平成二十六年四月十六日(水曜日)
午前八時四十二分開議
出席委員
委員長 小渕 優子君
理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君
理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君
理事 義家 弘介君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 稲津 久君
青山 周平君 秋本 真利君
池田 佳隆君 岩田 和親君
小此木八郎君 神山 佐市君
菅野さちこ君 木内 均君
工藤 彰三君 熊田 裕通君
小林 茂樹君 桜井 宏君
新開 裕司君 末吉 光徳君
冨岡 勉君 中谷 真一君
中村 裕之君 永岡 桂子君
野中 厚君 馳 浩君
福山 守君 藤原 崇君
宮内 秀樹君 宮川 典子君
菊田真紀子君 細野 豪志君
吉田 泉君 遠藤 敬君
椎木 保君 三宅 博君
中野 洋昌君 柏倉 祐司君
井出 庸生君 宮本 岳志君
青木 愛君 吉川 元君
…………………………………
議員 吉田 泉君
議員 笠 浩史君
議員 鈴木 望君
議員 中田 宏君
文部科学大臣
国務大臣
(東京オリンピック・パラリンピック担当) 下村 博文君
文部科学副大臣 西川 京子君
文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
文部科学大臣政務官 上野 通子君
政府参考人
(文部科学省大臣官房文教施設企画部長) 関 靖直君
政府参考人
(文部科学省生涯学習政策局長) 清木 孝悦君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 前川 喜平君
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委員の異動
四月十六日
辞任 補欠選任
熊田 裕通君 秋本 真利君
比嘉奈津美君 末吉 光徳君
宮内 秀樹君 中谷 真一君
同日
辞任 補欠選任
秋本 真利君 中村 裕之君
末吉 光徳君 藤原 崇君
中谷 真一君 岩田 和親君
同日
辞任 補欠選任
岩田 和親君 宮内 秀樹君
中村 裕之君 熊田 裕通君
藤原 崇君 福山 守君
同日
辞任 補欠選任
福山 守君 比嘉奈津美君
―――――――――――――
四月十五日
地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(笠浩史君外三名提出、衆法第一六号)
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)
は本委員会に付託された。
四月十六日
教育委員会制度を廃止する等のための地方自治法等の一部を改正する法律案(中田宏君外四名提出、第百八十三回国会衆法第二五号)
地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(笠浩史君外二名提出、第百八十三回国会衆法第四五号)
は委員会の許可を得て撤回された。
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本日の会議に付した案件
委員派遣承認申請に関する件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
教育委員会制度を廃止する等のための地方自治法等の一部を改正する法律案(中田宏君外四名提出、第百八十三回国会衆法第二五号)
地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(笠浩史君外二名提出、第百八十三回国会衆法第四五号)の撤回許可に関する件
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)
地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(笠浩史君外三名提出、衆法第一六号)
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○萩生田委員長代理 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。昨日に続いて質問させていただきます。
代表質問でも述べましたとおり、我が党は、本法案を断じて容認できません。それは、教育委員会を首長の支配のもとに置き、憲法が保障する教育の自由と自主性を侵害するものだと考えるからであります。
まず、教育委員会制度の原点をきょうは問いたいと思います。
教育委員会制度を最初に定めた法律、地教行法の改正、五十八年ぶりというふうに語られますけれども、最初に定めたのは教育委員会法でありまして、実に六十六年前のことであります。この教育委員会法の制定時、当時の森戸辰男文部大臣が、一九四八年六月十九日、衆議院文教委員会で法案趣旨説明を行っております。法律案を制定するに当たって政府のとった地方教育行政改革の根本方針というものを、三つの眼目ということで述べておられます。
これは文部科学省にお伺いしますけれども、この三つの眼目とは何であったか、お答えいただけますか。
○前川政府参考人 旧教育委員会法の昭和二十三年の提案理由説明におきまして、地方教育行政改革の根本方針として説明された三点は、第一点が教育行政の地方分権、二点目といたしまして住民の意思の公正な反映、これは当時の法案における教育委員の公選制のことを指していたと考えられますが、三点目といたしまして教育委員会の首長からの独立性、この三つが挙げられているところでございます。
○宮本委員 この趣旨説明の冒頭、森戸大臣は、「教育の目的は、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するにあることが、教育基本法で宣言されておりますが、この教育の目的を達成するために、行政が民主主義一般の原理の下に立つ在り方としては、権限の地方分権を行い、その行政は公正な民意に即するものとし、同時に制度的にも、機能的にも、教育の自主性を確保するものでなければならないのであります。」この中に書かれていることが、今局長のお答えになった、教育の地方分権、二つは一般行政からの独立、そして三つ目が民衆統制、レーマンコントロールというものであります。これが戦後教育行政の三大原則と呼ばれてまいりました。当時の政府のとった地方教育行政の根本方針であったわけです。
昨日の質問でも指摘しましたとおり、この教育委員会法は、一九五六年には、国会に警官隊まで導入するという形で廃止をされました。そして制定されたのが、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、まさにこの地教行法が制定をされたわけです。
これも局長に確認しますが、今日では、先ほどの三つの眼目、つまり、教育の地方分権、一般行政からの独立、レーマンコントロール、これはもう既に投げ捨てられたということになるんですか。
〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕
○前川政府参考人 旧教育委員会法の提案理由説明に挙げられた三つの根本方針でございますが、まず、原則として各地方公共団体が地方教育行政を行うという教育行政の地方分権の考え方、これにつきましては、地教行法ができた際に任命承認制などが導入されたわけでございますが、現在ではそれが廃止されているということでございます。
この地方分権の考え方は、現行制度あるいは改正案においても基本的には変わらないと考えております。
また、教育委員会の首長からの独立性でございますが、教育委員会法の当時は予算編成や執行の権限を教育委員会が持っているということでございましたが、地教行法におきましては、予算編成、執行等の権限につきましては、これは首長に移っているということでございますが、現行制度、改正案においても、この首長からの独立性ということにつきましては基本的には変わらないと考えております。
また、教育委員会が住民の意思の公正な反映を行うということでございますが、これにつきましては、教育委員会法当時、これは公選制でございまして、地教行法におきましては、これは任命制でございます。改正案につきましてもこの任命制の考え方が維持されるわけでございますが、この住民の意思の反映という理念につきましても、基本的には、現行制度あるいは改正案におきましても変わらないと考えております。
○宮本委員 基本的にはこの三大原則は変わらないという答弁だったと思うんです。今日でも守るべきものであるということが確認されたと思います。
森戸文部大臣は、先ほどの趣旨説明で、一般行政からの独立を強調して、「教育の本質的使命と、従つてその運営の特殊性に鑑みまして、教育が不当な支配に服さぬためには、その行政機関も自主性を保つような制度的保障を必要といたします。教育委員会は、原則として、都道府県、または市町村における独立の機関であり、知事または市町村長の下に属しないのでありまして、直接国民にのみ責任を負つて行われるべき教育の使命を保障する制度を確立することにいたしました。」こう趣旨説明を行っております。
いよいよこの法案に入るんですが、政府は、首長から教育の政治的中立性を守るというふうにおっしゃいます。本法案は全く逆で、教育委員会の独立性が奪われる内容になっている。私は昨日もそのことを指摘いたしました。
本法案では、首長が招集権限を持ち、首長と教育委員会で組織される総合教育会議を設置して、首長が教育の振興に関する大綱を策定するとしております。大綱を定めるのは、これは首長であります。これについて、教育委員会は協議するだけで、首長の定めた大綱に従わなければならないのではないかと私が問うたのに対して、昨日、大臣は、教育委員会と十分に協議し調整を尽くす、調整がなされないまま記載した場合、執行については教委の判断となる、最終的な決定権限は教育委員会に留保されていると答弁をされました。
では、重ねて聞きますけれども、協議をしても調整が尽くされなかった事項については教育委員会は執行しなくてよいということになるんですか、大臣。
○下村国務大臣 まず、大綱は首長が定めるものとされておりますが、教育委員会と十分に協議し、調整を尽くした上で策定することが肝要であります。
仮に、十分な協議、調整がなされないまま首長が大綱を記載した場合、当該事項の執行については、執行機関である教育委員会が判断することになっております。教育委員会の権限のもとで執行するか、しないか、その分野においては、教育長が判断するということであります。
○宮本委員 この場合の調整ができないというのはどういう条件であるのか。例えば、首長から示された内容について同意するかどうか、これは、一旦教育委員会が持ち帰って、もう一度話し合って議決するというようなことがない限り、そういうことをやらない限り、調整が尽くされたかどうかということはなかなかはっきりしないと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
○前川政府参考人 総合教育会議における首長と教育委員会との協議あるいは調整でございますが、これは、教育委員会としては、一つの執行機関としてその協議あるいは調整に臨むわけでございますので、一つの協議題につきまして教育委員会としての意思が明確になければ、これは協議、調整ができないということでございます。
したがいまして、協議題があらかじめわかっていれば、それにつきまして教育委員会としての考え方をまずまとめておく必要があるということになりますし、また、そういう用意のないまま協議が行われた場合には、一旦持ち帰って、教育委員会としての考え方をまとめるということが必要になってくるだろうというふうに考えております。
○宮本委員 あらかじめ示されていなかった場合は、一旦持ち帰って協議をしてというプロセスになると。
一度同意したものの、後になって、やはりこれはまずい、間違っていたというふうに見直して、そして教育委員会としては反対に転じた、こういう場合はどうなりますか。
○前川政府参考人 人間、考え直すということはございますから、一旦調整したかに見えたことにつきましても、教育委員会でもう一遍議論した結果、ちょっともう一度協議をしようということであれば、それは可能ではないかと考えられます。
ただ、それが既に実行段階に移っているということであれば、これは、一旦行われた意思決定をもう一遍意思決定し直すという形になると思いますのでちょっと事情が違ってくるとは思いますが、意思決定として確定する前であれば、再協議ということは十分考えられるのではないかと考えられます。
○宮本委員 同意しなければとおっしゃるわけですけれども、これはなかなか難しいと思うんです。教育委員会が首長の意向に不同意を表明することは本当に困難だと思います。対等なはずの首長と教育委員会が、今後、明らかに首長優位で教育委員会の方が従属という関係になる、こういう懸念があることは申し上げておきたいと思うんです。
さらに、愛国心教育を推進するなど、教育の内容に踏み込んで首長が大綱を策定することも可能なのではないかと私が問うたのに対して、大臣は、教育委員会が適切と判断すれば妨げられないと答弁をされました。
首長が決定する大綱に教育内容に踏み込んだことまで書き込むということになれば、これはもはや、教育の政治的中立性の確保どころか、政治介入を容認、助長するものだと私は思いますが、大臣いかがですか。
○下村国務大臣 総合教育会議を首長が主宰し、総合教育会議のメンバーは首長と教育委員会が入って、そして、その中で協議、調整して決定したこと、これについては、それを実行するということは妨げるものではないということであります。
○宮本委員 確認しますが、教育内容に踏み込んだことでも妨げないという御答弁でよろしいですか。
○下村国務大臣 総合教育会議の中で決定したということであれば、妨げるものではないと思います。
○宮本委員 この法案は、私は、教育委員会制度を根本的に変質させるものだと思います。全国の教育関係者が立場を超えて心配や不安を表明し、世論調査でも七五%の人が、政治家が教育内容をゆがめない歯どめが必要だと答えているのは当然のことだと言わなければなりません。
これまでの制度では、教育長は教育委員会によって任命され、教育委員会は、教育長に対する指揮監督権が明文で定められておりました。
これは文部科学省に聞きますけれども、改正後も、この教育委員会による教育長の指揮監督権は条文上残るんですか。
○前川政府参考人 改正案におきましては、新教育長は、執行機関である教育委員会の代表者として任命されるということでございます。そうしたことから、教育委員会による指揮監督権というものは規定されておりません。しかしながら、合議体としての教育委員会の意思決定に基づき事務を執行するという立場、これは現行の教育長と変わりはございません。
したがって、合議体である教育委員会の意思決定に反する事務執行を行うということはできないということは変わりはないわけでございます。
○宮本委員 昨日も、教育長は教育委員会の構成員でもあって、合議体の意思決定に基づいて事務執行をするので、それにたがえることはないという、大臣もそういう答弁でありました。
しかし、教育長は現状でも教育委員会の構成員なんです。しかし、その上に現地教行法は教育委員会の教育長に対する指揮監督権を明確に書き込んであります。それをなくしてしまえば、首長は、自分の意を酌んだ教育長を選任すれば教育委員会を意のままに操れるようになる、私はその危険は否定できないと思うんですが、大臣、そうじゃないですか。
○下村国務大臣 首長が教育長を任命する、それに対しては議会の同意という担保が入っておりますので、そこの自治体で判断するということになります。
○宮本委員 いや、議会の同意というのは、まさに選任するときの一回で同意を得るだけのことですよね。教育長は教育委員会の構成員であるから合議体の意思決定に基づいて事務執行をすると言うけれども、今でさえ、地方の教育行政の意思決定を行うという、本来の住民代表の合議体としての役割がなかなか十分発揮できていないことが多いんです、教育委員会のその役割が。そこで指揮監督権までなくなってしまえば、結局、教育長や教育委員会事務局の独走と言われることや事なかれ主義を教育委員がチェックするという機能はさらに弱まるということは、これは明白だと思うんです。
一方で、新教育委員会を代表する権限まで与えられた新教育長は、現行の教育長と役割が大きく変わります。ましてや、首長から直接教育長として任命されるわけですから、教育長が首長の意向に沿って教育行政を行うことになるのは私は明らかだと思うんですけれども、大臣、そうじゃないですか。
○下村国務大臣 教育長に対して首長は、それだけの関係について首長の権限を明確化し、また教育長の権限も明確化したということの中での制度設計でありまして、そのことによって、これは、総合教育会議を新たにつくることによって、そこで首長と教育委員会で協議、調整をするわけでありますから、総合教育会議という場が教育委員の方々の意見を十分反映する場にもなるわけでありますし、教育長に対して首長が独断専行的に全て指示できるということにはならないと思います。
○宮本委員 この問題は法案の本質に係ることですから、今後さらにしっかり議論していきたいと思います。
次に、いじめ隠蔽問題について聞きたいんです。
政府が今回の法案を提出したのは、大津市でのいじめ自殺事件でのいじめ隠蔽など、いじめ問題での教育委員会の対応に問題があったからだと、こういう議論が昨日からも続いております。
まず聞きますけれども、では、大津市の教育委員会の対応のどこがどのように問題だったと考えているのか。これはどうしましょう、局長にお伺いいたしましょうか。
○前川政府参考人 大津市の中学校におけるいじめ自殺事案に関しまして、大津市教育委員会の問題点に関しまして、大津市の市長のもとに設置されました大津市立中学校におけるいじめに関する第三者調査委員会の調査報告書、これが平成二十五年の一月に提出されております。
この報告書によりますと、自殺事案が生じた後の事後対応につきまして、市教育委員会に本件に対する緊急対策チームが設置されず、職員の役割分担や指揮命令系統も曖昧なままで推移し、その結果、本件中学校への明確な支援体制がとれなかった。また、市教育委員会は調査をするか否かの検討をすることなく、学校に全てを委ねていた。丸投げしていた。またさらに、県教委への報告がおくれ、その内容もずさんであった。教育委員においては、委員各自が重要な意思決定においてらち外に置かれていたことなどが指摘されているところでございます。
○宮本委員 大津市の教育委員会の対応が問題だったことは確かなんです。何が問題で、どのように改善すべきなのか、実際に即して検証することが求められております。
大津市の事例では、問題が広く発覚した後、第三者調査委員会が設置され、こういう詳細な報告書が既に出ております。
この報告書では、教育委員にはいじめの事実は知らされておらず、個人的な意見交換をしていただけで重要な意思決定にかかわっていないと事実を述べた後、だからといって、教育委に存在意義がないのかといえば、否と答えなければならないと述べております。教育委員が役割を発揮できていないことを指摘しているものの、決して無力でもないというのがこの調査委員会の結論なんです。
大津の教訓に学んで教育委員会制度を見直すと言うのであれば、教育委員会の機能と役割を強める、教育長以下の教育委員会事務局が独走したときにそれをチェックする教育委員の役割をきちんと発揮できるように体制をつくることが必要なんじゃないか。大臣、そうじゃないですか。
○下村国務大臣 今回の改正によりまして、教育委員会を代表する教育委員長と事務局を統括する教育長を一本化した職として、現在よりも大きな権限を有する新教育長の職を設けることとなるため、あわせて、教育長やその事務の執行状況をチェックする機能を強化するための規定を設けております。
具体的には、教育長が教育委員会から委任された事務の管理、執行状況について報告をしなければならないとしたこと、これは第二十五条第三項であります。また、教育委員の三分の一以上の委員から会議の招集を請求された場合には、教育長が遅滞なく会議を招集しなければならないこと、これは第十四条第二項でありまして、これらを規定しておりまして、教育委員会が教育長や事務局の事務執行をチェックすることができる仕組みを設けております。
○宮本委員 教育委員会の役割がやはり相対的に低下する、こういう方向では、私は、本来の役割を発揮することにならないと言わざるを得ないと思うんです。
同時に、いじめ被害に遭った子供の親御さんや自殺した子供の御遺族をこのような教育委員会制度の変質に利用することも許されないということを申し上げたいと思うんです。
昨日の本会議質疑でも取り上げられておりましたが、大津市でのいじめ自殺の御遺族による教育委員会制度の改革案に対する意見書というものがございます。私もいただきました。
確かに、昨日も指摘があったように、この意見書で御遺族は、大津市での教育委員会の対応、隠蔽体質と無責任な事後対応について批判をされて、具体的には、「権限と責任一致の原則、民主的コントロールの徹底、適切な訴訟追行の担保、といった観点から、首長による関与を強める方向での改革が必要だ」と主張されております。
しかし、それが全てではないのもこの意見書の中身なんです。この意見書は最後に「附言」というものをつけておりまして、次のように述べております。
「他方、学校教育に政治家の主義主張、世界観、」「価値観を押しつけてはならない、そのような懸念があることは十分理解しています。」「奈良県橿原市や鹿児島県出水市のように、首長が教育委員会の隠蔽体質にメスを入れるどころか、両者が一体化してしまう事例も目の当たりにしました。」「教育委員会の教科書採択に際して首長の政治的な意向が強く反映されるケースもありました。教育委員会の政治的な中立性を確保すべきとの声にも傾聴すべき部分があるのかも知れません。」とも言っておられます。
教育長が首長により任命され、教育委員会を代表するということになれば、この御遺族が危惧されているような、教育委員会と首長とが一体化して一緒にいじめ隠蔽を行う事例は、もはやとめようがないということに、大臣、なるんじゃありませんか。
○下村国務大臣 今回の改正案によりまして、総合教育会議という公開の場において首長と教育委員会が議論を尽くすという透明性の高い仕組みが導入されるため、いじめによる自殺事案への対応について協議する場合にも、隠蔽の防止が図られるものと考えます。
また、仮に御指摘のような事態があった場合においては、議会においてチェック機能を十分発揮していくことが重要であります。さらに、当該地方公共団体における対応によっては、事態が改善されず、文部科学大臣が当該地方公共団体に対して指導を行ってもなお児童生徒の生命または身体に重大な被害が生じ、またはまさに被害が生ずるおそれがあるなど緊急の必要がある場合には、改正案第五十条に基づき、文部科学大臣による指示を行うこともあり得るものと考えます。
○宮本委員 さらにこの意見書では、「教育委員会に強い独立性、中立性を与え、そこに教育行政に関する権限と責任を持たせるべきだという考え方も全く捨てきることはできないように思います。教育委員会の中立性を維持しながら、教育行政上の権限と責任を一致させ、責任ある教育行政の担い手としていくのであれば、一個の自治体として完全に独立させることも、試案としてあり得るところだと思います。」とも述べておられるわけです。
この御遺族は、首長による関与を強める改革だけを主張しておられるわけではありません。同時に、教育委員会そのものを強化する方向もあり得ると主張されているわけです。
このように、教育委員会制度について問題意識は同じでも、さまざまな意見があるのが実態なんです。ましてや、いじめ被害に遭った子供たち、御遺族も、当然教育委員会に対してさまざまな意見を持っておられるはずなんです。
なのに、まるで、いじめ対策を進めるためには教育行政への首長の関与を強化するのは当然だなどと主張するのは、余りにも我田引水に過ぎるのじゃないかと私は思うんですけれども、大臣、そうじゃないですか。
○下村国務大臣 平成二十五年六月、社会総がかりでいじめの問題に対峙するため、いじめ防止対策推進法が制定され、いじめにより重大事件が生じた際には、学校の設置者または学校は組織を設けて調査を行うことや、調査を行ったときは、いじめを受けた児童生徒やその保護者に必要な情報を適切に提供することなどが法定されました。
また、平成二十五年十月、法律に基づき文部科学省が策定したいじめ防止基本方針においても、いじめを受けた児童生徒及びその保護者への情報の提供に関して、学校の設置者または学校は、いじめを受けた児童生徒及びその保護者に対して必要な情報を適切に提供する責任を有することを踏まえ、調査により明らかになった事実関係について説明することについて記載をしております。
加えて、文科省において、現在、いじめ防止対策推進法や基本方針を踏まえ、平成二十三年に策定した子供の自殺が起きたときの背景調査の指針について、情報の取り扱いの観点も含め、見直しを検討しているところでもございます。
文科省としても、引き続き、いじめ問題への対応に的確に対応できるように取り組んでまいりたいと思いますし、教育委員会制度の改革だけで御指摘のようにいじめがなくなるということではないわけでありまして、このようなトータル的な対応をすることによって、隠蔽体質を払拭しながら、しっかりとした対応ができるように、トータル的に取り組んでまいりたいと思います。
○宮本委員 中身が大事なんです、今おっしゃったように。見直すという答弁は昨年の予算委員会でも大臣からいただきましたけれども、見直したんですか、アンケートのやり方について。
○前川政府参考人 現在、子供の自殺が起きたときの背景調査の指針につきましては見直しを行っている最中でございます。
○宮本委員 いつまで見直しているのかと言わざるを得ないと思うんです。
子供をいじめ自殺で失った別の御遺族は、今、国会で審議されている教育委員会制度改革では現場の問題が改善されることはないでしょう。この組織改革は自殺への迅速な対応を狙いとしていますが、いじめ問題に対する学校が本来行うべき迅速な対応とは、初動調査とその情報の共有、親の知る権利の確立です。誰も責任をとらないという責任の問題ではないのです。こう述べた上で、先ほどのその御遺族は、この改革によって、亡くなった天国の子供たちの命が教育の政治介入を許すきっかけに利用されることは、私は一人の遺族として耐えがたく、冒涜とさえ感じていますと述べておられます。
行うべきは、首長の権限強化ではなく、教育委員会がその本来の役割を発揮できるようにする改革だということを申し上げて、私の質問を終わります。