143 – 参 – 日本国有鉄道清算事業団の債務処理及び国有林野事業の改革等に関する特別委員会 – 3号 平成10年10月12日
平成十年十月十二日(月曜日)
午前九時三分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 中曽根弘文君
理 事
加藤 紀文君
鈴木 正孝君
成瀬 守重君
川橋 幸子君
寺崎 昭久君
魚住裕一郎君
宮本 岳志君
委 員
市川 一朗君
岸 宏一君
国井 正幸君
佐藤 昭郎君
斉藤 滋宣君
清水嘉与子君
常田 享詳君
仲道 俊哉君
馳 浩君
依田 智治君
若林 正俊君
郡司 彰君
佐藤 雄平君
谷林 正昭君
藤井 俊男君
山下八洲夫君
和田 洋子君
荒木 清寛君
日笠 勝之君
弘友 和夫君
須藤美也子君
富樫 練三君
渕上 貞雄君
村沢 牧君
戸田 邦司君
渡辺 秀央君
西川きよし君
衆議院議員
修正案提出者 衛藤 晟一君
国務大臣
内閣総理大臣 小渕 恵三君
大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君
農林水産大臣 中川 昭一君
運 輸 大 臣 川崎 二郎君
郵 政 大 臣 野田 聖子君
労 働 大 臣 甘利 明君
政府委員
内閣法制局長官 大森 政輔君
内閣法制局第四
部長 野田 哲也君
大蔵大臣官房審
議官 福田 進君
大蔵大臣官房審
議官 山本 晃君
大蔵省主計局次
長 寺澤 辰麿君
大蔵省理財局長 中川 雅治君
林野庁長官 山本 徹君
運輸省鉄道局長 小幡 政人君
郵政省貯金局長 松井 浩君
労働省労政局長 澤田陽太郎君
事務局側
常任委員会専門
員 小林 正二君
常任委員会専門
員 鈴木 威男君
常任委員会専門
員 舘野 忠男君
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本日の会議に付した案件
○日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関す
る法律案(第百四十二回国会内閣提出、第百四
十三回国会衆議院送付)
○国有林野事業の改革のための特別措置法案(第
百四十二回国会内閣提出、第百四十三回国会衆
議院送付)
○国有林野事業の改革のための関係法律の整備に
関する法律案(第百四十二回国会内閣提出、第
百四十三回国会衆議院送付)
○森林法等の一部を改正する法律案(第百四十二
回国会内閣提出、第百四十三回国会衆議院送付
)
○地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づ
き、東北森林管理局及び関東森林管理局の設置
に関し承認を求めるの件(第百四十二回国会内
閣提出、第百四十三回国会衆議院送付)
○一般会計における債務の承継等に伴い必要な財
源の確保に係る特別措置に関する法律案(第百
四十二回国会内閣提出、第百四十三回国会衆議
院送付)
○参考人の出席要求に関する件
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宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
長期債務問題について質問いたします。
分割・民営化から十一年になりますけれども、旧国鉄長期債務は何ら解決されないまま今こういう大問題になっております。もう一つの問題として放置されてきたのが一千四十七名の解雇問題であります。当事者である旧国鉄職員の生活や家族の苦痛を考えれば、人道上も一刻も早い解決が求められている、こういうふうに私は思います。このことを申し上げて、質問に入ります。
<71兆円もの負担を国民に押しつける>
宮本岳志君 旧国鉄債務二十八兆円の債務処理が大きな課題になっておりますけれども、事はそれだけの問題ではないと思うんです。まず、運輸省と大蔵省にお伺いをいたしますが、これまで十一年間に土地や株の売却等で債務の支払いに充ててきた総額は十四兆四千億と聞いております。今後の年金費用の支払い総額は六・七兆、そして今回免除されます無利子貸付分八・三兆円のこれまでの利子補給分が十二年間で四兆一千七百五十億円、これは事前に聞いたわけですけれども、間違いございませんか。イエス、ノーでお答えください。
国務大臣(川崎二郎君) 収入は十四兆四千億円、これに対して年金を含めた利払い等の支払い額は十五兆八千億円、結果として二十七兆七千億円ということでございます。
政府委員(寺澤辰麿君) 一般会計が昭和六十一年度及び平成九年度に旧国鉄及び国鉄清算事業団から承継いたしました債務に係ります平成十年度までの利払い累計額でございますが、四兆一千七百五十億円でございます。
宮本岳志君 そういたしますと、仮に政府のスキームどおりに事が進んだといたしましても、二十八兆円の債務のほかに既に支払った十四兆四千億、これから毎年四千百億円の利払いを六十年に及んで払い続ける。これは減るというふうに私は思いませんけれども、仮に二分の一にだんだん減っていくと仮定しましても累計で十二・三兆。年金の総支払い額が六・七兆。そして、私はこれは隠された債務だと思うんですけれども、無利子の貸し付け八・三兆円の補給利子分が今お話がありましたように約四兆。しかも、この無利子貸付分八・三兆というのは今回免除するということになっておりますが、国としては利払いは今後とも続いていくわけであります。一般会計から十三年とか六十年というスパンで利払いをするわけですけれども、これも仮に二分の一と見積もっても五・七兆という途方もない額になるわけです。合計すると七十一・一兆、まさに巨額に上るわけであります。
この間、JRの年金負担等をめぐってさまざまな議論が行われてまいりましたが、中心問題はそんなことではないと私は思うんです。この途方もない七十兆を超えるような国民負担、これが本当に今押しつけられるのかどうか、このことが一番の重大問題だと私は思います。国民は今でさえ深刻な不況のもとで生活と営業は大変だと、このときに、少なく見積もっても七十兆円、このような莫大な額のほとんどを国民負担に押しつけていく。これはもう絶対に我が党は許せない、容認できないと考えますが、これを国民に総理は一体どう御説明になるのか、このことについて総理にお答えいただきたいと思います。
国務大臣(宮澤喜一君) 現実にそういう事態になっておるわけでございますから、私としては、やはり我が国がこれから経済成長をしていきまして、多少時間がかかりましてもこういうものの債務を払っていかなければならない、そういうふうに申し上げたいと思います。
宮本岳志君 国民に何も明確な説明ができないというふうに思うんです。国民は納得しないというふうに思います。
大蔵大臣は、元本償還についての本会議での私の質問に対して、「基本的にはお説のとおり」、「今根雪の部分の処理をするだけの財源調達ができないというのが現状でございます。」と、こうお答えになりました。
大蔵大臣、償還の見通しは元本についてはないということですか。
国務大臣(宮澤喜一君) そうではありませんで、借りたものは返さなければなりませんから、財源をどうするかと今言えとおっしゃいましても、ただいまそれを国民負担にするわけにはまいりませんから、やはり六十年という中で払っていかなければならない、そういう意味でございます。
宮本岳志君 結局、歳出歳入の努力以外何もない、抜本的処理というけれども実際は何の見通しもないということだと思います。
結局、この歳出の見直し、歳出の努力というものは社会保障費を初めとする国民生活関連予算を切り詰めていくということにならざるを得ないし、また歳入の努力ということになれば、新たな国民負担、新しい増税ということになるのではないか。
昨年の財政構造改革会議で、今回の政府案のスキームのもとになった案が発表されたときに、新聞各紙はそのことを書きましたよ。例えば朝日新聞は「消費税増に道開く恐れ」と書いておりますし、東京新聞も「消費税増も」とはっきり書いております。これは国民の当然の不安だと思うんです。
総理、そんなことはない、そういうことはやりませんとおっしゃるのなら、今ここで、社会保障費へのしわ寄せばやりません、新たな増税は一切やりませんと約束できますか。総理、御答弁願います。
国務大臣(宮澤喜一君) そういうものでは私はないと思うのでございます。日本経済というのは、今こういう不振にありますけれども、底力を持っておりますから、これから何十年の将来を展望して、こういう債務はいずれにしても国民の御負担で払っていただかなければならないわけです。しかし、これだけの大きな経済がこれだけの債務を国民にそんなに新しい御迷惑をたくさんかけずに払えないか払えるかといえば、その点、日本の国債は私は世界的な信用を持っておると思います。
宮本岳志君 今、国会で大激論になっている例えば金融の問題を見ましても、銀行救済に六十兆とか七十兆という議論になっています。私、先ほど計算しましたが、この旧国鉄債務も、いろいろ債務以外の利払いだとかつけ足せば七十兆というような額になってくる。まさにこういう負担を国民に押しつけるということは絶対に許されない、そういう大問題であるというふうに私は考えます。
<少なすぎたJR本州3社の継承債務>
宮本岳志君 次に、JR負担について質問したいんですが、本会議の時間の関係があるということですので、ここで私の質問をとめたいと思います。
委員長(中曽根弘文君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
午前十一時三十七分休憩
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午後一時開会
委員長(中曽根弘文君) ただいまから日本国有鉄道清算事業団の債務処理及び国有林野事業の改革等に関する特別委員会を再開いたします。
日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律案外五案件を一括して議題とし、休憩前に引き続き質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
宮本岳志君 午前中、私は七十兆円を超える大問題だということも指摘をしたわけですけれども、七十兆円といえば年間の国家予算に匹敵する額ですので、やはりこの問題は、私たちは国民負担を新たに押しつけることなくきちっと解決をしていく、このことが大切だというふうに思うんです。
次に、JR三社の長期債務についての負担を求めるということを私どもの党は求めておりますが、これについて少し考えてみたいと思います。
運輸大臣は、本会議での私の質問に対して、「六十二年改革当時の原則というものは守っていかなければならない」、こうお答えになりました。だから、追加負担は妥当でないということだったと思うんですが、では六十二年改革当時の原則と当時の承継債務決定のルールというのはどのようなものであったのかということです。
JRの債務承継額は国鉄改革法の十三条、それから閣議決定をした基本計画、これに基づいて当初五年間においておおむね営業収入の一%の利益を保証するという計算をやられたと思うんです。一%の経常利益は保証する、それを超えるそれ以外の分はぜひ債務の利子で払ってくれ、その利子に見合った債務を各社が持ってもらうと、こういう議論だったと思います。
だからこそ、赤字の会社には経営安定基金を与えて、こちらもその基金からの受取利子を合わせれば赤字を埋めてちょうどぴったり一%の利益が出る、こういう計算になっていたと思うんですね。
運輸大臣、こういうことですね。いかがですか。
国務大臣(川崎二郎君) 御指摘のように、国鉄改革時におけるJR東日本、東海、西日本、そして貨物、この四社につきましては、各社が最大限の効率的経営を行うということを前提にしながら、当面収支が均衡し、かつ将来にわたる事業等が健全かつ円滑に進められる、一%程度の利益を上げられるということを前提にしながら算出いたしたものでございます。
宮本岳志君 では、例えばJR東日本と東海について、一九八七年度の実際の営業収入と経常利益をそれぞれお答えください。
国務大臣(川崎二郎君) 今、東日本と東海と西日本と貨物のことを申し上げましたので、四社のことをお答えさせていただきたいと思います。
JR東日本は七百六十六億の経常利益、四・八%、JR東海は六百七億の利益、六・九%、JR西日本は八十億の利益、一%、JR貨物は五十九億の利益、三・四%でございます。
宮本岳志君 そうしますと、六十二年の閣議決定のルール、つまり一%の経常利益ということから見て、JR東日本で見ればまさに営業収入が一兆五千六百五十七億円、その一%なら保証すべき経常利益というのは百五十七億円という計算になると思いますが、今お話にあったように五倍ですよ、.四・八%。また、JR東海で言えばその六・九倍、六・九%ということで、大きくずれてきているわけですね。西日本は一%とおっしゃいましたけれども、これは初年度だけの話でして、私はその後もいろいろ見てみましたけれども、その後は何倍にもなってきていますよ。
そこで、私は、このときに債務承継のルール、債務承継額を決定するに当たって運輸省が当時国会に出された「昭和六十二年度以降五か年間の旅客鉄道会社経営見通し」、この表をもとに、この見通しと実際この五年間とがどれくらい食い違ったかということを一つ一つ計算してみました。
つまり、閣議決定で決めたルールに照らして実際はどうなったか、予測に対して、ということをやってみました。一%程度ということですから、これは大体あなた方の見積もりも年度ごとに見てみると一%と決まっていないです、一・九九とか二%とかというところもあります。だから、これは二%で計算をしてみました。一%より高く見積もって計算をしてみました。つまり、実際の営業収入の二%の経常利益を保証するという形でこのルールどおりに債務を分けたら、実際に国鉄改革時に各JR、特に本州三社が承継した債務とどれぐらいの差が出るかということを計算してみましたら、東日本で九千九百十四億円、これは五年間の平均をとってみましたけれども九千九百十四億円、東海では一兆一千七百億円、西日本では三千八百三十九億円、トータルで二兆五千億円も承継すべき債務が少なかった。つまり、予測と実績とを比べたら、一%というルールだったが、二兆五千億円も債務は少なく承継されているということになります。
私たちは決してこの二兆五千億を単純に機械的に今から追加負担せよと言うわけじゃないですよ。しかし、少なくとも当初定めたルールに照らして、二兆五千億円、これは過少であったと。運輸大臣、このことについてはお認めになりますね。
国務大臣(川崎二郎君) バブルの時期に売上高が予想された以上に相当上がったということも事実であります。また一方で、民間経営という手法の中でそれ以上の努力をされたということも事実だろうと。一方、貨物は逆に時代の変化の中で極めて厳しい経営状況になることも事実だろうと。そういったもろもろをあわせながら、国会で御審議いただいて結論が出た、そしてその大原則というものはやはり守り抜かなければならぬだろう、こう思っております。
宮本岳志君 この時期にJR各社が頑張った、特別の努力をしたというお話もありましたが、私はJRの職員の皆さんが頑張ったことを決して否定いたしません。
しかし、この時期は、運輸大臣の御答弁にもありましたように、国内運輸はあらゆる業界であらゆる分野で伸びているわけです。例えばJRは八七年からの五年間に二〇%伸びていますけれども、航空は五〇%、貨物でもトラックは三三%の伸び、内航海運は三〇%です。つまり、この時期はバブルの影響もあって軒並みぐんと伸びた時期だったわけですよ。
だからこそ、運輸省が出している九〇年版運輸白書でも、「ここ数年拡大基調にあった国内運送は、元年度に入っても増加傾向を続け、旅客、貨物ともに大きな伸びとなった。」、こう言っているわけで、全体はそういう伸びをどの分野も示したということですから、特別な努力の結果と言い切れるものでもないだろうと思うんです。
ただ、そうしたら、見積もりが低かったのじゃないか、予測が低過ぎたのではないかというふうに私は思うんです。だから当然、予測と実際との間に開きが出てきているということは運輸省はもうすぐに気づかれているはずですから、毎年毎年のJRの決算が出れば、一%というのを超えているということははっきりしていたと思うんですよ。なぜその時点でこれを見直すということをされなかったのか。ここはいかがですか。
国務大臣(川崎二郎君) 御指摘のように、当時バブル経済の中で大きく需要が伸びて利益が上がっていたことは事実だろうと。しかしながら、国鉄改革を議論していく中で、当初、本当に利益が出るだろうか、こういう御心配もいただきながら一つの結論を得てスタートいたしたわけでありますので、まさに経営努力というものを評価していきたい、こういう目で見させていただいたというふうに解釈をいたしております。
宮本岳志君 閣議決定に照らして、一%というこのルールに照らして少ないという私の指摘、これについては否定はできませんでした。
<追加負担させる努力を政府が怠った>
宮本岳志君 同時に、じゃなぜこれを見直さなかったのかということを私は質問したわけであります。結果論だ、後になってみたらそうなっていたと言うかもしれませんけれども、例えば赤字の会社、先ほど説明しましたように、赤字のところにも経営安定基金を積んで、その受取利子を含めれば一%という計算をされたわけですよ。赤字のところには、その後もくろみが狂って赤字が一層大きくなったらさまざまな支援策を講じておられるじゃないですか。こちらの方は見直してきているじゃないですか。追加支援はやるのに、なぜ予測よりも上回った本州三社に対しては追加負担を求めなかったのか。いかがですか。
国務大臣(川崎二郎君) 追加負担の要求をすべきという御議論だろうと思いますけれども、その当時の国鉄改革を決定された方々、私もその当時当選いたしておりましたけれども、そのときは、本当に民営化をしてうまくいくだろうか、こういう不安の中でのスタートであったと思っております。
結果で経済が伸びたことも事実でありますけれども、順調な経営をされている、お互いに安堵の胸をおろして、よかったなという思いであったというように思っておりますし、正直申し上げて、まだまだJRも長期の負債は抱えたままでございます。そういった意味では、一層の経営努力をしてもらって早く、まさにJRが抱えられた長期債務も何とかお返しいただくように御努力をいただきたい、こういうふうに考えております。
宮本岳志君 予測はあくまで予測なわけですから、当然予測に照らして現実がどう進んでいるかということを見きわめて、それに対してきちっと見直しをするというのは当然の政治責任であると私は思います。
JRの経常利益が予測から大きく離れていることは既に八七年、八八年当時からわかっていたわけですから、これを見直していくと。しかも、このときなら、この当初五年間でなら私は見直せたと思うんですよ。なぜなら、このときにはまだ政府は、国は一〇〇%株主でしょう。だから、本当に国がその気になって話を持ちかければ、これは見直すことはできたんですよ。ところが、そういうこともやってこなかった、知っていたのに正さなかった、やるべきこともやらなかったと。ここに私は政府の政治責任が問われているというふうに思います。
大蔵大臣にお伺いしたいんですが、元本償還の財源もなかなかないという御答弁もありました。そして、当時この一%というルールを決めた閣議決定に大蔵大臣として参加された大臣ですから、ひとついかがですか。
国務大臣(宮澤喜一君) 今そうおっしゃれば何とも申し上げようがありませんが、先ほど運輸大臣の言っておられたとおり、実際、新幹線というのはどういうことになるか、それはかなり当初はいろいろに考えられたものでございますから、成功してよろしゅうございましたが、当時としては、まあそこらあたりがというのがあれでありたんではないかと思います。
宮本岳志君 全然私の聞いた趣旨と違うんですよ。この当初の予測から大きく離れている、そしてそれを見直してもこなかったということについていかがですかと。責任は感じないのかということを。
国務大臣(宮澤喜一君) それは早く気がついてそうしたらよかったろうとおっしゃればどうも何ともお答えのしようもないわけですが、まあまあ順調にいってよかったと思っております。
宮本岳志君 まさに順調でないから、今こうして国民の負担の方は七十兆円になろうとしているわけです。
JRはそういう形で、過少な債務で結局見直しもされずにやってきた。そして、今ここに残った二十八兆円と、そして利子も加えれば七十兆というのがまさに国民負担にかけられようとしているわけですから、私は本当に政府の責任、政治の責任が問われているというふうに思います。最後に、総理、いかがですか。
国務大臣(小渕恵三君) 大蔵大臣並びに運輸大臣が御答弁申し上げましたように、当時として、JR発足以来、民営化の努力を継続してまいりまして、その時点におきましては一%の負担ということで精いっぱいということだったんだろうと思います。以降、JRも努力されまして、数字的にはあるいは御負担できる数字だったかもしれませんけれども、各般の情勢を考えれば、政府として最初にお約束した数字でJRの協力を求めていくというのが当時としては至当であったんだろうと思います。
宮本岳志君 私ども日本共産党は、JRが今もうかっているからとれ、こういうことを言っているわけじゃないんです。政府が閣議で決めた当初のルールに照らしても債務は過少だったのではないか、そのことを本当にお認めになるならば、国民にすべて押しつけるというんじゃなくて、きちっとこの長期債務についてもJRに応分の負担を求めるべきである、このことを主張しているわけです。違いがわかった時点で見直すのは当然だったし、今からでもこれは求めるべきであるというふうに思います。しかも、JRが不当に優遇されてきたのは十一年前の債務承継時だけではないんです。
<「重要な経営資産」の所有地を売却>
宮本岳志君 JRの土地売却について次にお伺いをいたします。
総理は、本会議での私の質問に対して、「JR各社の所有する土地は重要な経営資産」だと、こうお答えになりました。では、旧国鉄用地をどういう考え方に基づいてJRと清算事業団に区分けしたのか。これはまさに運輸大臣のおっしゃる六十二年改革当時の原則を確認しておきたいと思うんです。
そもそも十一年前の分割・民営化時、債務処理の国民負担をできるだけ少なくしよう、軽くしよう、そのためには旧国鉄の用地はできるだけ売ってお金にかえて、この債務をできるだけ減らして国民負担を減らそうではないかと。そのために、JRには鉄道事業に必要最小限の不可欠な土地だけを承継させましょうと。そして、それ以外の土地は全部事業団に受け継いで、清算事業団がこれを売って債務を減らしていく一これがこの当時の議論だったというふうに思うんですが、運輸大臣、これも間違いないですね。
国務大臣(川崎二郎君) 御指摘のとおりでございます。
国鉄改革時における旧国鉄用地に係る清算事業団とJR各社の承継については、JR各社には原則として鉄道事業を適切かつ円滑に運営する上で最小限度必要となる用地及び関連事業用地のうち駅ビル敷地等関連会社に現に使用させているものを承継させ、それ以外の用地、これはJR総研等に係る用地を除いてでございますけれども、清算事業団に承継させることといたしております。
宮本岳志君 ところが、JRはその土地を売却しているんです。本会議でも質問いたしましたように、面積で東京ドームの一千三百倍、六千百万平方メートル、金額で一千七百億近い売却を行っています。
JR西日本について、幾つか事実を運輸大臣に確認しておきたいと思うんです。
第一に、平成九年三月二十四日、尼崎駅構内の用地を尼崎市、同土地開発公社に売却したときの簿価と時価ですが、これは簿価が百二十五万五千円の土地を売却額二十六億六千六百万。次に、平成九年六月十六日、神戸の鷹取工場用地を神戸市に売却した。これは簿価が六千四百五十七万円を売却額五十六億三千万円。第三に、平成八年十二月十日、明石駅構内の用地を明石市に売却した。これは簿価が五十八万円、それを売却額十三億九千百万円。
西日本のこの九三年以降の土地売却ですけれども、六件、九万五千平米、簿価で四徳一千万のところを売却額が二百十三億一千二百万、こういうふうにお伺いしておりますが、これは間違いないですか。
国務大臣(川崎二郎君) 三点ほど申し上げます。一つは、尼崎駅構内、面積一万二千平米、譲渡価格が二十六億七千万円、簿価が百三十万円です。明石駅構内、面積二千平米、譲渡価格が十三億九千万円、簿価が六十万円でございます。鷹取工場用地、これは神戸市に売却でございますけれども、面積四万平米、譲渡価格が五十六億三千万円、簿価が六千五百万円でございます。
ただし、この三件とも土地収用対象事業として地方自治体に協力したものであり、鷹取は、今細かい数字を持っておりませんけれども、現実、工場用地を売り払いましたので、他の工場用地を取得いたしているところでございます。
二百四十億円程度と聞かせていただいております。
宮本岳志君 まさに今確認させていただいたように、尼崎や明石駅では簿価の二千倍という値段で売却をしております。また、鷹取工場も五十六億円という差額がJRにもたらされているわけであります。
本会議で私がこれを質問いたしましたら、先ほども御答弁になったように、土地収用法ということもおっしゃって、好んで売却したものではないと御答弁になりましたね。こんなほろもうけ、二千倍なんというもうけなんですから、これは本当に好んでやっているに決まっていると私は思いますが。
<JR自身が土地売却を経営戦略に>
宮本岳志君 同時に、じゃ自治体の要請があったということについてもどうなのかということをお伺いしたいと思うんです。例えば、このJR用地を使ってJRの会社自身が土地の活用でもうけるんだという方針を持っているわけですよ。
私、実はきょうこのJR東日本の平成九年度事業計画というのを持ってまいりました。この中にはこう書いてありますよ。「駅・駅周辺等の経営資源を有効活用した新規の事業開発、」その中には都市計画事業への積極的な参画、この都市計画事業への積極的な参画というのは、まさに区画整理事業等々、この間大臣が土地収用法に基づくというふうに答弁されているものでしょう。つまり、嫌々そういうものにとられているというんじゃなくて、みずから積極的に参画すると言っているじゃありませんか。まさにこういう土地売却によってぼろもうけをしている。
どうですか、運輸大臣、お答えください。
国務大臣(川崎二郎君) その部分は私も承知いたしておりませんけれども、町全体の活性化、駅周辺の活性化、その中で市とJR等が話し合いになり、何も土地をどんどん売りたいという話ではなかろう、地域全体の活性化の中でお考えいただいたものだろうと考えております。
宮本岳志君 それは確かに自治体の方から要請があったかもしれません。しかし、要請があって決して嫌々無理やりということではなくて、みずから積極的に加わって、本来売るべきものでなかった、売却するべき目的で受け継いだものではないJRみずからの用地をこうして簿価の二千倍あるいは何百億というもうけのために使っている、ここが本当に大問題だというふうに私は思うんです。
総理、本当に少しでもこの国民負担を減らそうと、私も七十兆ということも言いましたよ。しかし、本当に御負担というものを減らそうというふうにお考えになるんだったら、鉄道事業に必要最小限だどいうことでこの土地は簿価でJRに受け継がせたわけですから、売却ができる、つまり自治体の要請があったとしても、もう手放していいということになったら鉄道事業に必要不可欠でなくなったわけですから、その場合には、当然この土地の売却代金というか売却額というものはやはりきちっと長期債務の返済のために活用する。つまり、一度清算事業団に戻させて、そして清算事業団が売却をして長期債務の返済に充てる、これが当然の道筋だと思うんです。
総理が本会議で「JR各社の所有する土地は重要な経営資産」だというふうにおっしゃいましたけれども、これは決して売り飛ばすという意味での経営資産じゃないんでしょう。やっぱりそうやってきちっと土地の問題もやるべきだと思うんですが、いかがですか。
国務大臣(小渕恵三君) 私、JR各社の社長に成りかわって答弁する立場でございませんが、JRとしては、そうした土地その他の資産を通じまして、民営化した意義によりまして結果的には利用者に還元をしていくという立場でそうした土地利用というものも考えておるのではないかと。したがって、JRがただみずからの会社の利益を増そうということでなくして、その結果は結局国民の足、こうしたものに対して会社、企業として経営の安定化をさせる意味がありましてそうした活用をしておるのではないかというふうに思っております。
また、先ほど来いろいろ出ました土地につきましては、先ほど運輸大臣が御答弁いたしましたように、それぞれの自治体その他からの御要請も受けて、JRとして社会的、公共的責任においてそ
うした土地についても地域社会に貢献していこうという趣旨で処分をしておるのではないか、私はこう考えております。
宮本岳志君 私は、六十二年改革当時の原則に立っても、やはりJRの承継債務は少な過ぎた、そしてその後も土地売却その他で大もうけをしてきた。そういうことをしっかりと見るならば、六十二年改革当時の原則を守るからこそJRに長期債務の応分の追加負担を求めるべきである、このことを強く主張して、私の質問を終わります。(拍手)