまりポートフォリオリバランス効果というらしいんですけれども、どうして日銀が長期国債を大量に買い入れると投資家が運用資産をリスク資産にシフトさせるのか、これが一点。
あわせて聞きますが、では、この二年間に投資家や金融機関の資産運用で期待どおりの資産シフトが起こっているのか。
この二点、お答えいただけますか。
○黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、量的・質的金融緩和のもとで、大量の国債、特に長期国債も含めて買い入れを行うということで長期金利が低下するということでございますので、当然のことながら、国債を保有する収益性は低下します。このため、株式、貸し出しその他の資産が相対的に有利になりますので、そちらの方にポートフォリオリバランス効果が起こるということであります。
実際にも、日本銀行が量的・質的金融緩和を進めるもとで、金融機関、特に大手行などでは、保有国債を売却して貸し出しを積極化させたり、その他のリスク資産への投資を増加させるという動きが見られております。
また、銀行の貸出残高も、かつては前年比マイナスの状況だったわけですけれども、現在は二%台後半のプラスで推移しておりますほか、中小企業向け貸出残高も増加しておりまして、業種や企業規模にも広がりが見られつつあるというのが現状でございます。
○宮本(岳)委員 市場はこの二年間、国債運用の大口投資家や金融機関の資産運用の動きに注目しております。今最も注目されているのが、金融機関であり機関投資家でもある日本郵政のゆうちょ銀行なんですね。年内にも株式上場が予定されており、国債傾斜から株式、外債などのリスク資産の比率を上げるテンポに市場は神経をとがらせているという報道がございます。
このような時期に、先月末、黒田総裁が日本郵政の西室泰三社長と会っていたとの報道がありました。これは事実ですか。
○黒田参考人 私はいろいろな方といろいろなパーティー等で会っておりますので、個別に会った記憶は余りないんですけれども、あるいはお会いしたかもしれません。
いずれにいたしましても、日本郵政はみずからの経営方針のもとで運用を行っていると理解しておりまして、日本銀行との関係でどうこうということは全くないと思っております。
○宮本(岳)委員 あなたがお会いになった一週間後の五月二十九日の記者会見で、日本郵政の西室社長は、ゆうちょ銀行のポートフォリオについて、リスク管理を強化しながら国債中心の運用体制を見直す方針を改めて表明されました。
ロイターの報道によりますと、この異例とも言える動きについて、現在財務省の国の債務管理の在り方に関する懇談会メンバーでもあるSMBC日興証券金融財政アナリストの末沢豪謙氏は、保有国債を減らして運用多様化を進めたい郵政側と、国債買い入れを軸にした異次元緩和の枠組みを維持したい日銀との間で協力関係を確認することが目的だったのではないかと述べたと報じられております。総裁、こういうことを西室社長との間で話し合った御記憶はありませんか。
○黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、バイでお会いした記憶はないんですが、そういった報道があったことは承知しております。
いずれにいたしましても、私から何か日本郵政に対して協力を要請したとか、あるいは日本郵政側が日本銀行への協力の観点から何かを行っているとか、そういうことは全くございません。
○宮本(岳)委員 しかし、そういう憶測を呼んでいることは事実なんですね。
それで、ゆうちょ銀行が政府の政策意図に従い、運用方針を国債中心からリスク資産にシフトしているのではないか。これは実は、ゆうちょ銀行やかんぽ生命だけではありません。既に、年金積立金管理運用独立行政法人、GPIF、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団という三つの共済組合は、基本ポートフォリオを変更して、国債の比率を引き下げる方向で資産の売買を始めております。
GPIF等が政府の物価上昇率二%の目標に合わせてポートフォリオを変更する理由について、米沢康博GPIF運用委員長は「まず、国内債券を可能な限り減らしたいというのが第一の命題でした。なぜ減らしたいかというと、デフレ経済を脱却し、政策としてもインフレを目標にしているためです。」と、昨年の暮れに不動産証券化協会ARES年金フォーラムの講演で述べておられます。つまり、政府が物価上昇率二%の政策目標を達成することを前提にしてGPIFは資産運用を変更したとあからさまに述べているわけです。
これは、黒田総裁が二年前に述べた三つの波及経路のような経済合理性の観点から運用方針を変更したというのではなくて、政府の目標に従って運用方針を変更しただけのことではないかと私は思いますが、日銀総裁、どう思われますか。
○黒田参考人 GPIFの運用方針は政府あるいはGPIF自体で検討の上決定されるというものでありまして、私の立場からコメントすることもできませんし、また何かGPIFと日本銀行が協力して云々というようなことがあるというわけでも全くございません。
○宮本(岳)委員 結局、こうやって、リスク資産としての国内株式を国債を売ることによって購入させていく、これが株式市場の上昇を支えたわけでありますし、外国株式や外国債などの海外資産の購入でドル買い・円売りの為替の方向感をつくっているのではないか、まさに官製相場ではないか、こう見られているわけです。
先日も当委員会で指摘いたしましたけれども、証券会社や投資雑誌などはこの動きを前提に、推奨株式などの金融商品を個人投資家に勧めております。日本銀行のETF、J―REITの買い入れ方針に従い、推奨株式はこれだといった雑誌記事がたくさん見受けられます。こういうことが少なくとも健全な状況だとは言えないと思うんですけれども、日銀総裁、そう思われませんか。
○黒田参考人 御案内のとおり、量的・質的金融緩和のもとでは、質という面から資産価格のプレミアムに働きかけるという効果も重要であると考えておりまして、ETFあるいはJ―REITなどのリスク資産の買い入れを行っております。
なお、買い入れ対象としては、ETFにつきましてはTOPIX、日経二二五、JPX日経四〇〇という幅広く利用されている指数に連動するものを対象としておりますし、またJ―REITにつきましてはダブルA格以上などの条件を満たす銘柄を買い入れておりまして、特定のものに対する推奨云々ということは、全く私どもと関係はございません。
○宮本(岳)委員 先ほどの米沢康博GPIF運用委員長は、先ほど引用した部分の後に、「インフレが生じれば、多少のタイムラグはあるとしても金利の上昇が想定されるため、金利上昇リスクを一番恐れたというのが実際のところです。平成二十六年十月三十一日には、私たちの発表に加え、日銀の金融緩和が当分継続するという発表がありました。ですので、金利上昇に対する見通しも今は若干変化したかと思いますが、これを考慮したとしても、出口を想定しないわけにはいきませんし、このような大幅な金融緩和が長期的に継続することは想定しづらいです。」と述べております。
このように、一部の機関投資家の見方には、仮に物価上昇目標を達成すれば金利が上昇するリスクがあるとの指摘が見られます。日銀はこういう想定をどう評価しておりますか。
○黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、一般的に、名目の長期金利というものは、先行きの経済・物価情勢に関する見通し、それから国債を保有することに伴うリスクプレミアムが加わって形成されるというふうに考えられます。量的・質的金融緩和のもとで巨額の国債買い入れを行っておりまして、これは、リスクプレミアムを圧縮するということで金利に低下圧力を及ぼしているわけでございます。
二%の物価安定の目標を実現し、日本経済がデフレから完全に脱却した場合には、当然のことながら、経済・物価情勢に関する見通しが改善して、それが次第に金利に反映されていくものというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 日銀は、ことし四月の金融システムレポートで「徐々にではあるが円金利リスク・テイクを進める動きが再び強まってきている。」との分析をいたしました。金利が全ての年限で一様に三%ポイント以上上昇した場合、大手行と地方銀行を合わせた国内銀行全体で保有する債券の時価損失は十五・三兆円に上ると試算をしております。
年金資金や日本郵政と同様に、現在大量に国債を保有しているのが銀行や保険などの金融機関であります。先ほど、民間のメガ三行が国債を既に四割減らしたと言っておりましたが、金利上昇のリスクを避けるために、金融機関も国債の保有残高をさらに減らすということが想定されると思うんですが、いかがですか。
○雨宮参考人 お答え申し上げます。
金融機関は、それぞれの経済・物価見通しのもとで、国債あるいはその他のさまざまな金融資産のリスクとリターンの双方を勘案して投資方針を定めているということでございます。
したがいまして、先行きの金融機関の投資スタンスにつきましては、その時々の経済・物価情勢ですとかあるいは金融市場の状況次第でございますけれども、基本的には、それぞれが適切なリスク管理のもとで判断されるべき筋合いのものというふうに理解してございます。
○宮本(岳)委員 しかし、国債の金利上昇リスクについては、現在、バーゼル銀行監督委員会でも検討が続けられております。
先日、金融機関に対し金利が突然上昇して損失が出ても経営破綻しないように十分な対策を求める新たな規制を検討して、二つの方法について提案がなされたと報じられております。金融庁、この内容を紹介していただけますか。
○三井政府参考人 お答え申し上げます。
バーゼル銀行監督委員会より、銀行勘定の金利リスクに係る規制監督上の取り扱いについて、先般、市中協議文書が公表されております。
各国によりますさまざまな議論の結果、今回の市中協議文書におきましては、一つ目として、リスク量の計測化を定式化いたしまして自己資本比率の分母に勘案する第一の柱の案、もう一つは、現行の監督枠組みは維持しつつ監督対応を明確化あるいは透明化した第二の柱の案、この二つの案の両論併記となってございます。
○宮本(岳)委員 仮に第一案などを実施すれば、銀行は国債の保有残高を減らさざるを得なくなると指摘されております。
金利上昇リスクについて、黒田総裁はことし二月の経済財政諮問会議でオフレコ発言をしたと報じられておりますが、どういう発言をされましたか。
○黒田参考人 経済財政諮問会議における議事の内容は、内閣府が議事要旨を通じて公表するということになっております。
その上で、委員御指摘の二月十二日の経済財政諮問会議において、その議事要旨に書かれておりますとおり、私からは、持続可能な財政構造を確立することは国全体として取り組まなければならない課題であり、財政健全化目標の達成に向け、具体的な計画を策定していくことが重要であるという趣旨のお話をいたしました。
○宮本(岳)委員 報道によりますと、総裁はそのとき、欧州の一部は日本国債を保有する比率を恒久的に引き下げることにした、これからお話しすることはもう少し深刻だ、実はドイツ、米国、英国などが強硬に銀行が自国の国債を持つことについても資本を積むべきだと主張していると、国際会議の舞台裏を明かした上で、銀行が国債の売却に動く可能性は高く、そうなれば金利は急騰しかねないと述べたと報じられております。
その事実は多分お認めにならないと思いますが、この認識について、総裁は認識をともにされますか。
○黒田参考人 まず、規制の話と国債の話を申し上げますと、国債に関連する規制の関係というのは、先ほど金融庁から説明がありましたとおり、金利リスクにつきまして、国債と限らずその他の資産につきまして新しいルールをつくってはどうかという議論がずっと長らく行われておりまして、二つの案が両論併記という形で市中協議に出されているということであります。
また、それと全く別な関係で、国債のリスク、ソブリンリスクについては、バーゼル委員会が慎重に包括的にゆっくりと今後検討すると言っておりまして、まだ検討も始まっておりません。
したがいまして、こういった金融規制の動向というのは当然十分注視する必要がありますが、前段の金利リスクの話につきましても、まだ市中協議が始まったばかりでありまして、どういった規制になるのかもわかりません。後者につきましてはまだ検討も始まっていないという状況でございます。
そうした上で、いずれにいたしましても、国の財政の信認を確実なものとしていく、財政の健全性、持続可能性を高めていくということは、やはり国全体として、いずれにせよ、どのような金融規制が行われるにせよ、しっかりとしていく必要があろうというふうに思っておりますので、国及び国会のそういった取り組みに強く期待をしております。
○宮本(岳)委員 いずれにせよ、財政健全化が必要だというお話でありました。
今、長期国債の保有者主体別の国債保有残高を見れば、日銀の国債保有の高まりというのは既に非常に深刻な問題だと思います。
二〇一四年十二月末で、既に日銀の保有残高の割合は二〇%を超えました。先日の展望レポートで、物価上昇が二%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されますけれども、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提に立てば二〇一六年度前半ごろになると予想されております。
一部の審議委員にさらに遅くなるとの指摘もあるようですけれども、仮に安定的に持続する時期まで金融緩和を継続するとなれば、二〇一六年度末、つまり二〇一七年三月末ごろまで実施されることが想定されます。今後二年間の継続ということですね。
そこで、配付資料の二を見ていただきたい。
仮に二〇一七年十二月末までこの金融緩和措置を継続することになると、単純に長期国債発行総額が最近三年間と同じ伸びをすると考えるならば、その時点での日本銀行の長期国債の保有額は四百四十七兆円となります。既に二〇%を超えている長期国債の保有割合は、長期国債発行残高の半分近く、四四%にまで拡大する。
仮定の話でありますが、計算上はそういうことになりますけれども、これは事実でよろしいですね。
○黒田参考人 日本銀行の量的・質的金融緩和につきましては、二%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続するということにしております。
御指摘のように、特定の日付を区切って政策運営を行っているわけではございませんので、そうした仮定に基づく議論は必ずしも適当ではないというふうに思います。
○宮本(岳)委員 いや、それほど将来の仮定をしたのではなくて、今既に二〇一六年度とおっしゃっているから、そこまでやるんだろうと思ってこれをつくったんですけれどもね。これほどまでに中央銀行が政府の債務を肩がわりすれば、もはや日本銀行が財政をファイナンスしているのではないか、こう見られても仕方がなくなります。
黒田総裁は、二年前に量的・質的金融緩和策を打ち出すときに、あえて財政ファイナンスではないと主張されました。では、そもそも財政ファイナンスになってしまう国債引き受けというのはどういうものなのか。また、今回の量的・質的金融緩和はどうして財政ファイナンスと違うと言えるのか。総裁、お答えいただけますか。
○黒田参考人 御案内のとおり、財政法第五条が、日本銀行による国債の直接引き受け、すなわち日本銀行が政府から直接に国債の発行を受けることを禁じております。一方、日本銀行が量的・質的金融緩和のもとで行っている国債買い入れ、これは金融機関を相手方として市場において実施しているものであります。こうした国債買い入れというのは国債の直接引き受けには当たらないというふうに思っております。
また、量的・質的金融緩和のもとで行っている国債買い入れなどの政策は、あくまでも二%の物価安定の目標の実現という金融政策の目的で行っているものでありまして、財政を支えるためのものではございません。
○宮本(岳)委員 かつて、白川日銀前総裁は二〇一三年三月七日の記者会見で、国債の買い入れは、政府の要請で行っているのか、中央銀行が主体的判断で買い入れを行っているのかどうかが財政ファイナンスであるかないかの重要なメルクマールだと述べられました。
黒田総裁も同様の理解ということでよろしいですか。
○黒田参考人 白川前総裁の発言内容についてコメントすることは差し控えたいと思いますが、その上で申し上げますと、繰り返しになりますけれども、量的・質的金融緩和のもとで行っている国債買い入れなどの政策は、あくまでも物価安定の目標の実現のために日本銀行みずからの判断と責任において行っているものでありまして、財政ファイナンスではありません。この点は、量的・質的金融緩和の導入の際の対外公表文でも明らかにしているところであります。
ちなみに、欧米の主要中央銀行もいわゆる量的緩和というものを行っておりますが、その際は、最も大きく深い市場である国債の市場においてオペレーションを行って、長期国債まで含めた国債の買い入れを行っておりますけれども、財政ファイナンスだという議論はございません。
○宮本(岳)委員 異次元の緩和を始めるまでは、先ほども少し議論がありました、形式的には銀行券ルールにより保有残高の拡張を制約しておりました。しかしながら、一時停止した今、際限なく日銀の国債保有は拡大しております。
中央大学教授の冨田俊基氏の資料によれば、長期国債と短期証券と借入金を加えた国の債務残高は、終戦直前の一九四四年には対GDP比で二〇四%にまでふえ、日銀が保有している政府債務の保有比率も対GDP比で二〇%近くにまで上昇しておりました。
現在はどうか。資料三を見ていただきたい。
日銀の資金循環統計を見ると、二〇一四年末には、国債、財投債による国の債務残高は対GDP比で二〇九・八%、日本銀行が保有している政府債務も対GDP比で何と五二・五%となっております。これは、戦前は国家統制により民間銀行にも引き受けさせていたこともあり、単純には比較できませんが、戦前以上の日本銀行への依存が高まっているとこのグラフは示していると言わなければなりません。
これからさらに日銀の国債保有比率が高まっても、日本銀行は主体的判断で買い取っているとの主張が投資家に受け入れられるとお思いですか、黒田総裁。
○黒田参考人 繰り返しになりますけれども、量的・質的金融緩和のもとで行っている国債の買い入れなどの政策は、あくまでも二%の物価安定の目標の実現のために行っているものでありまして、財政を支援するために行っているものではございません。
この点は全く変わりませんし、そういった主張が変わるということはなく、またマーケットにも引き続き受け入れられると思っておりますが、その一方で、先ほどから申し上げておりますとおり、財政の健全性、財政の持続可能性を確保し高めていくということは国全体として取り組むべき課題でありまして、政府、国会においてさらなる一層の努力が行われることを強く期待いたしております。
○宮本(岳)委員 結局、国債保有比率が高まっても、先ほどもやりとりがありましたが、全体として国の財政がプライマリーバランスが黒字化する方向へと財政規律を守っていれば財政ファイナンスと受けとめられる危険がない、だからしっかり財政規律を守れという話になるわけですよね。その財政規律を守るために一体どういうメニューが出てくるかといえば、消費税の増税を一〇%に確実に引き上げるか、あるいは先ほども議論がありました年々一兆円ふえると言われる社会保障費を、自然増を年間五千億円弱の範囲におさめろと、本当に国民負担と増税のメニューが押しつけられるわけですね。
本来は、財政規律というものはそういう話から議論されるものではなくて、しっかりそれ自身が議論されるべきものであるにもかかわらず、無制限の金融緩和で国債をどんどん日銀が引き受けていく、それを財政ファイナンスと見られないために財政規律を頑張れというのはいかにも本末転倒した、そんな本末転倒した話じゃないかと私は思うんですけれども、総裁、そうじゃないですか。
○黒田参考人 従来から申し上げておりますとおり、財政の規律を守り、財政に対する信認を維持、高めていくためには政府、国会のさらなる努力が必要であるというふうには思っておりますが、それは日本銀行が国債を買い入れようと買い入れまいと関係なくしっかりと政府にしていただきたいということでありまして、日本銀行が量的緩和をしているので云々ということではございません。
○宮本(岳)委員 こういう無制限の金融緩和、異次元の緩和ということが国民生活に深刻な影響を与えている、このことを受けとめるならば、私はこういうやり方はやはり大変な無理が生じるということを申し上げて、時間が参りましたから、きょうの私の質問は終わりたいと思います。