国民生活脅かす悪法 次々委員会可決
地方自治法改定案 衆院委
国の恣意的判断強要 宮本岳志議員が告発
政府が「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と判断すれば地方自治体に対して指示ができる「指示権」を新たに導入する地方自治法改定案が28日の衆院総務委員会で、食料自給率の向上を投げ出す食料・農業・農村基本法改定案が同日の参院農林水産委員会で相次いで採決され、可決しました。日本共産党はいずれも反対しました。
地方自治法改定案は修正のうえ、自民、公明、維新、国民などの賛成多数で可決しました。日本共産党は原案と修正案に、立憲民主党は原案に反対しました。
日本共産党の宮本岳志議員は反対討論で「改定案による『指示権』は、国による強制的関与が基本的に認められない自治事務にまで国が強く関与する仕組みとなっている」と指摘。「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と判断する類型や基準も曖昧であり、「国の恣意(しい)的判断を可能とするもので極めて重大だ」と批判しました。
また、個別法で想定されない事態がおこったときに「指示」するとしながら、想定される「事態」や個別法との関係についての検討内容も示されていないと指摘し、「審議を終わらせることは許されない。断固反対し、廃案を求める」と主張しました。
改定案が、国による自治体職員の派遣のあっせんを可能とすることについては「国の指示に基づく業務遂行のために自治体職員までも駆り出すことを可能とするものだ」と批判。他の自治体または国と協力し、情報システム利用の最適化を図ることを自治体の努力義務としていることも、「自治体は国がつくる鋳型に収まる範囲の施策しか行えないことになり、地方自治を侵害しかねない」と批判しました。
(しんぶん赤旗 2024年5月29日)
空港・港湾 自衛隊優先 強制恐れ
地方自治法改定案 宮本岳志氏ただす
日本共産党の宮本岳志議員は28日の衆院総務委員会で、自衛隊などの空港・港湾の軍事利用を拡大する「特定利用空港・港湾」を巡り、地方自治法改定案に基づき自治体に対する「指示権」が行使されれば、自衛隊などの優先利用が強制される可能性があると追及しました。
改定案は、政府が「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と判断すれば自治体に「指示権」を行使できる仕組みを導入。政府は国の関与の要件は「特定の類型に限定せず」などと曖昧にしています。
宮本氏は、国は法律・政令の根拠がなければ自治体の事務処理に対する関与を行ってはいけないとする「関与の法定主義」に反すると批判しました。
「特定利用空港・港湾」は、自衛隊などが空港・港湾を円滑に利用できるよう国と自治の間で調整の枠組みをつくることを条件に整備を推進するものです。
宮本氏は、枠組みは国と自治体との「話し合いベース」で調整するとしているが、改定案は「指示」の行使の「類型」を限定しておらず、「優先利用が強制されるかもしれないという不安が広がるのも当然だ」と批判。「改定案に基づく関与の行使は想定すべきではない」とただしました。
松本剛明総務相は「自衛隊、海上保安庁の優先利用のために指示を行使することは想定されていない」と答弁。宮本氏は「住民は『特定利用空港・港湾』となるだけで危険性を感じている。地方自治法の特例規定が『話し合い』を覆すことはあってはならない。そうしたことを持ち込むのが今回の改定案だ」と批判しました。
(しんぶん赤旗 2024年5月29日)
動画 https://youtu.be/JjG8AkKvSwI?si=LzXjyPIZDp4F4B2j
配付資料 20240528総務委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
今回の地方自治法改正案は、第三十三次地方制度調査会の答申を受けた改正とされておりますけれども、昨年十二月二十一日に答申が出され、今年三月一日に閣議決定が行われました。その間僅か七十日余りということが当委員会でも議論されてまいりました。この僅かの期間に総務省が法制局とどのようなやり取りを行い閣議決定に至ったのか、その間の変更点を全て出していただきたいと要求してまいりましたけれども、先日、私のところに、この法改正案の基になった昨年十二月二十日のドラフトと、それを法制局との関係や、省内で検討して最終的な閣議決定に向かった今年二月五日のドラフトが提出をされました。
この二月五日のドラフトから、今ここにありますけれども、二月二十九日、内閣法制局が決裁をして、三月一日に閣議決定された法案、こういうものができたわけでありますけれども、二月五日のドラフトとこの閣議決定した法案との間には、更に三点の変更箇所があります。
さて、今日は、そもそも十二月二十日から二月五日にどう変わったかということをお示しするために資料を配付しておきました。資料一の一を見ていただきたい。これが二月五日時点のドラフトでありますけれども、十二月二十日ドラフトとの変更点を、いわゆる見え消しにしたものであります。
まず、十四章の表題でありますけれども、元々昨年十二月二十日時点では、「大規模な災害、感染症のまん延その他これらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における国と普通地方公共団体との関係等の特例」となっていたものが、最初の一行、大規模な災害、感染症その他これらに類するの見出しが消えて、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態何がしとなっております。
まず、自治行政局に聞きますけれども、この最初の一行をなぜ落としたんですか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
大規模な災害、感染症の蔓延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における国と普通地方公共団体との関係等の特例について規定する地方自治法第二編新第十四章につきましては、章名をこのように規定すると非常に長くなり分かりづらいということ、それから、同章の冒頭の第二百五十二条の二十六の三におきまして、当該事態を国民の安全に重大な影響を及ぼす事態と総称する、こういうことにしているところから、法制作業における精査の中で現在の章名にしたところでございます。
具体的には、御指摘ございましたけれども、昨年十二月時点で、第二百五十二条の二十六の三の「大規模な災害、感染症のまん延その他これらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」との規定について、二月時点で、範囲をより明確化する観点から、「大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と修正しているところでございます。
この修正をこのまま反映しますと章名が一層長くなることから、総称である、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に変更したものでございます。
○宮本(岳)委員 端的に答えてくださいよ。
ならば、次の資料一の二を見ていただきたい。生命等の保護の措置に関する指示についての第二百五十二条の二十六の五のドラフトであります。
赤い字の二項は、知事会の意見を受けて加えられたことは分かりました。しかし、一項には手を加えた形跡はないんですね。ここは関与の法定主義に基づく条項である、こういう説明を受けました。
言うまでもなく、地方自治法第二百四十五条の二、「普通地方公共団体は、その事務の処理に関し、法律又はこれに基づく政令によらなければ、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与を受け、又は要することとされることはない。」というのが関与の法定主義と呼ばれるものです。
しかし、この第二百五十二条の二十六の五の第一項というものは、特定の類型も限定もしておりません。どのような場合にどのような要件で関与が可能になるのかについても、特定の類型に限定せずなどという答弁が繰り返されるばかりです。これでは到底、関与の法定主義とは言えないのではありませんか、局長。
○山野政府参考人 お答えいたします。
御指摘の関与の法定主義、自治法の二百四十五条の二でございますけれども、普通地方公共団体に対する国等の関与については、法律又はこれに基づく政令の根拠を必要とするという規定でございますが、補充的指示については、関与の法定主義にのっとり、本改正案における地方自治法二百五十二条の二十六の五にその根拠を置いた上で、御指摘の事態の範囲については、大規模な災害、感染症の蔓延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態として、特定の事態の類型に限定することなく規定したものでございます。
○宮本(岳)委員 だから、とても限定したとは言えないと言っているんですよ。特定の類型に限定せずと今言ったじゃないですか。その一方で、前回の質疑で、事態対処法での想定外の事態について除外されるのかとの私の質問に、ついに山野自治行政局長は、特定の事態を排除しないとも答弁いたしました。
本会議質問でも前回の委員会でも議論してきた、総合的な防衛体制の強化に資する取組の空港、港湾に関する公共インフラ整備について、引き続きただしておきたいと思うんです。
資料二に、空港や港湾の円滑な利用に関する確認書を配付いたしました。左側が空港、右側が港湾であります。
こういう確認書を交わした特定利用空港、港湾について、自治体への回答として、平素とされている中には、大規模災害、北朝鮮による弾道ミサイル技術を利用した発射に対する対応、存立危機事態や重要影響事態、いわゆるグレーゾーン事態も含まれているとされております。事態対処法で有事とされる範囲の手前まで含まれるわけですね。
しかし、この枠組みは、有事手前、最後まで、これはあくまで話合いベースである、こう理解しておりますが、防衛省、それでよろしいですか。
○米山政府参考人 御答弁申し上げます。
今般、インフラ管理者との間で確認するに至りました円滑な利用に関する枠組みについてでございますが、あくまで空港法や港湾法等の現行の関係法令に基づきまして関係者間で連携し、円滑な施設の利用につきまして調整するための枠組みということでございます。したがいまして、今般の取組は、自衛隊、海上保安庁の優先利用といったものを目的としたものではございません。
○宮本(岳)委員 あくまで話合いベース、前回もそういう答弁でありました。優先利用を強制するものではないと。
今日は国土交通省にも来ていただいております。
まず、空港に関わって、航空局に聞きたい。
確認書には、民生利用に配慮しつつとか、連絡調整体制を構築し、円滑な利用に関する具体的な運用のための意見交換など、いわば話合いベースで円滑な利用に関しての確認書を交わす内容になっております。
これは、あくまで意見交換によってお互いの合意を形成し、自衛隊や海上保安庁による空港の円滑な利用を促進しようとするものであって、強制的に優先利用を自治体に押しつけられるものではないと思いますが、間違いないですね、航空局。
○蔵持政府参考人 お答えいたします。
今般の特定利用空港における円滑な利用に関する枠組みは、平素において自衛隊、海上保安庁による円滑な空港の利用が可能となるよう空港法等の既存の法令に基づき調整を行うものであり、自衛隊、海上保安庁の優先利用のためのものではございません。
○宮本(岳)委員 部局も根拠法も異なるので、同じ問いを港湾局にもいたします。
港湾施設についても、自衛隊や海上保安庁の円滑な利用は、あくまで個別法たる港湾法その他の関係法令を踏まえて、あくまで意見交換と管理者との合意ベースで進められるものであって、港湾管理者に指示をしたり命令するような枠組みではないと理解しておりますが、よろしいですか。
○西村政府参考人 お答え申し上げます。
今般、特定利用港湾において設ける円滑な利用に関する枠組みは、平素において自衛隊や海上保安庁による円滑な港湾の利用が可能となるよう港湾法などの既存の法令に基づき調整を行うものでございまして、自衛隊や海上保安庁の優先利用のためのものではございません。
○宮本(岳)委員 いずれも、あくまで管理者との合意ベースであって、指示や命令など強制はできないことが確認されました。
そして、前回の質疑で松本総務大臣も、優先利用のために補充的な指示を行使することは想定していないとも答弁されました。
しかし、本改正案の第十四章に新たに導入された指示など国と地方の関係の特例は、指示の行使についてもその類型を限定しておりません。これでは、いつ指示が出され、優先利用を強制されるかもしれないという不安が広がるのも当然だと思います。
同時に、先ほど防衛省や国土交通省に確認しましたけれども、今回の改正で新設される地方自治法二百五十二条の二十六の五を使って万一指示を行えば、せっかく積み上げてきた話合いベースの努力は水泡に帰するわけです。
大臣、そのようなことは、たとえ除外されていないにしても、本改正案に基づく関与の行使は想定すべきではないと私は思いますが、いかがですか、大臣。
○松本国務大臣 既に御答弁を申し上げているところでありますが、委員からお話がありました公共インフラ整備の取組は、平素における空港、港湾の柔軟かつ迅速な利用について、あくまで空港法や港湾法などの既存の法令に基づいて関係者間で連携し、調整するための枠組みを設けるものと承知をしておりまして、この枠組みは事前に既存の法律に基づいて関係者間で連携、調整するためのものでありまして、自衛隊、海上保安庁の優先利用のために個別法で想定されていない事態に備える補充的な指示を行使することは想定されていないものと理解をしております。
○宮本(岳)委員 是非そこは守っていただきたいんです。
しかし、住民にとっては、特定利用港湾、特定利用空港となるだけで大変危険性を感じる、心配されるわけですね。地方自治法の特例規定が話合いを覆すことは決してあってはならない。しかも、そうしたことを持ち込むのが今回の改悪だということを一貫して指摘をしてきたわけでございます。
次に、法案第二百五十二条の二十六の九で、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合には、国が職員の派遣のあっせんを行える、こういう仕組みが入っております。これは、これまでにない仕組みでありまして、私は、うまくいくとはとても思えないんですね。公務員部長に聞くんですけれども、なぜこういう規定を設けたんですか。
○小池政府参考人 これまで大規模災害等におきましては、例えば避難所の運営ですとか罹災証明書の交付に向けた住家被害認定などの大量の災害対応業務が短期間に発生するため、被災した地方公共団体単独での対応はそもそも困難であることから、多くの応援職員が被災団体に入って対応いただいてまいりました。
その上で、今回の改正は、地方制度調査会の答申を踏まえ、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態において、国民の生命、身体又は財産の保護の措置を的確、迅速に実施するため、あらかじめ応援や職員派遣に係る必要な要件、手続を整備しているものでございます。
○宮本(岳)委員 しかし、続く二百五十二条の二十六の十では、職員の派遣義務まで定めております。この規定は、その所掌事務の遂行に著しい支障がない限り、適任と認める職員を派遣しなければならないとなっておりまして、自治体によっぽどのことがなければ職員派遣を迫るものになっております。
前回の質疑でも明らかにしたように、ダイヤモンド・プリンセス号の対応でも、また私自身が能登の被災地に入ってつかんできた現状を見ても、災害や感染症での派遣は協力ベースで行われてきたし、それで十分自治体の協力は得られている、こういう報告でありました。
聞きますけれども、総務省は自治体が職員派遣に非協力的だとでも考えているんですか。
○小池政府参考人 お答えいたします。
今の能登半島地震でも非常に多くの自治体の方に入っていただいておりまして、大変協力的にやっていただいているところでございます。
○宮本(岳)委員 そのとおりなんですね、立法事実がないという声が出ていますけれども。
こういう条文を入れるなら、政府は自治体の協力が不十分であると考えているとしか考えられませんし、また、協力が得られている災害や感染症対応ではなく、それこそ自治体の協力が得られないような類型の事態を想定したものではないのかとの疑念を持たざるを得ないわけであります。
さらに、法案は新たに情報システムの章を設けております。情報システムを有効に利用するとともに、他の普通公共団体又は国と協力して最適化を図るように努めるとされております。ここには、これまでの地方自治法二条にはなかった、新たに、国と協力してという文言が入れられております。
国は二〇二一年に地方公共団体情報システム標準化法を成立させました。地方自治体の情報システムを国の標準化基準に適合させることを義務づけてきたわけですね。現在、政令により定められたその対象事務は二十業務になっております。
資料三を見ていただきたい。二〇二一年四月十五日の衆議院での法案審議、我が党の本村伸子議員の総務委員会質問の会議録であります。本村議員が、全国の自治体が同じような情報システムにする標準化事務について、対象事務がどんどん拡大することになるのではないかと聞いたのに対して、赤線部は当時の高原自治行政局長の答弁です。「標準化法案においては、法令でほとんどの事務が定められているなど、自治体にとって創意工夫を発揮する余地の小さい事務に対象を限定することとしております。」と答弁しておられるんですね。
このとき、なぜ自治体にとって創意工夫を発揮する余地の小さい事務に対象を限定する必要があったのか、つまり、創意工夫を発揮する余地がもっと大きい事務についてはそうすべきではないという判断だったのか、ここを説明していただけますか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
御指摘のように、標準化法におきましては、法令でほとんどの事務が定められているなど、地方公共団体にとって創意工夫を発揮する余地の小さい事務を対象としております。これは、事務処理の内容が各地方公共団体で共通し、統一的な基準に適合する情報システムを利用することが住民の利便性向上や行政運営の効率化に寄与する事務として政令で定める事務を標準化対象事務としたものでございます。
その内容ですとか範囲につきましては、これは地方公共団体の意見も伺っているわけでございますけれども、システム、業務の実態を十分に確認しまして、創意工夫を発揮する余地があるのかどうか、こういったものも含めて、事務の共通性等を精査の上、標準化対象事務を定める政令において定められたということでございます。
○宮本(岳)委員 創意工夫を発揮する余地がある事務、まさにそこに自治が表現されるからなんですね。利便性向上、行政運営の効率化に寄与する事務、自治行政局長、そうしか言いませんけれども、ここに今後の国の姿勢が表れているわけです。
ところが、メディアはそうは見ておりません。資料の最後、資料四を見ていただきたい。
昨日、五月二十七日付の読売新聞。「自治体システム共通化 政府方針 給付金や学校事務」という見出しが躍っておりますけれども、左側の記事の冒頭を見ていただいたら、赤線部、「政府はこれまで、「自治体の業務に口を出さない」ことを不文律としてきた。これが地方分権につながるとの解釈からだ」。
確認しますが、こういう立場で標準化の義務づけをできるだけ限定して、本村議員が指摘したように、どんどんどんどん拡大というようなことを抑えてきたのではありませんか、局長。
○山野政府参考人 お答えいたします。
標準化につきましては、先ほども申しましたように、地方公共団体にとって創意工夫を発揮する余地の小さい事務を対象とすることとしておりまして、その内容につきましても、この考え方に基づいて対象を決めているものというふうに理解しております。
○宮本(岳)委員 余地の小さいものに限定したのは、自治、分権を保障するためだった、それも一つの理由だった、いいですね。
○山野政府参考人 お答えいたします。
地方団体の情報システムにつきましては、それぞれ地方団体の規模ですとか置かれた状況によって状況が異なります。これにつきましては、一番住民にとって最適なシステムであることが望まれるわけでございます。
一方で、標準化につきましては、行政運営の効率化、ひいては住民の利便性の向上、こういったものにつながるというものでございまして、そういった観点から標準化の事務を定めているということでございます。
○宮本(岳)委員 地方自治や地方分権について語らないんですね、自治行政局長が。
自治体が独自の施策に基づき進めようとしても、同一システム、鋳型にはまらないものを実施できなくなったら重大ですね。ところが、今政府は、この記事に出ていますけれども、ガバメントクラウド上で、給付金支給システムや学校事務システムは同じシステムを利用させることを検討しているという記事であります。記事は、「人口減で職員不足 効率化図る」と続けております。
しかし、給付金支給は、子供の医療費や給食費助成など、挙げられているのは地方自治に関わるものばかりです。行政運営の効率化と住民サービスをてんびんにかけることがあってはいけない。そういう認識は行政局長にはございますか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
システムにつきましては、先ほども申しましたように、やはり住民の利便性の向上ということが究極の目標だというふうに思っております。その上で、行政運営の効率化ということも、これは重要なことでございまして、これら両方をどう達成していくか、そういった観点から検討が必要なものだというふうに考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 自治体は既に、標準化法第四条二項で、国と連携を図りつつ、地方公共団体情報システム標準化を実施する責務を有するとされております。今度は、地方自治法でまで最適化を、努力義務とはいえ求められます。地方自治法では、事務等を限定もしていません。
情報システムについて、網羅的に国と協力が求められることになってくるのではありませんか、局長。
○山野政府参考人 お答えいたします。
情報システムにつきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、住民の利便性の向上、それから行政運営の効率化に資するということが最大の目的でございます。
地方自治体におきましては、それぞれの置かれた状況も異なります。私どもとしましては、そういった状況もよく踏まえながら、コミュニケーションあるいは情報共有をしながら、こういった標準化も含めてシステムの整備をしていく必要があるというふうに考えてございまして、そういった意味から、今回の規定が地方の自主性、自立性を損なうようなものではないというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 住民の利便性を語るのであれば、自治体の職員を減らすように迫ってきたのは国であります。ところが、今度は、職員不足を理由にデジタル化を進め、デジタル化を機に自治体の住民サービスを後退させられることがあってはなりません。
それどころか、資料四の、読売も指摘するように、「システムを共通化すると、障害が起きた際の影響が広範囲に及んだり、一部のIT企業による寡占が進んだりする懸念もある。」、こういう問題をどう乗り越えるのか。これは、大臣の見解を最後にお伺いしたいと思います。
○松本国務大臣 情報システムを活用する意義については、局長からも御答弁を申し上げたとおりでございますが、それぞれ、様々な施策につきましては、大きなメリットと同時に克服すべき課題もあるものがあることは確かでありまして、それぞれの課題にはしっかり対応する必要があるかというふうに思っておりますが、今回、サイバーセキュリティーについて定めを置きましたように、システムの保全というのは大変大切な課題であると考えておりますので、障害の発生やその応急復旧などの対応についても、できる限りのことをするように努めていきたいと思っております。
○宮本(岳)委員 与党は今朝も、質疑終局、採決を口にいたしましたが、論外です。事態対処法がこの法の守備範囲に入るのか、除外されるのかをめぐる問題でさえ、言を左右にして答弁が定まりませんでした。与党推薦の参考人でさえ求められた、地方の声を聞くための地方公聴会も開催しておりません。このような状況での質疑終局、採決など断じて許されないことを指摘して、私の質問を終わります。
討論
○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表して、地方自治法改正案に対する討論を行います。
本法案は、政府が国民の安全に重大な影響を及ぼす事態と判断すれば生命等の保護の措置の的確かつ迅速な実施を確保するために国が地方自治体に指示をすることができる指示権を新たに導入するものであり、断固反対です。
戦前の中央集権的な体制の下で自治体が侵略戦争遂行の一翼を担わされたことへの反省から、日本国憲法は地方自治を明記し、政府から独立した機能を持つ団体自治と住民の意思に基づく住民自治を保障しました。しかし、歴代自民党政権は自治体の権限や財源を抑制し続け、地方分権一括法でも、地方分権を掲げ機関委任事務を廃止したものの、四割にも及ぶ広範な自治体の事務を法定受託事務とした上に、国による強力な関与の仕組みも法定し、さらに、自治事務に対しても国による是正の要求を可能としました。
本法案による指示権は、国による強制的関与が基本的に認められない自治事務にまで国が強く関与する仕組みとなっています。
しかも、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態と判断する類型も基準も、大規模な災害、感染症の蔓延その他としているだけで極めて曖昧であり、さらに、発生のおそれがあるなどの判断は全て政府に委ねられています。国の恣意的判断を可能とするもので、極めて重大です。
審議では、個別法で想定されない事態が起こったときに指示するとしながら、想定される事態や個別法との関係についての検討内容も示されませんでした。それにもかかわらず審議を終わらせることは許されません。断固抗議します。本法案は廃案とすべきです。
第二に、本法案は、政府が国民の安全に重大な影響を及ぼす事態と判断した下で、国による自治体職員の派遣のあっせんを可能とするものです。国の指示に基づく業務遂行のために自治体職員までも駆り出すことを可能とするものであり、重大です。
第三に、本法案は、他の自治体又は国と協力し情報システム利用の最適化を図ることを自治体の努力義務とするものです。政府はこれまでも、地方公共団体システム標準化や、国が構築するガバメントクラウドの活用を求めてきました。本法案は、今後国が進める情報システムの整備の取組に幅広く協力していくことを自治体に求めるものになります。地方公共団体システム標準化等は、情報システムの共同化、集約の推進によって、自治体は国がつくる鋳型に収まる範囲の施策しか行えないことになり、地方自治を侵害しかねないものです。こうした問題を解決することなく自治体に情報システムの利活用を推進していくことには反対です。
修正案についても、閣法の問題を取り除くものではなく、反対です。
以上、討論といたします。(拍手)