日本共産党議員の国会質問 鉄道軌道法案 過大な地元負担避けよ 宮本岳氏が求める 全会一致で可決
衆院国土交通委員会は5月30日、自民党など6会派提案の鉄道軌道整備法改正案を全会一致で委員会提出法案とすることを決め、可決しました。
改正案は、赤字経営の鉄道事業者に限定されていた災害復旧費用補助の適用を黒字経営の事業者の赤字路線にも拡大するものです。
採決に先立つ質疑で宮本岳志議員は、復旧が鉄道事業者の判断に委ねられ、復旧しない場合は法改正の趣旨が生かせないと指摘。自治体や住民が望む復旧を鉄道事業者に迫る効果があるかとただしました。提案者は「法改正により鉄道事業者の負担が軽減され、復旧のインセンティブ(動機付け)になる」と答弁しました。
宮本氏は、昨年被災したJR九州日田彦山線で、復旧を前提とした事業者と自治体の協議会が4月に開かれたものの、復旧費用を解決できれば着工可能だとする自治体側と、復旧後の運行維持策も条件とするJR側とで折り合いがついていない実態を紹介しました。
その上で、「地元の願いは一刻も早い復旧であり、災害支援と引き換えに過大な地元負担を強いることがあってはならない」と指摘し、改正の趣旨に沿った運用がなされるよう求めました。
( 赤旗2018/6/5)
動画 https://www.youtube.com/watch?v=6x62ppE1pp0&list=PL3M7AtnZgh3UwBngS4JL1lVJplHH5b_A4&index=102&t=0s
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
私は、昨年十二月二十、二十一日、豪雨災害に見舞われたJR九州の日田彦山線の現場を調査し、JR九州、地方自治体や住民の皆さんからもお話を伺ってまいりました。その上で、今提案されました鉄道軌道整備法改正案について質問したいと思うんです。
まず国交省に聞きますけれども、この改正法が出されたきっかけとして、豪雨災害で不通になった只見線の復旧問題があると思うんです。只見線を鉄路で復旧させることについてJR東日本は当初どういう考えだったか。そして、長年の沿線住民の声を受けて現在は復旧に向けどういう状態か。簡潔に御説明いただけますか。
○藤井政府参考人 お答えをいたします。
JR只見線につきましては、平成二十三年七月の被災後、当初、JR東日本より、厳しい利用状況に鑑み、バス転換することが望ましいという考えが示されたと承知をしております。一方、地元自治体からは鉄道復旧に向けた強い意思が示され、これを受け、JR東日本より平成二十八年六月に、上下分離方式による鉄道復旧案が提示されたところでございます。
その後、地元自治体における検討、意思決定を経まして、平成二十九年六月十九日に、福島県とJR東日本の間で上下分離方式による鉄道復旧を行うことの合意がなされ、現在、復旧に向けた取組が進められているところでございます。
本年六月に本格的な工事に着手し、工期は約三年程度を想定しているところでございます。
○宮本(岳)委員 そういうことも踏まえた法案だと思うんですが、法案提案者にお伺いをいたします。
本法案は、赤字路線であっても、地域公共交通を守るべきとの趣旨から提案されたものですね。
○菅家委員 お答えを申し上げます。
鉄道軌道整備法において災害復旧事業に関する補助の対象となる鉄道は、速やかに災害復旧事業を施行してその運輸を確保しなければ国民生活に著しい障害を生ずるおそれのある鉄道となっております。このような鉄道は、赤字路線であっても、地域公共交通にとって重要であり、早期復旧を促進する必要があると考えているわけであります。
これを踏まえまして本法案は、このような地域公共交通として重要な路線の早期復旧を促進するため、従来の赤字の鉄道事業者に加え、黒字の鉄道事業者が行う災害復旧事業に対しても、一定の要件のもとで補助を可能とするものであります。
今後は、鉄道事業者が赤字であるか黒字であるかを問わず、災害で被害を受けた赤字ローカル線を支援することが可能となりますので、議員御指摘のとおり、地域公共交通の維持につながるもの、このように考えているところであります。
以上であります。
○宮本(岳)委員 本法案は、赤字路線が激甚災害等の大規模災害を受けた場合に、一定の要件を満たせば、黒字の鉄道事業者であっても補助しようというものであります。
一方で、復旧するかしないかは鉄道事業者の判断ということになっております。新しい補助制度を設けても、その制度を使わず復旧はしないという判断をしてしまっては、法改正の趣旨が生かせなくなってしまうというふうに思うんですけれども、法案提案者、これはどのようにされますか。
○赤羽委員 宮本議員が御指摘のように、現行法では、復旧するかどうするか、廃線にするかというのは、鉄道事業者が最終的に判断するというこういう整理になっておりますが、地元自治体や地元住民はもとより、鉄道事業者も、地域の生活の足である、ローカル線といえども、鉄道事業を復旧したいという思いは強くあるわけであります。
しかしながら、一方で採算がとれない路線もたくさんあるというのは、東日本大震災の折にも、また九州北部ですとか、どうしても地方部というか、人口減少地域の鉄道事業を維持するというのは大変だというのも、これもそういった事実もございますが、その中で何とか地域住民の思いをかなえて鉄道事業を再開させていきたい、その地域住民と鉄道事業者の合意形成を後押しして、地域にとって必要な鉄道が維持されることに寄与することが今後の法案は期待されるもの、そう認識をしております。
○宮本(岳)委員 ありがとうございます。
本法案はそういう趣旨に沿って進めるものという御答弁でありましたけれども、復旧を望む地方自治体や地域住民にとって、鉄道事業者に復旧を迫っていく新たなツール、こういう効果があるかどうか。
私はそれを期待するわけですけれども、法案提案者にお答えをいただきたいと思います。
○盛山委員 宮本委員だけではなく、我々法案を提出する者全員、そういうことを期待してこの法案を提出しているわけでございますので、今回の法改正によりまして鉄道事業者に対する補助制度を追加しようということを我々考えておりますし、また、この補助を受けることで、赤字路線の復旧に当たっての鉄道事業者の負担が軽減されることになる。つまり、前に向けてこれを復旧させるというインセンティブになります。
こういったことにより、復旧を望む地方公共団体、そして、何よりもその地域の住民の方々からの要望に対しまして、鉄道事業者はこういった御要望に応えやすく、応じやすくなると考えております。
この法案は、復旧を望む地方公共団体、地域住民にとって、鉄道事業者に復旧を求める上でその後押しとなり得るものである、宮本委員の御発言のとおり、我々も考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 ありがとうございます。
この改正案の適用となるのが、私が現地調査したJR九州の日田彦山線であります。
調査に入った際、JR九州は、復旧のめどや決意を示さないばかりか、九州全体で減便の方針を打ち出し、青柳社長の、継続できる方針の見えない路線に対して投資はできないとのインタビュー記事が出て、自治体や住民からは不安や怒りが表明されておりました。
四月になってようやく鉄道での復旧を前提にした協議会が開かれましたけれども、費用の問題をクリアできれば着工可能とする自治体側と、復旧後の運行維持策も条件とするJR側とで折り合いがつかなかったと、地元紙大分合同新聞が報道しております。
地元の願いは一刻も早い復旧であります。災害支援と引きかえに過大な地元負担を強いることがないよう、交付基準等に盛り込むことを求めたいと思います。
なお、採決の後、鉄道の災害復旧に関する決議案が提案されることになっております。
私は、災害復旧に当たって鉄道事業者と地域全ての関係者の間での協議が行われる環境を整備することや、支援の拡充、減災・防災事業に万全を尽くすことにもちろん賛成でありますけれども、先ほどただしたように、鉄道事業者が経営を理由に復旧しないという判断をしてしまえば、法改正の趣旨が生かされなくなります。
決議案の一つ目の、鉄道事業者の民間事業という立場を踏まえ、その経営判断の主体性にも十分配慮という文言について削除をお願いしましたけれども、残念ながら実りませんでした。
その場合、それを残せばそうした余地を残す危険があり、残念ながら賛成できないということを申し上げて、私の発言を終わりたいと思います。