地方自治 根底から破壊
自治法改定案衆院可決 宮本岳志氏が反対討論
政府が「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と判断すれば地方自治体に指示ができる「指示権」の枠組みを新たに導入する地方自治法改定案が30日の衆院本会議で、自民、公明、維新、国民の賛成多数で可決しました。日本共産党、立民などは反対しました。日本共産党の宮本岳志議員は討論で「『指示権』導入は憲法で保障された地方自治を根底から破壊する」と厳しく批判しました。(反対討論要旨)
宮本氏は、戦前の中央集権的な体制のもとで自治体が侵略戦争遂行の一翼を担わされた反省から、憲法は地方自治を明記し、政府から独立した機能を持つ「団体自治」と住民の意思に基づく「住民自治」を保障したと強調。それにもかかわらず、歴代自民党政権が自治体の権限や財源を抑制し続けて地方自治を形骸化させ、国による「代執行」など強力な関与の仕組みを法定したと指摘したうえで「改定案は国の関与を最大限抑制すべき自治事務にまで国が指示することを可能にするもので極めて重大だ」と批判しました。
また、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」の類型も判断基準も審議で明らかにされていないとして、「国の恣意(しい)的判断で自治体を国に従属させることなど断じて許せない」と強調。政府が集団的自衛権の発動要件である存立危機事態を含む「事態対処法」や、安保3文書に基づく「特定利用空港・港湾」に改定案の「指示権」適用を否定しなかったと指摘し、「米国の戦争に自治体を動員するために使われる危険は重大だ」と批判しました。
(しんぶん赤旗 2024年5月31日)
動画 https://youtu.be/0LqrLcI2jwI?si=A6_NPK4EObHSRVMP
議事録
○宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、地方自治法改正案に対する反対討論を行います。(拍手)
第一に、政府が国民の安全に重大な影響を及ぼす事態と判断すれば地方自治体に指示できる新たな指示権の枠組みを導入することは、憲法で保障された地方自治を根底から破壊するものです。
戦前の中央集権的な体制の下で、自治体は侵略戦争遂行の一翼を担わされました。その反省から、日本国憲法は地方自治を明記し、政府から独立した機能を持つ団体自治と、住民の意思に基づく住民自治を保障したのです。
ところが、歴代自民党政権は、自治体の権限や財源を抑制し続け、地方自治を形骸化させてきました。地方分権一括法でも、地方分権を掲げながら、機関委任事務を法定受託事務として事実上温存し、国による指示、代執行という強力な関与の仕組みを法定しました。
その上、本法案は、国の関与を最大限抑制すべき自治事務にまで国が指示することを可能にするもので、極めて重大です。しかも、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態とは何か、その類型も判断基準も、審議では明らかにされませんでした。国の恣意的判断で自治体を国に従属させることなど、断じて許されません。
一方で、政府は、存立危機事態を含む事態対処法や、安保三文書に基づく特定利用空港、港湾への法律の適用について、除外するものではないと述べ、否定しませんでした。アメリカの戦争に自治体を動員するために使われる危険は重大です。
さらに、国の判断の下で自治体職員の派遣のあっせんを可能とすることは、国の指示に基づく業務遂行に自治体職員を駆り出すものであり、認められません。
第二は、地方自治体の情報システムの利用について、最適化と称して、今後国が進める情報システムの整備の取組への協力を求めるものとなっていることです。
情報システムの共同化、集約の推進によって、地方自治体は、国がつくる鋳型に収まる範囲での施策を迫られるとともに、常に国のシステム整備に合わせていくことが求められます。地方自治を侵害するものであり、到底容認することはできません。
以上、反対討論といたします。(拍手)