平成二十四年六月十一日(月曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 中野 寛成君
理事 武正 公一君 理事 鉢呂 吉雄君
理事 古本伸一郎君 理事 松本 大輔君
理事 和田 隆志君 理事 逢沢 一郎君
理事 伊吹 文明君 理事 西 博義君
石井登志郎君 磯谷香代子君
稲富 修二君 小野塚勝俊君
岡田 康裕君 勝又恒一郎君
金森 正君 川越 孝洋君
岸本 周平君 工藤 仁美君
篠原 孝君 白石 洋一君
杉本かずみ君 田嶋 要君
田中美絵子君 田村 謙治君
道休誠一郎君 中屋 大介君
永江 孝子君 長尾 敬君
浜本 宏君 早川久美子君
樋口 俊一君 藤田 憲彦君
三村 和也君 宮島 大典君
室井 秀子君 谷田川 元君
山崎 誠君 湯原 俊二君
柚木 道義君 渡部 恒三君
あべ 俊子君 石田 真敏君
加藤 勝信君 金子 一義君
鴨下 一郎君 田村 憲久君
竹下 亘君 橘 慶一郎君
永岡 桂子君 長島 忠美君
額賀福志郎君 野田 毅君
馳 浩君 町村 信孝君
坂口 力君 竹内 譲君
宮本 岳志君 豊田潤多郎君
渡辺浩一郎君 服部 良一君
江田 憲司君 山内 康一君
中島 正純君
…………………………………
内閣総理大臣 野田 佳彦君
国務大臣
(社会保障・税一体改革担当) 岡田 克也君
総務大臣 川端 達夫君
財務大臣 安住 淳君
厚生労働大臣
国務大臣
(少子化対策担当) 小宮山洋子君
財務副大臣 五十嵐文彦君
文部科学副大臣 高井 美穂君
内閣府大臣政務官 大串 博志君
政府参考人
(財務省主税局長) 古谷 一之君
政府参考人
(厚生労働省老健局長) 宮島 俊彦君
政府参考人
(厚生労働省保険局長) 外口 崇君
政府参考人
(厚生労働省年金局長) 榮畑 潤君
衆議院調査局社会保障と税の一体改革に関する特別調査室長 佐藤 治君
―――――――――――――
委員の異動
六月十一日
辞任 補欠選任
石井登志郎君 磯谷香代子君
稲富 修二君 山崎 誠君
江端 貴子君 中屋 大介君
岡田 康裕君 杉本かずみ君
勝又恒一郎君 金森 正君
田嶋 要君 谷田川 元君
田中美絵子君 近藤 和也君
三村 和也君 小野塚勝俊君
柚木 道義君 樋口 俊一君
加藤 勝信君 あべ 俊子君
田村 憲久君 橘 慶一郎君
竹内 譲君 坂口 力君
豊田潤多郎君 渡辺浩一郎君
中島 隆利君 服部 良一君
山内 康一君 江田 憲司君
同日
辞任 補欠選任
磯谷香代子君 石井登志郎君
小野塚勝俊君 三村 和也君
金森 正君 勝又恒一郎君
杉本かずみ君 岡田 康裕君
中屋 大介君 江端 貴子君
樋口 俊一君 浜本 宏君
谷田川 元君 道休誠一郎君
山崎 誠君 川越 孝洋君
あべ 俊子君 長島 忠美君
橘 慶一郎君 永岡 桂子君
坂口 力君 竹内 譲君
渡辺浩一郎君 豊田潤多郎君
服部 良一君 中島 隆利君
江田 憲司君 山内 康一君
同日
辞任 補欠選任
川越 孝洋君 稲富 修二君
道休誠一郎君 工藤 仁美君
浜本 宏君 柚木 道義君
永岡 桂子君 額賀福志郎君
長島 忠美君 加藤 勝信君
同日
辞任 補欠選任
工藤 仁美君 田嶋 要君
額賀福志郎君 田村 憲久君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)
被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)
子ども・子育て支援法案(内閣提出第七五号)
総合こども園法案(内閣提出第七六号)
子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七七号)
社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第七二号)
社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出第七三号)
――――◇―――――
○中野委員長 これにて坂口君の質疑は終了いたしました。
次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
消費税の増税をめぐっては、この間、世論調査を見ましても、やはり反対の声の方が多いです。そこで、政府は、「明日の安心」対話集会というものを開いております。
これは総理にお伺いするんですけれども、こういう集会を開いて、国民の理解が得られたというふうにお考えになりますか。
○野田内閣総理大臣 多くの皆様に、なぜこの改革をやろうとしているか、そういう意義をお伝えするべく、岡田副総理筆頭に、関係閣僚が各地域に行って、膝突き合わせての対話集会をやっております。当然、私どもからの御説明もありますし、会場の皆様からさまざまな御意見、御指摘を頂戴する場でございますが、傾向としては、その集会に来ていただいている方の御理解は少なくとも進んできているというふうには思っております。
○宮本委員 理解、やはりこれは国民にとっては理解しようのない増税だと思うんですね。
それで、岡田副総理は、去る六月の二日に中央大学で対話集会を開き、感想をブログにこう書いておられます。「いろいろな調査結果を見ると、若い世代は、必ずしもこの一体改革や消費税の引き上げに賛成しない、その声が平均よりも多い、そういう調査結果もありますので、若い世代に対して、もっとしっかりと働きかけをしていかなければいけないと、改めて感じた」と。
岡田副総理、それで、若い世代の理解ですけれども、これは進んだとお考えですか。
○岡田国務大臣 私が私のブログで述べましたことは、本来、今回の社会保障・税一体改革は、若い世代のためにもやっているという意識が非常に強いわけでございます。
例えば、消費税の御負担は、高齢者であっても負担能力のある方には御負担をいただくということになります、世代を超えて負担していただくということになります。それから、子ども・子育てについて力を入れた政策展開になっております。そして、財政の健全化を保ちつつ社会保障を持続可能にするという意味でも、これはやはり若い世代がその恩恵を最も受けるわけでございます。
そういったことについて十分伝わっていないなというふうに考え、さらにしっかり説明が必要だというふうに考えたものでございます。
○宮本委員 若い世代の理解がなかなか進まない。
そこで、私、本当に重大だと思うんですけれども、今、財務省が大学に押しかけていって、正規の授業時間、講義時間まで使って、消費税増税の必要性などを訴える宣伝をやっている。財務大臣、これは事実ですね。そして、なぜこんなことをやっているんですか。
○安住国務大臣 これまでに、政府の広報活動の一環といたしまして、何らかの講義や説明会などを実施した大学というのは五月末現在で四十三ほどございます。
これらにつきましては、財務省が各大学当局に、学生への説明と対話の機会の提供をお願いして、大学側とのやりとりの中で、御協力をいただけることになった大学に対して実施をしたものでございます。
○宮本委員 何でやったかと聞いているんです。何でこういうことをやったんですか。
○安住国務大臣 若い学生の皆さんにこの消費税のことを理解してもらって、日本の財政の状況をわかっていただこうということでやらせていただきまして、何ら不思議なことではないと思います。
○宮本委員 それでしたら、この四十三大学、大学名を全部公表できますね。
○安住国務大臣 いや、もともとフェースブックに掲載されているものもありますし、それ以外の大学は、未公表にしているものもございますけれども、四十三でございます。
○宮本委員 よいことだったらぜひ公表していただきたい。これも後でぜひ出していただきたいと思うんですね。
報道によると、お茶の水女子大学には主税局調査課長が行き、二週連続で、大学院のゼミ、三年生向けの労働経済学総論の計二回の講義を行いました。和歌山大学には主税局税制三課審査室長が行き、二日続きで、経済学部と観光学部、それぞれの一こま九十分の授業時間全てを使って行いました。これ、間違いないですね。
○安住国務大臣 お茶の水には二回、先生が行かれていた和歌山大学にも二回ほど行っていますけれども、もともと何がそんなに悪いのかというのがちょっと不思議なんですね。
というのは、学生の皆さんにとりまして、財務省の現職の職員が行って、現実に財政運営や税の問題について説明をして、それで対話をして知識を深めてもらうというのは、何ら問題ないと私は思っています。
○宮本委員 それは、押しつけたり強制したら大問題ですよ。そんなことはわかっているんですよ。
ただ、では聞きましょう。お願いベースで合意ができて行ったというんだけれども、それでは、四十三大学のうちで、大学の側から来てくださいと申し出があって行ったものが一つでもありますか。
○安住国務大臣 ですから、先ほどお話しさせていただきましたけれども、私の方からかねがね、いろいろな場で話を持てればいいのでということを言って、事務方も、そうしましょうということで、これはやりとりをさせていただいて、何か無理やり授業時間をよこせとかそんなことではなくて、財政や税の話で、こういう生々しい現職課長の声や何かを聞いてもいいよ、また、それは話をどうぞということで、お互いやりとりのあった上で決まったところに行かせていただいているということです。
○宮本委員 四月の二十七日に主税局調査課長による特別セミナーを開いた千葉商科大学の島田晴雄学長は、御自身のブログで次のように書いております。「この勉強会はもともと関東財務局の千葉財務事務所所長の吉野孝志様が本学の太田三郎先生、齊藤壽彦先生に提案をし、それを本学全体で受け入れることにしたものです。」と内幕を明かしておられます。
地方財務局も使って財務省の側から持ちかけて、確かに合意の上とはいえ、押しかけていってやっていると。向こうの側から、大学の側から、ぜひとも来てもらいたい、一つもないじゃないですか。
○安住国務大臣 いや、今先生は多分赤旗をお読みになったと思うので、私も手元にあるんですけれども。それはそのとおりかもしれませんけれども、「本学全体で受け入れることにした」と、これは、赤旗が正しければ島田先生ですらそうおっしゃっているんですから、両者合意の上で、では伺いますという話で、何も別に強制して、あなたはうちの職員の説明会をその大学で受け入れなさいなんという話は全くございませんから。
○宮本委員 強制なんかしたら大問題ですよ、学問の自由、大学の自治にかかわるんですから。
それで、財務省、予算を握っている財務省から言われたら、なかなか大学は断れないんですよ。政府の広報を正規の授業でやること自体、暴挙ですよ。正規の授業なんですから、学生は欠席したら単位にかかわるんですよ。とんでもない話だと言わなければなりません。
それで、聞くんですけれども、そうしたら、本省から大学に出かけていった大臣官房参事官あるいは主税局の調査課長や調査室長らは業務として行ったのか、あるいは旅費はどうなっているのか、謝礼は受け取った事実があるかどうか、お答えいただけますか。
○安住国務大臣 説明者という意味でいえば、政府として、職員派遣については職員旅費の支出はしております。
なお、大学に関しては、場所や機材の提供などをお願いしておりますけれども、特段の追加費用が生じているところはございません。
○宮本委員 謝礼は受け取った事実はないですね。もう一回だけ。
○安住国務大臣 申し上げているように、出張旅費というか大学に行った旅費は払っておるだけでございます。
○宮本委員 こういうやり方というのは本当にひどいと私は思うんですよ。財務省が地方財務局まで使って大学に押しかけて、大学の演壇をまさに財務省の宣伝に使っている。しかも、それは講義なんですから。
ところで、次は、そこでやっている中身ですよね。そこで説明している、講義で使っているのは、「明日の安心 社会保障と税の一体改革を考える」、このパンフレットですか。これですか。事実確認。
○安住国務大臣 主にはこれを使って説明をしていると思います。それから、それぞれの所管課長の得意な分野について、質問を受けたらそれについてお答えをさせていただく。
なお、先生、日本にはたしか大学というのは七百八十ぐらいあるんじゃないですか。そのうちの四十三の学校で、そういうことで来てもいいよというから伺ったということですから、何か組織的に、まるで何か悪いことをしているような話では全くないですから、誤解のないように。
○宮本委員 そんなもの、財務局の側から、その合意をとるために働きかけたことは事実なんですから。全部でやっているわけじゃないのに、これだけの大学では現に単位にかかわる形でやったわけですから、それは申し開きできないですよ。
それで、そもそもこの中身というのは、まだ決まったものじゃないですね。国会でまだ議論中のことなんですよ。こういう議論中のものを、出かけていって、大学の中で学生に宣伝する。これはおかしいんじゃないですか。
○安住国務大臣 いや、そこに書いてあることの大半のものはファクトですよ、ファクト。現実を説明しているわけです。
また、それをもとに現実の政策についていろいろ説明することは何ら問題ないと思いますし、大学の学生諸君にはそれぞれの自立した考え方があるわけですから、それに対してどういう御判断をするのかは全くそれは学生の自由であって、そういう説明の場を、我々はどこに行っても、仮に大学であっても職場であっても、来てほしいと言えばやらせていただくことですから、何ら問題ないと思います。
○宮本委員 ここに書いていることは事実だと今おっしゃいましたね。
では、ちょっと中身を聞きましょう。
このパンフレットの五ページから六ページでは、「求められる「全世代対応型」の社会保障制度」というページが載っております。これは、皆さんのお手元に資料としてカラーのものをつけてございます。
このグラフではピンク色の「税負担」というものが下にずっと並んでおりますが、まず聞くんですが、なぜ二十二歳以下のところの「税負担」はゼロということになっているんですか。
○安住国務大臣 これは、保険料や税負担をわかりやすくグラフで描いてあるわけです。それで、要するに、大学を卒業してから、就職なさってスタートしたことを起点として書いてあると思います。
○宮本委員 いや、消費税を払っているでしょう、この二十二歳以下の方々も。どうなっているんですか、そこは。
○安住国務大臣 いや、だから、何が問題なのか、ちょっと私よくわからない。質問がよくわからないので。
○宮本委員 「税負担」のピンク色の欄が二十二歳以下はゼロになっているのはなぜなのかと聞いているんですよ。(発言する者あり)
○岡田国務大臣 これは一つの考え方でありますが、まず、所得税については、所得税というか直接税に関しては、二十三歳から所得を得るものという仮定を置いているところでございます。
それから、消費税などの間接税につきましては、もちろん、議員御指摘のように、二十三歳未満の者も負担していることは事実でございます。しかし、勤労世代に比べて少額の負担であると考えられることから、割愛しているということでございます。
○宮本委員 全然事実と違うじゃないですか。何でこの二十二歳以下のところは全く税負担がないかのようになっているんですか。
先ほど、会場からは、親が負担しているんだという話もありましたけれども、もしそうだと仮定すると、この図表では「分娩費等」というのがあるでしょう。「分娩費等」だけはゼロ歳児のところに負担が、グラフがついていますね。そうしたら、分娩費は、生まれてきた赤ちゃん自身が、ゼロ歳の赤ちゃんが負担する、こういうことですか。説明になっていないじゃないか。
○岡田国務大臣 こういう資料をわかりやすく描くというところもございます。それから、一定の前提を置かなければならないということもございます。ですから、個々の御指摘についていろいろいただくのであれば、それはもちろん議論していただくことにやぶさかではございませんが、しかし、事実でないとか、そういう言い方は私は適当ではないと思います。
やはり一定のいろいろな前提を置かないと、こういう図は描けないわけでございます。
○宮本委員 いや、押しかけ行為もひどいけれども、この載っているグラフだってでたらめじゃないですか。子供は一切負担しない、親が負担するからだと言ったら、今度は分娩費を赤ちゃんが払うと。こんなでたらめなグラフ、本当にないですよ。
では、もう一つ聞きましょう。
学生のところの十八歳から二十二歳のあたりを見てもらうと、教育関係の支出というものが、水色のグラフで、随分手厚くされるように描いていますね、「教育関係」と。
聞きますけれども、今回の一体改革なるもので、消費税の増税分で大学の教育に回るお金というのはあるんですか、安住大臣。
○安住国務大臣 大学に対してお渡しするお金というのは年金、医療、介護、子育ての中にはありませんが、これは、例えば今回、給付型の、出世型、所得連動型の奨学金とか、そうしたことも全部含めて絵でわかりやすく描いているからであって、それをもって、何か事実と違うというのは当たらないと思います。
○宮本委員 いやいや、いろいろ言ったって、教育関係は四経費に入っていないでしょう、大学の教育は。入っていないでしょう。
○安住国務大臣 年金、医療、介護、少子化対策と言っています、私は。
○宮本委員 だから、入っていないんですよ。ですから、学生にとっては、大学教育に対してはゼロですよ。将来世代にツケ回しはしないためと言うけれども、実際、大学生に押しつけられるのは消費税の負担増だけなんですよ。それがこの資料の示している中身じゃありませんか。
そもそも政府は、今の大学生、学生の状態を本当にわかっているのかということを次に論じたいと思います。
かつての日本育英会、今、独立行政法人日本学生支援機構と呼んでおりますけれども、この学生支援機構が隔年で学生生活調査というものを行っております。平成二十二年度の結果がことし一月に発表されました。
このパネル一をごらんいただきたいと思うんですね。これは、学生の家庭の年間平均収入額というものを二〇〇〇年度と二〇一〇年度で比較した資料です。十年前、二〇〇〇年度には、学生の親の平均年収は九百五十万円を超えておりました。それが、十年後、二〇一〇年度には、何と八百万円を切るところまで、百五十万円も親の平均年収は激減しているわけです。あなた方が学生の税金は親が負担していると説明している、その親の平均年収はここまで激減している。これは、文部科学副大臣、事実ですね。
○高井副大臣 事実です。
○宮本委員 事実なんですね。親の収入は激減している。
そこで、その結果、どういうことが起こっているか。もう一枚、これは皆さんの手元にも資料をつけてあります。
このパネル二は、家庭からの給付額の推移、学生に対する家庭からの給付額の推移です。つまり、親の仕送りですよ。十年前、二〇〇〇年度の百五十五万六千円から、十年後、二〇一〇年度の百二十二万七千五百円へ、同じ期間に三十三万円も激減したことになります。
総理、親の平均年収がこの十年間で百五十万円減った、学生に対する親の仕送りが三十三万円も減らさざるを得なくなった。百五十万円減って仕送りが三十三万というのは、それはまさに親心だと思うんですけれども、学生を持つ親にとっては、いよいよ親心も限界というところまで来ている。こういう現状については、総理、おわかりになりますね。いや、総理です、認識ですから。
○中野委員長 まず、安住財務大臣。
○安住国務大臣 そのグラフは足をもっと長くちゃんとやってもらわないと、そんな極端な大きな差の部分だけ見せるのは、ちょっと何か誤解を受けるんじゃないかと思うんです。最初のグラフも、九百五十があって八百があるんだったら、差のところだけこんなに見せるのは、ちょっと私、どうかなと思いますよ、宮本さん。
それと……(宮本委員「事実じゃないか。そんなことを言いに出てきたのか。もういいです。そんなことはいいですよ」と呼ぶ)いや、見せ方。(発言する者あり)静かにしてください。
いいですか。仕送りが百五十五万円から三十三万円確かに減少する傾向にあることは、家庭の中でいろいろなことが、お父さん、お母さんの収入が減ったり、あるかもしれません。ただし、奨学金は、実は二十二万円ふやしています。(宮本委員「聞いていないじゃないか、そんなことは」と呼ぶ)いやいや、これは事実ですから。十八万円から四十万円までふやしていますから、二十二万円はその分補填をされていることも事実だということは申し添えておきます。
○宮本委員 事実なんですよ。これは、グラフがどうかというより、このてっぺんに載っている数字に何の違いもないじゃないですか。
総理に、とにかくこういう認識についてお伺いしているんです。総理、お願いいたします。
○野田内閣総理大臣 数字は事実だと思いますので、そういう環境の中で、やはり私どもとしては、学生の皆さんに対する修学支援をしっかりやっていく。まだ給付型ではないことは御指摘のとおりでありますけれども、二十四年度に低所得世帯の学生等を対象に、所得連動返済型無利子奨学金を導入したり、貸与者数をふやしたりという努力をしておりますし、授業料減免支援なども拡充をするということで、こうした環境に対する対応はしっかりとやっていきたいというふうに思います。
○宮本委員 奨学金の議論は後でするんです。
こういう状況のもとで、次に、では、学生の生活がどうなっているか。これは三枚目のパネルであります。
このパネル三は、同じ学生支援機構がやっている調査の結果から、学生の生活費の推移を、十年間のものを出したものです。このグラフは、足切りのない、全額が出ているものですね。(安住国務大臣「みんなそうすればいいじゃない」と呼ぶ)いや、全てがわかるようにしてあるんです、これは。これは全てがわかるようにしてあるんです。
見ていただいてわかるように、赤は授業料。ここには、その他の学校納付金も含めてあります。この赤の部分は、二年前に比べて、この二年だけは微減しておりますけれども、一貫して授業料はふえてきたわけですね。それから、黄色は、修学費といいまして、課外活動費や通学費をこの中に含めてございます。これも、大体十六万から十七万前後でほとんど変わらず推移しているわけです。
注目していただきたいのは、青いところですよ。これが生活費ですね。これは、食費、住居・光熱費、保健衛生費、その他の日常費、全部入るんですけれども、これが激減してきている。十年前の九十三万六千八百円からいよいよ六十六万へと、三分の二近くまで激減したわけですよ。二〇〇〇年からずっと、仕方ないから生活費を削ってきたのが、この二年間でいえば、もう本当に減らしようがないというところまで来ている。ここまで追い詰められているわけですね。
財務大臣に聞くんですけれども、なるほど、この全てに消費税がかかるとは言いません。授業料には消費税がかからない。家賃や医療費も除かなければなりません。それでも、この調査から見たら、五十七万円という、まさに生活費、これにほぼ全て消費税五%分が乗っかってくると思うんですね。そうすると、学生の負担増というのはどれだけになりますか。
○安住国務大臣 これは機械的に計算するしかありませんが、五十七万円程度ともしされているのであれば、五%ですから、機械的に計算すれば約二・七になりますね。ですから……(宮本委員「二・八五」と呼ぶ)それが倍ですから、五・四ぐらいかもしれませんが。
ただ、先生、ここにおられる先生方はあらかた御苦労して大学に行って勉強をなさっているけれども、みんな苦労していますよ。だって、それはフォークソングの神田川なんかを聞いていたって、学生はそんなに豊かでないわけですよ。そういう中で苦学して、例えば大平総理だって、私は自伝を読みましたけれども、大学に入って初めて白い米を食べたとか、皆さん苦労してやっていますよ。
そういう中で、できるだけ国としても、奨学金を出したり、今一生懸命支えておりますから、それはわかっていただきたいと思います。
○宮本委員 関係ない答弁はしないでいいんですよ。
二万八千五百円の負担増になるということなんですね、学生にも。しかも、教育費のプラスというのはないんですよ、四経費の中には。
それで、あなた方は、低所得者に対して、負担軽減のために簡素な給付措置を創設するという議論をやっているでしょう。では、学生に対して給付措置はあるんですか。岡田副総理でもいいです。
○岡田国務大臣 簡素な給付措置の制度設計はこれからでございます。ただ、基本的に、学生だけにというような形での給付措置というのは余り考えられないかなというふうに思っております。
ただ、先生、学生だけで考えて消費税の負担があるかないかという御議論ですが、やはりこれは、学生もやがて大人になって、社会人になって、高齢者になっていくわけですから、やはりそれは全体で考えていかないと、断面だけ捉えて考えるのは、私は、さっきの、生まれた子供の出産費、全部ここに計上しているのはおかしいみたいな話と同じような話で、やはりもう少し時間をとって考えていくべき話ではないかというふうに思っております。
○宮本委員 いやいや、このパンフレットのつじつまが合っていないことは事実なんですよ、さっき申し上げたように。
それで、なるほど、このことを指摘すると奨学金をふやしたということをおっしゃるわけですよ。この調査結果でも出ていますよ。奨学金の比率は二年前に比べて五%上がっているんです、それは。しかし、奨学金がふえたということが本当に日本においてそれだけ救いになるかということを同時に論じなければなりません。
なぜかといえば、日本学生支援機構が実施している奨学金は、その全てが貸与制であって、つまり借金ですよ。親の仕送りが減った分を借金で賄っているというのが今の状況なんですよ。そうじゃないですか。
文部科学省に私確認しますけれども、世界で、ヨーロッパやアメリカが加入している経済協力開発機構、OECDですね、この三十カ国のうちで返済不要の給付制奨学金の制度がないという国は二カ国だと思うんですが、国名をお答えいただけますか。
○高井副大臣 高等教育段階における教育費の負担への公的補助は、国によっていろいろな形態がありまして、単純に比較することは難しい部分もありますが、今御指摘あったOECDの調査によれば、データが確認されている国においては、三十四カ国中、返済不要の奨学金等の給付型の支援のない国はアイスランドとされていますが、アイスランドは授業料が無償となっております。(発言する者あり)
○宮本委員 日本はその中に入りますから。アイスランドは授業料は無償なんですよ。だから、授業料が無償化されている国で給付制の奨学金のないというアイスランドがありますけれども、日本は、そもそも日本の大学の授業料というのは国立大学で初年度納入金八十二万円ですよ。私立の平均では百三十一万円ですよ。こんな負担を学生と家計に押しつけながら、全てが借金、給付制が一つもないというのは、本当にひどい状況だと言わなければなりません。
しかも、日本の奨学金は、無利子というのは三割以下なんですよ。七割以上は有利子なんです。金を貸して利子をつけて返せという制度なんです、奨学金と名前はついているけれども。
奨学金の最高月額、これは実は十二万円です。借りようと思えば十二万円、月に借りられる。十二万円を借りれば四年間で五百七十六万円ですよ。有利子なら返済総額七百七十五万千四百四十五円。学生支援機構のパンフレットに載っていますよ。これだけの借金を背負うことになります。
総理、これは国のあり方として問いたいんですよ。社会人として、大学を卒業して社会に出るその初日に、社会人として羽ばたく初日に、七百七十五万の借金を若者に背負わせる国。日本がそんな国のままでいいと、総理、お考えになりますか。
総理です、総理ですよ。あなたなんかに聞いていないじゃないか。
○中野委員長 野田内閣総理大臣。
これは感想ですから、基本的な。数字の問題ではないので。
○野田内閣総理大臣 奨学金のあり方は、これは特に予算委員会等でもよく御議論ございました。給付型にすべきという御意見もございましたし、特に馳先生からもよくそういう御意見も頂戴をしております。
これからもその議論を深めていかなければいけないと思いますが、ただ、大学生、高等教育に限っての御議論に限っていますけれども、我々は、高等教育の、高等学校の無償化等々含めてそういう流れをつくってきているということ、そこは前提として押さえておいていただきたいというふうに思います。
○宮本委員 いや、高等学校の無償化をやってきたことはわかっていますよ。しかし、大学は別に学費が下がったわけでもないわけですし、給付制奨学金だって全然実現していないわけですよ。
それで、文部科学省は、こういう状況ではやはりだめだと思うからこそ、平成二十四年度予算の概算要求で、初めて大学生、大学院生向けの給付制奨学金、百四十七億円でしたけれども、概算要求したわけですよ。
これは文部科学省の副大臣に聞きますけれども、どういう理由でこの給付制奨学金を要求されましたか。
○高井副大臣 もちろん、意欲と能力のある学生が経済的理由により修学を断念することがないよう、やはり国が経済的支援策の充実を図ることが重要というふうに思いまして、御指摘のとおり、概算要求において給付型奨学金を要求しました。
しかしながら、いろいろ、政府・与党会議等の議論も踏まえた上で、卒業後に一定の収入を得るまでの間返済を猶予するという所得連動返済型の無利子奨学金制度というものを改めて新設して、無利子奨学金の大幅拡充を行ったということであります。
○宮本委員 文部科学省も、さすがに、このままでは経済的貧困によって大学教育の機会均等が守れない、そういう現状認識を持って、返済の必要のない奨学金、給付制奨学金の概算要求を行ったわけですね。
ところが、安住大臣、結果はどうなりましたか。
○安住国務大臣 ちょっといろいろ話をさせてもらっていいですか。(宮本委員「いや、いいですよ。端的に答えてください」と呼ぶ)
いや、要するに、そういう考え方も一方であると思いますが、今までの日本の奨学金制度というのは、返してもらったお金でまた貸し付けをするという仕組みでやってきているわけですよね。ですから、そういう点では、もちろん、苦学をしている皆さんにそうした支援を惜しみなくしたいと思います。一方で、出世をしてある程度お金を稼いできたら、やはりこれを返すというのは、私は、ある意味では美学だと思いますよ。
そこで、私も、文科省の意向も意向ですから、考えて、先ほど副大臣からもありましたけれども、所得連動返済型というのをやったわけです。これは、大学を出た後に所得が三百万以下であれば、返済はまだいいですよ、しかし、三百万を超えたら返してくださいと。一言で言えば出世払い。
そういうことで、やはり少しずつ、かなり教育環境に配慮して私なりにはやっているつもりなんです。いいですか。(宮本委員「いいですよ」と呼ぶ)はい。
○宮本委員 出世払い奨学金をつくったから安心してくれ、そう言うんですか。
では、文部科学副大臣に聞きますけれども、ことし三月の大学卒業生で、今安住大臣がおっしゃったような、三百万を超えなければいつまでも返済しなくていいという所得連動型が適用される卒業生が一人でもおりますか。
○高井副大臣 済みません、ことしの予算要求ですので、制度が発足してすぐですので、まだちょっと今制度を整理中でありますけれども、これでも一歩、一里塚として次へ進んだと思っておりますので、ぜひ御理解いただければと思います。
○宮本委員 適用される人はいないですね。副大臣、もう一度だけ。いないですね。
○高井副大臣 始まったばかりですので、これから適用される人が出ると思います。
○宮本委員 いやいや、そう言いますけれども、要するに、今から奨学金を借り始める人だけの話なんですよ。三百万以下だったら猶予されるなんという話は、もう既に借りてしまった人には、ただの一人も所得連動型なんか適用されないわけですよ。そうでしょう。
それで、よくも先ほど、卒業してお金持ちになったら返してもらった方がいいと言ったもんだ。出世払いだと言ったけれども、では、今あなた方は、大学を卒業した大学生に、そんなお金持ちになるような就職先、就職状況を保障していますか。超氷河期というような大変な就職難、そして、あったって非正規で働く学生が大半じゃないですか。そのことが学生を経済的にも精神的にも追い詰めているということを私は指摘しなければなりません。
そして、私は、もう時間が大体来ましたから、総理にちょっとお伺いするんですけれども、学生や若者にとって、就職できない、職が決まらないというのは、本当に大変な問題だと思うんですね。就職に失敗することほど、未来を暗くさせられることはありません。それは、経済的に生活がやっていけないというだけの問題じゃないですね。自分は社会にとって必要とされていないのではないか、まさに、みずからの存在意義を否定される精神的苦痛を若者に背負わせる問題だと言わなければなりません。
だからこそ、政府自身も、ことしの自殺白書なんですけれども、八十ページに「若年層の自殺」という項目を掲げてあります。その中で、「特に二十歳代以下の若者の「就職失敗」による自殺者数が平成二十一年を境に急増していることにも注意が必要である。」これは政府自身が自殺白書の中で述べているわけですよ。
総理、この就職難の問題を政府が責任を持って解決する、それから、せめて、就職に失敗しても、返済の心配のない給付制の奨学金制度を導入して学生から奨学金返済の不安を取り除く、こういうことが必要だと思うんですけれども、総理の御認識をお伺いしたいと思います。
○野田内閣総理大臣 御指摘のとおり、自殺対策白書において、平成二十三年の二十歳代以下の若年層の自殺者数は平成二十二年に比べ増加したということ、そして、近年、若年層の自殺死亡率が上昇傾向にありますけれども、その背景として若年層の雇用情勢の悪化の影響も考えられるなど、こういう問題の深刻化についてはきちっと認識を示しているつもりでございます。
その上で、政府では自殺総合対策大綱の見直しを進めているところでございますけれども、特に、若者の雇用対策の充実とあわせて、若年層の自殺対策を今後の自殺総合対策の最重要の課題の一つとして位置づけ、救える命を救っていくという努力に万全を期していきたいと考えております。
その中で、今の給付型の云々が、それがストレートにこのことに響くかどうか、これはよくわかりませんけれども、何よりも、若者が雇用される、そういう環境をつくることが政府としては一番の責任ではないかと思います。
○宮本委員 先ほど挙げた例ですけれども、七百七十万という借金になれば、月額三万二千円というものを二十年間返さなきゃならないわけですよ。だから、現に、職が決まらず、その返済が迫ってくる不安というのは本当に大きいんですね。だからこそ、私はそういう指摘も申し上げたわけです。
今回の消費税の増税は、親の収入が減り仕送りが激減して生活に困窮している学生たちに、消費税の負担増だけを押しつけるものであります。しかも、取るだけ取って学生教育には使わないのだから、何の見返りもありません。就職が決まらず自殺者まで出ているというのに、奨学金は全部借金、数百万の借金を学生に背負わせ続けているというのが現状です。消費税増税は、将来世代にツケ回ししないなどと言いながら、将来世代の夢も希望も押し潰すものだということを厳しく指摘して、私の質問を終わりたいと思います。