消費税10%中止に 衆院委 宮本岳志氏 経済状況指摘(しんぶん赤旗)
第190回国会 財務金融委員会 第6号
平成二十八年二月二十四日(水曜日)
(厚生労働省大臣官房審議官) 森 和彦君
政府参考人
(厚生労働省政策統括官) 武田 俊彦君
政府参考人
(中小企業庁長官) 豊永 厚志君
政府参考人
(国土交通省大臣官房審議官) 石田 優君
政府参考人
(観光庁観光地域振興部長) 加藤 庸之君
参考人
(日本銀行総裁) 黒田 東彦君
財務金融委員会専門員 駒田 秀樹君
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委員の異動
二月二十四日
辞任 補欠選任
井上 貴博君 穴見 陽一君
大野敬太郎君 青山 周平君
務台 俊介君 小松 裕君
宗清 皇一君 若狭 勝君
山田 賢司君 岩田 和親君
鷲尾英一郎君 原口 一博君
同日
辞任 補欠選任
青山 周平君 藤原 崇君
穴見 陽一君 白須賀貴樹君
岩田 和親君 山田 賢司君
小松 裕君 福山 守君
若狭 勝君 宗清 皇一君
原口 一博君 鷲尾英一郎君
同日
辞任 補欠選任
白須賀貴樹君 斎藤 洋明君
福山 守君 務台 俊介君
藤原 崇君 武井 俊輔君
同日
辞任 補欠選任
斎藤 洋明君 大見 正君
武井 俊輔君 辻 清人君
同日
辞任 補欠選任
大見 正君 神山 佐市君
辻 清人君 宮川 典子君
同日
辞任 補欠選任
神山 佐市君 井上 貴博君
宮川 典子君 細田 健一君
同日
辞任 補欠選任
細田 健一君 大野敬太郎君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)
所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)
○宮下委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、消費税増税に関連してまず質問をしたいと思うんです。
先週、各種の経済指標が公表されました。あらゆる指標が景気後退を示しております。
二月十五日公表の四半期別のGDP速報、二〇一五年十―十二月期の実質GDPの成長率はマイナス〇・四%、年率マイナス一・四%。また、名目GDP成長率はマイナス〇・三%、年率でマイナス一・二%。家計最終消費支出は実質マイナス〇・九%、名目マイナス〇・八%ということでありました。
二月十六日公表の家計調査、家計収支編を見ますと、二〇一五年平均速報結果、二人以上世帯の家計消費は、前年比名目一・三%の減少、実質二・三%の減少と、二年連続の減少であります。二人以上世帯のうち勤労世帯の家計収支も、前年比名目一・一%の減少、実質二・一%の減少ということであります。
二月十六日公表の労働力調査、詳細集計を見ますと、正規の職員、従業員数は、安倍内閣発足の二〇一二年十―十二月、三千三百三十万人だったのが、二〇一五年十―十二月、三千三百七万人と減少をいたしております。
安倍首相は、来年四月一日に予定している消費税率一〇%の増税の時期について、リーマン・ショックや東日本大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施すると、けさもその場で答弁をされておりました。しかし、二〇一四年に延長を決断した際には個人消費を最大の理由としたわけでありまして、今回も前回と同様、個人消費は連続して減少、しかも、消費税増税という要因がないのにここまで個人消費が後退しているというのが現状なんです。
午前中も総理と直接宮本徹議員が議論をしておりましたが、「消費税を引き上げることによって、景気が腰折れしてしまえば、国民生活に大きな負担をかけることになります。そして、その結果、税率を上げても、税収が増えないということになっては、元も子もありません。」こう言って消費税の増税を延期したわけでありますから、現在の経済指標を見れば、来年、消費税の増税を実施すれば、まさにそのような事態、景気の腰折れ、税率を上げても税収がふえない、こういう事態が発生するのではないか。これは、財務大臣はそのようにはお考えになりませんか。
○麻生国務大臣 一昨年の、消費税を八%、五から八への引き上げというものが消費に影響を与えたというのは事実であります。
当時、経済が腰折れするリスクというものを回避して、そして、デフレ脱却、経済再生へ万全を期すという観点から消費税率一〇%の引き上げを延期することとなったというのが、あの十一月の現状だと思います。
その後、経済再生の取り組みによって日本経済は、あの当時とは違って、企業収益は過去最高、有効求人倍率は二十四年ぶりの高水準、雇用の面です。昨年の賃金上昇率はいわゆる十七年ぶりの高水準となるなど、好調な企業収益や雇用・所得環境というものの改善につながって、それが消費や投資に結びつくという経済の好循環が拡大、深化しつつという過程に来ているんだと我々は理解しております。
平成二十九年の消費税率の一〇%の引き上げにつきましては、もうたびたび申し上げておりますように、我々としては、この社会保障制度を次の世代に引き渡すということは、建設公債とは違って、赤字公債を発行し続けているという状況は極めて無責任なことになると思いますし、また、マーケットや国際社会の中における国家の信認というものを確保するための上からも、こういった財政健全化というものにきちんと向かっているという姿勢を示す意味からも、我々としては、消費税率一〇%の引き上げというものについては確実に実施をさせていただきたいと考えております。
○宮本(岳)委員 個人消費がこれだけ後退している中で消費税の増税は、景気を悪化させることは明白だと私は思います。
ことしに入り株価は下落を続けておりますけれども、最近の日経平均株価、一万五千円から一万六千円、きょうも一万六千円を割り込みました。こういう推移であります。昨年の高値二万九百五十二・七一円、これから比較すると、五千円から六千円の大幅な下落ということになります。もう少し下がれば、リーマン・ショックなどの急落局面並みというような株価の下落だという指摘もあるわけです。
そこで麻生大臣に重ねて聞くんですけれども、リーマン・ショック並みの重大な事態というのは、一体どのような基準で判断するのか。少なくとも、株価の変動幅、下落幅も考慮される基準の一つとなるのか。麻生大臣にお伺いしたい。
○麻生国務大臣 いわゆる足元では、御存じのように、世界的なリスクの回避、金融とか金とかそういう意味ですけれども、リスクの回避の動きが金融市場というところで広がっております中で、日本の市場でも、これは変動が見られておるのは事実です。
しかし、実体経済を見れば、先ほども申し上げましたように、企業収益というものが一番肝心なところですが、過去最高となっておりますのは、日本経済のファンダメンタルズというものはしっかりとしておるということは、これはもうはっきり申し上げておかないかぬところだと思っております。
その上で、平成二十九年四月の消費税率一〇%の引き上げにつきましては、これまでも申し上げてきておりますように、重大な事態が発生しない限り確実に実施するということに尽きるんですが、日本経済に対する重大な事態というのはどんなもんじゃというような、経済状況なのかについての説明ということなんだと思いますが、それはまさにそのときの政治判断においてなされるしかないんだと思いますが、その判断を具体的な基準で申し上げるということは極めて困難だと思っておりますことは御理解いただけると思っております。
少なくとも、景気判断条項を削除をいたしております以上、一昨年のような景気判断というものを行うことはないということだと存じます。
○宮本(岳)委員 もう少しお伺いしたいんですが、株価の大幅な下落、こういうものがその判断の基準のもちろん全てでないことはわかるんですが、株価の下落も入るのか入らないのか。いかがですか。
○麻生国務大臣 何を基準にするかというのは、これはもう経済判断をするときには、雇用もありましょうし、経済状況もありましょうし、いわゆる企業の業績等とかいろいろなもの、そういったもろもろ考えながら、一つに、株価というものもその中の一つだろうとは存じます。
○宮本(岳)委員 株価がそこに含まれることを否定はされなかったと思うんです。
二十二日のブルームバーグの報道、実に衝撃的な報道がございました。「原油相場が一バレル当たり三十―四十ドルのレンジにとどまれば、世界の政府系ファンドが今年、四千四十三億ドル(約四十五兆八千億円)を株式市場から引き揚げる可能性があると、ソブリン・ウェルス・ファンド・インスティチュートが指摘した。」こういう報道であります。
政府系ファンドは二〇一五年に上場株式を約二千百三十四億ドル相当売却した、こう言われており、仮にことしじゅうに、このブルームバーグが伝えるとおり、四千四十三億ドル、約四十五兆八千億円、こういう株式が売却されれば、二〇一五年の倍のインパクトで株式市場の下落を招くことになろうと思うんです。
二〇一五年に政府系ファンドはこのような投資行動を行ったとの認識を大臣はそもそも持っておられるか、ことしの投資行動についてそのような動きがあるのかどうか。麻生大臣のこの御認識をお伺いしたいと思います。
○麻生国務大臣 これは、世界じゅうにあります政府系ファンドの投資行動について御指摘のような報道があったということは承知いたしておりますが、同時に、市場関係者から、世界の政府系ファンドのことしの動向につきましては、原油価格の下落とか世界的な景気減速懸念等々を背景にして、リスクの回避の動きが広まっているということがあるということも承知をいたしております。
ただし、市場というものは、これはさまざまな要因で動きますので、個別の投資家の動向がすぐに市場に与えるという影響について、これは具体的にコメントするということは差し控えさせていただきたいと存じますが、一方、安倍内閣におけるこの三年間の経済再生を受けた取り組みによって、企業収益が過去最高となるなどしているから日本に対しての買いが入ってくるんだという面もあろうと思いますので、日本経済のファンダメンタルズはしっかりし続けていくというのは大事なところですが、いずれにしても、市場の動向というものにつきましては、常に関心を持って見守っておらねばならぬところだと思っております。
○宮本(岳)委員 いやいや、ファンダメンタルズがしっかりしているから日本に買いが入っているのは結構なんですが、このブルームバーグの報道どおり、政府系ファンドにこれだけの売却の動きがあれば、つまり、オイルマネーが下がっているものですから資金を引き揚げる動きがあると、四十五兆からのお金を売却して引き揚げれば、日本の株式市場も相当の影響を受けることはもう誰が考えても当然であって、こうなればリーマン・ショック並みの重大な事態が想定されるのではないかと私は思うんですが、いかがですか。
○麻生国務大臣 たらればの話をしていきますとこれはちょっとエンドレスな話になりますので、ちょっと時間ももったいなかろうと思いますので、先生、これはエンドレスの話をしないと、途中で切りますと、話をいいところだけ切られて、また話が別の方向に飛びますのはもう数々これまで経験させられましたので、そういったことは避けないかぬと思っております。
今言われたようなことは、いろいろな状況というものを私どもは考えておかないかぬというので、先ほど、もう一人の宮本先生の方の答弁にも申し上げたと思いますけれども、私どもとしては、基本的に、今世界じゅうの情勢がいろいろな形で動いておりますので、これは何も政府系ファンドに限らず、原油の話にしても、ヨーロッパの銀行の話にしても、アメリカの話にしても、中国の話にしても、いろいろな不安要素というものが四つも五つもあちらこちらにありますのは事実でありますので、そういったものがどう連携して、どういった形で我々に影響を与えてくることになるかというのを予想するというのはなかなか難しいんだと思っておりますが、非常事態というものは常に考えておかねばならぬものだと思っております。
○宮本(岳)委員 きょうはひとつじっくりと議論したいと思って、構えて質問させていただいておりますが、余りにもこのブルームバーグの報道が衝撃的なものですから、もちろん、個々の投資家の動きについて具体的に答弁できないことは重々わかって聞いておるわけです。
きょうは日銀の黒田総裁にも来ていただいております。
世界の政府系ファンドの投資行動について、もちろん情報収集はされておられると思うんですけれども、どのようにこういう報道を認識されているか。もちろん一般論としてしか答えられないとは思いますが、ひとつ御見解をお伺いしたいと思います。
○黒田参考人 近年、国際金融市場において政府系ファンドのプレゼンスが大きくなっているということは事実であります。また、このところの世界的な株価下落の背景として、原油価格の下落を受けて産油国の政府系ファンドが株式の売却に動いていることがあるという見方が市場にあるということも認識しております。
その上で申し上げますと、先ほど麻生財務大臣が言われたことと重なりますけれども、現在の国際金融市場において大きな振れが続いている背景としては、原油価格下落、あるいは中国経済の先行き不透明感に加えて、欧州の銀行セクターに関する懸念、あるいは米国の金融政策の先行きに対する不透明感が強まるという中で、世界的に投資家のリスク回避姿勢が、私から見ますとやや過度に広がっているということがあるのではないかと思っております。
ただ、いずれにいたしましても、市場は市場でございますので、日本銀行としても、こうした国際金融市場の動きが我が国の経済あるいは物価にどのような影響を与えるかについては、しっかりと注視してまいりたいと思っております。
○宮本(岳)委員 昨年の二倍の上場株式が売却されれば、日本の市場にも重大な影響を与えることはもう間違いありません。
原油価格の一段の下落、中国を初めとする新興国、資源国経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安定な動きとなっていると今御答弁がありました。黒田総裁もそういう御認識です。先月の政策決定会合でマイナス金利を導入されたのも、そういう動きもその一つの要因なんだろうと思います。
前回、安倍総理が消費税増税の時期を二〇一七年四月一日に延期すると決断したのは、量的・質的金融緩和政策を拡大した二〇一四年十月三十一日の政策決定会合の約三週間後のことでありました。今回、三次元の金融緩和が導入され、不透明な世界経済の動きの中で、日本経済への重大な影響が懸念される事態が起こっているわけです。
当時、二〇一四年九月四日の記者会見で黒田総裁は、「消費税率引き上げが行われた場合と、行われない場合のリスクをどうみるかは難しい点ではありますが、行われない場合には、それによって仮に政府の財政健全化の意思や努力について市場から疑念を持たれると、確率は非常に低いとは思いますが、そのような事態が起こってしまうと、政府・日銀としても、対応のしようがないということにもなりかねません。」と説明した上で、「確率は低くても、その影響は甚大なものになる可能性があるという意味では、リスクが大きいと思っています。」と述べられました。
消費税率引き上げを予定どおり行わないリスクについて二〇一四年当時と同じ考えでおられるか、黒田総裁の見解を求めたいと思います。
○黒田参考人 消費税の扱いも含めました具体的な財政運営については、政府、国会において行われるものというふうに認識しておりまして、具体的に意見を申し述べることは差し控えたいと思いますが、その上で一般論として申し上げますと、やはり持続可能な財政構造を確立するということは、まず、日本経済が持続的な成長を達成していく上で必須の前提でありますし、日本が国全体として取り組まなければならない課題であるというふうに思っております。
そういう意味で、政府による財政再建の取り組みが引き続き着実に進められていくということを期待しておりまして、そういったリスクが大きくならないということを期待しております。
○宮本(岳)委員 私は、GDPがマイナスとなって、実質賃金が低下し個人消費が減少している、こういう現状を考えれば、リーマン・ショックのような事態がなくても消費税増税は中止すべきだと繰り返し申し上げてまいりました。
この問題は今後も当委員会で議論するとして、きょうは、日本銀行の金融緩和政策についてこの後も質問を続けたいと思います。
一月二十九日の金融政策決定会合でマイナス金利の導入が決定され、異次元の金融緩和というものが三次元の金融緩和になりました。
世界大百科事典を見てみますと、異次元というのは、「文学的空想における異世界と数学の次元概念とを合成した造語で、正しくは高次元的に存在可能な別世界とでもいうべきもの。」わけのわからぬ説明でありますけれども、そういう意味では、高次元的な世界から三次元だったら、むしろ次元が下がったのではないかと言わざるを得ないと思うんです。
つまり、異次元というのは、ありていに言って、失敗に至ったために、金利という伝統的な手法に戻り、マイナス金利を導入せざるを得なかったのではないか。例えばBNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、今回のマイナス金利政策について、国債を購入する量的ターゲットの拡大が限界に近づき、金利ターゲットへの移行だと指摘をしております。
黒田総裁は、量的・質的金融緩和の限界について否定されております。否定されるならば、今回の決定会合では、なぜ量的・質的金融緩和を据え置いてマイナス金利だけを導入することとしたんですか。
○黒田参考人 御案内のとおり、今回のマイナス金利の導入ということは、量、質面での拡大が限界を迎えたから行ったというものではございません。マイナス金利つき量的・質的金融緩和は、従来の量的・質的金融緩和に金利面での緩和オプションを追加して、量、質、金利の三つの次元で緩和手段を駆使することによって金融緩和を進めるものであります。
金利面では、日銀当座預金の一部の金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買い入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えることができるようになるということでありまして、今後とも、量及び質の面での追加緩和も選択肢でございます。
今回の決定に至ります議論の経緯というのは、次回の金融政策決定会合において議事要旨が承認されますと公表されますけれども、このところの金利環境を踏まえ、年間約八十兆円という現行の国債買い入れペースを維持しつつ、日銀当座預金の一部にマイナス金利を付すことによって、先ほど申し上げたように、イールドカーブの起点を引き下げることが最も効果的に金利全般の一段の低下を促すことができるというふうに判断したものでございます。
○宮本(岳)委員 量、質、金利という三次元で緩和手段が使えるということで、より金融緩和を抜本的、大胆に進められるようにした、こういう答弁なんですけれども、ならば不思議なのは、なぜ、これまでの三年間、マイナス金利を金融緩和の手段として使わなかったのかということであります。
今回の決定に際して総裁は、ダボス会議前に事務方へ指示を出し、帰国後に今回の選択肢を提示されたと言われております。量的・質的金融緩和が導入された二〇一三年四月には、マイナス金利政策について日本銀行はどのような認識を持っておられたのか。これが一つです。
また、本委員会でも、逐次投入ではないかとの質疑も行われましたけれども、明確な答弁はありませんでした。三年前に始まった量的・質的金融緩和は、初めから、異次元でなく、マイナス金利も加えた三次元の金融緩和として導入されなかったのは一体なぜなのか。この二点をお答えいただけますか、総裁。
○黒田参考人 御指摘のように、二〇一三年の四月に導入いたしました量的・質的金融緩和というものは、二%の物価安定の目標に対する強いコミットメントによって予想物価上昇率を引き上げるとともに、大規模な長期国債の買い入れによってイールドカーブ全体にわたって名目金利に低下圧力を加える、それによって実質金利を引き下げて経済にプラスの影響を与えようということでございました。
今回のマイナス金利政策につきましては、日本銀行の量的・質的金融緩和の導入以前にも一部の国でマイナス金利が導入された例はありますけれども、二〇一四年の六月にECBがマイナス金利を導入した後、欧州諸国においてマイナス金利を導入する動きが広がりました。さらに、ECBでは、二〇一五年の一月に長期国債等の大規模な買い入れを導入したわけですけれども、その後の状況を見ますと、マイナス金利のもとでの長期国債等の買い入れは円滑に進んでいるようでございます。
先般のマイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入に当たりましては、こうした欧州の経験も踏まえた上で検討した結果、マイナス金利によってイールドカーブの起点を引き下げるとともに、従来から続けております大規模な長期国債の買い入れを継続することによって、より強力な金利引き下げ効果が得られるというふうに判断したものでございます。
○宮本(岳)委員 やはり最初の時点でマイナス金利を導入しなかったのは、それは慎重だったのではないかと思うんです。
先日の金融政策決定会合において石田委員は、これ以上の国債のイールドカーブの低下が実体経済に大きな効果をもたらすとは判断されない、こう言って反対したことは注目されます。
二月十九日の記者会見で石田委員は、効果が期待できないと反対したことについて二つの理由を挙げておられます。一つは、イールドカーブをさらに引き下げても、経済に対する刺激効果は限定的だということ、もう一つは、ポートフォリオリバランスの効果についても限定的だということであります。
まず一つ目の刺激効果でありますけれども、石田氏は、「貸出金に対応する金融機関の調達コストの低下幅はもともと限られており、他に経費率という経費も掛かっていますので、貸出金利の下げ余地は限られる」と考えたと述べておられるんです。つまり、金融機関の貸出金利の下限にも限界がある、こう言っているわけですよ。
黒田総裁は、金融機関の現在の貸出金利にまだ下げる余地がある、こうお考えですか。
○黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、マイナス金利つき量的・質的金融緩和というものは、日本銀行の当座預金の一部にマイナス金利を付すことによってイールドカーブの起点を下げて、大量の国債買い入れの継続とあわせて、金利全般に強い下押し圧力を加えていくということを主として想定しております。
この点、マイナス金利つき量的・質的金融緩和導入以降の金利の動向を見ますと、国債のイールドカーブは全体として低下しておりまして、貸し出しの基準となる金利や住宅ローンの金利もはっきりと低下しております。
このように、金利面では政策効果はあらわれておりまして、今後、その効果が実体経済や物価面にも着実に波及していくものというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 時間が迫ってきましたのでまとめてちょっと聞くんですけれども、石田氏はその会見で、「民間の金利はこれまでにも大きく下がっていますが、必ずしも設備投資の増加に繋がっているとも思えない部分があります。」こう述べておられます。
また、石田氏はポートフォリオリバランス効果についても、「ポートフォリオのリバランスをする対象で一番大きいのは、本来は貸付なのですが、貸出の状況は御承知のとおり顕著に伸びていません」とし、「限界的に貸出が大きく伸びていくということはなかなか難しい」と指摘しています。
一方、総裁は二十二日の予算委員会で、「実は貸し出しも、この量的・質的金融緩和のもとで二%台の貸し出しの増加が続いておりまして、特に中小企業向けは、従来マイナスだったんですけれども、二〇一三年半ば以降は中小企業向けもプラスに転じておりまして、足元では多分中小企業向けの方が大企業向けよりも貸し出しは増加をいたしております。」と答弁をしております。
決定会合ではこの企業への貸し出しについてどのような議論がなされたのか。黒田総裁と石田氏の認識、全くこれは食い違っているんですけれども、いかがですか。
○黒田参考人 先ほど申し上げましたように、金融政策決定会合におけるいろいろな意見が出され、それが議論されて最終的に金融政策の決定に至るという議論の流れというものは議事要旨で今後公表されるわけですが、それに先立って、金融政策決定会合後にすぐに「主な意見」という形で、いろいろな政策委員その他政策委員会のメンバーの方々の意見を並べて紹介をしております。
そうした中に、貸し出しが余り伸びないのではないかとか、いろいろな意見が出されたことは事実でありますが、そういう議論が出て、最終的にマイナス金利つき量的・質的金融緩和の決定に至った議事の流れについては、議事要旨をぜひごらんになっていただきたいと思いますが、銀行貸し出しにつきましては、委員御指摘のとおり、貸出金利が既往最低水準まで低下するもとで銀行貸し出しが前年比で二%台の伸びを続けておりますし、それまで前年比マイナスで推移していた中小企業向けの貸し出しも、二〇一三年半ば以降、プラスに転じております。
また、設備投資につきましても、企業収益が過去最高水準にあるもとで増加基調にありまして、GDPベースの名目投資額は、年率換算で見ますと、二〇一三年一―三月期が六十三兆円程度だったものが二〇一五年十―十二月期には七十・八兆円と、しっかりと増加してきているというふうに認識をしております。
○宮本(岳)委員 時間が来ましたのできょうはここでとどめますけれども、設備投資の増加や貸し出しの伸びなどという、これは事実関係、ファクトですよ。ファクトについて真逆の認識を総裁と石田委員と持たれている。議事録要旨が出れば、どういう議論だったのかは議事録要旨にそれは出ているのでしょうけれども、こういう状況のもとでとられているマイナス金利政策だと思うんです。
マイナス金利政策がどのような影響を与えるのか国民は不安の気持ちを持っていますよ、どんどん預金の利子だって下がっているわけですから。そもそも、三年間たってこの状況を見れば、異次元の金融緩和の政策自体が破綻をしていると私は言わざるを得ないと思います。
副作用の懸念が高まる金融緩和政策の中止を求めて、私の質問を終わります。