大学自治へ乱暴な介入
衆院本会議 国大法改悪案 宮本岳志議員が批判
国立大学法人法改悪案が7日の衆院本会議で審議入りしました。改悪案は一定規模以上の国立大学に事実上の最高意思決定機関となる「運営方針会議」(合議体)の設置を義務付けます。合議体の委員の選定には文部科学相の承認が必要になります。日本共産党の宮本岳志議員は「学問の自由、大学の自治への乱暴な介入で許されない」と追及しました。(関連記事)
現在、国立大学の運営に関わる重要事項の最終決定権は学長にあり、決定前に学内の意見を反映する仕組みが残されています。改悪案は、中期目標・計画、予算・決算に関する事項などの決定権を合議体に移管。事実上、大学の最終意思決定機関とします。
宮本氏は「なぜ委員選出に文科相の承認が必要なのか。政府の意に沿わない委員を承認しない可能性があるのではないか」とただしました。
盛山正仁文科相は「明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き、拒否できない」と述べるだけで、承認しない可能性を否定しませんでした。
もともと合議体は、10兆円の大学ファンドの支援を受ける「国際卓越研究大学」に設置を義務付けるとしていましたが、改悪案は政令で指定される大規模大学全てに設置を拡大します。宮本氏は、法案は大学を政府の意のままにしようとするものであり、政府の助成を受ける代わりに国の介入を許し、軍事研究にさえ手を染めさせようとするものだと批判しました。
(しんぶん赤旗 2023年11月8日)
動画 https://youtu.be/LReHOWID-BM?si=8Fsot6j937pF_o0M
議事録
○宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、国立大学法人法一部改正案について、文部科学大臣に質問いたします。(拍手)
そもそも、大学の自治と学問の自由は、戦前、国家が学術研究を弾圧、介入した歴史の反省に立ち、二十三条を始め日本国憲法が高く掲げた不動の原則です。大学自治と学問の自由についての文部科学大臣の見解をまずお聞きしたい。
二〇〇四年の国立大学法人化に際して、政府は、大学の自主性、自律性を高めるためと言いました。しかし、その後行われたことは、運営費交付金の削減であり、学長権限強化の名の下に教授会を学長の諮問機関にし、文部科学大臣が任命する監事の機能権限を拡大し、さらには、大学ファンド法、国際卓越研究大学法は、リスクを負うファンドの運用益で、僅か数校のトップ大学に限定的な支援をするというやり方で、政府が大学を意のままにコントロールしようとするものでした。
大臣、大学の自主自律に基づく大学運営、大学の自治をこれまでにない規模で破壊してきたことへの反省はないのですか。
本法案では、大規模な国立大学法人に設置することとされる運営方針会議の構成員である運営方針委員は、学長選考・監察会議との協議を経て、文部科学大臣の承認を得た上で、学長が任命するとされています。
なぜ委員の選出に文部科学大臣の承認が必要なのですか。これは、政府の意向に沿わない委員について、承認しない可能性があるということではありませんか。答弁を求めます。
大臣の承認を必要とする仕組み自体、学問の自由、大学の自治への乱暴な介入で、許されるものではありません。そうではないというのなら、その担保はどこにあるのか、明確にお答えいただきたい。
運営方針会議の設置について、国際卓越研究大学法の審議の際には、国際卓越研究大学以外の大学には同様のガバナンスは求めないとされていたにもかかわらず、本法案では、政令で指定する大規模な大学全てに設置することとされており、大学関係者からはだまし討ちとの声が上がっています。文部科学省は一体いつ方針転換し、それはどこで誰が検討したのか、答弁を求めます。
本法案は、国際卓越研究大学の制度を足がかりに、一層選択と集中を進めるため、合議体を大学につくらせ、大学を政府の意のままにしようとするものです。政府の助成を受ける代わりに国の介入を許し、結局は、デュアルユースの名目で、軍事研究にさえ手を染めさせようとするものではありませんか。答弁を求めます。
大臣、なぜここまで研究力が低下してきたのか、その反省と分析がありません。
研究力強化のために必要なことは、大学の運営費交付金を始めとする基盤的経費を抜本的に増やすことであります。基盤的経費を削減し、選択と集中を推し進めてきた結果、大学の資金が枯渇し、研究が立ち行かなくなり、人件費の削減や非常勤教職員が増加しているのではありませんか。答弁を求めます。
今年三月末、理化学研究所や一部大学で、任期付研究者の大量雇い止めが強行されました。その数は約三千人に上ります。
必要なことは、教員や研究者の勤務条件を、任期つきや非常勤ではなくて正規雇用とし、安定して、自由に教育研究に打ち込めるようにすることではありませんか。
これこそ真の研究力強化の道である、このことを指摘して、私の質問を終わります。(拍手)
○国務大臣(盛山正仁君) 宮本議員にお答えいたします。
まず、学問の自由及び大学の自治についてお尋ねがありました。
憲法第二十三条に定められた学問の自由は、広く全ての国民に保障されたものであり、特に、大学における学問研究及びその成果の発表、教授が自由に行われることを保障したものであると認識しています。
また、大学の自治は、この学問の自由を保障するために、教育研究に関する大学の自主性を尊重する制度と慣行として保障されるものであると考えています。
次に、法人化以降の大学運営についてお尋ねがありました。
平成十六年の国立大学法人化以降、大学運営における学長のリーダーシップの確立、また、監事の体制や機能の強化のための法改正等を行ってまいりました。
これらの法改正は、学長の決定権の適切な発揮や学内における業務の監督を適正に機能させることを目的としたものであり、教育研究に関する大学の自主性を尊重するという大学の自治を壊すものとは考えておりません。
次に、運営方針委員の任命に係る文部科学大臣の承認についてお尋ねがありました。
現行の国立大学法人制度においては、学長が法人運営に全ての事項を決定する権限を有しており、主務大臣である文部科学大臣が国立大学法人の申出に基づいて学長を任命することとなっております。
運営方針会議を設置する国立大学法人については、学長の決定権限の一部を運営方針会議に移譲するため、文部科学大臣が学長を任命する現行制度上の趣旨を勘案し、法律上、主務大臣の関与として文部科学大臣が承認するという手続を規定することとしております。
なお、その承認に当たっては、大学の自主性、自律性に鑑み、申出に明白な形式的違反性や違法性がある場合や、明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き、拒否することはできないものとするため、文部科学大臣の学長任命の規定に倣い、承認は国立大学法人の申出に基づいて行うものとすることを規定することで、大学の自治への介入とはならない制度としております。
次に、運営方針会議の設置に関する経緯についてお尋ねがありました。
今回の法案におけるガバナンス強化の議論の契機となった国際卓越研究大学に求められるガバナンスの議論においては、大学ファンドからの支援を受け、自律的な大学へ成長する大学は、経営に係る意思決定機能や執行に関する監督機能の強化のために合議体を設置することが必要とされたところです。
その後、具体の法律案を検討する過程で、国際卓越研究大学であるか否かにかかわらず、大学の活動の充実に必要な運営機能を強化するという観点から、事業規模が特に大きい国立大学法人については運営方針会議の設置を義務づけるとともに、その他の国立大学法人については、大学からの申請を踏まえ、文部科学大臣の承認を受けて運営方針会議を設置することとしております。
この点については、本年九月以降、科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会や総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員懇談会、国立大学協会の会議において、改正の方向性をお示ししながら検討を進めてきたところです。
次に、合議体の設置についてお尋ねがありました。
運営方針会議の設置は、多様な専門性を有する方々に大学運営に参画していただくことで、法人の運営方針の継続性、安定性を確保し、長期的にステークホルダーに支えられる大学運営を可能とすることを目的としているものであり、御指摘のような政府による大学への関与の強化等を目的とするものではありません。
なお、文部科学大臣による運営方針委員の承認に当たっては、大学の自主性、自律性に鑑み、申出に明白な形式的違反性や違法性がある場合や、明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き、拒否することはないと考えております。
次に、基盤的経費と教職員の雇用に関する課題についてお尋ねがありました。
国立大学法人運営費交付金は、平成二十七年度以降、前年度と同額程度の予算額を確保しているところです。また、国立大学の経常費用が法人化以降増加している中で、近年、人件費については微増傾向であり、大学を本務とする教員のうち任期の定めのない教員の割合については、おおむね同じ割合で推移している状況となっております。
研究力強化のためには、研究者が腰を据えて挑戦的な研究に取り組める環境を整備することが重要であり、各大学においては、運営費交付金のみならず、民間資金を活用して任期の定めのないポストを確保する取組なども行われています。
こういった取組を進めていくためには、基盤的経費と競争的研究費をバランスよく確保する必要があることから、引き続き、これらの確保に全力で取り組んでまいります。
次に、研究者等の雇用環境についてお尋ねがありました。
無期転換ルールの適用を免れる意図を持っていわゆる雇い止めを行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましくなく、これまで、各大学や研究機関等における職員の雇用管理等について適切な対応を促してまいりました。
文部科学省では、基盤的経費や競争的研究費の確保を通じ、各機関における研究者の雇用環境の整備に係る取組を支援しています。
加えて、国立大学における若手ポストの確保など、人事給与マネジメント改革等を考慮した運営費交付金の配分の実施等の取組を進めてきているところです。
また、理化学研究所等の個別の研究開発法人においても、若手研究者の育成支援のためのポスト新設や支援拡充といった動きも見られます。
文部科学省としては、我が国の研究力強化のため、引き続き、魅力的な研究環境の構築を図ってまいります。(拍手)