大学の軍事研究に道
宮本岳志議員 国大法改悪案を批判
衆院文科委
日本共産党の宮本岳志議員は15日の衆院文部科学委員会で、国立大学法人法改悪案は、憲法23条の学問の自由をおびやかし「軍事研究に道を開くものだ」と批判し、徹底審議を求めました。
改悪案は、政令で指定する一定規模以上の国立大学に新たな合議体「運営方針会議」の設置を義務付け、同会議に中期計画などの最終決定権を移管し、委員選定を文科相の承認事項とします。
宮本氏は、現在、大学の中期目標は文科相が定め、大学はそれに従って中期計画をつくっていると指摘。合議体の委員選定に文科相の承認が必要となれば、「政府が大学を意のままに操れることになりかねない」と批判しました。
宮本氏は、政府が法改悪で狙うのは、「国立大学に簡単には押し付けられない軍事研究だ」と強調。昨年末に閣議決定された安保3文書の一つ「国家安全保障戦略」に基づき、政府が先端科学技術の防衛利用に向け省庁間で連携する関係閣僚会議を設置し、議論を進めてきたことを指摘しました。
宮本氏は、同会議では、防衛研究に結び付く可能性が高いものを効率的に発掘・育成することを目指す「マッチング事業」や、「経済安全保障重要技術育成プログラム」に言及していると告発。これらは文科省も連携して取り組むものだとして、国立大学も巻き込まれる可能性があると迫りました。
内閣官房の室田幸靖内閣審議官は、「特定の研究機関をあらかじめ排除することにはなっていない」と答弁し、否定しませんでした。
宮本氏は、軍事研究に道を開くと批判しました。
(しんぶん赤旗 2023年11月16日)
動画 https://youtu.be/j4yo3KOln2E?si=JaNFcuv5ZlUwG6x2
配付資料 20231115文科委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
昨日の参考人質疑でも、私は、「註解日本国憲法」も紹介しながら、日本国憲法は一般的な思想の自由と区別して学問の自由というものをわざわざ書き込んでいる、旧憲法にはそういうものはなかったということを紹介いたしました。四人の参考人の皆さんどなたも、大学の自治、学問の自由、憲法二十三条、重要だ、こういう御答弁でございました。
まず大臣に、学問の自由、大学の自治についてのどのような認識をお持ちか、お答えいただきたい。
○盛山国務大臣 宮本先生の鋭い追及に御満足できる答弁になるかどうか、自信がありませんですけれども、憲法第二十三条の学問の自由は、第二次世界大戦前に、第二次世界大戦が終了するまでということですかね、国家権力によって侵害された歴史を踏まえ、広く全ての国民に保障するものとして規定されたと承知しております。特に、大学における学問研究及びその成果の発表、授業、教授、こういったものが自由に行われることを保障したものであると認識しております。
また、大学の自治は、この学問の自由を保障するために、教育研究に関する大学の自主性を尊重する制度と慣行として保障されるものと考えております。
○宮本(岳)委員 それはなかなかいい答弁だったと思います。
だからこそ、文科省は、二〇〇四年の大学法人化の際に、大学が裁量を持って意思決定をし、自主性、自律性を高めるものだと説明をいたしました。
つまり、独立行政法人通則法に基づく一般の独法化は、効率性の向上を目的の一つにしておりましたけれども、国立大学法人化は、効率化のための法人化ではなく、自主性、自律性を高める法人化である。大臣、これは今でも考えは変わっていないんですか。
○盛山国務大臣 国立大学の法人化は、平成十一年の閣議決定で、大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討することとされました。これを受けて、独立行政法人制度を活用しながらも、教育研究の特性を踏まえ、大学の自律的な運営を確保することにより個性豊かな国立大学を創造するという大学改革の観点に沿って検討を行い、国会において御審議いただいた上で、現在の国立大学法人法が平成十五年に成立をいたしております。
このような国立大学法人法の趣旨は、現在においても変更は全くありません。
○宮本(岳)委員 そのような目的を持って、そして、今も変わっていない目的を持って法人化したと言いながら、一方で、大臣は研究力の低下ということもおっしゃいます。
では、大臣にお伺いしますけれども、大学法人化をやって、自主、自律でうまく進めてきたと言いながら、なぜ日本の大学の研究力の低下が起こっているのか、この原因についてはどうお考えですか。
○盛山国務大臣 国立大学の法人化によりまして、予算の執行、組織の整備等について、基本的には国立大学法人の判断により行うことが可能となっております。その後も何回かの法改正により、自律的な運営を確保しつつ、規制緩和を通じて大学の裁量を確保した結果、教育研究活動の活発化あるいは経常収支の拡大等が図られてきており、この点において、国立大学の法人化以降、大学の自主性、自律性は高まってきたと認識しております。
そしてまた、その研究力についても言及がございました。諸外国との比較において相対的に低下している原因としては、例えば、国際頭脳循環の流れに出遅れていること、あるいは博士後期課程学生のキャリアパスが不透明なこと、研究者が腰を据えて挑戦的な研究に取り組める環境が不足していることなどが考えられるわけでございますけれども、先生御指摘のように、国立大学の法人化によって大学の自主性、自律性は高まっているとは考えておりますが、他方、それによって大学の研究力が下がったというふうには我々は考えていないということを御理解いただきたいと思います。
○宮本(岳)委員 文科省は自主性、自律性を高める法人化だったと言いますけれども、私が本会議で指摘したように、国立大学法人化以降の二十年に実際に行われたことは、学長権限強化の名の下に法人執行部の裁量を拡大し、現場の教職員と執行部を分断、つまりボトムアップの仕組みを壊して、さらに、資金面では運営費交付金が減らされ、若手研究者を雇えなくなり、非正規化が進み、また競争資金確保に奔走するなど、研究者は疲弊し、腰を据えて研究できなくなってしまったことが研究力の低下の要因だと私は思います。
私も、生前、今日議論にもなった元東大総長で文部大臣も務められた故有馬朗人先生に、国立大学法人化は失敗だった、我々はだまされた、こういうふうに語られて、話をお聞きしたことを覚えております。
それにもかかわらず、それを反省することもなく今やっているのは、特定の数大学を対象に、大学ファンドで得た運用益で数百億円程度の支援をするという、まさに国際卓越研究大学制度というものなんですね。
何のための法改正なのか、運営方針会議を一定規模以上の大学に必置とする趣旨は一体何なのか、お答えいただけますか。
○盛山国務大臣 宮本先生も私も超党派の議連で、有馬先生とは、有馬先生が会長ということもあり、親しくさせていただいておりましたので、生前の有馬先生がおっしゃっておられたことが、今回の法案を御覧になってどういうふうにおっしゃられたか、ちょっとよく分からないところはあるんじゃないかなと。よく御説明をしたら、なるほどと言っていただける可能性もあったんじゃないかなと私は考えておりますが。
それはさておきまして、今回の法案におけますガバナンス強化の議論の契機となった、国際卓越研究大学に求められるガバナンスの議論におきましては、大学ファンドからの支援を受け自律的な大学へ成長する大学は、経営に係る意思決定機能や執行に関する監督機能の強化のために合議体を設置することが必要とされたところでございます。
その後の具体の法案検討の過程で、国際卓越研究大学であるか否かにかかわらず、今般の政令で指定することを想定している事業規模が特に大きい国立大学法人については、ステークホルダーとともに産学共同研究やスタートアップ創出に先進的に取り組んでいることも踏まえまして、運営方針会議の設置を義務づけ、そして、その他の国立大学法人についても、大学からの申請を踏まえて、文部科学大臣の承認の下に運営方針会議を設置することというふうにしたものであります。
○宮本(岳)委員 その法案の検討過程が問題なんですよね。
国際卓越研究大学は多額のお金が入ってくるわけですから、多様なステークホルダーがいることから、合議体をつくることが国際卓越研究大学の応募要件であって、そのためには国立大学法人法改正の必要があるということは私も承知をしておりました。
ところが、十月三十一日に閣議決定された法案を見て、驚きました。合議体の設置について、国際卓越研究大学だけでなく、一部大学に必置となっております。大学関係者からは、青天のへきれきだ、だまし討ちだという声が上がっております。
大臣は、法案について、国際卓越研究大学に求められるガバナンスの議論が契機だと言いますけれども、国際卓越研究大学法の質疑の中では、国際卓越研究大学以外の大学には同様のガバナンスは求めないと言っていたんですね。これが、いつ、どこで、どう変わったのか、変更されたのか、責任を持って御答弁いただけますか。事務方でもいいですよ、局長でも。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
総合科学技術・イノベーション会議が令和四年二月一日に取りまとめた「世界と伍する研究大学の在り方について」を踏まえ、文部科学省におきまして、国立大学法人法における合議体の位置づけについて、具体的な検討を開始いたしました。
文部科学省が法制上の検討を進める上で、本年七月から八月にかけて、国立大学協会や国際卓越研究大学に申請中であった国立大学法人の学長とも意見交換を実施して、国際卓越研究大学であるか否かにかかわらず、大学の活動の充実に必要な運営機能を強化するという観点から、事業規模が特に大きい五つの国立大学法人については運営方針会議を必置とするとともに、その他の国立大学法人については文部科学大臣の承認を受けて運営方針会議を設置することも可能であるという方向性を整理したところでございます。
その後、科学技術・学術審議会の大学研究力強化委員会や総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員懇談会、そして国立大学協会の会議などにおいて、改正案の内容をお示ししながら法律案をまとめたところでございます。
○宮本(岳)委員 七月から八月にかけて政府内で検討した、また個別に意見を聞いたと言うんですけれども、教職員含めて、国立大学関係者にちゃんと説明したり、協議をしたりする場を持って、本当に納得を得ながら進めてきたのか。どうなんですか。国立大学関係者に説明する場というのは、どれだけ持ったんですか。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたとおり、国際卓越研究大学に申請中であった国立大学の学長を始め、基本的には学長にお話をしたということでございますので、執行部や学内で一定程度共有されたかと思いますし、それから、国立大学協会に対しても御説明を申し上げてきたということでございます。
○宮本(岳)委員 国立大学協会の総会は十七日にあると伺っております。全部に説明したわけでもなく、北海道地区への説明についてはいまだにやられていないと私は聞いておりますけれども、事実ですね。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
各地区の会議で随時御説明しておりますが、北海道地区についてはまだでございます。
○宮本(岳)委員 これだけの大きな変更をやろうというときに、説明もしていないというのは信じ難い話ですよね。ましてや、国会審議を与党の側は急がれている。本当になっていないと思いますよ。ちゃんとやはり関係者にも説明し、合意を得ながら、納得を得ながら進めるものであって、なかなか納得しにくい中身でありますけれども、説明が全くされていないということですね。
必置とされているのは一部の大学でありますけれども、今回の東工大と東京医科歯科大のように、合併して一定規模に達すれば必置となる可能性はございます。大臣が承認すれば、どの大学も設置することができる規定でもあります。一部大学だけの問題ではないですね。全ての大学に関わる問題になり得るわけです。それを一部にしか説明していないというのは、余りにもおかしいです。
しかも、説明するだけではなく、本来、方針を転換するのであれば、検討過程に大学関係者、学長さんなどを加えるべきだと思いますね。
確認しますけれども、国際卓越研究大学には、国立大学だけでなく、私立大学や公立大学も応募することができますね、局長。
○塩見政府参考人 お答えいたします。
国際卓越研究大学につきましては、国公私、いずれの大学についても応募いただくことが可能でございます。
○宮本(岳)委員 つまり、国立大学法人だけの問題にとどまらないんです。高等教育全体の問題ですね。大学関係者を入れた議論をしないどころか、一部の学長だけに説明するやり方では全く話になりません。
さて、そこで、運営方針会議の委員の任命に際して文科大臣の承認が必要とされている点について、大臣は、明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き、承認を拒否することはできないと答弁しているから十分だ、そうおっしゃるんですけれども、そんな答弁では担保になりません。
日本学術会議の任命拒否の問題では、先ほども少し議論がありました。一九八三年に当時の中曽根さんが、首相が答弁をしております。これは一九八三年五月十二日の参議院だと思いますね。これは、学会やあるいは学術集団から推薦に基づいて行われるので、政府が行うのは形式的任命にすぎません、実態は各学会なり学術集団が推薦権を握っているようなもので、政府の行為は形式的行為であるとお考えくだされば、学問の自由独立というものはあくまで保障されるものと考えておりますと。ちゃんとこれは議事録に残っておるんですけれども。故中曽根、当時これは首相だと思いますね、総理大臣が語ったことでも今実行されていないので、みんな、盛山大臣が語っても実行されるのか、こう思うのは当たり前なんですね。
よっぽどのことがなければと繰り返されるんですけれども、私は、今議論になっている東大とか京大とか東北大とか、こういう大学がよっぽどおかしなことをするというふうには思えないですね。あっさり、形式的と言うのであれば大学自治に委ねて、大臣の承認を定めた二十一条の四、これはきっぱり取り下げる。不要ではないですか、大臣。
○盛山国務大臣 中曽根総理の発言でも実行されていないわけだから、盛山の発言ではましてや信用できない、こういう厳しい御指摘でございますけれども、我々としましては、大学の自主性、自律性に十分に配慮をした上で、学長の任命の際と同様の、大学の自主性、自律性に鑑み、申出に明白な形式的違反性や違法性がある場合や明らかに不適切と客観的に認められる場合に限って承認されないと整理をしております。
今後とも、当省としては、大学の自主性、自律性を踏まえた、法の適切な運用を進めてまいるつもりであります。
○宮本(岳)委員 誤解しないでくださいよ。中曽根さんの約束が守られて学術会議の委員が任命されればいいんですよ。何も、それが守られていないからあなたを信用しないと言ったんじゃないんです。どっちも守っていただきたいという話なんですが、ここに入れる必要はないのではないかということを申し上げたわけですね。
では、そうして選任された運営方針会議の議決によるとされる中期目標ですけれども、中期目標は現在どのように設定されているか、高等教育局長、お答えいただけますか。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
中期目標は文部科学大臣が示して、学内で学長が学内の意見を聞きつつ、これを基に中期計画を作成したりという手続でございます。
○宮本(岳)委員 中期目標については、大学の意見を聞き、配慮するとはいうものの、文科省が定める。この中期目標に従い、中期計画を大学が作る、こうした形になっているんですね。
この中期目標、中期計画の策定に決定権を持つということは、まさにここの全てを、全ての重要事項を決められるということでありますし、その決定権を持つ運営方針会議の委員について文部科学大臣の承認が必要となれば、結局は政府が大学を意のままに操れることになりかねないというふうに思うんですね。
一体、そこまでして政府は何を大学にさせたいのか。例えば、選択と集中とか、稼げる大学、もう既にこれはそういう方向でやってきていますよ。そんなことはとっくに現場に押しつけられているわけですね。ですから、一体、今までのやり方でできないような、これほどの仕組みまでつくってやらねばならぬことは何があるのかと私は思ったんですけれどもね。
結局、今のままの大学のガバナンスではまだ国立大学に簡単には押しつけられないこと、それは軍事研究ではないのか。あっ、笑われましたね。軍事研究ではないのか、私はそう疑わざるを得ないんです。デュアルユースというようなまやかしの言葉で押しつけようと何度も試みてきましたが、日本学術会議の決議などで何度も頓挫をしてまいりました。
政府は、二〇二二年十二月十六日に閣議決定された国家安全保障戦略に基づいて、先端科学技術の防衛利用に向け、国家安全保障局、NSSや関係省庁が連携する新たな会議体を設置する方針を打ち出しました。
内閣官房に確認をいたします。
この会議体とは、内閣官房に置かれた、総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議のことですね。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
今先生がおっしゃったものがこれに当たるという答えの仕方が適切なのか、ちょっと私、よく十分に理解できておりませんけれども、御指摘のように、昨年末に閣議決定されました国家安全保障戦略に基づきまして、研究開発の分野につきましては、防衛省の意見を踏まえた研究開発ニーズと関係省庁が有する技術シーズを合致させることによりまして、総合的な防衛体制の強化に資する科学技術の研究開発を推進できるような政府横断的な仕組みを創設しております。
本年の八月に関係の閣僚会議を開きまして、この政府全体の検討の仕組みがスタートしているということでございます。
○宮本(岳)委員 この閣僚会議を設置する根拠は、資料二につけておきましたが、昨年十二月十六日に閣議決定された安保三文書の一つ、国家安全保障戦略の中に記載されております。防衛省の意見を踏まえた研究開発ニーズと省庁が有する技術シーズを合致させるとともに、当該事業を実施していくための政府横断的な仕組みを創設するとあります。そして、二十四ページには、広くアカデミアを含む最先端の研究者の参画促進等に取り組むとも書かれております。
文科大臣に聞きますけれども、文部科学省も、この国家安全保障戦略に沿って、総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議、第一回は八月二十五日ですけれども、これに参加をし、広くアカデミアを含む総合的な防衛体制の強化に資する科学技術の研究開発の推進に連携して取り組んでいるということは事実でありますね、大臣。
○盛山国務大臣 今年の八月二十五日に開催された関係閣僚会議において、総合的な防衛体制の強化に資する研究開発を推進するための政府横断的な仕組みが創設されまして、その会議に参画をしているものと承知をしております。
当省としては、このような仕組みを通じて、政府全体の取組に貢献をしていくつもりであります。
○宮本(岳)委員 八月二十五日の会議は、当委員会自民党筆頭理事の永岡前大臣が出ておられたと議事録に出ておりますけれどもね。
先ほどの国家安全保障戦略の記述を受けて、防衛省が今年六月二十八日に策定したのが、資料三、防衛技術指針二〇二三というものですね。つまり、防衛省の意見を踏まえた研究開発ニーズ、どのようなものがあるか、ここに一覧が載っております。我が国を守り抜く上で重要な技術分野として、十二項目のニーズが並んでおります。
そして、資料四には、その八月二十五日に開催された総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議の第一回会議の議事要旨をおつけいたしました。ここには、先ほどの永岡文部科学大臣とともに、CSTIを所管する高市科学技術イノベーション担当大臣も出ておられて、マッチング事業の取組はもちろん、Kプログラムやその他の科学技術イノベーション政策も総動員して、我が国の技術力を結集し、安全保障を含めた国力の強化に貢献していくと発言をされております。
内閣官房、これは事実ですね。
○室田政府参考人 お答え申し上げます。
今先生お読みになられましたのは、先生御言及の八月二十五日の関係閣僚会議の公表されております議事要旨のうち、高市国務大臣からの御発言の部分というふうに承知しております。
○宮本(岳)委員 それを聞いているんじゃないですか。
この関係閣僚会議で、防衛力の抜本的強化を補完し、それと不可分一体のものとして位置づけられている研究開発とは、つまりは、これまで一般的にデュアルユースと呼ばれてきたものにほかなりませんね。もう一度、内閣官房。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
国家安全保障戦略に書かれている記述を正確に読み上げさせていただきます。我が国の官民の高い技術力を幅広く積極的に安全保障に活用するために、安全保障に活用可能な官民の技術力を向上させ、研究開発等に関する資金及び情報を政府横断的に活用するための体制の強化を図るということでございます。
そのために先ほど申し上げましたマッチングをしていくということが書かれておりますので、デュアルユースという言葉自体はここには書かれておりませんけれども、先生の御趣旨でよろしいかというふうに思います。
○宮本(岳)委員 それでいいんですよ。デュアルユースと言われるものなんですよね。
それで、この八月二十五日の第一回関係閣僚会議で高市科学技術イノベーション担当大臣が発言したマッチング事業とはどういうものか。この会議に配られた資料を資料五につけておきました。赤い線を引いたところには、マッチング事業において、「関係省庁と防衛省とでコミュニケーションを行い、防衛省の研究開発に結びつく可能性が高いものを効率的に発掘・育成することを目指す。」とあります。
これは、もちろん、アカデミアを含めて、文部科学省もこの防衛研究に結びつく可能性が高いものを効率的に発掘、育成することを目指すということに、文科大臣、なるんですね。
○盛山国務大臣 これまで防衛省から、本年六月に公表した防衛技術指針二〇二三などを活用して、防衛省のニーズに関する説明を事務的に受けております。
文科省では、これまでに研究所が実施してきた研究等の成果である技術シーズの共有を行うなどして、ニーズとシーズのすり合わせのための意見交換を実施してきておるところでございますが、具体的なマッチングについては今後の調整となると承知しております。
○宮本(岳)委員 いやいや、だから、つまり、アカデミアも含めてマッチングの調整をこれから行うんですね、大臣。
○盛山国務大臣 今後、どのような形があるのか、内容、具体的なところは今後ということになります。
○宮本(岳)委員 いやいや、だから私は危機感を持っているわけですよ。
日本学術会議が同じように議論に上りますけれども、学術会議も、まさにデュアルユースという形で軍事研究、デュアルではあっても軍事研究をやるということに対して批判的な態度を取った。これに対して、今、政府はああいう任命拒否ということをやっているわけですけれども。
まさにアカデミアですよ、国立大学も。そういう形で、まさに上から、いざとなったら手を突っ込もうということを私たちは危惧せざるを得ないわけですよ。そうでなければ、言ったように、選択と集中とか、稼げる大学なんというものは今まででも、言葉は別として、そういうことを言ってですね。それは別に、稼がない方がいいというわけでもなく、選択と集中に頭から反対するという、現場もなかなかそこまでいかないので、疲弊しているわけですよ。今、本当に、今までそれでもできなかったことで、新たにさせなきゃならないのはこれなんだということを私は危惧せざるを得ないということを申し上げているわけですね。
高市大臣は発言で、Kプログラムというものにも言及しております。これは内閣府の安全・安心に関するシンクタンク設立準備検討会などで使われている用語なので、内閣府に来ていただいておりますが、このKプログラムというのは正式にはどういう名称のプログラムですか。
○坂本政府参考人 お答えを申し上げます。
Kプログラムとは、経済安全保障重要技術育成プログラムの略称であります。このプログラムは、経済安全保障の確保、強化の観点から、AIや量子、宇宙、海洋等の技術分野に関し、民生利用や公的利用への幅広い活用を目指して、先端的な重要技術の研究開発を進めるものでございます。
○宮本(岳)委員 そのとおり、このKプログラムというのは、経済安全保障の重要技術を育成するプログラムのことです。
資料六に、昨年十一月二十九日の第一回安全・安心に関するシンクタンク設立準備検討会にJST、科学技術振興機構の橋本和仁理事長が提出したKプログラム全体指揮命令系統図というものをつけておきました。
マッチング事業にしろ、Kプログラムにしろ、デュアルユースという名前で国立研究機関や大学を軍事研究に引き込む準備を進めるものだと言わなければなりません。これは結局、文部科学省も、防衛省と連携、共同して、防衛省の研究開発に結びつく可能性が高いもの、つまり、軍事研究にも転用できる技術を効率的に発掘、育成するということですよね。つまり、これは大学に軍事研究をさせようという取組ではありませんか、文科大臣。
○柿田政府参考人 お答えいたします。
経済安全保障重要技術育成プログラムは、経済安全保障の観点から、中長期的に我が国が国際社会において確固たる地位を確保し続ける上で不可欠な要素となる先端的な重要技術を育成するために整備されたものでございます。
この事業は、その成果を民生利用のみならず公的利用につなげていくこととしておりますけれども、ほかの事業と同様に、事業の委託先は広く公募で提案を募り、科学的見地から審査、選定する、研究成果については公開を基本とする、また、関係省庁が参画する協議会も、研究開発の伴走支援をする枠組みというものでありまして、研究開発のマネジメントを行うものではございません。
いずれにいたしましても、研究の方針でありますとか成果の取扱いを含め、大学や研究者本人が自主的、自律的に判断をするものでございまして、本事業が大学に軍事研究を強いるものではないと考えております。
○宮本(岳)委員 それは説明になっていないんですよね。
じゃ、内閣官房に聞きましょうか。あなた方のやっているこのマッチング事業、あるいはこれは内閣府かもしれないけれども、Kプログラム、これは国立大学が原理的に排除されているんですか、それとも、国立大学も参加できる可能性はあるんですか。どちらですか。
○室田政府参考人 お答え申し上げます。
私が担当しております先ほどの研究開発のマッチングについてお答えを申し上げたいと思います。
この仕組みにおけます研究開発事業というのは、民生用途の研究として、防衛省以外の関係省庁が自らの予算を実施するプロセスの中で行うというものでございます。その実施に際しまして、特定の研究機関をあらかじめ排除するということにはなっておりませんけれども、他方で、特定の機関あるいは各機関に対して、強制的に実施させる、強制的に参加させる、そういうことは全くないということでございます。
○宮本(岳)委員 強制的に参加させないのは、大学だけじゃなくて全部そうですよ。どこの世界に強制的に研究させるような、日本の国で、今あるものですか。合意で納得でやっていくのは当たり前なんですよ。
ただ、そういうデュアルユースということで、その研究は民生研究だと。しかし同時に、軍事研究にもつながる。このマッチング事業というのは、あなたの説明どおりですよ、民間の研究としてやってもらうけれども、あらかじめちゃんとマッチングして、成功した暁には軍事転用できるものですよねというマッチングをしておこうというのを、今あなた方が集まって関係閣僚会議でやっているんじゃないですか。だから、これはまさに軍事研究に道を開くものだと言わざるを得ないんですよね。
私は、やはりこういう邪道ではなくて、運営費交付金を思い切って広げるというのが大事だと思うんですよね。
昨日も参考人の先生方、様々な御意見でしたよ、もちろん。今回のこの法案に賛成、反対、それはいろいろ学長さんですから立場もおありでしょう。しかし、私が聞いた、つまり、運営費交付金が抜本的にどんと広がってゆとりがあるぐらいの運営費交付金、基盤的経費があれば、何か選択と集中とか、あれかこれかとしなくていいですよねと言えば、それはもうそれに願ったりかなったりだ、そうしてもらったらそれにこしたことはないというのが皆さんの思いですよね。
同時に、最後に私は、このデュアルユースという名前で軍事研究を提起されたらどうですか、こういうことも、少し厳しい質問ですねと野党の同僚議員からも言われましたけれども、これは一応学長様たちに聞きました。やはりその方々がおっしゃったのは、難しい問題だと言いながらも、例えば、頭から軍事目的と言われたらこれはしないでしょうと。あるいは、一番問題となるのは、知らない間に使われていたというのは問題だと思いますねと。あるいは、要するに、それをどう扱うかという倫理観とか見識に関わっているということですので、それはまさに大学がしっかりとそこを考えていく重要な問題だと。そう簡単な話じゃないという受け止めなんですよ。
そして、野党がお招きをした隠岐参考人は、やはりこういう仕組みができると、デュアルユースというものが入ってくる可能性があると。それからさらに、構成員が余り納得しない状態で学長がデュアルユースに踏み込もうというときに、学内でブレーキが働かなくなる危険がある、こういうふうにもおっしゃったわけですね。非常に私は大事な論点だというふうに思います。
議論すればするほど、これはやはり問題点が多い。更に参考人の御意見も踏まえて審議を続けなければならないと私は思います。
委員長、是非とも徹底審議を求めたいと思いますが、ひとつお諮りをいただきたい。
○田野瀬委員長 与野党間での協議をしっかりとしていただけたらと思っております。
○宮本(岳)委員 もう一度、資料の一の朝日の社説に戻ってください。「運用によっては、政府の統治が強まり、大学の自治や学問の自由を損ないかねない。大学のあり方に大きく関わり、重大な疑念が拭えない。」と指摘するとともに、「拙速に成立させては、禍根を残す。」「そもそもなぜ今必要なのか。根幹から議論を尽くすべきだ。」と結んでおります。
本法案は、これまで以上に国立大学を羽交い締めにし、大学自治の息の根を止めるものであり、断じて賛成することはできません。
国立大学法人法第一条は、まさに有馬先生がおっしゃったとおり、「大学の教育研究に対する国民の要請にこたえるとともに、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図る」ことを目的と定めております。それに逆行するこの二十年の大学政策を改めること、そして、大学自治の息の根を止めるようなこの法案は直ちに撤回することを強く要求して、私の質問を終わります。