平成二十四年三月十六日(金曜日)
午前九時一分開議
出席委員
委員長 石毛えい子君
理事 金森 正君 理事 田島 一成君
理事 高井 美穂君 理事 松本 大輔君
理事 村上 史好君 理事 馳 浩君
理事 松野 博一君 理事 池坊 保子君
石井登志郎君 石原洋三郎君
磯谷香代子君 江端 貴子君
大山 昌宏君 岡本 英子君
奥村 展三君 川口 浩君
川村秀三郎君 城井 崇君
熊田 篤嗣君 瑞慶覧長敏君
杉本かずみ君 田中美絵子君
高野 守君 高橋 昭一君
竹田 光明君 中野渡詔子君
中屋 大介君 永江 孝子君
橋本 博明君 初鹿 明博君
花咲 宏基君 松岡 広隆君
室井 秀子君 本村賢太郎君
山岡 達丸君 山口 和之君
山崎 誠君 笠 浩史君
和嶋 未希君 あべ 俊子君
甘利 明君 遠藤 利明君
河村 建夫君 下村 博文君
田野瀬良太郎君 永岡 桂子君
古屋 圭司君 富田 茂之君
宮本 岳志君 三輪 信昭君
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文部科学大臣 平野 博文君
文部科学副大臣 奥村 展三君
文部科学副大臣 森 ゆうこ君
財務大臣政務官 吉田 泉君
文部科学大臣政務官 城井 崇君
文部科学大臣政務官 神本美恵子君
政府参考人
(文部科学省大臣官房文教施設企画部長) 清木 孝悦君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 布村 幸彦君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 板東久美子君
政府参考人
(文部科学省高等教育局私学部長) 小松親次郎君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 久保 公人君
政府参考人
(文化庁次長) 河村 潤子君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 唐澤 剛君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長) 岡田 太造君
文部科学委員会専門員 佐々木 努君
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委員の異動
三月十六日
辞任 補欠選任
笹木 竜三君 竹田 光明君
瑞慶覧長敏君 田中美絵子君
高野 守君 中野渡詔子君
高橋 昭一君 花咲 宏基君
永江 孝子君 磯谷香代子君
本村賢太郎君 松岡 広隆君
同日
辞任 補欠選任
磯谷香代子君 江端 貴子君
田中美絵子君 川村秀三郎君
竹田 光明君 笹木 竜三君
中野渡詔子君 熊田 篤嗣君
花咲 宏基君 山崎 誠君
松岡 広隆君 本村賢太郎君
同日
辞任 補欠選任
江端 貴子君 永江 孝子君
川村秀三郎君 山口 和之君
熊田 篤嗣君 初鹿 明博君
山崎 誠君 橋本 博明君
同日
辞任 補欠選任
橋本 博明君 高橋 昭一君
初鹿 明博君 高野 守君
山口 和之君 瑞慶覧長敏君
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三月七日
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(黒岩宇洋君紹介)(第一四九号)
同(今村雅弘君紹介)(第一六五号)
同(大西健介君紹介)(第一八一号)
同(橘秀徳君紹介)(第一八二号)
同(松木けんこう君紹介)(第一八三号)
同(稲津久君紹介)(第一八九号)
同(笠浩史君紹介)(第二一二号)
同(橘慶一郎君紹介)(第二二八号)
同(森本和義君紹介)(第二二九号)
同(額賀福志郎君紹介)(第二三六号)
同(北村茂男君紹介)(第二三七号)
同(田中美絵子君紹介)(第二三八号)
同(高邑勉君紹介)(第二三九号)
同(福島伸享君紹介)(第二四〇号)
同(古賀敬章君紹介)(第二四五号)
同(西村康稔君紹介)(第二四六号)
同(横山北斗君紹介)(第二四七号)
同(江渡聡徳君紹介)(第二四九号)
同(梶原康弘君紹介)(第二五〇号)
同(浅野貴博君紹介)(第二六〇号)
同(木村太郎君紹介)(第二六一号)
同(遠藤利明君紹介)(第二六七号)
同(高橋昭一君紹介)(第二六八号)
同(浅野貴博君紹介)(第二七七号)
同(福田衣里子君紹介)(第二七八号)
同(吉井英勝君紹介)(第二七九号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第二九六号)
同(向山好一君紹介)(第二九七号)
同(村田吉隆君紹介)(第二九八号)
教育予算の増額、教育費の無償化、保護者負担軽減、教育条件の改善に関する請願(古賀敬章君紹介)(第二四四号)
同(鳩山邦夫君紹介)(第二六九号)
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(中谷元君紹介)(第二五八号)
同(山本有二君紹介)(第二五九号)
同(川村秀三郎君紹介)(第二八一号)
同(穀田恵二君紹介)(第二八二号)
教育格差をなくし行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(玉木雄一郎君紹介)(第二八〇号)
教育費の無償化、子育てにかかわる費用の大幅な軽減、安全な学校施設を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二八六号)
同(笠井亮君紹介)(第二八七号)
同(穀田恵二君紹介)(第二八八号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第二八九号)
同(志位和夫君紹介)(第二九〇号)
同(塩川鉄也君紹介)(第二九一号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第二九二号)
同(宮本岳志君紹介)(第二九三号)
同(吉井英勝君紹介)(第二九四号)
教育予算の増額、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善に関する請願(梶原康弘君紹介)(第二九五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
文部科学行政の基本施策に関する件
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○石毛委員長 次に、宮本岳志委員。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
東日本大震災で、学校や子供たちが大きな被害を受けました。文部科学省が昨年十二月に公表した調査を見ても、震災に伴う休校や他校、施設の使用、仮設校舎を使用しているなど、子供たち、教職員が特別な困難を抱えていることは明らかだと思います。
とりわけ、東京電力福島第一原発事故により避難を余儀なくされ、福島にとどまる子供たちは、外で遊ぶことさえできない事態がいまだに続いています。ことし一月時点でさえ、屋外活動をしていない学校が七十校、屋外活動の一部制限をしている学校が三百九十九校に上ります。
まず、大臣の基本認識をお伺いしますけれども、被災地には特有の課題があり、教職員の増員が必要である、このことはよろしいですね。
○平野(博)国務大臣 議員の御指摘のとおりだと私は思っています。
○宮本委員 阪神・淡路大震災の際には、教育復興担当教員、心のケア担当教員が十五年にわたって配置されてきたわけです。今回の震災でも、単年度に終わらせることなく長期に取り組んでいく必要がある。特に福島においては、いまだに原発事故でふるさとに帰ることもできない事態が続いており、これは災害そのものがまだ終わっていないと言わなければなりません。
加配では単年度になってしまい、学校現場では先生が一年ごとにかわらざるを得なくなる。子供たちに寄り添い支えていくためにも、学校現場は、継続的に、長期安定的に同じ人、同じ先生が配置されることを望んでおります。
被災地への教職員の加配を次年度以降も長期に継続して取り組んでいくべきだと私は思うんですけれども、この点、大臣、よろしいですか。
○平野(博)国務大臣 先ほども池坊先生からの御指摘がありましたが、やはり長期的にケアをしていく、こういうことが必要であるということも、私も答弁をさせていただきました。特に、きめ細やかな学習支援や心の被害、このことについてのケアというのは中長期的なテーマとなろうかと私は思っております。
引き続き、家庭訪問を通じた家庭との密接な連携や、放課後を利用した個別指導などの対応が必要である、こういう認識のもとに、御指摘の加配措置については継続的な措置が必要である、こういうふうに認識をしておりまして、今年度の加配数と同じ程度、約一千人ぐらいの加配を考えているところでございます。
○宮本委員 現在、今もおっしゃった加配約千人、これではまだ足りないという声が現地から届いております。
昨年十二月十八日に福島大学で、福島県内の小学校長会、中学校長会、PTA連合会、教育委員会など教育団体が参加をして、教育復興シンポジウムというのが開催されました。シンポジウムでは、福島の子供たちの深刻な実態も浮き彫りになりました。将来展望が持てず、どうせ僕らは死ぬんだから勉強も何もやりたくないと口にする子供さえいる。こういうのは本当に胸の痛む話であります。
震災の影響で教室に行けなくなった子が福島県を初め被災地には少なからずいて、一人一人丁寧に話をじっくり聞いていく必要がある、こういうのが現場からの声であります。
この間、スクールカウンセラーも配置をされてきておりますけれども、日数も限られ、人も目まぐるしくかわる。やはり養護教諭を加配してほしいというのが現場からの切実な声なんです。
現に、落ちつきのない子供が多く保健室に集まっているという実態もあります。通常業務を行う養護教諭以外に、子供に常に寄り添うような養護教諭をもう一人配置して、複数配置にしてほしいという声も寄せられております。現在、小中学校合わせて四十六人にとどまっているこの養護教諭の加配を抜本的に増員する必要があると思うんですね。
それで、文科省は二〇〇八年度から、退職した養護教員をスクールヘルスリーダーとして派遣する事業を行っております。スクールヘルスリーダーの派遣も含めて、養護教諭の複数配置が必要だと思います。これはどうかということが一点。
同時に、事務職員の抜本的増員が焦眉の課題だと思うんです。
被災地の学校では、就学援助の増加、避難している子供たちの異動に伴う転入学の手続、除染などの放射線汚染についての保護者への対応、高校でも奨学金の申請の増加など、事務の仕事も急増している。しかし、事務職員の加配も小中学校合わせて二十二人にとどまっております。事務職員も抜本的に増員すべきだと思うがどうか。
この二点、お答えいただけますか。
○平野(博)国務大臣 スクールヘルスリーダーという、いわゆるOBの皆さん方を含めて、しっかりやらなきゃならない、こういうことでございます。
阪神・淡路の状況を見ましても、十五年ぐらいかけてケアをしている、こういうことも現実の姿としてございます。
そういう中で、養護教諭、この方についての必要性、これは私は必要だというふうに認識をしております。また、先ほど先生から御指摘がありましたスクールヘルスリーダーという、OBの熟練の、ベテランの方を、来ていただいて若い新人の方を一緒に教育してもらいながら充実強化する、こういう制度も、今、学校等にも財政的な支援を行っております。
いずれにいたしましても、地元の被災県の要望には的確に応えていきたい、かように思っております。
○宮本委員 ぜひ応えていただきたいと思うんですね。事務職員の方もお願いいたします。
次に、少人数学級、三十五人以下学級の問題について質問いたします。
大臣は先日の当委員会の所信表明でも、「今後、さらなる少人数学級の推進や教職員配置の充実に努める」と述べられました。
小学校一年生に三十五人学級を導入した昨年の義務教育標準法改正時の国会審議で、当時の高木文部科学大臣は、私の質問に答えて、少人数学級の教育効果を認める画期的な答弁をされました。そして、まず小学校一、二年生から三十五人学級を導入し、順次、小中学校全部に三十五人学級を導入した上で、二〇一七年度には小学校一年生で三十人学級を、二〇一八年度には小学校二年生で三十人学級を実現するという、時期は少し変更があるかもしれませんが、一昨年八月の文科省の教職員定数改善計画の案について、「今も考え方は変わっておりません。」こういう答弁が昨年もございました。
これもまず大臣の基本認識を確認するんですが、少人数学級の教育効果、これはあるということ、この認識。それから、少人数学級の計画的推進について。これも高木大臣と変わりありませんね。
○平野(博)国務大臣 基本的認識は変わっておりません。
先生も、若いころ、どれだけの学級編制だったかと思い出していただいたらわかりますが、私のときには大体、一学年五十四、五名おったような気がします。そのことを考えますと、少人数にすることによって、先生が一人当たりの生徒に目配り、気配り、指導する時間がふえるということは物理的にもあるわけでありますから、少なくともそういう視点から見ての教育効果はある、こういうふうに私は思っております。加えて、計画的な教職員定数の改善というのは私は必要であろう、こういうふうに思っています。
したがって、では、今回はどうなっているんだということにつながっていくんだろうと思いますが、実質、今年度につきましては、加配という制度を使いながら三十五人学級の実現をさせていただいた。今後については、そういう考え方は変わらずに、何とか実現をしてまいりたい、かように思っております。
○宮本委員 義務標準法の改正によって、既に昨年の四月から小学校一年生の三十五人学級が実施をされております。いよいよこの四月から小学校二年生、さらには三年生以上に順次拡充されていくだろうというのが多くの父母や教職員、国民の願いだったと私は思うんですね。しかし、小学校二年生のみ、しかも、標準法改正ではなく加配でということになりました。
なぜ標準法の改正を国会に提案しなかったのか、お答えいただけますか。
○平野(博)国務大臣 なぜ法案、改正を国会に出さなかったのか。端的な御指摘でございますが、まず、平成二十四年度の予算案につきまして、一方では大変厳しい財政事情がある、しかし一方ではきちっと法定化をして計画的に進めていかなきゃならない、こういう強い要望、我々の考え方も政策的にはあるということでございますが、政府としては、震災復興という、東日本の大震災が起こった、最優先でやらなきゃならない、こういうことで、政府全体としての意思は、まずは震災復興に、全てのエネルギーをそこに出すんだということであります。
したがって、文科省の立場でいえば、やはり未来への投資、人的投資が大事だ、教育は大事だという観点から、何としても、本年度でとめることなく、加配というやむを得ない方法でもって三十五人学級の実現を考えさせていただいている、こういうことで御理解をいただきたいと思います。
○宮本委員 震災復興に最優先で取り組む必要がある、これは予算委員会でも大臣からそういう答弁が繰り返されているんですけれども、昨年の義務教育標準法の改正の議論を当委員会でやりましたけれども、審議されたのは三月の二十三日、二十五日、採決が三十日。昨年のあの法改正だって、大震災後にやっているわけですよ。震災復興はもちろん当然のことでありますし。そして、少人数学級を進めることは、被災地の子供たちにとっても、よりきめ細かな対応が可能となる話であります。
これまで少人数学級を実施していない自治体に、今回加配という形で加配するということになりますけれども、これでは、今まで国の加配定数も活用して独自に少人数学級を実施してきた自治体には教職員の増員が行われないということになります。今までやってこなかったところがふえるというやり方では、国に先んじて少人数学級を進めたら、結果として損をするということになるのではないか。これは大臣、いかがですか。
○平野(博)国務大臣 先ほどちょっと、少し補足をいたしますが、震災復興を最優先すると同時に、もう一度、これは自治体との関係もあるわけですが、地方での取り組み、さらには施策の効果検証も含めて、今後のあり方について今有識者会議で御議論をいただいている、こういうことでございます。ただし、基本的な認識は、やはり少人数学級はやらなきゃならない、こういう認識でございます。
加えて、今宮本先生からございました。率先してやっているところについては、では、加配の人員が来ずに損をするのではないか、こういう御指摘ですが、やはり、最初に一生懸命やっているところについては、一生懸命汗をかいたところは損をする、こういうことのないように、三%のレベルできちっとそれは加配をする、別の意味の加配をする、こういうふうに公平な加配をしたい、かように考えています。
○宮本委員 ぜひ、頑張ってきたところがばかを見るということがないように、きちっとしていただきたいと思うんですね。
では、本当に三十五人以下学級になるのかということを問いたいんです。時間がありませんので、二問分けるつもりでしたが、一度に聞きます。
現在、既に小学校二年生で三十五人学級になっている県、独自にやっている県でも、例えば、北海道では、学年二学級以上で一学級の平均児童生徒数が三十五人を超える学校で三十五人以下学級、こうなっているんですね。広島では、学年三学級以上の学校で三十五人以下学級となっているんです。
それで、例えば、北海道で、一学年の人数が三十六、七人で一学級という場合はだめですし、広島では、八十人弱で二学級という場合には三十五人以下には現在もなっておりません。このような場合も含めて、この四月から、加配で小学校二年生の全てが三十五人以下学級になると言い切れるのか、これが一問ですね。
もう一つは、そういう三十六人程度の学級で、自治体の判断で分けないというふうに判断した場合に、小学校一年生、義務標準法を変えてやっている一年生の方は、二人の教員がそれでも配置されることになります。しかし、今回の二年生は果たして二人配置されることになるのか、これについて、これはもう事務方で結構です。
○布村政府参考人 お答えいたします。
小学校二年生の三十六人以上学級解消のための加配定数につきましては、各都道府県からの申請を踏まえて措置を講ずるということとしており、基本的に、都道府県の申請どおり配分することを予定してございます。
その中ででございますけれども、小学校二年生の三十六人以上学級を解消した場合に措置されるということであるため、自治体あるいは学校の御判断によりまして、例えば、十八人以下の学級とせず三十六人以上の学級を維持するということで、十八人に二つに分けると学級の規模としては小さいという御判断があった場合には、加配の対象にはならないということになります。
しかしながら、このような学校に対しましても、各都道府県の判断によりまして、少人数指導あるいはチームティーチングという形で、少人数に分けた形の指導を充実させようという場合には、加配定数を措置することも可能という制度になってございます。
○宮本委員 やはり、標準法を変えてやるのとは違った事態が生じるんですね。自治体の判断というんだけれども、分けない場合でも、一年生ならちゃんと二人配置されているわけですから。その点では、私たちは、改めて義務標準法の改正できちっと進めるべきだということを申し上げておきたいと思います。
時間がありませんので、次に、奨学金に入りたいと思うんです。
去る二月二十一日の予算委員会で、私が、なぜ一旦概算要求に盛り込んだ給付制奨学金を予算案では削ったのか、こう聞いたら、平野文科大臣は、所得連動返済方式の奨学金を創設して、一歩前進、二歩前進として対応している、こう答弁をされました。私は、イギリスの例も紹介をして、イギリスは一九九八年に所得連動型に切りかえたが、貧困層が救われなかった、二〇〇四年に給付制が復活した、こういう指摘もいたしまして、給付制奨学金のかわりにはならないと指摘もいたしました。
この制度、所得連動返済型奨学金ですが、目安として年収三百万円未満の場合、五年を超えても返済を猶予するという制度でありますけれども、これは、年収三百万に満たない人が奨学金の返済をすることは難しい、こういう認識に立ったものだと考えてよろしいですか、大臣。
○平野(博)国務大臣 委員の、年収三百万の基準の認識に関してでございますが、所得連動型の無利子奨学金制度は、経済的に今困窮する家庭の学生が将来の奨学金の返済負担を懸念して修学を断念することがないように、安心して進学や修学の継続ができるように環境整備をしたものであります。そのために、年収三百万円以下の経済的に困窮する家庭の学生を対象とし、それらの方々が将来の不安を抱かないように、本人の年収が三百万円を超えるまでは返済を猶予するようにしたものであります。
つまり、受験をしよう、進学しようと思っているときの家庭の年収が三百万円、今度は、卒業されて本人の年収が三百万円以下であるならば返済についての猶予、こういう二通りの論点がある、こういうふうに御理解いただいたらいいと思います。
○宮本委員 今のちゅうちょをなくす制度なんだ、将来、三百万以下だったらどうかということとは別なんだというふうにちょっと聞こえたんですけれども、しかし、将来に不安が残るということは、三百万円以下だったら返せないということをおもんぱかって、三百万未満の場合は返さなくていいという制度設計になっているんですね。
だったら、当然、既に奨学金を借りて現在返済中の人についても、年収三百万円未満の場合、五年を超えても返済を猶予すべきだと思うんですが、これはそうじゃないんですか、大臣。
○平野(博)国務大臣 今借りているという方ですか。(宮本委員「今」と呼ぶ)今借りているという方については、新しいこの制度の対象からは基本的には外れていますが、状況に応じては減額をしていくとか、そういう長期に減額をする制度を平成二十三年度から導入いたしております。このことについて、もう少し周知徹底をこれからもしていくべきだと考えております。
○宮本委員 これはやはり矛盾なんですよね。これから借りる人は猶予されるが、既に借りて困っている人は猶予されないというのは、誰がどう考えてもバランスに欠けると思うんですね。
それで、そもそもこの奨学金の目的というのはどういうものかということを確認したいんです。日本学生支援機構の目的については、日本学生支援機構法第三条に定められております。これは、城井政務官の方からお答えいただけますか。
○城井大臣政務官 お答え申し上げます。
独立行政法人日本学生支援機構法第三条、御指摘の部分でありますが、以下のとおりであります。
独立行政法人日本学生支援機構は、教育の機会均等に寄与するために学資の貸与その他学生等の修学の援助を行い、大学等が学生等に対して行う修学、進路選択その他の事項に関する相談及び指導について支援を行うとともに、留学生交流の推進を図るための事業を行うことにより、我が国の大学等において学ぶ学生等に対する適切な修学の環境を整備し、もって次代の社会を担う豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に資するとともに、国際相互理解の増進に寄与することを目的とする。
と規定されております。
○宮本委員 教育の機会均等に寄与するために学資の貸与を行い、もって次代の社会を担う豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に資すると。ところが、今や、この日本学生支援機構のやっている奨学金の制度は、学生を奨学金債務奴隷ともいうべき状況に追いやって、無慈悲に取り立てることによって、次世代を担う豊かな人間性を備えた創造的な人材を台なしにしていると言わねばならないような事態が生まれているんですね。
現在返済中の人は、返済猶予は五年しか認められておりません。それでやむなく滞納というふうになれば、滞納三カ月で個人信用情報機関に通報し、ブラックリストに載せる。滞納九カ月で法的処理に移ります。滞納期間には一〇%の延滞金が上乗せされております。
ここでまた城井さんに聞くんですが、奨学金の滞納を理由に学生支援機構が訴訟に訴えた支払い督促申し立て件数はどれだけあるか、二〇〇六年度以降二〇一〇年度まで、年度ごとに答えてください。
○城井大臣政務官 お答え申し上げます。
支払い督促申し立ての件数について、数字だけ申し上げます。二〇〇六年度は一千百八十一件、二〇〇七年度は二千八百五十七件、二〇〇八年度は二千百七十三件。この後、閣議決定がなされまして解消促進が図られたということで、二〇〇九年度が七千七百十三件、そして二〇一〇年度が七千三百九十件であります。
○宮本委員 法的処理に移れば裁判所から呼び出しが来るんです。今の数で見たら、二〇〇六年度に比べてもう七倍ですよ、二〇一〇年度は。
出頭してわずか十五分で判決が出ると聞くんですね。私、話を聞いたんです。滞納金の支払いが難しいと説明してもなかなか受け入れてもらえない。百万円近い滞納金の支払い、延滞金の支払いを泣く泣く受け入れた子育て中のある返済者は、子供を育て上げねばならない人間にこのような仕打ちをする日本には未来がない、いつかは国籍を捨て子供を連れて日本を出る、こう語っておられました。
こんなことで、次代の社会の担い手、豊かな人間性を備えた人材を育成できるわけがないんですね。
そもそも、何ゆえ、定められた金利よりもはるかに重い一〇%もの延滞金を課しているのか、これが一つです。二つ目に、延滞金や利子は、会計上、奨学金の原資には入らず利益として計上されているのではないか。これも城井さん、お答えできますか。
○城井大臣政務官 お答えを申し上げます。
まず、延滞金についてでありますが、返還者に対して返済期日に返還するように促す側面を有し、延滞となった場合、期日どおり返還している者との公平性の観点から課しているということであります。
その上で、延滞金や利子の使い道についてでありますが、延滞金や学資金利息は、会計上は経常収益として区分されるものでありますけれども、無利子奨学金の延滞金については、日本学生支援機構の奨学金事業運営の一部、ソフト部分ということでありますが、そちらに充当されているというふうにされています。
有利子奨学金の延滞金及び利子については、有利子奨学金事業の原資の一部である財政融資資金等の利払いに充当されております。在学中は、本人は無利子でありますけれども、そのときにもその財政融資資金の部分に関しては利子が発生しておりますので、その一部の補填という形で使われているということであります。
○宮本委員 返還を促すためというのであれば、本人がきちっと返還する意思を示せば、この延滞金については、相談に応じて減額にも応じるべきですよ。
そして、学生支援機構のホームページを見たら、延滞金収入で四億円以上上げたとはっきり書いているじゃありませんか。まさに利益の扱いになっているんですね。そして、この延滞金は一円もまけないというような話がまかり通っている。
弁護士の方から聞くと、これでは特定調停制度と比べてもひど過ぎると。民民の間でやる場合は、金融会社がむしろ延滞利息を減額するというのがあるんだけれども、学生支援機構は一円たりともまけないという態度をとっている。
それから、民間の金融会社の場合は、代理人を立てたら、弁護士に連絡はあっても返還者や保証人に電話をして取り立てることはしないが、支援機構は、代理人を立ててもなお本人や保証人に取り立てる、こういう事例があるというんですね。
これは余りにもひどいやり方ではないですか、城井さん。
○城井大臣政務官 お答え申し上げます。
いわゆる奨学金事業の返還金は、基本的には次の学生への貸与の原資であるということで、返還金の回収は大事だと思うんです。
ただ、そうはいいながら、先ほどの延滞金も、公平性の観点からももちろん課していくけれども、先ほども御指摘のあったいわゆる一円たりともという部分も含めて、例えば弁護士さんを立てた場合に督促はいかがかといった場合に、原則的には、弁護士から債務整理の受任通知が機構に届いた後に弁護士に対して請求を行うこととなっているということなんです。
ただ、機構のチェックのミスで、それが漏れていた形で、弁護士から債務整理の受任通知が機構に届いた後に支払い督促申し立てを行って取り立てたような例もあるものですから、やはり、当事者当事者が、一人一人がどうかというところをきちんと見ていきながら、督促に至る前までのプロセスのところを周知するなり、丁寧にやるなりというところはもっと徹底をしていくべきだというふうに考えております。
○石毛委員長 宮本委員、簡潔にお願いいたします。
○宮本委員 大臣にお伺いいたします。
少なくとも、返済者が年収三百万以下であって、既に借りている人ですよ、新しい制度じゃないですよ、それで延滞というような事態になった場合でも、例えば三百万以下でも、本人が申請しなきゃ猶予されないわけですよ。五年の限度まで猶予されずに、そういう制度があるのを知らずに膨れ上がっちゃったという人がいるわけですね。
後からでも、年収三百万未満であったことが証明されれば、その猶予を受けたとみなして、やはり延滞金などの減額にきちっと誠実に応じるべきだと私は思うんですけれども、大臣、そういう点での御検討をやるべきだとお感じになりませんか。
○平野(博)国務大臣 こういう制度を知らなかった、こういう場合には、例えば学生支援機構へ、過年度における猶予の事由、どういう理由でこういうことだということの証明書を提出していただくということにより、今議員御指摘の点について返済期限を猶予するということは、私は、だめだということではないと思っております。
○宮本委員 大臣、もう結構でございます。ありがとうございます。
こういうことをしっかりやっていただいて、やはり、そもそも全ての返済者に対して所得連動返済型を適用すべきだということを申し上げたいと思うんです。
そうしたら、これに一体幾ら、試算したらかかるかと聞いたら、大体百七十二億円というのが文科省からの試算結果でありました。わずか百七十二億円で全ての返済者に対して所得連動型で返済をしっかり猶予することができるのであれば、そうすべきだ、それぐらいの金額はきちっと確保できるということを申し上げたいと思います。F35という戦闘機を今度の予算で買いますけれども、二機やめればおつりが来ます。政党助成金、いつも言いますけれども、この三百二十億、これは半分でそれぐらいのことはできるわけですね。
世界では大学無償の時代に、未来を担う学生に世界一の高学費を押しつける。世界では奨学金は給付制が常識だというのに、我が国では奨学金と称して金を貸し付け、多くは利子まで取る。返済できなければ一割もの延滞金を上乗せし、ブラックリストや法的措置で、サラ金まがいの取り立てをする。そんなことをやっている国が一体どこにあるか。こんな無慈悲な取り立ては直ちにやめることを求めて、私の質問を終わります。