無償給食なぜ消極的
宮本岳志氏 政府の姿勢ただす
日本共産党の宮本岳志議員は19日、衆院文部科学委員会で、学校給食無償化実現に向けて「まず課題整理」にとどまる文部科学省の消極的な姿勢をただしました。
政府が発表した「少子化対策のたたき台」に「学校給食費の無償化にかかる課題整理」が盛り込まれました。しかし、給食無償化を求める質問に、永岡桂子文科相は「給食の実施状況や保護者負担軽減策の実態をまず把握した上で、今後の課題を整理する必要がある」との答弁を繰り返しています。
宮本氏は、学校給食の実施状況や学校給食無償化の調査を行ってきた文科省は「すでに課題を把握しているのではないか」と指摘しました。
文科省が公平性の観点の課題を挙げているのに対し宮本氏は「学校給食無償化を進めているところで問題は起こっていない」と述べ、経費の負担を定めた学校給食法11条についての旧文部省通達を示し追及。文科省の藤原章夫初等中等教育局長は「保護者が負担する学校給食費を自治体等の判断により補助することを妨げるものではない」と答弁しました。
宮本氏は、自民党が地方議会で無償化を求める意見書を否決したり、無償化が盛り込まれた予算を減額修正させたりした実例を挙げ、「自民党が本気で無償化をやるというのなら、地方議会での態度を改めるべきだ」と主張しました。
(しんぶん赤旗 2023年4月24日)
動画 https://youtu.be/ln8az2pvBKQ
配付資料 20230419文科委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
今日は、学校給食の無償化について聞きたいと思います。
三十一日、政府により、少子化対策のたたき台が発表されました。そこに、学校給食無償化へ課題を整理することが盛り込まれたことから、やっと給食費の無償化が実現するのかと、全国で期待が高まるのは当然のことであります。
ところが、この間の当委員会での質疑を聞いておりましたら、永岡文部科学大臣は、一、給食の実施状況や保護者負担軽減策等の実態をまず把握した上で、今後の課題を整理する必要がある、二、中学校でも完全給食の実施率が自治体ごとに大きなばらつきがあり、児童生徒数比で六割を切るような県もあり、性急に進めれば現場の混乱や自治体の不公平感を招きかねない、三、小倉大臣が取りまとめたたたき台については、今後、総理の下に設置される新たな会議で更に議論を深めたいとの答弁を繰り返すばかりであります。
大臣、率直に聞きますけれども、これははっきり言って、文科省はやる気がない、こういうことでございますか。
○永岡国務大臣 お答え申し上げます。
学校給食の無償化につきましては、一部の自治体ですとか学校で、学校給食自体が実施されていない状況もあります。そういうことから、それらの実態を把握をした上で課題を整理をする必要がある、そう考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 大臣が把握する必要があると言う給食の実施状況や保護者負担軽減策等の実態はつかんでいるんじゃありませんか。
藤原局長、文科省は、当然日常的につかむべき給食の実施状況や保護者負担軽減策等の実態をつかみもしていないんですか。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
学校給食の実施状況につきましては、学校給食法においてその実施が設置者の努力義務となっていることから、学校給食の実施率向上を図ること等を目的に、学校給食実施状況調査を実施し、学校給食を実施している学校数やその形態等の概要について把握を行っているところでございます。
令和三年度の調査によりますと、九五・六%に当たる全国二万九千六百十四校において学校給食が実施されており、実施率は、小学校において九九・〇%、中学校において九一・五%となっているところでございます。
また、保護者の負担軽減策の実態ということでございますけれども、昨年度、物価高騰に伴い、地方創生臨時交付金に活用が可能な事業例として、学校給食費等の負担軽減が位置づけられたこと等を踏まえ、この交付金を活用した学校給食費の保護者負担軽減に向けた取組状況等を調査したところでございます。この調査において、ほとんどの自治体で学校給食費の値上げが抑制され、保護者の負担軽減に取り組まれているとの結果を得たところでございます。
○宮本(岳)委員 だから、今、そうしてつかんでいるわけですよね。
ただ、聞きたいんですが、じゃ、昨年の七月に学校給食費の保護者負担軽減事業の実態を、今、つかんだということで、ほとんどの学校でと言われましたけれども、無償化、これはどれだけでやっているか、昨年つかみましたか。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
これは保護者負担の軽減策を講じている自治体ということで調査を行ったものでございまして、その中で無償化を行っている自治体が幾らあるのかということについては、これは把握をしておりません。
○宮本(岳)委員 つかんでいないんですね。昨年の調査で、一体どれだけが無償化しているかというのはつかんでいないんです。
そもそも、文部科学省は、学校給食の無償化を調査したことがあるんじゃないですか。それは何年度の調査であり、その結果、実施自治体数、どれだけだったか、お答えいただけますか。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
平成二十九年度に調査を実施しております。学校給食費の無償化等の実施状況について調べたわけでございますけれども、この調査において、小学校、中学校とも無償化を実施しているとの回答があったのは、七十六自治体ということでございました。
○宮本(岳)委員 小中学校とも無償化を実施が七十六、小学校のみ無償化を実施が四、中学校のみ無償化を実施が二、合わせて八十二自治体がやったと。これはでも二〇一七年の調査、二〇一八年七月二十七日に発表した調査結果ですね。
大臣に聞きますけれども、この調査は何のために行いましたか、大臣。
○藤原政府参考人 この調査の方では、自治体の数、それからその目的や成果、課題について調査をしたところでございます。
○永岡国務大臣 二〇一七年当時でございますが、学校給食費の保護者負担を無償とする独自の支援に取り組む自治体が見られる中で、その実態について把握するため、無償化に至った経緯ですとか目的、そして無償化による成果、無償化前後の課題等について調査を実施したものでございます。
○宮本(岳)委員 今年三月九日の参議院文教科学委員会で、今おっしゃったとおりの答弁を我が党の吉良よし子議員にやっておられますから、これは変わりようがないと思うんですね。
三月九日に同じ答弁を大臣はされて、そして、そう答弁した上で、新たな調査を行う考えはないと、新たな調査については突っぱねられました。ということは、既に、無償化に至った経緯や目的、無償化による成果、また無償化実現前後の課題などの把握はできている、新たな調査の必要はない、こういうことでございますね、大臣。
○永岡国務大臣 子供政策の強化について検討を行っていました小倉大臣の下で取りまとめられましたたたき台の中で、ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化の観点から、学校給食費の無償化に向けて、給食の実施率ですとか保護者の負担軽減策等の実態を把握しつつ、課題の整理を行うということが盛り込まれたところでございますので、たたき台につきましては、総理の下に設置されたこども未来戦略会議におきまして、子供、子育て政策の強化に向けて更に議論を深めるとされていることから、そうした議論を踏まえまして、文部科学省といたしましては、必要な対応、これは行ってまいりたい、そう思っております。
○宮本(岳)委員 だから不思議に思うんですね。三月九日時点では調査する必要がないとおっしゃったのに、今おっしゃった、小倉大臣の下で本格的な無償化策の課題の整理ということが始まったら、調査する必要があると今おっしゃっているから。
つまり、これは、あれですか、そういうたたき台が決まるまでは本格的な無償化策を検討する気もなかった、こういうことでございましょうか。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
学校給食の実施状況につきましては、先ほど答弁申し上げましたように、これまでも様々な形で状況を把握をしてきたわけでございます。
そうした中で、今般、小倉大臣の下のたたき台の中で、「学校給食費の無償化に向けて、給食実施率や保護者負担軽減策等の実態を把握しつつ、課題の整理を行う。」ということが盛り込まれたところでありまして、こうした状況を踏まえて、今後更にそうした状況の把握をしていきたいと考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 そこまでおっしゃるんだったら、一つ初中局長に聞きたいんですが、平成二十九年調査というのはなぜやったんですか。
○藤原政府参考人 こちらにつきましては、先ほどお答えいたしましたように、学校給食費の無償化を実施している自治体の数のほか、その目的や成果、課題などについて調査をしたという、これがそのときの調査の実施の状況でございます。
○宮本(岳)委員 いや、調査の内容は分かっていますよ、そういうことを調査したんでしょうが。
いいですか、三月九日には、もうやる必要がない、こう述べたような調査を、そして、実は、二〇一七年以前にはやっていなかったんです、やったことはなかったんです。過去一回限りやったのがこの二〇一七年の調査なんですね、無償化ですよ、無償化調査。
これはなぜやることになったのかということですけれども、私は、実はその理由については大体分かっております。二〇一七年四月四日、参議院厚生労働委員会で、与党議員の質問に答えて、ここにおられる、当時の義家副大臣がやると答弁されたからやったのではなかろうかと。うなずいておられますから、そうなんでしょうね。そういうことでやった。
だから、もちろん、必要があるから、やってくれ、今すぐにもやれと言ったんですが、それは必要ないというふうに、この前、三月九日には突っぱねられたわけですよ。
ということは、三月三十一日に政府の少子化対策のたたき台で無償化へ課題を整理すると盛り込まれたから、慌てて調査とか実態把握とか言い始めたのであって、それ以前は、つまり三月末までは、そういうことを本気で考えたこともなかったということを言っているに等しいわけですね。つまり、ここに至るまでは検討してこなかった、そういうことですか、局長。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
無償化の状況ということでございますけれども、これにつきましては、これまでも随時、その必要性に応じて、その実施の状況などを調査をしてきたところでございます。
学校給食費の無償化に向けた実態の把握につきましては、今後、児童生徒間の公平性の観点といったことも含めまして、学校給食を実施していない自治体、学校について、どのような理由や事情があるのか、また、学校給食を実施している自治体、学校についても、配食数の上限等の提供側の事情や、食物アレルギー等により学校給食の提供を受けていない児童生徒がどれぐらい存在するのか、また、完全給食や補食給食、ミルク給食等の実施内容により学校給食費にどれぐらいの差異があるのかといった詳細な実態について把握することが必要であると考えております。
また、学校給食費の負担の在り方の観点から、現在、設置者により実施されている保護者負担軽減に関する取組について、支援の対象や額、財源等の詳細も把握する必要があるのではないかというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 そんなことは日常的につかんでおかなきゃならないことですよね。アレルギー食みたいなことを今おっしゃいましたけれども、今、子供に合わせたアレルギー給食ということを子供に合わせてやっている自治体もあります。
それから、私のところの子供はアレルギー食しか食べられないから、無償化をされたら不公平だからやめてくれというような声を私はついぞ聞いたことがないですし、既に無償化をやっている自治体はあるわけですけれども、そこで不公平だという声が上がっているということは私は聞いたことがない、ないと思いますよ、みんな喜んでいると思うんですね。やはり、給食の無償化はできるだけ先延ばししたい、こういうことだと言わざるを得ないです。
資料一を見ていただきたい。かつての文部省は大変立派でした。先ほど森山先生も触れられましたけれども、昭和二十六年三月十九日、参議院文部委員会における日本共産党の岩間正男参議院議員と当時の辻田力初等中等教育局長との質疑の議事録であります。
傍線部、「我々のほうでは普通の生活のための費用以外の、要するに義務教育を教育として実施する場合に必要な経費はこれは公共のほうから出しまして、義務教育を受ける立場からはこれは無償とすることといたしたいというふうな理想を持つておるわけでございます。即ちその内容といたしましては、現在は授業料でございますが、そのほかに教科書とそれから学用品、学校給食費というふうな、なおできれば交通費というふうなことも考えておりますが、」と明確に答弁しておりますね。
大臣、文科省はこの理想を一体どこで失ってしまったんですか。
○永岡国務大臣 今の昭和二十六年の参議院の文教委員会におけます政府委員の答弁につきまして、これは承知はしております。
現在、教科書の無償化につきましては、日本国憲法第二十六条に掲げます義務教育無償の精神をより広く実現するものといたしまして、義務教育諸学校の教科用の図書の無償措置に関する法律等の関係法律に基づきまして実施をされているところでございます。
他方で、学校給食費につきましては、昭和二十九年に制定されました学校給食法におきまして、学校の設置者と保護者との協力によりまして学校給食が円滑に実施されることが期待されるとの立法趣旨の下に、保護者の負担とするとされております。
現在は、この立法趣旨を踏まえた対応を行っているところでございまして、学校給食費の無償化につきましては、給食の実施状況や保護者負担の軽減策等の実態、これを把握した上で、課題を整理する必要があると考えております。
○宮本(岳)委員 二言目には学校給食法の立法趣旨と言うんですけれども、学校給食法十一条の経費の負担の規定は、学校給食の保護者の負担を補助することを禁止するような趣旨ではありません。
資料二を見ていただきたい。その昭和二十九年の学校給食法が施行されるに当たって文部省が発出した文部事務次官通達です。資料二の二の下線部には、「たとえば保護者の経済的負担の現状からみて、地方公共団体、学校法人その他の者が、児童の給食費の一部を補助するような場合を禁止する意図ではない。」と明確に述べております。
先ほどの二〇一七年調査でも、小中とも給食費無償化が七十六自治体、全部で八十二自治体が既に学校給食を無償化しております。
初等中等教育局長、この八十二自治体は学校給食法第十一条に反している、そういうことになるんですか。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
学校給食法十一条の規定の関係のお尋ねでございます。
学校給食を実施するに当たっては、必要となる経費といたしまして、施設及び設備に要する経費やその維持修繕費、また学校給食に従事する職員の給与等の人件費のほか、食材料費などが挙げられるわけでございます。
そして、今御指摘の学校給食法第十一条における学校給食に関する経費の負担の規定につきましては、施設設備に要する経費や人件費等について学校設置者が負担することなど、経費の負担区分の基本的な考え方を示したものでありますけれども、保護者が負担する学校給食費を自治体等の判断により補助することを妨げるものではないと考えております。
○宮本(岳)委員 学校給食法第十一条は障害にならない、当たり前です。
しかも、自民党は長らく、一九五一年の文部省初等中等教育局長の理想を投げ捨てるばかりか、学校給食無償化を求める世論や運動に敵対し、妨害してきたと言わざるを得ません。
資料三の一を見ていただきたい。昨年六月二十一日に和歌山県議会に提出された学校給食の無償化を求める意見書案であります。残念ながら、これは否決をされました。
資料三の二の下線を見ていただきたい。この意見書の採決結果であります。自民、公明、無所属の会が反対して、否決をしております。今から僅か十か月前のことであります。
そして、資料四は、今年三月二十五日付の毎日京都版の記事であります。京都府大山崎町で、町長が選挙公約にも掲げた大山崎中学の給食無償化の予算を、自民党など野党がわざわざ、ここは自民党が野党なんですが、野党がわざわざ予算を減額修正して削ってしまった。これは、三月三十一日に政府が少子化対策のたたき台に学校給食無償化へ課題を整理すると書き込む僅か一週間前に、京都府大山崎町ではこれがやられているんですね。
大臣、こんなことで恥ずかしくないのかと。自民党が本気で学校給食無償化をやる気だというのであれば、こんな地方議会での態度は改めさせていただきたい。
そして、何よりも文部科学大臣自身が、これから把握とか課題が多いとか言っていないで、「義務教育は、これを無償とする。」という憲法二十六条の精神にしっかり立ち切るべきだと言わなければならないと思います。
最後に大臣の御決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
○永岡国務大臣 先日小倉大臣が取りまとめました子供、子育て政策のたたき台の中で、学校給食費の無償化に向けまして、給食実施率ですとか、また保護者負担軽減策等の実態を把握しつつ、課題の整理を行うというふうにされております。
繰り返しとなりますけれども、学校給食費の無償化に向けましては、児童生徒間の公平性や学校給食費の負担の在り方といった観点から課題を整理していく必要があると考えております。
総理の下で設置されましたこども未来戦略会議におきまして、子供、子育て政策の強化に向けて更に議論を深めるとされていることから、文部科学省といたしましても、こども家庭庁と連携しながらしっかりと対応してまいりたいと思っております。
○宮本(岳)委員 冒頭申し上げたとおり、やはりやる気がないと申し上げて、質問を終わります。