189-衆-文部科学委員会-17号 平成27年08月05日
平成二十七年八月五日(水曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 福井 照君
理事 池田 佳隆君 理事 石原 宏高君
理事 冨岡 勉君 理事 萩生田光一君
理事 義家 弘介君 理事 郡 和子君
理事 牧 義夫君 理事 浮島 智子君
青山 周平君 秋本 真利君
安藤 裕君 大見 正君
加藤 寛治君 門山 宏哲君
神谷 昇君 神山 佐市君
神田 憲次君 木村 弥生君
工藤 彰三君 小林 史明君
國場幸之助君 田所 嘉徳君
武井 俊輔君 谷川 とむ君
馳 浩君 鳩山 邦夫君
船田 元君 古田 圭一君
宮川 典子君 宮路 拓馬君
山田 賢司君 山本ともひろ君
菊田真紀子君 中川 正春君
平野 博文君 松本 剛明君
柚木 道義君 笠 浩史君
坂本祐之輔君 鈴木 義弘君
初鹿 明博君 吉田 豊史君
中野 洋昌君 吉田 宣弘君
畑野 君枝君 宮本 岳志君
吉川 元君
…………………………………
文部科学大臣 下村 博文君
国務大臣
(東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当) 遠藤 利明君
文部科学大臣政務官 山本ともひろ君
政府参考人
(内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局セキュリティ推進統括官) 石田 高久君
政府参考人
(内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局企画・推進統括官) 高原 剛君
政府参考人
(内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局企画・推進統括官) 岡西 康博君
政府参考人
(文部科学省大臣官房総括審議官) 伊藤 洋一君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 高橋 道和君
政府参考人
(観光庁次長) 山口 由美君
参考人
(独立行政法人日本スポーツ振興センター理事長) 河野 一郎君
文部科学委員会専門員 行平 克也君
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委員の異動
八月五日
辞任 補欠選任
尾身 朝子君 木村 弥生君
櫻田 義孝君 秋本 真利君
谷川 とむ君 神谷 昇君
古川 康君 山田 賢司君
前田 一男君 加藤 寛治君
菊田真紀子君 柚木 道義君
初鹿 明博君 吉田 豊史君
大平 喜信君 宮本 岳志君
同日
辞任 補欠選任
秋本 真利君 櫻田 義孝君
加藤 寛治君 國場幸之助君
神谷 昇君 谷川 とむ君
木村 弥生君 宮路 拓馬君
山田 賢司君 神田 憲次君
柚木 道義君 菊田真紀子君
吉田 豊史君 初鹿 明博君
宮本 岳志君 大平 喜信君
同日
辞任 補欠選任
神田 憲次君 田所 嘉徳君
國場幸之助君 武井 俊輔君
宮路 拓馬君 尾身 朝子君
同日
辞任 補欠選任
田所 嘉徳君 古川 康君
武井 俊輔君 前田 一男君
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七月二十四日
学生が安心して使える奨学金に関する請願(斉藤和子君紹介)(第三五二三号)
同(畑野君枝君紹介)(第三六七二号)
未来を開く教育保障制度に関する請願(大平喜信君紹介)(第三六二三号)
同(畑野君枝君紹介)(第三六七三号)
専任・専門・正規の学校司書の配置に関する請願(畑野君枝君紹介)(第三六七一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
文部科学行政の基本施策に関する件
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○福井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。宮本岳志君。
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず、遠藤利明大臣に質問いたします。
大臣が去る七月八日に当委員会で行った所信的挨拶、これを読ませていただきました。確かに大臣の所信には、私も大臣と一緒になって制定をしたスポーツ基本法、これは出てまいりますけれども、残念ながら、オリンピック憲章という言葉もオリンピックアジェンダ二〇二〇という言葉も、一言も出てきません。
まず遠藤大臣の基本認識を問いたいんですけれども、二〇一四年十二月にモナコで開催された第百二十七次IOC総会が決定したオリンピックアジェンダ二〇二〇を大臣はどのように認識しておられますか。
○遠藤国務大臣 お答えいたします。
アジェンダ二〇二〇は、IOC総会にて全会一致で採択されたものであり、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の準備、運営に当たって、これを尊重し取り組みを進めていくことは、大変重要であると認識をしております。
政府としては、アジェンダ二〇二〇を踏まえつつ、大会の成功に向けた取り組みが円滑に進むよう、引き続き、組織委員会及び東京都などの関係者と密接に連携してまいります。
○宮本(岳)委員 先ほど申し上げたように、オリンピック憲章あるいはオリンピックアジェンダ二〇二〇に触れずに、メダルの数とか地方創生の起爆剤というような議論に行くから、残念ながら、哲学も格調もなくなってしまうと言わざるを得ません。
きょうは、オリンピックアジェンダ二〇二〇の抜粋を資料として配付しておきました。
配付資料一を見ていただきたい。下線部のところでありますが、提言一、「招待としての招致プロセスを整える」では、「新たな考え方の導入」、二として、「IOCは既存施設の最大限の活用、および大会後に撤去が可能な仮設による施設の活用を積極的に奨励する。」四として、「IOCはオリンピック競技大会では、主に地理的要因や持続可能性の理由から、複数の競技または種別を開催都市以外で、または例外的な場合は開催国以外で実施することを認める。」とあります。そして提言十二では、「オリンピック競技大会の運営経費を削減し、運営ではより柔軟性を持たせる。」と書かれてあります。
遠藤大臣、これは極めて重要な指摘だと思いますが、いかがですか。
○遠藤国務大臣 二〇一四年十二月のIOC総会において採択されたオリンピックアジェンダ二〇二〇においては、既存施設の活用を促すとともに、地理的要因や持続可能性の理由から、開催都市以外での競技の実施が認められたところであり、コストを削減したとして、七月のIOC調整委員会についても、コーツ委員長より、評価する旨のコメントがあったと認識しております。
新国立競技場におきましても、今般のIOC理事会において、今回の見直しについては日本政府を全面的に支援する等のコメントがあったと聞いております。
○宮本(岳)委員 そういうことが本当にこの間の我が国の議論でやはり据わっていないということを指摘せざるを得ないんですね。
今回の新国立競技場の計画の白紙撤回、見直し、この後も二〇二〇年東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は、七月二十二日の日本記者クラブでの記者会見で、警備や輸送などを含めた大会全体の開催費について、当初より三倍ぐらいお金がかかっている、最終的に二兆円を超すようなことになるかもしれないとの見通しを示しました。そして別の場所では、国がたった二千五百億円も出せなかったのかね、これは国立競技場でありますけれども、そう語って、国民の怒りの火に油を注いでおります。
先ほどの高橋スポーツ・青少年局長の答弁では、先日のIOC総会では、これはオリンピックアジェンダ二〇二〇に沿ったものだ、こういうふうに説明されたそうでありますけれども、IOCの定めたこのアジェンダ二〇二〇に照らせば、今回の見直しは当然のことでありますし、もっと早くやるべきことだったと私は思うわけです。
資料二を見ていただきたい。先ほど大臣もお触れになったIOC副会長、調整委員会のジョン・コーツ委員長のインタビューを紹介してあります。毎日、七月一日付でありますけれども、ジョン・コーツ氏は、日本が会場計画の見直しで約二千億円のコスト削減を行ったことを高く評価をいたしました。下線部、「東日本大震災からの復興予算が必要な日本にとって、アジェンダ二〇二〇は時期がぴったりだった。既存施設を活用し会場計画を見直してコストを削減できた。」とし、最後の部分ですけれども、「運営費が五兆円もかかった一四年ソチ五輪はまずい経験だった。東京五輪のコスト削減は五輪の将来に大いに励みになった」とまで語っておられます。
だから、新国立競技場の見直しについても、さきのIOC理事会でバッハ会長が、わびる必要はないと語り、理事からも、IOCは開催費用の抑制を目指しており、日本はよい決断をした、こういう声まで寄せられたと報じられております。
大臣、はっきり言って、今回のこの決断というのは私は余りにも遅きに失したと思うけれども、オリンピックアジェンダ二〇二〇の精神でいえばむしろ当然のことであり、やはり世界に誇るべき大胆な決断だったと思いますが、いかがですか。
○遠藤国務大臣 委員御指摘のように、国民の皆さん方から大変な批判もございましたし、そうした中で、国民の皆さんに喜ばれる施設でなければ到底二〇二〇年の大会がうまくいくわけがありません。そういう意味で安倍総理大臣、大変な決断をしていただいたと思っております。
○宮本(岳)委員 この背景には、先ほどのコーツ氏が触れたソチ冬季五輪を初めとする、運営経費の高騰の問題があります。
文部科学省に聞きますけれども、ニューヨーク時事の報道によると、米国オリンピック委員会、USOCは、七月二十七日、二〇二四年夏季五輪・パラリンピックのボストン招致を断念したと発表いたしました。その理由はどのようなものでありますか。
○高橋政府参考人 他国の立候補の予定等について文部科学省として具体的に承知しているわけではございませんが、報道によりますと、開催コストの負担を懸念する市民の支持が得られなかったことなどがその原因であると伺っております。
○宮本(岳)委員 同じ時事の報道によると、ウォルシュ市長が、財政的な負担が懸念され、市民の賛同が得られていないとして、現時点ではUSOCとの開催都市契約を結べないと表明した。これが原因と報じられております。
運営経費の高騰が五輪の開催すら困難にしかねない。そういう背景のもとでIOCがオリンピックアジェンダ二〇二〇を打ち出し、既存施設の活用や仮設の活用による開催費用の抑制を奨励しているというのが大きなこの間の流れなんですね。
ところが、そのオリンピックアジェンダ二〇二〇に示されたIOCの新たな考え方を理解せず、我々が繰り返し抜本的な見直しを求めてきたにもかかわらず、最初は、誘致のときの国際公約だから変えられないなどと言い、次には、今から見直すと間に合わなくなるなどと称して、ずるずると七月十七日まで決断せずに来たというのがあなた方のやってきたことであります。
遠藤大臣、大臣も責任は免れません。大体、この大臣所信は七月八日に行われたものでありますが、ここでは遠藤大臣も、新国立競技場の整備については二〇一九年春の確実な完成を目指す必要があるなどと、結局、総理決断の九日前のこの時点でも、ザハ・ハディド案のまま、二千五百二十億円の計画をそのまま進めるという立場に立っておられました。そうですね。
○遠藤国務大臣 最初の所信のときに、政府として二千五百二十億円のコストで建設するということを受けておりましたので、そのように表明をいたしました。
○宮本(岳)委員 遠藤大臣は、担当大臣に就任するまで、JSCの国立競技場将来構想有識者会議のメンバーでありました。大臣に就任して以降は、司令塔とも言われるオリンピック調整会議のメンバーとして下村大臣とともに六月二十九日の調整会議にも出席して、二千五百二十億円建設計画に了承を与えておられます。その点では責任は免れないと言わなければなりません。
もちろん、この問題を一貫して所管してきた下村文部科学大臣の責任は極めて重いと言わざるを得ないと思います。
昨日、下村大臣は、参議院文教科学委員会に「新国立競技場の整備計画を見直すに至った経緯について」という説明文書を提出いたしました。私はその場で傍聴しておりましたが、全く納得できるものではありません。
昨日の参議院の質疑によると、下村大臣は、六月十七日に槇文彦氏と会い、見直しの必要性を感じた。六月二十二日に総理に会い、見直しをすべきであるという話をした。ところが、総理は、代替案で間に合うのかと難色を示した。しかし、この時点ではまだ、二〇一九年のラグビーワールドカップに間に合わないのではないか、ましてや二〇二〇年オリンピック・パラリンピックにさえ間に合わないのではないか。その確証がなかった。したがってザハ案でいくしかないと考えて、七月九日の時点で、JSCが大成建設と約三十三億円に上る契約を行うことに大臣は了承を与えた。ところが、七月十七日には、総理が一カ月ほど前から現在の計画を見直すことができないか検討してきたというその検討の結果が出て、これまた下村大臣が、七月十七日に総理に、二〇一九年のラグビーワールドカップには間に合わないが、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックには間に合う旨の報告をし、その結果、総理の決断となったという説明であります。
下村大臣にお伺いしますけれども、この一カ月前からの検討というのは久保スポーツ・青少年局長は知らなかったと言っておりますが、文部科学省の一体どの部局で行ったものですか。
○下村国務大臣 新国立競技場の整備につきまして、六月にザハ案とそれから見直し案について総理に私の方から状況報告をし、総理の方からさらに研究を進めてほしいという指示を踏まえまして、文部科学省として、工期をさらに短くできるかどうか、これは、私と、当時、山中事務次官で進めておりました。
この検討においては、スポーツ・青少年局においていろいろなデータ等はもちろん出させていましたけれども、何の検討をしているかということについては、私と事務次官で行っていることでありまして、省全体として見直しとしての作業をしているということについては伝えないでやりました。
私自身も、提言を受けておりました建築家の槇文彦氏や、あるいはさまざまな専門家から直接意見を聞いて、そして久保局長以下にいろいろな情報、資料収集等を求めながら、山中事務次官と検討を行っていたところであります。
○宮本(岳)委員 だとすると、全く腑に落ちないんですね。
一カ月前から研究してきたと。それで、さまざまな専門家や建築関係者との協議があったかもしれないんですけれども、そもそも、施工予定者であった大成建設あるいは竹中工務店と協議をしなければ、到底二〇二〇年三月に間に合うという判断は出てきようがないと思うんですけれども、これはもちろん大成建設、竹中工務店とも協議をした上でのことですね。
○下村国務大臣 私自身は、大臣として、施工予定者、大成建設、竹中工務店、これは利益相反にも当たりますので、直接はお会いしておりません。
ただ、この施工予定者、同時に日建設計も入っておりました。ですから、日建設計はそういう意味での利益相反あるいは利害関係者に直接当たらないということで、日建設計等からは詳しく見直し等を求め、また、状況等も聞いておりました。
○宮本(岳)委員 私が一つ腑に落ちないのは、七月九日の時点で、きのうも議論になっておりましたが、三十三億円に上る契約を大成建設と結んだと。もちろん、片方の当事者であるJSCの河野理事長はこの検討していることを知らされていなかった、また、スポーツ・青少年局長もそういう検討であることは知らなかったということでありますけれども、一方で、その契約当事者である大成建設は、先ほどお話のあった日建設計を通じてかもしれませんけれども、とにかく工期の問題については、そういう検討が、例えば抜本的に見直した場合にはどうなるかというようなことについては知らされていたと私は思うんですけれども、違いますか。
○下村国務大臣 私自身が大成や竹中とはお会いしていないということを申し上げております。
○宮本(岳)委員 大臣が直接お会いになったかどうかは別として、このような検討をしたということは、一カ月もやってきたということは、それはさまざまな建築家や設計会社の意見も聞いたでしょうが、何よりも、施工予定者である大成建設にどうかという話が詰まらなければこんな判断は出てきようがないと思うんです。そういうことはやったんでしょうと聞いているんですよ、大臣じゃなくてもあらかじめ。
○下村国務大臣 ですから、それは別に否定しているわけではありません。
○宮本(岳)委員 ひどいじゃないかと。見直しが進んでいるのに、三十三億もそのわずか一週間余り前の七月九日にむざむざとと我が党の田村智子議員がきのう指摘していましたが。
そうしたら、恐らく河野さんは知らされていなかったと。久保さんも、それは事務次官と大臣がやっていて、我々は一般的に工期のこととかやったけれども、そんな見直しがあるとは知らなかったと言うのかもしれません。しかし、建設会社の側は、いやいや、見直ししておられるんじゃないですかと言うのが当たり前であって、それは契約したんですか、三十三億も。おかしいじゃないですか。
○下村国務大臣 先ほどから答弁しておりますように、六月に、ザハ・ハディド氏の案のメリット、デメリット、それから、槇案を含めたほかの案に変えた場合のメリット、デメリットについて、私の方から総理に、見直すべきだという前提でお話をいたしました。
そのときの前提というのは、ラグビーワールドカップにも間に合わせる、オリンピックにも間に合わせる、そのための見直しということでの提案でありましたが、資料でありましたが、本当にラグビーワールドカップにも間に合うのかということについて明確な確証が得られないということも私の方でもありましたから、総理の方からそれについてはさらに研究をするようにという指示があって、そして研究を進めてまいりました。
確実なのは、ザハ・ハディド氏の案についてはラグビーワールドカップにもオリンピック・パラリンピックにも間に合うということは確実でありましたから、その確実の線の中で果たして見直しをして間に合うかどうかということについて、最終的な案として、七月十九日、そのときに総理が決断したのは、ラグビーワールドカップは間に合わない、しかしオリンピック・パラリンピックに間に合わすための見直しをゼロからするということを総理が決断されたわけであります。
○宮本(岳)委員 いやいや、その説明を聞いても納得いかぬということなんですよ。
つまり、見直しをしているということは大臣と山中次官しか御存じなかった。周りは、ラグビーは諦めて二〇二〇年に間に合うかどうかという判断を検討しているということまでは知らされていなかったという状況のもとで、この委員会でも、あるいは参議院の委員会でもわずか三日前の七月十四日には、まだザハ案のままいくという答弁を大臣はされているわけですから、全体は、表向きはそうなったわけです。だから河野さんだって、七月九日に契約したからといって、後から何だ、わずか八日前じゃないかと言われてみたって、その時点ではそうなっておりましたと。大臣も、その時点では表向きはそうでしたと答えているじゃないですか。
しかし、一方で、役所の関係でいうと大臣と山中さんであったとしても、建築家あるいは関係者という中には、これは間違いなくゼネコンが入るわけですよ、大成建設が。その大成建設はおくびにも出さずに、いろいろ問い合わせもあって、そういう検討がどうだろうか、オリンピックだけなら間に合うかもしれないという検討をやっているときに、もともとのザハ案で契約しましょう、三十三億。これは僕は余りにも考えられないというか、やったとしたら、そのゼネコンは余りにもひどいと言わなければならぬと思うんです。そこが腑に落ちないんですよ。
それで、それは大臣に聞いても、ゼネコンがどうであるのかはわからないのかもしれません。
こういう通らぬ話になぜなるのかということを私なりに考えてみました。
きのうの議論では、七月九日時点で見直しが始まっていながら契約したのはけしからぬという議論がありましたけれども、私はむしろ話は逆なんじゃないかと思うんです。一カ月前から検討してきたとおっしゃるけれども、それはむしろ後づけの話であって、七月九日時点では、別に大してまともな検討はしていなかったんじゃないかと。
あなたは、確かに六月二十二日の時点では槇さんたちの提案に一定の理解を示し、見直しに傾いた。だからこそ、閣議後記者会見で見直しということにも言及した。総理とも相談した上で一旦は見直し案を作成し、森喜朗オリンピック・パラリンピック組織委員会会長をお訪ねになった。
しかし、森会長から、ザハ・ハディド氏案側から訴訟が提起される可能性がある、あるいは、東京招致の際、IOC総会のプレゼンで総理が世界を偽ったことになる等々と言われて、たちまち六月二十四日には、二千五百二十億円のザハ・ハディド案でいくしかないというところに戻ってしまった。
その後は、六月二十九日のオリンピック調整会議が、七月七日のJSC有識者会議が異論なく了承した二千五百二十億のザハ・ハディド案で突っ走るということで、下村大臣も遠藤大臣も、もっと言えば、有識者会議に参加されていた当委員会に所属している議員の諸君も一致していたんじゃないか、こういうことじゃないかと私は思うんですけれども、違いますか。
○下村国務大臣 私が六月に総理にお話し申し上げたのは、ザハ・ハディド氏の案のメリット、デメリット、それから、もう一つの槇案を含めた、見直したときのメリット、デメリットですが、前提条件として、ラグビーワールドカップも新国立競技場でするという前提での見直しをしておりました。ラグビーもそれからオリンピック・パラリンピックも間に合わせるという前提の中における、本当に間に合うのかということについての確証が得られない、そのために、総理の方からより研究をするようにという指示があって、そしてしてまいりました。
ですから、最初からラグビーワールドカップなしという前提で我々はつくっていたわけではございません。
ただ、七月十七日に、私から総理に、事業者選定までで約半年間、それから、設計から工事完成までで五十カ月強、こういうスキームであれば、七月中に見直しすればぎりぎり二〇二〇年東京大会に間に合うという報告をいたしました。
そして、総理の方はそれを受けて、ではラグビーワールドカップは間に合わない、これは別の会場でする、しかしオリンピック・パラリンピックに間に合わせるということで、この七月十七日に決断をされたということであります。
○宮本(岳)委員 七月十七日にそういう決断をしたということは何ら否定するつもりはないんです、私も。七月十日の時点でも、菅官房長官は記者会見で、見直しは終わっている、見直しはあり得ないと断言をしていたわけでありますから、七月九日時点では私が今指摘したとおりであったことは間違いないと思うんです。
結局、安倍政権が見直しを検討したのはずっと後のことではないか。つまり、戦争法案の衆議院強行採決によって内閣支持率が急落し、国民の間に安倍政権の暴走に対する強い危機感が高まった。このままではもたないという政治判断が先にあって、その段階でゼネコンその他に二〇二〇年には間に合わせるという確証をとらせ、急遽決断をした、それだけの話ではないか。
それを後から、以前から検討していたとか、実はそれは下村大臣のもとでやっていたとかという話にしようとするから、こんな奇妙な話になるのではありませんか。
○下村国務大臣 まさに今までお話ししていることは、これは、事実を事実として経過として説明しているわけでありまして、後づけでも何でもございません。
○宮本(岳)委員 説明が非常に奇怪だ。とりわけゼネコンとの関係について、私、きょうも指摘をいたしました。
たとえそれは世論に押されてであっても、今回の決断はもちろん正しいものであります。私に言わせれば遅きに失するにもほどがありますけれども、国民の声、とりわけ有森裕子さんの涙の訴えや為末大さんの発言など、アスリートたちが勇気ある発言をしたことが国民の世論を大きく動かしたと思います。しかし、下村大臣の責任は重大だと言わなければなりません。
そもそも、二〇一三年の八月には建築家の槇文彦氏が警鐘を鳴らすなど、新国立競技場計画が工費や景観など数々の問題を抱えていることは早くから指摘をされてまいりました。
私も、既に二〇一三年十一月一日には当委員会で下村大臣に、当初の改築案は千三百億円だったにもかかわらず、ザハ・ハディド氏のデザインによると三千億円という試算が示されたことを受けて、「当初の千三百億円でさえ巨額過ぎる、さらに徹底的にコストカットを図るべきだ」と指摘をいたしました。
また、昨年五月二十一日には、ザハ・ハディド案に固執して聞き耳持たずという態度ではだめだと指摘し、旧国立競技場の解体を延期して、建築家や市民団体の意見を聞くように求めました。
そして、ことし六月三日の当委員会では、「設計デザインを含む当初計画を抜本的に見直し、開閉式ドーム等はつくらず、観客収容八万席のうち一定数は仮設とすること。その際、建築家などの意見を取り入れて、特殊建築工法によるコスト高を削って、そのほか徹底した簡素で無駄のない総工費に抑える」ことを初めとする五つの提案を行いました。
大臣は、「批判ではなくて、前向きな、具体的な提言をいただいて、ありがとうございます。」こう答えられ、さらには、「ラストチャンスだと思いますので、しっかりこれは、政治的な決断、判断も含めた見直しについては柔軟に、もう一度総おさらいを私自身としてもしてまいりたいと思います。」とまで答弁されました。私は、これが、六月十七日、槇さんたちに大臣がお会いになる一つのきっかけにもなったと思っております。六月二十二日の閣議後記者会見で見直しに言及されたときには、ついにわかってもらえたかとも思いました。
しかし、その後の経過はさきに述べたとおりであります。私は、六月二十九日のオリンピック調整会議、七月七日のJSC有識者会議をふんまんやる方ない思いで見ておったわけであります。
大臣は先日、何も知らされていなかったという久保公人スポーツ・青少年局長を事実上更迭する人事を行いました。大臣は、検証委員会であらゆるレベルでの責任体制についても議論していただく、結果は尊重するとおっしゃいますけれども、久保局長の首だけ切って、みずから出処進退を明らかにしないというのでは通らないと思うんです。トカゲの尻尾切りだと言われるのは当然です。
大臣みずからの責任をどうお感じになっておりますか。
○下村国務大臣 ザハ・ハディド氏のデザインを忠実に実現する場合、工事費試算額が三千億円に達することが判明したということで、平成二十五年十二月、JSCは、建築規模等の縮減を行い、工事費を一千六百二十五億円としました。
そして、昨年一月から設計者において設計作業が進められてまいりましたが、実施設計に技術協力者が参画したのは昨年十二月からであり、本年に入ってからJSCと設計者及び技術協力者との間で工期、工法等の実質的な協議が行われ、総工費が高額に上ることが明らかになったわけであります。
ことしの四月、JSCの理事長から私に、開閉式屋根等を備えた整備内容では二〇一九年春の竣工は困難であり、工事費も高額に上る見込みがある旨の報告があったため、直ちに、工期を間に合わせるための整備内容のさらなる協議及び工事費の縮減についての検討を指示いたしました。また、私自身もさまざまな関係者から話を聞いて研究を行いました。
その上で、六月に、ザハ案と見直し案について、先ほど申し上げましたように、総理に説明をいたしました。
ただ、見直し案でも、特にラグビーワールドカップには間に合わないと考え、また、オリンピック・パラリンピックに間に合うかどうかについても確信が持てなかったということで、その際、総理からはさらに研究を進めてほしいと指示されました。
そしてその後、総理には随時状況を報告いたしましたが、七月十七日、私から総理に、事業者選定まで約半年間、設計から工事完成まで五十カ月強、これで七月中に見直しを判断すれば、ぎりぎり二〇二〇年東京大会に間に合うとの報告を行ったところであります。
今回のゼロベースの見直しは、ラグビーワールドカップには間に合わないがオリンピック・パラリンピックには間に合うとして総理が決断されたものであり、その際、私の報告も踏まえたものと考えております。
私の責任については謙虚に受けとめたいと思います。私としては、今申し上げたとおり、限られた時間の中で見直しについて最大限努力をしてまいりましたが、私としては、新国立競技場の整備を二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催に確実に間に合う形にすることが最も責任を果たすことになると考えており、そのようなことをしっかりと対応することによって国民の理解が得られるようにしていくことが、第一義的には大臣として果たすべき役割であると思います。
しかし、新国立競技場の整備計画に係るこれまでの経緯について検証するため、文部科学省に第三者委員会を設置したところでありまして、ここで、経緯とあわせて責任の所在についても議論していただくことになります。
責任問題については、この中で議論されたことを受けて適切に対処してまいります。
○宮本(岳)委員 たとえ大臣職を辞しても、検証委員会に全面的に協力することは当然の話であって、私は、あなたが一刻も早くみずからの出処進退を明らかにすることが政治家としての矜持であるということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。