かんぽ番組 NHK介入 解明迫る
宮本岳志氏「予算賛成できぬ」
衆院総務委
日本共産党の宮本岳志議員は24日の衆院総務委員会で、2022年度NHK予算について質問しました。
かんぽ生命保険の不正販売を告発した番組をめぐり、森下俊三経営委員長が日本郵政の抗議に迎合して上田良一会長(当時)を「厳重注意」した問題について、宮本氏は「事実上、番組編集に圧力をかけた。NHKの自主自律を脅かすもので、この問題が解決されなければ予算に賛成できない」との立場を表明しました。
宮本氏は、監査委員会が「ガバナンス上の瑕疵(かし)があったとは認められない」と結論付けたのに、ガバナンス欠如で「厳重注意」する必要があったのかとただしました。
森下氏は「(NHK執行部の郵政側への対応は)視聴者目線に立っていなかった」と処分を正当化。宮本氏が「上田前会長は『個別番組に絡む形だ』と反論している」と追及すると「前会長がどう受け止めたか、本人の感想の問題だ」と問題をすり替えました。
宮本氏は、議事の全容を公表し「視聴者・国民に判断を仰ぐべきだ」と求めました。
また、五輪反対デモに「お金をもらって動員されている」と、事実に反する字幕が付けられた問題も質問。「NHKに求められるのは自主自律を守り、正確・公平・公正な情報で信頼を取り戻すことだ」と指摘しました。
委員会採決に先立ち、宮本氏が反対討論に立ちました。予算は、自民・公明・立民などの賛成多数で承認されました。
(しんぶん赤旗2022年3月25日)
動画 https://youtu.be/J6pZAiTnU2A
配付資料 20220324総務委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
NHK予算の承認案件ですけれども、我が党は、従来、受信料負担増など国民負担増や経理などの不祥事があった場合、政治家の圧力に屈した場合や会長が不偏不党を脅かす発言を行った場合などを除き、基本的には賛成をしてきております。
しかし、二〇二〇年度、二〇二一年度と二年連続で反対の態度を取ってきたのは、かんぽ生命の不正販売を取り上げた「クローズアップ現代+」をめぐって、当時の日本郵政の鈴木副社長からの抗議を受け入れて、予定していた第二弾の放送番組を取りやめ、先送りし、さらには、経営委員会がNHK会長に厳重注意を行い、事実上、番組編集に圧力をかけたからであります。
経営委員会の行為は、放送番組は何人からも干渉されないとする放送法三条に違反し、公共放送たるNHKの自主自律を脅かすものであり、断じて許されないと考えます。
したがって、この問題が解決されたことを確認しなければ、到底予算の承認に賛成することにはなりません。
今日は、資料をお配りいたしました。
資料一は、かんぽ不正報道問題の経緯について、総務委員会調査室が作成した資料であります。「クローズアップ現代+」が放送された二〇一八年四月二十四日から昨年七月八日に至る経緯を時系列に沿ってまとめてくれております。
まず冒頭に、経営委員会の基本的認識を聞きますけれども、経営委員会が外部の圧力に屈して現場の番組制作に介入したという認識はございませんか。
○森下参考人 お答えいたします。
視聴者の皆様からの御意見や御指摘に真摯に向き合うことは視聴者対応の基本でありまして、適切な視聴者対応が行われているかを監督することは経営委員会の重要な責務と認識しております。
郵政側からの書状は、二〇一八年八月に会長宛てに質問の文書を送ったのに二か月間近くたっても回答がないため経営委員会に文書を出したとの趣旨であったため、執行部側の業務執行が視聴者目線に立っていないと考えたことなどから、会長に注意を申し入れたところであります。
経営委員会といたしましては、あくまでもガバナンスの視点から注意を行ったものでありまして、放送法の第三条や第三十二条の規定のとおり、経営委員会が番組の編集に関与できないことは十分認識して議論しておりました。
以上であります。
○宮本(岳)委員 資料一の経緯を見れば明らかですけれども、四月二十四日に番組が放送され、七月七日と十日には、番組第二弾制作のために、情報提供を呼びかけるネット動画がホームページ上に掲載されました。
すると、その翌日、二〇一八年七月十一日には、日本郵政、日本郵便、かんぽ生命の三社長名でNHK会長宛てに、ネット動画の削除に関する申入れ書面が届けられました。聞きますけれども、この書面は公表されておりますか。NHK会長。
○前田参考人 お答え申し上げます。
会長宛ての書簡の内容を公表することは、相手方との信頼関係を損ねるおそれがございますので、基本的には公表すべきではないと考えております。
なお、お尋ねのあった郵政三社からの書簡についても、同様の趣旨でNHKからは公表しておりません。
○宮本(岳)委員 公表されていないんですね。
その後は、NHK大型企画開発センターチーフプロデューサーが、番組制作と経営は分離し、会長は関与しない旨を伝え、八月二日には、再びNHK会長宛てに、取材対応を控えさせていただくとの書面が届いております。会長、この書面は公開されておりますか。
○前田参考人 お答え申し上げます。
開示されておりません。
○宮本(岳)委員 これも開示されていないわけですね。
そして、日本郵政の鈴木上級副社長が、九月二十五日、当時の森下俊三NHK経営委員会委員長代行と面談をいたしました。森下代行は今の経営委員長でありますけれども、二〇二〇年三月二十四日付の「郵政三社からの申し入れに関する経営委員会での対応の経緯について」という経営委員会の文書によりますと、森下経営委員長は、鈴木康雄日本郵政取締役上級副社長と、鈴木氏が総務省総合通信基盤局電気通信事業部長の頃から、挨拶をする程度の面識はありましたと書かれております。
森下経営委員長に聞くんですけれども、鈴木氏が総務省総合通信基盤局電気通信事業部長に就任したのは二〇〇一年のことでありまして、二〇〇五年に総務省郵政行政局長になるまでの期間であります。では、この時期、森下経営委員長は何をされておりましたか。
○森下参考人 お答えいたします。
ちょっと手持ちの資料はございませんが、私は当時、東日本電信電話の役員等をしておりました。
ただ、私は、鈴木さんとは、先ほどお話がありましたように名刺を交換した程度でありまして、それ以降、一切、個人的なつき合いはございませんので、仕事上も余り直接的に対応したことはございません。
以上、お答えいたしました。
○宮本(岳)委員 事実ですけれどもね。
二〇〇〇年に森下さんはNTT東日本代表取締役常務執行役、二〇〇二年にはNTT東日本代表取締役副社長、二〇〇四年にはNTT西日本代表取締役社長、こういう形ですから、形としてはですよ、総務省の総合通信基盤局電気通信事業部長という電気通信事業者を規律する側と規律される事業者の代表取締役、こういう関係でありました。
それで、今、面識は名刺交換程度だということでありますけれども、二〇二〇年三月五日の当委員会の質疑で、吉川元議員の質問に答えて、二〇一八年九月二十五日に鈴木副社長と会ったときのやり取りを相当詳しく語っておられます。「まさに、トラブっているんだ、問題が起こって、それで、ツイッターの動画で削除を申し入れて、それで、チーフプロデューサーのそういう発言があったんだけれども、その後、そのチーフプロデューサーの発言について会長に八月二日に文書を出したんだけれども返事が来ない、だから経営委員会で、ガバナンス上、経営委員会で対応すべきじゃないかというお話がありました。」と。
つまり、挨拶する程度だとおっしゃるんですけれども、このときはお互いにトラブルの中身を話し合うような関係だった、こういうことですか。
○森下参考人 お答えいたします。
当時、私は阪神高速道路株式会社の非常勤の会長をしておりまして、それで、鈴木さんの秘書から面会の申出がございました。多分これはビジネスのことだろうということで、阪神高速道路の東京事務所でお会いしたわけでございます。そういったときに、鈴木さんからそういう話がありました。
私としては、そういうつもりでお会いしたつもりはなかったし、中身的には私が判断できる話ではございませんので、個人ではできませんというお話をいたしまして、それで、本当にそういう要望があるのであれば、経営委員会に申し出ていただかないと、個人では受け付けられませんということをお話しした、こういうことでございます。
以上、お答えいたしました。
○宮本(岳)委員 個人では対応できないので、それは経営委員会に書状で出してくれ、こうおっしゃったわけですね。
○森下参考人 お答えいたします。
私は、だから、阪神高速道路の会長としてお会いしていますので、経営委員会の委員としてお会いしているわけじゃない、そういう意味でございます。ですから、このお話は私としては受けられません、そういう意味でございます。
○宮本(岳)委員 この二〇二〇年三月五日の質疑、吉川先生の質疑ですが、このときには、新聞報道があるだけで、非公表と決めているので出せないと、議事録の公開すら拒んでおりました。
しかし、その後、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会が、二〇二〇年五月二十二日と二〇二一年二月四日と二回にわたって全面開示の答申を出し、ついに、昨年七月八日には二〇一八年十月九日、二十三日、十一月十三日の経営委員会の議事起こしというものが公表されております。
公開された議事起こし、これを見ますと、これまで行ってきた、日本郵政の鈴木副社長からNHKのガバナンスが利いていないのではないかと指摘され、ガバナンスの問題を議論した上で当時の上田会長に対して厳重注意をしたという説明は、到底通用しないものだと言わなければなりません。
森下経営委員長、議事起こしが公表された今日においても、放送法が禁じる経営委員会による番組編集への関与は一切なかった、こう言い切れますか。
○森下参考人 お答えいたします。
経営委員会としては、あくまでもガバナンスの観点から注意を行ったものでありまして、放送法の第三条や第三十二条の規定のとおり、経営委員会が番組の編集に関与できないことは十分認識して議論しておりました。番組の編集の自由を損なうような事実はなく、執行部もそうした事実はなかったとしていると承知しております。
今回の件では、抗議の元となった番組などについて確認する必要があり、番組などをめぐる意見や感想も含まれておりますが、あくまでガバナンスに関する議論であることがその場で何度も強調、指摘されておりまして、具体的な制作手法などを指示することを意図した議論ではなかったと認識しております。
なお、番組本編の放送が二〇一八年四月でありまして、動画の公開終了や夏季特集で取り上げないなどの執行部の判断は七月から八月にかけて行われております。経営委員会に郵政側から書状が届いたのは十月でありまして、時系列から見ても番組介入はありません。あり得ないということでございますというふうにお答えしました。
○宮本(岳)委員 資料二を見ていただきたい。公表された二〇一八年十月二十三日の議事起こしであります。上田前会長に厳重注意を行った日のものです。ページは少し飛んでいます、抜粋してあります。
二〇一八年十月二十三日の経営委員会では、まず冒頭、監査委員でもある高橋委員が、NHKのガバナンスの欠如の指摘について、監査委員会で調査した結果を報告することから始めております。赤線を引いておきました。高橋委員は、「協会の対応についてガバナンス上の瑕疵があったとは認められないと判断いたしました。以上でございます。」と述べております。
監査委員会がガバナンス上の瑕疵があったとは認められないと言っているにもかかわらず、なぜガバナンス上の問題で会長に厳重注意を行う必要があったんですか。
○森下参考人 お答えいたします。
二〇一八年十月二十三日の経営委員会で、監査委員会からは、協会の対応に組織の危機管理上の瑕疵があったとは認められないと報告を受けました。これは、郵政三社からの経営委員会宛て書状に関して監査委員会が監査を行った結果、本件の情報が会長までいち早く報告されておりまして、組織対応がなされているということから、協会の対応について、組織の危機管理上の瑕疵があったと認められないと判断したとのことでありました。
しかし、これはあくまでもNHKの中だけの話でありまして、経営委員会といたしましては、次の二つの観点から、会長に対して注意を申し入れたのです。
一つは、番組の制作と経営は分離しているため、番組制作について会長は関与しないというチーフプロデューサーの説明は、編集権についての考え方が組織にきちんと共有されていないというガバナンスの問題が含まれている、そう考えたこと、もう一つは、郵政三社からの書状は、二〇一八年八月に会長宛てに質問の文書を送ったのが二か月たっても回答がなかったために、経営委員会に文書を出したとの趣旨だったということでありまして、協会側の業務執行が視聴者目線に立っていないと考えたことでございます。
そういうことで、ガバナンスの問題として扱っております。
以上、お答えいたしました。
○宮本(岳)委員 資料二の右側を見ていただきたい。
当時の石原経営委員長が、当時の上田会長に文書を読み上げる形で厳重注意を行ったところの議事起こしであります。
今回のことについていまだ郵政三社側に御理解いただける対応ができていないことについて誠に遺憾と言いつつ、ガバナンス体制を更に徹底せよ、そして、必要な措置を講じた上で、後日経営委員会に報告を求めております。
これに対して、さすがに当時の上田前会長も戸惑いを隠せず、反論を試みております。
先ほど監査委員からの御報告で、ガバナンス上は問題ないと、瑕疵があったとは認められないという報告があったではないかと。そして、個別番組に絡むような形でのガバナンスということになると、私の方としてもなかなか対応がと、言葉を詰まらせております。
これは、ガバナンスというより、まさに個別番組に絡む形の指摘なのではありませんか。
○森下参考人 お答えいたします。
基本的には、先ほどお話ししましたように、郵政三社側への対応ができていないということでお話をしておりまして、それについては前会長は何事もおっしゃっていなかったんですね。
要は、個別番組への介入に対して、そういった、会長が危機感を示されたということでありますけれども、そういうことについては、あくまでも我々はガバナンスに関する議論を行ったことでありまして、御本人がどういうふうに受け止めたかという、本人の感想だというふうに経営委員会の方は判断をしております。
いずれにいたしましても、二か月たって回答が出されていなかったということと、先ほどお話ししました、社内でのチーフプロデューサー以下の教育が不十分じゃないか、そういったことについて全く回答がなかったということでございます。
以上、お答えしました。
○宮本(岳)委員 いや、その郵政から届いた会長宛ての手紙も、書面も公開されていない、二つが二つとも出ていないですね。この議事起こしだって、去年の七月になって出てきたわけですよ。
資料三は、二〇一八年十一月十三日の経営委員会の議事起こしであります。
経営委員会として、当時の上田会長に注意をして、郵政各社に遺憾の意を示す文書を送り、NHKの木田専務理事、放送総局長が、編成局の部長を帯同して、NHK会長名の書簡を手交して謝ったら、相手は納得し、日本郵政の鈴木副社長から礼状が届いたというものですね。
十一月七日付で鈴木副社長から届いた礼状には、感謝の言葉とともに、木田専務が持っていった文書にある、放送法の趣旨を職員一人一人に浸透させるだけでは十分ではないなどと言い、放送番組の企画、編集の各段階で重層的な確認が必要だとまで言っております。
なぜそこまで立ち入るのかと思ったら、下線部、「かつて放送行政に携わり、協会のガバナンス強化を目的とする放送法改正案の作成責任者であった立場から」と、自らの経歴に触れております。
だから、それを受けて、経営委員が口々に、ちなみにその方って放送関係にいらした方なんですかとか、総務省の何か次官をしていた方らしいですね、総務省を辞めた後に郵政のなどと語り、最後に、当時の石原委員長が、非常に詳しい方でいらっしゃると述べて終了しております。
総務省に確認します。
当時の鈴木康雄副社長は、二〇〇九年から二〇一〇年にかけて総務省事務次官を務めた人物に間違いないですね。
○吉田政府参考人 お答えをいたします。
お尋ねの鈴木氏は、二〇〇九年七月から二〇一〇年一月までの間、総務事務次官を務めたと承知しております。
○宮本(岳)委員 資料三の議事起こしでは、石原経営委員長が、番組を作るときに、もうほとんどでき上がった段階で上のところに持ってきて、これでいいじゃないかということではまずいなどと述べて、それぞれのところで、つかさつかさで、きちっとやっぱり管理をしていかないとまずいんじゃないかということを鈴木さんはこの中で主張されておるということだと理解しておりますとまで言っております。
NHKに重ねて聞きますけれども、これは番組編集への介入ではありませんか。この問題を自分たちで判断するのではなく、視聴者・国民に判断を仰ぐべきだと思います。
まず、議事起こしをホームページに公表し、議事録の作成と公表もすべきだと思いますが、そうではないですか。
○森下参考人 お答えいたします。
その前に一言。
先ほど先生の方から、郵政の手紙が公表されていないということがありましたけれども、経営委員会に十月に来た手紙については公表しておりますので、誤解のないようにお願いをいたします。
それから、鈴木さんの手紙が先ほどありましたけれども、そのときは経緯の確認をやり取りしたという記憶をしております。むしろ、手紙が来た段階、審議する段階では、鈴木さんがどういう人かということは皆さん分かっていない、知らないということで審議をしておりますので、この件に関する議論が先入観を持たずにされたというように私どもの方は解釈をしております。
それから、議事録の開示のことでありますが、これにつきましては、情報公開制度に基づいて請求者に開示した文書、これは、経営委員会終了後、各議題に関する議論などを逐語的に粗起こしすることによりまして作成されたものでありまして、これも放送法第四十一条で定める議事録ではございますが、非公表として取り扱っております。
これは、経営委員会の議事運営規則第五条一項で、「経営委員会議事録は、会議のつど作成するものとし、原則として、次回の会議においてその内容を確認した上で、委員長または委員長職務代行者および監査委員会が選定する監査委員一人が署名する。その後、遅滞なく、経営委員会議事録を公表する。」と定めております。
従前より、経営委員会では、経営委員会議事運営規則第五条四項の非公表事由に当たると判断された議題に関するものにつきましては、公表とともに内容の確認及び署名も省略する運用がなされてきておりました。よって、情報公開するということで開示した文書も、非公表として取り扱っております。
以上、よろしくお願いします。
○宮本(岳)委員 開示するんですね。一言。開示するんですね。答えてください、だらだらと言わずに。
○森下参考人 お答えいたします。
請求があれば開示をいたしております。
○宮本(岳)委員 いや、請求者には開示しているんです、既に。請求者に開示したものは国民に開示しなさいと言っているんですよ。
それから、七月の十一日のNHK会長宛ての文書は、公表していないと会長が答えたとおりじゃないですか。
NHKはやはり全く反省していないと言わざるを得ません。反省がないから同じ過ちが繰り返されるわけであります。
二〇二一年十二月の河瀬直美が見詰めた五輪という番組に、五輪反対デモに参加している男性が、実はお金をもらって動員されていると打ち明けたなどという、全く事実に反する字幕が放映され、これも、今年二月の十日にNHKの調査チームが報告書を公表いたしました。
この字幕は全く事実に反する誤ったものだった、これはお認めですね。
○前田参考人 お答え申し上げます。
BS1スペシャルでつけた字幕は、誤ったものでございました。
○宮本(岳)委員 字幕をめぐっては、私は参議院議員時代に随分苦労した経緯があります。
我が党は一貫して、NHKに聴覚障害者の方々のための字幕放送の拡充を求めてまいりました。私は、特に、生放送であるニュースに字幕をつけることを繰り返し求め、ついに二〇〇〇年三月二十七日、生放送である「ニュース7」に字幕が付与されました。障害者団体の方々と一緒に見て、みんなで拍手したのを昨日のことのように覚えております。
自動で音声を字幕に換える機械の開発が鍵だったんですけれども、あのときNHKが非常にこだわったのは機械の変換ミスで、万が一にもNHKが誤った字幕を放送するわけにはいかないという言い分でありました。その点で、今回の字幕の事件は余りにもお粗末で、断じて許し難いと言わなければなりません。
今回の、「BS1スペシャル」報道に関する調査報告書では、二〇一五年にNHKで発生した「クローズアップ現代」「追跡 出家詐欺」問題の取材をめぐる問題とその教訓にも触れております。
しかし、このときも、二〇一五年四月二十八日にNHKが出した調査報告書が、「事実のねつ造につながるいわゆる「やらせ」は行っていない」と結論づけたことに対して、二〇一五年十一月六日に出されたBPO、放送倫理・番組向上機構の検証委員会の報告書は、「しかし、NHKの調査で、はたして番組に関する疑問は解消したのか。検証は十分であったのか。問題は、「過剰な演出」や「実際の取材過程とかけ離れた編集」というレベルにとどまるものなのか。 当委員会は、調査の推移を見守っていたが、「最終報告書」に疑問点が残り、また、意見を述べるべき問題もあるとの結論に至った。」こう述べています。
会長に聞くんですけれども、このときのBPOの指摘を真摯に受け止めておりますね、会長。
○前田参考人 そのときの御指摘は、そのとおりだと思います。真摯に受け止めております。
○宮本(岳)委員 ところが、今年二月十五日、前田会長は、当委員会でBS1スペシャル報道問題を問われ、意図的ではなかったと強調しつつ、「意図的にやるのであれば、もうちょっとちゃんと意図的にやるんだと思いますが、こんなずさんなことで何かをやり遂げようという、とても私には理解できません。」という、耳を疑う答弁を行いました。これはもちろん、先ほど奥野議員御本人が質問されましたけれども、まるで他人事、著しく当事者性を欠いたもので、言い回しや表現の問題ではありません。真摯な反省とはほど遠いと言わざるを得ません。
会長、これはもうあっさり撤回すべきじゃないですか。
○前田参考人 お答え申し上げます。
説明の趣旨が不適切であったということでありますので、撤回させていただきます。
○宮本(岳)委員 もう時間が来ましたので、どこまでできるか分かりませんが。
そういうことの中で、かんぽ不正報道でもBS1の字幕問題でも、やはりNHKの信頼を揺るがす事態になっているという認識を持つべきです。
資料の四につけました。NHK受信料制度検討委員会の次世代NHKに関する専門小委員会の報告書に掲載されている、これはNHK自身が二〇一九年三月に実施した調査結果であります。
NHKに求める公共的価値のうち、左端、正確、公平公正な情報で貢献することが実現しているという答えは一六・九%と極めて低い。公共的価値として挙げられている六項目の中でも際立って低いんです。
今、NHKに求められるのは、公共放送としての自覚を持ち、公共放送の自主自律を守り、正確、公平公正な情報で視聴者・国民の信頼を取り戻すことではないのか。このことについてのNHK前田会長の御見解をお伺いして、時間が来ましたので、質問を終わりたいと思います。
○前田参考人 お答え申し上げます。
今回の調査は、視聴者四千人を対象に、NHKの公共的価値の評価をしていただいたものでございますが、このうち、正確、公平公正な情報で貢献することについては、ほぼ毎日NHKの放送などに触れておられる方は高く評価していただいている一方で、ほとんどNHKを御覧いただいていない方は相対的に低い評価となっております。
この結果を見ますと、何よりもNHKのコンテンツに触れていただくことがNHKの理解を深めることにつながると考えております。
NHKでは、現在、放送やインターネット、イベントなどを通じて、視聴者の皆様との接点を拡大し、NHKのコンテンツに触れていただくことで、価値を実感していただく視聴者リレーション活動を強化しているところでございます。
また、新年度の番組改定では、総合テレビとEテレを中心に、視聴者のニーズを踏まえた新たな番組を数多く放送する予定で、インターネットなどを活用しながら、世代を超えて一人でも多くの視聴者にNHKのコンテンツに触れていただくための努力を重ねてまいりたいと思います。
○宮本(岳)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、信頼を取り戻すために頑張ると言っていただきたかった。やはり人間がしっかりと説明することが基本だということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
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討論
○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表し、放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件、いわゆるNHK二〇二二年度予算の承認に対して、反対の討論を行います。
放送の自主自律の遵守が求められるNHKの対応に、国民の信頼は揺らいだままです。
NHKのかんぽ生命不正販売の報道をめぐって、我が党は、NHKが日本郵政グループからの圧力に屈し、経営委員会が会長を厳重注意したことは、放送番組は何人からも干渉されないとする放送法三条及び三十二条に違反する行為であると厳しく指摘し、二〇二〇年度、二〇二一年度のNHK予算の承認に反対いたしました。
予算承認後の昨年七月、経営委員会は、情報公開請求者に対し、議事起こしを開示しました。そこには、日本郵政からの圧力に屈する経営委員会の対応が生々しく記されております。しかし、ホームページ等で公表しないばかりか、いまだに全文は議事録として作成されておりません。
視聴者・国民への説明責任を放棄する経営委員会、執行部の姿勢は無反省と言わざるを得ません。こうした下で、執行部が編成し、経営委員会が議決をした予算を承認することはできません。
さらに、経費の削減ありきで、訪問によらない効率的な営業活動への移行を掲げ、大幅な営業活動の縮小を図ろうとしていることは重大であります。
二〇〇九年以降、NHKが営業の法人委託にかじを切り、契約数の増加のノルマを課せられたスタッフの強引な勧誘や契約者をだますような手法が横行し、国民からの強い批判が殺到しました。丁寧な説明をないがしろにした訪問営業が、NHKへの信頼を揺るがす事態となっています。
本来、訪問営業は、公共放送としてのNHKの役割や受信料制度への理解を視聴者・国民に促す重要な役割を持つものです。本来の姿に立ち返ることこそ必要です。縮小では、国民の理解を得られないばかりか、受信料収入への悪影響も懸念されます。
最後に、視聴者・国民の代表としての自覚と、放送法を遵守する経営委員会に改革することを強く求めて、反対討論といたします。後日アップします