財源確保責任もとめる
衆院総務委 地方財政で宮本岳志議員
日本共産党の宮本岳志議員は21日の衆院総務委員会で地方税法等改定案について質問し、住民の命と暮らしを守るために国が地方財政の財源確保の責任を果たすよう迫りました。
宮本氏は、地方の財源不足をうめる「臨時財政対策債」(臨財債)は、地方財政に対する国の果たすべき責任を投げ捨て、赤字地方債を自治体に押し付ける形で導入され、3年間の特例措置と言いながら21年も続いたと批判。自治体にとっては借金まみれに見えることから、自分たちでサービスを切り捨てていると指摘し、「住民の命や暮らしを守る本来の仕事を投げ出しては本末転倒だ」とただしました。
金子恭之総務相は「22年度の地方財政計画で臨財債の発行額を抑制できた」などと答えました。
宮本氏は、抑制は当然だと述べたうえで、自治体の歳出である一般財源総額を前年度と同水準に抑え込む「前年度同一水準ルール」が医療や公衆衛生などを拡充する制約になっているとして、「きっぱりやめるべきだ」と主張。地方交付税の法定率の引き上げや、一般会計から加算して必要額を確保するなど、国が財政責任を果たすよう強く求めました。
地方交付税法改定案は自民党、公明党などの賛成多数で可決されました。反対討論に立った宮本氏は、自公政権が「同一水準ルール」に基づき、社会保障費の抑制や地方公務員の削減などを続けていると批判。10年以上続く地方財政抑制策を「抜本的に見直すことが必要だ」と主張しました。
(しんぶん赤旗2022年2月22日)
動画 https://youtu.be/wnz4mqO5Xis
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
法案審議の締めくくりに当たって、地方交付税制度と地方財源論について、大臣と大きな議論をしたいと思います。
最初に大臣に確認するんですけれども、地方交付税は地方の固有財源であり、そこには財政調整機能と財政保障機能という二つの役割がある、これは大臣もお認めいただけますね。
○金子(恭)国務大臣 宮本委員にお答え申し上げます。
社会保障や教育など住民に身近な行政サービスは、そのほとんどが国の法令などに基づき自治体により提供される一方、税源の偏在により、自治体間で地方税収には大きな格差があります。
こうした中で、地方交付税は、宮本委員御指摘のとおり、自治体間の財源の不均衡を調整する財源調整機能とともに、全国どのような地域であっても一定水準の行政サービスを提供するために必要な財源を保障する財源保障機能を果たしており、重要な役割を担っていると認識しております。
また、このような地方交付税の性格としては、形式的には国税として国が代わって徴収した上で自治体に配分するものであり、国税の一定割合が自治体に法律上当然帰属するという意味においても、地方の固有財源と位置づけられるものであります。
○宮本(岳)委員 自民党政権は、一九九〇年代以来、総額六百三十兆円にも及ぶ公共投資基本計画を策定し、この国策に地方を巻き込んでまいりました。この公共投資基本計画は、日米構造協議に端を発したものであり、国民の必要からでなく、総額先にありきというべき、無駄と浪費の典型的な計画でありました。この無謀な政策が行き詰まる中、当初は地方交付税特別会計の借入れでしのいできた政府は、いよいよ国の借金が膨らみ、ついに地方財政に対する国の果たすべき責任を投げ捨てて、地方の赤字地方債に押しつける臨時財政対策債を導入したわけであります。
二〇〇一年に三年間の特例措置として入れられた臨財債は、その後も三年ごとに延長され、今日までもう二十一年間続いてまいりました。最初の延長が問題になった二〇〇三年の通常国会、当時私は参議院議員でありましたけれども、三月二十五日の参議院総務委員会で、当時の片山虎之助総務大臣に、国の借金を臨時財政対策債につけ替えるのは国の責任放棄だと厳しく指摘をいたしました。
質疑の中で、当時の総務大臣は、交付税特会で借金をしているのをばらした借金にしたと、これだけの話、この赤字地方債は全部将来の交付税で返すんですから、元利償還のときは丸々入れるんですから、基準財政需要に、だから、形を変えた交付税だと考えていただいていいと私に答弁をいたしました。
私は、本来国が責任を持つべきものを地方の赤字地方債に押しつけるというこのスキームでは、幾ら大臣が形を変えた交付税だと言っても、やがて臨財債の累積残高が膨れ上がれば借金まみれに見えてしまい、自分たちでどんどん本来のサービスを切り捨てる、つまり、地方交付税制度の大切な機能である財政保障機能を自ら投げ出すことになると指摘し、反対をいたしました。
金子大臣は、臨時財政対策債の抑制は国と歩調を合わせた歳出削減によるものと、その成果を殊更に強調されます。しかし、大事なことは、このコロナ、オミクロンの感染爆発から住民の命、暮らしを守り、これを支える医療、公衆衛生を始めとする公的部門の基盤の再構築、保健所職員を始めとする必要な自治体職員の増員を図ることであります。
大臣も、たとえ臨財債の発行が減ったとしても、住民の命や暮らしを守るという自治体本来の仕事を投げ出してしまったのでは本末転倒であるということはお認めになっていただけますか。
○金子(恭)国務大臣 宮本委員にお答え申し上げます。
令和四年度の地方財政計画では、その歳出において、地域社会のデジタル化などに対応するために必要な経費を計上するとともに、社会保障関係費の増加を適切に反映いたしました。その上で、一般財源総額について、交付団体ベースで、令和三年度を上回る六十二兆円を確保いたしました。
令和四年度の地方財政計画において臨時財政対策債の発行額を抑制できたのは、地方税や地方交付税法定率分が増加したこと、令和三年度からの繰越金があったことにより、折半対象財源不足が解消されたことなどによるものでございます。
○宮本(岳)委員 もちろん、臨時財政対策債の削減を私が反対するわけはないんです。導入のときにあれだけ反対を叫んで当時の片山大臣と論戦したんですから、当然のことであります。しかし、それは、国が地方財政に対する財政保障の責任を果たすことによってであり、必要なサービスを切り捨てたのでは本末転倒だということを申し上げているわけですね。
その点では、大臣、社会保障の自然増を始め、必要な財政需要をいわば反映しないと私たちは考える一般財源総額実質同水準ルール、これが、今必要とされる医療や公衆衛生、福祉や教育を拡充する上で大きな制約になっていると私は思います。
大臣、今こそ、前年度同一水準ルールというものはきっぱり見直すべきではありませんか。
○金子(恭)国務大臣 宮本委員には御持論をいつもお聞きさせていただいているわけでございますが、基本方針二〇二一におきましては、地方の一般財源総額については、令和四年度から六年度までの三年間、令和三年度地方財政計画の水準を下回らないよう、実質的に同水準を確保することとされています。この一般財源総額実質同水準ルールにつきましては、地方六団体から堅持すべきとの強い要望を受けまして基本方針二〇二一に盛り込まれたところであり、地方からも評価をいただいております。
また、このルールでは、地方の歳出水準について、国の一般歳出の取組と基調を合わせつつ、社会保障関係費や公債費の動向などの増減要素を総合的に考慮し、地方の安定的な財政運営に必要な一般財源総額を確保していくという趣旨でございます。
今後とも、基本方針二〇二一に沿って、地方財政計画の歳出に必要な経費を計上した上で、一般財源総額をしっかりと確保してまいりたいと思います。
○宮本(岳)委員 同一水準ルールというのは、下回らないとおっしゃる限りにおいては、それは当然ですよね。しかし、同一水準というものですから、上回らないキャップとしては今働いているということを私は指摘せざるを得ないわけであります。
本来国が責任を持つべきものを地方の赤字地方債に押しつけるというこの臨財債のスキームが、既に破綻をした、もうこれがその役割を終えようとしているときでありますから、最初に確認した地方交付税の二つの役割、財政調整機能と財政保障機能に改めて国が責任を持ち切るという制度の原点に立ち返るべきだと思うんですね。
その点では、地方交付税の法定率の引上げ、まあ、法定率の引上げは様々な事情があって簡単ではないとすぐおっしゃるわけですが、同時に、必要ならば国の一般会計からの加算という制度も交付税法の中には定められております。地方の必要額を国において確保するのは当然のことではありませんか、大臣。
○金子(恭)国務大臣 宮本委員からは一貫してそのことを承っております。
地方財政の健全な運営のためには、本来的には、委員御指摘の交付税率の引上げなどによりまして地方交付税総額を安定的に確保することが望ましいと考えております。
交付税率の引上げや財源不足の全額を補填するような国の一般会計からの加算につきましては、現在、国、地方共に厳しい財政状況にあるため容易ではありませんが、今後も、交付税率の見直し等により地方交付税総額を安定的に確保できるよう粘り強く主張し、政府部内で十分に議論してまいりたいと思います。
ありがとうございます。
○宮本(岳)委員 導入するときには、総務大臣が、形を変えた交付税だと私に言ったわけですから。
臨時財政対策債の累積残高が五十三兆円に膨れ上がったのも、年々の元利償還額が四兆円を超えたのも、決して地方の責任ではありません。冒頭に確認した財政調整機能と財政保障機能という二つの役割に国が責任を果たすことを強く求めて、私の質問を終わります。
―――――――――――――
○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表して、地方税法、地方交付税法等の改正案に反対する討論を行います。
まず、交付税法についてです。
コロナ禍で、地方行財政の在り方、十年以上続く地方財政の抑制政策を抜本的に見直すことが必要です。
しかし、自公政権は、地方の歳出を前年度と同一水準に抑え込む一般財源総額実質同水準ルールを続けています。そのルールに基づき、本法案は、社会保障費の抑制や地方公務員の削減とアウトソーシング路線を継続するものであり、反対です。
保健師や児童福祉司等の増員のための交付税措置も、他の一般財源を削減、抑制した範囲の措置にすぎず、深刻な現場の実態に応えたものにはなっておりません。新たな臨時財政対策債の発行抑制も、地方税の増収と、歳出削減を強いた結果です。
その一方で、本法案は、岸田政権が掲げる自治体デジタルトランスフォーメーションの推進を地方に迫るものになっています。
質疑で私が指摘したように、社会保障や公衆衛生を始め、住民の命と暮らしを守り、支えるために、財政需要を十分に算定し、地方交付税の法定率の引上げ等を行うことこそ求められています。
次に、地方税法についてです。
格差と貧困が広がる下で、地方税においても生計費非課税の徹底や所得再配分機能の強化などが求められています。しかし、本法案はこれに応えるものではありません。
二〇二一年度に据置措置が行われた土地の固定資産税について、二〇二二年度はその措置を取り払い、商業地や住宅用地、農地等に係る課税標準額は引き上げられます。国民にとって増税であり、反対です。
岸田政権が目玉政策とする賃上げ促進税制は、賃上げを保証するものにはなっておらず、対象も限定されています。賃上げ実現のためには、大企業の内部留保を活用させること、中小企業支援と一体に、最低賃金を時給千五百円に引き上げること、正規雇用を増やす労働法制の抜本的改革こそが必要です。
地域医療構想に基づき再編を行った医療機関の不動産取得税の特例は、地域医療機関の再編統合を進めるために地方税制の面から後押しするものです。命を守る医療体制確立への地域での検討が求められます。
以上を指摘して、反対討論といたします。(拍手)