平成二十二年八月十八日(水曜日)
午後一時開議
出席委員
委員長 池坊 保子君
理事 石井登志郎君 理事 小野塚勝俊君
理事 佐藤ゆうこ君 理事 園田 康博君
理事 菅原 一秀君 理事 松浪 健太君
理事 高木美智代君
大泉ひろこ君 大西 健介君
大山 昌宏君 金森 正君
京野 公子君 瑞慶覧長敏君
道休誠一郎君 初鹿 明博君
室井 秀子君 山崎 摩耶君
山本 剛正君 柚木 道義君
あべ 俊子君 小渕 優子君
馳 浩君 宮本 岳志君
吉泉 秀男君
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国務大臣 荒井 聰君
内閣府副大臣 大島 敦君
厚生労働副大臣 細川 律夫君
内閣府大臣政務官 泉 健太君
厚生労働大臣政務官 山井 和則君
政府参考人
(内閣府大臣官房政府広報室長) 齋藤 敦君
政府参考人
(警察庁生活安全局長) 樋口 建史君
政府参考人
(総務省大臣官房審議官) 平嶋 彰英君
衆議院調査局第一特別調査室長 金子 穰治君
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委員の異動
八月十八日
辞任 補欠選任
打越あかし君 瑞慶覧長敏君
小林 正枝君 金森 正君
同日
辞任 補欠選任
金森 正君 大西 健介君
瑞慶覧長敏君 打越あかし君
同日
辞任 補欠選任
大西 健介君 小林 正枝君
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八月六日
一、青少年問題に関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
青少年問題に関する件(児童虐待問題)
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○池坊委員長 次に、宮本岳志さん。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
大阪市西区で発生した幼児虐待事件は、全国に大変大きな衝撃を与えております。私も、八月の七日に事件があったマンションに伺いまして、献花をさせていただくとともに、八月の十日に開催をされました、この問題での大阪市議会文教経済委員会の協議会質疑を傍聴させていただきました。また、児童福祉司など関係者からも現状をお聞きする調査を行ってまいりました。
私は、まず冒頭、今回の事件の犠牲となられた桜子ちゃん、楓ちゃんを初め、すべての犠牲となった子どもたちの御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。
このような事件は決してあってはならない、二度と繰り返されてはならない、これはもう事件のたびに言われながら、今日、依然として後を絶ちません。児童虐待防止法ができて十年、この間二度の改正が行われたにもかかわらず、今回もまたとうとい幼い命が奪われる結果となりました。
先ほど来の質疑も聞いておりまして、荒井大臣のこの問題に対する並々ならぬ御決意も聞かせていただきました。時間がありませんので一言だけまず確認させていただきたいんですが、このようなことはあってはならない、そして、重く受けとめて、深刻に受けとめている、これはよろしいかと思うんですが、いかがですか。
○荒井国務大臣 そのとおりです。こんな悲しいこと、こんな寂しいこと、これは私はないと思います。日本の社会全体が、どこか、ある大事なものを失いつつあるのではないか。そこをしっかりとてこ入れするのが政治の、政府の役割だというふうに思います。
○宮本委員 今回の事件では、住民からの通告を受けて、大阪市こども相談センターが五回訪問はしたものの、結局会えずに、目視による安全確認がなされていない。そのことから、一部に、解錠、扉をつぶしてでも入るという強制措置、臨検、捜索をなぜしなかったのかとか、臨検、捜索の要件を緩和すべきだ、そういう議論も出始めております。
しかし、私は現場を調査してみて、これは少し違うというふうに思ったんですね。大体、今回の事例では、住民登録さえされていないわけですし、だれが住んでいるのかということも特定できない状況でありました。
これは基本的なことだけを確認しておきたいんですが、相手も特定できない、そして、出頭要求も再出頭要求もまだなされていない段階で、いきなり臨検、捜索、これは制度上もとてもやりようがないと思うんですが、間違いないですね。
○山井大臣政務官 宮本委員にお答えを申し上げます。
御指摘のように、まずは立入調査や出頭要求、再出頭要求を実施し、いずれも拒否された場合には臨検、捜索を行うことができるということが明記されておりますので、その手順、そのプロセスが必要でございます。
○宮本委員 私が話を伺った関係者や専門家は、口をそろえて、今回の事件は臨検、捜索の問題ではない、立入調査の問題だ、こうおっしゃっておりました。通告を受けてすぐに立入調査がなされていれば子どもたちの命は守られたのではないか、これがそういう方々の御指摘であります。
読売の昨日付で、関西学院大学の才村純教授は、「通告を受けて訪問しているが、子供の安全を確認するための張り込みや近所への聞き込みが不十分だった。」こう指摘するとともに、「近隣住民やマンションの管理会社に説明し、もっと協力を求めるべきだった。その法的根拠もある。」こう述べておられます。
そういう意味では、なすべきことがなされていなかったのではないか、こういう思いはもうだれもが否定できないと思うんですが、いかがでしょうか。
○山井大臣政務官 今回の事件におきましては、やはり立入調査や出頭要求をまずすべきであったというふうに考えております。
ただ、ここは本当にさまざまな議論があると思います。まさに、私も最初は一足飛びにこれは臨検の問題かなと思ったんですが、いろいろ聞いてみると、そのプロセスが全然なされていなくて、近所のヒアリングもされていない。ここで一足飛びに臨検には当然行くわけにはいきませんよねという気がするんですが、ただ、本当に今後の再発防止のために重要なのは、何か事件が起こるたびに、法律はちゃんとあったんだけれども運用ができていなかったという議論を毎年毎年続けて、子どもが犠牲になっているような気がして、私は本当にいたたまれない気持ちなんです。
ですから、もちろん、今回プロセスのことを、事例を集めて、きっちり厚生労働省としてもやろうとしておりますが、同時に、これはさまざまな議論があると思いますので、必要であればまた超党派で、先ほど馳委員から提案もありましたが、法律は一〇〇%これで完璧なのかという議論もまた出てくるかもしれないというふうに思っております。
○宮本委員 ある専門家なんですけれども、かつては相当ぎりぎりまで工夫して立入調査で問題を解決してきた。二〇〇七年の法改正で、家庭裁判所の許可をもって臨検、捜索できるという新しい枠組みができて、逆に今誤解が生じているんじゃないか。つまり、強制介入は専ら臨検、捜索でやるんだと。だから、今回の事例のように、とても家裁の許可をとれないというものは強制的な介入はできないんだということで、かえって、かつてならばもっとぎりぎりまで追及していた、立入調査をやらないという誤解が生じているのではないか、こういう御指摘もあったわけですが、いかがでしょうか。
○山井大臣政務官 委員にお答え申し上げます。
まさに同様の危機感、心配も私たちは持っておりまして、ですからこそ、今さまざまな安全確認の事例を全国的に調査しておりまして、二十六日にも全国の児童相談所の所長さんに集まっていただこうと思っておりますので、そこで意見交換と、そしてこのような、四十八時間以内、安全確認を目視するということの徹底を改めて図りたいと思っております。
○宮本委員 なすべきことがなされていない、その現状、これは何も児童相談所にその責任のすべてがあるわけではありません。
昨日の才村さんの読売新聞の記事でも、日本の児相は一人当たりの問題を抱えている数が多過ぎる、長時間の張り込みや頻繁な訪問をしたくても、とてもそこまで手が回らない。体制の不備ということが触れられておりますね。
それで、私どもは、繰り返しこの委員会でも体制の不備を指摘して、児童福祉司の増員ということも申し上げてまいりました。四月八日の当委員会での私の質問に対して、山井政務官は、社会保障審議会の社会的養護専門委員会の報告書に基づいて、施設のあり方、人員配置基準、措置費の算定基準などの見直しをすべく、社会的養護専門委員会で議論中だ、来年の通常国会に法案を提出したいと答弁をいたしました。検討の状況はどうなっておりますか。
○山井大臣政務官 宮本委員にお答え申し上げます。
まだそのことについては検討中でございますが、きょうも足立の相談所でそのお声はお聞きしてまいりまして、一人の相談員の方が約百人のケースを担当している。やはり理想は二、三十人。ですから、四倍ぐらいの職員がいないと、丁寧で責任を持てる対応というのはなかなかしづらいというお話もお聞きしましたので、これは地方交付税の措置の充実等の問題にも関係しますが、厚生労働省としても努力をしてまいりたいと思います。
○宮本委員 本当に、そういうことを言っている間にも子どもの命が奪われているわけですから、この問題だけでも直ちに切り離して結論を出して、児童福祉司を抜本的に増員すべきだと思います。
先ほど紹介した才村教授は、児童虐待で一人前の担当者になるには十年かかると言われている、実際には二、三年でころころかわるという実態があって、経験の蓄積もノウハウの継承も難しいという指摘もされております。
そういう点では、ただ人数をふやす、人員の増員というだけでなくて、専門性をしっかり確保していく、やはりそういう専門的なマンパワーを養成していくということも求めておきたいと思います。これはもう答弁は結構です。
私は、きょうの質問の準備のために、改めてこの馳先生の「ねじれ国会方程式」という本を読ませていただきました。この本は、前回、二〇〇七年改正の意義や経緯についてまとめられております。
ここで馳さんは、警察を突入させればいいじゃないかと最初考えたが、これは私も実はそちらに傾いたことを反省しているんだということで、最初、警察が何でもかんでも突入するというふうに考えたのは間違いだったというふうにおっしゃっておりまして、さまざまな議論がこのとき交わされたことがよくわかります。
ここで、実は、要保護児童対策地域協議会、先ほどから議論になっている地域のネットワークですね、これが議論に書かれております。重要性についても触れられております。厚労省の説明によればとして、数年内にほぼ一〇〇%の市町村や広域行政単位で設立できる、この地域協議会ができる、こうなっておりまして、どれぐらいに今なっているかというと、先ほど御紹介があったように九八%既にでき上がっている、ほぼ一〇〇%だというふうに聞きました。残っているところもそれなりの事情があるところが多いということのようです。
ただ、これがどういう運用になっているかということが問題だと思うんですよ。昨年七月に発表された子ども虐待による死亡事例等を検証した社会保障審議会児童部会の専門委員会の報告、いわゆる第五次報告を読みますと、この要保護児童対策地域協議会において、児童相談所と市町村の役割分担が明確になっていないものがある、福祉、保健、医療、教育機関、警察等との連携をさらに進めるべき、さらには、担当者や単独の機関内で抱え込むことのないような要保護児童対策地域協議会の体制の整備を行うべき、こういう指摘が一年前にされているわけですね。
これは厚労省に聞きますけれども、そういう指摘があって、既に問題点がわかっていながら、この間、どのような改善措置を講じてまいりましたか。
○山井大臣政務官 宮本委員にお答えを申し上げます。
そのような指摘がございましたので、まさにそれが実際機能するように、そして、先ほどお話がありましたように、任意設置の虐待防止ネットワークを含めると九七・六%、約九八%で、まだ二%が未設置でありますので、そこの設置に向けても取り組んでいるところです。
○宮本委員 つまり、これは縦割り行政の弊害と言われるものでありまして、市町村でも今そういう議論がやられていますよ。しかし、これは市町村に向かって連携を強めようと幾ら号令をかけても、率直に言って、現場からは、そう言っている大もとの中央省庁こそ一番の縦割りではないか、こういう声を確かに聞くんですよ。そういう点では、何よりも政府が率先して、二度と虐待で命を落とす子どもを生まないというかたい決意のもとに、全省庁一致して、縦割りを排した取り組みが求められていると思うんですね。
その点では、私は、荒井大臣の役割というのは大きい。これは内閣府においてこの問題でのそういうリーダーシップを大臣に求めたいのですが、御答弁をお願いしたいと思います。
○荒井国務大臣 そういう観点から、内閣府がこの問題について所掌しております。
特に、この七月に策定をいたしました子ども・若者ビジョン、これは、内閣府が初めて各省庁縦割りのものに横ぐしを当てて、しかもその中の大きなものが、子ども虐待でありますとか、あるいは子どもの健全な育成について視点を当てた計画書になっております。
これは、恐らく、今政権になって初めてしっかりと形をつくることができたということだろうと思っております。この部分は、私、行政としてもかなり未分化、あるいは余り進化していない分野なのかなというふうに今聞いておりました。
現政権になってから自殺の問題を非常に深く取り上げましたけれども、自殺についてのしっかりとした統計書というのがありませんでした。どういう原因で自殺に結びついているのかということですね。
そこで、私の方から、政府が持っている、内閣府が持っている経済研究所に、自殺のしっかりとした調査ができるような部局を置きたいというふうに思っているんですけれども、同じように、児童虐待についても科学的な研究というのがしっかり行われているのかどうか、原因も含めて、そういうものについて内閣府としてもしっかりとした調査研究体制というのを整備する必要があるのではないかと、今さまざまなお話を聞いていて、そんな思いをいたしました。
○宮本委員 先ほど公明党の委員からもありましたけれども、子ども・若者というくくりだけでなくて、やはり児童虐待そのものに機敏に対応する、リーダーシップある取り組みをお願いしたいと思います。
時間がないので終わりますけれども、この問題はこれで到底終わるわけにはいかないと思います。大阪市における検証委員会での議論の進捗状況も踏まえて、大阪市の担当部局をお招きするなり、また現地調査に行くなり、引き続きこの議論を進めていく必要があると思いますが、委員長に理事会での御協議をお願いいたします。
○池坊委員長 しっかりと、委員の御意見、大切なことだと思います。私も現場視察を望んでおりますので、委員の方々の御協力もいただいて行いたいと思います。
○宮本委員 終わらせていただきます。ありがとうございました。