軍拡財源確保が狙い
宮本岳志氏 NTT法改定案 批判
衆院委可決
衆院総務委員会は4日、NTT法改定案を自民、公明、維新、立民、国民の各党の賛成で可決しました。日本共産党の宮本岳志議員は、利益優先経営のため公的責務から逃れたいNTTと、軍拡財源調達、軍事研究推進を狙う政府・与党が歩調を合わせて出してきた法案だと批判し、反対しました。
法案は、現在同法がNTTに課している研究の推進・公開責務などいくつかの公的責務を廃止・縮小するとともに、付則には2025年の通常国会に向けて同法の廃止を含めた検討を進めると明記しています。
宮本氏は、軍拡財源確保に関する自民党のプロジェクトチームが昨年6月、同法で政府に3分の1の保有が義務づけられているNTT株売却に言及したところから議論が急浮上してきたと指摘。同社の島田明社長の「(法廃止は)私どもが言っているわけではない」との発言も示し、軍拡財源確保を求める自民党言いなりの見直しだと追及しました。
宮本氏は、研究責務が共同研究を進めるうえで経済安全保障上の障害になっているとNTTが主張していることに触れ、NTTの共同研究者から防衛省や米軍は排除されるのかと質問。松本剛明総務相は「(共同研究者を)明らかにすることは控えている」と述べるだけで、防衛省や米軍との共同研究の可能性を否定しませんでした。
宮本氏は、NTTの研究開発に防衛省が注目しているとの報道をあげ「防衛省との共同研究のために、研究成果をブラックボックスにする必要があるということだ」と強調しました。
(しんぶん赤旗 2024年4月5日)
動画 https://youtu.be/8lVzEFQjQ80?si=nIhUwUxt4CUhG2Ao
配布資料 20240404総務委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
本改正案は、その附則に、NTT法の廃止を含め、NTT持ち株会社及びNTT東西の制度の在り方について検討を加え、二〇二五年通常国会を目途として、日本電信電話株式会社等に対する規制の見直しを含む電気通信事業法の改正等必要な措置を講ずる法律案を国会に提出すると、自らの廃止検討を明記しております。
利益優先の経営をより推進するためにユニバーサルサービスの責務から逃れたいNTTと、軍事費調達のために政府保有NTT株の売却、完全民営化を狙う自民党の議論と歩調を合わせ、NTT法廃止のための布石を打つものであり、到底賛成できません。
資料一を見ていただきたい。国立国会図書館から提出いただいた、NTTの在り方をめぐる議論の経過と題した年表でございます。
昨年六月八日に自民党政務調査会防衛費関係の財源検討に関する特命委員会が公表した提言の中で、防衛財源確保のためにNTT株売却についても検討し、NTT法の在り方の検討を打ち出すと、八月二十二日には自民党のプロジェクトチーム、PTが立ち上がり、甘利座長がNTT法の廃止も含めて検討すると発言、八月三十一日には自民党PTが初会合を開催しております。
確かに、情報通信審議会電気通信事業政策部会の下に置かれた特別委員会で議論されてきたわけでありますけれども、こちらが始まったのは九月の七日ということでありまして、つまりこの議論は自民党政調の防衛財源の検討から始まった議論ではありませんか、基盤局長。
○今川政府参考人 お答え申し上げます。
NTT法を含む通信政策の在り方については、令和二年の改正法の施行後三年見直し規定というのがございまして、この三年後見直し規定に基づきまして、昨年八月、情報通信審議会に市場環境の変化に対応した通信政策の在り方を諮問し、本年二月に第一次答申が取りまとめられたものでございます。
本法案は、情報通信審議会の第一次答申において、喫緊の課題である我が国の情報通信産業の国際競争力の強化を図るため、研究開発に関する責務の見直し、外国人役員の規制や役員選解任の認可の見直しなどが速やかに実施すべき事項として提言されたことを踏まえまして、必要な改正を行うこととしているものでございます。
○宮本(岳)委員 いやいや、この情報通信審議会に諮問したのは松本剛明総務大臣ですよね。あなたが昨年の八月二十八日に今おっしゃった三年後見直し規定に基づく検討を諮問したわけですけれども、その諮問時にあなたがつけた答申を希望する時期は、いつが目途と明記されておりますか。
○松本国務大臣 令和五年八月二十八日付の諮問書には、市場環境の変化に迅速かつ柔軟に対応することが必要との問題意識を示した上で、希望する答申時期として令和六年夏頃目途と記載いたしております。
○宮本(岳)委員 令和六年夏頃目途と明記をされております。だからこそ、この情報通信審議会の特別委員会の議論は令和六年夏頃目途での答申で進んでまいりました。
配付資料二は、昨年十一月六日、第九回の特別委員会に検討スケジュール案として出されたものであります。今年二月にかけて論点整理、骨子案は四月、答申をまとめるのは六月となっております。しかし、なぜか、十二月十三日に行われたその次の第十回の特別委員会で中間的な取りまとめという話が突然出てまいりました。
十一月六日の先ほどの第九回から十二月十三日の第十回の間に一体何があったか。資料三を見ていただきたい。昨年十二月五日付で自民党政務調査会が取りまとめた日本電信電話株式会社に関する法律の在り方に関する提言であります。その中には、下線部、これは私が引いたものじゃありません、元々この提言にこの下線は引かれているわけでありますけれども、政府に対し、NTT法において速やかに撤廃可能な項目については二〇二四年通常国会で措置し、それ以外の項目についても、二〇二五年の通常国会を目途に電気通信事業法の改正等、関係法令に関する必要な措置を講じ次第NTT法を廃止することを求めるとなっております。
総務省に聞きますけれども、自民党政調の提言に沿って、情報通信審議会の特別委員会に、当初のスケジュールをいわばねじ曲げて、NTT法において速やかに撤廃可能な項目については今通常国会で措置、こう急ぐようにと、取りまとめを急がせたのではありませんか。
○今川政府参考人 お答え申し上げます。
NTT法を含む通信政策の在り方については、委員御指摘の総務省の情報通信審議会通信政策特別委員会において、二〇二四年九月から十一月まで九回の会合が開催され、関係する事業者、業界団体、自治体などのヒアリングを通じて活発な議論が行われてまいりました。
十二月十三日、第十回の会合では、第九回の会合までで行われたヒアリングの内容も踏まえ、三点、一つは通信政策として確保すべき事項、二つ目はNTTの経営面で確保すべき事項、三つ目は制度改正の際に確保すべき事項、この三つを確保することを基本的な方向性とした論点整理案がこの第十回会合に示されております。
三つ目の制度改正の際に確保すべき事項につきましては、早期の改正と円滑な改正の両立を図ることが必要なのではないかとされておりまして、この議論を行う中で主査として、速やかに実施すべき事項があるということで、中間的な取りまとめを行う方向で議論を進めることになったと理解しております。
○宮本(岳)委員 資料四を見てください。第十回の特別委員会の会議録であります。
自民党政調の提言は、二〇二四年通常国会で措置しに続けて、二〇二五年の通常国会を目途に電気通信事業法の改正等、関係法令に関する必要な措置を講じ次第NTT法を廃止することを求めるとなっておりました。これが本法案の附則第四条の根拠なんですね。
ここで、NTTの島田社長は、二〇二五年に廃止するというのは私どもが言っているわけではなくて、それは自民党の政務調査会が出した報告書に書かれているということであります、私どもが言っているわけではないということですと明言されておりますね。二〇二五年NTT法廃止はNTTの要望ではないんですね、基盤局長。
○今川政府参考人 お答え申し上げます。
その前に、済みません、先ほどの私の答弁で、通信政策特別委員会において二〇二三年九月から十一月までと申し上げたようでございます。失礼いたしました、二〇二四年の九月から十一月まででございます。訂正させていただきます、申し訳ございません。(宮本(岳)委員「二四年九月なんて来ていないじゃないか。止めてくれよ」と呼ぶ)済みません、失礼しました。(宮本(岳)委員「何の訂正をやっているんだ」と呼ぶ)大変失礼いたしました、二〇二三年の九月から十一月までと訂正させていただきます。(宮本(岳)委員「話にならないじゃない」と呼ぶ)大変申し訳ありませんでした。
答弁させていただきます。
情報通信審議会においては、市場環境の変化に対応した通信政策の在り方について、通信事業者各社や業界団体、自治体などの幅広い関係者の御意見を丁寧に伺いながら検討が進められてきております。
その中で、NTTについては、電気通信技術に関する研究の推進責務及び研究成果の普及責務は国際競争力の強化の支障となることから撤廃すべきという考えや、外国人役員規制によってグローバルかつ多様な視点でのマネジメントができないなどの考えを表明しております。
こうした審議会における議論の結果、本年二月に第一次答申が取りまとめられ、その答申ではこれまでの議論が二つに整理され、研究に関する責務の見直しなど喫緊の課題である国際競争力の強化の観点から必要な事項は速やかに実施すべき事項として提言され、ユニバーサルサービスなどにつきましては今後更に検討を深めていくべき事項として整理されております。
本法案は、第一次答申で速やかに実施すべき事項と提言されたものに基づきまして法改正を行うものでございます。(宮本(岳)委員「まともな答弁をせずに、何だ、今のは。駄目ですよ。速記を止めてください」と呼ぶ)
○古屋委員長 速記を止めてください。
○古屋委員長 速記を起こしてください。
もう一度、答弁、簡潔にお願いします。(宮本(岳)委員「いや、答弁って、時間がないというんだから。もう一回答弁はいいですよ。時間を回復してくれるんだったらいいけれども」と呼ぶ)もう一度、答弁、確認いたします。(宮本(岳)委員「いや、だから、時間が取り戻せないでしょう。もっとロスするじゃないか」と呼ぶ)
今川局長。
○今川政府参考人 大変申し訳ありません、私、二〇二四年九月と申しましたが、二〇二三年九月の間違いでございました。大変申し訳ありません、おわびを申し上げます。
やいや、謝ってもらっても済みません。私の時間をどうしてくれるんですか。できません。
○古屋委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○古屋委員長 速記を起こしてください。
宮本岳志さん。
○宮本(岳)委員 是非、回復措置をお願いしたいと思います。
更に会議録を読んでいきますと、島田さんはこうも述べているんですね。二〇二五年にやるというのは、私どもが申し上げていないというのは、それは事実、言っていないので言っていないと申し上げているわけでございます、一方で、いわゆる自民党、与党がそういう発言をされていることは、それはそれで尊重しなきゃならないことだと思っていますので、当然、この審議会の中でも与党が発言されていることについては意識をされて議論されていることが前提なんだろうなというふうに私は認識しているところですと。
ですから、いろいろ言いますけれども、今私が読んだのは自民党の会議じゃないですよ、特別委員会、まさに情報通信審議会の議事録ですよね。その中で、自民党が言っているからこれはこうしなきゃ仕方がないというやり取りがされているわけですよ。これは紛れもなく、国際競争の激化とかあるいは時代の変化とかというものではなくて、自民党の政調の提言が前提の改正なのではないんですか、基盤局長。
○今川政府参考人 お答え申し上げます。
繰り返しとなりますが、審議会の議論におきましては、令和二年改正法の施行後三年見直し規定に基づきましてしっかりと議論を続けてきたものと理解しております。
○宮本(岳)委員 十二月の五日、鈴木淳司総務大臣の閣議後記者会見、持ってきましたよ。自民党のPTにおきましてNTT法の在り方に関する提言案が了承されまして、今後党内手続を経て取りまとめられる予定と承知しております、提言案では必要な措置を二段階で行うことを求めていると承知しておりまして、審議会におきましても早期に方向性が得られたものにつきましては速やかに取り組むことが必要とされていますことから、総務省としましては審議会での検討を加速させまして必要な対応を進めてまいりたいと思いますと。
十二月の五日に既に総務大臣は自民党のPTが取りまとめたから加速させると言っているわけですよ、それを受けて今回の第一次答申というのが出された。私の指摘どおりじゃないですか。お認めにならないんでしょうから、平行線でしょう。
次の論点に移ります。
次に、研究開発の推進責務や成果の普及責務について、その責務を廃止するとしている問題についてです。公開の責務があることで共同研究が妨げられるからというのでありますけれども、本当にそんな事実があるのか。
NTTは、第二回特別委員会の会議録の中で、IOWN等の研究の開発をパートナーと連携して展開していく上で経済安全保障及び国際競争力強化の課題がありますと述べています。国際競争力強化のために責務の廃止を急ぐというんですけれども、ここで挙げられているIOWNで共同研究が妨げられた事例があるんですか。
○今川政府参考人 お答え申し上げます。
審議会におけるヒアリングにおいては、NTTからは、共同研究に関するパートナーとの交渉の中で同業他社へ共同研究の成果を開示せざるを得なくなることから、プロダクトの差異化が図れないことなどを理由に交渉が不成立となった事例などが示されております。
また、委員御指摘のIOWNについては、パートナー企業から差異化による競争優位性を確保するためのIOWN技術などの独占的な開示を求められた際、公平な開示義務があるため要望にお応えできないとの意見が表明されていますが、具体的な開示要望については、IOWN技術についてはこれからの技術であり、今後具体的な技術が生み出されていく過程の中で様々な要望などが出てくるものと考えておるとの説明がなされております。
○宮本(岳)委員 NTTは経済安全保障及び国際競争力強化の課題と述べておりますけれども、共同研究の相手は企業だけではなく、防衛省や米軍も排除されてはおりません。現に、資料五の日経二月二十三日付朝刊の記事を見ていただければ、防衛省からはNTTの新基盤技術、IOWNは大いに活用が期待されております。そして、なるほど、軍事研究であれば、公開の責務は邪魔に違いありません。
大臣は、昨年八月二十五日に開催された総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議に参加されております。この会議は、冒頭で官房長官が語っているように、防衛力の抜本的強化を補完し、それと不可分一体のものとして総合的な防衛体制を強化することを目指すというものであります。資料六にあるとおり、この閣僚会議で松本総務大臣は発言をしておりますけれども、資料六を見ていただきながら、大臣、この会議で何を発言されましたか。
○松本国務大臣 委員が既に議事要旨を引用されておられますので、私の発言はこのとおりかと思いますが、読み上げた方がよろしいでしょうか。(宮本(岳)委員「それでいいですよ」と呼ぶ)議事要旨は正確に記載されているものと理解をしておりますが。
○宮本(岳)委員 この議事要旨どおりのことをおっしゃったということであります。
この閣僚会議では、総合的な防衛体制の強化に資する研究開発の推進のための九つの分野にわたる重要技術課題を設定いたしました。その五つ目には情報通信が挙げられております。「五 情報通信」の箱の中には「高速・大容量の通信、低遅延な通信、広範な通信、従来よりも高性能な通信・情報ネットワーク(光通信等)、」と書かれております。重要技術課題とされた情報通信分野において、NTTがまさに次世代通信基盤として研究を進めているIOWNというものは排除されませんね、大臣。入っておりますね。
○松本国務大臣 総合的な防衛体制の強化に資する研究開発の仕組みは、総務省始め関係省庁が、あくまで、自らの政策目的、総務省であれば民生目的で実施する研究開発の成果を防衛省と共有する仕組みでありまして、総務省としてはIOWNの研究開発を支援していることはこれまでも申し上げたとおりでございます。
○宮本(岳)委員 排除されませんね、NTTは入りますね、IOWN。
○松本国務大臣 今のところ、私の方から、個別の研究開発のテーマに、どのテーマについてどこが参加をしているかということについては、端的に、サイバー攻撃等の対象となるおそれもあることから、具体名を明らかにすることは控えさせていただいております。
○宮本(岳)委員 既にそうして控えているわけでありますが。
資料五の日経記事では、防衛省は今春にも民間の次世代通信技術を安全保障に活用するための計画を作ると書いた上で、NTTが開発中の次世代通信基盤、IOWNを第一弾に想定すると報じております。結局、何を急いでいるのかと思えば、この防衛省との共同研究に乗り出すために研究開発の成果をブラックボックスにする必要があるということにほかなりません。
本改正案は、徹頭徹尾、動機が不純であります。出発点では軍事費四十三兆円の財源捻出のためのNTT政府保有株の売却の検討があり、途中経過でもスケジュールをねじ曲げてまで中間報告を出させて、今国会に法案を提出させたのは自民党のプロジェクトチームと政務調査会でありました。そして、今回の法改正を急ぐ理由は国民に隠した軍事研究であります。このような国民不在の法改正は断じて許されないということを指摘して、私の質問を終わります。
反対討論
○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表し、日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案に反対討論を行います。
理由の第一は、日本電信電話株式会社、いわゆるNTT等に関する法律の廃止を含めた制度の在り方についての検討を加え、次期通常国会で法律案を提出することを附則にしたことです。これは法の廃止に布石を打つもので、反対です。
理由の第二は、法の廃止を言いながら、研究開発の推進責務や普及の責務の廃止、外国人役員に関する規制や役員選任、解任決議の認可の緩和、剰余金処分決議の認可の廃止、商号変更の自由を認めるといった規制の緩和を行うことです。そもそも、これらの事項は、昨年八月に市場環境の変化に対応した通信政策の在り方として情報通信審議会電気通信事業政策部会通信政策特別委員会に諮問され、検討を行ってきたことであり、総務省自身が今年の夏をめどに取りまとめを行うと決めていました。
しかし、総務省は、自らが決めた当初のスケジュールすらほごにして、議論が途中であるにもかかわらず予定になかった第一次答申の取りまとめを行っており、異常だと言わざるを得ません。
今回の法案の内容を見れば、昨年十二月に与党自民党が行った日本電信電話株式会社等に関する法律の在り方に関する提言の内容に沿ったものであり、結局は与党自民党の言いなりの法案と言えます。このことは、私が質疑で明らかにしたように、情報通信審議会電気通信事業政策部会通信政策特別委員会でのNTT社長の発言でも明らかです。
そもそも、NTT等に関する法律は、公社時代に国民負担で築き上げた国民の財産である通信インフラを承継したNTT持ち株会社とNTT東西両会社に、果たすべき業務と電話のあまねく提供、研究開発の推進、普及といった責務を定め、それを行わせる会社とするために必要な担保措置を定めた法律です。
しかし、本法案は、国際競争力強化を理由にNTTが国民に隠したまま大手を振って軍事研究を行う道を開き、さらには法の廃止を前提とするものであり、絶対に認められないことを申し述べ、討論といたします。