高等教育の無償化を
衆院委 宮本岳志議員が求める
日本共産党の宮本岳志議員は2日の衆院文部科学委員会で、新型コロナウイルス感染症の影響で経済的に困窮し学業が続けられない学生が増えている現状を踏まえ、高等教育の無償化や奨学金制度の改善を求めました。
宮本氏は、文科省調査で、コロナの感染拡大で学業を断念せざるを得ない学生が9カ月間で7800人となり、昨年度の5800人から2000人も増えたと強調。国際人権条約が定める高等教育への「無償教育の漸進的な導入」の留保撤回から10年目を迎えたものの「学費は下がっていない」として、「国際条約上の責任を果たしたといえるか」とただしました。
文科省の増子宏高等教育局長は「真に支援が必要と考えられる学生に対し減免されるよう支援を行う」と答弁。宮本氏は「すべての学生を支援するのが条約の趣旨だ」と強調しました。
また宮本氏は、有利子奨学金貸与者を全て無利子にするのに必要な予算はわずか267億円だとして、一般会計からの利子補給は当然だと主張。日本学生支援機構法施行令は「支払い能力があるにもかかわらず」「返還を著しく怠った」場合にのみ一括返還を求める規定になっている一方、返還者への説明資料には支払い能力についての記載がなく、「説明が不十分なまま法的措置に踏み込むのは不誠実だ」と指摘しました。末松信介文科相は「分かりやすい通知文書にしていきたい」と述べました。
(しんぶん赤旗2022年3月3日)
動画 https://youtu.be/i-khsLLGV8o
配布資料 20220302文科委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
今日は、コロナの下で経済的に困窮し、学業が続けられない学生が増えている現状を踏まえて、学費軽減と奨学金問題について大臣と議論したいと思います。
まず、昨年四月から十二月で、コロナ禍による影響で全国の大学や短大、専門学校などで中途退学や休学をした学生は何人と掌握しておりますか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
文科省におきましては、今年度の四月から十二月までの全国の大学、短大における学生の中退、休学の状況を調査したところでございます。
中退者数は二万九千七百三十三人、休学者数は六万四千七百八十三人となっております。これらの昨年度の数字につきましては、中退者が二万八千六百四十七人と、昨年度と比べ、今年度は僅かに増えております。休学者が六万五千六百七十人と、今年度は僅かに減っているという状況でございます。
そのうち、新型コロナウイルス感染症の影響によるものだと回答があった中退者数は千九百三十七人、休学者数は五千八百五十五人となっております。これらの昨年度の値は、中退者が千三百六十七人と、昨年度と比べ、今年度は一・四倍、休学者が四千四百三十四人と、昨年度と比べ、今年度は一・三倍となっている状況でございます。
○宮本(岳)委員 資料一を見ていただきたい。
学生に何の責任もないコロナ感染の拡大によって、学業を断念、中断せざるを得ない学生が九か月間で七千八百人ですから、昨年の五千八百人に比べても二千人も増えております。
文部科学大臣に聞きますけれども、大臣は、先日の所信で、幼児期から高等教育まで切れ目ない形で、教育の無償化や負担軽減を着実に実施すると述べられましたけれども、未来を担う学生や若者が、コロナ禍で経済事情や精神的なストレスによって学びの機会が奪われることがあってはならない、この立場に変わりはないですね。
○末松国務大臣 それは、先生、全く変わりはございませんです。
先生御指摘のとおり、コロナ禍にあって、学生等が安心して学ぶことのできる教育環境、それを確保することは大変重要でございます。
このため、文科省では、高等教育の修学支援新制度や日本学生支援機構の貸与型奨学金において、コロナの影響等で家計が急変した世帯については直近の所得に基づいて採用の判定を行うなど、きめ細やかな支援を行うとともに、令和三年度補正予算で、コロナの影響で厳しい状況にある学生等の学びを継続するための緊急給付金の支給を行っているところでございます。六十七万人に対して、七二%相当に支給が完了しているはずでございます。
また、各大学に対しまして、学生へのメンタルヘルスケア、これは細かく説明しませんが、確認をいたしました。いろいろやっておられます、大学も。学生から相談しやすい体制の構築、新入生を始め、学生生活に悩み、不安を抱えた学生の把握、カウンセラーや医師等の専門家との連携とか、学生に寄り添ったきめ細かな対応をお願いしているところでございます。
○宮本(岳)委員 そういうことをこれから議論をしたいと思っております。
国民の学習権の保障と教育の機会均等は、日本国憲法二十六条に定められた大原則であります。
同時に、資料二を見ていただきたい。
二〇一二年九月十一日、日本政府は、一九七九年に国際人権A規約を批准しながら、三十三年間も受入れを拒み続けてきた十三条二項(b)、(c)、中等、高等教育の漸進的無償化条項の留保の撤回を国連事務総長に通告をいたしました。
外務省に確認をいたします。
この留保撤回以降は、条約に定められた高等教育の無償教育の漸進的な導入に拘束されることになりますね。また、この無償教育の漸進的な導入は、全ての大学生が対象ということでよろしいですね。
○有馬政府参考人 お答え申し上げます。
我が国は、社会権規約の締結の際に付した留保を撤回した平成二十四年九月十一日から、同規約の高等教育に関する第十三条2(c)の規定に言う、「特に、無償教育の漸進的な導入により、」に拘束されることになる。また、これは全ての大学生を対象に含めている。含めております。
○宮本(岳)委員 漸進的な導入ですね。
今年は、留保撤回からちょうど十年目の節目の年であります。高等教育への無償教育の漸進的導入、つまり学費の無償化は、憲法など変えなくても、日本政府は既に十年前から国際条約上の責任を負っているわけであります。
ところが、学費は下がっておりません。私学はもちろんのこと、国立大学でさえ、この間、五大学、大学院が授業料の値上げを行いました。三大学、大学院の一部の学部、研究科において、授業料の値上げが行われました。
文部科学大臣、これでは国際条約に逆行しているのではありませんか。いかがですか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
特に私立大学の授業料につきましては、各学校法人の判断で設定されておりまして、近年緩やかな上昇が続いているのは事実でございます。
また、国立大学の授業料につきましては、文部科学省令で標準額を定めておりまして、平成十七年度以降額を据え置いているものの、一部で、経済的支援の充実と併せて値上げをしている大学もあるのも事実でございます。
一方で、令和二年四月から開始されました高等教育修学支援新制度におきましては、真に支援が必要と考えられる低所得世帯の学生に対しまして、確実に授業料が減免されるよう、大学を通じた支援を行うとともに、学生生活の費用をカバーするために十分な給付型奨学金を支給するものでございまして、全体といたしましては、支援の規模や金額が大幅に拡大しておりまして、高等教育の漸進的無償化の趣旨に合うものと認識しているところでございます。
○宮本(岳)委員 真に支援というのはちょっとひっかかるんですね。全ての学生を支援するというのが国際条約の趣旨ですから、何か、学生の中には支援が必要ない人がいるかのように聞こえてしまいます。
我が党は、これまで、日本の大学、短大、専門学校の学費は世界の中でも非常識に高過ぎると指摘をいたしまして、さきの総選挙でも、一、国が財政補填して、全ての学生を対象に、大学、短大、専門学校の授業料を直ちに半分ぐらいまで値下げするということ、そして二つ目には、入学金制度を廃止すること、三つ目には、本格的な給付型奨学金をつくる、この三つのことを訴えました。
今日は、奨学金制度について聞きたいと思うんです。
今年度予算で予定される奨学金の学生への支給計画は、大学、短大、専門学校等、対象となる学生数に対して、給付型、無利子、有利子、それぞれ何人分になりますか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
令和三年度予算については、対象となる学生数三百六十八万人に対しまして、給付型奨学金は五十万四千人分、無利子奨学金は五十万九千人分、有利子奨学金は七十六万五千人分を確保しているところでございます。
○宮本(岳)委員 学生数三百六十八万人に対して、合計で百七十八万四千人。今日の経済困難を反映して、約半数が何らかの奨学金を受けなければ学費が払えないという状況です。そして、漸進的無償化というけれども、給付型奨学金の恩恵を受けることができるのは、大学院生を除く三百三十万人のうち僅か五十万人余り、一五%ですよ。それも、全額措置されるのは、平均年収二百七十万円以下の住民税非課税世帯のみであります。それどころか、運営費交付金の基礎部分を減らすことで、大学独自の学費減免制度が削減されました。
奨学金問題について、教育未来創造会議の第一回目に配付された資料の中に、奨学金に関するデータがございます。世帯年収四百万から八百五十万の世帯で、返済できるか不安として借りない選択をした学生のパーセンテージはどれだけになっていますか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
先生お尋ねの点につきましては、令和元年度に実施いたしました高校生の進路に関する保護者調査によりますと、世帯年収四百万から六百五十万の世帯では二九・九%、世帯年収六百五十万円から八百万円の世帯では三〇・六%の世帯が、返済への不安を理由に日本学生支援機構の奨学金に応募しなかったと回答していると承知しております。
○宮本(岳)委員 これも資料三につけておきました。中間層の三割もの学生が、返済に不安があるため奨学金の申請ができていない。これでは、中間層への無償化がむしろ後退しかねないと言わざるを得ません。
私は、かねてから、有利子奨学金、金を貸して、元金だけでなく利子まで取るというような制度はおかしいと申し上げてまいりました。給付奨学金が始まった以上、せめて奨学金は無利子が当たり前というふうにすべきだと思います。
有利子奨学金、今低金利ですよ、これを全て無利子にするために利子補給をするという場合、予算に幾ら積めば有利子を無利子に転換できますか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
有利子奨学金の利息収入は、日本学生支援機構の二〇二〇年度決算においては約二百六十七億円であると聞いております。無利子化を行うには、これを毎年度国費で賄う必要がございます。
御指摘のとおり、国費により利子を補給する方法で有利子奨学金の無利子化を行うことについては、将来的に金利が上昇した場合に国の財政支出が増加する、そういう課題がございますので、慎重な検討が必要かなというふうに考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 金利が上がったらまた考えましょう。二百六十七億あればできるんでしょう。給付型奨学金に使う予算は五千二百億ですから、それぐらいのことはやるべきですよね。
そして、貸与型奨学金の方は、依然として、三か月滞納すれば、個人信用情報機関、ブラックリストに登録し、九か月滞納すれば一括返還が求められ、法的措置に移行、最悪の場合は自己破産に追い込まれるという旧態依然の対応が続いております。
今、無利子奨学金には所得連動返済型というものも導入されております。令和二年度の無利子奨学金受給者のうち、所得連動返済型を選択しているのは何人で、何%ですか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
先生御指摘の令和二年度におけます無利子奨学金貸与人数につきましては、四十八万六千四百二十六人となっております。また、そのうち、所得連動返還方式の選択者数は七万八千百二十三人でございまして、選択率といたしますと一六・一%になっているものでございます。
○宮本(岳)委員 返済できるかどうか不安だから借り控えるということがある中で、所得連動返済型、つまり、所得に応じて無理なく返済できるというのはよいことだと思いますけれども。
ここでちょっとこの制度について聞くんですけれども、所得に連動して返済額も下がるというんですから、当然、所得がゼロならば返済額もゼロなのか、また、所得連動返済型で返還期間が延びた場合、定年退職して年金生活になっても年金から返還しなければならないのか。いかがですか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
日本学生支援機構の無利子奨学金におけます所得連動返還方式の場合、最低返還月額が二千円となっているところでございます。また、定年退職後も支払っていただく必要がございますが、経済的に困難な状態に陥った場合には、返済期間猶予制度などございますので、こういう制度を御利用いただくことも可能でございます。
なお、奨学金をもらっている人が死亡又は精神、身体障害になった場合は返還免除ということになるのを申し加えます。
○宮本(岳)委員 大臣、既に、給付型奨学金を五十万とか五十九万のレベルでやっているわけですね。一方では、給付されて返す必要のないという人が五十万人の規模で存在するときに、所得連動だといったって、収入ゼロでも二千円払え、定年になっても年金から払えと。これは私、制度の欠陥じゃないかと思うんですね。もちろん財政的な様々な検討は要るでしょうけれども、これぐらいのことはやはり改めて検討すべきではないですか、大臣。
○末松国務大臣 先生御指摘の所得連動返還方式ですけれども、これは、卒業後半年たって、卒業後の所得に連動して返還月額が決定されることによって、所得が低い状況でも無理なく返還することを可能とする返還方式であり、平成二十九年度から無利子奨学金に導入しているものでございます。
例えば、私立大学の自宅生で貸与月額五万四千円の場合、定額返還方式では返還月額一万四千四百円となりますが、所得連動返還方式ではその所得に応じた返還額となり、特に所得が低い場合、今先生お話あった件ですけれども、返還月額は最低で二千円となります。
このように、返還者にとっては大幅な負担軽減となる一方で、所得の状況によっては返還に長期間を要することになるわけなんですね。
この最低返還月額について、同制度を導入する際の、実は有識者の会議があって、私もなるほどなと思ったのは、返還に対する意識の継続ということがございます。
話はそれるんですけれども、私、阪神・淡路大震災のときに、災害援護資金貸付金というのをお貸しをして、非常に、債務免除、最後は保証人も行方不明になったりとか、いろいろなことが出てきまして大変だったんですけれども、やはり最後は意識という問題がちょっと出てまいりました、神戸市長と財務省の間で。
二つ目は、返還、回収の確保という観点から、所得にかかわらず、今言ったように二千円とすることが適当であるという報告をされたことを踏まえて設定したものでございます。
先生御指摘ありました更なる制度の改善については、財源の確保の観点にとどまらず、定額返還方式を選択した方との公平性や、返還期限猶予等の救済制度が利用可能であることを踏まえて、慎重な検討も必要ではないかということであります。
先生の御意見は承りたいと思います。
○宮本(岳)委員 いや、今検討する必要が私はあると思うんですね。
返済のための、返還に関する意識づけとおっしゃるんですけれども、借りたものは返せとか、返したお金で次の貸し付ける原資になるんだとか、もうずっと聞かされてきたんですよ。
ただ、さっき申し上げたように、五十万人規模で、もらえる、給付される制度をあなた方はつくったわけですよ。つまり、返さなければ次貸せないから返せという論理は、この給付型についてはもう通用しないわけですね。
一方で、そういう制度をつくっておいて、返せ返せと言うときだけは返還に対する意識と言われたら、いやいや、今始まっている給付はもらいっ放しになっているじゃないかと。
いや、もちろん給付型奨学金に異論はないですよ。給付型奨学金をやれやれと言うてきたんですから、やっていただくのは結構ですけれども、それならば、論理が少し変わってくるでしょうと。本当に困窮している場合は、例えば定年退職までいったら、最終的には、もうその先、年金からというようなことはもうなくすとか、あるいはゼロの場合は、やはり所得連動という言葉に照らせば、ゼロにするとか、そういう制度の見直しを是非やっていただきたいというふうに思います。
さて、たとえ給付型奨学金が入ろうが、所得連動返還型が入ろうが、取り残されているのは、既に奨学金を借り終わって、返還が始まった人たちであります。滞納すればブラックリスト、一括返還、法的措置、厳しい取立てが今も続いております。
私は、この問題を二〇一四年三月十九日の当委員会で質問いたしました。吉田高等教育局長だったと思いますが、八年たっても改善が見られておりません。
再度聞きますけれども、この一括返還の法的根拠というのは何なんですか、高等教育局長。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
日本学生支援機構法の施行令第五条第五項におきまして、学資貸与金の貸与を受けた者が、支払い能力があるにもかかわらず割賦金の返納を著しく怠ったと認められるときは、前各項の規定にかかわらず、その者は、機構の請求に基づき、その指定する日までに返還未済額の全部を返済しなければならない、そのように定められているところでございます。
○宮本(岳)委員 施行令五条五項ですね。「支払能力があるにもかかわらず」、これが一つです。二つ目、「割賦金の返還を著しく怠ったと認められるときは、」、この二つの条件となっているわけです。
ところが、卒業が近づくにつれて、返還が始まる直前に返還者に配られるこの「返還のてびき」、これを見ると、皆さんの資料にこの中のものをつけております、資料四、「督促にもかかわらず返還に応じない場合は、返還期限が到来していない分を含め、返還未済額の全額、利子および延滞金を請求します。(「期限の利益の喪失」)」とあります。
しかし、ここには、督促しても返還しない場合はという言葉はありますけれども、支払い能力があるにもかかわらずという肝腎の条件は書かれておりません。
奨学金を貸与する前から返還が始まるまでの間に、日本学生支援機構は、この施行令五条五項を明記した文書を貸与を受ける奨学生に対して示しておりますか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
奨学生に採用された際に配付しております「貸与奨学生のしおり」というものがございます。この百三ページにおいて明示はしております。
○宮本(岳)委員 これが、その「貸与奨学生のしおり」というものでございます。
七十九ページを見ますと、これは資料五ですね、下線部、法的手続では、長期にわたって滞納が解消しない場合には触れていますけれども、やはり、「支払能力があるにもかかわらず」という文言は七十九ページにはありません。どこかと思って探したら、今おっしゃったとおり、資料六につけておきましたが、全部説明が終わった後の資料編百三ページに、それは施行令がそのまま引かれていますから、そこには書いていますよ、五条五項は。施行令ですから。
つまり、細かい字で最後のところにちょちょっと書いて、四行書いているというのがこの全てなんですね。私は、これは本当にひどいなと。
金融庁、今日呼んでおります。
貸金業法では、資料七にあるように、貸金業者は、契約締結前にも契約締結時にも書面の交付が義務づけられております。その内容は、その施行規則によって、下線部、「期限の利益の喪失の定めがあるときは、その旨及びその内容」と明定されております。
一般論として、金融庁に聞きますけれども、貸金業者が期限の利益の喪失の定めの一部あるいは全部を隠して契約を結んだ場合、どのように対応することになりますか。
○尾崎政府参考人 お答えいたします。
貸金業法上、貸金業者は、貸付けに係る契約を締結しようとする場合には、当該契約を締結するまでに、貸付けの金額、貸付けの利率、返済期間、返済回数、期限の利益の喪失の定めがあるときは、その旨及びその内容などの契約の内容を説明する書面を契約の相手方となろうとする者に交付しなければならないとされています。
その法令違反の有無や行政対応の要否、内容については、個々の事実関係に応じて判断する必要があると考えられます。
監督手法としては、貸金業者向けの総合的な監督指針において、検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された書面交付に関する課題等については、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて貸金業法第二十四条の六の十に基づき報告書を徴収することにより、貸金業者における自主的な業務改善状況を把握することとする。
さらに、資金需要者等の利益の保護の観点から重大な問題があると認められるときには、貸金業者に対して、貸金業法第二十四条の六の三の規定に基づく業務改善命令を発出することとする、また、重大、悪質な法令違反行為が認められるときには、貸金業法第二十四条の六の四に基づく業務停止命令等の発出を検討するものとするとされております。
いずれにしても、その法令違反の有無や行政対応の要否、内容については、個々の事実関係に応じて判断する必要があると考えられます。
○宮本(岳)委員 いやいや、貸金業法という、普通の貸金業者でさえ、これだけ厳しく規制されているわけですよ。日本学生支援機構たるものが、奨学金の返還でこんな乱暴なやり方はありません。
日本学生支援機構は、延滞が続いた奨学金貸与者に対し、民事訴訟法に基づく法的措置を行っておりますが、二〇一八年から二〇二〇年度まで、それぞれ毎年どれだけの支払い督促申立てを行っておりますか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
日本学生支援機構の貸与型奨学金の回収におきまして、支払いの督促申立てを実施した件数でございますが、二〇一八年度は八千六十八件、二〇一九年度は七千七百九十三件、最後、二〇二〇年度は六千六百五十二件と伺っております。
○宮本(岳)委員 法的措置は毎年七、八千件に上っております。
資料八は、日本学生支援機構が、ある奨学金貸与者を延滞を理由に裁判所に訴えた際の訴状でありますけれども、最高裁判所から提出を受けたものであります。独立行政法人日本学生支援機構法施行令第五条第五項により、割賦金の返還を怠った者に対しては、返還者が、指定する期日までに約定返還期日未到来分を含む返還未済額の全部を一括して返還させることができる定めであると説明しております。
ここにも、施行令五条五項が定める「支払能力があるにもかかわらず」、この文言がありません。まるで施行令が、支払い能力の有無とは無関係に、割賦金の返還を著しく怠っただけで一括請求を許しているかのように説明しております。
これは、裁判所を欺こうということですか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
決して、裁判所を欺くとかそういう趣旨ではございません。
この第五条五項においては、返済者に支払い能力があるにもかかわらず割賦金の返済を著しく怠ったと認めるときに、返済未済額の全部の返済義務を負うというふうに考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 支払い能力があるかどうかは極めて重大な条件なんですね。
資料九を見ていただきたい。これも、教育未来創造会議の第一回目に配付された資料です。
奨学金返還者の年収分布は、四三%が三百万円以下ですよ。世帯年収三百万円以下といえば、今日では給付型奨学金の支給対象でしょう。日本学生支援機構の規定によっても、返還猶予が受けられる水準なんです。これは支援機構自身の調査結果ですからね。支援機構は、貸し付けている相手が四割程度は支払い能力がないと分かっているんです。
大臣、少なくとも、日本学生支援機構は、この施行令五条五項に明記された文章、すなわち、支払い能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認めるときはという二つの条件をあらかじめ丁寧に貸与を受ける者に説明しなければならない。また、その説明が不十分なまま法的措置に踏み込むのは余りにも不誠実だと思います。大臣、是非とも改善、せめて検討ということを御答弁いただきたい。
○末松国務大臣 御提供の資料等を拝見させていただきましたし、昨日ちょっと目を通しましたら、確かに、本当に小さな字で、眼鏡をかけないと見えない字でああいうことを書いていましたから、やはり見る立場の方のことを考えなきゃいけないし、実際、あの中からあの文言を探せというのは難しゅうございます。そのことを感じております。
返還困難時における救済制度や各種の法的手続について返還者にしっかり御理解いただくということが重要と考えておりますので、先ほど申し上げましたような機構からの連絡に加え、分かりやすい通知文書となるように努めたいということを思います。
やはり分かってもらうことが一番大事でございますので、基本のキと思ってございますから、その点、よく念頭に置きます。
○宮本(岳)委員 貸金業ではないんですから、丁寧な対応を是非しっかり検討して、改善していただきたい、このことをお願いして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。