平成二十五年五月三十日(木曜日)
午後一時開議
出席委員
委員長 渡海紀三朗君
理事 牧原 秀樹君 理事 三原 朝彦君
理事 宮下 一郎君 理事 渡辺 博道君
理事 福田 昭夫君 理事 伊藤 渉君
大串 正樹君 大塚 高司君
大野敬太郎君 鬼木 誠君
加藤 寛治君 神田 憲次君
小林 史明君 末吉 光徳君
助田 重義君 関 芳弘君
田中 英之君 中川 俊直君
福田 達夫君 船橋 利実君
星野 剛士君 前田 一男君
武藤 容治君 村井 英樹君
簗 和生君 山田 賢司君
大島 敦君 津村 啓介君
古川 元久君 前原 誠司君
杉田 水脈君 鈴木 義弘君
西根 由佳君 岡本 三成君
輿水 恵一君 井坂 信彦君
柏倉 祐司君 宮本 岳志君
青木 愛君
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国務大臣
(科学技術政策担当)
(宇宙政策担当)
(情報通信技術(IT)政策担当) 山本 一太君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 倉持 隆雄君
政府参考人
(財務省理財局次長) 西田 安範君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 常盤 豊君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 山越 敬一君
政府参考人
(中小企業庁経営支援部長) 守本 憲弘君
衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長 雨宮 由卓君
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委員の異動
五月三十日
辞任 補欠選任
武村 展英君 鬼木 誠君
宮崎 謙介君 助田 重義君
八木 哲也君 末吉 光徳君
山下 貴司君 田中 英之君
伊佐 進一君 輿水 恵一君
同日
辞任 補欠選任
鬼木 誠君 武村 展英君
末吉 光徳君 八木 哲也君
助田 重義君 星野 剛士君
田中 英之君 中川 俊直君
輿水 恵一君 伊佐 進一君
同日
辞任 補欠選任
中川 俊直君 山下 貴司君
星野 剛士君 宮崎 謙介君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件
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○渡海委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
大臣は所信で、「科学技術・イノベーションは、この国の未来の形を決める鍵であり、我が国が直面する課題を乗り越えるための切り札です。」こう述べられました。
科学技術・イノベーションが鍵だ、切り札だと天まで持ち上げていただくことは結構でありますけれども、肝心の科学技術に携わる研究者、それを支える人たちの処遇が大切にされてこそ、科学技術・イノベーションの推進が図られると私は考えますけれども、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
○山本国務大臣 今おっしゃったように、イノベーションの本質は人であり、総理の指示にある世界で最もイノベーションに適した国の実現には、イノベーションの担い手が活躍する枠組みが整備されているということが必要だ、そんなふうに考えております。
○宮本委員 しかし、現実には、適切には処遇されていないという問題があると思うんです。
きょうは二つの問題を取り上げたいと思います。
一つは、住宅にかかわる問題です。
この間、民主党政権下で、公務員宿舎の削減計画が進められてまいりました。計画は、今後五年間をめどに、宿舎戸数を約二十一万八千戸から十六万三千戸に、四分の一も削減するという計画であります。
筑波研究学園都市は、三十を超える国等の教育研究機関を初め、約三百にも及ぶ民間の研究機関、企業等が立地しており、約二万人の研究者を有する我が国最大の研究開発拠点であります。今度、当委員会でもつくばの視察を予定しておりますけれども、この科学の町にある公務員宿舎でも同様の削減が始まろうとしております。
そこで、まず財務省に事実を確認いたします。
つくば市における国家公務員宿舎の削減数、削減の割合を答えていただけますか。
○西田政府参考人 お答え申し上げます。
昨年九月現在の数字でございますが、つくば市内に所在をいたします宿舎の設置戸数は約三千八百戸でございます。このうち、実際に入居者がいる戸数は約三千百戸でございます。今回の宿舎の削減計画に基づきまして、市内の宿舎については約千二百戸に削減をする予定でございまして、入居者ベース、入居している戸数との比較で見ますと約六割程度の削減となります。
以上でございます。
〔委員長退席、三原委員長代理着席〕
○宮本委員 公務員宿舎全体では二五%、四分の一の削減ですが、つくば市内の宿舎は実に六割にも上る削減計画となっております。中心市街地にある宿舎までなくなって、町そのものがゴーストタウンと化す、こういうことが懸念されるわけであります。
つくばというのは、改めて言うまでもなく、筑波研究学園都市建設法に基づいて、国の責任で研究学園都市にふさわしい公共施設、公益的施設及び住宅施設を一体的に整備する、あるいは政府が筑波研究学園都市建設事業を実施するために必要な資金の確保を図る、こういうことを、法律に基づいて建設と整備を進めてきた町なんですね。
この国家公務員宿舎の削減は、つくば市にとっても町の存続にかかわる、あるいは町のあり方にもかかわる大問題だという声が出ております。削減をとにかく一律にただただ進めればよいというものではないと思うんですね。
財務省にもう一問聞きますけれども、これは一体どのような対応になっておりますか。
○西田政府参考人 お答え申し上げます。
公務員宿舎の廃止、売却を踏まえましたつくば市の町づくりに関しましては、今月、つくば市におきまして、有識者及び関係者で構成をされますつくば中心市街地再生推進会議が設置をされ、つくばの魅力を向上させる中心市街地等の都市再生のあり方や、町づくりに効果的な公務員宿舎の処分方法等について検討が始められたところでございます。
○宮本委員 今答弁があったように、つくば中心市街地再生推進会議、地元との協議を始められたということでありますけれども、宿舎の削減そのものはもう既に始まっているんですね。ことし二月には既に退去通知まで発出をされている。削減は決めた上で、削減処分の方法、やり方、これを協議する、検討するというのが、このつくば中心市街地再生推進会議の中身なんですね。居住者にとっては、まさに生活のかかった問題でありまして、今後のあり方も示されないままに削減だけが先行するというのは、私は問題だと思います。
それで、次に内閣府に確認しますけれども、そもそも、つくばの宿舎の現状については、研究者確保の観点からも問題であるということが指摘をされてまいりました。
例えば、二〇〇五年、平成十七年の十月三日につくばで行われた科学技術政策シンポジウムでは、宿舎についてどんな指摘がなされておりますか、内閣府。
○倉持政府参考人 お答え申し上げます。
総合科学技術会議では、平成十七年度に、第三期の科学技術基本計画の策定に向けまして、一般の方々の声の吸収に努める仕組みの一環といたしまして、御指摘の科学技術政策シンポジウムというのを全国七カ所で開催したところでございます。
このうち、つくば会場での意見交換の中で、特に人材育成という部分につきましての意見交換がなされておりまして、御指摘の宿舎に関しましても、「短期間留学の外国人研究者に対する宿泊施設が不十分で、世界最低である。良い研究施設があるにもかかわらず、宿舎がいやだから筑波には来ないという外国人研究者がいる。」という発言があったことが記録されているところでございます。
○宮本委員 大臣、先ほどもそういうやりとりがありましたよ。指摘にあるように、幾ら立派な研究施設があっても、そこで研究に従事する人たちの生活、住居が保障されなければ、すぐれた研究者は集まりません。研究も進むことはないんです。
特に、つくばは国策としてつくられた町であって、宿舎が町の中心となっております。宿舎があるから安心して多くの学者、研究者が研究に従事することができているし、そのことは今後も変わらないと思うんですね。
私は、特に若い研究者、非正規の研究者も宿舎に入れるように、むしろ改善が求められているというふうに思うんですね。宿舎の削減ではなく、むしろよりよいものにしていく必要があると思うんです。
これは行政改革の観点から行われているということでありますけれども、つくばの公務員宿舎の廃止、削減問題は、我が国の科学技術政策にも大きくかかわる問題であって、ただ普通の公務員宿舎とは同列に論じるわけにいかないと思います。科学技術・イノベーションが鍵だ、切り札だ、そう力説される山本大臣こそ、必要な見直しも含め、意見も述べていただく、再検討を進めていただきたいと私は思うんですけれども、大臣の御所見をお伺いいたします。
○山本国務大臣 公務員宿舎の廃止、削減問題、そのあり方というのは、もう委員御存じのとおり、私の所掌を超える部分でございますので、宮本委員の御質問に丁寧に、御納得いただけるような答弁ができなくて申しわけないんですけれども、政府として、行政改革について不断の取り組みを進めていくということは大事だと考えております。
国家公務員宿舎については、必要な宿舎は確保する、そういう前提で削減を進めているところと承知をしております。
我が国の科学技術・イノベーションの重要な担い手である独立行政法人等に勤務する研究者の住居等の処遇を確保することは重要だ、そこは認識をしておりますけれども、まずは、職員の多くが入居者となっている各法人の取り組み状況を注視してまいりたいと思います。
○宮本委員 既に、ことし二月に退去通知が出されて、にわかに皆さん、出なきゃならないからといって家探しが始まって、今度は民間の物件も値上がりしている、こういう状況まで生まれているわけですね。ですから、そうおっしゃるんだったら、本当にこの問題は、真剣に現状をつかんで、もし問題があるとすれば正すという方向で御努力をいただきたいし、そうしてこそ我が国の科学技術・イノベーションの発展もあるんだということをまず御指摘申し上げておきたいというふうに思います。
さて、もう一点です。
次に、ことし四月から施行された改正労働契約法が大学等の教育研究機関にさまざまな混乱とあつれきを生んでいるという問題を御指摘申し上げなければなりません。雇用が安定しないようでは、幾ら鍵だ、切り札だと言ってみても、研究者は安心して研究や教育に打ち込めないわけであります。
五月の十七日に総合科学技術会議が発表した科学技術イノベーション総合戦略原案、これを見せていただきますと、「研究支援体制の充実」として、「主な施策」の中に、「大学等における改正労働契約法の施行等に係る課題の精査及び対応策の検討を速やかに行い、教育研究全体として望ましい状況を創出」という文言が書き込まれております。
これは、改正労働契約法の施行によって、精査、検討すべき課題が存在するということ、そして教育研究にとって望ましい状況とはなかなか言えない現状が存在するということを政府も認識しておられる、こう受けとめてよろしいでしょうか、大臣。
〔三原委員長代理退席、委員長着席〕
○山本国務大臣 改正労働契約法の中身については厚労省の方にお尋ねをいただければと思いますが、ただ、改正労働契約法は、有期契約労働者の雇用の安定を図ることを目的とした法律ではありますが、法改正への対応の仕方次第では、五年まででの雇いどめが増加するのではないかという不安が増し、結果、教育研究に大きな影響が生じるとの懸念も大学等の関係者からは実際にいただいております。
こうした懸念が具体化、顕在化しないように、今後とも、文部科学省、厚生労働省に対し、法の趣旨や好事例の周知等の取り組みはしっかりと促してまいりたいと思います。
○宮本委員 おっしゃるとおりであって、そういう懸念が出されてきたわけですね。
そこで、これはまた内閣府に確認をいたします。
総合科学技術会議として、改正労働契約法の問題にこの間どのように対応してきたか、事実関係をお答えいただけますか。
○倉持政府参考人 お尋ねの改正労働契約法に関する総合科学技術会議の対応でございますけれども、改正労働契約法につきましては、大臣からも今答弁がございましたように、雇いどめに対する不安の声があることを踏まえまして、昨年四月に、総合科学技術会議において、関係者、これは厚生労働省、大学あるいは若手の研究者の方から意見を聴取させていただきました。そして、五月に、有識者議員による、「労働契約法の改正案について」という見解を取りまとめまして、公表をさせていただいたところでございます。
これらを踏まえまして、関係省庁、文部科学省あるいは厚生労働省に対しまして、大学や関係機関に対する周知方を要請するとともに、それらの状況についての確認に努めてきているところでございます。
また、今回の改正案と同様の労働法制がしかれているとされておりますEU諸国の状況につきまして、これを関係省庁の協力を得ながら調査をいたしまして、その結果を大学等に配付する、あるいは総合科学技術会議で報告を行ったところでございます。
今後、この法律の施行に伴う大学等の対応の状況と現状の把握に努めるとともに、関係省庁、機関の参画のもと、改正法の円滑な実施に向けてフォローアップを行ってまいりたいと思っております。
○宮本委員 ここに、昨年出た「労働契約法の改正案について」、総合科学技術会議有識者議員の取りまとめがございます。この中の「一 労働契約の内容の改善と合理性のない雇止めの防止」、この中で大学等機関に一体何を求めておりますか。事実関係を。
○倉持政府参考人 委員御指摘の箇所につきましては、「改正された労働契約法の下で無期労働契約に転換した労働者を合理的な理由に基づいて解雇することが否定されるものではなく、プロジェクト型の研究活動を適切に運営していくことは可能となるものと考える。その際に重要なことは、改正法の下で新たに締結する労働契約の内容を適切なものにすることをはじめとして、合理性のある解雇理由が生じた場合に、そのことが客観的に明らかになるようにしておくことである。」ということを指摘した上で、大学等機関に対しては、合理性のある解雇理由が生じた場合に、そのことが客観的に明らかになるようにするために、「体制整備に適切に取り組むとともに、単に無期労働契約に転換することを忌避する目的を以て研究者等を雇止めすることのないよう望みたい。」そういう旨述べておるところでございます。
○宮本委員 るる述べられましたけれども、いろいろと言った上で、しかし、「単に無期労働契約に転換することを忌避する目的を以て研究者等を雇止めすることのないよう望みたい。」これがこのときの指摘なんですね。
それで、改めて厚生労働省に、この労働契約法改正の立法趣旨をお伺いしたいと思います。
労働契約法改正の趣旨は、雇いどめを進めることなどではなく、無期雇用への転換を進めることによって有期契約労働者の雇用を安定させる、これが目的だと考えますが、間違いないですね。
○山越政府参考人 改正労働契約法は、無期転換により有期契約労働者の雇用の安定を図るものでございまして、雇いどめの促進を目的とするものではございません。
○宮本委員 当たり前の話なんですね。
ことし四月二十五日の参議院厚生労働委員会で、田村憲久厚生労働大臣も、「五年の無期転換寸前で雇い止めが起こるのではないか、これによって結果的に、この法律がなければ、例えば、」「無期にはなりませんけれども、ずっと労働契約が有期の下で続いていくという方々が逆に職を失うおそれがあるのではないかということで、かなり委員会でも議論をした覚えが当時ございます。」「状況を我々も調査してまいりますけれども、やはりそういうおそれがあるということになれば、一定の対応を取らなければならない」と答弁をしておりますが、厚生労働省、間違いないですね。
○山越政府参考人 そのような内容の答弁をされたと承知をしております。
○宮本委員 しかし、五年で雇いどめというふうに就業規則を一方的に決める事態が現に大学で起こっております。
この問題をめぐって、ことし三月二十八日に、国会内で集会も開催をされました。二月二十一日の参議院予算委員会で、我が党の田村智子議員が、大阪大学などの事例を取り上げて改善を求めました。下村文部科学大臣は、その質疑の中で、「適切な取扱いを促してまいりたい」と答弁をされましたけれども、きょうは文科省高等教育局に来ていただいておりますが、どのような適切な取り扱いを促しましたか。
○常盤政府参考人 文部科学省におきましては、改正労働契約法の施行に当たりまして、大学等における教育研究への影響についての指摘がございますことを踏まえまして、現在、厚生省とともに課題の精査を行っているところでございます。
文部科学省といたしましては、各国立大学に対しましてこうした状況をお知らせいたしておりまして、大学の課題を把握するとともに、今後の課題の精査を踏まえて適切に対応するようお願いをしているところでございます。
○宮本委員 課題の精査をしているだけじゃだめですよ、現にこういうことが起こっているわけですから。大阪大学の場合は、昨年五月の総合科学技術会議の有識者取りまとめにある、まさにそのものずばり、単に無期労働契約に転換することを忌避する目的をもって就業規則を改定しているんです。
法改正の趣旨とも違う、そして総合科学技術会議がやってはならないと言っている、そんな事態を放置しておいていいわけないんです。直ちに是正をさせるべきだというふうに私は考えるんですが、大臣、これは政治家として、聞いていただいて問題があると、これはひとつ御答弁いただきたいと思いますね。
○山本国務大臣 これは個別の案件ですから、科学技術政策担当大臣としては、残念ながら答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
一般論としては、今もいろいろとお話を聞いていましたが、就業規則は、各大学の判断により、労使の合意の上で作成するということですから、少なくとも改正法に照らして法律上の問題があるものではないと文科省と厚労省からは聞いています。
ただし、委員がおっしゃったように、この雇いどめの懸念というものは若い研究者の方々からも出されていますから、それは、総合科学技術会議を担当する大臣としては、今後も問題が生じれば、厚労省と文科省に対して、大学とか関係方にしっかりと周知してきちっと対応していただくように促していく、これはきちっとフォローアップをさせていただかなければいけないと思っております。
○宮本委員 ぜひともしっかりと大臣にはやっていただきたいというふうに思っております。
さて、同時に、この有識者議員の取りまとめの「研究者等の雇用管理の在り方の見直し」というところでは、政府のこれまでの人件費抑制策についても言及をしております。内閣府、何と指摘しておりますか。
○倉持政府参考人 お答えいたします。
御指摘の箇所でございますけれども、この有識者議員ペーパー、昨年の五月でございました。
ここの指摘ぶりは、「法律が改正された暁には、大学等機関における研究者等の雇用の新たな管理の在り方」、注がございまして、「それは単に改正法への適応という受け身の対応に留まらない課題である。」という注がありますけれども、このあり方が検討される必要があるけれども、「その際特に留意すべきは、従来国立大学法人や独立行政法人に対して行われてきている人件費抑制策との関わりである。具体的には、平成二十三年度まで総人件費改革に基づく各法人の人件費抑制が要請されてきたが、平成二十四年度は震災からの復興財源の捻出のための人件費抑制が要請される状況にあり、今後も人件費を対象とした新たな抑制策が講じられる可能性がある。こうした政策の必要性は理解できるが、しかしまた、こうした政策が、大学等機関が改正された労働契約法の下で新たな雇用管理の在り方を検討する際の足枷となり得ることは指摘しておく必要がある。」旨述べております。
○宮本委員 まさにそのとおりなんですよ。
大阪大学は、就業規則を改定する理由として運営費交付金の削減を挙げております。国立大学運営費交付金は、二〇〇四年度の法人化以降、今年度までに一千六百二十四億円も削減をされてまいりました。この一千六百二十四億円というのは、東京大学と京都大学を廃止したに等しい金額であります。
東京大学、京都大学など旧帝大と慶応、早稲田など十一の大学で構成される学術研究懇談会、RU11が今月発表した「日本の国際競争力強化に研究大学が貢献するために」と題した提言でも、労働契約法改正により、無期雇用の可能性が広がりました、しかし、基盤的経費が削減された大学にはその要請に応える余力はなく、むしろ直接経費の組み合わせによる長期雇用が排除された影響が残ります、こうRU11の提言も述べております。
これも大臣にお伺いしたいんですけれども、やはり、日本の国際競争力強化に大学が貢献するためには、これらの大学、トップレベルの大学がまさに言っているように、国立大学運営費交付金、私学助成などの基盤的な経費の削減をやめて、拡充を図ることが何よりも必要ではないのか。大臣、そう思われませんか。
○山本国務大臣 どちらかというと文部科学大臣に聞いていただく質問ではないかと思いますが、科学技術担当大臣として申し上げますと、私が申し上げられることは、まず、国立大学法人運営費交付金は、継続的、安定的に教育研究を行う上で必要不可欠な基盤的経費だ、そういうふうに考えております。
一方で、国立大学については、今、全学的な改革を大学全体で自律的に進めていくということで、これらの経費を戦略的に配分することも求められております。
こうしたことによって、五月十七日の総合科学技術会議に原案が提出された科学技術イノベーション総合戦略に掲げるように、世界トップレベルの大学等と競争する十分なポテンシャルを持つ大学等が国際的なイノベーション創出の拠点となるような研究環境の革新に努めてまいりたいと思います。
○宮本委員 いや、文部科学大臣には、繰り返し、文部科学委員会で同じ趣旨のことを私は聞いているんですね。
それで、大臣おっしゃるように、まさにイノベーションに貢献すべき日本のトップレベルの大学十一が口を開いて出たことというのは、いやいや、基盤的経費が削られているようではいかないんですよと言っているわけですから、それは額面どおり受けとめる必要があると思います。
既によく知られているように、ノーベル賞を受賞した山中教授が所長を務めておられる京都大学のiPS細胞研究所でも九割が有期雇用となっているように、研究支援者の多くが、競争的資金による有期、非正規契約により雇用されており、不安定な身分の中で研究活動に従事しているという現状にあるわけです。
このRU11の提言でも、「トップ研究者も、直接経費で研究人材を長期雇用できない現状を憂慮しています」「資金量の大幅な増加が望めないのであれば、なおのこと、基盤的経費や直接経費の規制緩和による間接経費の増額による「大学の裁量性が高い資金」の確保が必要です」、こう述べておるわけですね。山中教授自身も、「厳しい財務状況のなか、急に支援額が大幅に増えるとは思わない。むしろ、支援の質を変えて、人材を大切にしてほしい。」「現在、支援額の九五%を競争的資金が占める。その半分を運営費交付金などにすれば正社員に近い形で人材を雇える。」こうしてもらうのが一番現場にとっても助かるんだ、こう述べておられるわけですね。
国が運営費交付金など基盤的経費を削って、専ら競争的資金にシフトすることによって、直接経費では研究人材を長期雇用できないために、非正規雇用をどんどんどんどんふやすという結果になってまいりました。
今こそ、先ほど来議論になった労働契約法の改正の趣旨、無期転換を進めるということですから、そういう、非正規で今担っている人材を無期に転換するための必要な費用、財源をやはり国としてきちっと確保することが必要だ。これは国策でそういうことをやる必要があると思うんですが、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
○山本国務大臣 先ほど申し上げたとおりのところでぎりぎりのところだと思いますが、おっしゃったとおり、この運営交付金は大事だというふうに思っております。
ただ、同時に、先ほど申し上げたとおり、やはり今のいろいろな現状を踏まえて、経費を、全学的な改革を通じて戦略的に配分することも求められている、このことをちょっと繰り返し申し上げておきたいと思います。
○宮本委員 終わりますが、日本の国際競争力の強化に大学が貢献するためには、少なくとも、競争的資金を含む、国の全ての研究、教育補助金、委託費における間接経費率を最低三〇%に引き上げること、それから、国立大学法人運営費交付金、私学の経常費補助など、基盤的経費の削減の停止、充実が必要だと、このRU11を構成する日本のトップレベルの大学が提言をしております。
大臣が、科学技術が鍵だ、切り札だ、こうおっしゃるのであれば、こういう声に真剣に耳を傾けてこそ、その内実が伴うのだということを私は指摘をして、本日の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。