154 – 参 – 総務委員会 – 2号 平成14年03月14日
平成十四年三月十四日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
三月十三日
辞任 補欠選任
高嶋 良充君 岩本 司君
三月十四日
辞任 補欠選任
岩本 司君 高嶋 良充君
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出席者は左のとおり。
委員長 田村 公平君
理 事
景山俊太郎君
世耕 弘成君
谷川 秀善君
浅尾慶一郎君
伊藤 基隆君
委 員
岩城 光英君
小野 清子君
久世 公堯君
沓掛 哲男君
南野知惠子君
森元 恒雄君
山内 俊夫君
岩本 司君
高橋 千秋君
内藤 正光君
松井 孝治君
木庭健太郎君
八田ひろ子君
宮本 岳志君
松岡滿壽男君
渡辺 秀央君
又市 征治君
国務大臣
総務大臣 片山虎之助君
副大臣
総務副大臣 佐田玄一郎君
総務副大臣 若松 謙維君
大臣政務官
総務大臣政務官 山内 俊夫君
総務大臣政務官 河野 太郎君
総務大臣政務官 滝 実君
事務局側
常任委員会専門
員 入内島 修君
政府参考人
総務省人事・恩
給局長 久山 慎一君
総務省行政評価
局長 塚本 壽雄君
総務省自治行政
局長 芳山 達郎君
総務省自治行政
局公務員部長 荒木 慶司君
総務省自治行政
局選挙部長 大竹 邦実君
総務省自治財政
局長 林 省吾君
総務省総合通信
基盤局長 鍋倉 真一君
厚生労働大臣官
房審議官 鈴木 直和君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○行政制度、公務員制度、地方行財政、選挙、消
防、情報通信及び郵政事業等に関する調査
(行政制度、地方行財政、消防行政、情報通信
行政等の基本施策に関する件)
(平成十四年度人事院業務概況に関する件)
○参考人の出席要求に関する件
○地方自治法等の一部を改正する法律案(第百五
十一回国会内閣提出、第百五十三回国会衆議院
送付)(継続案件)
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宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
これまでも取り上げてきましたNTTのリストラ問題がいよいよ大詰めを迎えております。そこでまず、大前提からお伺いします。
小泉総理は、昨年十一月十六日、衆議院本会議で、この件について、転籍に関する最高裁の判例を踏まえて適切な対処がなされると答弁いたしました。また、今年二月十四日の衆議院予算委員会で、坂口厚生大臣は、法令に違反をしていることがあれば厳しく指導すると繰り返し答弁いたしました。
そこで、総務大臣も、総理と同じく、転籍に関する法理を踏まえて適切な対応がなされるべきだと、これはよろしいですね、総務大臣。
国務大臣(片山虎之助君) 確認いたしておりませんが、議事録に残っておればそのとおりであります。
<不利益変更のなかからの選択を強要>
宮本岳志君 是非その点しっかりと踏まえていただきたいと思うんですが、既に春名議員が明らかにいたしましたが、この一月に雇用形態選択通知書なるものの提出がNTT東西会社の労働者に強要をされました。議場に配付いたしました資料の1にそれが付けてございます。
これを見ると、繰延型、一時金型、六十歳満了型の三つから一つを選ぶことになっております。ところが、今の会社に残れるのは六十歳満了型だけで、他の二つはどちらも新会社に移って、給与は一気に二〇%から三〇%もダウンすると。しかも、「本通知書の雇用形態の選択欄に○がない場合、並びに、本通知書の提出が期限までにない場合は、満了型を選択したものとみなします。」と下から二行目に書いてあります。かといって、六十歳満了型を選ぶと、全国の事業所において勤務事業所を変更されると書いてあります。
これは、あからさまな不利益変更を複数提示してその中からどれかを選べというもので、こういうことが許されるかと私は思うんですが、大臣、許されないと思いませんか。
国務大臣(片山虎之助君) 御承知のように、NTT東西を取り巻く環境が大変厳しゅうございまして、かなりの赤字も出ている、こういう段階で、どう構造改革をやっていくかということで悩んでおりまして、そのためにいろんな知恵を出して労使の間で御議論いただいているということは承知いたしておりますが、労使間の問題に私どもの役所が直接、ストレートに入っていく、こういうことはいかがかなと、こういう認識を持っておりまして、雇用形態選択通知書について今お話しございましたが、これがいいとか悪いとかどうだとかということをコメントする立場にはないということを御理解賜りたいと思います。
宮本岳志君 選択の自由はきちっと守られるべきだとお考えですか。
国務大臣(片山虎之助君) 済みません、何ですか。
宮本岳志君 選択の自由は守られるべきだとお考えですか。
国務大臣(片山虎之助君) 選択の自由。
宮本岳志君 この選択。
国務大臣(片山虎之助君) それは、そういうことで選択のためのあれを出しているわけじゃないでしょうか、というふうに私は思っております。
宮本岳志君 これが本当に選択の自由、保障された形での真の意味での選択なのかということを私は問題にしたいと思うんです。
私は、この間、八田議員と一緒に各地、現場を調査してまいりました。私は、地元大阪で生々しい実態をこの耳で聞いてまいりました。例えば、西日本会社の大阪支社、パーソナルユーザー営業部のある女性社員は、選択通知書の満了型に丸を付けて上司に提出した。ところが、この上司は、満了型を選ぶと将来この会社を辞めなくてはならなくなる、満了型を選んだ人間は変なグループと一緒に見られる、会社は今度こそそのグループは見せしめにすると言って、満了型を選ぶことをあきらめさせたと。女性社員が、変なグループというのは通信労組のことかと聞くと、そうだと答えたと。こういう証言がございました。
こういうことになってきますと、明らかな、事実上の強制ということになるんじゃありませんか、大臣。
国務大臣(片山虎之助君) 先ほど言いましたように、これは基本的には、何度も同じことを繰り返すことになりますが、労使間の問題でございますし、我々は事実も詳しく存じ上げませんし、所管する関係の法規も違う、立場にもありませんので、いいとか悪いとかどうだとかということのコメントは、そういう立場にないということで御理解賜りたいと思います。
宮本岳志君 そういう逃げは許されないと思うんですよ。
NTTという会社は、NTT等法によって法律できちっと規制が掛かっている会社なんです。NTT等法の十六条には、総務大臣、あなたがこの法律の定めるところにより監督するとなっておりますし、十六条の二では命令まで出せる、十七条では報告を徴取することもできると。つまり、あずかり知らないという会社ではないんですよ。
しかも、冒頭確認したように、総理も、転籍に関する最高裁の判例を踏まえて適切な対応がなされるべきであると。その立場に総務大臣も変わりがないと言っているわけで、事実上の強制はないという説明だったじゃないですか。事実とすれば問題だ、そういう事実は確認できないということはおっしゃるかもしれないけれども、強制があるとすれば具合が悪いとはお答えになると思うんですが、いかがですか、大臣。
国務大臣(片山虎之助君) NTT法は、業務や組織やいろんなことについての一般的な監督権はありますけれども、基本的には、この雇用条件というのか、この問題は労使自決ですよね、もう釈迦に説法で、今更宮本委員にそんなことを私が申し上げるのもあれでございますが。
だから、これは労使で十分御相談して合意に達して事を進めていただくと、こういうことでございまして、十分な労使の御相談の上の合意と、こういうことを私は申し上げておりますので、それがもし仮に若干でも欠けるということがあるなら更なる努力をお願いしたいと、こういうだけのことであります。
宮本岳志君 労使が合意しても、法令を踏みにじるような労使合意は許されないんですよ。ましてや、今話に出ているのは、それは特別の労働組合との関係はどうか知らないけれども、別の労働組合のことについてはこういう言明がなされているということを今紹介したわけですからね。
<転籍者の数は「集計中」と嘘の報告>
宮本岳志君 それで、同じ大阪支社の設備部ネットワーク高度化推進プロジェクトチームのある職員には、複数の上司による面談が繰り返され、五回目で遂に満了型をあきらめざるを得なかったという証言も得ました。
そもそも、この問題、東西会社の社員でどれだけの人数がこの対象となり、事前の意向調査ではどの選択肢を何人が選んで、提出された通知書でどう変わったと、こういうリアルな実態を総務省は把握しておりますか。これは局長にお伺いします。
政府参考人(鍋倉真一君) 大臣が御答弁されておりますように、私ども、そういう個々の数字については把握をいたしておりません。
宮本岳志君 十一万人という労働者の正に身分にかかわる、これアウトソーシングなんですよ、私たちはリストラだと思いますけれども。
その中で、本当に今労働者の間で不安が広がっている。その中身をつかんでいないというのは、私は実に問題だと思うんですけれども、総務省にお尋ねしたら、二月の二十二日付けで私のところにお答えがありました。資料②に付けました。先ほどの答弁どおり、つかんでいないと。そして、現在NTT東西においては、退職、再雇用となる社員数については集計中だという、こういう答えでありました。これは総務省からいただいた答弁ですよ、資料の2というのは。
これは、しかし同時に、私ども資料の、今日、3に付けましたけれども、「雇用形態選択に伴う課題と対処方針」、これはNTTの企画部業務運営改革プロジェクトチームが一月三十日にまとめた報告書です。この報告書を見ますと、既に一月の三十日時点で、3の2を開けていただけば、東日本会社の全体で六十歳満了型を選んだ人数が八百二十四人、一番下の段ですね、三%。そして、退職、再雇用を選択した方が二万五千五百三十四人と、支店の別まで詳細に把握しているわけですよ。
これは総務省に、これ、二月の二十二日時点でもまだ集計中だというけれども、ちゃんと会社はこうして既に掌握している。これは事実と違う報告を総務省にしたということではないですか。
政府参考人(鍋倉真一君) 私ども、繰り返しになりますけれども、そういう個々の数字は聞いておりません。
ただ、退職、再雇用の人数につきましては、共産党の方に御提出しました、この資料の②にありますように、従来聞いておりました。十一月、これはNTTあるいはNTT東西が発表した数字でございますので、その退職、再雇用の対象となる社員が五・五万人というのはその時点で発表されたものですので、共産党さんの方に御提出をしたということでございます。
宮本岳志君 この数というのは、いいですか、今までNTTの職員だった方が退職して、そしてこの別会社に、二割、三割給料下がって働くという、こういうことが今やられているわけですよ。そしてその選択がずっとやられてきたわけです、選択通知書を書かせてきたわけですよ。これ、一体どういうふうに進められているか。
国会では繰り返し、大臣も総理大臣も、きちっと本人の意思あるいはその選択の自由ということは保障されるべきだと言いながら、これが現場では、事実上九七%まで結局退職、再雇用になっているわけですよ、これは。その中身をやっぱり一つ一つつかんで、法令に違反するようなことがやられないか、本当にきちっと社会的な責任を果たした形で進められているかということをつかむのが当然だと私は思います。ここまでして退職、再雇用を労働者に押し付けたということだと思うんです。
<新会社で「くじ」や「古物」の販売も>
宮本岳志君 ところが、その行く新会社というのはどういう会社か御存じですか、皆さん方。NTTを退職して今度行く会社、資料の④に、私、今度設立される新しい会社の設立登記の謄本をお付けいたしました。その目的に掲げられた業務内容を見ていただきたい。
例えば、4の1とした資料では、十八、宅配便、クリーニング取次ぎ、十九、くじ、チケットの販売と、こうなっております。また、4の3に付けましたが、設備系の会社、こちらはもう一つの、静岡県内のこれは会社ですけれども、十一番、とび・土木工事業、十九番、古物というんですか、骨とう品の売買業。そこまで新会社はやると、こうなっているんですよ。
このくじとか骨とう品とかというのは一体だれが販売することになるとお考えですか。局長でもいいですけれども。
政府参考人(鍋倉真一君) 繰り返しになりますけれども、私ども、こういうことにつきましては、労使関係の問題でございますので、一切コメントする立場にないと思っております。
宮本岳志君 驚きですね。
こういうことがやられていて、しかもNTTという、あなた方が所管する職場で何がやられようが知ったこっちゃないと、そんな態度はないでしょう、それは。
大体、NTTというのは元々電電公社で、逓信省じゃないですか。民営化されたJRだってもう少し国土交通省、運輸省は中身に注意を払いますよ。本当に、何をやってもいいというその態度は本当に許せないと私は指摘せざるを得ません。これは偶然に起きていることじゃないんですよ、こういう会社になってきているというのは。
昨年十二月六日付けの読売の紙面でNTT持ち株会社の宮津社長は、このアウトソーシング計画についてこう言っているんです。「スリム化で東西は食べていけるようになる。」、「心配なのは、東西から人員が移る地域別の新会社だ。」と。新会社が最初から赤字になると分かった上でこういうことをやっているんです。宮津氏は今年の二月六日の記者会見で、新会社の社員が従来の仕事だけで給料をもらおうとするのはどだい無理な話だと言い放っております。
最初の選択通知書では、従来の仕事を続けたかったら退職、再雇用を受け入れなさい、満了型を選んだら今までの仕事続けられませんよと言って退職、再雇用を選ばせる。選んでアウトソーシング会社に行ったら、今までの仕事で給料をもらえると思ったら大間違いだと。それこそ、くじでも骨とう品でも何でもやれということになっております。
これは約束違反ということになるんじゃないですか。こんなことが本当にまかり通っていいとお考えですか。政治家として大臣、政治家としてこんな話がまかり通っていいとお考えになるか聞かせていただけますか。
国務大臣(片山虎之助君) やはり、東西NTT、生き残りのためにいろんなことを考えているのでしょう。そういう中で、労働組合といいますか、そういう関係のところと十分協議をしながら、いろんな案を出して、それを実施しているんだと私は思いますよ。新しい仕事をやるからおかしいということはないと思いますよ。そういう需要があるんなら新しい仕事をやられてもいいんで。
だから、一概にそれはおかしいんだということではなくて、やっぱり企業として、企業体としてどうやって生き残って、この厳しい競争の中でやっていくかということを私は考えているので、そこはそこで我々も認識してやらなければならないのではないかと、こういうふうに思っております。
宮本岳志君 生き残りのためにいろんなことを考えることは別に勝手ですけれども、だからといって詐欺のような、だまし討ちのようなことを考えることは許されないんですよ。
それなら初めから、こういう仕事になりますよ、くじの販売、骨とう品の販売などなどやってもらいますよ、いいですかといって選んだんだったらいいですよ、違うじゃないですか。今までの仕事をやりたかったらこれを選べと言っておいて、そして選ばなければ、満了型、残ると言ったら今までの仕事できないよ、全国どこでも配転がありますよと言っておいて、そしてやむなく今までの仕事が続けたいからと選んだ人に対して用意されているのは、今までの仕事ができると思ったら大間違いだと公言するような仕事になっていると。確かに、会社登記の中身を見たらそういう項目が入って、お弁当屋さんとかというのが入ってきていると。こういうことが問題だということを言っているんですね。これは実は、そういうことはきちっとあらかじめ準備されて進められてきたんです。
NTTの福岡支店では、選択通知書の終わった二月下旬に職場単位で新会社についての説明会が行われた。そこでは担当者が、今までの仕事ができると思ったら大間違いだと。支店で作った「営業系OS北部九州地域会社の運営に向けて」という資料を出してきたと。資料の6の2に付けてあります。これは福岡支店ですよ。ここでの資料を見ますと、はっきりお弁当屋さんとか各種イベント委託ということが出てきますし、その下には墓地の清掃、献花、管理等と、こういうものまで業容拡大の中に入っているわけですよ。
しかも、こういう仕事を一体どういう方々にやらせていくかと。それも資料の、いいですか、3の6を見てください、最初に私が挙げたNTTのプロジェクトチームの文書ですよ。これ、全国の選択した方々を一覧にしているんです。下から四段目、「必要人員に対する過欠状況」、つまり今までの仕事で進めていく上で人員がどれだけ多いか少ないかという、これが過欠状況ということですね。最初から七つについては三角が付いていますから人が足りないと。首都圏、茨城、栃木は人が足りないんです。しかし、群馬から北海道まで見てごらんなさい、全部三角ないでしょう。人が余っているんです。つまり、首都圏の一部以外は、この方々はさっき言ったお弁当屋さんとかあるいは墓地の清掃とか、そういう仕事をさせようということになっているんですよ。
<前提が崩れれば「転籍の承諾」は無効>
宮本岳志君 これは本当に最初の説明、裏切りになると、そういうふうにお考えになりませんか、大臣。大臣、どうですか。
国務大臣(片山虎之助君) いや、大変難しいことを言われますけれども、しかしそれはいろんな労働組合の方も十分労働組合に入った方の利益を考えて議論して私は結論を出されると思いますよ。それは全く職を失うよりは、いろんな新しいことをやるということもあるのかなということじゃないでしょうかね。かなりの方はやっぱり従来の仕事をやると、こういうあれですから、一々その個別についていろいろ委員から指摘をされても、それ私に答えろというのはなかなか難しいですね。
私は何度も同じことを言いますけれども、労使が十分な協議等の上に立った合意を実行することではないかと、こういうふうに考えております。
宮本岳志君 こういう転籍という問題についての合意というのは労働組合だけで取り結んでも、最終的には個々人の意思が大事なんですよ。そして、その個々人の意思を選択するときのその説明にうそがあれば、これは事態は変わってくるわけです。
それで、転籍に関する判例を踏まえてと、総理もおっしゃった、総務大臣もお認めになったので、ひとつ、ちょっとこのまま話ししていても、どだい法律論というのがどこかへ行ってしまいますので、今日は厚生労働省に来ていただいていますので少しお伺いしたい。
それで、転籍に関する最高裁の判例を言うならば、日立製作所横浜工場事件についての一九七三年四月、第一小法廷判決がリーディングケースだと思います。この判決は労働契約の一身専属制を理由に、転籍には労働者本人の同意が必要と明確に示したものだと思うけれども、間違いございませんか。
政府参考人(鈴木直和君) 今、御指摘の最高裁判決におきましては、転籍につきまして、御指摘のように労働契約の一身専属的性格にかんがみ、労働者の承諾があって初めて効力が生じ得るものと判断しておるものでございます。
宮本岳志君 この判決をよく読んでみると、この日立製作所の事例というのは、いったんは本人が転籍を承諾していたという事例なんですよ。転属の承諾の有効性について、このケースで最高裁はどのような判断を示したか、簡潔に御説明いただけますか。
政府参考人(鈴木直和君) このケースにおきまして最高裁判決では、原判決、東京高裁の判決ですが、ここにおきまして被控訴人がその転属先会社で就労させてもらえるものと信じて転属を承諾したのに、当時既に転属先の会社ではその就労拒否を決定したものであるから、その承諾は要素に過誤があり、無効と言わざるを得ないという判断した点につきまして正当という判断をしているものでございます。
宮本岳志君 つまり、一度そういう条件で承諾をしたとしても、その後、その前提となっていた会社の説明が事実と違っておれば、社員はやはり事実と違う、さっきの承諾は撤回するという権利を持っているということがこの最高裁の判例でも示されているんです。
その点をわきまえて、この説明に無理があった場合、うそがあった場合、その場合はやっぱり改めて本人がその考えを改める、そのことは尊重すべきだと、大臣、これ一般論としてはそう思われるでしょう、大臣。
国務大臣(片山虎之助君) それは事実認定の問題ですね。やり取りの問題もありますから、それがそうだとかこうだとか、ちょっと私が言うのは差し支えがあると思います。
宮本岳志君 最初の質問のところで、特定の労働組合に対する報復が職場で公言されたと私先ほど言いました。
資料の1をもう一度見てください。繰延型、一時金型、六十歳満了型の三つから選ぶんですが、今の会社に残れるのは六十歳満了型だけなんですね。しかも、繰延型及び一時金型を選択する方は本通知書をもって退職、再雇用願に代えると。この通知書を出したら、もう退職願を出したも同然と、そういう断り書きまであるわけです。
このようなものの提出を拒否したからといって、見せしめに全国どこにでも飛ばすというようなことがあってはならないと私は思うんですけれども、ましてや労使の間でと総務大臣繰り返し答弁されますけれども、先ほど話題に上った通信労組というのも労働組合ですよ。その特定の労働組合の職員を丸ごと敵視するというような発言は、これは適切でないと、これぐらいは総務大臣、お認めになっていただけるでしょう。あったとすれば。
国務大臣(片山虎之助君) 何度も言いますけれども、労働組合の方は労働組合法所管のところに聞いていただく方がいいと思いますが、NTTにおいては関係の法令を遵守して適切に労働組合等との対応が行われているものと私は考えております。
<違法な差別や転籍の強要は許せない>
宮本岳志君 これは現場で特別な管理者が口にしたという問題ではありません。
先ほど紹介したNTTのプロジェクトチームが作った内部文書、資料3の4というのを開けていただきたい。会社自体がそのような方針を持っていることをうかがわせる記述があります。
資料3の4のこの「具体的課題」、これは「雇用形態選択結果に伴う課題」というところですけれども、AからGまで課題が挙げてあって、最後のGというのを見てください。Gとして、「特に、組織的選択者の対策必要」だと、こう書いてあります。つまり、同じような職場で同じ選択をした約三百八十人のうち、百十人については組織的に満了型を選んだんだから他の労働者とは違う対応が必要だということをここで検討しているということがはっきりしているんですね。
厚生労働省、お伺いしたいんですが、ある特定の労働組合、これを取り上げて、それにこういう見せしめ的な対応をするというのは、これはもう明瞭な不当労働行為に当たりますね。
政府参考人(鈴木直和君) 御指摘の問題につきましては、労働組合法におきまして不当労働行為制度というものを設けております。これは使用者が労働組合員であることをもって不利益な取扱いを行うことを禁止して、この違反に対して労働委員会制度による救済制度を設けているものでございます。
ただ、この救済制度、これは申立て主義を取っておりまして、労働組合から具体的な申立てがあって初めて労働委員会が必要な調査を行い、そういった不当労働行為があったかどうかというものを判断するものでございます。
宮本岳志君 事実の認定は確かに労働委員会でしょうよ。しかし、私が述べたようなことの事実があったとすれば、明確な法令違反であることは論をまたないと思います。
資料4、最後にこれをお付けしましたけれども、これは千代田化工建設事件に関する横浜地裁、昭和六十三年(ヨ)四六五号判決の判決理由からの抜粋です。少しこれを読み上げさせていただきたい。
そもそも、移籍についてはそれが雇用契約の解除と新たな雇用計画の締結であるところから、新契約が従業員にとって有利か不利かにかかわらず、当該従業員の同意、承諾がなければ、これをなし得ず、使用者が一方的になし得るものでないことは債務者も自認しているところである。
そうだとすると、移籍に同意せず、これを拒否することは当該従業員の自由であって、このことを理由として当該従業員を不利益に扱うことは許されないものと言うべきである。まして、移籍による新契約の内容が旧契約に比し、その賃金が三〇%も減少するということであれば、なおさらと言うべきである。
また、この移籍を組合が了承しているということは、移籍が右のような性質で個別的労働関係の問題、すなわち雇用契約の解消と新契約の締結であるところから、それ自体には何らの影響を及ぼすものでなく、せいぜい移籍拒否が組合の決定に従わなかったということで統制違反の問題になるにすぎないと言うべきものである。
この事件は最高裁まで争われて既に確定していると思うんですが、間違いないですね、厚生労働省。
政府参考人(鈴木直和君) 御指摘のような判決があることは承知をしております。
宮本岳志君 別の会社に移れと言われて、大臣、移るか、受けるか受けないかは自由なんです、それは。しかし、しかも受けなかったからといって会社は不利益な扱いをしてはならない。たとえ労組が同意していようが関係ないんだということも、この判決は示しているというふうに思うんですね。
今、NTTの職場で、正に脱法的なやり方と私は思うんですけれども、また場合によっては明確に違法な手段を使って、不当労働行為も含めて、労働者への正にこの退職、新会社への再就職の強制攻撃が進められている。それを許さないために、正に私ども日本共産党は、全国の労働者の皆さんと一緒に頑張っていきたい、追及していきたいということを決意をしております。
同時に、これが法廷に持ち込まれれば、今日の質問で指摘した観点によって、必ずや裁判所の判断が下されるであろうということを、私は所管する政府の皆さんにも、総務省の皆さんにも、またNTTの経営当局にも警告をさせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。