権利条約 原則徹底を
校則問題で宮本岳志議員
衆院文科委
日本共産党の宮本岳志議員は30日の衆院文部科学委員会で、理不尽な校則の見直しを求める声が広がるなかで改訂作業が進められてきた、文科省の「生徒指導提要」の改訂試案を取り上げ、子どもの権利条約の原則の徹底を求めました。
同省の生徒指導に関する基本文書で29日に公表された改訂試案には、「生徒指導の取り組み上の留意点」の冒頭に子どもの権利条約と、子どもの意見表明権など同条約の4原則が明記されています。また、校則の見直しについては、児童生徒や保護者からの意見聴取や、あらかじめ改訂手続きを示すことが望ましいとしています。ホームページなどでの校則の公開も求めています。
宮本氏は試案の規定の趣旨を一つひとつ確認するとともに校則の見直しにあたっては、子どもの権利とともに教育の目的という観点からも、子どもの関与と主体性を尊重することが重要だと政府の認識をただしました。
末松信介文科相は、校則見直しにあたっての児童生徒の関与は「児童生徒自身が校則の根拠を考えることを通じて身近な課題を自ら解決するなどの教育的意義を有する」と答えました。また、同省の伯井美徳初等中等教育局長は、改訂が夏ごろの公表を目標に進められていることを明らかにしました。
(しんぶん赤旗2022年3月31日)
動画 https://youtu.be/YHRyu_Hkw-I
配布資料 20220330文科委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
日本共産党は、昨年四月、梅村さえこ元衆議院議員を責任者とする校則問題プロジェクトを発足させ、全国的に校則アンケートに取り組んでまいりました。中高生、保護者、教職員、市民、約三千人から寄せられたアンケート結果は、ホームページに掲載するとともに、現在進行中の文部科学省の生徒指導提要改訂に関する協力者会議にも参考資料としてお届けをいたしました。
今日は、そのアンケートの結果の概要を資料として配付しております。
資料一を見ていただきたい。中高生の八二%、保護者の八五%、教職員の九一%が校則で疑問に思うものがあると答えております。やはり一番多いのはツーブロックなど特定の髪型の禁止で、七割の中高生が校則の検査を受け、不快を訴えております。校則の影響については、半分近くが監視されているようで窮屈と答え、校則を守る理由について、半分は説明なしで、さらに、説明されても七割は納得できておりません。その説明はどんなものですかという自由記述欄を見ていただきたい。伝統だから、ルールは学校にも社会にも存在するから、我慢してとか、ツーブロックはその髪型を見た人が怖いと思うので禁止ですとかいう説明が並んでおります。
初等中等教育局長に聞きますけれども、こういう状況をつかんでおられるか、そして、このような理由では、生徒たちはもちろん、親や地域も納得しないと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
○伯井政府参考人 お答えいたします。
校則につきましては、校則の意義とか運用に関する内容、あるいは、やはり社会的に合理的な説明がつくよう不断の見直しが重要であるということであります。そうしたことから、今様々な見直しが各自治体で進められているということも承知しておりますし、今御指摘いただいたような意見があるというのも一定程度承知しております。
そういう意味で、現在、生徒指導要録の改訂に関する会議ではそうした方向での議論も進めているところでございます。
○宮本(岳)委員 一枚めくって資料二を見ていただきたい。八五・九%の生徒は校則を変えられたらいいのにと思っているが、変える手続が不明、変えようとしても変わらないことが多い。中には、校則を変えたいと言ったら先生にどなられたとか、はぐらかされて答えてくれなかったというのもございました。
資料二の右側は、今度は教員や大人の声でありますけれども、先生の校則指導は、どちらかというと仕方なくというのが半数を占め、積極的にやっている、こうおっしゃる先生は一割そこそこという結果でございました。そして、大人の九割が校則に生徒の意見を反映させるべきと答えております。
こういう現状について、これは文部科学大臣にひとつ御感想をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
○末松国務大臣 お答え申し上げます。
先生、これは個別のアンケートでございまして、具体的な見解を述べることは差し控えたいと思うんですけれども、校則に関する一つの御意見としては大変参考にさせていただきたい、そのように思ってございます。
○宮本(岳)委員 これは、今検討が進められている生徒指導提要の改訂に関する協力者会議の方々にも、もちろん参考資料としてですよ、参考としてお届けをしたということも重ねて申し上げておきたいと思います。
既に、今申し上げた生徒指導に関する学校教職員向けの基本書でありますけれども、生徒指導提要の改訂作業が始まっておりまして、昨日の午後、生徒指導提要の改訂に関する協力者会議の第七回会合が開かれまして、そこで公表されたのがこの生徒指導提要改訂試案というもの、昨日の午後開かれたもの、そこで公表されたものでございます。
内容に入る前に、これはちょっと作業の実務的な今後の流れだけ初等中等教育局長に確認しておきたいんですけれども、これは今後どのような作業が行われ、いつ頃文部科学省ホームページに公開される、こういう予定になっておりますか。
○伯井政府参考人 お答えいたします。
生徒指導提要、先ほどちょっと生徒指導要録と答えてしまったかもしれませんけれども、生徒指導提要の改訂に関する協力者会議は、昨年七月以降、七回にわたる会議を経て、生徒指導の概念や取組の方向性等を再整理し、改訂作業を進めてまいりました。そして、今御指摘いただいた昨日のその協力者会議では、生徒指導提要の改訂試案が示されました。公表しております。
次年度以降も引き続き会議を継続させ、各章の執筆者と記載内容の調整なども行いながら更に精査を進め、最終的には今年の夏頃に公開、公表したいというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 今年の夏頃には決定され、ホームページで公開されるということであります。
約十年ぶりの抜本的な改訂とのことで、先ほどの我が党のアンケートにも示されたような、校則をめぐる理不尽と言われる現状がどのように正されるのかに注目が集まっております。
資料三を御覧いただきたい。早速、この生徒指導提要改訂試案の二十七、二十八ページにある「生徒指導の取り組み上の留意点」の冒頭に掲げられた児童の権利に関する条約と四つの原則の説明について、ここに御紹介を申し上げました。
初等中等教育局長に確認しますけれども、「生徒指導の取り組み上の留意点」の冒頭に児童の権利に関する条約を掲げた趣旨はどのようなものでございますか。
○伯井政府参考人 児童の権利条約はまさに児童の権利について述べた重要な条約でございますので、そうした趣旨の周知ということも政府として求められているということから、そうしたことについての文言も記載しているというふうに承知しております。
○宮本(岳)委員 この資料を見ていただいたら、「児童の権利の理解」ということで、児童の権利に関する条約を引いた後、四つの原則ということで原則を四つ挙げております。
順々に見ていただいたら分かるとおりですけれども、一つは、差別の禁止、条約第二条、二つは、児童の最善の利益、第三条、三つは、生命、生存、発達に対する権利、第六条、そして四番目に、意見表明権、第十二条。これは我が国も批准している条約ですから、全部受け入れておりますので、当然、それに基づいて進める必要があるんですね。
それで、この資料の三の右側、二十八ページの「ICTの活用」というところの直前には、安心、安全な学校づくりは、生徒指導の基本であり、同条約の理解は、教職員、児童生徒、保護者、地域にとって必須だと言えますと述べられております。子どもの権利条約の四つの原則は、生徒指導のあらゆる場面で尊重されなければなりません。
そこで次に、もう資料につけていませんが、この生徒指導提要の七十五ページからの「校則の運用・見直し」の内容について聞かせていただきます。
改訂試案の七十六ページには、「(2)校則の運用」として「校則に基づく指導を行うにあたっては、校則を守らせることにばかりこだわることなく、何のために設けた決まりであるのか、教職員がその背景や理由についても理解しつつ、児童生徒が自分事としてその意味を理解して自主的に校則を守るように指導していくことが重要です。」とあり、校則の内容をふだんから学校内外の者が参照できるように学校のホームページに公開しておくことや、制定した理由や背景を示すことも求めております。
改めて聞くんですが、学校内外、こうなっておりますので、これは学校外にもその規則、校則を公開する、こういうことでございますね、初等中等教育局。
○伯井政府参考人 今御指摘いただきましたように、校則に基づく指導を行うに当たっては、児童生徒が自分事として校則の意味を理解して、自主的に校則を守るように指導していくということが重要であります。そのため、校則の内容につきましては、ふだんから学校内外の者が参照できるよう、例えば学校のホームページに公開しておくことや、それぞれの決まりの意義を理解し、児童生徒が主体的に校則を遵守するようになるために、制定した背景についても示しておくということも適切であるというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 この公開の議論については、実は参議院で、私じゃないですけれども、萩生田大臣と我が党の吉良よし子がやった校則問題の質問というのがありまして、要するに、校則があらかじめ公表されていないと、入ってみて初めて分かって、それで子供たちがそういう校則があることが分からなかったと。それはもちろん大したことなければいいんですけれども、たちまち学校へ行けなくなったというような事例もないわけじゃなくて、あらかじめ示すことが大事だと萩生田大臣の答弁がそのとき出ているんですけれども、あらかじめ周知しておいて、そういう校則があるということが分かって選べるようにすべきなんだというのがそのとき出ていまして、これはちょっと通告していないですけれども、大臣もそういうお考えは引き継いでいただけますね。
○末松国務大臣 萩生田前大臣からそういう御答弁があったと思いますけれども、それは、入る前にそういった校則があることは理解されるべきだと思うんですけれども、校則自体は、先生、絶えず見直しをされていますし、そういう意味では、生徒の意見も踏まえながら、向き合いながら、やはり校則というのは、保護者の意見も聞き、いろいろな形で変わってまいりますので、確定したものではないと思います。
○宮本(岳)委員 そのときも不断に見直すという議論をやっていますし、私も今日、不断に見直していただきたいということを申し上げたいわけでありますし、今度の指導提要も、できるだけ時代だとか、子供の声や保護者の声や先生方の声も集めて、よりよいものに見直していこうということをこれからやろうということなんだろうと思います。
それで、改訂試案のこの七十六ページの「校則の見直し」というところを見ると、先ほどの我が党のアンケートでも、校則を変えたいが手続が分からないと。変えたいと言うたらどなられたというのがありましたけれども、どうすれば変えれるかというのがよう分からぬので、変えたいと言うだけで変わらないわけであります。
この改訂試案の七十六ページの「校則の見直し」では、見直しに当たって、児童生徒や保護者等の学校関係者からの意見を聴取した上で定めていくことが望ましいと述べるとともに、生徒会や保護者会などで話合いの機会を設けること、そして、校則を見直す必要がある場合にどのような手続を踏むべきか、その過程についても示しておくことが望ましい、あらかじめ、こういうふうにして、変えるときにはこうやって変えましょうということも示しておくことが望ましいと書いております。
つまりこれは、児童生徒の意見を聞き、話合いの場を重視するとともに、どのようにすれば校則が変えられるかを事前に明らかにしておこうというものですね。間違いないですね、初等中等教育局。
○伯井政府参考人 まさに今御指摘いただきましたように、改訂試案におきましては、校則の見直しに当たってはということで、今先生がお述べになられたようなことを規定しておりまして、やはり、必要な手続、見直しのプロセスについて、しっかり明示しておくことが望ましいというふうに示しております。
今後、引き続き、生徒指導提要の改訂に向けて、そういった点も踏まえて精査していきたいと考えております。
○宮本(岳)委員 まさに、子どもの権利条約の四つの原則に立ち、子供の意見表明権を保障するということだと思います。
ところが、もう一度、先ほどの資料の三の左側、二十七ページのちょっと下に赤と青で書いている、この部分に戻っていただきたいんですけれども、赤い字で注釈がありまして、「「児童の権利に関する条約」について(通知)」という、平成六年、一九九四年五月二十日付の文部事務次官通知が示されております。
私、その通知、ここに持ってきましたけれども、この一九九四年の事務次官通知によると、子どもの権利条約十二条一の子供の意見表明権については、表明された児童の意思がその年齢や成熟の度合いによって相応に考慮されるべきという理念を一般的に定めたものであり、必ず反映されるということまでをも求めているものではない、そう書かれているんですね。先ほどからの話とは、ちょっと、大分トーンが違うわけであります。
これはちょっと正確にしておく必要がありますので、初中局長、どちらが本当ですか。
○伯井政府参考人 御指摘の平成六年の児童の権利条約に関する事務次官通知では、ただいま御紹介いただきましたように、意見を表明する権利について、表明された児童の意見がその年齢や成熟の度合いによって相応に考慮されるべきという理念を一般的に定めたものであり、必ず反映されるということまでをも求めているものではないというふうに示されているところでございます。
一方で、校則の制定というのは、最終的には校長が適切に判断する事柄でありますが、児童生徒の学校生活に大きな影響を及ぼすことがあることから、児童生徒の意見を聴取した上で定めていくことが望ましいということであります。
その場合、最終的には校長が適切に判断するということですので、個々の意見全てが反映されるわけではございませんが、表明された児童生徒の意見は、その年齢や成熟の度合いによって相応に考慮されるべきものというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 決して、平成六年の、一九九四年の通知を撤回するというようなことではないですけれども、やはり、新たにこういう提要が定められた場合には、そういう運用にしていただきたいと思うんですね。
次に、改訂試案の七十七ページなんですけれども、「児童生徒の関与」として、校則を見直す際に児童生徒自身が主体的に関与することは、学校のルールを無批判に受け入れるのではなく、自身がその根拠や影響を考え、身近な課題を自ら解決するといった教育的意義を有するものとなりますと書いてあることは、私は非常に大事な提起だと思います。
そこで、大臣に聞くんですけれども、人格の形成を目指す教育の目的の観点から見ても、子供の主体性が非常に大事だと思うんです、この校則問題について。これについての大臣の認識をお伺いしたいと思います。
○末松国務大臣 お答え申し上げます。
文部科学省では、昨年六月に教育委員会等に対しまして事務連絡を発出しまして、地域の状況や社会の常識などを踏まえまして校則の内容を不断に見直すことが必要であるということ、校則を自分事として捉えて、自主的に守るように学校が指導を行っていくことが重要であるというところをお示しをしたところであります。
御指摘のように、校則の策定や見直しの過程で児童生徒自身が関与することについては、文部科学省としても、校則の意義を理解して自ら校則を守ろうという意識の醸成につながり、児童生徒自身が校則の根拠を考えることを通じて、身近な課題を自ら解決するなどの教育的意義を有するものと考えています。これらの点について、改訂中の生徒指導提要の試案に示されているところでございます。
生徒指導提要は、生徒指導の基本書ともいうべき存在であり、今先生おっしゃったように平成二十二年にできていますが、学校と教育委員会等が必要とする知見や情報を盛り込んだ内容となるように、御指摘の校則の在り方も含めて、引き続き内容の精査を進めていきたいと思います。
○宮本(岳)委員 時間が来ましたけれども、これは、今ちょっとメディアの報道を見ても、非常に高く提要について評価する声も出ている一方で、現場でどう浸透させるかが大きな課題だという御指摘もございます。
その点では、先ほど申し上げたように、子どもの権利条約というものもまだまだ知られていないわけですよ。アンケートで見ましても、意見表明権、知っているというのは一割そこそこということでありますから、しっかり子どもの権利条約を知ってもらう、現場でしっかりつかんでもらうということが大事だと思うので、最後に、済みません、子どもの権利条約や四つの原則、ここに掲げられた場合、それをしっかりと現場に広げていく御決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
○末松国務大臣 宮本先生にお答え申し上げます。
御指摘の子どもの権利条約や四つの原則を含めまして、生徒指導提要に記載された内容をしっかりと現場に浸透させていくことは大切であるという認識です。このため、現在改訂中の生徒指導提要がより現場で理解されて活用していただけるようなものになるように、次年度以降も引き続き重ねて精査をしていきたいと思います。
また、生徒指導提要の改訂後には、各教育委員会の生徒指導担当者向けの研修会等々の様々な機会を通じ、その趣旨を周知徹底しまして、提要にのっとった学校の適切な対応を促してまいりたいというふうに思います。
先生からまた御意見いただきたいと思います。
○宮本(岳)委員 ありがとうございました。