186-衆-文部科学委員会-16号 平成26年05月09日
平成二十六年五月九日(金曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 小渕 優子君
理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君
理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君
理事 義家 弘介君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 稲津 久君
青山 周平君 池田 佳隆君
石川 昭政君 小此木八郎君
神山 佐市君 菅野さちこ君
木内 均君 黄川田仁志君
工藤 彰三君 熊田 裕通君
小林 茂樹君 桜井 宏君
新開 裕司君 冨岡 勉君
永岡 桂子君 野中 厚君
馳 浩君 比嘉奈津美君
宮内 秀樹君 宮川 典子君
宮崎 謙介君 菊田真紀子君
細野 豪志君 吉田 泉君
遠藤 敬君 椎木 保君
田沼 隆志君 三宅 博君
中野 洋昌君 柏倉 祐司君
井出 庸生君 宮本 岳志君
青木 愛君 吉川 元君
…………………………………
議員 吉田 泉君
議員 笠 浩史君
議員 鈴木 望君
議員 中田 宏君
文部科学大臣 下村 博文君
文部科学副大臣 西川 京子君
文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
政府参考人
(外務省アジア大洋州局長) 伊原 純一君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 前川 喜平君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 鈴木 俊彦君
文部科学委員会専門員 久留 正敏君
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委員の異動
五月九日
辞任 補欠選任
神山 佐市君 石川 昭政君
宮川 典子君 宮崎 謙介君
三宅 博君 田沼 隆志君
同日
辞任 補欠選任
石川 昭政君 神山 佐市君
宮崎 謙介君 黄川田仁志君
田沼 隆志君 三宅 博君
同日
辞任 補欠選任
黄川田仁志君 宮川 典子君
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五月九日
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(第七八八号)は「三日月大造君紹介」を「泉健太君紹介」に訂正された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)
地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(笠浩史君外三名提出、衆法第一六号)
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○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
今回の教育委員会制度の改変は、政治的多数の圧力で教育内容がゆがむのではないか、とりわけ、近現代史の侵略と植民地支配について基本的事実を知り、平和と民主主義を築く上でも大切な歴史教育の分野で深刻な問題がもたらされないか、多くの国民が心配をいたしております。この問題について引き続き質問をしたいと思うんです。
先般、村山談話が閣議決定されているにもかかわらず、事実誤認の答弁があり、大臣が訂正をされました。
村山談話では、「戦後五十周年の節目に当たり、われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないこと」と述べております。
これは局長に聞きますけれども、村山談話はその来し方の歴史の教訓についてどのように述べておりますか。
○前川政府参考人 ただいま先生が読み上げられました部分に引き続きまして、次のように述べられております。
わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。
以上でございます。
○宮本委員 植民地支配と侵略によってアジアの人々に多大な損害と苦痛を与えたことは疑うべくもない歴史の事実だと述べております。そしてそれを、教育を通じて若い世代に語り伝えていかなければならないと思うんです。
昭和五十七年の歴史教科書についての官房長官談話では、学校教育、教科書の検定についてどのように述べておりますか、局長。
○前川政府参考人 昭和五十七年八月二十六日に発表されました宮沢官房長官談話における御指摘の部分は、次のとおりでございます。
日韓共同コミュニケ、日中共同声明の精神は我が国の学校教育、教科書の検定にあたっても、当然、尊重されるべきものであるが、今日、韓国、中国等より、こうした点に関する我が国教科書の記述について批判が寄せられている。我が国としては、アジアの近隣諸国との友好、親善を進める上でこれらの批判に十分に耳を傾け、政府の責任において是正する。
以上でございます。
○宮本委員 この宮沢官房長官談話を受けて、検定基準にいわゆる近隣諸国条項というものが盛り込まれました。この宮沢談話は今日否定をされているか、また、近隣諸国条項は今も生きていると思うんですが、局長の答弁を求めます。
○前川政府参考人 この宮沢官房長官談話を受けまして、教科用図書検定調査審議会での審議を経まして、昭和五十七年の十一月に教科書検定基準を改正いたしまして、いわゆる近隣諸国条項を追加したところでございます。その後、この近隣諸国条項は現在まで改正されていないところでございます。
また、宮沢官房長官談話の発表以降、同談話を否定するようなものは出されていません。
○宮本委員 そこで、自民党内で結成された日本の前途と歴史教育を考える議員の会という議員連盟がございます。安倍首相も下村大臣も属しておられました。このいわゆる教科書議連は、南京虐殺、日本軍慰安婦など、旧日本軍の犯罪的な行為を否定する活動を行ってまいりました。
この議連は南京虐殺についてどう言っているか。平成十九年六月十九日に公表された、議連の南京問題小委員会の調査検証の総括というものを見ますと、「南京攻略戦が通常の戦場以上でも以下でもないとの判断をするに至った。」とまとめてあります。この立場は現在なお変わっておりません。
当時議連の事務局長であった西川京子副大臣は、昨年四月の予算委員会で、この南京の問題は通常の戦闘行為でも戦闘以下でもなかった、南京事件を教科書に掲載していることは看過できないと述べられました。
これも文科省に聞くんですけれども、いわゆる南京事件は、通常の戦闘行為しかなかったという結論は正しいのか、検定ではどのようになっているか、お答えいただけますか。
○前川政府参考人 教科書検定につきましては、教科用図書検定調査審議会におきまして、検定時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして審議を行っております。
南京事件に関しましては、事件の実否については、事件自体はあったとするのが通説であると承知しております。また、平成十八年六月に閣議決定された質問主意書の答弁書におきまして、「千九百三十七年の旧日本軍による南京入城後、非戦闘員の殺害又は略奪行為等があったことは否定できないと考えている。」としており、こうした考え方も踏まえた上で検定を行っております。
また、教科書検定制度のもとでは、学習指導要領等の範囲内で具体的にどのような事項を取り上げ、それをどのように記述するかは教科書発行者に委ねられており、南京事件についても同様の考え方でございます。
○宮本委員 現に、ことしの小学校の教科書検定では、南京事件を伝聞扱いした記述が、検定で、市民の殺害があったとして、伝聞扱いをわざわざ修正させているわけです。
改めて、外務省、きょう来ていただきました。アジア大洋州局長に確認しますが、外務省のホームページの「歴史問題Q&A」では、南京大虐殺についてどう述べておりますか。
○伊原政府参考人 今お尋ねの件について、外務省のホームページにおける記載内容は以下のとおりでございます。
問い「「南京大虐殺」に対して、日本政府はどのように考えていますか。」答え「日本政府としては、日本軍の南京入城後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています。」「しかしながら、被害者の具体的な人数については諸説あり、政府としてどれが正しい数かを認定することは困難であると考えています。」「日本は、過去の一時期、植民地支配と侵略により、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたことを率直に認識し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを常に心に刻みつつ、戦争を二度と繰り返さず、平和国家としての道を歩んでいく決意です。」
以上でございます。
○宮本委員 大臣、今まさか閣内不統一ということはないと思うので、これが政府の公式見解ということでよろしいですね。大臣。
○下村国務大臣 もちろんそのとおりであります。
○宮本委員 東京裁判で裁かれた旧日本軍の唯一の人道に反する罪が南京事件であります。多くの調査が積み上げられ、裁かれてまいりました。戦争中は、日本国民は報道管制で知らされておりませんでしたが、事件発生とともに世界じゅうが知り、その非道さに国際問題となった事件であります。外務省、軍部中枢は、事件発生を知り、皇軍の一大汚点と事態の打開を図ろうとしたほどでありました。
日本軍による南京占領のとき南京城内にいたニューヨーク・タイムズ紙のダーディン記者は、南京陥落の四日後には記事を送り、十二月十八日付の同紙には、南京における大虐殺行為と蛮行によって、日本軍は南京の中国人及び外国人から尊敬と信頼を受ける乏しい機会を失ってしまったと掲載をされております。翌年一月九日号の見出しは、南京侵略軍、二万人を処刑、日本軍による集団虐殺、一般市民を含め死者三万三千となっております。虐殺は三月初旬まで続き、その数二十万人とも言われております。
次に、教科書議連は、同じように、日本軍慰安婦についてどう主張しているか。
この議連は、二〇〇七年六月二十六日、米国下院での慰安婦謝罪要求決議案の委員会可決を受けて、決議案への反論を米国下院に送付いたしました。
さきの西川議員の質問では、日本軍慰安婦のことを「いわば単なる売春行為である、」と断定し、「教科書にそういう問題を、まだ明らかに、政治的にも歴史学的にも決着もしていない問題を載せる、こういう問題、非常に問題だと思います。」と述べました。
これも局長に確認いたしますが、文科省は、日本軍慰安婦は単なる売春行為で、教科書に載せることは許されないという立場でありますか。
○前川政府参考人 平成十八年十月に閣議決定されました質問主意書の答弁書では、「いわゆる従軍慰安婦の問題についての政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話を受け継いでいる。」としており、これは、平成二十五年五月に閣議決定された質問主意書の答弁書でも同様の認識でございます。教科書検定におきましても、こうした考え方も踏まえた上で行っているところでございます。
また、教科書検定制度のもとでは、学習指導要領等の範囲内で具体的にどのような事項を取り上げそれをどのように記述するかは教科書発行者に委ねられており、慰安婦についても同様の考え方でございます。
○宮本委員 大臣が先日、教科書検定に当たっては、河野談話を継承するという慰安婦問題についての政府の基本的立場を踏まえて実施すると答弁された、その河野談話は一体何を認定しているか。
一つ、「長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在した」こと。二つ、「慰安所は、当時の軍当局の要請により設営された」こと。三つ、「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあった」ことが認められたこと。四つ、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」こと。五つ、「戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」ということを認定しております。こういう中身なんです。
文部科学省に聞くんですけれども、この河野談話は、日本軍慰安婦問題について、歴史研究、歴史教育について一体どのように述べておりますか。
○前川政府参考人 御指摘の談話におきましては、「われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。」と述べられております。
○宮本委員 大臣、この談話を継承するというのが政府の基本的立場であれば、到底単なる売春行為という主張を認めるわけにいかないと私は思いますけれども、大臣、いかがですか。
○下村国務大臣 文部科学大臣として、政府の見解を継承いたします。
○宮本委員 今局長が述べた中身も含めて、河野談話をきちっと継承するということでよろしいですね。
○下村国務大臣 文部科学大臣として、政府の統一見解を継承いたします。
○宮本委員 ところが、そのことに正面から反対している歴史教科書の執筆者がおります。育鵬社歴史教科書編集会議の座長で、教科書の筆頭執筆者でもある伊藤隆氏であります。日本教育再生機構の雑誌「教育再生」昨年五月号を見ますと、日本教育再生機構の八木理事長と対談をして、次のように述べております。
「南京事件はもう教科書で教えない方がいいですね。安倍首相の国会答弁のとおり「教育基本法が生かされていない」と見るべきです。」「慰安婦の強制連行を」高校教科書検定に「パスさせて、教育基本法に「一致」というのも、もう通りませんよ。」八木氏もこれに意気投合しております。
要するに、南京事件を教えることも高校教科書で日本軍慰安婦を教えることも改正教育基本法に違反しているからやめるべきだ、こう述べておられるわけですね。
そこで、文部科学省に確認しますけれども、南京事件や日本軍慰安婦を現在のような形で教科書に記述することは、伊藤氏の言うとおり、教育基本法が生かされていない、教育基本法に一致しない、こういうことになるんですか。
○前川政府参考人 現行の教科書は、従前の教科書検定基準に基づいて検定されたものでございますが、教科書検定基準におきましては、本年一月の改正が行われる前から、教育基本法に定める教育の目的や目標との一致を求める規定がなされているところでございます。
具体的には、第一章の「総則」において、教育基本法に示す教育の目標等を達成するため、これらの目標に基づき、検定基準による審査を行うことを定め、教育基本法第二条の「教育の目標」を全文掲げております。また、第二章の「各教科共通の条件」におきまして、教育基本法第一条の「教育の目的」及び同法第二条に掲げる「教育の目標」に一致していることを「基本的条件」として定めております。
○宮本委員 したがって、現在使用されている教科書は、教育基本法が生かされていないとか教育基本法に一致しないというふうなことはないということでよろしいですね。
○前川政府参考人 教育基本法に定める教育の目的や目標との一致を求める規定のある検定基準に基づいて検定されているということでございます。
○宮本委員 改正教育基本法に照らして検定基準にも合致したものが検定合格させられている、当然のことだと思うんですけれども、そういうことが確認されました。
ここに、育鵬社教科書の採択を主張する教科書改善の会のパンフレット、「きちんと選ぼう! 子供の教科書 中学歴史・公民教科書採択にむけて」というパンフレットがあります。
ここでは、ほとんどの歴史教科書は読むと日本の歴史が嫌になりますと言い、それは、ほとんどの教科書は改正された教育基本法の趣旨を反映しているとは思えない内容になっているからだと批判をしております。その一方、改正教育基本法に最もかなっていると評価されている教科書があるんだ、それが育鵬社から出ている教科書だ、そうここには書いてあります。
文部科学省に聞きますけれども、中学歴史教科書の検定は、教育基本法、とりわけ教育の目的、第一条及び第二条と無関係に行ったことはございますか。
○前川政府参考人 現在使われている歴史教科書は、教育基本法第一条の「教育の目的」及び同法第二条に掲げる「教育の目標」に一致していることを定める教科書検定基準に基づき、教科書検定審議会による専門的、学術的な審査を経て検定合格したものでございます。
○宮本委員 改正教育基本法の趣旨にのっとってこれは検定合格したものだということが確認をされました。したがって、今ある教科書は教育基本法に合致していないとするこの改善の会の主張は成り立たないことが明らかになったと思います。
ところが、この誤った主張をしている政治家がおります。それが大臣、あなたですよ。
あなたはウイルの四月号で、これは大臣としてですよ、大臣になる前でもなければ何でもないですよ、大臣として、「第一次安倍内閣ではこの教育基本法を改正して「日本の伝統と文化を尊重」「愛国心や郷土愛」など、日本の素晴らしさを子供たちに教えられるよう新たに教育の目標を盛り込みました。 ところが、採択された教科書の記述を見ると、改正した教育基本法に則った記述にはなっていない。」と述べておられます。
文部科学省は、教育基本法に合致している、反映していると今答弁ありましたね。あなたが大臣として教育基本法にのっとった記述として認めて合格させた教科書が、なぜわずか一年後には、あれは教育基本法にのっとった記述になっていない、こんな話になるのか。少なくともこのような発言は撤回すべきではありませんか、大臣。
○下村国務大臣 それだけ関心があるということで、宮本委員も、中学校、高等学校の歴史教科書、公民教科書を、学校の教科書ですね、お読みになったのではないかというふうに思います。
私は、どこの教科書ということではありませんが、やはり一般的に言って、日本の教科書については、一言で言えば光と影が歴史にあるとしたら、影の部分のみが強調され過ぎているのではないかと思うところがあるわけでございまして、もちろんそれは否定するつもりはありません。それはそれで謙虚に受けとめなければならない部分があると思いますが、一方で、光の部分、子供たちがそれを読んで、自分たちの歴史に対して、自分たちの祖先に対して誇りと自信を持てるようなそういう記述もやはり入れるべきだというふうに私は思っておりまして、現行の教科書が教科書検定を通っているわけですからこれは教育基本法の趣旨にはのっとっていますけれども、しかし十分ではないというふうに思っているところがあるわけでありまして、それで教科書改革実行プランを発表したところでございます。
さらに、そういう趣旨にのっとって、新しい教育基本法にのっとって、より子供たちが自信と誇りも持てるようなそういう教科書記述については、さらに教科書会社が工夫をしていただければというふうに思っております。
○宮本委員 大臣は答弁でよく光と影というふうにおっしゃるわけですけれども、結局、教科書議連の主張を見ても、南京事件も日本軍慰安婦も、影自体がうそだ、こういう事実はないんだと主張しているわけです。本当にそういう話は通らないし、やはり影は影としてきちんと、事実は事実として学んでこそ、日本の国に対する真の誇りも生まれてくると言わなければなりません。
それで、この前も教育勅語をめぐって、至極真っ当なことが書いてあるとあなたがおっしゃったことに対して、全部が真っ当ということになるじゃないかと言ったら、真っ当なことも書いてあると言いかえられて、それならば、少なくともそれは訂正すべきだと私は申し上げたところでありますけれども、今回のこの発言も、今あなたに確認すれば、のっとっていない、つまり外れているとは言っていないんだ、しかし、本当にその趣旨が反映されていないという程度の問題のような答弁をされました。しかし、はっきり、あなたの発言は、「則った記述にはなっていない。」こう述べているわけですから、そうしたら教育基本法にのっとっていないのかという話になるわけですよ、この場合でも。
これは余りにも不正確で、もし本意が今答弁されたようなことにあるのであれば、この記述は訂正すべきじゃないですか。いかがですか。
○下村国務大臣 新しい教育基本法にのっとった十分な記述、具体的にどこがどう記述されていないというような個々の指摘をするつもりは全くありませんが、全体を通じて光と影の部分についての光の部分が足らないのではないか、そういう認識を持っているということであります。
○宮本委員 「改正した教育基本法に則った記述にはなっていない。」というあなたのウイルでの発言と、改正した教育基本法に合致しているとしてあなた自身が検定合格させた事実とは、残念ながら相入れないわけですよ。のっとっていなければ検定合格させてはならないし、合格しているんですから、これはのっとっているんですよ。少なくともどちらかが間違っていなければ、この話は通りようがないんです。
では、端的に逆のことを聞きましょう。
教育基本法にのっとった記述になっている歴史教科書、これはあるとお考えですか。
○下村国務大臣 先ほどから申し上げていますように、今の検定教科書は、いずれも検定教科書ですから、全部のっとっています。
○宮本委員 だったら、それこそウイルの発言を訂正しなきゃ。いずれものっとっていると言うんだったら、のっとっていないと書いているようなものは撤回しなければ話が通らないんです。余りにもそれはひどい答弁ですよ。
私は、あなたの政治家としての本音ははっきりしていると思います。
二〇一一年五月十日、教科書改善シンポジウムというものに、かつてあなたも安倍総理も、これは大臣になる前ですけれども出席をされました。
安倍総理はそのとき何と言ったか。「新しい教育基本法の趣旨を最もふまえた教科書は育鵬社であると私は確信している」「六〇%のシェアを超える東京書籍は、とても教育基本法の趣旨を踏まえた教科書とはいえない。」
あなたはどうか。「党を挙げて健全な教科書採択のために尽力する。」
みんな一致して、改正教育基本法に沿った教科書は育鵬社しかない、こういう発言をこの場でやっているわけですね。その後大臣になったから、そんなことは言わないと言うのかもしれないけれども。
結局、あなたの改正教育基本法にのっとった教科書という主張は、我々が平和の道を歩むために長く記憶にとどめるべき南京事件、慰安婦などの歴史を改正教育基本法に基づいて書くべきではないとする育鵬社歴史教科書座長の伊藤隆氏などの主張を、客観的には応援することになっているんじゃないですか、大臣。どうですか。客観的にはそうじゃないですか。
○下村国務大臣 それは宮本委員が判断されることでありまして、私は、別に直接伊藤さんの発言を応援したり支援をするということを大臣として表明したことは今まで一度もありません。
○宮本委員 では、聞きましょう。
日本軍慰安婦について、先ほど文科省からは政府の立場である河野談話について紹介がありました。「歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。」そして、そういう歴史教育を進めるという決意ですね。
この前も一度聞きましたが、大臣からは明確な御答弁がありませんでした。大臣として、旧日本軍による慰安婦問題の過ちを長く記憶にとどめるために歴史教育でどのような対応を講じるつもりか、お答えいただきたいと思います。
○下村国務大臣 平成五年八月四日の内閣官房長官談話の趣旨は、慰安婦問題を長く記憶にとどめ、繰り返さないという決意を表明したものであるが、特に具体的な研究や教育を念頭に置いたものではないというふうに承知をしております。
なお、学校においては、学習指導要領に基づき、児童生徒の発達段階を踏まえ歴史教育を行っているところであります。その中で、第二次世界大戦については、例えば、中学校及び高等学校学習指導要領の解説において、「我が国が多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大な損害を与えたこと」や、「大戦が人類全体に惨禍を及ぼしたこと」について記述しており、これを踏まえた指導が行われるべきものと考えております。
○宮本委員 いろいろ言っても、慰安婦一つとってもそうやってまともに向き合おうとしないわけですよ。それはそうだと思います。要するに、愛国心のためには不都合な事実に目をつぶれということなんです、あなたの言いたいことは。
これは大変偏狭な愛国心だと言わなければなりません。それは改正教育基本法の言う愛国心とも全く別物です。もしそんなゆがんだ愛国心を子供、国民に押しつければ、憲法が保障した国民の思想、良心の自由に違反すると言わなければなりません。文科大臣の教科書への圧力は、みずからの偏狭な愛国心を押しつける目的のために政権が教育内容に不当に介入し支配をするという極めて重大なものだと思います。
あなた方の目指すものは、日本の戦争を自存自衛の戦争、アジア解放の戦争と美化する育鵬社教科書の採択をさせることだと私は言わざるを得ないと思うんです。その中心的な執筆者は、自分たちは改正教育基本法に沿っている、南京事件は書かない方がいい、慰安婦も書かない方がいい、こういう誤った主張を行い、その応援団は、南京虐殺などなかった、慰安婦もただの買春と言ってはばからない政治家じゃありませんか。
しかし、歴史を偽れば、そこから生まれる愛国心も偽りですよ。日本の圧倒的多数の教育委員会も、教員や保護者も、そういう歴史を偽る方向にくみしようとはしない。これだけ自民党が力を入れても、育鵬社の採択率はわずか四%にとどまっております。
それを、教育委員会の独立性を奪い、政治に従属させて採択させようというのがあなた方の狙いであります。そのようなたくらみは国民が断じて許さないだろうということを述べて、私の質問を終わります。
以上です。終わります。(下村国務大臣「委員長、委員長」と呼ぶ)終わります。終わります。(発言する者あり)終わります。
○下村国務大臣 それは相当間違った、私的な見解としか思いません。
我々は、事実は事実として、それを隠蔽するつもりは全くありません。今言ったことについては、相当、独断と偏見の見解としか思えないということを申し上げておきます。
○宮本委員 客観的にはそのようになっていると私は申し上げたわけであります。
終わります。