151 – 参 – 総務委員会 – 11号 平成13年05月31日
平成十三年五月三十一日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
五月二十九日
辞任 補欠選任
内藤 正光君 菅川 健二君
五月三十日
辞任 補欠選任
常田 享詳君 若林 正俊君
中島 啓雄君 世耕 弘成君
弘友 和夫君 白浜 一良君
五月三十一日
辞任 補欠選任
若林 正俊君 佐藤 昭郎君
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出席者は左のとおり。
委員長 溝手 顕正君
理 事
入澤 肇君
岩城 光英君
海老原義彦君
浅尾慶一郎君
宮本 岳志君
委 員
景山俊太郎君
鎌田 要人君
久世 公堯君
佐藤 昭郎君
世耕 弘成君
輿石 東君
菅川 健二君
高嶋 良充君
白浜 一良君
鶴岡 洋君
富樫 練三君
八田ひろ子君
高橋 令則君
国務大臣
総務大臣 片山虎之助君
副大臣
総務副大臣 小坂 憲次君
事務局側
常任委員会専門
員 入内島 修君
政府参考人
内閣官房内閣参
事官 壷井 俊博君
総務省自治財政
局長 香山 充弘君
総務省情報通信
政策局長 鍋倉 真一君
総務省総合通信
基盤局長 金澤 薫君
総務省郵政企画
管理局長 松井 浩君
総務省政策統括
官 高原 耕三君
国土交通大臣官
房審議官 野見山恵弘君
国土交通省道路
局長 大石 久和君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○通信・放送融合技術の開発の促進に関する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
○電気通信基盤充実臨時措置法の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
○電波法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
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宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
まず、基盤法について一つお伺いをいたします。
既に衆議院の委員会審議の中で我が党の矢島議員が明らかにしましたように、これまで本法案に基づいて整備されてきた加入者系の光ファイバー網の敷設が、実際には一握りの大口ユーザーにしか利用できないものになってきたのではないかと。総務省はこれからは一般にも利用が広がると答弁されましたけれども、年々多額の資金をつぎ込んできて、少なくともこれまでの時点でいえば潤ったのは電気通信事業者自身とビッグユーザーになっているという事実は動かせないのではないかと思うんです。
そこで、総合通信基盤局にお伺いいたしますけれども、九五年度から九九年度までの五年間に、NTT及びNCC、ケーブルテレビ事業者に融資した額の実績と事業者ごとの内訳、利子補給を行った総額と事業者ごとの内訳は、それぞれ幾らになっておりますか。
政府参考人(金澤薫君) お尋ねの、一九九五年度から一九九九年度までの間に加入者系光ファイバー網を整備する民間事業者に対しましてそれぞれ、例えばNTTでございますけれども九百二十四億円、NCC、トータルでございますが八百九億円、ケーブルテレビ事業者約十七億円、合計千七百五十一億円の超低利融資を実施しているところでございます。いわゆるNTT―C’というものでございます。
また、この融資に対しまして、通信・放送機構からそれぞれ、これは一種の利子補給をやっているわけでございますけれども、NTT約十二億円、NCC約九億円、ケーブルテレビ事業者約千七百万円、合計約二十一億円という利子助成を実施しているところでございます。
宮本岳志君 前回の法改正のときに、当初五年間の融資額は八百億円程度と、これは答弁であります。今お聞きしたのは千七百五十億ということですから、倍以上に膨らんだということになるんですね。しかも、受け取ったのはNTTを初めとする大企業が圧倒的であるということになっております。
それで、衆議院での質疑との重複を避けるために、少し角度を変えてきょうはお伺いをしたいと思います。
きょう議題となっている二法案、これは一昨日に審議された通信役務利用放送法案と同様に、政府のe―Japan戦略の中に位置づけられているものだと思うんですね。これらの法案は、つまり政府のe―Japan重点計画、この推進に必要だということでお出しになっているか、総務大臣にひとつまず基本的なところを。
国務大臣(片山虎之助君) e―Japan重点計画がまとまりましたのは三月末でございまして、そのe―Japan戦略は一月の終わり、それはその前の十二月末のIT国家戦略の提言に基づいたものですね。
そういう一連の中で、この二法につきましては、特にアクションプラン、重点計画に基づいていいますと、世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成において必要だと。この法案及び法案に基づく施策として、融合サービス開発促進の研究開発が必要だと、これ、書いております。
それから、もう一つの電気通信基盤充実臨時措置法の一部改正法案につきましても、同じ計画の世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成と教育及び学習の振興並びに人材の育成というところの施策としまして、加入者系光ファイバー網等の整備支援、専門業務の知識及び技能の拡充のための研修の実施が計画上記載されておりますから、それに基づいて出したところでございまして、e―Japanアクションプランの実現のためにはこの両案ともぜひ必要だと、こういうふうに考えております。
宮本岳志君 昨年、IT基本法の質疑に立たせていただきました。私は、今の政府のIT戦略がやみくもに世界最高水準を目指すインフラ整備にばかり目を奪われたものになっているのではないかと。真に国民に役立つものになっていないのではないかと。国民の福祉の増進や民主主義の発展のためにITをどう役立てていくのかということをしっかり考えなければIT化の促進にならないという指摘をいたしました。
このIT基本法に沿って今国会に出されている二法案ですので、あれから半年たって、政府がIT基本法の路線でやっていることが本当に世界最高水準のIT化をもたらすものになっているかということを改めて議論してみたいというふうに思うんです。
宮本岳志君 まず、内閣官房IT室にお伺いいたします。
今年度の当初予算のうち、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関するものとして政府が整理しているものの総額と、金額の多いものから順に分類ごとの額はそれぞれ幾らになっておりますか。
政府参考人(壷井俊博君) 平成十三年度予算におきます高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する予算の総額について申し上げます。約一兆九千二百四億円でございます。
分類ごとの額についてのお尋ねでございますが、金額の大きいものから順に申し上げます。
行政の情報化につきまして約九千二百六十九億円でございます。公共分野における情報通信技術の活用につきましては約三千七百五十四億円でございます。世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成の促進、これにつきましては約二千三百九十四億円でございます。その他に分類されるものが約一千四百二十二億円、さらに研究開発の推進につきましては約一千百六十四億円、教育及び学習の振興並びに人材の育成に分類されますものが約八百七十五億円、国際的な協調及び貢献に関するものが約百四十四億円、高度情報通信ネットワークの安全性の確保等に関するものが約百四十億円、電子商取引等の促進に関するものが約四十二億円となっております。
宮本岳志君 行政の情報化というのと公共分野における情報通信技術の活用と、これで約三分の二を占めておるわけです。
九千億円を超える行政の情報化のうち、約半分が総務省の予算で占められております。旧郵政省は旧通産省と並んで電子政府の推進の先頭に立ってきた役所ですから、もっともな数字にも見えるわけですけれども、それで、今答弁された行政の情報化、このうち総務省の分の総額と、そのうちで郵政三事業の特別会計の占める額はそれぞれ幾らになるか、郵政企画管理局長、お答えいただけますか。
政府参考人(松井浩君) お答え申し上げます。
高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する平成十三年度予算のうち行政の情報化に分類されております総務省分の総額が五千四十八億円でございます。そのうち郵政事業特別会計分は四千八百三億円でございます。
宮本岳志君 九五%が特別会計分なんですね。
ここに私、三月二日のIT戦略本部に提出された詳しい資料の写しを持ってまいりました。中身を詳しく拾ってみますと、行政の情報化として位置づけられているものは、額の多い順に言いますと、為替貯金業務の総合機械化二千六百四十三億円、法務総合情報ネットワークシステム七百六十八億円、国税総合管理システム五百六十二億円、防衛庁事務の情報化百九十一億円などが挙がっております。
郵政事業特会の例えばATMの購入費やその保守費用は、総務省、今の額の中に含まれておりますか。
政府参考人(松井浩君) 御指摘の郵貯のATMの購入費、保守費用でございますが、行政の情報化の総務省分に含まれております。
宮本岳志君 ATMの購入費や保守費も含まれているわけですね。
もちろん、郵貯の会計の範囲内で窓口に最新鋭の機械を入れていくのは当然であり結構なことであります。しかし、今やATMを持たない金融機関などほとんどないわけですから、それを高度情報云々という名前の予算額中に入れてあるというのでは、まあ水増しというふうに言われても仕方がないのではないかと私は思うんですね。
また、郵貯ATMの保守費用については、旧郵政省官僚の天下り先との関係で費用が水増しされているのではないかと、かつて私は質問で取り上げたこともございます。そんな水増しされた分までこの高度情報通信ネットワーク社会の形成のためにという額に入っている可能性があるとすれば重大なわけです。
結局、行政機関自体の情報化、近代化ということはあるにしても、これは日本の社会全体のIT化が大いに進むというふうに直ちに考えがたいわけです。つまり、二兆円近いIT予算といっても、その半分は役所が自分で使っているだけの話ではないかと、まずここを感じるわけです。
宮本岳志君 では、そうでない予算で次、どのようなものがあるかを見てみたいと思います。
金額で三番目、二千百八十八億の予算を使う世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成の促進というものがございます。この二千百八十八億円の省庁別の内訳はどのようになっておりますか。
政府参考人(壷井俊博君) 平成十三年度政府予算におきます高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する予算のうち、世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成の促進に関するものの内訳を申し上げます。金額の多い省から申し上げます。
国土交通省約二千百四億円、総務省約百四十一億円、文部科学省約九十一億円、農林水産省約五十二億円、防衛庁約三億円、一千万円単位のところを省略させていただきましたが、でありまして、総額は約二千三百九十四億円ほどになっております。
以上でございます。
宮本岳志君 二千三百億ほどのうちの二千百九億と、ほとんどが国土交通省なんですね。国土交通省設置法というのを改めて私読ませていただきました。この高度情報通信ネットワークの形成などというものは、任務にも所掌事務にも一切ないわけです。結局、国土交通省とその次に農水省というような形で名前が出てくるということは、世界最高水準の高度情報ネットワークの形成という看板はあるにしても、やっている実態は従来型の公共事業ではないのかという指摘が出てくるのも当然だと思うんです。
それで、国土交通省にきょうは来ていただいておりますので、お伺いをしたい。
国土交通省の今年度予算のうち、光ファイバー収容空間等整備関連ということで四項目の施策があると思います。それぞれの種類と金額をお答えください。
政府参考人(野見山恵弘君) 国土交通省でございます。
道路、河川、港湾につきまして、管理用の光ファイバー及びその収容空間の整備につきまして、平成十三年度国費内示ベースで道路で一千七百八十八億円、河川で六十六億五千万円、港湾で十七億五千万円を充てることとしております。また、下水道につきましては、管理用光ファイバー網の整備につきまして二百三十五億円を充てることといたしております。
以上でございます。
宮本岳志君 要するに、この二千百九億のうちの一千八百億というのは、ほとんど丸ごとがこの光ファイバー収容空間のための予算ということで組まれているわけです。
このうち最も金額の多い情報ボックス関連の資料を受け取っておりますが、この情報ボックスというのは通信用ケーブルを入れるための土管のようなものであります。これを国道の地下に埋め込んで、回線の敷設を希望する事業者のために開放するというものになっております。要するに、この四事業の予算は、この土木工事、土管を通すための工事であって、建設費であって、研究開発はもちろん光ファイバーなどの通信設備に使われていないということなんですか、国土交通省。
政府参考人(野見山恵弘君) 委員御案内のとおりのことかと思いますが、光ファイバー収容空間ネットワークの整備、開放につきましては、道路、河川、港湾などの公共施設管理用の光ファイバー及び収容空間を整備いたしまして、その収容空間を施設管理に支障のない範囲で民間の通信事業者の方々に低コストで提供するものでございます。
したがいまして、これらの事業には、光ファイバー収容空間を道路地下などに整備する土木工事費、それに加えまして公共施設管理に必要な情報を収受いたしますモニターテレビ、各種センサー、光ファイバーあるいは光端局装置などの通信機器、情報の処理、提供を行う演算装置、情報表示装置などの設置工事も含まれております。
宮本岳志君 ちょっと確認しておきたいんですが、ということは、つまりこの情報ボックスというものは道路の管理のために、道路のためにつくっているんであって、たまたまそこを民間の事業者が使いたいと言えば使わせてあげてもいいけれども、何も民間事業者のためにボックスをつくっているわけじゃない、道路をつくっているんだと、そういうことですか。
政府参考人(大石久和君) 道路の地下に設置いたしております情報ボックスにつきましては、道路の管理用の光ファイバーを収容する空間として整備いたしておるものでございます。
宮本岳志君 これはIT基本法の審議でも問題になったんですね。我が党の松本善明議員の質問に、当時の堺屋IT担当長官は、「この関係の予算全体から見ますとそれは余り大きな部分ではございませんで、」などと答弁したわけですけれども、今見たとおり大半はやっぱりこの情報ボックスの予算に使われているんですよ。これはどうなっているかと。
きょうは、実は資料三に事前に道路局からいただいた地図をつけておきました。昨年末の時点で整備された情報ボックスの総延長、そのうちで民間の三者以上が利用している部分の延長、二者及び一者がそれぞれ利用している部分の延長はどれだけか、これを国土交通省の方からお答えいただけますか。
政府参考人(大石久和君) 情報ボックスにつきましては、平成八年度より、先ほど申し上げましたように道路管理用の光ファイバーを敷設する空間として整備を進めてまいりましたが、平成十二年度末までの、本年三月でございますが、国土縦貫系がほぼ完成いたします一万五千九百キロが整備されております。この中で、道路管理者が現在使用している情報ボックスの空き空間につきましては、IT革命を支える面的な情報ネットワーク構築の観点から民間の電気通信事業者等へ開放しているところでございます。
この入溝の延長でございますが、平成十二年十二月まで延べ二千二百キロメートルの民間の光ファイバーが入溝いたしております。このうち、民間三者以上が利用しております情報ボックスの延長は約二百五十キロメートル、二者が利用いたしておりますものも約二百五十キロメートル、一者が利用いたしておりますものが約五百八十キロメートルでございます。
宮本岳志君 その一万五千九百キロのうち二千二百キロと、一四%ぐらい埋まっていると聞こえるんですけれども、私、この三つを足してみたんです。五百八十キロ、二百五十キロ、二百五十キロと足しても千キロぐらいにしかならないんですけれども、これはなぜ計算合わないんですか。
政府参考人(大石久和君) 民間の光ファイバーの利用状況の内訳を見てまいりますと、それぞれ情報ボックスの延長は一者、二者、三者につきまして先ほど申し上げたとおりでございますが、二者が入溝いたしております情報ボックスは延長二百五十キロメートルでございますが、民間の光ファイバー延長といたしましては五百キロメートル、それから三者以上が利用していただいております情報ボックスの延長は先ほど申し上げましたように二百五十キロメートルでございますが、民間の光ファイバー延長としては一千百二十キロになってございまして、延べまして二千二百キロメートルが使われているということでございます。
宮本岳志君 じゃ、この割る方の分母は一回で割って、そしてその分子の方は二者の場合は二倍にしたり、三者の場合は三倍にしたと。これはちょっと、一四%というのはまゆつばものになってくると思うんです。これを三者で考えて、最低三倍と考えても四%ぐらいにしかならなくなってくると思うんです。
それで、なぜこんなことになるかと。それは、この事業が本当にITの推進のために何が必要かという話から始まったことじゃないからですよ。おっしゃるとおり、道路をつくると、道路管理用の実はボックスをつくっておられるんです。たまたまそこに民間の要望があればどうぞということになっているから、結局は、たまたま使われるところは使われるが使われないところは使われない、こうなっているわけです。それが日本地図でどうなっているかを、今、三の資料につけてあります。
それで、実際の利用状況を見ますと、なぜ東京―大阪のような長距離がないかと、こう聞きますと、そのような基幹回線を入れるほどの大きな管ではないという答えでもございました。しかし、それならなぜ国道なのかということになるんですね。国道というのは主要な都市間を結んでいるものなんです。整備の概要を見ても、おおむね道路をつくっている人間の発想で線を結んでいっております。例外は、稚内のあたりにあったりとか襟裳岬のあたりにあったり、こんな細切れの線をこんなところへつくるこの神経というのも私よくわからないんですけれども。それが、たまたま事業者が使うということになったら使わせてあげると。これではやっぱり利用率が上がらないのは当然だと思うんです。
宮本岳志君 昨年八月三十一日付の朝日新聞は、社説で「概算要求 ITなら何でもありか」というタイトルをつけました。この中で、IT基本法について、IT名目の公共事業にお墨つきを与えるのでは困ると指摘して、むだな公共事業の二の舞への警鐘を鳴らしております。
これは、総務大臣、こういう議論をやった上でお聞きしたいんですよ。まず、インフラ整備ありきで公共事業を進めるのではなくて、やっぱり国民の役に立つサービスがどのように供給されるのか、それに行政がどのようにかかわるのかを考えて、その上でインフラが不足するのであればそのインフラの整備も行うというのが本来の行政のあり方ではないかと私は思うんですけれども、大臣、いかがお考えですか。
国務大臣(片山虎之助君) これは考え方でいろいろなあれがあると思いますけれども、基本的には、委員が言うように、できたインフラは活用されなきゃいけません。ある程度私はインフラというのは先行的な整備もやむを得ないと思いますけれども、それが余り時間的なあれがあってはいけませんね。そういう意味で、インフラが先行するのはやむを得ないけれども、やっぱりその活用方策もしっかりとそれについていく、こういうことが必要じゃなかろうかと思います。
道路の関係は、相当私考えて国土交通省もやっていると思いますけれども、この活用については今後ともよく両者で検討してまいりたい、こう思っております。
宮本岳志君 じゃ、そんなにインフラが足りないのかということを見てみたい。もちろん足りない部分もあると思います。しかし、全体をもっと冷静に見て戦略を立てる必要があると思うんです。
通信インフラについて、マスコミでも最近重要な指摘がされております。ことし一月十四日付毎日の社説は「光ファイバー すでに大量に余っている」というタイトルなんです。これを読むと、東京―大阪間のピーク時の通信量は、電話とインターネットそれぞれ十ギガbps、ビット・パー・セカンドずつですね。これは最新の技術を使えばたった一本の光ファイバーで十分賄える通信量だと。にもかかわらず、光ファイバーがNTTだけでこの区間に四百本以上、KDDIや日本テレコムもそれぞれ数十本の光ファイバーを持っていると。
この記事では波長分割多重技術について説明、紹介されております。総務省では承知しておると思うんですけれども、どのような技術か御説明いただけますか。
政府参考人(鍋倉真一君) 波長分割多重、WDMの技術でございますが、これは一本の光ファイバーに波長の異なる複数の光信号を同時に伝送するという技術でございまして、この技術を用いますと、従来の光ファイバーの通信容量を飛躍的に高めることが可能である、そういう技術でございます。
宮本岳志君 先ほどの毎日の社説では、これによって一本の光ファイバー当たり八十ギガbpsの送信ができるようになると書いてあります。この技術自体が日進月歩でありまして、文献によっては百ギガという送信技術を紹介しているものもあるわけなんです。
それで一昨年、九九年の日経ビジネスの一月二十五日号を見てみますと、この技術で世界の最高水準にあるのはNTTだと書かれてあります。そして、しかし意外なことにまだ自社網への波長分割多重の採用実績はないと。理由は、既設の光ファイバーの通信容量に余裕があるからだが、ここへ来て同社もようやく導入に向けた動きを見せ始めたと。要するに回線そのものが余りぎみだということを率直に書いてあります。
この先ほどの技術の導入には光ファイバーの両端に置く装置は新たな高度なものを入れる必要があるんですけれども、光ファイバーそのものは既に敷設してあるものに手を加えず、そのまま使えるということですね。よろしいですね、技術的な問題。
政府参考人(鍋倉真一君) そのとおりです。
宮本岳志君 つまり、少なくとも主要都市間の回線については今新たな回線の敷設が求められている状況ではないんです。既に敷設されている回線の周辺装置の高度化で十分対応できる。だから、日経コミュニケーションの九九年六月七日付では、当時のDDIの常務が、日本国内の幹線光ファイバーは余っている、こう率直に語っております。
単に今、光ファイバー回線が余っているというだけじゃないんです。このように技術的な前提というものが絶えず変わっていくし、一方で国民のニーズというものも複雑に変化する。だから、日本型の公共事業のように硬直したインフラ整備に突き進むのではなくて、現実をよく見きわめて柔軟な対応をすることが求められております。
宮本岳志君 そこで、総務省自身が進めているIT関連事業についてお伺いしたい。
総務省が昨年暮れにつくった予算案の説明資料の中に、IT革命の推進という表題で四つの重点事業が並んでおります。この四つの事業の名称と予算額を金額の多い順に言っていただけますか。
政府参考人(鍋倉真一君) 四つ大きいものから順に申し上げます。
情報通信基盤の整備としまして二百五十一億円、デジタルデバイドの解消としまして百七億円、それから戦略的研究開発の充実強化としまして七十九億一千五百万円、情報セキュリティー対策の推進としまして三十億九千五百万円となっております。
宮本岳志君 最も多いのが情報通信基盤の整備なんですね。四つ合わせて四百七十億ですから、二百五十億といえば半分以上が基盤整備に充てられていることになるんです。この中にはいわゆるアナ・アナ変換費用や研究開発費なども含まれておりますので、全部が公共事業というわけではないんですけれども、インフラがやはり重視されているというのは否めない事実だと思うんですね。
そして、今年度の旧郵政省関係部局の予算案で話題を呼んだのは、この分野の事業の一つが初めて公共事業と位置づけられることになったということですね。地域イントラネット基盤整備事業、これについて九九年度、昨年度及び今年度の当初予算額は幾らか。また、昨年度は当初予算に計上されていた額に上乗せして公共事業予備費とさらに補正予算でもこの事業に執行されたと思うが、その額は幾らになっておりますか。
政府参考人(高原耕三君) 地域イントラネット基盤施設整備事業でございますが、一九九九年度の当初予算は九千万円、それから二〇〇〇年度、平成十二年度ですが、それの当初予算は三億二千万円、二〇〇一年度、平成十三年度の当初予算は二十一億円でございます。
それから、十二年度の本事業における当初予算以外の予算として、公共事業等予備費で五億円、それから補正予算が百五十四億円措置されたところでございます。
宮本岳志君 まず、本予算も極めて急激な伸びです。特に今年度は公共事業という名前がついて、途端に昨年の六倍以上ということになっておりますけれども、驚くべきは、昨年に至っては本予算三億に対して予備費と補正で百六十億、五十倍以上になっているということなんですね。この昨年度の当初予算三億円というのは、百六十億円必要だったにもかかわらず不当に低い、不適切な予算だったということなんですか。いかがですか。
政府参考人(高原耕三君) 地域情報化については、非常に元来から地方自治体等で要望が強うございました。その金額が、当初予算と今、先生御指摘のように補正等でどういうふうにどのくらい要望が変わったかということまで具体的な数値は今手元にはございませんけれども、いずれにいたしましても、この地域イントラネット事業そのものが平成十年度の補正から始まっておりますけれども、当初から地方自治体で強い要望があったものでございます。
宮本岳志君 では、百六十億円で適切な額だとお考えなんですか。
政府参考人(高原耕三君) 正直に申し上げますと、百六十億円でもまだ積み残しがございます案件がございます。
宮本岳志君 これは言い逃れできないというか、非常に矛盾した話だと思うんですね。三億円が適切であったとすれば百六十億円はいかにも多いし、百六十億円が適切だとすればむしろことし二十一億円がいかにも少ないということになりはしませんか。
政府参考人(高原耕三君) 先生御承知のように、全体の予算の枠というのがございますので、非常に強い要望があっても絶対額としてはその都度、その年度年度でいろんな金額になってまいるという実態でございます。
宮本岳志君 結局、さしたるポリシーというかビジョンが感じられないですね。適当に三億であったり百六十億であったり二十一億でもいけると。
私は、先日、この地域イントラネットの実際の姿を見に行ってまいりました。山梨県の都留市に行ってきたんです。私、これを見て非常にいいなというふうに率直に思いました。この町では、新たにつくった情報未来館というところを拠点に子供たちの情報リテラシーの向上とかリーダーの育成に取り組んでおります。ここでは、地域から募ったボランティアの方々に指導に当たってもらっておりまして、参加した子供たちの中からまた新たなリーダーが育っていくというふうになっている。その姿を本当にこの目でしっかりと見せていただきました。だから、この事業が問題だということをきょうは議論したいんじゃないんです。都留市のやつは大変勉強になりました。
そこで、お伺いしたいのは、もし光ファイバーの敷設はせずにこのような活動拠点づくりとそこでの教育活動だけに絞った事業をどこかの自治体が企画した場合、地域イントラネットの事業として採択されるのか、これを一つお答えいただけますか。
政府参考人(高原耕三君) 地域イントラネット施設整備事業は、地方公共団体等が行う地域でLAN等の施設の整備に対する支援措置でございます。したがって、その啓蒙普及の拠点づくりとかそこで教育活動を行うだけということで、この拠点間がネットワークで結ばれていないという場合には本事業の対象とはなりません。
宮本岳志君 例えば、メタルケーブルとかそれからブロードバンドでないような非高速の回線で結んだ場合でも、じゃこれは採択されるんですか。いかがですか。
政府参考人(高原耕三君) 地域イントラは、光ファイバー以外でも、伝送路等、公共施設を結ぶ、ネットワーク化するときに使う場合は地域イントラネット事業となります。
宮本岳志君 私は、改めてこれを詳しく知りたいと思って、その申請の基準というか交付要綱というやつをいただいたんですね。なるほど、おっしゃるとおり地域LANをつくらなければならない、こうなっております。
ただ、総務省もおっしゃるとおり自治体の人気が高い、あちらもこちらも申請してくる、去年は百六十億もあったと。ことしは二十一億なんですね。やっぱり額に限りがあるわけです。光ファイバーを引きますよというところとそうでないところが出てくれば、当然光ファイバーの敷設と組み合わせた事業の方が優先されるというのは、これはもう常識的な話だと思います。こういう形で、私はやっぱりどうも光ファイバーまずありきという形になっているのではないかと思うんですね。
きょうは、都留市でもらってきたこの地域イントラネットの資料も資料の四に皆さんにおつけしてあります。このぐるっと円形に各センターや小学校を結んでいるのはこれは百メガという光ファイバーケーブルなんですよ、このぐるっと円形に結んでいるのは。しかし、この地域イントラネットはインターネットとどこでつながっているかと、都留文科大学一カ所なんです。ちゃんと書いてあると思います、一・五メガbpsと。外とは一・五メガでしか結ばれていないんですが、中はこれは百メガで結ばれているわけですね。
外と一・五メガですからタイトでないですかと、例えばさっき申し上げたような公衆の場でインターネットにたくさんのコンピューターが同時にアクセスする、そういうときに何か不都合ないですかと言ったら、いやいや別にどうという不都合ないですよというお話でありました。そうなると、果たしてこのイントラネットを百メガという光ファイバーでつくらなければならないのだろうかと。ほかのところはもっと大きな回線でやっているところもあると聞きました。まだこれ百メガというのは控え目な方で、もっとすごい回線を使っているところもいっぱいありますということで聞きましたよ。
私、やっぱり一つ一つの事業が本当に必要なもの、必要でないものというのを見きわめる必要があると思いますし、この事業は私むだだとは言いませんよ、先ほど申し上げたように非常によく頑張っていただいている面があります。ただ、枠ができちゃっているわけですよ、この採択の基準というのが。そして、そういうものを利用した方がとりやすくなるようになっているから、どうしてもこの総務省が示している枠に合わせていく形で、やっぱりこの光ファイバー一辺倒といいますか優先という形になるわけなんですね。
宮本岳志君 それで、私、こういう事業をやった財政的な状況も現地で聞いてまいりました。驚いたのは、この事業で地元の都留市も山梨県も自前の財源はほとんど使っていないというふうに説明を受けたことです。これは地方債の起債のシステムに理由があると思うんですけれども、このような補助事業を自治体が政府の経済対策として行った場合の取り扱いについて、ひとつ総務省自治財政局からどのような財政措置になっているか。
政府参考人(香山充弘君) 御指摘の都留市の事業の場合は、国の補正予算あるいは公共事業予備費で措置されたものでございます。
この補正予算それから公共事業予備費等に係る地方負担というものは、地方財政計画上は財源が確保されておりませんので、年度中途で特に必要になってくるということでございますので、その財源は、いわゆる我々は補正予算債と呼んでおりますが、全額地方債を許可し、その元利償還費は後年度交付税に算入するという形で財源措置をするという仕組みをとっております。都留市の場合もそのような措置を講じておりますし、この地域イントラネット基盤整備事業以外のすべての補正予算で追加されたもの、公共事業予備費に係るものにつきましても同様の財源措置を講じております。
宮本岳志君 これも説明資料を役所からいただいたのを六の資料につけておきましたけれども、こんなことは地方自治の専門家の先生方はもう御承知のとおりだと思うんですけれども、要するに自治体は腹は痛まないということになっているんですね。しかし、これは政府がやらせたい事業を細かに決めて、そのとおりやるならば全額出すけれども、別のこととしてやるなら自腹でということになるんです。そして、当初予算の五十倍もの枠が地方自治体からの申請で埋まっていく。結局、こういう形で誘導されていっているわけなんですね。
これは、繰り返して言いますが、都留の事業がむだだと言っているんじゃないですよ。もちろん、交付税措置をやめろとか交付税を減らせなんということを言うつもりも毛頭ありません。しかし、やり方が硬直的ではないかということを言いたいんですよ。こういうやり方が、結局、地方分権に逆行する結果になるんじゃないかと。大体、その自治体にとって本当にその事業が必要かどうかを考えずに、ただならば乗っていくということを生むような可能性も否定できないと思います。
きのうも、総務大臣、予算委員会で今の地方の自治体の事業にむだがないとは言えないと、モラルハザードということもあるだろうということも口にされておりましたね。大臣、こういう点でもっと正すべき点があると、それはそう思われませんか。
国務大臣(片山虎之助君) この都留市の例は私よくわかりませんが、委員もこれは大変よくやっていると、こういう御評価ですから、ありがとうございます。
このイントラネットは大変喜ばれておりまして、ただ私も、予算のつけ方が当初と補正と物すごく額が違いますので、そこはどういうことなのかということを聞きました。これは、学校にインターネット利用を促進しようということとタイアップで地域イントラネットを大いに伸ばそうという事情も一つあったようでございますので、その点はぜひ御理解を賜りたいと思います。
一般的な補助事業のあり方については、私は、奨励的な補助はできるだけ縮減していって、一般財源に、できれば地方税に変えていくべきだという論者でございますから今後とも進めていきますし、また補助事業のあり方についてもできるだけ地方の自主性に即したように、細かい注文は中央から出さないように、こういうことを心がけていきたいと思います。
宮本岳志君 時間が参りました。
昨年、鳴り物入りでIT基本法というのをつくりましたけれども、世界最高水準などと威勢はいいけれども、政府が実際にやっていることは従来とほとんど変わっていないのではないかということを私はきょう指摘したわけです。この発想を抜本的に変えることなくIT関連だというのをにしきの御旗に新しい法律をつくってみても、決して国民の願いにこたえる真の高度情報通信化の役には立たない、このことを厳しく指摘して、私の質問を終わります。