平成二十四年六月十五日(金曜日)
午前九時六分開議
出席委員
委員長 石毛えい子君
理事 金森 正君 理事 田島 一成君
理事 永江 孝子君 理事 松本 大輔君
理事 村上 史好君 理事 馳 浩君
理事 松野 博一君 理事 池坊 保子君
石井登志郎君 石原洋三郎君
稲見 哲男君 大山 昌宏君
岡本 英子君 奥村 展三君
神山 洋介君 川口 浩君
城井 崇君 笹木 竜三君
瑞慶覧長敏君 杉本かずみ君
田名部匡代君 高井 美穂君
高野 守君 高橋 昭一君
野田 国義君 室井 秀子君
本村賢太郎君 山岡 達丸君
笠 浩史君 和嶋 未希君
あべ 俊子君 甘利 明君
遠藤 利明君 河村 建夫君
下村 博文君 田野瀬良太郎君
永岡 桂子君 古屋 圭司君
稲津 久君 宮本 岳志君
三輪 信昭君
…………………………………
文部科学大臣 平野 博文君
文部科学副大臣 奥村 展三君
文部科学副大臣 高井 美穂君
文部科学大臣政務官 城井 崇君
文部科学大臣政務官 神本美恵子君
政府参考人
(警察庁生活安全局長) 岩瀬 充明君
政府参考人
(総務省総合通信基盤局電気通信事業部長) 原口 亮介君
政府参考人
(文化庁次長) 河村 潤子君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長) 岡田 太造君
文部科学委員会専門員 佐々木 努君
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委員の異動
六月十五日
辞任 補欠選任
城井 崇君 神山 洋介君
中屋 大介君 稲見 哲男君
笠 浩史君 田名部匡代君
富田 茂之君 稲津 久君
同日
辞任 補欠選任
稲見 哲男君 野田 国義君
神山 洋介君 城井 崇君
田名部匡代君 笠 浩史君
稲津 久君 富田 茂之君
同日
辞任 補欠選任
野田 国義君 中屋 大介君
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六月十四日
劇場、音楽堂等の活性化に関する法律案(文教科学委員長提出、参法第二一号)(予)
同月十五日
劇場、音楽堂等の活性化に関する法律案(参議院提出、参法第二一号)
同月十二日
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一六七二号)
同月十四日
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(橋本勉君紹介)(第一七四二号)
同(磯谷香代子君紹介)(第一八八九号)
教育格差をなくし子どもたちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一八一七号)
文化芸術政策を充実し、国の基本政策に据えることに関する請願(永江孝子君紹介)(第一八一八号)
同月十五日
高校の無償化と返済不要の奨学金の創設を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第二一四七号)
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二一四八号)
同(柳田和己君紹介)(第二一四九号)
同(田島一成君紹介)(第二二五〇号)
同(斎藤やすのり君紹介)(第二三七〇号)
同(志位和夫君紹介)(第二三七一号)
文化芸術政策を充実し、国の基本政策に据えることに関する請願(田島一成君紹介)(第二二五一号)
学費の負担軽減、大学予算増額を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第二三六九号)
私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(笠浩史君紹介)(第二三七二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第六四号)
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○石毛委員長 次に、宮本岳志委員。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
政府提出法案は、いわゆる写り込み等に係る制限規定の改正、国会図書館や国立公文書館の利用に伴う権利制限、著作権等の技術的保護手段に係る規定の整備など、いずれも必要なものであり、我が党も基本的には賛成できるものだと考えております。
ただ、一点だけ確認をいたしたいと思うんです。
今回の政府案には写り込み等の権利制限規定が設けられておりますけれども、これらの法改正は、写り込み等、ある程度事例を限定した上で、現行では形式的には違法となる行為を容認しようとするものであり、現実の利用実態を踏まえたやむを得ないものであると考えます。しかし、これも当初は、日本型フェアユース規定の整備ということで検討が進められ、権利者側からは、一般規定の導入には異論がありました。
そこで、確認するんですけれども、今回の規定で、例えば、会議資料として新聞記事を大量にコピーしたり、新聞記事の全文をネット上で引用したりする行為が容認されるものではないと思うんですけれども、これは御確認いただけますか。
○平野(博)国務大臣 宮本議員もよく御理解をいただいた上での確認事項だと私は思っていますが、委員御質問の新聞記事の各利用行為、いずれも、いわゆる写り込み等に関する規定の要件を満たすものではない、本行為が本改正法により適法となるということではございません。
○宮本委員 今後も一般規定のありようについては議論が続くと思うんです。関係者間でよく議論し、慎重に検討を進めていただきたいと思います。
前回の著作権法の改正時に、つまり二〇〇九年五月八日の当委員会で、我が党の石井郁子議員が私的録音録画補償金制度の問題を取り上げました。
私的録音録画補償金制度は、利用者の録音行為を認めつつ権利者がこうむる不利益を補償する目的で一九九二年にスタートし、二十年が経過しました。この間、デジタル式の録音録画機はさまざまな形態の機器が開発をされまして、急速に広がり、デジタル複製が誰でも容易にできるという状況になっております。
当時の塩谷大臣は、石井議員の質問に答えて、全ての利用形態について補償金制度にかわる制度が導入できる環境にない、現状においては、新しい制度が直ちに補償金制度にとってかわるという状況にないとして、現在の制度についても意義があると答弁をされておりますけれども、現在もこの補償金制度の評価は、大臣、変わっておりませんね。
○平野(博)国務大臣 今委員御指摘の補償金制度の意義、これについては変わっていないのか、こういう御質問でございますが、この私的録音録画の補償金制度、こういうことでは、特に、機器の開発普及によって、家庭の中で録音録画が大量に行われるようになった、こういうことから、利用者の録音録画行為を認めつつ権利者のこうむる不利益を補償する、こういうことで、平成四年に導入された制度でございます。
その後、著作権保護の技術の導入や、パソコン等録音録画以外の用途に用いられる機器等の普及など、録音録画の実態の急速な変化、進展に伴いまして、制度の見直しが求められておるわけでございます。
これまで文化審議会で検討が行われてきておりますが、まだ結論を導いておりません。平成二十一年の当時の答弁のとおり、補償金制度については見直しが求められている、こういう意味では、過渡的な時期においてなお一定の意義を有している、こういうことでございます。
○宮本委員 見直しが続けられているが、現状で同じ意義を有している、こういうことでありますね。
この制度の現状なんですけれども、きょうは資料をつけておきました。資料一を見ていただきたい。資料一は私的録音補償金の推移であります。二〇〇一年度の四十億円余りをピークにして激減をしております。
これは文化庁に確認しますが、どうして私的録音補償金の額はこんなに激減をしておるんですか。
○河村政府参考人 私的録音補償金の額の減少は、補償金の対象となっていないアイポッドなどの新たな録音機器等に需要が移ってまいりまして、補償金の対象であるMDプレーヤー、CDプレーヤーなどの機器や、それに用いられる媒体の販売数の減少に伴うものと私ども理解しております。
○宮本委員 新しい機器になかなか対象が広がっていないと。
資料の二を見ていただきたい。私的録画補償金、これの推移をつけておきました。こちらはおおむね二十億円前後で推移をして、横ばいとなっております。
これも文化庁にお伺いするんですが、この私的録画補償金は今後どのような見通しになりますか。
○河村政府参考人 平成二十二年度、二十三年度に権利者へ分配されました私的録画補償金の額はほぼ横ばいとなっておりますけれども、今後、メーカーが補償金支払いを停止しているアナログチューナーを搭載していない録画機器が販売の中心になることから、減少していくことが見込まれております。
○宮本委員 そうなんですね。メーカーが支払いを停止するということが起こり、今訴訟もやられているようですが、これからこれは減っていくわけですね。
現在においても意義ある制度と言うんですけれども、現状は補償金の額が激減し、もはや崩壊寸前という状況になっております。もちろん、対象機器がMDなどの今やもう誰も使わないようなもの、録音でいえばそういうものしかないという状況もあるわけです。
それで、知的財産推進計画では毎年見直しが言われておりますし、当委員会でも、前回、二〇〇九年改正の際に、特に私的録音録画補償金制度については、「国際的動向や関係団体等の意見も十分に考慮し、早期に適切な結論を得ること。」と全会一致の附帯決議までしているわけですね。しかし、この二年間、ほとんど検討が進んでいない。これはどういう理由ですか、大臣。
○平野(博)国務大臣 この制度の見直しについて、こういうことで附帯決議が課せられております。それを踏まえて、審議会では、平成十八年から三年間検討を行ってまいりました。特にこの経過の中で、権利者とメーカーの意見対立が起こっておりまして、合意の形成に至っていない、こういうこと。また、平成二十一年一月の報告書では、審議会を離れた意見交換の場を設けるなどして、関係者の合意形成を目指すということが必要である、こういうふうにされております。
その後、文科省としては、関係省庁でございます経済産業省との事務レベルにおける合同検討会、こういうことも行ってきました。また、関係者に対しても、意見交換の場への参加も呼びかけてきたわけでありますが、先ほどございましたが、その支払いを拒否した、こういうことで民事訴訟が提起され、現在最高裁で係争中、こういうことで、なかなか関係者の協力が得られていない状況にある、こういうことでございます。
しかしながら、合意形成が得られるように今後とも引き続き努力はしてまいりたい、かように思います。
○宮本委員 訴訟があるということでありますけれども、争われているのは録画補償金の部分であって、録音の部分については争われていないんですね。今、商品名も出ましたが、携帯用オーディオレコーダーなど、新たな補償金制度に組み入れることが必要な利用形態が広がっている。これもしっかり見直す必要があると思うんですね。
私は、少なくとも録音の部分だけでもやはり見直しを進めるべきではないかと思いますけれども、大臣の御見解をお願いいたします。
○平野(博)国務大臣 録画の部分だから、録音だけでもいいんじゃないか、それだけでも進めていくべきだ、こういう御意見だと思いますが、実態の変化にどのように対応するか、こういうことに対しては、やはり録音、録画に共通する問題であるものですから、録音だけを切り離して、委員御指摘のように、先行してそれをやったらどうだということですが、録音だけを取り出してやるという検討については、なかなか困難性が伴う、このように認識をいたしております。
○宮本委員 メーカーが拒否しているというのは、私はとんでもないことだと思うんですね。
この制度の導入に至る十五年にわたる長い議論の中で、当時JASRAC理事長であった芥川也寸志さんが、一九八八年八月、著作権審議会の第十小委員会に提出した意見書、「私的録音録画問題と報酬請求権制度の導入について」というこの文書を私も読ませていただきました。そこではこう述べられております。
詩人や作曲家たちが音楽をつくり、演奏家の皆さんがその音楽を世に送り出します。その受け手は聴衆であり、視聴者であり、ホームテーピングする人たちです。この三者の輪の交流こそ音楽の営みであり、その中で音楽文化は生きて発展していくのです。つくり手、送り手、受け手という循環の中にこそ音楽の営みが存在するという原理は、遠い昔も、科学技術が発達した今日、また将来とも変わりないはずです。
この制度によってユーザーの自由は確保され、しかも著作権者等の権利侵害のおそれはなくなるというすぐれた工夫なのですが、メーカーの方々には、販売の前に手数を煩わせなければならないのです。現代の企業が持っている大きな社会的な役割や責任からいっても、ぜひこれを引き受けていただきたいと思っております。
これが芥川さんのお言葉なんですね。こう言って、ソフトとハード、文化と経済の両立は企業にとってもよい結果をもたらすことを指摘し、企業に、それに伴う必要限度の社会的責任を果たすことを求めております。
この言葉は今も変わらぬ意義を持っていると私は思うんですが、大臣、そう思われますね。
○平野(博)国務大臣 現在の仕組み、制度につきましては、委員御指摘のように、その意見に沿ったものであり、基本的な考え方は現在も意義がある、こういうふうに思っております。
○宮本委員 芥川さんも指摘するように、企業にとってもよい結果をもたらす制度なのに、それに協力を拒否している企業の側こそ問題だと私は思います。
そもそもこの制度は、権利者とメーカーが協力してユーザーから補償金を預かり、制度を運用するという前提のもとにつくられたものなんです。
ところが、この間の経過を見れば、メーカー側は協力義務も果たさず、対象機器の減少とみずから補償金の支払いに協力しないことで、まるでこの制度の死滅化を待っているかのような対応に終始していると私は思うんですね。
今や、メーカーの側から協力の前提が崩されている以上、諸外国のようにメーカーに補償金の支払い義務を負わせることを検討すべきだと私は思いますが、大臣、そうは思われませんか。
○平野(博)国務大臣 今議員が申されましたように、義務をかけろ、こういうことでございますが、訴訟の状況等々踏まえながら、引き続き検討していきたいと思っております。
しかし、メーカー等の、補償金の支払い義務者ではなく、協力義務者とする現行制度、これが実は平成四年の著作権法改正になっておりまして、関係者の大いなる議論のもとにこれができ上がったものでございます。
したがいまして、それを超えていく改正を見直そう、こういう方向に今言及することは困難である、こういうふうに私は思います。
○宮本委員 大臣、幾らすぐれた録音、録画の機械があっても、肝心のコンテンツ、音楽や映像がなくなれば、せっかくの機器も使われることはないんです。日本の音楽や映像文化を支えてきたクリエーターに対する対価の還元をどうするかというのは重大問題であって、もっと正面からメーカーにはっきり迫るべきだと私は思うんですね。そうでなければ日本のコンテンツ産業は死滅してしまう。このことは本当に重大なことだと思います。
ところが、事もあろうに、メーカーに対しては腰が引けて要求しないまま、今度はユーザーを刑事罰でおどしつけて問題を解決しようという動きが起こっております。
本日、政府提出の著作権法改正案に対して、自民、公明両党から、第百十九条に三項を加え、違法に配信された音楽や映像などを、私的使用目的であってもダウンロードしたユーザーに、二年以下の懲役もしくは二百万円以下の罰金、またはそれを併科するなどという重大な修正案が提案されることになっております。我が党は、これには断固反対です。
そもそも、違法ダウンロードに対する刑事罰導入に関しては、日弁連からも厳しい反対の意見書及び会長声明が発出されております。個人の私的生活領域におけるダウンロードに対して刑事罰を科そうとする議論を是認すれば、国家権力が私的領域に直接入り込む余地を与えることになるものであるとまで日弁連は警告しております。そのような重大な内容の修正案を、しかも質疑終局後に提出するなどということは、言語道断だと言わなければなりません。
そこで、お聞きしますけれども、そもそも今回問題になっている私的領域における違法にアップロードされた音楽、映像などのダウンロードについては、わずか三年前の二〇〇九年の法改正で初めて違法とされたものであります。それ以前は、私的領域については違法ですらなかったですね、文化庁。
○河村政府参考人 平成二十一年の改正により初めて、私的使用目的であっても、違法配信と知りながら音楽、映像をダウンロードする行為が違法とされたものでございます。
○宮本委員 この法改正が施行されたのは二〇一〇年一月一日ですよ。ですから、そもそもわずか二年余り前までは、私的領域におけるダウンロードは基本的には違法ですらなかったわけです。
これを初めて違法とした三年前の改正時にも、この問題をめぐって大きな議論がございました。しかし、このときは我が党も、違法ダウンロードが正規の配信事業を上回る規模になり、正規コンテンツの流通に支障を来していること、そして、このような状況が放置されることはゆゆしき事態であり、日本のコンテンツ産業の成長が阻害される懸念があることから賛成の立場をとりました。しかし、それはあくまで、罰則規定の導入など、国民の基本的人権を脅かすような内容がそこに含まれていなかったからであります。
平成二十一年改正のときには、政府自身がそのことを力説していたと思うんですね。当時の塩谷文部科学大臣は、この二〇〇九年の改正案の法案趣旨説明で、「なお、この第三十条の改正については、違法なものと知りながら行った場合に限るとともに、罰則は科さないこととしております。」と述べております。
確認しますが、大臣、このときなぜ罰則を科さないことにしたんですか。
○平野(博)国務大臣 そもそも論のところについて、私、全てを承知いたしておりませんが、先ほど来から申し上げていますように、日進月歩で技術の進展がある、特に、ネットの社会を含めて、いろいろな意味で技術進歩が日進月歩だ、こういう背景が一つ。もう一つは、やはり何をおいても大事なことは、権利者の保護ということをすることによってこの世界が導かれていく、さらに発展をしていくというのが基本であろうというふうに思っております。
そういう中で、平成二十一年の改正時はどうだったんだ、こういう御指摘でございますが、平成二十一年の改正の際には、私的利用でも違法配信と知りながらダウンロードすれば違法、こういうふうにしてございます。
では、刑事罰をなぜかけなかったのか、こういうことでございますが、個々の人の違法ダウンロードの事態は非常に軽微である、こういう判断をその当時されたんだろうというふうに私は思っております。
もう一つは、どういうふうにその違法をトラップするかというところの実効性がどうなのか、こんなことも御議論されたように思います。
しかし一方では、ネット上がより発展すればより広範に広がっていくということも事実だ、こういうふうに思っておりますし、また、検証していく部分というのはなかなか難しいということはありますが、やはり刑事罰をかけていくということによって抑止的効果が大いに期待できるのではないか、こういうふうな御意見もあったと承知をいたしておりまして、そういう両方ある中で、二十一年の改正のときにはそうしなかった、こういうことだと私は理解しております。
○宮本委員 このときは、違法化ですけれども、罰則規定をつけなかった、軽微だということでありますけれども、それでも、民主党の議員も当委員会で、いつ損害賠償請求が送られてくるかわからないというユーザーの不安にどう応えるのかといった議論を相当詳しくしております。
このとき、高塩文化庁次長は、権利者団体がいきなりその利用者に対して損害賠償請求を行うようなことは基本的にないと答弁し、プロバイダー責任制限法におきましても、サイト運営者に対するダウンロードの個人情報開示の手続というものはございませんので、ダウンロードを行う利用者を特定するということは困難だと述べております。
その後、何か事情が変わったのか、文化庁、お答えいただけますか。
○河村政府参考人 御指摘の点につきましては、事情の変更はないものと承知をいたしております。
○宮本委員 事情の変更はないんですね。
それで、このプロバイダー責任制限法、正式には特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律という長い名前の法律でありますけれども、これを、二〇〇一年十一月六日、参議院総務委員会で審議した際、我が党から質問に立ったのはほかならぬ私でございました。
きょうは総務省にも来ていただいております。
私は、二〇〇一年十一月六日、参議院総務委員会でのプロバイダー責任制限法案の質疑で、インターネットでいつ、どんなサイトにアクセスしたかといったことは個人のプライバシーにかかわる問題であり、法律上も電気通信事業者はそれを通信の秘密として守る責務を負っていると指摘した上で、電気通信事業者がみだりにそれを開示することは許されないばかりでなく、それを開示させる法令をつくろうという場合でも、憲法上の通信の秘密の適用から除外するに足るだけの十分な理由がある場合に限られるのでなければ、憲法違反となると厳しく指摘をいたしました。
それに対して、当時の片山総務大臣も総務省も、発信者情報開示請求権の要件を厳格に定め、通信の秘密をいささかも侵すことのない運用に努めると繰り返し答弁したと覚えておりますが、間違いないですね。
○原口政府参考人 先生おっしゃいましたとおり、当時、宮本委員から御質問いただきまして、総務大臣、総合通信基盤局長から、一点目といたしまして、いわゆる通信の秘密につきましては、憲法上の基本的人権として保障されていること、また、インターネット上のいわゆる電子掲示板への接続の記録も、これは通信の秘密として保護の対象となること、それから、いわゆるプロバイダー責任制限法におきまして、発信者情報の開示請求の要件については非常に厳格に定められていること、それから最後に、プロバイダー責任制限法の施行に当たっては、その趣旨が十分に理解され、適切な運用が図られるように、必要に応じて関係者に周知徹底を図ること、このように答弁させていただいたと承知しております。
○宮本委員 相当厳密な議論をやったんですね。
それで、今既に罰則が付されているアップロードという行為、これはもちろんプロバイダーのところでそのアドレスを特定するということは可能であります。しかし、ダウンロードしたかどうかということをプロバイダーが特定するというのは不可能でありまして、やろうと思えば全てのアクセスを手当たり次第に調べてみる必要が出てくるわけであって、アクセスした全てのIPアドレスを開示請求するということは許されないことであって、開示請求を受けたところを一つ一つ踏み込んでパソコンの中を調べてみるということは、とんでもない騒ぎに、とんでもない話になるわけであって、できようがないわけなんですね。
ですから、そういう点でも、こういうものに罰則をかけるというのは、技術的にも、そして憲法上も許されないということを申し上げなければなりません。
それで、こういう議論が文化審議会の著作権分科会でもやられてきたと思うんです。文化審議会著作権分科会では、昨年、著作権法第三十条の見直しの議論がされ、関係者からもヒアリングをされてきたと聞いております。
そこで、私的違法ダウンロードに罰則をかけるというようなことが関係者間で合意されたという事実がございますか。
○河村政府参考人 昨年度、文化審議会では、著作権法第三十条、私的使用のための複製の規定でございますが、この規定全般について関係者から広くヒアリングを行い、検討課題を整理した、そういう段階でございます。
○宮本委員 合意はできていないですね。
○河村政府参考人 検討課題を整理したという段階ですから、まだそうした議論をしているということではございません。
○宮本委員 文化審議会の著作権分科会でも合意に至っていない、こういうものであります。
違法ダウンロードが動画投稿サイトで多いと言われております。そこで、その実態について聞くんですが、動画サイトは、音楽の利用について権利者と包括的に許諾を得ているサイト、具体名を挙げるとニコニコ動画など、それと、放送局などの公式ページと違法にアップロードされた動画が混在するサイト、具体名を挙げますとユーチューブなどがあると思うんですが、これは事実ですね、文化庁。
○河村政府参考人 お話しのように、動画サイトの中には、運営事業者とJASRAC等の著作権等管理事業者やレコード製作者との間で包括的な利用許諾契約を締結している例もある一方で、適法なものと違法にアップロードされた動画が混在しているサイトも存在しているというふうに承知しております。
○宮本委員 動画投稿サイトにある音楽や映像には、適法にアップロードされたものと違法なものが混在しているというのが今答弁にあったように実態なんです。
これでは、音楽、映像のダウンロードが果たして違法な行為に当たるのかどうかを理解できないままに行われる場合も多く、処罰の対象にすることは過剰な対応だと言わざるを得ないと思います。
さらにお伺いしますが、放送局などの場合、その多くが無償で提供するサイトと有償で提供するサイトの両方を運営しているほか、映画、音楽なども、それぞれの販売目的に応じて、期間を限定して無償で提供したり、一部分を無償で提供したりする、そういう実態があると思うんですけれども、これも、文化庁、事実ですね。
○河村政府参考人 お尋ねの点につきましては、放送局が無償または有償で放送番組等の動画を提供するサイトを運営している例や、映画製作者、音楽事業者が、販売促進等の目的に応じて、期間や提供部分を限定するなどして無償で提供している例があるというふうに承知をいたしております。
○宮本委員 有償と無償の区別をつけることさえ難しいというのが実態です。こんな状態では、ダウンロードすれば処罰の対象となる音楽、映像なのか、利用者が事前に判別するということは困難だと言わざるを得ないと思います。何が罪になるのか明確になっていないものを刑罰を定めるというようなことは、許されるものではありません。
そもそも、新たな刑罰を科す場合、賛否はどうあれ、当然、国会において慎重な質疑がなされ、その立法事実、構成要件等を明らかにしなければなりません。とりわけ、この修正案が提起している違法ダウンロードの処罰化は、今や多くの国民が利用するインターネット利用に大きく影響するものであります。
修正案提案者には、そのような修正案の提案は取りやめること、また、そのような修正案に何の審議もなく賛成するというようなことは、くれぐれも思いとどまることを強く訴えて、私の質問を終わります。
○石毛委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○石毛委員長 この際、本案に対し、池坊保子さん外四名から、自由民主党・無所属の会及び公明党の二派共同提案による修正案が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。池坊保子委員。
―――――――――――――
著作権法の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○池坊委員 ただいま議題となりました修正案について、提出者を代表いたしまして、その趣旨及び内容の概要を御説明いたします。
本修正案は、違法に配信されているものであることを知りながら、有償の音楽、影像を私的使用目的で複製する行為、いわゆる私的違法ダウンロードについて罰則を設けるとともに、私的違法ダウンロードの防止に関し、国民に対する啓発、関係事業者の措置などについての規定を追加するものであります。
その内容の概要を御説明いたします。
まず、私的違法ダウンロードに対する罰則を設けることといたしました。
すなわち、一、私的使用の目的をもって、二、有償著作物等の著作権または著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音または録画を、三、みずからその事実を知りながら行って著作権または著作隣接権を侵害した者は、四、二年以下の懲役もしくは二百万円以下の罰金に処し、またはこれを併科することとしております。
また、私的違法ダウンロードの防止の重要性についての国民の理解を深めることが重要であると考え、国及び地方公共団体に対し、私的違法ダウンロードの防止に関する啓発、未成年者に対する教育の充実を義務づけることといたしました。
その他、関係事業者の措置に関する規定、法律の施行後一年を目途とする検討条項等を設けることとしております。
以上が、修正案の趣旨及び内容の概要でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○石毛委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○石毛委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、これを許します。宮本委員。
○宮本委員 私は、日本共産党を代表して、内閣提出の著作権法の一部を改正する法律案に賛成、自民党、公明党共同提出の修正案に反対の立場から討論します。
内閣提出の法律案は、写り込みなど、ある程度事例を限定した上で、現行では形式的には違法となる行為を容認しようとするものですし、国会図書館が所有する電子化資料の利用拡大など国民の利便性が向上する面もあり、賛同できるものです。
これに対し、自民党、公明党共同提案による修正案は、内閣提出の法律案とは全くかかわりがない違法ダウンロードを処罰化するものです。
まず、このような国民の基本的人権にかかわる重大な内容を含む修正案を政府案の質疑終局後に提出するという委員会運営を強引に進めた修正案提案者及び民主党に対して厳しく抗議します。
現在、動画投稿サイトやファイル交換ソフト等を通じて違法にアップロードされたコンテンツが簡易に無料で入手できる状況にあり、正規コンテンツの流通に支障を来していることはもちろん問題です。しかし、その対処は処罰化ではなく、まずはインターネット上にある違法にアップロードされたものの削除などの対策のさらなる強化であるべきであって、違法ダウンロードの処罰化ではありません。
そもそも、この問題は個人のインターネット利用のありようにかかわる私的な領域であり、ダウンロードを行っているのは未成年者を含む若者が多く、その影響も考慮し、慎重に検討されなければなりません。
著作権法制のあり方を検討する文化庁の文化審議会著作権分科会では、昨年九月に、違法ダウンロードの処罰化については賛否両論の論点整理をまとめているのみで、ことし二月の審議経過報告では、今後、適宜検討するとされているにすぎず、関係者間の合意はありません。
また、現在、ダウンロード違法化の施行からわずか二年余りが経過したにすぎず、わずかな期間での処罰化は国民の理解を得られません。国民的な合意もないまま、関係者間の議論の途上で、審議会での議論さえ踏まず、罰則を導入するなどは言語道断です。
違法ダウンロードが行われているとされる動画投稿サイトには、音楽の利用について権利者と包括的に許諾を得ているサイトと、放送局などの公式ページと違法にアップロードされた動画が混在するサイトがあり、ユーザーにとって、インターネット上にある音楽、映像が違法にアップロードされたものかどうかを事前に判断することは困難です。
また、修正案は有償であるもののみを対象としていますが、放送局などの場合、その多くが無償で提供するサイトと有償で提供するサイトの両方を運営しているほか、映画、音楽などもそれぞれの販売目的に応じて期間を限定して無償で提供したり、一部分を無償で提供したりもしています。有償か無償かを見分けることも容易ではありません。
さらに、処罰する場合、誰がどのようにして違法ダウンロードを行ったのかを証明、把握する必要が生じます。日常的に権利者、捜査当局が個人のインターネット利用の内容、音楽、映像のダウンロード状況を監視、把握することが予想されます。親告罪で著作権者の告発により捜査が行われるといっても、臆測や疑惑の段階から取り締まりを可能にすることにつながりかねず、結果として、捜査当局の恣意的な捜査を招く危険を排除できません。
このような問題の多い修正案をまともな審議抜きで採決することの不当性を厳しく指摘して、私の討論を終わります。