奈良教育大学付属小 教員強制出向
「全員替えろ」文科省圧力か
衆院文科委 宮本岳志議員が追及
子どもが理解しやすいよう授業や教材を工夫している奈良教育大学付属小学校の教員を同大学が強制出向させようとしている問題で、自民党や文部科学省から圧力がかかった可能性が明らかになりました。衆院文科委員会で13日、日本共産党の宮本岳志議員が関係者からの聞き取りをもとに追及し、盛山正仁文科相に対し、やってはならない「不当な支配」だと迫りました。
同大学は付属小教員4人を4月から強制出向させようとしています。保護者は「強硬な異動措置に反対します」という署名を約2000人分集めて2月末、学長に提出。署名の呼びかけ文には「文科省は『法令違反をした教員が次年度も付小の教育を続けるのを避けて全員入れ替えるべき(だ)』という見解だ」と学長から聞いたとありました。
宮本氏は、文科省が学長や副学長ら4人を呼びつけた昨年10月10日の会議で「法令違反の可能性がある」「人事交流についても考えてみてはどうか」と言及したと同省の「訪問概要」にあると指摘。三木達行副学長が「自民党の文科部会でかなりのご意見、批判を受けた」「文科省の上層部から全員替えろと言われて、それでは運営ができないということで、何回も折衝した結果こういうことになってしまった」と説明したという付属小の教員の証言もあるとのべました。
宮本氏が「大学に『教員全員を入れ替えるべきだ』と迫ったのか」とただすと、文科省の望月禎総合教育政策局長は「大学に対して指示をしたということはございません」と答え、人事は「各国立大学法人の権限と責任に基づいておこなわれるもの」とのべました。
宮本氏は、証言の記録もあるとし、「大学ののぞまない全員出向を強制した。教育への不当な支配そのものだ」と批判しました。
宮本氏は学習指導要領の一言一句が「法規としての効力を有するということは困難」という七生養護学校(現七生特別支援学校)事件で確定した高裁判決を示し、教育内容を子どもに適した年次に教えることについて「指導要領を参考にした創意工夫だ」と強調しました。
(しんぶん赤旗 2024年3月14日)
動画 https://youtu.be/yekm10DPMPE?si=SmwmIXlv3JaQJbNr
「奈良教育大学付属小 教員強制出向」ダイジェスト版はこちら
https://m.youtube.com/watch?v=QyeCwy1M10Q&feature=youtu.be
配付資料 20240313文科委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず最初に、どうしてもたださなければならないのが、大臣と統一協会関連団体との関係であります。
大臣への不信任決議案は与党の数の力で否決をされましたけれども、説明責任は依然として果たされておりません。それどころか、それ以降も、大臣の署名の入った推薦確認書や、推薦状を受け取っている姿など、新たな写真がメディアで報じられております。
大臣は、三月七日の参議院予算委員会で署名について問われ、推薦状を受け取ったのではないかと思います、新聞報道等を踏まえれば、推薦確認書に署名したのではないかと考えられますと答えられました。さらには、サインの筆跡を問われて、私のサインに似ていると思いましたと述べ、サインした可能性が高いと思いますと答弁をされました。
思い出されましたか、大臣。
○盛山国務大臣 宮本先生御指摘のとおり、参議院側でそのような答弁をいたしました。
それで、似ていると申し上げましたのは、あのときの配られた資料では、小さい写真というんですかね、だったもので、余りはっきりしなかった、鮮明ではなかったものですから、そういう言い方をしたものでございまして、その後、今、お手元にも行っていますけれども、そういう大きいものを見て、多分これは私のサインであろう、そういうふうに思います。
思い出しましたかと言われますと、その会合のことについては正直覚えていなかったわけでございますけれども、そういうような映像ですとか資料を見て、そういうことであるというふうに感じております。
○宮本(岳)委員 大臣は、記憶にない、覚えていないとおっしゃるんですが、事実無根とか一点の曇りもないとはおっしゃらないわけです。それどころか、サインし、推薦状を受け取った可能性が高い、こういうことですね。
私は、過日、あなたに対する不信任決議案に賛成の討論を行いましたけれども、その最大の理由は、そもそも、文部科学大臣こそ、統一協会との関係で一点の曇りもあってはならないからであります。
一点の曇りもないと言うこともできない大臣が、恥ずべき行動はないなどと語って恥じないのは、一つは、解散命令請求を行ったこと、二つは、指定宗教法人の指定を行ったこと、この二つを挙げておられます。
しかし、解散命令の請求は、永岡前大臣の下で、私も繰り返し要求し、報告徴収、質問権の行使を繰り返しながら準備してきたものであり、特定不法行為等被害者特例法は議員立法であって、あなたが行ったのは指定の公示をしただけであります。
統一協会には一切の忖度をせず厳正に対処しているというのが唯一の身のあかしだとおっしゃるのならば、これまで私が求めてきたにもかかわらず、公にすることにより、当該法人すなわち統一協会の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるためなどと言って統一協会を守ってやり、公開を拒んできた、二〇一五年、名称変更に関わる統一協会と文化庁の面談記録について、文科大臣として裁量開示するぐらいのことをやるのは当然のことではありませんか、大臣。
○合田政府参考人 お答え申し上げます。
旧統一教会の解散命令請求につきまして、統一教会関係の資料につきましての開示請求についてのお尋ねでございます。
御案内のとおり、旧統一教会の解散命令請求については、現在、裁判所において審理がなされているところでございますので、そういう意味においては、裁判所の判断の前提となるような仮定を前提としたお答えは差し控えさせていただきたいと存じますけれども、私ども、解散命令請求あるいは旧統一教会の資料につきましては、公益上の裁量的開示を行うに際しましては、資料を開示することによって、不開示とする理由を上回る公益上の必要性があると行政機関の長が確信を持って判断できなければならないというふうに考えてございまして、御指摘の開示請求に関する資料につきましては、そのような判断をし得る状況にない限り、裁量的開示を行う必要があるとは考えていないところでございます。
○盛山国務大臣 今の開示請求については、次長からお話を申し上げました。
そして、宮本議員からの御指摘に対しましては、繰り返し、ここの場ということではなくて、衆議院の予算委員会ほかの場でということでございますが、そこで御説明したことの繰り返しになりますけれども、私が、実質選挙戦の二〇二一年十月の段階で、ある集会に出たというのは、私の地元の有権者から集会があるから来てくれと言われたものであり、そして、そういうような関係団体の集会であるということは全く知らされておらず、そして、これは私が記憶が悪いと言われればそれまでですが、一切覚えていなかったということであります。そして、その次の二〇二二年春のものも、世界平和連合とかいう名前の会合で、是非来てくれということで、伺ったということでありました。
いずれにせよ、その二つとも、二〇二二年七月の安倍総理襲撃前の段階のものでありまして、その段階では、旧統一教会もそうですし、ましてやその関連の団体というものに対して、ここまで危険性のある団体であるということが分からない段階でありました。そうでありましても、昔の霊感商法のことを含めて、なぜそういうことを含めておまえはよく認識しなかったのかと言われればそうかもしれませんが、いずれにせよ、そういうような段階のことでありました。
そして、二〇二二年の九月、安倍総理が亡くなって以降、我々自民党は一切関係を絶つということを明言したわけでございまして、私もそれにのっとって、一切関係は絶っております。
そして、先ほど、これも委員からお話がありましたが、永岡大臣から引継ぎを受けまして、その翌月、十月の当該団体の、教会の解散命令請求を行ったわけでございますけれども、これに向けまして、私も全力で、公正な立場でというようなことで取り組んでまいりましたし、内部の話になりますので余り詳しく申し上げるわけにはまいりませんですけれども、十分な実態把握、あるいは具体的な証拠の積み上げ、関係法令に基づくデュー・プロセス・オブ・ロー、こういうようなことをしっかりやろうということを指示をし、協議をしながら、十月の解散命令請求を行いましたし、その後におきましても、議員立法ということで、我々、閣法ではございませんですけれども、そういったものに対してのいろいろな協議というか実質的な支援、あるいはそれに基づいての今回の指定、こういったことに対してしっかりやってきたところでございますので、これは今朝も申し上げましたけれども、私としては、恥ずべき行為は全く行っておりません。
そして、しっかりと、被害者救済も含めまして、本件含め、私に与えられた職責をしっかり果たしていく、そういうようなつもりで取り組んでいるところでございます。
○宮本(岳)委員 るるおっしゃいましたけれども、安倍前総理がお亡くなりになった後の調査の段階では出てこなかったわけですね。今、忖度していない、関係を遮断した、こうおっしゃるわけですけれども、次長から答弁があったとおり、私が求めている文書開示については、正当な利益を害するおそれがあるなどという理由でこれは開示していないわけですね。
名前が変わったから、あの事件があるまで、あなたは平和連合というものが統一協会であることを認識しなかったような答弁をされているわけですね。つまり、この名称の変更というのはそういう効果を持つということですね。だから重大だということを私は申し上げているんですよ。
だから、きっぱりとしているんだ、一切忖度していないというのであれば、直ちに必要な資料を開示する。そして、それができないのであれば、私は、不信任案が否決されたからといって、文部科学大臣を務めるやはり資格はない、自ら潔く責任を取って辞任すべきだということを申し上げざるを得ないわけであります。
次に、奈良教育大学附属小学校の強制出向問題を聞きます。
三月十一日、奈良教育大学の附属小学校教諭の強制出向に反対する緊急署名が提出されて、ニュースになりました。しかし、大学側は、附属小学校を支えている十九名の大学固有の正規教員全員を、最初の二年で十名という具合に、県内の公立小学校などに同意なしで出向させる強硬な姿勢を取っています。
全国の多くの研究者や教育関係者からも抗議の声が上がっておりまして、何より困っているのは、保護者と子供たちであります。保護者が独自に、強硬な異動措置には断固反対いたしますという二千筆以上の署名を提出し、子供たちが校長室に抗議に行ったという話も現地で聞いてまいりました。
この附属小学校は、一口で言えば、私はよい教育実践をしてきた学校だと思います。子供たちが実に伸び伸びしていて、不登校も少なく、「みんなのねがいでつくる学校」という、こういう本にも教育内容はなっております。多動のお孫さんが附属小学校に通うようになってから見違えるように明るくなったと、涙を流して日々感謝されているという話も聞きました。県教委出身の附属小学校の校長先生も、本校の教員は子供に対して実に丁寧にきめ細かく指導していたことは間違いなく、驚くほど前向きに自分の言葉で話せる児童が多いことも事実ですと認めておられます。
ところが、四名も強制出向させられたら、一体この教育はどうなってしまうのか。現地で伺ったら、育休取得や一年契約の先生もいて、不補充もある、それに四人出向が加わると、何と、今いるフルタイムの枠三十二名のうち十一名が四月に学校にいなくなるということになり、これでは到底これまでどおりの丁寧なきめ細かい教育ができなくなると先生たちは訴えておられました。
大臣、こんな本当にひどい大量の強制出向は、子供のことを考えたら到底認められないと私は思いますが、いかがですか、大臣。
○望月政府参考人 お答え申し上げます。
奈良教育大学の附属学校につきましては、長年にわたりまして不適切な授業の展開を行っていたということでございます。ただ、先生おっしゃいますように、非常にモデル的な、いい教育をやってきたことも事実だと思ってございます。
その中で、附属学校の人事につきましては、各国立大学法人の権限と責任に基づいて行われるものというふうに考えてございます。
附属学校の教員の人事交流について、これまで文部科学省が大学に対して指示をしたということはございませんけれども、それぞれの大学で、人事交流を含めていろいろな観点での検討をしているものというふうに考えてございます。
○宮本(岳)委員 いや、不適切だとおっしゃるけれども、その中身、私は、教育の中身、教育の専門職として考えた上でやってこられたことだと思います。
例えば、ローマ字を、指導要領どおり三年でなく、四年で扱っている。聞きますと、やはりこれは子音と母音という抽象的概念が理解できる学年で扱うことがふさわしい、そういうことも長年の実践の中でつかみ取って、四年生で扱うことにしているというふうにお聞きしました。書写で毛筆を使っていないのは、準備や片づけの時間への配慮や多様な家庭の条件も考慮して、筆ペンで対応していたということでした。
指導要領を無視してやっていたんじゃなくて、指導要領を参考にした上で創意工夫しているだけのことだというふうに思います。
そもそも、七生養護学校事件の確定判決は、二〇一一年九月十六日の東京高裁判決でありますが、そこでは、学習指導要領について、「学習指導要領に記述されている内容は、膨大であり、記述の仕方にも様々なものがあるところ、その一言一句が拘束力すなわち法規としての効力を有するということは困難である。」と述べております。
教科書を使っていなかったということも言われておりますが、例えば今日持ってきた、これは「子どもの美術」というものですが、これは図工の教科書に使っておられるらしいです。
これは、非常に優れた教科書なんですが、もう今作られなくなって、この教科書出版が止まってしまって、父母たちの力もかりて、三百冊、寄附してもらい、これを修繕しながら使ってきた。
この教科書は、安野光雅氏、佐藤忠良氏など、日本を代表する美術家が書かれた「子どもの美術」という本でありますけれども、元NHKのアナウンサー室長の山根基世さんたちが絶版を惜しんで復刻版を出された幻の名著であり、これを教科書に使ってきたということでありました。
報告書を受け取ったということでありますけれども、私は、文科省がこの報告書について圧力をかけたり、あるいは介入をしたりしたのではないかという疑義を感じます。
報告書を見ると、当該報告書が策定される前に二つの報告書が作成されていることが分かります。一つは中間まとめであり、もう一つは最終まとめであります。
中間まとめがまとめられた段階の二〇二三年十月十日、文科省は、大学学長、調査委員長、副学長、校長を呼びつけております。昨日、総合教育政策局が私に提出した、昨年十月十日の会議の概要によると、まず、会議の冒頭で奈良教育大の学長から説明を受けた後、確かに文部科学省は、総時間数が足りていないのであれば法令違反の可能性があるとか、双方向の人事交流についても考えてみたらどうかなどと言及をしております。
この面談の際に、文科省は学校側の調査報告に圧力をかける言動をしたのではありませんか。
○望月政府参考人 お答え申し上げます。
今先生が御指摘ございました十月十日、奈良教育大学の学長から、それまでの事案の経緯あるいは今後の対応方針について御説明をいただいたところでございます。
その際、文部科学省の方からは、教育課程のこととともに、人事交流については、あくまで一般的な例として、他の国立大学法人でも多くなされている附属学校における人事交流について言及したものでございまして、大学に対して具体的な指示をしたものではございません。
○宮本(岳)委員 そうですかね。この十日の面談を機に、厳しい追調査、法令違反を取り締まるかのような厳しいものに変わっていったと聞いております。そして、前代未聞の強制出向自体、文部科学省が圧力をかけて行わせようとしているのではないかという疑念が残ります。
確認しますけれども、出向や交流人事については、任命権者、この場合、大学法人の判断で決めることであって、文部科学省から命じたり指示したりする、そういう権限はありませんね。
○望月政府参考人 大学の責任と判断によりまして実施されるものでございます。
○宮本(岳)委員 大学法人の人事については国が命じたり指示できないことは確認いたしました。
ところが、冒頭に紹介した、保護者の皆さんの署名の呼びかけを読みますと、学長先生から、文部科学省は法令違反をした教員が次年度も附小の教育を続けるのを避けて全員入れ替えるべきという見解だと伺いましたと書かれております。
しかし、大学の報告書には、法令違反をしたなどとは、大学の報告書自身には書いていないわけですね。
文科省は大学に、教員を全員入れ替えるべきだと迫ったんですか。
○望月政府参考人 お答え申し上げます。
そのような事実はございません。
また、先ほどから繰り返し申し上げましたけれども、人事交流につきまして、一般的に、どこの学校法人、国立大学法人とそれから地方が連携をして人事交流を行っている、そういう例を捉えまして、閉鎖性を打破するという観点から、一般的に、人事交流を行ってはどうかということを申し上げましたけれども、先生御指摘のように全ての教員を入れ替えてはどうかというようなことをこちらから具体的に申し上げたことはございません。
○宮本(岳)委員 では、学長がうそをついたということになりますね。
私が聞くところによると、保護者は、学長からしっかり、全入替えは文科省の見解だと聞いております。それだけではありません。先生たちも、この一月の三十一日、学長同席の場で三木副学長から、自民党の文科部会で議案に上がり、かなりの御意見、批判を受けた、文科に、まさかこのメンバーでこの四月を迎えるのではないでしょうねと言われた、文科省の上層部から全員替えろと言われて、それでは運営ができないということで何回も折衝した結果、こういうことになってしまったと説明されたと私に証言をいたしました。この証言は極めてリアルで、記録もあります。言い逃れはできません。
文科省が大学の望まない全員出向を強要したのが真相ではありませんか。政治的圧力で、文科省は違法に大学の人事に全入替えの圧力をかけたことは私は明白であり、この罪は本当に重いと思います。まさに政治権力が行ってはならない教育への不当な支配そのものでありまして、まさに、みんなの願い、こういう、みんなの願いでつくる学校を国の圧力で壊す、このような強制出向は絶対に認められないということを申し上げておきたいと思います。
次に、高等教育の無償化についてお伺いします。
二〇一二年九月、当時民主党政権でしたが、国際人権規約A規約十三条の2(b)、(c)の留保が撤回されました。高等教育については(c)ですけれども、高等教育は、全ての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、全ての者に対して均等に機会が与えられるものとすることとされております。
この留保撤回によって、日本政府はこれらの規定に拘束される、つまり、段階的ではあっても、やがては全ての学生の学費は無償にすべきであるということを受け入れた、こういう立場に立った、これは間違いありませんね、高等教育局長。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
漸進的に無償化に向けて取組をしていくというふうに理解しております。
○宮本(岳)委員 そうです。段階的、漸進的に向かっていく。しかし、終着地点は、ゴールは全ての学生の学費が高等教育に至るまで無償にならなければならない、これが国際人権A規約十三条二項(c)の精神でありますから、終着駅は一緒なんです。同じなんですね。
無償教育の漸進的な導入により拘束され、その実現に日本は責任を負っているということでありまして、この項目には、能力に応じ、全ての者に対し均等に機会が与えられるものと書かれておりますし、十三条一項には、教育についての全ての者の権利を認めると定められております。全ての者、学びたいと思うあらゆる人に分け隔てなく人権としての学ぶ権利を保障することがこの条約の精神なんですね。一部の者だけでよいというものではありません。
政府は現在、新制度を進めていると言いますが、全学生の僅か一割、昨年十二月二十二日に閣議決定されたこども未来戦略において、高等教育費の負担軽減が打ち出され、修学支援新制度の拡大、奨学金制度の充実、修士段階の授業料後払い制度などが挙げられております。
資料一をおつけいたしました。多子世帯の、子供三人を扶養している間の大学等無償化のイメージというものであります。
この図によると、子供を一人か二人扶養している、困窮家庭ではない家庭の場合は何の恩恵もありません。しかし、三人を扶養する家庭ならば、少なくとも第一子、場合によっては、例えば、年子の三兄弟あるいは三つ子、あるいは、年がばらけていても浪人等々の事情で三人がそろって同じ学年ということになれば、これは実は三人とも全く授業料を払わずに卒業できるという、これは困窮とか関係なしですよ。家計に関係なく、そういう無償の制度になります。
これは事実問題ですから確認していただきたいんですが、そういう制度設計になりますね。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
その部分については、令和七年度からの取組はそうでございますが、その前段階として、従来型の貸与型奨学金に加え、令和二年度から給付型と授業料減免を組み合わせた新制度などを導入しておりますし、令和六年度からの改善もございますので、午前中の質疑でもお答え申し上げたように、今後、まず令和六年度から改善する部分と、今委員御指摘の令和七年度から改善する部分、ここが第二弾ですけれども、さらに、これらの実績を踏まえて、更にその先、第三弾、何ができるかということも、これから政府全体の中で議論してまいりたいと思っております。
○宮本(岳)委員 第三弾はこれから議論していきたい、でも、現状は私の言ったとおりだ、そう答えていただいたらいいんですけれどもね。
子供を三人以上扶養していることが前提なんですね。つまり、少子化対策、それも三人の子供を持つことを奨励する政策、こういうことですか。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
三人以上の子供を持つことを奨励するということではございませんで、これは、家庭単位で、世帯単位で見た場合に、教育費の負担が非常にかかるという、アンケート結果からも明らかでございますので、扶養する子供が三人以上の場合にこれを支援するという、まずは令和七年度から漸進的に進めているところでございます。
○宮本(岳)委員 だから、私の言うとおりなわけですよ。今おっしゃったようなことは、これから漸進的に検討していくというだけの話なんですね。
これは、私は非常に矛盾のある制度になってしまうと。全学生を救う政策ではなく、子供二人以下の世帯と三人以上の世帯にくっきりと差をつけることによって政策誘導しようということになるんですね。
しかし、終着駅は、全ての学生が無償にならないと駄目なんですよ。終着駅はみんな無償と言っているのに、何でこういう政策誘導に使うのか。私は、これは国際人権規約の精神を踏み破ったものだと言わざるを得ません。
次に、奨学金の成績要件について、給付型の。
これも、この間、学生から話があったんです。成績要件が設けられておりまして、そして、警告を受けると、警告を受けて、連続して警告を受けた場合は支援が打ち切られる、打ち切られたらもう大学に通えなくなるという学生の声がありました。
聞きますが、この成績要件、GPA下位四分の一という要件があるんですが、これは相対評価ですか、絶対評価ですか。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
GPA下位四分の一でございますので、これは相対評価ということになると。
○宮本(岳)委員 相対評価なんですよ。これは、自身がどんなに頑張ろうと、周りが頑張ったら下位四分の一に入ってしまう可能性があるんですね。成績要件で警告を受けた、次受けると支援が打ち切られる。しかし、どんなに頑張ったって、みんな頑張ったら下位四分の一に入っちゃうんですよ。
こんな理不尽な制度はないですよ。せめて絶対評価にすべきじゃないですか。それとも、自分が頑張っていても、周りが頑張って、相対評価から外れていきそうになったら、人の勉強の邪魔をするんですか。そんなばかな話ないじゃないですか。
私は、本当に制度に大きなゆがみがあると。この後、資料を使っての展開がやりにくいんですけれども、なぜこんな成績要件、しかも今度は厳しくするという話が出ておりまして、そうです。その厳しくするというのは、最初はなかったんですよ。突如として、こども未来戦略に入れられたんです、昨年の十二月二十二日に。それは、十月十一日の財政制度審議会歳出改革部会に財務省が出したペーパーに、拡充に際しては、対象となる大学や学生の要件を見直し、経営に問題のある大学や学習意欲の低い学生の単なる救済とならないようにすべきである、こう財政審が言ったから、これをつけたというんですよ。
全然国際条約の精神と違うじゃないですか、これは。違うでしょう。皆さん方、国際人権規約、分かっているでしょう。全然違うんです。そういう点では、私、改めて国際人権規約の精神に立って、本当にゴールを見定めて歩いていただきたい。
我が党は、だから、人で区別せずに、全ての学費を半額に、入学金は無償に、それから、奨学金も今の負債をぼんと半額に、みんな半額、こういう提案をしているんです。
是非、最後に大臣から、この人権規約、本当にゴールまで歩き抜く決意を表明していただいて、私の質問を終わりたいと思います。
○盛山国務大臣 目指すところは、人権規約ということで、同じだと思いますが、山へ登る道もいろいろな道があろうかと思います。それで、我々は、財源の制約、こういったことも含めて、何ができるかということで、今、局長その他が御説明したような、そういうようなことを順次やっているわけでございますので、今後とも高等教育の負担軽減に向けてしっかり取り組んでいきたいと考えています。
○宮本(岳)委員 海に潜るようなことのないように、頑張ってください。
終わります。