学芸員発言 保護してこそ観光資源 山本大臣は辞任を 衆院委で宮本岳氏
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-04-27/2017042702_02_1.html
動画 https://youtu.be/qZ2I1mJau6I
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、大臣の文化と文化財に対する認識を問いたいと思います。
大臣が、去る四月十六日、滋賀県大津市での地方創生セミナーにおいて、一番のガンは学芸員だ、この連中を一掃しなければならないなどと発言したことに、学芸員の皆さんはもちろん、博物館、美術館関係者や、広く国民からも大きな批判が寄せられております。
大臣は、当委員会でも、この国家戦略特区法等改正案の提案理由説明の冒頭、真意が伝わらない不適切なものであったと反省しているとして、謝罪と撤回を行いました。
だが、あなたが大津市で行った発言は、配付資料の一に赤線を引いておきましたけれども、この連中は「観光マインドは全くないですから、こんなものはプロの自分たちだけわかっていればいいんだ、他の人たちがわからなくてもいいよというのが大体の意見の総意ではないかと思いますけどね。文化学芸員の連中でありまして、この連中を一掃しないといけないんですね。」というものであり、全く誤解の余地なく、学芸員を連中と見下すあなたの真意をはっきりと示していると言わなければなりません。
まず聞きますけれども、この発言のどこがどう不適切だと反省しておられますか。
○山本(幸)国務大臣 お答え申し上げます。
四月十六日の滋賀県大津市の地方創生セミナーにおきます私の発言について、私の真意としては、文化財を保護することだけではなくて、観光立国の観点からも文化財は地域資源として活用していくことが重要であり、学芸員の方々にもより一層観光マインドを持っていただきたいという思いから発言したところであります。
しかしながら、当日の学芸員に関する発言は、この真意が伝わらない不適切なものであったと反省しておりまして、十八日の本会議並びに十九日及び二十一日の地方創生特別委員会等においても、発言の撤回とおわびを申し上げたところでございます。
引き続き、昨年十二月に閣議決定したまち・ひと・しごと創生総合戦略二〇一六改訂版を踏まえ、今後、地域の宝である文化財を、適切な保存を図りつつ、観光資源として活用することにより地域活性化を図ることができるよう、政府全体として取り組んでまいりたいと思っております。
○宮本(岳)委員 もう一つ聞いておかなければなりません。
このセミナーでの発言では、それに続けて、大英博物館は、オリンピックが終わった後に、大英博物館に来てもらわないといけないと、大改造をやった、一番反対したのが学芸員たち、そういう連中をみんな首にして、入れかえた、こう発言をいたしました。
大英博物館の広報担当者は、大英博物館は、観光のためにスタッフを解雇したことも、根本的な建物の改装をしたことも決してありませんと、はっきり否定をしております。
その後、大臣は、若干の時系列で記憶違いがあったと、これも撤回したようでありますけれども、これは一体何を根拠にこんな発言をしたのか。大英博物館に確認すらしなかったんですか。
○山本(幸)国務大臣 大英博物館について私が申し上げたことは、私の二十年来の友人であり、文化財や観光に造詣が深い英国の知人から、我が党の調査会等で伺ったところを申し上げたところであります。
しかしながら、今回改めて同氏に確認いたしましたところ、建物の改装については、時系列的な点で私の記憶違いがあったようであります。私はオリンピック後と申し上げたんですが、オリンピック後ではなくて前であったということであります。
大英博物館では、来館者の快適性を高めるための多言語対応や展示物解説の充実等の改革を進めてきましたが、その改革の中で、入館者がテーマごとの展示室の移動をより容易に行うための動線確保や、来館者が快適に過ごすための空間の確保という観点から、建物改装を二〇〇〇年に実施して、グレートコートを整備したということであります。オリンピック後ではなかったということであります。その後も、大英博物館では、多くの若い人に来ていただき、大英博物館に親しんでいくための進化を続けているということでありました。
また、学芸員につきましてのところは、今回改めて同氏に確認いたしましたところ、大英博物館では、三十年ほど前から、来館者の増加のために、学芸員は研究のほか来館者に説明するなど、改革を進めてまいりました。その際、一部の学芸員がその改革の方針に反対しておりました。しかしながら、自分たちの考えと同館の方針が異なるため、いづらくなり、定年前に退職していったということであります。その結果、オリンピック終了後も含め、同館の方針と異なる考えの学芸員が退職し、全体として同館の方針に従う学芸員に入れかわっていったということでありました。
このように、事実を確認すると異なる部分がありまして、この点については訂正し、おわび申し上げたいと思います。
○宮本(岳)委員 友人からの伝聞に基づいて、事実に異なることを発言する。冒頭の話でも、学芸員に、より一層観光マインドを持っていただきたいということを語るために、この連中を一掃しなければならないと語ったというんですから、もはや謝罪や撤回で済むような話ではありません。
前回の質疑で我が党の田村貴昭議員が指摘したように、潔く出処進退を明らかにすべきではありませんか。
○山本(幸)国務大臣 当日の発言につきましては、私の真意が伝わらない不適切なものであったことから、深く反省しており、これまでも撤回とおわびを申し上げてまいりました。反省するべきところは反省して、しっかりと職務に当たってまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 大臣、あなたの発言は、あなたの、文化財の価値と学芸員の役割への無知を示すとともに、実は本当の観光マインドというものも持ち合わせていないことを示していると私は思います。
まず、文化庁に聞きます。
文化財保護法は、一九五〇年、昭和二十五年、第七回国会において制定されました。これは閣法でありましたか、議員立法でありましたか。
○山崎政府参考人 お答え申し上げます。
文化財保護法は、昭和二十四年に起きました法隆寺金堂壁画焼失を契機として、国会議員が中心となって制定された議員立法、議法でございます。
○宮本(岳)委員 おっしゃるとおり、法隆寺金堂の壁画が焼損したことに衝撃を受けて、議員立法として制定されました。
重ねて聞きますけれども、文化財保護法第一条には、この法律の目的はどのように定められておりますか。
○山崎政府参考人 文化財保護法第一条では、「この法律は、文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。」と規定されております。
○宮本(岳)委員 このとき、議員立法の制定過程にかかわった当時の参議院文部専門員竹内敏夫氏と参議院法制局第二部長岸田実氏が同法制定の詳細を解説した「文化財保護法詳説」の序文には、次のように書かれております。およそ国家が自国民の優秀な文化的資産の保護に遺憾なきを期することは、決して偏狭な民族主義に基づくものではなく、後々の世代に対し、また世界全人類に対し負担する崇高な義務と言わなければならない。
文化財を保護するということは、我が国の文化の向上にとって不可欠であるだけでなく、世界的意義を持つものであります。
二〇一五年十一月二十日、パリにおいて、ユネスコの提言、ミュージアムとコレクションの保存活用に関する提言が発表されておりますけれども、その中でも、「文化及び自然の多様性の保護と振興は、二十一世紀における主要な課題である。この観点から、ミュージアムとコレクションは、自然と人類の文化の有形無形の証拠を安全に守るための、最も重要な機関である。」、こう世界的にも高らかに宣言されているわけですね。
そして、博物館及び学芸員は、以前私がこの委員会で取り上げた図書館や図書館司書と同様に、一九四七年制定の教育基本法、一九四九年制定の社会教育法に続いて、一九五一年に制定された博物館法によって設置されております。我が国の一連の教育法秩序の中にしっかりと位置づけられた存在であります。
文科省に確認いたします。博物館法では、学芸員をどのように位置づけておりますか。
○神山政府参考人 お答えいたします。
学芸員につきましては、博物館法第四条によりまして、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究や関連する事業についての専門的事項をつかさどるとされているところでございます。
○宮本(岳)委員 博物館法は、第四条の三で、「博物館に、専門的職員として学芸員を置く。」と定めるとともに、四では、「学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる。」として、第五条でその資格要件を定めているわけです。
大臣に基本的認識を問いますけれども、火災による法隆寺壁画の焼損や高松塚古墳の壁画の損傷などを見ても、文化財が一たび毀損されるならば、それは、我が国と国民、また世界文化にとって、はかり知れない損失となります。そして、学芸員が、これらの文化財の収集や保存、保管に何よりも大きな専門的役割を担っている、こういう認識が大臣にはおありになりますか。
○山本(幸)国務大臣 その点については、委員御指摘のとおりだと存じます。
御指摘のように、学芸員は、博物館法に基づいて、博物館資料の収集、保存、展示及び調査研究や関連する事業についての専門的事項をつかさどる専門的な職員とされております。一方、博物館は、資料を収集、保管、展示し、来館者の学習やレクリエーション等に資するために必要な事業を行う施設とされておりまして、観光客を含む来館者のニーズに応える環境づくりという視点からも、学芸員の職務に取り組んでいくことも重要であると考えております。
○宮本(岳)委員 ところで、大臣は、大津市のセミナーの中で、文化財について、日本では重要文化財に指定されると火や水を使えないなどと発言し、これを批判的に報じた記事についても事実誤認だなどと語っておられます。
文化庁に確認いたしますけれども、文化財保護法は、国宝や重要文化財について火や水を使うことを明文で禁止しておりますか。
○山崎政府参考人 お答え申し上げます。
文化財保護法において、明文上、火や水の使用を禁止している規定はございません。
○宮本(岳)委員 一律に禁止などできるわけがありません。
法隆寺は、金堂を初め、その建造物のほとんどが国宝及び重要文化財でありますし、奈良東大寺の大仏も宇治の平等院鳳凰堂も国宝であります。しかし、これらは仏閣でありますので、ろうそくも線香も使用しないというわけにはいかないんです。
だからといって、法隆寺でバーベキューをしていいか、そんなことが許されるわけではありません。水はどうか。安芸の宮島、厳島神社は、本殿から回廊まで、一件六棟が国宝であります。しかし、海の上に建っているわけでありますから、水を禁じることなど、できようもありません。
こういうものは法律で一律に決めるわけにいかない、当たり前なんですね。だからこそ、専門の学芸員が、その学術的な知見と判断で、その文化財の性質と状況に応じて、保存や保管、展示のあり方を決めているわけです。そういう専門家の判断の重要性を、大臣は本当に認識しておられるんですか。
○山本(幸)国務大臣 私が当日申し上げたのは、二条城を例にとって申し上げて、これは個人的な経験もあったことから、そういうことを申し上げたことであります。
私の理解では、国宝に指定しております二の丸御殿の箇所については、昨年十月までは、火や水の使用が許可されておらなかった。それから、重要文化財であります二の丸御殿の台所ですけれども、実は一昨年の九月に、私が所属しております書道教室の展示会があったんですが、その際に、先生がそこでパフォーマンスをして書道を書きたいという意向を示したところ、水の使用は一切禁止であるからだめだと断られたことがありまして、私は、そこでも水の使用が許可されていないというように理解していたわけであります。
ただ、二条城においては、国宝と重要文化財は一緒にしてしまって話したところがございますけれども、この点については、国宝ではやっていなかったけれども、重要文化財の部分で、つまり台所ですね、年に一、二度、生け花展示が行われていたということでありまして、そういう意味で、その点のことについては、私の認識違いであったということであります。
○宮本(岳)委員 大臣のその観光マインドというものについても、少し私は理解に苦しむんですね。
安倍内閣は、昨年三月三十日、総理が議長を務める明日の日本を支える観光ビジョン構想会議において、新たな観光ビジョンを策定いたしました。きょうは資料二につけておきました。これは観光庁が出しております明日の日本を支える観光ビジョンというものの説明資料であります。
右側に、「二、文化財」として、「「文化財」を、「保存優先」から観光客目線での「理解促進」、そして「活用」へ」とございます。大臣がこの間、観光マインドというふうにおっしゃっているのは、このことでございましょうか。
○山本(幸)国務大臣 学芸員の重要な任務については、先ほど申し上げたとおりでございます。加えて、博物館は、資料を収集、保管、展示して、来館者の学習やレクリエーション等に資するために必要な事業を行う施設とされておりまして、観光客を含む来館者のニーズに応える施設づくりという視点からも、学芸員の職務に取り組んでいただいていると認識しております。
観光立国や地方創生の観点から、文化財を地域資源として活用していくことは重要であり、明日の日本を支える観光ビジョンの実現のためにも、引き続き、学芸員の方々とともに仕事をしていきたいものだと考えております。
○宮本(岳)委員 念のために、改めて観光庁に確認をしておきたい。この保存優先から活用へというのは、保存は二の次でよいということを言っておるわけでありますか。
○加藤政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の部分でございますけれども、これは、我が国の重要な観光資源であります文化財が良好な状態で保存されていることを前提としまして、外国人観光客などにも興味、関心を持っていただけるよう、効果的な情報発信でありますとか、わかりやすい多言語解説、こういったことを進めることによりまして、文化財の観光資源としての魅力を最大限に開花させるという趣旨であるというふうに考えてございます。
○宮本(岳)委員 ここで言われているのは、観光客目線での理解促進ということでありまして、理解を促進しようと思えば、その文化財に対する不断の研究と深い識見が必要であります。そのためにも学芸員の果たす役割はますます重要なのであって、文化財保護はほどほどにして火でも水でも自由にさせろなどというのは、不見識も甚だしいと言わなければなりません。
大体、貴重な観光資源である文化財が万が一にも毀損すれば、観光資源としての魅力も失われてしまいます。文化財を核とする観光拠点、こう言いましても、その核に万が一のことがあったら台なしなんですね。だから、文化財保護と観光活用が、まるで二律背反で、どこかで折り合いをつけるというような考え方自身が浅薄だと言わなければなりません。
文化財保護を徹底してこそ、また、それに対する学術研究を進めてこそ、観光資源としての安全で合理的な活用もできる、こういうことじゃないですか、大臣。
○山本(幸)国務大臣 観光立国の観点から文化財を地域資源として活用していくことは重要でございますが、そのためにも文化財が適切に保護、保全されていることは必要だろうということは認識しております。
昨年十二月に閣議決定したまち・ひと・しごと創生総合戦略二〇一六改訂版においても、「地域の宝である文化財を、適切な保存を図りつつ、観光資源として活用する」とされておりまして、私としても、文化財の適切な保護、保全に配慮した上で、地方創生の観点から観光資源として積極的に活用されるよう取り組んでまいりたいと思っております。
また、もう一つ、私も考えておりますのは、そうした保護、保全をやるためにも財源の確保が必要であります。その意味では、観光客に来てもらってそうした財源を確保するということは、これは私は非常に大事なことだと思っております。
○宮本(岳)委員 そうなんですね。財政は非常に大事な問題なんですけれども、むしろ問題はそこにあります。
大臣は、今日の博物館や学芸員の現状をどれだけ御存じなのか、きょうはそのことも言わなければなりません。
公益財団法人日本博物館協会は、国立、公立、私立の設置者のいかんを問わず、また、館の規模や館の種類を問わず、全ての博物館関係者が集い、協力して、博物館の振興を図る中核的な組織として活動しております。
日本博物館協会は、この月刊誌「博物館研究」というものを発行しておりますが、二〇一三年一月号で、「今、改めて問う博物館の役割」という特集を行っております。
この特集で、国立国際美術館の山梨俊夫館長は、「いま美術館は、いくつもの困難に行き当たっている。長引く不況を原因とする財政の逼迫、指定管理者制度等の運営制度の軋み、雇用の悪化による人材の欠乏、現場と行政の視点の落差など、数え上げていくと問題点は切りもない。」と語り、千葉県立中央博物館の森田利仁企画調整課長は、地方の公立博物館は慢性的な経営危機にあると言えるだろう、予算も人も、増加や補充のめどさえ立たない、そしてこの現状を打開する展望も糸口さえも見えない、今、博物館の現場には、自分たちの力ではどうにもならないこの現状に絶望感すら漂っているとまで、この誌上で述べておられます。
大臣、こういう博物館の、あるいは学芸員の現状というものを把握しておられますか。
○山本(幸)国務大臣 文部科学省が調査したところによりますと、各地方公共団体における博物館費は、平成十六年度に二千百三十六億円だったのが、平成二十六年度には一千三百四十二億円となっていると承知しております。
地方公共団体の厳しい財政事情の中、学芸員におかれては、博物館資料の収集、保管、展示等の重要な業務を行っていただいていると考えております。そうした意味におきましても、いろいろな形で財源を確保するという努力が必要だと思っております。
○宮本(岳)委員 こういう状況がわずかでも改善されているのかということでありますけれども、ことしの予算を見てみたいと思うんですね。
文化庁、平成二十九年度予算で、博物館関係予算は幾らで、平成二十八年度予算は幾らだったか、そして、昨年比で博物館関係予算は幾らの増減になっておりますか。
○山崎政府参考人 お答え申し上げます。
平成二十九年度予算における文化庁と文部科学省の博物館関係予算は、約二百七十八億円となっております。
平成二十八年度予算額の約三百三十二億円と比較すると、約五十四億五千万円の減となっているところでございます。
○宮本(岳)委員 一気に一六・四%の減ですね。博物館の現場、学芸員の現状は、予算が減らされ、危機的状況で絶望感すら漂っているときに、こういう状況が広く広がっている。そういうときに、大臣が、学芸員はガンだと悪罵を投げつけ、この連中を一掃しなければならないと語る、こんなむごい仕打ちがありますか。
日本博物館協会の専務理事でもあり、自身も学芸員の資格を持つ半田昌之氏は、学芸員をがんに例えた言葉の使い方を含め、ショッキングなコメントだった、全国の博物館関係者からも、正しい理解の上に立った発言ではないという多くの声が寄せられたと話しておられます。
大臣、この声にどう応えられますか。
○山本(幸)国務大臣 私も、文化財保護予算が削減されていることについては大変危機感を持っております。
その意味で、大臣になる前は自民党の観光立国調査会長をやっておったんですけれども、その当時、文化財保護の予算をふやすために補正予算でとろうという努力をいたしまして、たしか初めて補正予算でつけることができたというふうに思っております。
しかしながら、厳しい財政事情でもございます。そういう厳しい財政状況の中で、文化庁、文部科学省において、美術館や博物館が果たす役割の重要性等を勘案して、削られているということについては、これは大変残念なことであるというふうに思っております。
一方で、美術館、博物館は、人類にとって大変な資料を取り扱い、人々の新しい知識の創造と普及に役立っているとともに、観光立国や地方創生の観点からも、文化財を地域資源として活用していく観点から極めて重要でありまして、限られた予算の中で学芸員の方々が日々奮闘されている姿には頭が下がるところであります。
私としても、地域の人の知の拠点として博物館や美術館を活用した取り組みも含め、今後とも、意欲と熱意のある地方公共団体に対して、情報支援、人材支援、財政支援の地方版三本の矢で支援をしてまいりたいと思います。
そしてまた、博物館、美術館においても、いろいろな形で財源を確保するという努力もしていかなければいけないと思いますし、ぜひ今後とも、個人的にも文化財保護の予算の獲得については努力したいと思っております。
○宮本(岳)委員 さて、そこで、国立国際美術館の山梨館長も危機感を口にしておられた、指定管理者制度等の運営制度のきしみの問題であります。
文部科学省に聞きますけれども、類似施設を含む博物館で指定管理者制度を導入している施設の割合は、平成十七年度、二十年度、二十三年度、二十七年度でそれぞれどのように推移しておりますか。
○神山政府参考人 お答えいたします。
博物館における指定管理者の割合につきましては、文部科学省の社会教育調査によりますと、平成十七年度で一六・二%、平成二十年度は二六・三%、平成二十三年度二八・五%、平成二十七年度におきましては二九・八%となっているところでございます。
○宮本(岳)委員 配付資料三を見ていただきたい。
文部科学省の調査、博物館(類似含む)への指定管理者制度の導入率であります。二〇〇五年の一六・二%から、二〇一五年度は約三割へとほぼ倍加をしております。
二〇〇八年の社会教育法等の一部改正の国会審議では、「社会教育施設における人材確保及びその在り方について、指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮し、検討すること。」という附帯決議がつけられたにもかかわらず、こういう状況であります。
しかし、図書館もそうでありますけれども、博物館という非常に専門的な人材によって支えられている社会教育施設に指定管理者制度がなじまないのは当然のことでありまして、昨年三月二十五日に公表された総務省の、地方行政サービス改革の取組状況等に関する調査でも、長野県千曲市では、平成二十四年度まで六カ所の博物館を指定管理者による運営としておりましたが、直営に戻し、今後も直営での運営を考えていると答えております。
きょうは総務省にも来ていただいておりますが、千曲市はその理由をどのように回答しておりますか。
○宮地政府参考人 お答え申し上げます。
地方行政サービス改革の取組状況等に関する調査におきまして、千曲市からは、博物館への指定管理者制度の導入について、経費削減が図れなかったとともに、文化財等の保護、活用を推進する観点から、今後も直営での運営を考えているとの回答を得ているところでございます。
○宮本(岳)委員 やってみたけれども、こういうものに指定管理者を入れても経費削減が図れなかった、また、文化財等を保護、活用を推進する観点でいえば、今後も直営での運営が望ましい、こう回答しているわけですね。
この地域は、稲荷山重要伝統的建造物群保存地区や森将軍塚古墳など、重要な文化財がございます。こうした文化財を大切にしながら地域の活性化を図っていこうという検討がされているとお聞きをいたしました。
地域振興でも大きな役割を担っている博物館や図書館などは、指定管理者制度はなじまないということがここにもはっきりと示されているということを申し上げておきたいと思います。
それでは最後に、かつて私が当委員会で行った質問に関連して、内閣府に確認しておきたいと思います。
私は、昨年三月十七日、当委員会での地域再生法改正案の質疑で、私の地元阪南市における地域再生計画である「阪南 こども子育て みらい計画」というものを取り上げて、石破大臣と議論をいたしました。
この計画は、現在市内七カ所に分散している公立幼稚園四園と公立保育所三園を認定こども園として一カ所に集め、市内六百三十人の子供たちを、大手家電量販店が撤退した空き店舗に詰め込もうとする計画でありました。
私は、昨年の質疑で、この計画が市民への説明も全くなされないまま進められてきたこと、保護者への説明すら地域再生計画の認定後であったこと、この撤退した大手家電量販店を買い取ることを賛成多数で可決した市議会でさえ、「余りに拙速であり、市民、関係者への説明や意見聴取が充分なされていないように考える。」との附帯決議が付されたこと等々を示して、市民合意もないような計画を拙速に進めるのは余りにもおかしいと指摘をいたしました。
私の国会質問を受けて、お母さん、お父さんたちを初めとする市民の運動も粘り強く続けられ、ついに昨年の市長選挙で推進派の市長が敗れ、計画を原点に戻し、改めて市内の子育て拠点を再構築することを公約に掲げた新しい市長が誕生いたしました。今、阪南市では、新市長とともに、では、この地域再生計画をどうするか、地域の子育て拠点の再構築をどう進めるか、市民的な議論が続けられております。
内閣府に確認いたしますけれども、この阪南市の計画はその後どのようになっておりますか。
○青柳政府参考人 お答えいたします。
阪南市の子育て支援施設に係ります地域再生計画の関係でございますけれども、昨年の十二月以降、阪南市において、プロジェクトチームによる議論をこれまで十九回ほど重ねられているということで、地域再生計画の見直しについてもあわせて検討を進めているというふうに承知をしております。
○宮本(岳)委員 昨年の質疑で私が、市民的な議論が積み重なってこの地域再生計画をぜひ変更したいということになれば、所要の手続を経て変更することは可能だなと確認をしたのに対して、当時の麦島地方創生推進室次長は、可能でございますとはっきり答弁をされました。これは間違いないですね。
○青柳政府参考人 お答えいたします。
昨年、麦島の方から答弁いたしましたとおり、既に内閣総理大臣の認定を受けた地域再生計画であっても、地方公共団体が見直しを行う旨の判断をした場合、変更を行うことは可能でございます。
○宮本(岳)委員 現在も市民的な議論が続けられております。それは、阪南市の子育て施策をもっともっとよくしたいという、住民自身の自治の息吹であることは間違いないと私は思います。
ところが、市民的な議論がやっと始まったばかりだというのに、またぞろ今度は、ことし七月までに結論を出さなければ、家電量販店の建物購入に当たって国から交付された地域再生戦略交付金二億円弱を返還せよと国から求められているという話がまことしやかに伝わってまいりました。
内閣府に確認いたしますけれども、内閣府は、期限を切って阪南市に交付金の返金を迫っているんですか。
○青柳政府参考人 お答えいたします。
大阪府阪南市の子育て支援施設の整備に係ります地域再生計画あるいは地域再生戦略交付金事業の見直しに関しまして、当方から、七月までに実施しなければ交付金を返還させるといった期限を区切ったことはございません。
関係者間の議論を経て、阪南市が今後の見直し方針に関する結論を整理した段階で、地域再生計画の変更等について速やかに当方に御相談いただきたいと考えております。
○宮本(岳)委員 大臣、出られましたか。聞こうと思いましたが、おられないので。
私は、国が上からあれこれ指図するというようなことではだめだと思うんですね。やはり、しっかり市民的な議論を見守っていく、そしてそういう市民的な議論の結論に国もしっかりと支援をしていくということが非常に大事だと思っております。
阪南市にももちろん、行政にももちろん丁寧な助言をお願いしたいし、また、そういう議論の中で、直接、住民の皆さんが国に市民の声も聞いてほしいということになれば、住民の皆さんの声にも耳を傾けていただきたいと思います。
大臣、お戻りになりました。
今、阪南市の子ども・子育て計画のことを議論していたんですが、やはり、市民の声に基づいてまちづくりを進めていくというのが地方自治、地方創生の基本だと思うんですね。しっかり住民の声に耳を傾ける、この点についての大臣の御所見をひとつお伺いしたいと思います。
○山本(幸)国務大臣 失礼いたしました。
まさに委員御指摘のとおりだというように思います。
一度決まった計画であっても、その住民の意思を反映して、変更するときにはしっかり変更するということもやらなければいけないと思っております。
○宮本(岳)委員 地方創生も、また地域再生も、住民自身の取り組みとしてしか成功いたしません。それは、新たな住民自治をつくり上げる運動だと言っても過言ではないと思います。
では、そのような自治を担う住民、真の地方創生を担う住民の力は一体どこから生まれてくるのでしょうか。住民自身の地域のネットワークであり、住民自身がみずから知識を得て地方自治の担い手に育つことができる知の拠点がぜひとも必要であります。
先日私が取り上げた公共図書館や、きょう大臣と議論した博物館はそのような地域の知の拠点となり得るものであり、そのような役割を果たす上で、図書館司書や学芸員など専門家の果たす役割は極めて大きいものがあると言わなければなりません。
そのような知の拠点を財政的にもしっかり支えることこそ国の責務だということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。