日本共産党議員の国会質問 短い工期、事故の遠因 宮本岳氏、新名神建設実態ただす
宮本岳志議員は16日、衆院国土交通委員会で、西日本高速道路(ネクスコ西日本)の新名神高速道路の建設現場で相次いでいる作業員の死傷事故は余裕のない工期が遠因ではないかと指摘し、同社への指導・監督を政府に求めました。
国交省によると、ネクスコ西日本は今年3月までの約2年間に、同高速道路建設で「重大事故」が6件起き、6人が死亡、8人が負傷しました。今年3月に死亡事故が起きた大阪府枚方市内での橋の建設は、当初の計画を施工会社が勝手に変更。また国交省に提出した作業工程より大幅に遅れていました。
宮本氏は「納期に間に合わないと仕事を切られるから、何が何でも間に合わせる」との現場関係者の声を紹介し、工期を急がせたことが背景にあるのではないかと追及。国交省道路局の石川雄一局長は「現場では、工事の進捗(しんちょく)に応じ工程を見直し適切に対応している」と述べました。
宮本氏は「適切なら事故は起きない」と反論。その上で、ネクスコ西日本は3月の事故後、工事入札の際に「工事関係者の死者2名以上」の事故の有無を評価項目に加えたことについて「死者1名でも評価を下げないのか。言語道断だ」と批判し、指導・監督の徹底を求めました。
石井啓一国交相は、「適切な工程管理のもと、安全第一で進めるよう指導する」と述べました。
( 赤旗2018/5/22)
動画 https://www.youtube.com/watch?v=R_adjz5RxiQ&list=PL3M7AtnZgh3UwBngS4JL1lVJplHH5b_A4&index=180&t=0s
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
たび重なるNEXCO西日本、新名神高速道路の建設現場の事故について伺いたいと思います。
去る四月二十二日、二〇一六年の有馬川橋桁落下事故から二年たったとして、二度と繰り返さないと刻まれた工事安全誓いの碑が設置されました。
まず、この間、建設工事現場において労働災害に遭われた皆様に、私は心からお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。
この式典後、NEXCO西日本関西支社長は、この事故の後も死亡事故が相次ぎ、断腸の思いだと語っておりますけれども、まさに、二度と繰り返さないどころか、重大事故が繰り返されてまいりました。
三月十八日には高槻ジャンクションから神戸ジャンクションまでが開通したわけですけれども、その後の事故も含めて、この有馬川橋の事故から現在まで、NEXCO西日本が新名神建設現場で起こした重大事故について、これは事務方でいいですので、件数、死者、負傷者数を挙げていただけますか。
○石川政府参考人 お答えいたします。
工事作業員の死亡や第三者被害が発生するなどの重大事故につきまして、平成二十八年四月の有馬川橋橋桁落下事故以降の合計で、事故件数は六件、死者数は六名、負傷者数は八名となっております。
○宮本(岳)委員 きょうは、それを一覧にして配付をいたしました。
配付資料一を見ていただきたい。およそ二年の間に、六件もの事故、六名のとうとい命が失われております。また、重大事故にはカウントされておりませんが、五番と六番の間、昨年十一月十四日にも、兵庫県猪名川町で鋼材落下で負傷者が出ております。
先日の開通式には石井大臣も出席されておりました。まず確認いたしますけれども、もちろん大臣も、このような痛ましい事故はあってはならない、こうお考えだと思いますが、よろしいでしょうか。
○石井国務大臣 新名神高速道路の建設工事におきましては、平成二十八年四月以降で六件の重大な事故が発生をいたしまして、六名の作業員の方が亡くなられております。
亡くなられた方に対しまして、心より御冥福をお祈りを申し上げます。
国土交通省といたしましては、これらの事故の発生のたびに、NEXCO西日本に対しまして、安全確認及び再発防止の徹底的な対応を繰り返し指示をしてきたところであります。
また、NEXCO西日本においては、当該工事及び関連する工事を一旦中止し、事故原因の究明と再発防止策を講じた上で工事を再開してきたところでありますが、結果として重大事故が相次いで発生していることは、大変遺憾と考えております。
建設工事におきまして作業員の安全確保は当然のことであり、高速道路会社には安全対策に万全を期していただきたいと考えております。
○宮本(岳)委員 ところが、資料一の最後の事故を見ていただきますと、六番というのですけれども、これは、三月十八日の高槻―神戸間の開通直前の三月十五日、今度は高槻―八幡間の工区で事故がありました。淀川にかける橋のための仮桟橋から作業員が足場ごと落下したものでありまして、私は去る四月九日、枚方市の事故現場に行って、この目で確かめてまいりました。
配付資料二を見ていただきたい。私が事故現場で撮影した写真であります。
事故のたびにNEXCO西日本は技術検討委員会や安全対策本部会議を開催し、注意喚起を行っております。現場には「5S運動実施中」という大きな看板があり、発注者のNEXCO西日本、元請業者ともに、安全帯のフックの二丁がけも励行されておりました。しかし皮肉なことに、この事故ではそれがあだとなってしまったんです。
配付資料三を見ていただきたい。私が現場でNEXCO西日本から提出を受けた事故現場の写真であります。
先端が水没しているのが作業員の落下した足場でありますけれども、これは手前のAと同じように、Bのブラケットも先の橋脚のCというところに溶接されておりました。その先端に作業員が乗って作業していたところ、溶接が外れて、足場とともに深さ四メートルの水中に転落。逆にフックを二丁がけしていたがために、足場とともに水没し溺死をしたという、まことに痛ましい事故でありました。
国交省はこの事故の発生要因を把握しておりますか。
○石川政府参考人 お答えいたします。
今委員御指摘のように、事故の状況は、淀川橋の橋脚基礎を施工するため、仮桟橋の組立て作業を行っていたところ、仮桟橋に溶接していた鋼材が剥がれ、鋼材上で作業していた作業員の方が鋼材とともに河川内に落下したものでございます。
事故発生要因といたしましては、NEXCO西日本からは、当初の施工計画で予定していました鋼材設置用の鉄船、これは河川側から工事をするための工事用の台船でありますけれども、及びその鉄船のオペレーターが手配できなかったことから、受注業者において鉄船を使用しない不安定な工法に安全性の照査を行うことなく変更され、その結果、鋼材と仮桟橋を溶接でつなげていましたブラケットに荷重が集中したことから、鋼材が剥がれて落下したものと聞いております。
○宮本(岳)委員 今の説明、資料四に出ております。配付資料四です。
これはいただいたものでありますけれども、まずは鉄船を用意して、二本のくいで安定させてから初めて作業員が足場に乗るという施工計画だったものを、鉄船も用意せずに、右のような危険な作業に勝手に変更されていた。
確かにけしからぬ話でありますけれども、業者が不心得者だったということで済ませるわけにはいかないと思うんです。工期設定の重圧が現場を焦らせて、施工計画の勝手な変更や作業工程の省略を招いた。こういうことではありませんか。
○石川政府参考人 お答えいたします。
先ほどお答えしましたとおり、淀川橋工事では、受注業者において、当初の施工計画で予定していた工法を安全性についての照査を行うことなく不安定な構造に変更したことが事故の発生要因と伺っております。
○宮本(岳)委員 いや、だから、確認することなく勝手に変更したのは、工期に追われて焦っていたのではないかということを申し上げているんです。
資料五というものを見てください。これは、国土交通省水管理・国土保全局から提出を受けた、今回の事故現場、淀川橋の作業工程表であります。
この工程表によりますと、この仮桟橋工事は一月中に完了していなければならないはずだったわけでありますけれども、事故が起きたのは、先ほどもあったように三月十五日でありまして、大幅におくれておりました。
その一方で、今の資料五の大きい方の赤丸にはっきり書き込まれておりますけれども、淀川の第一出水期は六月十六日から十月十五日までとなっております。出水期は河川の中の工事ができないので、この六月十六日までに工事を終えなくてはなりませんでした。お尻が切られている中で、工期を気にする余り、工程を変更したということではないんですか。
○石川政府参考人 お答えいたします。
淀川橋工事におきましては、委員御提出の資料にありますとおり、平成二十九年七月の河川協議等におきまして、P10橋脚の仮桟橋を平成三十年一月までに設置した上で、橋脚基礎工事に移行する計画でございました。
しかしながら、その後の工事進捗を踏まえまして、平成三十年一月に受注会社からNEXCO西日本に提出された施工計画書では、P10橋脚の仮桟橋は平成三十年四月までに設置をして、橋脚基礎工事に移行する計画に変更されております。
このように、工事途中におきましても、現場の具体の工事進捗に応じまして、受発注者の協議の上で現実的な工程に随時見直しておりまして、当初設定した工程をかたくなに固持しているものではないとNEXCO西日本より聞いております。
○宮本(岳)委員 NEXCO西日本はそういうふうに言うと思うんです。
ただ、私は、現場の労働者やゼネコン関係者からもこの間、話を伺ってまいりました。確かに元請が請け負った道路は供用開始日に間に合えばいいかもしれないけれども、下請になればなるほど作業は細かく区切られ、納期に間に合わないと仕事を切られるというおそれから、何が何でも間に合わせるという構造になっている。
元請であるゼネコンにしても、旧道路公団、旧国鉄の工事は、利益は薄いそうなんですが、売上高が大きい。一件請け負うと営業目標の達成率が高くなって、そして、受注をとるためには発注者の無理難題を聞かざるを得ない状況だ、こういう現状もあるというふうに語っておられました。
これだけ繰り返されるということはどこかに無理が生じていると私は思うんですけれども、大臣、現場の声でいうと、やはりそういうひずみが現場にある、また、ありはしないかとしっかり見る必要があると思うんですが、大臣いかがでしょうか。
○石川政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げましたとおり、現場の具体の進捗に応じまして現実的な工程を随時見直しておりますので、そのあたりは適切に管理されていると認識をしております。
○宮本(岳)委員 適切だったらこんなに繰り返されないんです。六人もの方が亡くなっているんですから、適切であるはずがないと言わなければならないと思います。
事故直後にNEXCO西日本は、安全対策のためといって、落札評価を変更いたしました。このときNEXCO西日本がとった、落札評価が不利になる措置というのは一体どのような措置なのか。工事関係者について、NEXCO西日本はホームページに何と書いてありますか。
○石川政府参考人 お答えいたします。
NEXCO西日本におきましては、工事安全対策の取組を一層強化するため、当該工事の工事成績評定の減点、指名停止措置という従前の措置に加えまして、本年の五月に工事の総合評価落札方式の改定を行いまして、社会的影響のある工事中事故を起こしている者がNEXCO西日本の新たな工事に入札をしようとする際、著しく不利となるように設定をしております。
この社会的影響のある工事中事故とは、具体的に、入札公告から過去二年以内に発生した事故であって、第一点目、工事中事故により第三者に死者が出た場合又は第三者に重症者が二名以上出た場合、二、工事関係者の死者が二名以上出た場合、三、公共施設等への甚大な損害を与えた場合、いずれかに該当するものとなっております。
○宮本(岳)委員 今の二だけ答えてくれとお願いしたんですけれども、過去二年間に工事関係者の死者が二人以上出た場合、こうなっているんです。
これに私は大変驚きましたよ。死者二名以上なら落札評価が不利になるんだけれども、死者一名ならば落札評価を下げもしない。言語道断だと言わなければなりません。
大体、猪名川町広根の転落死亡事故は午後十一時四十分、昨年の下止々呂美の転落事故で十九歳の作業員が死亡したのは午前四時過ぎ、滑りやすい集中豪雨のもとでの作業で、前後の期間、昼夜二本の工事を並行させておりました。危険な夜間作業をせずとも、工期延長して昼間に作業することもできたはずだと思うんです。
ことし三月十六日、一番最初の重大事故である有馬川橋桁落下事故について、業務上過失致死傷の疑いで、元請業者横河ブリッジの当時の現場所長ら四人が書類送検されました。報道によりますと、事故の数日前から地盤沈下しているのを把握しながら、早く工事を終わらせたかったと工事を続行したとされております。
NEXCO西日本は、二〇〇九年、新名神の起工式で、供用開始二年前倒しを発表いたしました。そもそもこの工期の前倒しが、現場にとっての重圧となり事故に結びついた、事故が繰り返される遠因になっているのではないか、私はそう思いますが、いかがですか。
○石川政府参考人 お答えいたします。
新名神高速道路の高槻ジャンクションから神戸ジャンクションの間の開通目標につきましては、平成二十一年に、用地取得や文化財調査などの進捗が順調に図られることを前提として、NEXCO西日本が平成二十八年度を目標とする旨を発表したものと聞いております。
なお、工事工程につきましては、適正な時期に発注し、また、適正な工期を確保することを前提として、全体工事計画を組み立てたものと聞いております。
○宮本(岳)委員 だから、適正でないから事故が起こっていると言っているじゃないですか。
現場で働く作業員の方々からも直接話を伺いました。納期、工期設定の期間設定がもともと短過ぎる。事故が起きないように人命尊重、人命優先のはずなのに、余裕のない工期、納期になっている。そのため、雨の日に外で電気工事をするといったことが行われている。報道される事故内容は信じられないぐらい防げる事故だ。同じ工区でこれだけ繰り返されるのは異常としか言えない。NEXCOやゼネコン大手への抜本的な手だてが行われなければ変わらないだろうと話しておられます。現場労働者の声が真実を語っていると思うんです。
国交省はNEXCO西日本を監督指導する立場にありますけれども、立て続けに事故が起こり、工期設定に無理はないかなどを改めてつかんで指導するということはやらなかったんですか。
○石川政府参考人 お答えいたします。
新名神高速道路を始めとするNEXCOが施工する工事の工程につきましては、受注者と発注者で協議して変更を行うことが可能とされております。
国土交通省としては、適正な工期設定は当然のことでございまして、一方で、新名神の工事におきましては、作業員の不安全行動による事故等が発生したことから、NEXCO西日本に対して安全確認及び再発防止の徹底的な対応を繰り返し指示してきたところでございます。
さらに、国土交通省といたしましては、公共工事の品質確保の促進に関する法律に基づく発注関係事務の運用に関する指針、建設工事における適正な工期設定等のガイドライン等を、高速道路会社に国土交通省公共工事等発注機関連絡会議等を通じて周知をすること等によりまして適正な工期の設定を徹底しているところでございます。
○宮本(岳)委員 六名ものとうとい命が奪われているわけです。
国土交通省は事故のたびに事務連絡を出しておりますけれども、それでも一向に根絶されていないわけです。
これも大臣に御決意をお伺いいたしますけれども、NEXCO西日本に対して今後ともしっかり指導監督していく、その御決意をひとつお聞かせいただきたいと思います。
○石井国務大臣 新名神高速道路におけます一連の事故を受けまして、国土交通省といたしましても、高速道路会社や建設業団体等に対し、直接、安全対策に関する注意喚起等を行っております。
また、NEXCO西日本におきましては、受発注者が一体となって、現場への監視員の配置等による不安全行動の直接防止、リスクの事前抽出や安全対策の二重化などフェールセーフの実施、新規入場者を中心とした安全教育の強化などの再発防止策に取り組んでいると聞いております。
こうした再発防止策は、元請企業はもとより、下請企業の作業員に至るまで、全ての工事関係者に周知され、遵守徹底されることが必要と考えております。
国土交通省といたしましては、国直轄事業はもとより、NEXCO西日本を始め高速道路会社六社に対しましても、適切な工程管理のもとで安全第一に工事を進めるよう、引き続き指導をしてまいります。
○宮本(岳)委員 今回取り上げた新名神高槻―八幡間のルートをめぐっては、私には特別の思いがございます。
このルートは、十四年前の二〇〇四年五月二十日、私が、参議院国土交通委員会において、道路公団民営化関連四法案の質疑の際、当時の石原伸晃国土交通大臣に対し計画中止を求めた二区間三十五キロに当たる区間です。
当時の石原大臣は、この三十五キロに限らず、抜本的見直し区間の五区間百四十三キロ、これは現行の計画のままで整備を進めることはないなどと大見えを切りました。
よもや十四年たって、結局は当初計画どおり全部つくることになり、ましてや、その工期の前倒しによってこのような痛ましい死亡事故が起こり、十四年後のきょう、国土交通委員会で自分が質疑をすることになろうとは、ゆめゆめ思いませんでした。
NEXCO西日本に発注者責任を果たさせることや国土交通省の指導監督は当然でありますけれども、この際、改めて、高槻ジャンクションから大津ジャンクションまでの二区間三十五キロというようなものはきっぱり見直すことを求めて、私の質問を終わります。