平成二十五年六月十九日(水曜日)
午後一時開議
出席委員
委員長 松野 博一君
理事 木原 稔君 理事 中根 一幸君
理事 永岡 桂子君 理事 萩生田光一君
理事 山本ともひろ君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 浮島 智子君
青山 周平君 池田 佳隆君
岩田 和親君 小此木八郎君
大岡 敏孝君 大野敬太郎君
大見 正君 神山 佐市君
菅野さちこ君 木内 均君
工藤 彰三君 熊田 裕通君
小林 茂樹君 新開 裕司君
高橋ひなこ君 野中 厚君
比嘉奈津美君 宮内 秀樹君
宮川 典子君 山下 貴司君
義家 弘介君 小川 淳也君
郡 和子君 中川 正春君
松本 剛明君 伊東 信久君
椎木 保君 田沼 隆志君
中野 洋昌君 青柳陽一郎君
井出 庸生君 宮本 岳志君
青木 愛君 吉川 元君
…………………………………
議員 土屋 正忠君
議員 萩生田光一君
議員 郡 和子君
議員 松本 剛明君
議員 笠 浩史君
議員 鈴木 望君
議員 浮島 智子君
議員 井出 庸生君
議員 青木 愛君
文部科学大臣 下村 博文君
文部科学大臣政務官 義家 弘介君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 布村 幸彦君
文部科学委員会専門員 久留 正敏君
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委員の異動
六月十九日
辞任 補欠選任
菅野さちこ君 高橋ひなこ君
桜井 宏君 大野敬太郎君
丹羽 秀樹君 大見 正君
馳 浩君 大岡 敏孝君
宮内 秀樹君 山下 貴司君
遠藤 敬君 伊東 信久君
同日
辞任 補欠選任
大岡 敏孝君 馳 浩君
大野敬太郎君 岩田 和親君
大見 正君 丹羽 秀樹君
高橋ひなこ君 菅野さちこ君
山下 貴司君 宮内 秀樹君
伊東 信久君 遠藤 敬君
同日
辞任 補欠選任
岩田 和親君 桜井 宏君
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六月十九日
いじめ防止対策推進法案(馳浩君外十三名提出、衆法第四二号)
五月二十日
教育費負担の公私間格差をなくし、行き届いた教育を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第六三二号)
同(玉木雄一郎君紹介)(第六五九号)
教育予算の増額、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善に関する請願(宮本岳志君紹介)(第六三三号)
教育費負担の公私間格差をなくし、行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(大岡敏孝君紹介)(第六六〇号)
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(大串博志君紹介)(第七一七号)
同(宮内秀樹君紹介)(第七四六号)
教育予算の増額、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善を求めることに関する請願(野間健君紹介)(第七五四号)
学費負担軽減と私大助成の大幅増額を求めることに関する請願(笠浩史君紹介)(第七六一号)
六月七日
学費負担軽減と私大助成の大幅増額を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七八三号)
同(笠井亮君紹介)(第七八四号)
同(穀田恵二君紹介)(第七八五号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第七八六号)
同(志位和夫君紹介)(第七八七号)
同(塩川鉄也君紹介)(第七八八号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第七八九号)
同(宮本岳志君紹介)(第七九〇号)
同(今津寛君紹介)(第八四〇号)
教育費負担の公私間格差をなくし、行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(武藤貴也君紹介)(第八一〇号)
学校教育における茶道の位置づけに関する請願(小川淳也君紹介)(第八四二号)
教育費負担の公私間格差をなくし、行き届いた教育を求めることに関する請願(瀬戸隆一君紹介)(第八四九号)
同月十一日
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(笠井亮君紹介)(第一〇七〇号)
同月十九日
給付制奨学金の実現と教育無償化に関する請願(宮本岳志君紹介)(第一三一八号)
同(吉川元君紹介)(第一三一九号)
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(鳩山邦夫君紹介)(第一三二〇号)
同(土井亨君紹介)(第一三七六号)
教育予算の増額、教育費の無償化、保護者負担軽減、教育条件の改善に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三七七号)
障害児学校の設置基準策定に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一四三二号)
同(宮本岳志君紹介)(第一四三三号)
は本委員会に付託された。
五月二十一日
教育費負担の公私間格差をなくするための私学助成に関する請願(第一三四号)、同(第一四五号)、同(第一六四号)、同(第一七五号)及び同(第一八〇号)は「石川知裕君紹介」を「清水誠一君紹介」に、教育予算の増額、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善に関する請願(第二九七号)は「石川知裕君紹介」を「高橋千鶴子君紹介」にそれぞれ訂正された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
いじめ防止対策推進法案(馳浩君外十三名提出、衆法第四二号)
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○松野委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
我が党は、昨年十一月に「「いじめ」のない学校と社会を」と題する提言を発表いたしまして、まず第一に、目の前のいじめから子供のかけがえのない命や心身を守り抜くこと、そして第二に、根本的な対策として、いじめの深刻化を教育や社会のあり方の問題と捉え、その改革に着手する取り組みを提唱いたしました。この提案には、いじめ防止に関する法的整備の検討も含まれておりました。その後、ことし四月には民主、生活、社民の三党案が、五月には自公案がそれぞれ国会に提出され、先日来、与野党の実務者協議が行われてまいりました。
私は、自公提出の与党案には、原則的な問題で見過ごせない問題があるということ、その与党案に三党案から入れ込むという協議ではだめだと繰り返し指摘しつつ、協議の場には出席して問題を指摘してまいりました。本日審議されているいじめ防止対策推進法案は、協議の結果成案としてまとめられたものでありますけれども、残念ながら、法案を見る限り、我が党が指摘してきた問題点は何ら解決されていないと言わざるを得ません。
まず、法案提案者は、提案理由説明でも答弁でも、いじめはどの学校でもどの子にも起こり得ると繰り返されました。文科省もこれは同じ立場だと思いますけれども、いじめはどの学校にもどの子にも起こり得るということは、どの子もいじめっ子になり得るということで、文科省、よろしいですか。
○布村政府参考人 お答えいたします。
先生御指摘のとおり、いじめはどの学校でもどの子供にも起こり得るものであるという認識に立ってございます。
○宮本委員 子供たちの現実の姿を考えていただきたいんですね。子供は、きのう嫌なことがあった、友達の方が格好いいおもちゃを持っている、そんな嫌な気持ちやねたみから友達をいじめてみるということは十分あり得るし、そうやっていじめは起きていきます。いじめはどの子も成長途上で行い得る過ちなんですね。大事なことは、それを早い段階でとめて、継続させず、命や心身をきちんと守り切ること、そして、いじめを乗り越えることで、子供たちがいじめをしない人間関係のあり方を学んでいくことだと思うんです。
ところが、法案第四条は、「児童等は、いじめを行ってはならない。」などと、子供たちに法律でいじめを禁止する条文を置いております。これは、誰もが違和感を持つ条文だと思うんですね。どの子も行う可能性があるものを、いじめをやったら法律違反だぞなどと法律で命令して禁止するようなことは意味がないし、これは自民党の法案提案者に聞きますが、おかしいとは思いませんか。
○土屋(正)議員 お答えを申し上げます。
宮本議員におかれましては、我々と見解が違うと言いつつ協議に参加していただき、そこに共通の問題に対する意欲といいますか、そういったことを感じて、大変うれしく思った次第でございます。
もう既に何回も実務者協議に御参加されておられますので、そこで行われた協議についてはもう十分御存じの上での御質問かと存じますが、この法案第四条は、いわゆる訓示規定であります。
今御指摘の、質問の前段でありました、早い段階で見つけて、そしてみんなで協力をして、児童も成長してそれを乗り越えていく、あるいは加害的な立場に立った子もそうだということについては、全くそのとおりでございますが、善悪とかよし悪しとかということについて、まだ人格未成熟な子供に対して一定の、これはしてはいけないことだよと明示するということは、何ら問題がないものと考えております。
○宮本委員 そもそも、いじめは、法律で禁止だと宣言すれば解決するというような、そんな簡単なものではありません。過ちをしながら、それを周りから正され成長することが大切な子供に、一切過ちをするなというのは、大人のとるべき態度ではないと思います。
いじめ問題の解決とは、いじめを行う子供がいじめをしなくなることにほかなりません。もちろん、いじめを行った子供への適切な指導を毅然と行うことは当然ですけれども、深刻ないじめほど、説諭、つまり規範意識のお説教だけでは解決しないというのが学校現場の声なんです。
私は昨年八月の当委員会でこのことを指摘し、文部科学省も、いじめにおける子供への指導におきましても、児童生徒一人一人の悩みを理解し、共感的に受けとめ、応えていくということが重要であろうと答弁をいたしました。
これは、文科省、間違いないですね。
○布村政府参考人 お答えいたします。
平成二十四年八月二十四日の衆議院文部科学委員会におきまして、宮本先生からの御質問に対しまして、だめなことはだめと厳格に指導するという面とともに、いじめの問題における子供への指導において、児童生徒一人一人の悩みを理解し、共感的に受けとめ、応えていくことが重要と答弁させていただきました。これに変更はございません。
○宮本委員 そこで、法案提案者、今度は民主党の方に聞きますけれども、法案提案者は、いじめを行った子供たちに対し、子供の傷や悩みを理解し、共感的に受けとめ、人間的立ち直りを進めていくという立場、これは同じ立場に立っておられますか。
○笠議員 先ほど宮本委員から御指摘がありましたように、やはり、いじめを乗り越えていくということ、これは大事でございまして、いじめを行った児童等の立ち直りのためには、いじめを行った児童の個々の状況を踏まえた上で、適切な対応がなされるべきであると考えております。その際、いじめを行った子供たちの気持ちや悩みを理解しようとする立場に立って対応することが重要であるということを十分に認識しております。
この点については、本法案第二十三条第三項は、「いじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行う」と規定しているところでありますけれども、具体的な対応に当たっては、学校現場において、今申し上げたようなこともしっかりと踏まえながら、適切な対応がとられるものと期待しております。
○宮本委員 ところが、そうおっしゃるのだが、本法案は、いじめを法律で禁止した上、第二十五条でいじめを行った子供に懲戒を加えること、第二十六条で出席停止を命ずることを規定しております。
これは、子供たちの心の傷や悩みを理解し、共感的に受けとめ、人間的立ち直りを進めていくどころか、厳罰主義そのものではありませんか。自民党の提案者、お答えください。
○土屋(正)議員 本法案で規定をいたしました懲戒の第二十五条や出席停止の規定などについては、現在の学校教育法の中にも規定されているものであります。したがって、学校教育法以上の、さらに厳罰を与えるという意図は全くありませんが、従来のいじめ対策の中に、このようなことをちゅうちょしたりということがなかったのか、そのことによっていじめが深刻化したことがなかったのかといったような議論もあり、これらについて学校教育法の規定をさらに重ねて明示した、こういうことになるわけでございます。
なお、第二十五条の懲戒と第二十六条の出席停止については少し違いまして、出席停止は、どちらかというと本人に対する懲戒という観点ではなくて、学校の秩序を維持し、他の児童等の義務教育を受ける権利を保障するという観点から設けられているものであります。
以上でございます。
○宮本委員 新たな厳罰化ではない、今でもできることを改めて書いただけと、実務者協議でもそういう説明を聞きました。それならわざわざ書く必要がない、削除せよと私は要求しましたが、あなた方は、この懲戒あるいは出席停止規定に固執したんです。できることすらやられていないと言うけれども、それこそ、ただ単なる懲戒や出席停止ではいじめ問題は解決しないことの証左だと思うんですね。
いじめを法律で禁止し、いじめた子を懲らしめ、たとえ出席停止にしても、何らいじめの根本的な解決にはなりません。いじめを行った側の子供たちが一番かけてほしいのは、何か嫌なことがあったのという言葉だと言われております。厳罰化によって子供を抑えつければ、一層子供たちの心の傷は深まり、いじめは深刻化、陰湿化しかねないということを厳しく指摘しておきたいと思います。
次に、道徳教育の問題です。
法案は第十五条で学校におけるいじめの防止の第一に道徳心を培うことを挙げ、全ての教育活動を通じた道徳教育の充実を図らなければならないとしております。
我が党は、子供たちに市民道徳を培うこと自体は極めて大切で、むしろ不足していると考えますけれども、それは教員、子供、保護者の自主的、自発的な取り組みの中でこそ実を結ぶものであり、法令で上から押しつけるやり方ではかえって逆効果になりかねないと考えます。しかも、子供の具体的な人間関係に起因するいじめを防止するのに道徳教育を中心に据えるのは、既に破綻しつつあると言わざるを得ません。
既に国会質問で私も指摘をしましたが、大津の学校は唯一の国の道徳教育推進指定校だった。事実を丹念に調べた同市の第三者調査委員会の報告書は、道徳教育の限界を指摘し、教員が一丸となったさまざまな創造的な実践こそが必要だと報告をしております。このことを聞いたら、文部科学大臣は、道徳教育が不十分だったんだ、こういう御答弁でありました。
これは民主党提案者に聞きますけれども、民主党提案者も同じ考えでございましょうか。
○笠議員 今、宮本委員おっしゃいましたけれども、私ども、いじめを防止するための対策について、何か一つをやればそれで足りるんだ、それで全て解決するんだということではなくて、いろいろな措置を組み合わせていじめを防止していくということが重要であり、児童等の理解を深めることも重要であるというふうに思っております。
その意味では、今御指摘の道徳教育が不十分であったがゆえにあのような痛ましい事件が起こったというような考え方には立っておりません。
ただ一方、いじめの防止に対する道徳教育の有効性を否定するものではありませんし、本法案においても、第十五条第一項で、全ての教育活動を通じた道徳教育及び体験活動等の充実を図ると言及しているところでございます。
○宮本委員 今度は大臣に少し聞いていただきたいんですね。実は、深刻ないじめを克服した学校で、その学年が卒業式で読み上げた答辞というものを私はきょうここに持ってまいりました。
これは、ある中学校で読まれた答辞であります。
私たちの学年にはいじめがありました。上に立つ者、下に立たされる者、自分の意見が言える人、言えない人。そんな見えない上下関係が一つではなく、たくさんありました。「言ったら何か言われる」「あの人には怖くていえない」「ダメの一言がいえない」「次は自分がいじめられるかもしれない。」そんな思いを抱きながら何もすることができず、ただ「見ているだけ」の人もいました。言葉の暴力、集団無視…そんなことが実際にありました。
そして、二年生へと進級。一年の時のいじめはなくなったけれど、それでもいじめという影がなくなることはありませんでした。三年生に進級する前、三学期の終わりにいじめについての学年集会をしました。いじめた人、いじめられていた人、ただ見ていた人、すべての立場に立った人、どの人も本音で話し合いました。
ねたみやうらみ、嫉妬…いじめの根元になるものはこの世界に人がいる限りなくなりません。しかし、その感情を「いじめ」という形に現してしまうのかどうかはその人の心の強さにかかっていると思います。人は一人では絶対に生きてはいけません。支えあって関わりあって生きているからこそ今の自分がいます。「いじめをなくそう、みんなでなくそう!」私たちが集会で誓ったこの言葉を絶対忘れません。いじめは心に傷と後悔を残すだけ。いじめを受けて喜ぶ人なんて誰もいないのです。
私たちはこの話し合いを通して大事なことを学びました。
まだ続きますが、こういうふうに答辞で生徒たちが語ったというんですね。
こういう現実に起きているいじめや上下関係の人間関係、今はスクールカーストと呼ばれるほどの上下関係が少なくない学級が個々にあるわけですけれども、そういうものに即して、子供たちが話し合う創造的な教育こそが最も大事な予防の教育ではないかと私は思いますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
○下村国務大臣 今の中学生の答辞、大変すばらしい認識の中での答辞だというふうに思います。全ての子供たちがそういう認識を持ってもらえるような教育現場をつくっていくことは、大変に重要なことだと思います。
その上で、先ほど、聡明な宮本先生とは思えない御指摘がありましたが、まず、大津の学校は唯一の道徳教育推進指定校ではありません。道徳教育推進指定校というのは結構あります。
その中で、私が、道徳教育が不十分であったがゆえにあのような痛ましい事件が起こったという言い方はしておりません。
大津の当該中学校において、道徳教育の推進指定校ではあったけれども、名前だけの指定校であって、十二分な道徳教育が行われていない学校であったというふうに聞いているという話をいたしましたが、それと痛ましい事件というのは相関関係があることではありませんし、あわせて、不十分だから痛ましい事件が起こったとは申し上げておりません。それはまず申し上げておきたいというふうに思います。
その上で、先ほどの中学生のような指摘というのは大変重要なことでありますし、子供同士でいじめについて話し合って、いじめを解決する取り組み、これをぜひ進めるべきだと思います。
先日も、中学校の生徒会の方々が、八月か九月に全国生徒会サミットを行いたい、そのときに、自分たちでいじめ撲滅のための宣言等を話し合って、そして、全ての中学生に発したい、大臣もぜひ来てもらって一緒に参加してほしいという話がありました。これは文部科学省や自治体が働きかけたわけじゃなくて、中学生がみずから提案して、わざわざ大臣室まで来られたということは大変すばらしいことだというふうに思いますし、ぜひそれを推進していきたいというふうに思います。
一方で、我が国は法治国家ですから、これは抑止力として、議員立法でこのような法律案をつくることによって少しでもいじめが解消されるような方向に行くということは、やはり望ましいことであるというふうに思います。
○宮本委員 大津市のこの中学校は、大津市内の中学校では唯一の指定校だった、少し舌足らずだったと思います。
それから、道徳教育が十分に行われていなかったという認識をおっしゃいましたから私はそう指摘したまでであって、ただ、道徳教育というのは今現場でどうなっているのかということを大臣にも知っていただきたいんですね。副教材が配られ、そこに書いてある正しい結論に導くような、形式的な授業が多いんです。
さきに、このいじめ問題での院内集会がありましたが、そこでこういう例が報告されました。
ある担任の先生が、道徳の時間に、佐世保の女児刺殺事件を題材に話し合いをしたというんです。子供たちから、むしゃくしゃする気持ちが自分もあると率直な現実の思いが、交流され、それをどう乗り越えるのか、随分いい授業になったと聞いております。
ところが、その授業後、指導主事からは、自分たちの周りのことを話し合うのは否定しないが、それは道徳の授業ではありませんと指導が入ったと、それはその場でお話がありました。
実は、一九五八年、かつて道徳の時間が特設されたとき、当時の文部省は、小中学校道徳実施要綱という文書で、道徳の時間においては、児童生徒の心身の発達に応じ、その経験や関心を考慮し、なるべく児童生徒の具体的な生活に即しながら、種々の方法を用いて指導すべきであって、教師の一方的な教授や単なる徳目の解説に終わることのないように特に注意しなければならない、こうしておりました。
ところが、その後、この方針は変更されます。副教材重視になるんです。一九六三年七月十一日の教育課程審議会答申で、「道徳的な判断力や心情を養い、実践的な意欲を培うために、児童生徒にとって適切な道徳の読み物資料の使用が望ましい。」とされ、それは今も共通する部分が受け継がれていると思うんですが、文部科学省、事実ですね、それは。
○布村政府参考人 お答えいたします。
昭和三十八年の教育課程審議会答申におきましては、当時の道徳教育の状況が生活指導の面に力点が置かれ過ぎているのではないか、そういう現状認識のもと、「読み物資料の使用に当たっては、道徳教育の性格にかんがみ、他の指導方法と合わせてこれを適切に活用するように配慮すること。」という答申が出されたところでございます。
現在の学習指導要領の道徳におきましては、児童生徒が感動を覚えるような魅力的な教材の開発や活用を通じて、児童生徒の発達の段階や特性などを考慮した創意工夫ある指導を行うことと規定しているところでございます。
そういった面では、共通する面も有しているという認識でございます。
○宮本委員 現場では、そういいながら、実際には、そういう話し合いだけでは道徳の授業にならないんだというようなことが言われている。私は、先ほど申し上げたように、大臣も非常に大事だとおっしゃった、子供たちの中でいじめの問題を現に取り上げた、しっかり自主的な自覚的な討論が非常に大事だと思いますし、そういう点では、ただ単に道徳教育をやれば解決するというふうにならないと思うし、この法案をつくれば、一層、教師の一方的な教授や単なる徳目の解説がまかり通りかねないということは指摘せざるを得ないと思っております。
結構です、時間がありませんので。
次に、遺族の知る権利についてお伺いしたいんです。
いじめ問題がこれだけ社会問題になって、国民の怒りの的となっている原因の一つに、学校と教育委員会の隠蔽体質の問題があります。
いじめ被害で不幸にして子供を亡くされた遺族のお気持ちは、学校の虚偽、隠蔽により、被害者と遺族が二重の苦しみを味わったあげく、裁判をするような不毛なことは避けたいというものであります。
私は、ことし四月十日の予算委員会で、鹿児島県出水市での中学生いじめ自殺事件を取り上げ、御遺族にアンケートが一枚も開示されていない事例も挙げて、改善を求めました。安倍総理からは、遺族の気持ちにはできる限り応えていくべきだろうと答弁があり、下村大臣からも、親御さんの心情は我が事としてよくわかるとの答弁をいただきました。そして、その場で、文科省の通知が隠蔽を正当化する根拠にされていることを指摘し、改善を求めました。
そこで民主党提案者にお伺いするんですが、この法律ができれば、いじめ被害者の保護者の知る権利が保障されることになりますか。
○笠議員 本法案においては、まず、第二十三条の第三項において、学校がいじめを受けた児童等の保護者に対する支援を行うこととしておりますけれども、ここで言う支援の中には、今御指摘のあった情報の提供といったことも含まれるものと考えております。
また、次に、本法案第二十八条第二項においては、学校の設置者や学校が重大事態に係るアンケートなどの調査を行ったときは、いじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等の必要な情報を適切に提供することとしております。
学校の設置者や学校において適切に情報提供がなされることをしっかりと期待をしたいと思います。
○宮本委員 必要な情報を適切に提供というのでは、知る権利の保障にならないんですね。だからこそ、大津市いじめ自殺事件の被害生徒のお父さんがあなた方に要望書を提出して、このいじめ対策推進法案では現状は何も変わらない、必ず法案化してほしいと思っていたことが入っていないと指摘し、いじめ被害者の保護者の知る権利を実効あるものにすることを求めました。
この被害者遺族の声にどう応えるのか、現状より前進する担保がどこにあるのか、ひとつ、笠さんにお答えいただけますか。
○笠議員 私は、今申し上げたような、今回のこの法律ができたことによって、もちろんこれは、文科省においても、国においても、地方公共団体においても、あるいは学校の現場においても、情報を共有し、しっかりと適切にそのための提供を行っていく、そして、いじめに対する解決、本当に、特に重大な事案が起こったときに適切な対応ができるように必ずなるというふうに信じておりますし、我々も全力を挙げていきたいというふうに思っております。
○宮本委員 そこで、文科省に聞きたいんです。
遺族の願いは、子供たちへの聞き取り調査を行うにしても、重大な事態が起こってからすぐに行ってほしい、せめて三日以内には開始をというものです。これに応えるべきだと思いますし、あわせて、子供たちからアンケートをとるに当たっては、遺族に開示することを事前にアンケートに明記することを求めております。こういう改善を検討していただけますか。
○布村政府参考人 お答えいたします。
平成二十二年度児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議のまとめがございまして、亡くなったお子さんと関係の深い子供さんや教師への聞き取りなどの初期調査はおおむね数日以内に行うということを一つの指針としてございます。
また一方で、御遺族に対しまして随時調査の状況を説明する必要があるとした上で、分析評価前の資料の取り扱いについては、事実確認がなされておらず、臆測や作為が含まれている可能性があるために、それをそのまま公表したり、そのまま御遺族に情報提供することは調査の客観性や中立性を損ないかねないということが提言されており、文科省の通知におきましても、そのような趣旨に触れさせていただいてございます。
ただ、先生からお話もございましたように、御遺族の方々から御提言も寄せられておりますので、現在、文部科学省では、自殺が起きたときの背景調査のあり方につきまして、現在の運用状況や関係者の御意見を踏まえ、有識者会議におきまして、情報開示のあり方も含め、必要な見直しの検討を進めているところでございます。
○宮本委員 それは四月に聞いたんですよ。だから、その検討の中で、今の二つの点をしっかり受けとめてやっていただきたいということなんですね。
最後に、家庭への義務づけの問題です。
本法案は第九条で、保護者に、その保護する児童等がいじめを行うことがないよう、当該児童等に対し、規範意識を養うための指導その他の必要な指導を行うよう努力義務を課しております。しかし、本来、家庭教育は自主的に営まれるものであり、法律で号令をかけて家庭に特段のことを行わせていいのか。これは民主党提案者にお答えいただけますか。
○笠議員 これは先ほど申し上げましたように、提案者としては、本条、第九条第一項は、教育基本法第十条第一項の範囲内において、保護者が、その保護する児童等に対して規範意識を養うための指導を行うよう努力する責務があることを確認したものであると考えております。家庭教育の内容を具体的に規定したものではなく、その自主性は尊重されており、法律で号令をかけて家庭に特定のことを行わせるといったような御指摘は当たらないというふうに考えております。
なお、家庭教育の自主性の尊重については、第九条、私どももこれを主張しまして、第四項前半において、家庭教育の自主性が尊重されるべきこと、すなわち教育基本法第十条第二項の趣旨に変更を加えるものではないことを確認させていただいたところでございます。
○宮本委員 第九条第四項に、第一項の規定は、家庭教育の自主性が尊重されるべきことに変更を加えるものと解してはならない、こういう言葉を書き加えたわけですが、わざわざこう書かなければならないところに、家庭教育の自主性の尊重という、まさに教育基本法の大原則に抵触する危惧があると法案提案者自身もまさに語っているに等しいと言わざるを得ないと私は思います。
同時に、とても気になる条文があるんです。「保護者は、国、地方公共団体、学校の設置者及びその設置する学校が講ずるいじめの防止等のための措置に協力するよう努めるものとする。」という九条三項なんですね。
例えば、学校で、いじめ防止のために、教材に基づく道徳教育に協力をという方針を持ったとします。しかし、例えば、私が保護者で、その方針には異論がある、徳目を上から教えるのではだめで、現実の人間関係を改革する自主的な話し合い、行事の方がいいんだ、こう考えたとしても、学校の方針への協力義務が定められてしまえば批判もできなくなるのではないか、こういう危惧がありますが、いかがですか。
○笠議員 私はそういうふうには解釈をしませんけれども、まず、本法案において、基本理念として、第三条第三項において、「いじめの防止等のための対策は、いじめを受けた児童等の生命及び心身を保護することが特に重要であることを認識しつつ、国、地方公共団体、学校、地域住民、家庭その他の関係者の連携の下、いじめの問題を克服することを目指して行われなければならない。」と規定しており、いじめの防止等において家庭の役割も非常に重要なものであると考えております。
その上で、保護者の責務として、第九条第三項において「保護者は、国、地方公共団体、学校の設置者及びその設置する学校が講ずるいじめの防止等のための措置に協力するよう努めるものとする。」と規定し、保護者についても協力できる範囲においていじめの防止等のための措置に協力していただくことで、社会全体でいじめ問題に取り組んでいくということを目指しております。
もとより、学校の方針と保護者の意見が今御指摘のように食い違った場合は、保護者は学校を批判できなくなる可能性があるといった指摘は当たらないというふうに思っております。
○宮本委員 もう時間が来ましたので終わりますけれども、この法案では、親が子供に対してやる中身も、規範意識を養うための指導が特段に例示をされております。私は、一人の親として、やはり子供に対して、家庭の深い愛情や精神的な支え、信頼に基づく厳しさ、親子の会話や触れ合いこそ、いじめをなくすために大切だと実感をいたします。それを規範意識を指導せよと国に命じられても、子供にも親の心にも響かないと言わざるを得ません。
残念ながら、本法律案は、いじめ解決の原則的な問題で見過ごせない点が含まれております。それは、家庭や学校を息苦しい場にし、いじめを深刻化、陰湿化させかねないものであります。
子供にとってよりよい法律をつくるために、当事者、関係者から意見を聞き、広い視野で法案をつくり直すことを求めて、私の質問を終わります。
○松野委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。宮本岳志君。
○宮本委員 私は、日本共産党を代表して、自民党、民主党など六党共同提案のいじめ防止対策推進法案に反対の討論を行います。
この間、いじめ対策をめぐって各党協議を行ってきましたが、そこで私が最も強調したのは、いじめは人権侵害であり、暴力であり、憲法と子どもの権利条約を踏まえ、子供がいじめられずに安全に生きる権利を明確にし、国民的、社会的な議論と一体で取り組むことが必要だということです。したがって、立法作業においても、各党間の協議だけでなく、教育関係者や被害者などを巻き込んだ議論が不可欠です。
ところが、先週になって自民、公明両党や民主党の間で合意したとして、昨日、六党共同の法案が提出され、本日、わずかな議論で採決し、残り会期一週間の中で成立させようというのであります。教育現場や関係者の意見を聞くこともなく、余りにも拙速であります。
しかも、法案の内容には看過できない重大な問題があります。
第一に、法案は、いじめの防止対策として、法律で子供にいじめの禁止を義務づけ、厳罰で取り締まる仕組みを中心としています。いじめは、子供の成長途上で誰にでも生じ得るものであり、教育の営みの中で解決することが基本で、法律で禁止すべき性格のものではありません。
しかし、法案は、子供たちに「いじめを行ってはならない。」といじめを禁止し、その上で、いじめを行った子供に対し「懲戒を加える」と定めるとともに、慎重に実施すべき、「出席停止を命ずる」と厳罰化を明確にしています。
いじめに毅然と対応することは必要ですが、厳罰で臨むのではなく、いじめを行った子供にいじめを行った事情を丁寧に聞き取り、いじめをやめさせるとともに、子供自身が人間的に立ち直れるように支えることこそ求められています。
懲戒を強調するやり方は、子供のうっくつした心をさらにゆがめ、子供と教員の信頼関係をも壊し、いじめ対策に効果がなく、悪影響を及ぼすものです。
第二に、法案は、学校におけるいじめの防止の第一に、道徳心を培い、全ての教育活動を通じた道徳教育を推進するとしています。市民道徳の教育それ自体は必要ですが、それは、教員、子供、保護者等が自主的、自発的に進めてこそ実を結ぶものであり、法令で上から押しつけるやり方はかえって逆効果になりかねません。
さらに、保護者の責務として、規範意識を養うための指導を行うことを努力義務としていますが、家庭教育の内容まで法律で義務づけることは、自主的な営みである子育て、家庭教育を否定しかねません。
また、いじめ被害に遭った子供、遺族などが真相を知る権利が明確にされていないことも問題です。
最後に、私たち日本共産党は、いじめ対策について子供の命を守り抜き、教育と社会のあり方を見直す改革に着手すべきだと考えます。引き続き子供のことを学校、地域、社会の各分野で話し合い、いじめのない学校と社会をつくるために取り組むことを表明し、討論を終わります。