理研、資金申請に虚偽
雇い止め問題 宮本岳志氏全容解明迫る
衆院文科委
日本共産党の宮本岳志議員は24日の衆院文部科学委員会で、理化学研究所が研究者の雇用期間を水増しして日本学術振興会の資金を申請し、実際には無期雇用への転換ルールから逃れるため2年半も前倒しで雇い止めした問題を追及しました。
宮本氏が取り上げたのは、文部科学大臣若手科学者賞などの受賞歴がある30代の研究者の事例です。理研は2018年、研究者の今後の任期を7年と偽り振興会の「卓越研究員」に応募。認められ振興会から資金を得ながら、研究者の通算雇用期間が10年を超え、無期転換ルールが適用される直前の今年3月末に雇い止めしました。
宮本氏は、理研が振興会に毎年度提出する事業結果報告書では任期を7~10年と記す一方、研究者に示す際は任期の欄が空白だったという研究者本人の証言を紹介。振興会は任期の具体例で最低5年は必要としているとし、任期が4年半では公募に通らないので、研究者には申請内容を隠したまま、振興会に7~10年と申請したのではないかと追及しました。
永岡桂子文科相は「説明と異なる形で雇用が終了したことは大変遺憾」と答弁。宮本氏が、虚偽申請で総額1千万円の国費を理研が得たことを示して全容解明を迫ると、永岡氏は理研が調査を開始したことを明らかにし「その結果を踏まえ卓越研究員事業の対応策を検討していく」と表明しました。
(しんぶん赤旗 2023年5月25日)
動画 https://youtu.be/dV1tzlUVyv0
配付資料 20230524文科委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
いわゆるナノテラス法案について質問いたします。
本法案は、大学や企業の研究のために、先日視察にも伺ったナノテラス、次世代放射光施設の共用を促進するものであり、学術研究の発展に資するものだと考え、参議院でも賛成をいたしました。
ただ、ナノテラスの整備費に関しては、宮城県は当初三十億円を負担する予定でしたけれども、十億円の負担が追加され、四十億円となった。同じく仙台市でも、当初の計画より負担額が増えているという心配の声が聞こえております。
まず大臣に、この地方の声にどう応えるのか、文科大臣としての見解をお伺いしたいと思います。
○永岡国務大臣 お答え申し上げます。
ナノテラスに対しまして、宮城県、仙台市から積極的な御支援をいただいていると承知しておりまして、大変心強く思っております。
ナノテラスは、官民地域パートナーシップにおけます役割分担の下で整備、運用がなされておりまして、地域パートナー側の資金につきましては、宮城県や仙台市からの補助金のほか、企業からの加入金、寄附金などによりまして確保が進められていると承知をしております。
自治体等の過大な負担を避けまして、何より、ナノテラスの成果を社会に還元するためにも、加入企業でありますとか寄附金の増加を図ることが重要でございます。
このため、文部科学省によります、ナノテラスの利用制度につきまして、全国説明会、そして、一般財団法人光科学イノベーションセンターによる広報活動、それから、東北大学によります、青葉山新キャンパスに整備をされましたサイエンスパークにおける新事業の展開などによりまして、収入源の多様化が進むことを期待しております。
これらの取組によりまして、ナノテラスが安定的に運営されるとともに、自治体等への過大な負担とならないように、引き続きまして、地域パートナーとしっかり相談しながら進めてまいります。
○宮本(岳)委員 是非そういう方向でお願いいたします。
一昨日の参議院決算委員会では、我が党の田村智子議員が理研の大量雇い止め問題について質問いたしました。
どんな立派な施設ができても、そこで働く者、研究する方々の雇用といいますか立場が守られなければなりません。
理研ネットの抗議声明で紹介された三十代のユニットリーダーの雇い止め、これが議論になりました。
改めて紹介いたしますけれども、この人は、文部科学大臣若手科学者賞や東大総長賞など数々の受賞歴があり、昨年もネイチャー誌に論文が採択されたという、非常に優秀な研究者の方であります。このユニットリーダーは、日本学術振興会、JSPSの卓越研究員にも採択をされておりましたが、卓越研究員としての研究は僅か四年半にとどまり、常勤、定年制の職に就くどころか、無期雇用転換権を与えないために雇い止めになりました。
資料一を見ていただきたい。
大臣は、一昨日の参議院決算委員会で、理研ネットの声明に取り上げられておりますユニットリーダーにつきましては、卓越研究員事業に採用されました研究所の卓越研究員としての理化学研究所における有期雇用の任期が四年半であったにもかかわらず、理化学研究所は当該研究者の卓越研究員としての任期は原則七年といたしまして日本学術振興会に対して報告していたと聞いているところでございます、理化学研究所によれば、労働契約としては労使間の合意に基づきまして適切に運用されているものの、日本学術振興会への報告内容が一部適切でなかったと聞いているところです、文部科学省といたしましては、今後、理化学研究所におきましてこのようなことがないよう改善を図ってもらいたいと考えておりますと答弁をされました。
大臣に聞きますけれども、一部適切でなかったというのは、何が適切でなかったと考えておられますか。
○永岡国務大臣 昨日私が申し上げましたのは、雇用期間が七年というところを四年半と言ったというところでございます。
○宮本(岳)委員 雇用期間が七年というところを四年半としていたことが問題だと。つまり、四年半で雇い止めが問題だとおっしゃったわけですか。
○永岡国務大臣 これは申告内容が間違っていたというところでございます。
○宮本(岳)委員 だから、それを私は問題にしたいわけですね。申告内容が七年になっていたのがまずかったと。これは私は到底納得できません。そもそも、七年というのは、これは理研側の文書に書かれていることでありまして、それが間違っていたでは済まないんですね。
資料二を見ていただきたい。これは文部科学省から提出を受けた資料であります。この方が卓越研究員事業に応募する際に理研が文科省に提出した、平成三十年度卓越研究員事業研究機関申請書であります。これは文部科学省から出ているものですね。
赤線部を見てください。ここには、「卓越研究員が、所内の大型施設、共用機器等、理研の充実した研究環境の下で、存分に自立的な研究が実施できるよう、雇用期間を原則七年間とした安定性のある雇用環境を用意する。」こうありますね。この申請書を見て、文科省は事業に適合していると判断したはずであります。
理研が毎年JSPSに対して提出している事業結果報告書の補助事業の達成状況についての項目、「卓越研究員一名についても、任期を七年(ポストによっては、評価により十年まで)」と書かれていることを私は確認しております。
これは局長でいいですが、間違いないですね。
○森政府参考人 お答えいたします。
この事業の説明書においては、任期を七年、ポストにより、評価により十年までというのは、卓越研究員の仕組みとして、そういうことで報告をしてございます。
○宮本(岳)委員 ちょっとはっきり言っていただけますか、もう一回。
○柿田政府参考人 お答えいたします。
理化学研究所からの事業結果の説明書におきまして、任期を七年とするということが記載されているということは承知をしております。
○宮本(岳)委員 そのとおりなんですね。
この事業結果報告書についてユニットリーダーに確認をすると、実は、結果報告書というのは御本人も書く欄があるんです。理研から御自身に報告書のひな形が送られてきた、そして、その中に自らの研究成果を書き込むということでありますが、「任期を七年(ポストによっては、評価により十年まで)」、この記述のある欄は御本人には空白で出されていた、隠されていたということなんですね。
つまり、理研は、卓越研究員事業に申請する当初から、このユニットリーダーが雇い止めされる今年度、つまりこの三月三十一日までの事業結果報告に至るまで、一貫して雇用期間七年と書き続けておきながら、これは文科省やJSPSには出しておきながら、一方で、このユニットリーダーに対してはその事実を隠していたということなんですね。これは、一部適切ではなかったなどと言って到底済まされる問題ではありません。
では、なぜ、わざわざ理研は七年と偽って申請したのか。
確認しますけれども、科学技術・学術政策局長ですかね、この卓越研究員という制度は、どのような目的、目標を持って実施されておりますか。
○柿田政府参考人 お答えいたします。
卓越研究員事業は、優れた若手が、産学官の研究機関において、安定かつ自立した研究環境を得て自主的、自立的な研究に専念できるよう、研究者及び研究機関に対する支援を行うものであります。
○宮本(岳)委員 優れた若手研究者が安定かつ自立した研究環境を得て自主的、自立的な研究に専念できるよう支援する制度。
資料三の一を見ていただきたい。この卓越研究員制度の公募要項、今日持ってきましたが、これだけあるんですが、この公募要項の五ページの説明であります。
「テニュアトラック制又はこれと同趣旨の公正で透明性が高く、安定性の高い人事システムでの雇用」、あるいは「任期の定めの無い雇用」、こういうことであり、つまり無期転換ということですね。一つ目の、テニュアトラック制と同趣旨の公正で透明性が高く、安定性の高い人事システム、これはちょっとややこしいですから、これについての説明が次のページ、資料三の二であります。
赤線部を見ていただきたい。「一定期間の確実な雇用の確保と将来の見通しがつくことが必要」とあり、「任期や再任回数に制限があることがやむを得ない場合であっても、機関において雇用の確保と将来の見通しを示す研究環境が最大限確保(例:五~十年程度の雇用の確保等)されれば、要件に合致するものと認める場合があります。」五から十年、これが確保されていれば認める場合がある、こう書かれていますね。
雇用の確保と将来の見通しを示す例として五から十年としている、正直に四年半と書いたのでは事業の趣旨に反する可能性がある。だから、理研は一貫して七年あるいは十年などという偽りをしてきたんじゃないですか。
大臣、理研は、雇用期間が四年半しかないにもかかわらず、文科省には、七年、場合によれば十年というような虚偽の報告をして、この研究者があたかも安定かつ自立した研究環境を得て自主的、自立的な研究に専念できるかのように偽って、装って、研究者及び研究機関に対する支援を引き出したということになりますね。
大臣、これはほっておいていいんですか、なぜ怒らないんですか。
○永岡国務大臣 理化学研究所からは、ポストの提示の際に、卓越研究員が存分に自立的な研究が実施できますように、研究の立ち上げや転出のための活動期間を含めまして原則七年とした安定性のある雇用環境を用意する趣旨の説明がなされておりまして、文部科学省といたしましては、事業の趣旨に合うものとして適切であると判断をして、支援を行ってきたものでございます。
今般、提示ポストの説明と異なる形で、理化学研究所におきまして当該研究者の雇用が終了したことにつきましては、大変遺憾であると思っております。
○宮本(岳)委員 遺憾で済まないんですよ。
この七年という申請に基づいて、卓越研究員を決定し補助金が出ている。補助金は、研究者本人にも出ておりますけれども、研究環境整備費は研究機関である理研に出ております。
これは局長に確認しますが、理研に対して、研究環境整備費として、この方が卓越研究員として採用された平成三十年度から令和四年度までの五年間に、総額幾ら出ておりますか。
○森政府参考人 お答えいたします。
御質問の研究者に関しまして、理化学研究所が平成三十年度から令和四年度の五年間に卓越研究員事業の研究環境整備費として受け取った金額は、合計一千万円になります。
○宮本(岳)委員 任期七年という甚だ事実に反する申請に基づいて、総額一千万円の国費が理研に出されております。これは書き間違いで済まされる問題ではありません。遺憾で済む問題でもありません。
これは、大臣、どうするつもりですか。
○永岡国務大臣 理化学研究所におきましては、卓越研究員として採用された研究者が、提示されたポストについて示されました原則七年の任期と異なる四年半で雇用が終了したことにつきまして、早急に調査を開始をして、そして状況を明らかにすると伺っております。
文部科学省といたしましては、その結果を踏まえた上で、卓越研究員事業についての対応策、これをしっかりと検討してまいります。
○宮本(岳)委員 文科省は、無期転換権を得る前の雇い止めを方針としている理研の新人事制度を、好事例だといって全国の国立大学に紹介することまでやってきました。その理研がこんな不正を行っているわけですから、これを放置することはできません。調査をし、そしてその問題を正すことは当然です。
誰がこの不正を行ったのか、そのことも含めて徹底的な調査と全容解明を求めて、私の質問を終わります。