153 – 参 – 総務委員会 – 7号 平成13年11月20日
平成十三年十一月二十日(火曜日)
午後一時開会
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委員の異動
十一月十六日
辞任 補欠選任
大江 康弘君 渡辺 秀央君
十一月十九日
辞任 補欠選任
渡辺 秀央君 大江 康弘君
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出席者は左のとおり。
委員長 田村 公平君
理 事
景山俊太郎君
世耕 弘成君
谷川 秀善君
浅尾慶一郎君
伊藤 基隆君
委 員
岩城 光英君
小野 清子君
狩野 安君
久世 公堯君
沓掛 哲男君
日出 英輔君
森元 恒雄君
山内 俊夫君
高嶋 良充君
高橋 千秋君
内藤 正光君
松井 孝治君
魚住裕一郎君
木庭健太郎君
八田ひろ子君
宮本 岳志君
又市 征治君
大江 康弘君
松岡滿壽男君
国務大臣
総務大臣 片山虎之助君
副大臣
総務副大臣 遠藤 和良君
政府特別補佐人
人事院総裁 中島 忠能君
事務局側
常任委員会専門
員 入内島 修君
政府参考人
行政改革推進事
務局長 西村 正紀君
人事院事務総局
勤務条件局長 大村 厚至君
総務省人事・恩
給局長 大坪 正彦君
総務省自治行政
局公務員部長 板倉 敏和君
郵政事業庁長官 足立盛二郎君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正
する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正
する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出
、衆議院送付)
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<能力等級別の人員枠は「勤務条件」>
宮本岳志君 提案されております給与法の改定によって、例えば三十代から四十代の係長で一万数千円の年収減になります。これは、生活改善を求める公務員労働者の声を裏切るというだけでなく、実は国民的な問題だと思うんです。
今日の深刻な不況の原因が個人消費が弱含んでいることにあると、これは十一月の政府の月例経済報告でも明確に述べております。一般的に、賃金の引き下げは家計所得の低下を生み、個人消費をさらに冷え込ませる結果になることは言うまでもありません。
そこで人事院の総裁にお伺いいたしますけれども、今回の給与改定で直接影響を受けるのは何人ぐらいおられるのでしょうか。
政府特別補佐人(中島忠能君) 私たち、国家公務員四十九万人を対象に勧告をいたしておりますが、私たちの勧告というのは、地方公務員あるいは特別職の公務員、また特殊法人の職員とか福祉法人で働いている方とか商工会議所とか農協で働いている職員にも影響します。そういうのを全部合わせますと、私たちが二、三年前に調べたところではおおむね七百五十万人というふうに思います。
宮本岳志君 七百五十万人というのは、雇用者全体の大体一四%なんですね。間接に影響を受ける年金、恩給の受給者まで含めると、さらに膨大な国民の所得に影響が出ます。これは、弱含んでいる個人消費を一層冷え込ませる結果になると考えます。そういう点では、国民経済的な観点からも私たちは賛成できないと思うんです。このことを明確にした上で、私、公務員制度改革について質問したいと思います。
片山総務大臣は、去る十一月の六日、衆議院の総務委員会で我が党の春名議員に、労働基本権と代償機能はパラレルな話であり、代償機能を弱めるならば基本権を回復していく必要がある旨の答弁をされました。これは歴史的な経緯からいっても当然の認識だと思います。しかし、同時に人事院の代償機能のこの中身が大事だというふうに思っております。
人事院は、年一度、官民較差を埋めるために俸給表を何%引き上げるといった給与勧告を国会及び内閣に行っておりますけれども、これだけでは実際の職員の給与、処遇は決まらないわけです。民間では、全体水準を労使で決めた後、具体的な配分についてもさらに労使交渉で決めており、労働組合からの交渉の申し入れに対して使用者側が拒否すれば不当労働行為になるという性格のものであります。
公務員についてのこのような具体的な昇給、昇格など給与制度の運用基準については、今まで人事院が人事院規則などによって労使交渉にかわるものとして定めてきたかと思うんですけれども、このような機能も労働基本権制約の代償機能ではないのかということ、仮にこのような基準を各省庁がみずから定めることになると問題が起こるのではないかということ、これを人事院にひとつお伺いしたいと思います。
政府特別補佐人(中島忠能君) かなり突っ込んだ御質問で、ちょっと驚いて聞いておりましたけれども、代償機能というふうによく言いますけれども、実際は給与勧告だけで代償機能が果たされているものじゃないと。給与勧告で決まるのは給与水準が決まる、決まった給与水準をどのように各労働者に配分するかというのがその次の問題で、そのときに昇格基準とかあるいはボーナスの査定基準とかそういう話になってくる。そういうものをトータルに合わせて代償機能だということだと理解していただきたいと思います。
したがいまして、今お尋ねのありました件については、勤務条件だというふうにお答え申し上げておきます。
宮本岳志君 つまり、人事院が果たしている代償機能というのは、単に官民較差が何%で何円なのかを決めるにとどまらず、それを職員にどう配分するかについても職員の声を反映するという役割を担っておるわけです。民間では、賃金配分に直結する事項は労使の交渉事項であり、労使協定でこれを定めております。公務員から協約の締結権を奪っている以上、これも人事院の代償機能の重要な中身なんです。
現在、級別定数というのは、級ごとの職員数を省庁ごとに人事院が人員枠として定めております。ところが、行革推進本部の議論では、現在人事院が級別定数を定めているのを廃止して、新たに設けられる能力等級を基準として職務を分類、整理し、各等級ごとの人員枠を設けるとされております。
そこで、これも人事院に確認するんですが、この級別定数というのは勤務条件に当たるのか、お伺いしたいんですが、いかがですか。
政府特別補佐人(中島忠能君) 勤務条件ですね。
宮本岳志君 勤務条件の基準を一方的に使用者が決めるのは問題だと、そして級別定数というのは明確に勤務条件だと、これが人事院の答弁でありますから、今検討されている新たな人事制度が公務員の労働基本権の再検討と無関係に進められないものであることが改めて具体的な問題で明白になったと思うんです。
今の人事院総裁の答弁を踏まえるならば、人員枠の設定を人事院の代償機能から各省庁に移すとすれば、それとパラレルな問題、つまり労働基本権の問題が、団体交渉権の問題が起こってくる、これはもう当然の理だと思います。
<労働基本権との関係を大臣も認める>
宮本岳志君 そこで、大臣にお伺いをするんです。大臣が繰り返しお認めになっております労働基本権と代償機能とのパラレルな関係ということの中身として、人員枠の設定について、これまでどおり人事院の代償機能でいくのか、それとも、それを外すのなら団体交渉権を完全に認めるか、この二者択一、パラレルな問題がここには横たわっていると、こういう問題があるということはお認めになりますね、大臣。
国務大臣(片山虎之助君) 代償機能というのは、勤務条件は本来労と使で決めるべきだけれども、公務員という特殊なあれだから、かわりに中立公正、第三者的な権威のある機関をつくってそこで勧告をして、勤務条件等についてそれをできるだけ尊重していくと、これが大まかに言うと代償機能ですよね。ただ、バリエーションは委員、いろいろある、バリエーション。
そこで、今の制度は一つの代償機能としてセットされておりますけれども、この例えば人事院の機能を強くするか弱くするかに見合って、それは労働基本権の方をどう考えていくかということのいろんなあれがあるので、等級別定数なんというのは勤務条件といえば勤務条件でしょうけれども、勤務条件以外の要素もあるんですよ。だから、その辺どういうふうに、というのは等級が給与につながっているからですよ。配分の問題でもあるからですよ。
だから、その辺はいろんな議論があるところで、私は今、公務員制度改革の事務局が、行革事務局がどういう案を検討しているか詳細は知りませんけれども、全体の案を見て、どういうセットというのか、バランスのとれた仕組みを考えているかということによると、こういうふうに思いますが、現在の制度なら人事院総裁の言われたことはそのとおりだと思っております。
宮本岳志君 じゃ、少なくともこの問題が代償機能にかかわる問題を含んでいるということはお認めになりますね。
国務大臣(片山虎之助君) 一〇〇%とは思いませんけれども、相当部分は含んでおります。
宮本岳志君 大臣自身が労働基本権と代償機能はパラレルだと、そうおっしゃっている以上、この十二月に発表すると言われている大綱の内容も、やはりこういう検討抜きにはできないと私どもは思っております。
今検討されている新しい人事制度なるものは、人事院から級別定数の決定権を奪うものであり、その代償機能を崩す以上、公務員の労働基本権問題の再検討抜きに進められないものであることは明白です。これをあいまいにしたまま大綱を発表する、こういうことは絶対許されないということを指摘いたしまして、私の質問を終わります。
(公務員給与改正二法案への討論)
<給与勧告が750万人以上に影響>
宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、議題となっている二法案について、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案には反対、特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案には賛成の立場で討論を行うものです。
一般職の職員の給与に関する法律案に反対する理由の第一は、暮らしの改善を求める公務員労働者の願いに逆行するものだからであります。本法律案によって、一般職の、例えば二十五歳独身の係員では年間の給与が六千円の減少、四十歳有配偶で子二人の係長では一万六千円の年収減をもたらすものであり、認めるわけにはいきません。
反対理由の第二は、今日の深刻な不況に一層の悪影響を及ぼすものだからであります。国家公務員の賃金水準の引き下げは、本日の審議でも人事院自身が直接影響を受けると認めた七百五十万人ばかりか、間接に影響を受ける年金や恩給の受給者等も含めて所得を抑えることにつながるものです。これは、多くの国民の暮らしにマイナスの影響を及ぼすばかりでなく、これらの人々の消費を抑制することで個人消費の低迷を長引かせ、不況を悪化させるものであります。
第三には、人事院の本来の役割から見て、賃金引き下げの給与勧告には問題があるからです。憲法には労働基本権の明文の規定があるにもかかわらず、現在、国家公務員法第九十八条により公務員の争議行為等は禁止されています。人事院による勧告制度は、そのことの代償として位置づけられているものであり、待遇の改善ではなく引き下げが勧告されるならば、国家公務員法第九十八条の合憲性の根拠が失われることにもなります。このような問題を含んだ勧告を機械的に実施する法的措置には賛成できません。
なお、特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案は、この一般職職員への措置と横並びになるものではありますが、賃金引き下げの部分はこの法案自体には含まれておりません。法案の内容は、秘書官に対して一般職職員と同様の特例一時金を支給するものです。秘書官は、給与水準等も一般職職員の水準であり、特例一時金を支給することに反対はいたしません。
以上、二法案への反対及び賛成の理由を申し上げました。
人勧制度の存在意義を問われる給与引き下げ勧告が三年続いているまさにこの時期に、公務員制度改革の名のもとに、人事院が担ってきた機能を否定するような内容での議論が進められようとしています。公務員制度の改革というのならば、時の政権に都合のいい公務員制度づくりでなく、真に全体の奉仕者と言える公務員制度こそ求められています。また、憲法に規定された労働基本権を無視することは許されないということを指摘して討論といたします。