日本語教育機関法案 衆院委可決
留学生搾取を助長
宮本岳志氏批判
外国人留学生の搾取の追認につながる「日本語教育機関法案」が10日の衆院文部科学委員会で、自民、公明、立民、維新、国民の賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。
同法案は、法務省の告示で定められていた日本語教育機関を、文部科学省が認定する制度へと変更し、日本語教師の国家資格「登録日本語教員」を創設するものです。
日本共産党の宮本岳志議員は討論で、日本語学校の大半が留学生を安い労働力として利用することと一体だと指摘。学校理事長自身が経営する人材派遣会社を介し、法定上限の週28時間以上働かせ、高額の家賃を徴収する悪質な事例もあり、「問題は留学生を搾取する構造だ」と強調しました。
しかし、同法案は現行の法務省告示校をそのまま文科省が認定することを想定しており、「現状の日本語学校を追認するにとどまらず、違法な留学生搾取を助長しかねない」と批判しました。
質疑で宮本氏は留学生の劣悪な状況を改善すべきだと追及。永岡桂子文科相は「おっしゃる通りだ。学校が働かせ放題にしているとの話もあり憂慮している」と答弁しました。
宮本氏は、約6割の日本語学校を営利目的の企業が運営し、そのもとで留学生搾取が行われている構造的問題の解決を求めましたが、杉浦久弘文化庁次長は「設置主体は問わない」と述べ、企業による設置は排除、規制されないと認めました。
さらに宮本氏は、日本語教師は低賃金で生活が成り立っていないと指摘し、「『登録日本語教員』という名前を付けただけでは処遇はよくならない」と強調しました。
(しんぶん赤旗 2023年5月12日)
動画 https://youtu.be/4rFLINGtc-k
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず、法案について聞きます。
我が党は、日本語教育の充実にもちろん賛成です。昨年の参議院選挙での選挙政策でも、「夜間中学などを含め外国人労働者・家族の日本語教育の充実を図ります。」と公約をいたしました。
しかし、この問題は、ただただ一般的な日本語教育の問題ではなく、名古屋入管収容中にその貴い命を奪われたウィシュマ・サンダマリさん事件に示されたように、現行の入管法制の非人道的、反人権的な問題点との関係で、厳正にその評価を行わなければならないと考えます。
なぜならば、故ウィシュマ・サンダマリさんも、今から五年前の二〇一七年六月に、まさに留学生としてスリランカから来日されたからであります。
妹さんたちによると、ウィシュマさんは、亡くなったお父さんに代わって一家を支えられるようになりたいと考えていたというわけでありまして、お母さんは、家を担保に借金をして留学費を工面した。通っていた日本語学校に入学時に提出した書類には、スリランカで語学学校を開きたいという彼女の夢が記されておりました。
しかし、ウィシュマさんは、同居するスリランカ人の男性からのDVによって次第に日本語学校を欠席しがちになり、ついには除籍処分となりました。
二〇二〇年八月、同居人からの暴力に耐えかねて交番に駆け込んだら、そこで在留資格を失っていることが発覚し、名古屋出入国在留管理局に収容されました。
名古屋入管の非人道的、反人権的な扱いによって、その後、ウィシュマさんがたどった痛ましい経緯は御承知のとおりであります。
まず聞きますけれども、本法案が規定する日本語教育機関の大半を占める日本語学校の中には、多くの留学生を受け入れ、その留学生を人手不足解消のための安い労働力として利用するなど、外国人ビジネスとなっている悪質な実態があります。留学生の多くは、渡日前に学費を前払いし、渡航費やあっせん業者、ブローカーへの手数料など、留学開始時に百万円以上の借金があり、学費や生活費、借金返済、母国への仕送りのための収入を得るためにアルバイトに追われ、留学とはほど遠い状況に置かれております。
そもそも、文部科学大臣は、外国人留学生をめぐるそのような実態、生々しい実態を認識しておられますか、大臣。
○永岡国務大臣 お答え申し上げます。
日本語教育機関での留学生の受入れは、留学生各自がそれぞれ目的とする進学ですとか就職等に向けて必要な日本語能力を習得させることを目的として行われる必要があると考えております。
しかしながら、現行の日本語教育機関の中には、制限を超えて不法に留学生を就労させるなど、課題のある事例もあるものと承知をしております。事案によっては、教育上の観点からも、学習に大いに支障を来し、認め難いものというものが生じかねないものと考えているところです。
○宮本(岳)委員 日本語学校は、その多くは、法務省出入国管理庁が出入国管理及び難民認定法に基づく告示により定めた、いわゆる法務省告示機関であり、告示校は、在留資格、留学による外国人受入れが認められております。在留資格、留学により資格外活動として認められる就労は、週二十八時間以内となっております。
聞きますけれども、法務省告示を受けている日本語学校は、二〇二三年五月八日時点で何機関あり、設置形態で株式会社と有限会社を加えてそのうち何%になるか、出入国管理庁、お答えいただけますか。
○君塚政府参考人 今御指摘ございました、法務省が告示をもって定める日本語教育機関の数は現在八百三十二機関ございまして、そのうち五百二十五の機関、割合にして約六三%が株式会社又は有限会社により運営されてございます。
○宮本(岳)委員 約三分の二が、営利を目的とする株式会社と有限会社が経営しているわけですね。
二〇一九年十一月六日、北海道旭川市の旭川日本語学校の経営者ら五人が、ベトナム人留学生二人を違法就労させたとして、入管難民法違反、不法就労助長容疑で逮捕されました。経営者自らが社長を務める産業廃棄物処理場などで、留学生たちを週二十八時間以内の法定上限を超えて働かせていたということです。この旭川日本語学校は、二〇一七年にできた新設校なんですね。
二〇一七年に大問題になった栃木県の日本語学校、東日本国際アカデミー事件では、ベトナム人留学生四人を不法就労させたとして入管難民法違反、不法就労助長の罪に問われた同校理事長と法人として起訴された人材派遣会社東毛テクノサービスに対して、前橋地裁太田支部は有罪判決を下しております。
この事件の概要を承知しているか、ひとつ紹介していただけますか。
○君塚政府参考人 お答え申し上げます。
今の学校につきましては、報道等々において、もちろん私ども承知をしてございまして、ベトナム人留学生を数名不法就労させたということでございまして、入管難民法違反、不法就労助長ということでございまして、この学校の理事長あるいは人材派遣会社の経営者などにつきまして有罪判決が出されたということは私ども把握しているところでございます。
○宮本(岳)委員 理事長は、自身の経営する人材派遣会社を介して留学生を就労先に送り、基準を大幅に上回る就労時間で稼いだ収入から、授業料のほか、不当に高額な寮費などを徴収していたことが分かっております。同容疑者は、当初から借金返済のために就労させており、関係者によると、学校職員には、派遣の収入がなければおまえらの給料も払えない、一人でも多く働かさなければなどと公言をしていたと。判決は、これに対して、こうかつで悪質な犯行と断じております。
問題は、こういう高い学費や寮費、渡航費、あっせん手数料などによる借金返済のために上限を超えて働かざるを得ない留学生が、事件が明るみに出たら、その留学生自身が不法就労ということで責任を負わされるというこの現状なんですね。
留学生を搾取する悪質な日本語学校を排除、規制すること、同時に、事実上、そのような現状を認識していながら放置してきた行政の責任など、構造的な問題には全くメスが入らずに今日まで来たんですよ。これを留学生のみの責任に負わせてきたことは大きな誤りだったと私は思いますが、出入国管理庁、そう思いませんか。
○君塚政府参考人 まず、留学生の資格外活動許可につきましては、今御指摘もありましたけれども、本来であれば、留学生本来の学業というものを阻害しない範囲で就労活動を認めているところでございますけれども、許可条件の違反が疑われる者が少なからず存在しているわけでございます。
したがいまして、私ども出入国在留管理庁におきましては、留学生が真に学習する目的を有しているかを見極めるために、入国、在留審査におきまして、勉学の意思、能力それから経費支弁能力などにつきまして慎重に審査を行うとともに、在籍管理の問題がございます日本語教育機関に対しましては実地調査、厳格な指導等を行っているところでございます。
こうした調査等を通じまして、日本語教育機関として不適切な行為が確認されるなど、留学生の受入れを行わせることが適当ではないと判断された日本語教育機関につきましては、私ども、日本語教育機関の告示基準というのがございますけれども、この基準の中で、生徒に対し、人権侵害行為を行い、又は法令違反行為を唆し若しくは助けているという場合などにつきましては、この日本語教育機関を定める告示からの抹消を含めまして、厳正な措置を取っているところでございます。
○宮本(岳)委員 大臣、冒頭申し上げたように、この問題は、ただただ日本語教育機関の日本語教育を今後文科省が引き受けて大いに進めていこう、質の保証をしていこうという、それだけの話じゃないんですよ。
今、現状は、そういいながら、留学生といいながら、実は働かせるために送り込まれていたり、御本人ももちろん働くために来ておられる方も中にいらっしゃる、そういうものが今大変劣悪なというか、ひどい状況になって事件になるわけですけれども、それを本当に正さなければ、本当にひどい状況がある、それを今回どうするかということが問われるテーマだということなんですね。
大臣、冒頭も聞きましたけれども、そういう自覚、お持ちですね。
○永岡国務大臣 宮本議員おっしゃるとおりでございまして、実は、私、茨城県の選挙区におります。そんな中で、地域におけます日本語教育機関というものは、公のものはございませんで、私立のもの、つまり、学校法人であるとか、また株式会社立というものがございます。
中には、私の地域だけではなくて、ちょっとほかの選挙区の方の話を伺いますと、やはり相当学校が働かせ放題しているという話も伺いまして、そのことに関して大変憂慮をしていたという事実がございますので、委員のおっしゃることは理解をしているというところでございます。
○宮本(岳)委員 ですから、本法案の基になった、日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議の報告書の「日本語教育に関する課題」というところでも、「留学生対象の日本語教育機関等の一部にみられる課題」というふうに挙げまして、特に、入管法に基づく在留管理上の観点から留学生を受け入れる機関を告示する制度においてはどのような問題点が指摘されているか、これは文部科学省にお答えいただけますか、文化庁ですか。
○杉浦(久)政府参考人 お答え申し上げます。
現行の法務省告示校制度についての問題ということでございますけれども、今、先ほどここで御議論がありました在留資格上の観点、課題のほかに、教育上の課題の話も令和四年度の文化庁有識者会議において出ておりまして、教育的な観点からの質の確認、担保が十分でなく、教育環境が十分に整っていない機関が見られるとの指摘がなされております。
具体的には、新設後、設置者の変更などの際に、法務省より情報共有を受ける中で、例えば、校長が学校の目標や教育課程の内容を十分理解していない、把握していない、教員の数や必要な経験が不足している、あるいは受入れを予定している留学生の日本語レベルに教育課程内容が適合していないなどなど、教育上の観点から不適切な事例が見られているところでございます。これは、現在、定期報告等の仕組みがないこともありまして、時間が経過するうちに水準が低下している事例であろうかと考えられます。
こうしたことから、本法案におきましては、在留管理上の観点から、法務大臣の協力を得つつ、文部科学大臣が認定日本語教育機関から定期報告を受ける旨の規定を定めているところでございまして、こうしたものを通じまして、課題のある機関があった場合には指導し改善を図るということで、教育の質が確保されるよう取り組んでまいります。
○宮本(岳)委員 まさにあなた方がやった有識者会議でも、教育的な観点からの質の確保、担保が十分でなく、教育環境が十分に整っていない機関が見られると、現状を認めているわけですね。大臣からも、先ほど、憂慮という言葉も口にされました。
日本語教育機関を法制上位置づけて認定する場合に、現状の、留学生をこういった形で搾取するような悪質な日本語学校を排除し規制するなど、構造的な問題の解決が求められると思うんですね。
そこで、文部科学省に事実問題、聞くんですけれども、本法案は、日本語教育機関の設置形態について、何らかの制限を設けるつもりですか。
○杉浦(久)政府参考人 お答え申し上げます。
本法案においては、認定日本語教育機関の設置者に対し、必要な経済的基礎を有すること、必要な知識又は経験を有すること、社会的信望を有することの要件を規定しております。
また、認定日本語教育機関の認定に当たりましては、日本語教育課程を担当する教員及び職員の体制、施設及び設備、日本語教育課程の編成及び実施の方法、学習上及び生活上の支援のための体制などの事項について、文部科学省令において認定基準を定めることとしております。
これらの基準を満たすものであれば、設置者は株式会社であっても学校法人であっても認定の対象となるということでございますけれども、いずれにせよ、その後の定期報告などによりまして課題が判明した場合には、設置主体を問わず、しっかり指導し、改善を図る仕組みとなってございます。
○宮本(岳)委員 設置形態を問わないんですね。
それで、いろいろおっしゃいましたけれども、じゃ、現行ではそういうことをやっていなかったのかということなんですよ。
現行の法務省告示校制度においても、学校の開設時は、教育課程、教員資格、生徒指導等の教育上の観点から文科省もちゃんと確認するなど、法務省と文科省は連携してやってきました。これまでだって別に、文科省の知らぬところで法務省が勝手にやっていたわけじゃないんですよ。そうですよね。
今度は文科省がどうを取って、法務省と協議するというんですけれども、今までこれだけひどい状況がある中で、今度、設置形態を問わずにチェックするといったって、ここにどんな担保があるのかということを言わざるを得ないというふうに思います。本案においても、結局、法務省と文科省が連携していくという点は変わらないわけですね。
つまり、株式会社や有限会社の設置校を始め、現状の法務省告示校がほぼそのまま認定を受けることに、まあ、よっぽどひどいものが出てくれば、今だってひどいものは、さっき言ったように、事件になっているんですから、今だって見過ごしていないんですから、そういうものはそれは淘汰されるでしょうけれども、しかし、ほぼ全部が認定を受けることになるんですよ。
これでは、現状の日本語学校が抱える構造的な課題はそのままに、現状を追認するのみならず、法律に基づく認定を与えることで、違法、無法な留学生搾取を助長しかねない、私たちはこれを一番危惧するわけですね。
日本語学校を法制上位置づけ、留学生を搾取するような悪質な日本語学校を排除し規制するなど、構造的な問題の解決を図ろうというのであれば、まずは、世界でも異常に低い難民認定率や全件収容主義など非人道的な難民入管行政を改めないどころか、外国人の人権侵害を一層深刻化する出入国管理法の改悪案を撤回をして、留学生の人権と個人の尊厳を守ることを第一に保障する入管行政に切り替えること、そして、憲法や子どもの権利条約や国際人権規約等の立場に立ち切ることが重要だと思います。
そうしようと思えば、大臣、やはり、少なくとも学校教育法上に位置づいた学校として運営されることを目指すのは、文部科学大臣としては当然のことではないですか、大臣。私たちはもちろんそのことには一切反対しません、学校をつくってやっていこうということはね。それが当たり前の姿じゃないですか。
○永岡国務大臣 現状の日本語教育機関というのは、各機関の設立の経緯によりまして、やはり多様な設置主体によりましてこれはつくられております。当然、学校法人立もあれば株式会社立もあるということでございます。
学校法人制度につきましては、各法人の建学の精神に基づきまして、私立学校の自主性ですとか公共性を担保する制度でございます。その一方で、例えば、株式会社立の日本語学校というのは、多様な教育ニーズに柔軟に対応できるとの指摘もございます。こうした設置主体別の特性があることから、全ての機関を学校法人にするのではなくて、やはり多様な実態を踏まえたものとしているわけでございます。
しかしながら、いずれにいたしましても、本法案では、設置主体を問わず、認定日本語教育機関に求められる義務は同等に課しておりまして、問題があれば、法に基づきましてしっかりと指導していきたい、そう考えております。
○宮本(岳)委員 おっしゃるとおりで、経緯があって、だから多様になっているということですよね。
本来、学校をつくるのなら、学校教育法上の学校をつくるというのが当たり前なのに、そうでないのは、様々な経緯があると。その様々な経緯という中に、今申し上げたような悪質な事例が出てくるようなことがあって、そこから自動的に結論が導かれるわけではないですけれども、そうやって留学生としてやってこられたウィシュマさんが様々な事情から命を落とすというところまで悲劇が起こったということがあるわけですから、私たちは、ここを本当に塞ぐということをやらないと、ただただ多様だからいいんだという話にならないということを申し上げたいわけですね。
さあ、それで、日本語教育を担う日本語教師の方々のことについても聞きたいと思います。
日本語教室は、教える人の多くがボランティアによって担われている。支援者の高齢化や次世代の担い手不足により、継続的な開催、維持が困難といった課題も指摘をされております。
まず、事実を聞きましょう。文化庁。
日本語教育を担う日本語教室について、日本語教師数は二〇二一年度で何人おられるか。そして、勤務形態別に、常勤、非常勤、ボランティア、それぞれどういう比率になっておりますか。
○杉浦(久)政府参考人 お答え申し上げます。
文化庁調査によりますと、令和三年十一月一日現在で、日本語教員の数は三万九千二百四十一人でございます。
雇用形態別の割合は、常勤が一六%、非常勤が三六%、ボランティアが四八%でございます。
年齢別の割合は、多い順に申し上げますと、六十代が二二・八%、五十代が一九・七%、四十代が一六・〇%、七十代が一二・〇%となってございます。
○宮本(岳)委員 特に年齢は聞いていないんですけれども。
今おっしゃったとおり、四万人おられて、そして、その内訳は、常勤が一五・七%となっておりまして、非常勤が四割弱、ボランティアが半分弱、これが現状なんですね。
こうなってくると、ボランティアですから、収入は本当に限られているわけですよ。そうなりますと、当然、高齢者やいわゆる専業主婦という方々が多くを占めることになる。その結果、先ほどおっしゃったようなことになるんですが。
ちょっと、改めて、五十代以上の方が何割を占めるか、それから二十代の方、三十代の方がそれぞれ何%か、答えていただけますか。五十代以上、総計で何割か。そして、二十代、三十代、それぞれ。
○杉浦(久)政府参考人 失礼いたしました。
五十代以上でございますけれども、五四・五%でございます。申し訳ございません。約五割を占めているということでございます。申し訳ございません。失礼しました。
申し訳ございません、二十代が五・五%、三十代が八・七%でございます。
申し訳ございませんでした。
○宮本(岳)委員 今答弁あったとおりですね。そして、文化庁の調査によると、法務省告示校の常勤日本語教師でも年収は四百万円未満が大部分を占めて、非常勤の場合は年収百五十万円未満が多くを占めている。要するに、日本語教師で食べていけないんですよ。食べていけないので、二十代、三十代の若い世代では、やりたくてもやれないんです。
この間、私は、何人もの日本語教育に携わる専門家の方々からお話を聞いてきましたけれども、それは、登録日本語教員というものをつくること自身に嫌だとか反対だという人はいませんでしたけれども、しかし、一番の問題はここなんだと。話を伺った専門家の方々は、ここが最大のネックになっているんだ、こういうことなんですね。
大臣、登録日本語教員と名前をつけてもらっただけでは御飯は食べられないんです。専門性を重視し、国家資格化するのであれば、日本語教育の専門職にふさわしく、小中高の教員免許と同様に、大学での養成を原則とする方向に転換するとともに、せめて小中高の教員並みの処遇を保障すべきだと私は思いますが、そう思われませんか。
○永岡国務大臣 本法案におきましては、登録日本語教員の新たな国家資格を設けております。これによりまして、日本語教師の必要性ですとか専門性の社会的認知の向上が期待をできまして、処遇の改善にもつながると考えているところでございます。
そのほか、登録日本語教員が活躍できますように、日本語指導に必要な専門性を高めるための研修ですとか、教員自身のキャリアが証明できるようなサイトの構築などに取り組んでまいります。
文部科学省といたしましては、こうした取組を通じまして、専門性が高い登録日本語教員が社会において適切な評価が受けられますような、そういう環境整備に努めてまいる所存でございます。
○宮本(岳)委員 専門性が高いということは、処遇も安定していなきゃ駄目なんですよね。専門性だけ高くして、処遇についてはあずかり知らないというのでは、いや、やりがいがあるんですよ、やりがいがある仕事なので、現状はまさにやりがい搾取みたいな、やりがいがあるから、まあ低賃金でもやっているみたいな、そういうことにあぐらをかいていたのでは駄目だということは申し上げておきたいというふうに思います。
先ほど、質問の冒頭で、我が党が昨年の参議院選挙で、「夜間中学などを含め外国人労働者・家族の日本語教育の充実を図ります。」と公約したことを紹介いたしました。残された時間ですけれども、夜間中学についてお聞きしたいと思います。
言うまでもなく、夜間中学については、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律、いわゆる教育機会確保法によって法的に位置づけられております。
夜間中学に光が当たることになったきっかけは、二〇一三年十一月二十七日の当委員会の質疑と、それに先立って行われた当委員会、衆議院文部科学委員会による足立区第四中学校の夜間学級の視察でありました。
このときの質疑で私の問いに答えて、当時の下村博文文部科学大臣が、初めて文部科学省として、改めて総務省に、国勢調査項目に義務教育未修了者の把握についても入れてほしいということについては要望していきたいと答弁をされました。さらには、全都道府県に一か所の夜間中学を検討したいという画期的な答弁が出て、これをきっかけに大きく動き始めた。
二〇一三年の議論でも取り上げましたけれども、この夜間中学の法的根拠というのがこのとき議論されております。私は、国際人権A規約、社会権規約十三条二項の(d)を引いて議論をいたしました。当時の加藤重治文部科学省国際統括官は、社会権規約十三条二項(d)には、「基礎教育は、初等教育を受けなかつた者又はその全課程を修了しなかつた者のため、できる限り奨励され又は強化される」と規定されていることを答弁した上で、「我が国はこの国際人権A規約を昭和五十四年に批准してございますので、日本政府はこの十三条二項(d)に拘束されているものでございます。」こう明確に答弁をされました。こういうやり取りを受けて、二〇一六年、議員立法で教育機会確保法が制定されたわけですね。
これも事実確認ですから、初等中等教育局長に聞きますが、その第一条「目的」には何と書かれてありますか。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
御指摘の教育機会確保法第一条、ここに目的が定めてあるわけでございますけれども、「この法律は、教育基本法及び児童の権利に関する条約等の教育に関する条約の趣旨にのっとり、教育機会の確保等に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進することを目的とする。」と規定されていると承知をしております。
○宮本(岳)委員 「教育基本法及び児童の権利に関する条約等の教育に関する条約の趣旨にのっとり、」と、これは第一条に書かれているわけですね。そうなりますと、教育機会の確保に関する施策というものは、当然、国際人権A規約第十三条も踏まえて実施している、こう考えますが、そういう認識でよろしいですか。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
我が国も国際人権A規約を批准をしており、当該条約の趣旨も踏まえ、夜間中学において、我が国又は本国において義務教育を修了していない外国籍の方などに対する日本語指導も含め、教育機会の確保に関する施策を実施をしているところでございます。
○宮本(岳)委員 まさに、この教育機会確保法の国際条約の中には、こういう形で国際人権A規約第十三条も踏まえているという御答弁だったと思います。
そこで、私に対する答弁を受けて、確かに、文部科学省は、総務省に対して、国勢調査項目に義務教育未修了者の把握についても入れてほしいという要望を行い、それが受け入れられて、二〇二〇年の国勢調査で初めて、未就学者と区別して、最終卒業学校が小学校という方の数をつかんだわけですね。
その結果、未就学者、最終卒業学校が小学校の者、それぞれ何人になっているか、これも初中局から答えていただけますか。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
総務省が昨年五月に公表した令和二年の国勢調査では、令和二年十月一日時点で十五歳以上の方の中で、いずれの学校にも在学しておらず、小学校にも中学校にも在学したことのない者又は小学校を中退した者、これが九万四千四百五十五人でございます。また、小学校のみ卒業した者又は中学校を中退した者、こちらが八十万四千二百九十三人となっているところでございます。
○宮本(岳)委員 九万四千四百五十五人と八十万四千二百九十三人ですから、合わせて九十万人ですけれども、そのうち、最終卒業学校が小学校の方が八十万人と、圧倒的に中学校未卒者が多いわけですね。ですから、これにより、夜間中学の設置ニーズが統計上も明らかになったということだと思うんです。
それも受けて、二〇二一年の一月の衆議院予算委員会で、当時の菅首相が、今後五年間で全ての都道府県・指定都市に夜間中学校が少なくとも一つ設置される、これを目指して取り組みたいと答弁をいたしました。
今はそれから二年たっていますけれども、どこまで進んだのか、到達点を御答弁いただけますか。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
現在、四十七都道府県、二十政令指定都市のうち、既に夜間中学がある地域、これが十一都道府県、十二指定都市でございます。また、令和六年度設置予定を含めますと、十七都道府県、十三政令指定都市、また、令和七年度設置予定までを含めると、二十一都道府県、十五指定都市となる予定でございます。
○宮本(岳)委員 全て加えても、都道府県では四十七都道府県中二十一都道府県ですよね。政令指定都市では二十政令市中十五都市。政令市は七五%ということでありますけれども、都道府県ではまだまだ半分に届かないという状況であります。
私は、今日の質問の準備に当たって、大阪市立天満中学校の夜間学級にお伺いをして、お話を聞くとともに、授業風景も見せていただいてまいりました。やはり、外国人の生徒が増えて、日本語指導のみのクラスを到達度別に三クラスつくるなど、日本語指導に随分現場は苦労されておりました。
もちろんICT化がされていますから、私が以前見に行った夜間中学では、先生が頭を指して、あ、あとか言って、頭の「あ」とか言って、「あ」という字を書いてとかとやっていましたけれども、今は、ディスプレーというかテレビみたいな画面にいろいろな、動画も含めて、動画や図形を出してやっていましたけれども、御苦労をいただいていることはよく分かりました。
そして、そこには、日本語指導の研修を受けた有資格者の教員の方が配置されていると。このクラスはそういう、ちゃんと日本語指導の研修を受けています、こういうふうに御説明をいただきました。
夜間中学が海外から来られた方とその子女の教育の役割をも担うとすれば、やはり一般の中学校以上に、日本語指導に当たる教員配置や加配が必要だと思います。文科省、当然そういう措置は行われているんですか。
○藤江政府参考人 お答え申し上げます。
夜間中学に在籍する生徒のうち約七割は外国人生徒となっておりまして、また、令和四年度までに設置されていた夜間中学四十校のうち三十九校には日本語指導が必要な生徒が在籍していることなどから、夜間中学における日本語指導の充実が求められているところでございます。
文部科学省といたしましては、夜間中学を含めまして、日本語指導充実のため、日本語指導が必要な生徒に対して取り出し指導を行う特別の教育課程の制度化、日本語指導に必要な教職員定数の着実な改善、日本語指導担当教員等に対する研修の実施ですとか、日本語指導補助者などの外部人材の配置など、外国人生徒等に対するきめ細かい日本語指導に取り組む自治体に対する支援などを行ってきたところでございます。
引き続き、日本語指導が必要な外国人生徒等の教育的ニーズに応じたきめ細かな支援に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 今、大いに夜間中学がそういう役割を果たす必要があると思います。
それで、最後に大臣にお伺いするわけでありますけれども、かつて菅首相が明言したこの目標、五年間に全ての都道府県・指定都市に夜間中学校が少なくとも一つ設置されることを目指して全力で頑張る、この目標については、当然大臣もこれを掲げて、全力で頑張っていただけますか。その御決意をお伺いしたいと思います。
○永岡国務大臣 夜間中学というのは、先生も御指摘いただいておりますけれども、義務教育を修了できなかった方、また、不登校など様々な事情により十分な教育を受けられないまま中学校を卒業した方、また、我が国又は本国において義務教育を修了していない外国籍の方など、教育を受ける機会を保障する役割というものを果たしているものと考えております。
私もやはり、昨年九月なんですけれども、大臣になりまして、常総市立の水海道中学校の夜間学級へ行ってまいりました。在籍されていた生徒さんというのは総勢三十六名ということでございますが、そのうち二十六名の方が外国籍の方でございました。生徒さんの皆さん、本当に学ぶ力が強い。本当に意欲があるんですね。その高さと、それからあと、対応してくださる先生方の熱意というものが本当に、視察をしておりましても、非常に心打たれるということを感じました。やはり、夜間中学が義務教育を実質的に保障する重要な役割を果たしているということを改めて感じたわけでございます。
文部科学省といたしましても、引き続きまして、全都道府県、そして指定都市に少なくとも一校設置されますように、設置に向けた自治体の取組、これをしっかりと促してまいりたい、そう考えております。
○宮本(岳)委員 教育機会確保法附則の三には、「この法律の施行後三年以内にこの法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づき、教育機会の確保等の在り方の見直しを含め、必要な措置を講ずるものとする。」と定められております。
二〇二六年までに全都道府県と全政令市に夜間中学を設置することはもちろん、子どもの権利条約や国際人権規約の精神に立って、文字どおり、全ての人に基礎教育を保障する立場に立って不断の見直しを行うことを強く求めて、私の質問を終わります。
―――――――――――――
反対討論
○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表して、日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案に反対の討論を行います。
本法案は、日本語学校を適正化するといいますが、現行の日本語学校を法務省告示から文科省認定へと、その認定する官庁を移し替えても、問題の根本解決にはならないからです。
現行の日本語学校の最大の問題は、その大半が、受け入れた多くの留学生を安い労働力として利用することと一体に運営されていることです。留学生の多くは、留学開始前から渡航費やあっせん手数料など百万円以上の借金返済を抱え、学費や生活費、母国への仕送りのためにアルバイトに追われるなど、留学とはほど遠い実態にあります。
しかも、法務省告示八百三十二機関のうち、営利目的の株式会社などが六割以上を占め、中には、学校の理事長自身が人材派遣会社を経営し、留学生からパスポートを没収し、週二十八時間以上働かせ、不当に高い家賃を徴収するなど、外国人ビジネス、留学生搾取と言える悪質な事例まであります。
こうした実態にメスを入れ、悪質な日本語学校を排除、規制するなど、留学生を搾取する構造そのものを変えることが求められています。
ところが、本法案は、法務省告示から文部科学大臣による認定へと学校を認定する主体を変更するだけで、留学生搾取の仕組みや構造は何ら変わっていません。法案は、現行の法務省告示校をそのまま日本語教育機関と認定することを想定していますが、これでは、現状の日本語学校を追認するにとどまらず、法律に基づく文科大臣の認定を与えることで違法、無法な留学生搾取を助長しかねず、容認できません。
留学生は留学生として受け入れるべきです。留学という名目で、労働させるために外国人を受け入れ、留学生を搾取する構造を改めること、留学生募集、留学生の就労など、留学生受入れ政策を抜本的に見直すことを求めます。
また、日本語教育を担う日本語教師の問題についても一言申し上げたい。
日本語教師の年収は、常勤でもその多くが四百万円未満、非常勤では百五十万円未満にとどまり、生業として成り立たない現状があります。本法案の登録日本語教員の国家資格化だけでは、やりがい搾取とも言える処遇の改善にはなりません。文化や生活面も含め、日本語教育の専門職として地位向上を図るべきだと申し上げ、討論といたします。