平成二十五年五月十七日(金曜日)
午前九時四十一分開議
出席委員
委員長 松野 博一君
理事 木原 稔君 理事 中根 一幸君
理事 永岡 桂子君 理事 萩生田光一君
理事 山本ともひろ君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 浮島 智子君
青山 周平君 池田 佳隆君
小此木八郎君 神山 佐市君
菅野さちこ君 木内 均君
工藤 彰三君 熊田 裕通君
小林 茂樹君 桜井 宏君
新開 裕司君 丹羽 秀樹君
野中 厚君 馳 浩君
比嘉奈津美君 船橋 利実君
宮内 秀樹君 宮川 典子君
義家 弘介君 小川 淳也君
郡 和子君 中川 正春君
松本 剛明君 今村 洋史君
岩永 裕貴君 遠藤 敬君
椎木 保君 中野 洋昌君
青柳陽一郎君 井出 庸生君
宮本 岳志君 青木 愛君
吉川 元君
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文部科学大臣 下村 博文君
文部科学副大臣 福井 照君
文部科学大臣政務官 丹羽 秀樹君
文部科学大臣政務官 義家 弘介君
経済産業大臣政務官 平 将明君
政府参考人
(文部科学省研究開発局長) 戸谷 一夫君
政府参考人
(資源エネルギー庁電力・ガス事業部長) 糟谷 敏秀君
政府参考人
(中小企業庁次長) 富田 健介君
参考人
(東京電力株式会社代表執行役副社長) 内藤 義博君
文部科学委員会専門員 久留 正敏君
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委員の異動
五月十七日
辞任 補欠選任
桜井 宏君 船橋 利実君
遠藤 敬君 岩永 裕貴君
田沼 隆志君 今村 洋史君
同日
辞任 補欠選任
船橋 利実君 桜井 宏君
今村 洋史君 田沼 隆志君
岩永 裕貴君 遠藤 敬君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
東日本大震災に係る原子力損害賠償紛争についての原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る時効の中断の特例に関する法律案(内閣提出第六八号)
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○松野委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
東京電力福島第一原発事故は、これまで経験したことのない大事故であり、いまだに汚染水の漏えいが続き、この間も停電事故が繰り返されるなど、収束などとはほど遠い状況であります。
被害は福島県にとどまらず、他県にも依然として放射能被害の影響が広がっております。今なお先の見えない避難を強いられている十五万人もの人々は、生活基盤を根こそぎ奪われ、地域から隔絶された中で、経済的にも精神的にも困難な状況に置かれております。
まず、大臣に基本認識をお伺いしますけれども、何の落ち度もない事故の被害者に対し、加害者である東京電力に一人残らず全面賠償させることが政府の責任だと考えますけれども、これはよろしいですね、大臣。
○下村国務大臣 御指摘のとおりだと思います。
今回の事故により生じる原子力損害に関しては、事故と相当因果関係が認められるものは全て、原子力損害賠償法に基づき、東京電力より適切な賠償が行われることになっております。
文科省としては、原子力損害賠償紛争審査会において、賠償すべき損害の範囲や賠償額の算定方法を指針として示し、東京電力の適正かつ迅速な賠償を促すとともに、指針に明記されていない損害についても、指針の趣旨を踏まえ、かつ、当該損害の内容に応じて、東京電力に合理的かつ柔軟な対応を求めているところでもございます。
また、原子力損害賠償紛争解決センターの報告書において、中間指針に明記されていない損害は支払わないとの声が寄せられていること等を踏まえまして、ことし三月、東京電力に対して、事故の被害を受けた方に対する誠意ある対応を徹底するよう改めて要請したところでもございます。
文科省としては、引き続き、関係省庁と連携して、迅速かつ公正、適正な賠償を行うよう東京電力に働きかけるとともに、原子力損害賠償紛争解決センターによる和解の仲介などの体制を強化しながら、被害者の方々に対して、迅速、公平、適正な賠償が実現するための取り組みを全力で進めてまいります。
○宮本委員 あらかじめ全面的な御答弁をいただきまして。
実は、私は五月の十三日に福島に参りまして、現地で、被害者の皆さんと文部科学省や東京電力との交渉にも同席をさせていただきました。
原発事故の前は、福島で子供たちは自然豊かな野山を駆け回り、外で遊んでおりましたけれども、事故から二年以上経過した今も、子供の屋外活動は制限をされております。子供も親も、放射線被曝を心配しながら暮らさざるを得ないという状況であります。
被害者から共通して出されたのは、今までできていたことが原発事故後はできなくなった、それをきちんと把握して賠償してほしいという声であります。当たり前の願いであります。しかし、福島での東京電力との交渉で感じたことは、東京電力の加害者意識の欠如、上から目線、不誠実な対応であります。
驚いたことに、交渉の席で東京電力の福島復興本社の担当者は、事故が収束していないことは認めながらも、敷地外には今や放射能も出ておらず、周辺地域は落ちついているかのように主張いたしました。さらには、相当の因果関係がないと賠償できないというのを盾にとって、原発から離れたところで今も屋外活動を制限しているのは、まるで被害者が勝手に怖がり過ぎているだけであるかのようにさえ言い放ったわけであります。こんな態度は話にならないと言わなければなりません。
東電の広瀬社長は、三月十三日の衆議院予算委員会に出席をして、我が党の高橋議員の質問に答えて、原子力損害賠償紛争解決センター、いわゆるADRセンターに昨年の一月から十二月までに寄せられた声の中で、東電に対する意見、要望、不満の声が三割を占めていることを認めた上で、重く受けとめたい、できる限り親身な対応をしたいと繰り返し答弁をいたしました。
しかし、副社長、現場は全然違うじゃありませんか。どうなっているんですか。
○内藤参考人 お答えいたします。
五月の十三日に、今お話のございましたように、福島市で、被災者の皆様と私どもの賠償に当たっている人間との説明会があったわけでございます。
今お話のありましたように、こういうことがあってはならないんですけれども、当日集まられた皆さんの思いとして、東電はいまだに上から目線だ、加害者意識がないというお話があったわけです。これにつきましては、本当に、当日の詳細な発言について把握しておりませんけれども、まずはおわびを申し上げたいと思います。
やはり、私どもは、常日ごろから、被災者の皆様に寄り添って親切なあるいは誠実な賠償を続けていくということを言い続けてきているわけでして、それがまだまだ徹底されていないという御指摘かと思います。
ことしの一月一日からは、福島県に復興本社というものを設けました。かなりの数の被災者の皆様が福島にいらっしゃるわけでして、やはり遠過ぎるのではないか、もっと現場に寄り添おうということで、ここに復興本社も設けまして、これからしっかり被災者の皆さんに寄り添った賠償をしていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
○宮本委員 その福島復興本社の担当者との交渉ですよ。同席した文部科学省研究開発局の担当官でさえ、そのやりとりを聞いて、遺憾に思う、違和感があると現場で言うほどの上から目線、加害者意識のない対応だったと言わなければなりません。わびるのは当然だと思います。
しかし、そのような東電の態度の口実に使われているのが、文科省の紛争審査会が決めた中間指針なんです。中間指針に具体的に記載のあるものしか賠償の対象としないかのような口ぶりなんですね。
そういう状況があるので、ADRセンターのまとめの中でもそれが問題だとされて、そういうことを東電に伝えたという先ほどの話でありますけれども、そういう点では、改めて、精神的な被害、さらには他の賠償項目についてもきちっと東電に損害賠償をさせる、やはり、この点で中間指針をいま一度見直す必要があると私は思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
○下村国務大臣 原子力損害賠償紛争審査会は、原子力損害の賠償に関する法律に基づき、当事者による紛争の自主的な解決に資する指針を定めること等を目的として、人格高潔な学識経験者により構成される機関でありまして、この策定において、公正中立性を配慮しながら行われているというふうに思っております。
この指針の策定に当たっては、可能な限り被害の実態を踏まえたものであることは重要でありまして、審査会において、必要に応じ、被災地を初めとする自治体等からの説明聴取等も行っているところでもございますし、またさらに、本年五月から六月にかけては、審査会委員が避難指示対象となった福島県十二市町村の現地調査も行い、また、六月には審査会の県内開催も予定しているということでございますので、こういう状況を踏まえまして、指針に追加的に反映される事項についても検討がされると思いますが、そういう状況を見ながら判断してまいりたいと思います。
○宮本委員 実は、私、四月三日に福島県いわき市で開かれた衆議院予算委員会の地方公聴会に行ってまいりました。
ここで福島県浪江町の馬場町長が公述をされたわけであります。これは衆議院予算委員会の会議録に残っておりますけれども、「正直な話を申し上げまして、中間指針が決まったのは一昨年の八月ですね。それで、私ども被災地、被災者の方が呼ばれたのかというと、二十一回目にして一回ですよ、呼ばれたのは。」こう語り、中間指針には「私どもの意見というのは全然入っていない」、「もう一度この賠償紛争審査会を開いていただきたい。そして、特に被災を受けた首長の話を聞いて、どんな苦しみなのかわかっていただきたい」、そういうお声も出されました。
私どもは、自治体ばかりでなく住民の声自身をしっかりと聞く必要があると思うんですけれども、なるほど、これから審査会が被災地で開かれる、こういうことでありますが、しっかりそれを踏まえて見直す方向で検討すると、大臣、もう一度お答えいただけますか。
○下村国務大臣 御指摘のように、原子力損害賠償紛争審査会の議論の中においてそのような発言があったということを、私の方も承知しているところでございます。
そういう意味で、地元の方々の地域での、それぞれ審査会、現地調査もしているところでございますから、そういうことを踏まえて、指針に追加的に反映させるべき事項についてきちっと検討するということは必要なことであると思います。
○宮本委員 現場の声、被災自治体の声に耳を傾けるというのであれば、今、実は、オール福島の自治体が参加する、二百八団体、県下全ての自治体が参加する福島県原子力損害対策協議会からも、短期消滅時効そのものを法的措置によって停止してほしい、こういう要望が出ております。
民法七百二十四条前段に定める短期消滅時効、三年のこの時効をそもそも適用しない法的措置を講じるというのは、日弁連からもそういう意見書が出ているところです。
大臣、今回、なぜ短期消滅時効そのものを停止することを行わなかったんですか。
○下村国務大臣 今回の事故の損害賠償については、適正な賠償が迅速かつ円滑に実施されることが最優先であるというふうに考えております。
このため、政府としては、今回提出している法案のほか、東京電力に対して、損害賠償請求権の消滅時効に関して柔軟な対応を要請するとともに、被害者のきめ細かな把握等の丁寧な対応を求める等の対応をとってきているところでもございます。
まずは、国の要請に対する東京電力の取り組みと、まだ請求をされていない被害者の方々の実情をよく見きわめたいというふうに思います。
その上で、御指摘のような短期消滅時効の適用に特例を設けることについて、適切な賠償の迅速かつ円滑な実施の観点からの、これはメリットもありますが、一方でデメリットも予想されるということでございまして、ともに、そういうことから、慎重に勘案しつつ、関係省庁とも連携して、必要な対応を考えてまいりたいと思います。
○宮本委員 来年の三月に迫ってきているこの短期消滅時効に関しては、私は、デメリットなんということはあり得ないと思うんですね。
三月二十八日の第三十一回原子力紛争審査会の場でも、この法案自体は評価する委員からも、ADRにも出てこない、東電にも直接請求していない、しかし損害はこうむっているという被害者がかなりいるとすると、その人たちについて、時効をどう考えるかというのが、もう一回問題になる可能性があるという指摘がされました。
先ほど別の委員からも指摘があったように、この特別措置法だけで賄って、あとは民法の一般原則で賄うという事態は、ちょっと私どもとして看過できないという意見も出されました。
能見会長も、「従来、そういう時効について、特別な立法をしたことがないというのは、あんまり根拠にはならない」とおっしゃり、今までの大気汚染や水俣病や水銀などとは全然違って、今回は、住む場所さえ追い出されてしまっているというような状況、そういうもとでの損害賠償の請求の問題なので、少なくとも従来はないから、今回も同じように考えるべきだというのは、私は余り根拠がないと、はっきり述べておられます。
そもそも、今回の法案の枠組みでは、和解仲介打ち切り後一カ月以内に提訴することが要件になっておりますけれども、そんな一カ月では実務上も困難だという声も各方面から出されております。だからこそ、能見会長もおっしゃるように、立法措置によって短期消滅時効そのものを停止すれば全て解決するわけです。
オール福島の声、日弁連、そして原子力紛争審査会の声にもかかわらず、政府がそれに応えないというのであれば、我々国会がその声に応えなければなりません。
我が党は、他党とも共同して、東日本大震災に係る原子力損害に関して、民法第七百二十四条前段の短期消滅時効の適用を除外する一点での修正案を後ほど提案いたします。ぜひ委員各位の御賛同を呼びかけて、私の質問を終わります。
○松野委員長 この際、本案に対し、宮本岳志君外一名から、日本共産党及び社会民主党・市民連合の二派共同提案による修正案が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。宮本岳志君。
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東日本大震災に係る原子力損害賠償紛争についての原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る時効の中断の特例に関する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
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○宮本委員 私は、日本共産党、社会民主党・市民連合を代表して、東日本大震災に係る原子力損害賠償紛争についての原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る時効の中断の特例に関する法律案に対する修正の動議を提出いたします。
その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。
修正案の提案理由を御説明申し上げます。
政府提出の法律案は、東京電力福島第一原子力発電所事故による原子力損害について、原子力損害賠償紛争審査会に和解仲介を申し立てた者が、和解仲介の打ち切りの通知を受けた日から一カ月以内に裁判所に訴えを提起した場合には、和解仲介の申し立てのときに訴えを提起したこととみなすことによって、和解仲介の途中で時効が経過した場合でも、時効の主張を認めず、裁判で争うことを可能とするものであります。
しかし、東京電力福島第一原子力発電所事故による原子力損害は、被害が深刻かつ広範であり、継続性があるとともに、事故そのものが収束しておらず、現時点において被害の全容を把握することが不可能な状況です。また、一カ月以内では、実務的にも困難だとの声も出されています。
全ての被害者に全面賠償を進めるためには、原子力損害全てについて、損害賠償請求権を、民法第七百二十四条前段の三年の消滅時効によって消滅しない特例を設ける必要がありますが、政府提出の法律案は、対象が原子力損害賠償紛争審査会に申し立てられた損害に限定され、短期消滅時効の適用そのものを除外するものとはなっておりません。
このような観点から、修正案を提案いたします。
以下、修正案の概要を申し述べます。
東日本大震災に係る原子力損害に係る損害賠償請求権については、民法第七百二十四条前段の規定は適用しないことに改めるものであります。これにより、全ての損害賠償請求権について短期消滅時効によって消滅しないことにするものであります。また、一カ月以内などという実務的な問題も生じることはありません。
以上、何とぞ委員各位の御賛同を心からお願い申し上げます。