障害者 参政権保障を 宮本議員が総務相に要求 衆院予算委分科会
日本共産党の宮本岳志議員は2月23日、衆院予算委員会分科会で、障害を持つ人の参政権が保障されていない実態を告発し、改善を求めました。
宮本氏は、昨年10月の衆院選で、和歌山県だけが選挙公報点字版の各戸配布を行わなかったと指摘し、来年の参院選では全都道府県で各戸配布すること、必要な人には音声版の選挙公報も届けることは最低限の情報保障、権利保障だとただしました。野田聖子総務相は「各選挙管理委員会に対してしっかり働きかける」と述べました。
また、最高裁裁判官国民審査では、法律上、点字投票のみ、罷免したい裁判官の氏名を点字で記載しなければなりません。宮本氏は、国民審査の棄権、無効の要因になっているとして、法改正も含め検討すべきだと主張。野田氏は、情報通信技術(ICT)も用いて研究し、投票環境の向上を図ることは可能だと答弁しました。
宮本氏は、参院選の選挙区選挙では、政見放送に手話通訳も字幕もないとして、少なくとも国政選挙の政見放送は手話と字幕の両方を付けるべきだとして、来年の参院選をその第一歩とするよう要求。野田氏は、超高齢社会に向かうなか、全有権者が等しく投票できるようにすることを、極めて重要な課題として検討すると約束しました。(赤旗2018/3/2)
動画 https://www.youtube.com/watch?v=h6LJexmSHtM
議事録
○宮本(岳)分科員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、障害を持つ方々への参政権保障の問題について聞きたいと思います。
まず、外務省に確認をしたいと思うんです。
二〇〇六年十二月十三日に国連総会において採択され、二〇〇八年五月に発効した障害者権利条約は、既に我が国も批准をしておりますけれども、この条約第二十九条において、障害者の参政権、とりわけ投票の手続や設備及び資料についてどう定められておりますか。
○大鷹政府参考人 お答え申し上げます。
障害者権利条約第二十九条は、障害者の政治的及び公的活動への参加についての規定でございますけれども、同条(a)は、「特に次のことを行うことにより、障害者が、直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、他の者との平等を基礎として、政治的及び公的活動に効果的かつ完全に参加することができること(障害者が投票し、及び選挙される権利及び機会を含む。)を確保すること。」と規定しております。そして、その具体的な内容といたしまして、続く同条(a)(1)は、「投票の手続、設備及び資料が適当な及び利用しやすいものであり、並びにその理解及び使用が容易であることを確保すること。」と規定しております。
○宮本(岳)分科員 我が国は、二〇〇七年九月二十八日、高村正彦外務大臣がこの条約に署名し、二〇一四年一月二十日に批准書を寄託、二〇一四年二月十九日には我が国でも効力を発しております。
条約が、他の者との平等を基礎として、効果的かつ完全に参加することができることを確保すること、障害者が投票し、及び選挙される権利及び機会を含むとしていることについては、これはもちろん、大臣もその精神を遵守するということでよろしいですね。
○野田国務大臣 はい。
○宮本(岳)分科員 お認めいただきました。
こういう流れも踏まえて、総務省は、二〇一〇年から障がい者に係る投票環境向上に関する検討会を立ち上げ、二〇一一年三月には報告書をまとめました。そこでは、視覚障害者への選挙公報について、総務省、何と書いてありますか。
○大泉政府参考人 平成二十三年三月に取りまとめられました障がい者に係る投票環境向上に関する検討会報告書によりますと、視覚障害者向けの点字又は音声による選挙のお知らせ版の今後の方向性として、国政選挙や都道府県知事選挙における選挙のお知らせ版につきましては、「その内容を選挙公報全文とするとともに、視力に障害のある方の意向に沿うよう、点字版だけではなく、カセットテープ版、コンパクトディスク版及び音声コード付き拡大文字版を必要数、準備する。」こと、また、「知的障がい者など視覚障がい者以外の障がい者の方々にとっても音声による「選挙のお知らせ版」が有用となる場合があるため、その配布についても配慮する。」ことなどを定めてあります。
○宮本(岳)分科員 点字又は音声による選挙のお知らせ版については、その内容を選挙公報全文とすること、視力に障害のある方の意向に沿うように、点字版だけでなく、カセットテープ版、コンパクトディスク版及び音声コードつき拡大文字版も必要数準備する、今答弁があったとおりですね。
そこで、現状を聞きます。
直近の国政選挙、昨年十月の衆議院総選挙では、選挙公報全文の点字版は、全ての都道府県で視覚障害者のお住まいの各戸にまで届けられたのか。また、カセットテープ版、コンパクトディスク版及び音声コードつき拡大文字版が障害者の御自宅まで配布されたのは、それぞれ何県になっておりますか。
○大泉政府参考人 お答えいたします。
昨年十月二十二日に執行されました衆議院議員総選挙において、各都道府県による点字又は音声による選挙のお知らせ版に係る各戸配布状況につきまして、配布というのは、都道府県選挙管理委員会が福祉部局や障害者関係団体から提供された配布対象者リストに基づき配布対象者の自宅等へ配布する場合、あるいは、都道府県選挙管理委員会から依頼を受けた福祉担当部局や障害者関係団体が配布対象者の自宅等へ配布する場合を各戸配布と申しますが、各戸配布しているのは、四十七都道府県中四十六団体でございました。
音声版のうち、カセットテープ版を各戸配布しているのは三十四団体、コンパクトディスク版については三十八団体、音声コードつき拡大文字版につきましては、各戸配布しているのは二団体となっております。
○宮本(岳)分科員 点字版も、まだ一県、各戸配布できていないんですね。これはどの県か。お恥ずかしいことに、私の出身県である和歌山県でございます。
大臣、次回の国政選挙、つまり来年の参議院選挙では、その県以外は全てやっておられるわけですから、和歌山県でも、少なくとも点字版については各戸にまで、お宅にまで配布されるように、ぜひ総務省としてもしかるべき手だてを講じていただきたいんですが、いかがでしょう。
○野田国務大臣 御指摘のとおり、視力に障害のある方を始め有権者の方々が選挙権を行使するに当たり、候補者情報を提供することは大変重要なことです。
今お話をしております、点字等による選挙のお知らせ版の各戸配布が未対応の団体においては、先般の衆議院議員総選挙において、限られた期間内に対応することが困難であったと聞いております。ですから、今回はできなかったけれども、前はできました。ずっとやっていないわけではなくて、和歌山県は今回ちょっと対応ができなかったという報告でございます。
既に大多数の都道府県において対応できていることから、各戸配布も含めた積極的な取組について、各団体における取組事例を横展開するなど、引き続き、各選挙管理委員会に対してしっかり働きかけてまいります。
○宮本(岳)分科員 総選挙は突然やってきますけれども、参議院通常選挙は解散というものはありませんので、きちっと準備をしていただいて、来年は間違いなく全県で各戸にまで点字版が届くようにしていただきたい。
我が党の堀内照文前衆議院議員の調査によりますと、神戸市選挙管理委員会では、点字版、音声版の両方を各戸にまで届けているということでありました。しかし、仮に全都道府県が各戸配布をするようになったとしても、そもそも点字版の配布部数の全国合計、これを見せていただいたら、約三万四千部なんですね。全国に視覚障害者は三十一万人以上おられる、こうなっておりますから、これはわずか一割強にしかすぎないわけであります。それは、日常的に点字公報などを届けている世帯と、御希望されるところにだけ届けるということになっているからなんですね。
しかも、厚労省の社会・援護局が行った平成十八年身体障害児・者実態調査結果というものを見ますと、視覚障害者の点字習得の状況は、点字ができると答えているのは視覚障害者の一二・七%。一割強しか点字はできないんですね。
ですから、福祉部局とも連携して、障害手帳を持っている方々など全ての対象となる方の手元に、点字版と同時に音声版、両方の選挙公報が届くようにするのは、最低限の情報保障、権利保障という点で私は不可欠だと思いますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○野田国務大臣 今御指摘のとおりで、視覚障害の全ての方が点字を御理解いただけていないわけですから、今お話がありましたように、総務省としては、選挙のお知らせ版が重要であることは今申し上げたとおりでございまして、これまでは、配布について、個人情報の保護に十分留意をしておりまして、必要とされる方を把握している障害者団体に配布を依頼したり、又は団体に対して必要とされる方のリストの提供を依頼して配布するというふうに、慎重にやってきたところです。
総務省としては、今御指摘のように、選挙のお知らせ版が必要な方のところにしっかり行き届くように、更に関係機関と連携を密にして、個人情報の兼ね合いもしっかりと踏まえつつ配布することや、今お話があったように、点字版だけではなくて、CD版などの音声版についても必要数準備することについて、しっかり、引き続き各選挙管理委員会に対して要請をしてまいります。
○宮本(岳)分科員 当事者の方に話をお伺いしますと、選挙のお知らせが届くには届くんだが、昨年の総選挙のときは投票日の二日前、金曜日に届いたと。これも、期日が近かったというか短かったということもあるんですが。投票日は台風で、土曜日に期日前投票しようと出かけたけれども、長蛇の列、中には諦めて帰ってしまう人がいたのではないかという声も聞きました。過去には投票日が過ぎてから届けられたと、笑い話みたいなこともあったそうであります。
地方議員の選挙ともなると、そもそもお知らせが届かない。届いても候補者名と簡単な経歴のみで、選挙公報の全訳になっていないなど、更に問題は山積であります。
これらはいずれも、選挙期間が短いことからくる問題でもあるわけですね。抜本的な解決には、選挙期間のあり方を含めた検討が必要になってくるわけですけれども、ただただこの問題だけで選挙期間を決めていくというわけにも、それはもちろんいかない、簡単ではないというふうには思います。
ただ、事は参政権という障害者の権利の基本、根本にかかわる問題でありますから、これはやはり放置することは許されない。しっかり検討を、これはもう答弁は結構ですから、しっかり、こういう問題もあるということを念頭に置いていただいて御検討いただきたいと思います。
視覚障害者の参政権にかかわって、もう一点。最高裁判所裁判官の国民審査の投票方法でありますけれども、健常者であれば、あらかじめ候補者名が刷られた用紙が準備され、罷免したい人のところにバツを書き込むやり方であります。
視覚障害者の方は、罷免したい人の名前を点字で打ち込むという方式になっております。前回は七人が対象でありまして、当然、全員罷免したいという人もいらっしゃいますから、そうなりますと、かなりの時間を使って七人の名前を打ち込まなくてはなりません。打ち間違えれば無効票となるんですね、これは。当事者からは、健常者と比べて負担が重いだけでなく、同じ一票なのに無効票のリスクが高いなど条件が違うのは不平等だという声が出されております。
前回の国民投票のを、では、ちなみにどういう状況か聞いてみたら、二〇一四年の総選挙で、比例代表の点字投票七千七百七十五、全国でですよ。ところが、国民審査、これは六千三百一ですから、やはり、比例の投票はしたけれども、裁判官の国民審査はちょっと負担なのでしなかったという人も随分いらっしゃるんですね。無効率を見てみたら、比例代表で一・七%です。点字投票の無効率ですよ、点字に限ってですよ。しかし、国民審査は四・三%。やはり、有意に国民審査の方が無効率が高くなっているんですね。
なぜこういう不平等が残されているのか、ちょっとまず事務方、お答えいただけますか。
○大泉政府参考人 御指摘のとおり、最高裁判所国民審査の点字による投票というのは、自書式といいますか、点字で打ち込む方式になっております。
この理由は、選挙という短期間の中で、点字による記号式投票用紙を調製することが、全国的にわたるものですから、なかなか困難であると考えられること、それから、記号式の審査に付される裁判官の欄にあらかじめ裁判官の氏名を点字で打たれた場合に、罷免を可とする意思を表示すべき場所、これをつくらなきゃいけませんけれども、この箇所に審査人が、審査をする方が点字により正確に記入することが難しいのではないか。特に、点字には基本的にマルやバツというものをあらわす記号がなく、そういう中で記入が難しいのではないのかなどの理由によるものでございます。
○宮本(岳)分科員 あらかじめそういう説明も聞いて、昨年十二月五日にも今の答弁が繰り返されております。
実は、この投票方式は、最高裁判所裁判官国民審査法第十六条で、「点字による審査の投票を行う場合においては、審査人は、投票所において、投票用紙に、罷免を可とする裁判官があるときはその裁判官の氏名を自ら記載し、罷免を可とする裁判官がないときは何等の記載をしないで、これを投票箱に入れなければならない。」と法定されているんですよ、このやり方が。
では、この投票方式がいつから法定されたのかと調べてもらったら、昭和二十二年、一九四七年の十月。
一九四七年十月十六日、参議院司法委員会で法案の説明を行った福原忠男衆議院参事は、「何故にかような盲人の点字には自署式を採るかといいますと、現実の問題といたしまして点字の投票用紙を全国に用意するということは非常な費用も掛かりますし、実際の従来の選挙の際の投票数は全国で約六百ということでございます。さような意味合から比較的少数のために非常なる費用を要するという点を考慮して、この盲人の点字の場合には特に記号式を置かなかつた次第なのであります。」云々と述べております。
今では、視覚障害者の投票は六百どころじゃありません、さっき紹介したように七千七百七十五。また、費用や技術という問題も、これはもう七十年前とは大きく変化をしてきていると思うんですね。
大臣、法制定以来七十年間、この規定、この十六条は一切変わっていないんですね、改正されていないんです。そろそろ、きちんと検討した上で、可能であれば法改正を行うことぐらい、当然検討すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
○野田国務大臣 今選挙部長から答弁もありまして、委員も御指摘がありましたけれども、自書式による点字投票の投票方法を見直す場合、短期間で点字による記号式投票用紙を調製することが難しいと考えられることや、記号式投票の審査に付される裁判官の欄に裁判官の氏名が点字で打たれた場合に、罷免を可とする意思を表示すべき箇所に審査人が点字により正確に記入することが難しいと考えられることなど、さまざまな課題があると言われてまいりました。
しかしながら、私も総務大臣になりましてから、障害者、当事者の家族の一人でもありますし、障害者の方々を含め、在外の人もそうですが、投票しにくい状況下で、投票率を上げろと言っても、上げるためのいろいろなことができるはずなのに、そういうことができていないということをつぶさに調べさせていただく中で、選挙人の投票環境の向上方策については、きょうは視覚障害者の方ですけれども、昭和二十二年にはなかったICTというのがこの世に今あるわけでございます。非常に利便性の高い道具であります。こういう活用をしてどのようなことが可能になるかということを、実は両方とも総務省にありますから、選挙もICTも、それを踏まえて、総務省に投票環境の向上方策等に関する研究会というのがあって、そこで新たに検討していただいているところです。
国民審査についても、こうした研究会にしっかり議論していただいて、投票環境の向上を図っていくことは可能ではないかと私は考えております。
○宮本(岳)分科員 おっしゃるとおり、技術も格段の進歩をしているわけですし、このとき、わずか六百だという議論をされて、そのままになっているというのは本当に胸が痛むんですね。参加できないから少ないわけであって、本来は全員が参加してもらわなきゃなりませんから、しっかり検討していただきたいというふうに思います。
次に、聴覚障害を持つ方々にとって、候補者の政見を知るために欠かせない政見放送の手話通訳や字幕の付与について聞きたいと思うんです。
衆議院の小選挙区選挙については、持込みビデオ方式が認められておりまして、手話通訳や字幕を作成者の側で入れることができます。また、スタジオ録画形式については、衆議院比例代表選挙や参議院比例代表選挙、そして都道府県知事選挙については既に手話通訳をつけて録画できることになっております。
ところが、参議院の選挙区選挙については、手話通訳も字幕の付与もいまだにできていないんですね。これはまず事務方、なぜですか。
○大泉政府参考人 お答えいたします。
参議院の選挙区選挙でございますが、全国で同時に政見放送の収録が行われるということとなります。一定数の手話通訳士を各地域においてそれぞれ安定的に確保する必要が出てまいりますが、地域によっては手話通訳士の数が少ないところもあります。
具体的には、政見放送に対応するための研修を履修した手話通訳士が十名に満たない団体が全国で七県ありまして、最も少ない佐賀県では、手話通訳士自体四名、うち研修を受けている人は二名というような状況でございまして、したがいまして、現状においては、限られた収録期間の中で必要な数の手話通訳士を確保することにはちょっと課題があるということでございます。
○宮本(岳)分科員 手話通訳士の地域偏在という答弁がありましたけれども、それでも、さきに紹介した総務省の検討会報告を受けて、二〇一一年四月の統一地方選挙で行われた知事選挙で、初めて政見放送に手話通訳がつきました。だから、知事選挙ではやられているんですね。ただ、知事選挙は一斉にやりませんので、それぞれが応援して、少ないところにも人を派遣してやっている。
この二〇一一年時点では、政見放送手話通訳研修を履修した人は全国で六百四十二人という体制で報告されておりました。それでも、その後、各ブロックごとで対応することによって、とにかく全ての都道府県知事選挙、もう今一巡、全て手話通訳が付されてきたわけであります。その後、総務省も努力していただいて、今御報告の研修履修者は、直近の二〇一六年一月二十一日現在の資料では千三百三十九人となっております。
きょうは資料をお配りいたしましたので、お手元の資料を見ていただきたいんです。これは前の数は書いていないですけれども、十七人だった北海道は四十七人に、三十六人だった東北ブロックが八十人、二十七人だった中国ブロックも九十九人、四国も十六人から五十九人へ、九州は二十九人から百二十人へと、なかなか格段の増員がされております。これは大いに評価したいと思うんですね。
このような努力を引き続き来年に向けて強めていって、例えば、先ほどお話にあった、今は二人と少ない佐賀県には隣の福岡県から派遣するとか、五人の徳島県には兵庫県から派遣するなど、やりくりを、手当てを本当に少ないところに幾つか講じれば、決して不可能ではないんですね、都道府県知事ではやっているわけですから。
やはり、来年の参議院選挙からは選挙区についても手話通訳をつけることをぜひ大臣に検討していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○野田国務大臣 資料をありがとうございました。
確かに、研修を受けていただいて、数をふやしていただいているところです。
実は、別なところでも、電話リレーサービスとか、手話でいろいろ福祉サービスを提供するということで、私自身も、そのサービスを展開するにも人手がいないんじゃないかということを指摘したことがございます。
引き続き、やはりこの研修会を総務省としては実施して、手話通訳士の確保に向けた取組は行ってまいりたいと思います。
○宮本(岳)分科員 大いに頑張っていただいているわけですから、もうあと一歩ですから、そこにしっかり融通もきかせて、本当に首を長くして障害者の方々は手話通訳がつくことを待っておられますから、ぜひやっていただきたい。
さらにもう一点、政見放送への字幕の付与についてであります。
私は、かつて参議院議員時代に、交通・情報通信委員会でNHKの予算審議にも当たってまいりました。一九九九年三月二十八日には、当時郵政大臣だった野田大臣とも議論したことをきのうのことのように思い出します。十九年前、お互い随分若かったのでありますけれども。
当時は、地上波放送のデジタル化で、データ放送を活用することによって、今足踏みしているような問題も迅速に解決の方向に向かうというような説明があったと思います。私は、当時の東海村の原子力事故を受けて、聴覚障害者にNHKのニュースが伝わらなかった問題を取り上げて、災害や事故など命にかかわる緊急なニュースには生放送でも字幕を付与することを求めて、NHKはついに二〇〇〇年三月二十七日から「ニュース7」でリアルタイム字幕放送を開始いたしました。
あれから十八年たったんですね。さぞかし進んでいるだろうと思っておりましたら、国政選挙の政見放送にすらまだ字幕が付与されていないと聞いて、率直に言って驚きました。
NHKに聞くわけですけれども、リアルタイム字幕放送から十八年ですよ。総務省の障がい者に係る投票環境向上に関する検討会報告書からでももう七年たったわけでありますが、今でも国政選挙の政見放送にすら字幕がつけられない、どんな技術的困難があるんですか。
○木田参考人 政見放送につきましてはNHKの方で制作する等々のことではありませんので、技術的にというよりは、まず制度的に我々の方ではタッチしておりません。
○宮本(岳)分科員 言うまでもなく、放送法第四条第二項には、「放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送等の放送番組の編集に当たつては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。」こう定められております。
この放送法の趣旨を踏まえて、総務省は、放送分野における情報アクセシビリティーの向上を図るため、ことし二月七日、放送分野における情報アクセシビリティに関する指針を定められました。総務省、この指針は前文でどのような趣旨を掲げておりますか。
○山田(真)政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の指針でございますけれども、先生御指摘の放送法第四条第二項等を踏まえまして、放送分野における情報アクセシビリティーの向上を図るため、字幕放送、解説放送及び手話放送の普及の目標を定めるものでございます。
本指針の運用に当たっては、障害者基本法等に鑑み、視聴覚障害者等の情報アクセス機会の一層の確保を図ることとしております。
○宮本(岳)分科員 ちなみに、この目標でNHKの目標はどのようになっていますか、地上波。
○山田(真)政府参考人 お答え申し上げます。
NHKにおきましては、放送時間六時から二十五時までのうち連続した十八時間につきまして、字幕付与可能な全ての放送番組に関しまして字幕を付与することを目標としております。これを十年間の目標として定めているところでございます。
○宮本(岳)分科員 明確に、対象の放送番組の全てに付与というのがNHKの目標なんですね。
それで、フォローアップの対象ということでいいますと、残念ながら地方局作成の番組はカウントされないというふうに説明を受けました。
NHKは当然、地方局制作の番組も含めて、全ての放送番組に字幕を付与するということを目指して頑張っていただいていると私は思っております。よもや、フォローアップの対象でなければ字幕付与の必要はない、そんなふうに考えておられないと思うんですが、NHK、もちろんのこと、そんなことは思っておりませんね。
○木田参考人 地域放送局では字幕を付与する体制が整っていないなど、まだまだ今後の拡充に向けた課題は多いのではありますが、可能なことから着手して、サービスを充実させていきたいというふうに考えております。
○宮本(岳)分科員 地方局の字幕付与の体制が整えば、参議院の選挙区選挙の政見放送への字幕の付与もできるようになると私は思います。
ちなみに、これも、もう一つだけ確認しますが、総務省、字幕付与の経費はきちんとNHKに支払われておりますね。
○大泉政府参考人 お答え申し上げます。
公職選挙法第二百六十三条の九号の規定によりまして、政見放送に係る経費は国が支払うこととされておりまして、既に字幕を付与することが可能でやっております参議院の比例代表選出議員選挙、これは全国で東京一本で今やっておりますけれども、これは現に、字幕付与に要した経費につきまして支払っているところであります。
○宮本(岳)分科員 きちっとこれは、経費はもちろん国が持つわけですから、手話通訳の付与も字幕の付与も、そのための予算はしっかり確保することは私も求めておきたい。
また、NHK受信料収入が過去最高を更新して、内部留保に当たる繰越金は三十年度末で七百六十七億円となる見込み、こういう報道もあります。しかし、本来、公共放送に当たるNHKは、字幕放送、解説放送、手話放送、こういった情報アクセシビリティーの向上にこそ、しっかりとこの繰越金を振り向けていただきたいというふうに思っております。これは選挙じゃないですよ。選挙は国が出さなきゃならないけれども、それ以外のあなた方の放送コンテンツにきちっと、地方局も含めて、つけることに振り向けてもらいたいと思います。
当事者の方々に聞けば、手話でないと話の意味がつかめないという方もいれば、手話ができない人は字幕がないと困るという声もあり、手話と字幕は、どちらかがあればよいというものではないようです。両方実現できるよう努力すべきことは言うまでもないと思います。
少なくとも国政選挙には、参政権の基本となる政見放送に手話と字幕を付与する、そのための第一歩を来年の参議院選挙で踏み出す。
最後に大臣の決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
○野田国務大臣 今委員の御指摘になったのは、聴覚そして視覚に障害がある方の限定のように聞こえますけれども、日本というのは超高齢社会に入ってきます。加齢によって、年をとることによって耳が遠くなったり目が見えにくくなる方もどんどんふえる国なわけですね。ですから、一部の障害の人のためということではなく、全ての有権者がひとしく投票できるということをしっかり捉まえて、極めて重要な課題だと認識していますので、しっかり検討していくことをお約束したいと思います。
○宮本(岳)分科員 ありがとうございました。