平成二十五年十一月十三日(水曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 小渕 優子君
理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君
理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君
理事 義家 弘介君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 稲津 久君
青山 周平君 池田 佳隆君
小此木八郎君 鬼木 誠君
神山 佐市君 菅野さちこ君
木内 均君 工藤 彰三君
熊田 裕通君 小林 茂樹君
桜井 宏君 清水 誠一君
新開 裕司君 冨岡 勉君
中村 裕之君 永岡 桂子君
野中 厚君 馳 浩君
比嘉奈津美君 前田 一男君
御法川信英君 宮内 秀樹君
宮川 典子君 菊田真紀子君
細野 豪志君 山口 壯君
吉田 泉君 遠藤 敬君
椎木 保君 三宅 博君
中野 洋昌君 柏倉 祐司君
畠中 光成君 宮本 岳志君
青木 愛君 吉川 元君
…………………………………
文部科学大臣 下村 博文君
財務大臣政務官 葉梨 康弘君
文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
文部科学大臣政務官 上野 通子君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 宮城 直樹君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 山崎 和之君
政府参考人
(財務省主計局次長) 岡本 薫明君
政府参考人
(文部科学省大臣官房長) 戸谷 一夫君
政府参考人
(文部科学省生涯学習政策局長) 清木 孝悦君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 前川 喜平君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 布村 幸彦君
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委員の異動
十一月十三日
辞任 補欠選任
小此木八郎君 御法川信英君
木内 均君 清水 誠一君
永岡 桂子君 鬼木 誠君
野中 厚君 中村 裕之君
井出 庸生君 畠中 光成君
同日
辞任 補欠選任
鬼木 誠君 永岡 桂子君
清水 誠一君 木内 均君
中村 裕之君 前田 一男君
御法川信英君 小此木八郎君
畠中 光成君 井出 庸生君
同日
辞任 補欠選任
前田 一男君 野中 厚君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)
――――◇―――――
○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
前回に引き続き、公立高校無償制廃止法案の問題点についてただしていきたいと思うんです。
まず、この法案では、就学支援金を受給するためには保護者等の収入の状況に関する事項を届け出る必要がございます。これは文科省でいいんですけれども、具体的にはどういう届け出を行うことになりますか。
○前川政府参考人 新制度における所得確認につきましては、サラリーマンや自営業者などの職業にかかわらず、申請書と課税証明書等を提出していただきまして、課税証明書等によりまして市町村民税所得割額を確認することとなっております。
○宮本委員 市町村民税の所得割という、所得証明だけで不徴収か徴収か決めるということなんですね。
では、低所得者でも、課税証明書を提出しなかった場合、その生徒の授業料はどうなりますか。
○前川政府参考人 何らかの方法で市町村民税所得割額を確認する必要がございますので、課税証明書あるいは非課税証明書、納税通知書など、こういった書類を出していただいて確認ができない場合には、就学支援金は支給されないことになります。
○宮本委員 低所得者でも、その書類が提出されなければ支給されないという御答弁でした。
学校現場では、低所得で困難を抱える家庭の生徒ほど所得証明の提出が難しいと大変心配が出ております。埼玉県の高等学校教職員組合が行った事務職員への調査というものを見せていただきましたけれども、低所得者家庭ほど申請書類が不足になる傾向がある、書類は出せないが授業料も払えないという家庭が出るだろうなど、担当の事務職員の方々の痛切な声がたくさんここには出されております。
二〇一〇年度から公立高校では授業料は不徴収となっておりますけれども、その後も、入学料やPTA会費などの諸会費の徴収実務は依然として残されております。県独自の諸会費減免制度もありまして、減免されている生徒は全校生徒の二割程度というふうに聞いております。
その必要書類を集めるのにもなかなか困難があるというのが実態なんです。確定申告を済ませていない、そもそも連絡がとれないなど、現場では大変な苦労があるというふうにお聞きをいたしました。これを八割の生徒から集めるとなると、大変なことだと悲鳴が上がっております。
そこで聞くんですけれども、コンビニなどのアルバイトを二つ三つとかけ持ちしていて、給与明細も幾つも細切れの明細書しかないという場合、今、若者の二人に一人が非正規という時代が続いておりまして、高校生の保護者の中にも非正規のアルバイトで生活をしている方は実際に少なからずおられます。明細書は保管されていない、確定申告もできない、こういう方は一体どうなりますか。
○前川政府参考人 所得がどのような形で得られているかということにかかわらず、確定申告または住民税の申告をしていただく、これは必要になります。その上で、課税証明書等を取得していただく。収入がない場合であっても、非課税証明書を取得していただく。こうすることによりまして就学支援金を支給するということでございますので、その所得確認ができない場合には、就学支援金は支給されないということになります。
○宮本委員 私は、深刻な問題が現場では生じざるを得ないと思うんです。それで、現場を本当にわかって、この問題はぜひしっかり対応してほしいんです。
どこの自治体でも未申告という方は一定数存在をしているんです。私は、ここに、ある自治体の平成二十三年度包括外部監査報告書というものを持ってまいりましたけれども、この町では、未申告者は四千五百名程度存在し、納税義務者十五万五千人の約三%に相当すると報告をされております。
しかし、これは実は一概にけしからぬと言い切れない問題がありまして、それは、どこの役所でもそういうふうに言っておりますけれども、所得が一定額以下のため住民税が課税されない方には、税の申告の義務というのは実はないんですよ。ただ、今回のように所得証明書が必要であればこれは申告する必要があります。ですから、これがなければ制度から排除されるということになると思うんです。
それで、保護者の方々でもさまざまでありまして、市役所まで相談に行く余裕がとてもないという保護者、あるいは心の病でとても相談することが難しい保護者、そもそも連絡がとれない保護者、こういう人たちの場合、文科省、一体どうなりますか。
○前川政府参考人 就学支援金の支給を受けるためには、課税証明書等によりましてその所得を確認するということがどうしても必要になるわけでございますけれども、保護者である両親にともに所得がある場合などにおきまして、これは両親の市町村民税の所得割額を合算して判断するわけではございますけれども、現行の就学支援金の加算におきましても、例えばドメスティック・バイオレンスでありますとか児童虐待などの場合、また、御指摘のような保護者に全く連絡がとれないというような場合、やむを得ない理由によりまして保護者のうち一方または双方の証明書類が提出できないというような場合につきましては、それぞれ当該事情を明らかにした上で、もう一方の保護者または本人の所得のみにより判断するということもできるようになっております。
このような取り扱いは新制度でも継続してまいりたいと考えております。
○宮本委員 そういう実際に応じた配慮ある対応が必要になってくると思うんです。困難がある人ほどなかなか書類の提出が難しい。要するに、困難が大きい家庭の子供ほど救われない可能性も残されるということになると思うんです。
無償化の前には減免制度があり、そうした場合にどうしてきたかというと、早朝、夜遅く電話をし続けて、何とか親と連絡をとる、あるいは、一緒に市役所まで事務職員あるいは担任がついていく、こういうことまで、涙ぐましい努力で減免制度を申請してきたという事例もあるというんですね。ただ、その職員は無償化と同時に定数減で今いなくなっているわけですよ。
一方、九百十万円以上の世帯収入があれば、これは自動的に授業料の徴収対象となってまいります。ただ、その中には、親が連帯債務者となってしまって入学前から大きな借金を抱えてしまった、つまり、既に借金を背負っておりまして、一家で必死に働いて九百十万円を超えて収入を得ているんだけれども、その大半は借金返済に消えていくというケースもあると思うんです。こういう場合、文科省、どうなりますか。
○前川政府参考人 教育費の支出をどのように行うかということの判断に当たりまして、どこまで家計の詳細を把握するかにつきましては、その確認に必要となります事務負担も考慮しなければならないと考えております。
児童手当など他の給付制度、あるいは現行制度の就学支援金の加算におきましても、所得のみを判断の材料としているところでございまして、新制度におきましても、所得、これを具体的には市町村民税所得割額で判断するわけでございますが、こういった形で判断してまいりたいと考えております。
したがいまして、御指摘のように世帯所得が所得制限の基準額以上であるという場合につきましては、その他の事情がどういうことだったといたしましても、就学支援金は支給されないということになるわけでございます。
○宮本委員 こんなばかな話は私はないと思うんです。
行政の事務負担の簡素化というけれども、大きな困難を抱えて親御さんが申告できない、こういう場合には、低所得であっても出せない場合が生じる。必死に稼いでも借金返しに追われている、こういう場合は、九百十万を所得で超えている場合はもう無償は継続されない。こういう制度になってしまうわけなんですよ、今回の場合は。片や、給与所得で九百十万さえ下回っていれば、例えば株取引で二千万、三千万ともうけても、これは原則申告不要で所得割の課税対象の所得に算入されませんから、その家庭は無償となるわけなんです。いかにも不公平なことが生じ得ると私は思うんです。
大臣、本当に困っている家庭は、単純に住民税の所得割のみでしゃくし定規に決めつけるのではなくて、もっと実情に応じて弾力的に救われるべきではないのか、少なくともそのことの検討は必要ではないのかと私は思いますけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○下村国務大臣 今、宮本委員が言われたような個々の事情を配慮すれば、そのとおりだというふうに思います。
ただ、所得の把握に当たっては、個々の家庭の状況をつぶさに把握することは事実上困難なわけでございます。他の給付制度における所得の把握方法や制度全体を円滑に運用するための事務負担を考慮する必要があると考えておりまして、このような観点から、本制度では、保護者の市町村民税所得割の合算額によって給付の有無、支給額を判断するということに決めたわけでございます。
○宮本委員 法案のこの枠組みを一つ一つ細かく見れば、住民税の所得証明を提出できない困難を抱えた方々は無償から排除されてしまう場合が出る。私は、これはやはり一つの欠陥だと言わざるを得ないと思います。
やはり、所得制限そのものに、つまり所得額で制限をかけるというこのやり方そのものに無理がある。高額所得者の応分の負担というのであれば、授業料ということでなくて直接の税負担の形で行うべきだと前回私は主張をしましたし、大臣も、今の案は魅力的な案だ、こういう御答弁もなさいました。私は、そういう方向に切りかえて、所得制限などはやめるべきだということを指摘しておきたいと思います。
次にお伺いするんですけれども、今回の法案は、無償化を中止して、日本政府が留保撤回したばかりの無償教育の漸進的導入を定めた国際人権規約に違反するおそれがあるのではないか、私が前回大臣にそうお伺いしましたら、文科大臣の御答弁は、所得制限導入で捻出する財源をそっくり給付制奨学金の創設や私立高校生の就学支援金増額等々に充てるから違反はしないんだ、こういう答弁でありました。むしろ、そうした創設や増額をする財源のために所得制限をやむなく行うのだというのが大臣の説明だったと思います。
そこで聞くんですけれども、所得制限で捻出する予定になっている財源は幾らか。そしてそのうち、私学への就学支援金の増額、そして給付制奨学金、それぞれどれだけの予算を使うおつもりなのか。大臣、お答えいただけますか。
○下村国務大臣 文部科学省では、所得制限の導入によって捻出される国の財源は約八百九十億円と試算をしております。
捻出した財源の使途については、最終的には十二月までの予算編成過程において決定されるものではありますが、文部科学省としては、低所得者への支援として、一つに、私立高等学校等の生徒に対する高等学校等就学支援金の加算の拡充に約三百四十億円、それから奨学のための給付金の国庫補助分、これは補助率三分の一ですが、この財源として約百五十億円、地方負担分は三百億円でございます、これを充てることとしておりまして、これらの実現に向けて努力をしてまいりたいと思います。
○宮本委員 八百九十億円を捻出して、それぞれ給付制奨学金等々に充てるということですね。
そこで、財務省にきょうは来ていただいております。
財務省にお伺いしますけれども、まず、給付型奨学金の創設について、財務省の財政制度等審議会では、「必要性は見出し難い」、こういうふうに述べておられます。これは財政制度等審議会だけがこう言っているわけではありませんで、ことし五月二十日の第十二回経済財政諮問会議で麻生財務大臣も、給付型奨学金の創設について、我々の知っている範囲では、経済的理由で高校を途中でやめた人は平成二十三年度で九百四十五人、〇・〇三%しかいない、我々としてはここのところを押さえておかないと、何となく聞こえのよい話になってしまうと御発言されております。
そういう点では、私、財務省は給付制奨学金の必要性は見出しがたいという認識なのかなと思っておりましたけれども、このたび、文科大臣も力説されるように、この所得制限で捻出した財源を使って給付制奨学金を行うということになっているそうでありますけれども、財務省は給付制奨学金の必要性はあるという認識だと。よろしいですね、財務省。
○葉梨大臣政務官 お答えいたします。
今大臣からもお話しありましたとおり、最終的にはこれは予算編成過程の中で検討してまいることになるわけですけれども、今も御質問ありましたが、高校無償化の所得制限の水準を決める過程では、関係者間でさまざまな御議論がありました。そして、教育費負担の軽減のための奨学のための給付金を創設することなどについて与党の合意がなされたと承知しております。
これを踏まえて、文科省の方から来年度予算編成について予算要求があったところでありまして、我々財務省といたしましても、与党合意を尊重しつつ、予算編成過程で検討してまいりたいと考えています。
○宮本委員 与党合意を尊重しつつと。この与党合意の中には明確に給付制奨学金の創設ということが文字で書かれているわけでありますけれども、このことをやるということでよろしいですか。
○葉梨大臣政務官 まさに今、要求を受けて予算編成をやっている最中でございまして、断言をすることはこの場ではなかなか難しいわけでございますけれども、尊重しつつ検討してまいりたいということで御勘弁をいただきたいと思います。
○宮本委員 では、必要性は見出しがたいという主張については変えると。よろしいですか。
○葉梨大臣政務官 この給付制奨学金、これが出てくる過程においては、まさに先ほど申し上げましたとおり、いろいろな議論がございました。
では、財務省としてどう考えるかということですけれども、最終的な結論は予算という形で結論を出させていただきたいと考えていますけれども、現段階、政府としては、与党の合意というのはしっかり尊重していかなければいけない、かように考えております。
○宮本委員 いや、これだけ聞いても、もともとあった必要性は見出しがたいというこの認識さえ変えるという答弁が出ないわけですよ。私は本当に、これで一体なぜこのことがやられる保証があるのかということを指摘せざるを得ないと思うんです。
もう一つ聞きましょう。
次に、では、捻出した八百九十億円の財源について聞きたいと思うんです。
文部科学大臣が主張するとおりこれは全て高校生の教育費負担軽減に充てられる財源、こういうことでよろしいですね、財務省。
○葉梨大臣政務官 先ほど申し上げましたとおり、やはり私どもとしては、現段階、与党合意を尊重する、そういう立場でございます。
その与党合意といいますのは、「所得制限により生み出された財源は、高校生等の教育費負担の軽減に必要な経費に充てる。」ということを合意されておりますので、これに基づいた、これを踏まえた予算要求が文科省からございました。
したがいまして、私どもとしても、与党合意を尊重しつつ、予算編成過程で検討していきたいと考えています。
○宮本委員 いいですか、今回の制度改正というものは、私は、国際人権規約の精神に反する後退だという指摘をいたしました。それに対して文科省の説明は、所得制限で八百九十億捻出するんだけれども、この分はちゃんと低所得者対策や公私間格差の是正や給付制奨学金に使うんだ、だから逆行するんじゃないんだ、削って召し上げてしまうんだったら逆行かもしれないけれどもそんなことはないんだという御説明なんです。
私はそれでもこのような所得制限の導入はすべきでないと思いますよ。しかし、万一その説明に反して、削った額がちゃんとそういうものに使われない、つまりプラスマイナスでいうと結局減っちゃったという結論になったら、国際人権規約、国際条約上の重大な後退だという指摘があり得るわけです。
その認識は財務省ありますか。
○葉梨大臣政務官 現段階で、今、高校無償化法の審議に出席させていただいているわけですけれども、高校無償化法、法律の審議とまた予算の編成とはちょっとそれぞれ別の土俵で行っておるものですから、予算につきましてはまた予算審議の過程でいろいろと御質疑いただきたいなというふうに思います。
現段階はまさに予算編成の途中でございますので、確定的なお話をここで申し上げられないという事情は御理解いただけるんじゃないかと思います。
○宮本委員 前回もこういう議論がやられたし、我が党だけじゃありません、他の党もこのことは厳しく何度も問うているわけです。
財務省の答弁は、そもそも高校無償化自体がさまざまな財源を捻出する中で創設されたものという答弁でしょう。これは、この言葉どおりに読めば、もともとさまざまな財源で始めた制度なので、そこから削ってつくる八百九十億円の財源は本来そのさまざまなところへ戻すべきだという考えもありますね、ただ、この与党合意というものもありますね、そこを検討するんですということなんです。
私は、もしもそんなさまざまなところへ返してしまうということになれば、減っちゃうじゃないか、説明が食い違っちゃうじゃないか、そんなばかな話はなかろうと。
だから、予算編成過程なわけであって、予算が固まるまでは確たることは言えないとおっしゃるかもしれないけれども、少なくとも、さまざまなところへ返していくこともあり得るんですよということについては、それはないと否定していただけますか。
○葉梨大臣政務官 宮本先生、なかなか確約というのは、予算編成の過程ですと極めて厳しいところでございます。法律の審議と予算の審議、またそれは別建てで考えていただきたいと思うんですが。
我々として、今、現段階で率直に申し上げて、与党の合意、つまり、捻出された財源は高校生などの教育費負担の軽減に使っていくということについてはしっかり尊重をしていきたいということについては、この場で申し上げていきたいと思います。
○宮本委員 私どもは、たとえ八百九十億というお金を低所得者対策等々文科大臣がおっしゃるとおりに使ったとしても、この所得制限の導入には反対であって、そういう低所得者対策は賛成ですよ、それは別の財源でやるべきで、先にこんな所得制限を入れて無償化を崩すようなことをやるべきでないと前回随分やりとりをしたわけです。そのときの文科省の、文科大臣の答弁は、いやいや、その金はちゃんと低所得者対策に使うんだ、だから、国際条約に反することはないし、無償化の方向を後退させることには当たらない、むしろ前進させるんだ、ここまで答弁されたわけですよ。だったら、その担保が要るわけです。
文科大臣の前回答弁されたことと、幾ら聞いたって今の財務省の答弁というのは距離があるわけです。これは内閣の不一致、これでは議論の前提を欠くんじゃないですか。文科大臣、どうですか。
○下村国務大臣 それは内閣の不一致ということはあり得ないわけで、宮本委員はおわかりになって質問されているのではないかと思いますが、今回の高校授業料無償化の所得制限を設けた見直しというのは、これは予算関連法案であるわけです。予算関連法案ですから、本来は来年の通常国会に出すべき法案なわけですね。しかし、来年の通常国会に出して、四月からすぐスタートしてくれということは、それは、時間的に地方自治体に対して相当な無理をさせるということになりますし、事前に新高校一年生に対する告知をすることは私学側も事実上時間的に不可能ですから、ですから、予算関連法案であるにもかかわらずこの臨時国会で例外的に、戦後ほとんどなかった事例だと思います、初めてと言っていいのではないかと思いますが、予算関連法案である本法案をこの臨時国会で提出させていただいているわけです。
そういう経緯の中で、財務省としては、これはやはり十二月までの予算編成過程の中で決定されるということは原理原則ですから、たとえ例外規定であっても現時点で明確に答弁できないというのは、それは予算関連法案としては基本的にはそのとおりだと思います。
ただ、先ほどから与党合意に基づいてということを言っているわけですから、ここは事実上は担保されているというふうに私は思っております。
○宮本委員 いや、だから私は、財務省にも政務三役に来ていただいて、政治家としての議論をしているわけです。
では、与党合意を尊重するというのは、担保されていることになるんですか、財務省。
○葉梨大臣政務官 確約はできません。今大臣がおっしゃられたとおりです。私も与党の一員でございます。与党合意というのはしっかりと尊重いたします。
○宮本委員 財務省の壁、財務省の壁と言うんですけれども、財務省だって自民党の大臣がやっているわけですよ。同じ政府じゃないですか。本当にこれをやると言うんだったら、そういう確約がなければ話は通りません。義家議員だって前回の質疑で、この部分の見解や調整が財務省とついていないというところが非常に大きな問題だとみずからお述べになったわけです。非常に大きな問題を残したまま、こんな法案、質疑終局できるわけがない。私はそのことを申し上げなきゃならぬと思うんです。
私は、改めて、それこそ財務大臣に来ていただいて、本当に財務省は予算編成の過程でそのとおりやりますねということをたださなきゃならないし、それについての確たる御答弁がなければ、こんな法案は到底審議を進められないと思うんです。
委員長、ぜひ財務大臣をこの委員会にお招きいただきたいと思うのですが、御検討お願いいたします。
○小渕委員長 理事会で後刻協議させていただきます。
○宮本委員 今政治が本当に行うべきことは、世界では当たり前の高校授業料実質無償の制度を崩すことではありません。維持し、給付制奨学金の創設、公私間格差の是正に進むことだと思います。
財源は、大資産家優遇の税制を改めて、年収三千万円以上の高額所得者への課税を一九九八年の水準に戻せば約一千億円が確保できる、前回提案したとおりです。来年度だけを考えるならば、三百億円、我が党以外の各政党が受け取っておりますけれども、税金の山分けをしている政党助成金を廃止すれば三百億円は十分捻出できます。
ですから、予算編成過程を前に、この秋の国会で先に削る方を出すというやり方が間違っているんですよ。そういう財源をしっかり真剣に探求して、まさに来年からそういう低所得者対策や奨学金などを始める。その上でさらに、来通常国会に、どういう形でそういう無償制度を一層拡充するかという法案の提案をすべきだった。それを今ここで出しているから、確たる担保もなしに今まさにこういう議論が進められようとしております。
あなたの学びを社会で支えます、こう高校生に約束したその約束をいともたやすくたがえるような本法案は、引き続く徹底審議が必要だということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 私は、日本共産党を代表して、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律案に、反対の立場から討論いたします。
まず、審議が尽くされていないにもかかわらず、我が党の反対を押し切って質疑終局したことに抗議を申し上げたいと思います。
以下、反対する理由を申し述べます。
第一に、本法案が、公立高校授業料無償制度を廃止し、無償教育から有償教育へと改変していることです。
我が国が昨年留保を撤回した国際人権A規約にも明記されている、教育を受ける権利を無償教育の実現により保障していく世界の流れに逆行するものです。
第二に、就学支援金の支給に所得制限を導入することです。
高額所得者に応分の負担を求めるのなら税制により対応すべきで、所得制限を導入することではありません。
第三に、本法案は、所得制限導入により予算を削減することのみを規定し、削減された予算の使途について明確になっていないことです。
所得制限により生み出された財源で教育費負担の軽減を実現するとしていますが、質疑で明らかになったように、現時点では、そもそも実施するかどうかさえ定かではありません。
公私間格差の是正、給付制奨学金の創設は、直ちに取り組むべき課題です。それは、所得制限の導入に財源を求めるのではなく、諸外国に比して立ちおくれた我が国の教育分野の公財政支出を対GDP比でOECD諸国並みを目指し、予算を抜本的に拡充することで解決すべきです。
第四に、本法案により、就学支援金の受給に所得証明の提出が義務づけられることです。
公立高校での新たな事務の発生など、都道府県、学校、とりわけ保護者に新たな負担となります。また、保護者が受給を申請しなければ、授業料を支払わなければなりません。非正規雇用などで所得把握が難しい保護者が申請できないなど、真に困窮する家庭が支援から排除されかねません。
以上、反対する理由を申し述べ、討論を終わります。