交渉記録欠落を追及
「森友」問題 野党合同ヒアリング
「森友学園」との国有地取引に関する改ざん前の決裁文書や交渉記録が国会に提出された23日、財務、国土交通両省などに対する野党合同ヒアリングが開かれました。両省幹部は重要な記録の欠落などについての追及に、相変わらず不誠実な答弁に終始しました。
日本共産党の宮本岳志衆院議員と辰巳孝太郎参院議員は、今回提出の交渉記録が217件、900ページ以上に上るのに、安倍晋三首相の妻、昭恵氏が籠池泰典同学園理事長(当時)側に「いい土地ですから、前に進めてください」と語り、消極的だった財務省の姿勢が大きく変わる転機となった2014年4月28日の交渉記録だけが欠落しているのは「おかしい」と追及。他の議員からも「意図的に抜いたのでは」などの指摘が相次ぎました。
財務省理財局の富山一成次長は、交渉記録は「廃棄した」との従来の国会答弁を覆す事態に謝罪を繰り返し、さらなる未発見文書が存在する可能性も認めながら、「出したものがすべてだ」と強弁し、再調査にも後ろ向きの姿勢に終始。記録を作成した職員に聞き取りを行ったとしながら、「まったく情報はない」という同次長に、議員からは「あまりにも不自然だ」との声が上がりました。
また、国有地売却価格の約8億円もの値引きの根拠となった地中ゴミの1万9500トンもの「推定埋設量」の算出についての記述の経緯をただされた国土交通省も「初めて見た」などと説明。交渉に当たった大阪航空局の職員からの聴取結果を一切示さなかったことに、出席議員から「いいかげんにしてもらいたい」など怒りの声が噴出しました。
財務省 森友交渉記録(要旨)
森友疑惑で財務省が23日公表した、「森友学園」との計957ページ分の「交渉記録」で、安倍昭恵氏などが関与した部分などを中心に紹介します。
【昭恵氏の関与は…】
2013年6月28日 籠池泰典氏が小学校用地として大阪府豊中市の土地取得を近畿財務局に照会。開校時期は15年4月と説明。
8月13日 鴻池祥肇参院議員の秘書「当初は借り受けて、数年後に購入を希望している」
10月30日 大阪府「籠池氏は安く借りられると話をしている」
11月19日 大阪府「国有地を買い受けるために約10億円が必要となるが、計画は全く示されていない」
14年3月4日 大阪府「(森友の計画書は)受理できるレベルではない。資金計画は非常に曖昧。小学校名『安倍晋三記念小学校』として本当に進捗(しんちょく)できるのか、取り扱いに苦慮している」
27日 大阪府「安定的な学校運営は難しいと考えられる状況。話にならないのが実情」
4月15日 近財担当者の(学園側に対する)心証。「国の対応の非難、自己主張の妥当性を一方的に述べるのみ。真摯(しんし)に対応することは期待しがたい」
6月17日 近財「要望の『貸付』は本省にも相談し『協力する』との結論が出ている」
鴻池議員秘書「(森友側から)府と近財との折衝に時間を取られていると愚痴めいた話が多い。また首相夫人の現地訪問を指すような報告もあった」
11月7日 近財「少しでも早期の買い受けができないものか」
森友側「3、4年後に購入したい。ボーリング調査の結果、想定以上の軟弱地盤であることが判明した。貸付料や売却価格は安くなるはず」
12月17日 近財が森友側に契約書類の説明。近財「土壌汚染対策費、地下埋設物撤去費として支払った金額について協議することになる。適正な金額と判断した場合は支払える」
森友側「実際に要した費用は支払うべきだ」
15年1月9日 近財は土地の貸付料を年3400万円程度と提示。籠池氏「国家的見地からの考えや、ここに小学校を建てる意義を考慮した賃料を出してほしい」
29日 平沼赳夫衆院議員の秘書「森友学園から貸付料が高く、何とかならないかと相談があった」
2月17日 鳩山邦夫衆院議員の秘書「籠池氏の意向は賃料が安くならないかということ。できることがあれば検討していただきたい」
3月6日 籠池氏「汚染土壌はすべて除去する。国は費用を無審査で全額支払うべきだ」
12日 籠池氏「速やかに支払うと書面で出せないのか」
近財「できない」
籠池氏「これ以上話をしても無駄だ。裁判するしかない」
近財「(国土交通省大阪)航空局に要請する。早期の支払いに努力させる」
13日 森友側「土壌汚染対策工事中の貸付料は支払わなくてもよいという考え方だ」
近財「そういうことはできないと説明した」
23日 籠池氏「開校初期は収支が厳しいため賃料の引き下げを考えてほしい。国も歩み寄りが必要」
近財「応じられない」
籠池氏「これでは話にならない」
26日 籠池氏「軟弱地盤の土地があんな高い金額にならない。貸付料も見直すべき」
4月14日 近財「軟弱地盤は評価額に反映させる。貸付料は下がる。売却代金も考慮する」
籠池氏「なるべく早く契約したい」
5月27日 籠池氏「将来の売却価格が9億3200万円でないという保証、安心材料がほしい」
近財「将来の売却価格はその時点で評価。現時点で保証は不可能」
29日 国と森友側が定期借地契約を締結。
6月4日 柳本卓治参院議員の秘書「籠池氏は貸付料が高額であり何とかならないか、土地の価格も高いと言っている」
籠池氏「昨日は谷垣禎一自民党幹事長にお会いしてきた」
7月31日 籠池諄子氏「小学校開設は安倍首相、首相夫人、自民党幹部も認識している(何かあれば、いつでも相談できる)」
8月5日 籠池氏「もっと安くすべきではないか」
近財「賃料の減額は一切要望に応じることはできない」
諄子氏「入学説明会には安倍昭恵夫人も来ていただくこととなっている。首相にもお願いしている」
27日 汚染土の下から廃棄物。近財「必要な作業であれば有益費として国が支払える」
9月30日 籠池氏「早期の支払いは国からの約束。まったく話が違う。貸付料の鑑定書もまったくおかしい」
近財「国が審査したうえで適正と認めた内容だ」
森友側の弁護士「こちらも鑑定士が確認した結果。書面をよく確認してほしい」
近財と大阪航空局が協議。近財「15年度内予算化は本当に無理か」
航空局「なかなか難しい状況」
【安倍昭恵首相夫人付政府職員の谷査恵子氏と財務省のやりとり】
▽2015年11月10日
谷氏 森友学園から社会福祉法人同様、優遇を受けられないかと総理夫人に照会があり、問い合わせた。学校法人に拡大されるなど、今後の方針について教えていただきたい。
国有財産業務課の職員 担当者不在につき、折り返し連絡させていただく。
▽11月12日
概要 先方より、優遇措置について学校施設に拡大する可能性があるのか照会があったもの。背景として、安倍総理夫人が名誉顧問に就任した開校予定の小学校から問い合わせがあったとのこと。
田村嘉啓・国有財産審理室長 介護施設整備に限定して検討しているもので、学校施設まで対象とするものではない。
谷氏 森友学園の件については財務省がよく対応してくれているものと理解しているが、何点か確認させてほしい。(1)土壌汚染や地下埋設物の撤去の期間について、貸付料を免除してほしいとの要望であるが、契約書に免除請求しないと明記されており、一般的な取り扱いなのか。(2)(学園が肩代わりした)土壌汚染や地下埋設物の撤去のための費用について2015年度中に大阪航空局が支払うことになっていた。16年度まで支払えないと言っているが、どういうことなのか。
田村室長 森友学園に対する国有地の貸し付けや売り払いについては、財務省としては現行ルールのなかで最大限の配慮をして対応している。(1)は、学園側が早期に国有地を使用したい事情があり対応したもので、貸し付ける以上は適正な対価を徴することが法令上必要である。(2)は、契約にいたる交渉過程で早期に返還すると説明していたことから、15年度内の支払いを主張されていると思う。国交省特別会計における予算措置が前提と説明しており、それが16年度になる。
谷氏 事情はよく分かった。先方にも説明しておきたい。
【本省相談メモ】
2014年5月9日付
●事案の概要
近畿財務局が大阪航空局から処分依頼を受けた大阪府豊中市所在の財産について、昨年9月、学校法人森友学園から私立小学校用地としての取得等要望を受理し、これまで、処分等相手方決定のため、審査期間を延長し対応してきているところ。
現状、大阪府の小学校設置認可に係る手続きが進んでいないことなどから、過日、近畿財務局より森友学園に対し早期に必要な資料提出を要求したところ、相手方から開発行為の手続きの関係もあり、近畿財務局から豊中市に対して貸付契約締結を証する書面の提出要望等がなされたことから、対応について検討するもの。
※平成25年8月、鴻池祥肇議員(参・自・兵庫)事務所(秘書)から近畿財務局への陳情案件。
●本事案に係る経緯について
2013年8月13日
鴻池祥肇議員秘書から近畿財務局に電話連絡。
森友学園が、本件土地について購入するまでの間、貸付けを受けることを希望しており、大阪航空局に直接相談したいとの要請を受ける。
8月21日
森友学園籠池理事長が大阪航空局に来局(近畿財務局同席)。本件土地について、「学校経営が安定する平成34年3月まで貸付けを受け、その後に購入したい。」との要請を受ける。
8月30日
大阪航空局が貸付けても構わないとの意向を示したことを踏まえ、売払いを前提とした貸付け(本省承認事項)として対応する方向で検討。
10月30日
大阪府私学・大学課に小学校認可の事前審査状況について照会し、審査できる書類が整っていない状況を確認。認可の可能性についての見極めができないことから、処分相手方決定について審査期間(原則、2か月)を延長して対応せざるを得ないと判断。
2014年4月28日
近畿財務局から森友学園に対し、資料提出を速やかに行うよう要請したところ、森友学園から、(1)当初計画していた本年7月の大阪府私学審議会への諮問を本年12月に変更したいので、その前提で対応してほしいとの要望とともに、(2)豊中市との開発協議を急ぐ必要があるため、大阪府が小学校新設に係る設置計画書を受理した段階で、近畿財務局から豊中市に「森友学園と本財産の契約を締結することを証する」旨の書面を提出してもらいたいとの要望あり。
なお、打合せの際、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください。』とのお言葉をいただいた。」との発言あり(森友学園籠池理事長と夫人が現地の前で並んで写っている写真を提示)。
【「学校法人 森友学園」の概要等】
1 森友学園の概要
(1)運営事業
学校法人森友学園は、塚本幼稚園幼児教育学園(昭和28年、大阪府の認可を受けた私立学校法人初の幼稚園)を運営。
(2)理事長
籠池康博氏(別添名刺参照)
同氏は、「日本会議大阪(注)代表・運営委員」を始めとする諸団体に関与している。
(注)日本会議大阪は、全国的な国民運動団体である「日本会議」(美しい日本の再建と誇りある国づくりのために政策提言と国民運動を推進することを目的として設立された任意団体)が平成9年に設立されたのに呼応する形で、大阪に根付いたより広汎な国民運動を推進すべく、平成10年6月に設立された任意団体。
なお、国会においては、日本会議と連携する組織として、超党派による「日本会議国会議員懇談会」が平成9年5月に設立され、現在、役員には特別顧問として麻生太郎財務大臣、会長に平沼赳夫議員、副会長に安倍晋三総理らが就任。
(参考)森友学園への議員等の来訪状況
平成20年11月 中山成彬議員(衆・維・比例九州)講演会
平成25年9月 平沼赳夫議員(衆・維・岡山3区)講演会
平成25年12月 日本維新の会女性局(三木圭恵議員、杉田水脈議員、上田小百合議員〈いずれも衆・維・比例近畿〉等)視察
平成26年4月 安倍昭恵総理夫人 講演・視察
(3)教育方針・教育内容
本学園の教育方針は、日本人としての礼節を尊び、それに裏打ちされた愛国心と誇りを育てる。教育内容は、毎朝の朝礼において、教育勅語の朗唱、国歌「君が代」を斉唱。また、年1回「伊勢神宮」へ参拝。
2 関連する幼稚園等
(1)理事長が別途経営する学校法人籠池学園が、開成幼稚園(売却予定)を運営。
(2)理事長親族(籠池諄子氏)が、社会福祉法人肇国舎高等森友学園保育園を運営。
(しんぶん赤旗日刊5/25付けより転載)