奨学金新案に問題点 宮本岳志議員 返済猶予拡充迫る(しんぶん赤旗)
第190回国会 予算委員会第四分科会 第1号
本分科会は平成二十八年二月二十二日(月曜日)委員会において、設置することに決した。
二月二十四日
本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
井上 貴博君 石原 宏高君
竹下 亘君 古屋 圭司君
井坂 信彦君 浮島 智子君
二月二十四日
石原宏高君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成二十八年二月二十五日(木曜日)
午前八時開議
出席分科員
主査 石原 宏高君
井上 貴博君 石川 昭政君
尾身 朝子君 神谷 昇君
小松 裕君 竹下 亘君
務台 俊介君 八木 哲也君
岡本 充功君 神山 洋介君
坂本祐之輔君 田島 一成君
長島 昭久君 初鹿 明博君
浮島 智子君 岡本 三成君
角田 秀穂君
兼務 大串 正樹君 兼務 阿部 知子君
兼務 中野 洋昌君 兼務 宮本 岳志君
兼務 本村 伸子君 兼務 木下 智彦君
兼務 椎木 保君 兼務 鈴木 義弘君
…………………………………
文部科学大臣 馳 浩君
財務副大臣 岡田 直樹君
政府参考人
(内閣官房総合海洋政策本部事務局長) 加藤由起夫君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官)
(内閣府子ども・子育て本部審議官) 中島 誠君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 森本 浩一君
政府参考人
(内閣府沖縄振興局長) 藤本 一郎君
政府参考人
(総務省自治行政局公務員部長) 北崎 秀一君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 水嶋 光一君
政府参考人
(文部科学省大臣官房文教施設企画部長) 山下 治君
政府参考人
(文部科学省生涯学習政策局長) 有松 育子君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 小松親次郎君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 常盤 豊君
政府参考人
(文部科学省科学技術・学術政策局長) 伊藤 洋一君
政府参考人
(文部科学省研究振興局長) 小松 弥生君
政府参考人
(文部科学省研究開発局長) 田中 正朗君
政府参考人
(スポーツ庁次長) 高橋 道和君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 樽見 英樹君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 浜谷 浩樹君
政府参考人
(厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長) 坂口 卓君
政府参考人
(原子力規制庁長官官房緊急事態対策監) 大村 哲臣君
文部科学委員会専門員 行平 克也君
予算委員会専門員 柏 尚志君
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分科員の異動
二月二十五日
辞任 補欠選任
古屋 圭司君 務台 俊介君
井坂 信彦君 田島 一成君
浮島 智子君 伊佐 進一君
同日
辞任 補欠選任
務台 俊介君 石川 昭政君
田島 一成君 神山 洋介君
伊佐 進一君 上田 勇君
同日
辞任 補欠選任
石川 昭政君 小松 裕君
神山 洋介君 長島 昭久君
上田 勇君 伊佐 進一君
同日
辞任 補欠選任
小松 裕君 神谷 昇君
長島 昭久君 小川 淳也君
伊佐 進一君 樋口 尚也君
同日
辞任 補欠選任
神谷 昇君 八木 哲也君
小川 淳也君 岡本 充功君
樋口 尚也君 岡本 三成君
同日
辞任 補欠選任
八木 哲也君 尾身 朝子君
岡本 充功君 神山 洋介君
岡本 三成君 浮島 智子君
同日
辞任 補欠選任
尾身 朝子君 古屋 圭司君
神山 洋介君 初鹿 明博君
浮島 智子君 角田 秀穂君
同日
辞任 補欠選任
初鹿 明博君 井坂 信彦君
角田 秀穂君 樋口 尚也君
同日
辞任 補欠選任
井坂 信彦君 坂本祐之輔君
樋口 尚也君 上田 勇君
同日
辞任 補欠選任
坂本祐之輔君 岡本 充功君
上田 勇君 角田 秀穂君
同日
辞任 補欠選任
岡本 充功君 井坂 信彦君
角田 秀穂君 浮島 智子君
同日
第一分科員鈴木義弘君、第二分科員木下智彦君、第三分科員本村伸子君、第六分科員中野洋昌君、椎木保君、第七分科員大串正樹君、阿部知子君及び宮本岳志君が本分科兼務となった。
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本日の会議に付した案件
平成二十八年度一般会計予算
平成二十八年度特別会計予算
平成二十八年度政府関係機関予算
(文部科学省所管)
次に、宮本岳志君。
○宮本(岳)分科員 日本共産党の宮本岳志です。
所得連動返還型奨学金制度について質問いたします。
私は、文部科学委員の時代から、日本の奨学金制度は返済の必要のない給付型奨学金が一つもなく、異常な高学費のもとで、学生たちが卒業後、数百万円から一千万円にも及ぶ大きな借金を背負う、学生ローンと言うほかない制度となっていることを繰り返し指摘し、その抜本的な改善を求めてまいりました。
二〇一三年四月一日、予算委員会での私の質問に、当時の下村文部科学大臣が、「真に困窮されている方に対して適切な対応を学生支援機構としても考える時期に来ているのではないか」、検討したいと答弁をされ、その三日後の四月四日、高等教育局長決定、「学生への経済的支援の在り方に関する検討会の開催について」が発出されたわけです。
以来、検討会は、小林雅之東大教授を主査に、一年三カ月、十三回の会議を開き、二〇一四年八月二十九日、この「学生への経済的支援の在り方について」をまとめたわけですね。
この報告書では、子どもの貧困対策法の趣旨を踏まえ、経済的困難にある学生への支援の重要性、高等教育の受益者は学生本人のみならず社会全体が受益者であるとの観点から、学生等の学びを社会全体で支えることが極めて重要、そう結論づけております。
まず、文部科学大臣、これは間違いないですね。
○馳国務大臣 間違いございません。
○宮本(岳)分科員 この報告書は、「将来的に目指すべき方向性」として、国際人権A規約十三条2の(b)、(c)の留保撤回、高等教育についての無償教育の漸進的な導入にも触れて、給付型奨学金等の無償化施策をも提言するという画期的なものでありました。
その上で、機構の貸与型奨学金のあり方について、無利子転換とともに、より柔軟な「所得連動返還型奨学金制度の設計や運用システムの構築を進めていくことが重要である。」というふうに提言をしております。
この後に設置された所得連動返還型奨学金制度有識者会議というものは、この提言を受けて文科省内に設置されたものですね、文科大臣。
○馳国務大臣 昨年九月に設置した有識者会議において検討を進めております。
○宮本(岳)分科員 我が党は、さきの経済的支援の在り方に関する検討会報告書、これを非常に評価いたしました。その直後の二〇一四年十月七日に、「学生が安心して使える奨学金に」と題する政策提言を私も参加をしてまとめさせていただきました。これは、この報告書の中身を大いに評価しつつ、真の学生支援のためには今どのような改革が必要かということを提言したものであります。そこでは、「「年収三百万円以下は返済猶予」という現行を踏まえ、少ない所得から無理に返済させることのない制度にする」こと、「特定の学生に限るのではなく、貸与奨学金全体を対象にすべき」だ、こう我が党は提案をさせていただいた。
ところが、去る二月十日付で学生・留学生課がパブリックコメントを募集した、有識者会議の新たな所得連動返還型奨学金制度の創設に関する第一次まとめ素案、これを見て私は驚いたんですね。十一ページには「年収〇円から返還開始」となっております。民主党政権時代に創設され、既に二〇一二年度から実施されている所得連動返還型無利子奨学金制度でも、年収三百万円に達するまでは返済を猶予しております。にもかかわらず、今回、新たなとかより柔軟なと銘打って、一層よりよい制度を制度設計するはずだった有識者会議が打ち出したこの素案には、そうなっているわけですよ。
有識者会議がこのような改悪案を、私は改悪だと思うんですが、打ち出したのには、どのような議論があったんですか。
○馳国務大臣 先般、有識者会議の第一次まとめの素案について、パブリックコメントが行われたところであります。素案においては、最低の返還月額は二千円から三千円の範囲で検討が行われております。
素案においては、本人の収入がゼロ円の場合においても、「奨学金返還に対する意識を継続させるという観点や返還口座の維持・管理コストに鑑み、一定額の返還を求めることが望ましい。」とされております。
現行制度においては、収入がない方に対しても通常の返還月額の返還を求めており、新制度で返還月額が二千円から三千円となれば、負担軽減は図られるものと考えております。
なお、本人の年収が三百万円以下の場合については、申請により返還を猶予することが可能とする方向で検討が行われております。
以上です。
○宮本(岳)分科員 二〇一二年度から既に始まっている所得連動返還型奨学金制度、これは、返還を開始する最低年収は年収ゼロ円ではありません。本人が年収三百万円を得るようになった後、返還開始という制度になっているはずです。そうですね。
○常盤政府参考人 現行の制度におきましては、今大臣から申しましたように、本人の年収が三百万円以下の場合については、申請により返還を猶予することが可能となっておりますが、その際に、今、委員の御指摘は、月額のお話と、幾らから幾らまでが猶予されるかというところが、整理させて申し上げさせていただきたいんですけれども、月額の問題で申しますと、現在は、例えば私立、自宅生ですと、ゼロ円であっても、返還月額は、月額五万四千円を四年間貸与した場合には、一万四千四百円を返還するという仕組みになっております。ただ、それが所得三百万円に行くまでの間は猶予されるという仕組みでございます。
○宮本(岳)分科員 そうなんですよ。三百万円に達するまでは猶予されて、一円も返還しないという制度になっているわけですね。
では、民主党政権時代につくられ、私も要求してやったんですが、既に始まっている所得連動返還型無利子奨学金制度の意義と目的というものについて改めて述べていただけますか。
○常盤政府参考人 平成二十四年度から行っております現行の所得連動返還型制度でございますけれども、家計の厳しい世帯、家計支持者の年収が三百万円以下の場合の学生等に対しまして、無利子奨学金の貸与を受けた本人が卒業後に一定の収入を得るまでの間は、申請に基づき返還を猶予する所得連動返還型無利子奨学金制度ということで、導入をしているということでございます。
○宮本(岳)分科員 それは制度の説明でありまして。
ここに、JASSO、日本学生支援機構のホームページの所得連動返還型無利子奨学金制度、印刷して持ってまいりましたが、こう書いてあります。「学ぶ意欲と能力がありながら経済的理由により学業を断念することのないよう、家計状況の厳しい世帯の学生・生徒を対象として、無利子奨学金の貸与を受けた本人が、卒業後に一定の収入」、つまり年収三百万円に達するまでは何年でも「返還期限を猶予することで、将来の返還の不安を軽減し、安心して修学できるようにすることを目的とした制度です。」これがこの制度の意義と目的だと思うんですね。
卒業後に一定の収入、つまり年収三百万円に達するまでは何年でも返還期限を猶予することで、将来の返還の不安を軽減する、安心して勉強できるようにすることを目的としているわけです。
この制度はいいんですけれども、ただ、これを受けるためには、進学時に親の年収が三百万円以下という制約が実はあるんです。進学時の親の年収と卒業後の本人の年収との間には直接的な因果関係はありません。親に財力があれば親の支援もあるだろうというんですけれども、大学進学時に親の年収が三百万円を超えていたからといって、卒業後、奨学金の返還が始まったときに親がその経済状況を保っている保証もありません。これは少し不公平だ。そもそも、入学時の親の財力にかかわらず、奨学金の返還というものは、本人の所得に連動して返還する無理のない制度にすべきではないかという声ですね。
あわせて、現在既に存在する所得連動返還型無利子奨学金制度は、年収三百万円に達するまでは返還が猶予されて返還額はゼロでありますけれども、年収三百万円に達した途端に満額の返還が求められるという制度であって、これも少し合理性に欠き、より柔軟な制度にしようではないか、こういうことで、この有識者会議で、新たな、より柔軟な制度設計をしてきた、こういうことですね、文科大臣。
○馳国務大臣 改めて答弁いたしますが、有識者会議の素案では、新制度においても同様の要件を満たした場合は無期限に返還猶予を可能とすることがまず検討されております。
一方、返還を開始する最低年収については、ゼロ円からとする場合と三百万円からとする場合とで試算を行い、後者の場合には回収金が著しく減少することが予測されております。
こうした試算結果も踏まえ、有識者会議においては、奨学金制度全体を安定的に運用するために、返還額が確保された制度とする観点から、年収ゼロ円から返還を開始する方向で検討が行われているところであります。
○宮本(岳)分科員 同じような制度にすると、試算してみたら返還金が失われる、こういう計算結果が出たという答弁ですね。
これは高等教育局でいいですけれども、一体、どれぐらいマイナスが出るというシミュレーションになっているんですか。
○常盤政府参考人 お答え申し上げます。
所得連動返還型奨学金制度有識者会議で示された試算でございますが、年収三百万円から返還を開始する等の条件を設定しシミュレーションを行ったところでございますが、要返還額三千五百五十三億円に対しまして、約千二百三十億円の未回収金が生じるという試算結果でございます。
○宮本(岳)分科員 千二百三十億円が回収不能になるということでした。この額が問題になっているわけですね。
従来どおり返還猶予制度は残すということでありますけれども、返還猶予というのは従来五年間とされておったんです。これも私が随分繰り返し国会で取り上げて、二〇一四年度からやっと、二倍の十年返還猶予が受けられるというふうに延びました。その後、現行の所得連動返還型無利子奨学金制度においては、年収三百万円に達するまでは無期限に猶予されるという制度になっております。
今回、新しい制度をつくるというんですから、当然それを踏襲するだろう、つまり、三百万円になるまでは無期限に返済は猶予されるとみんなが期待するのは当たり前でありますけれども、ところが、素案を見ますと、返還猶予の申請可能年数は通算十年(または十五年)、十年か十五年というふうにして、期間制限をつけてあります。
これは現行の所得連動返還型無利子奨学金に比べても、明確な後退ということになるのではありませんか。大臣。
○馳国務大臣 私は、その後退という考え方は、指摘はできるかもしれませんが、そもそも奨学金制度自体が、公的資金が使われており、そして、返還していただいたお金でまた次の方々に、より多くの学生に、経済負担を軽減するために奨学金をお貸しする。そして、さらに言えば、有利子から無利子へというふうな流れで、より多くの学生諸君にやはり経済的負担のないようにという方向性で議論しておるわけであります。
したがって、やはり返還をしていただくという一つの財政的なモラルでもあると思っておりまして、ぜひこの制度の趣旨を理解した上で、より拡充されるような方向についての御理解もいただきたいと思っています。
○宮本(岳)分科員 先ほど申し上げたように、現行の所得連動返還型無利子奨学金というものは、三百万円を超えるまでは無期限に猶予される。その制度を受けられるかどうかは、入学時の、つまり奨学金を借りるときの親の年収で、三百万で線を引かれるわけですね。
しかし、先ほど申し上げたように、そのことは、やがて御当人が返済できるようになるかどうか、御当人が年収三百万にも達しない可能性とは、何の直接的な因果関係もないわけです。十年たてば、十五年たてば、やがて何とかなるという保証にもならないわけですね。
片方でそういう方々が現にいるわけでありまして、今回、残念ながら、親御さんの年収が三百万円を超えていた人にも所得連動型でやろうという制度設計をするときに、こっちの方は期限を定める、つまり十年で諦めてくれ、その後は返してもらうぞと。これはいかにも不公平な話になると思うんですね。
これがこうなったのには、これまたシミュレーションをやってみたという話を聞きました。高等教育局、シミュレーションはどうなっていますか。
○常盤政府参考人 有識者会議におきましては、返還猶予期間に年数制限を設けないこととする条件と、十年または十五年を上限とする条件を設定いたしまして、それぞれ回収金の試算を行ったところでございます。
その結果、年数制限を設けない条件では、十年または十五年を返還猶予期間の上限とする条件と比較いたしますと、回収割合が相当程度落ち込むということが予測されたところでございます。
具体的には、ある条件を付してございますけれども、猶予期間の年数制限を設けない場合には約六百九十億円が未回収金の予測、十年を上限とする場合には約四十億円という予測試算ということになってございます。
○宮本(岳)分科員 猶予の上限を設けなければ六百九十億円という額がマイナスになる、だから、これはふつり合いだけれども、この制度にはつけるんだという制度設計をしているわけですね。これは、まさにお金の問題がネックになっているわけですよ。
きょうは財務副大臣にも来ていただいているわけですけれども、こういうものにきちんと予算措置をするというのは本当に当たり前だと思うんだけれども、副大臣、いかがですか。
○岡田副大臣 ただいまお話が出ております所得連動返還型奨学金の制度設計につきましては、今御議論がありましたように、文部科学省の有識者会議で議論をされていると承知しております。
それで、この制度が、平成二十九年度の進学者からの導入に向けて、その確実な実施を図るために、私どもも、平成二十七年度補正予算においてシステム改修に必要な経費を計上し、措置をしたところでございます。
基本的な考え方としては、我々も、意欲と能力のある学生の学習機会というものを確保していくために、低所得者などへの十分な配慮を行っていくことが重要と考えておりますが、厳しい財政事情を踏まえながら、文科省とも御相談をしながら適切に予算を措置してまいりたいと思っております。
○宮本(岳)分科員 私は今は財務金融委員会におりますから、岡田副大臣とこれからもこの議論を一層詰めていきたいと思っています。
しかし、こういう学生の将来にかかわるところにしっかり予算措置をするというのは当たり前の話であって、我が国の未来にかかわる大事な問題だということは申し上げておきたいと思うんですね。
もう一つ、制度設計を見て少し私が驚いたのは、返還者が被扶養者になった場合、扶養者のマイナンバーの提出を求めて、返還者と扶養者の収入の合計で返還額を決定するとしております。これは今回初めて入れるんですね。これは、あしき家族主義ではないかという批判が寄せられております。
専業主婦の場合も、夫がマイナンバーの提出を拒否する場合もあるでしょうし、たとえ夫が高所得だったとしても、さまざまな事情から別居をするという場合もあるでしょう。夫のDVで身を隠さざるを得ないということも、これは現実にはあると思うんですね。
そのような場合、これはどうなるのか。これは局長でいいですが、答弁していただけますか。
○常盤政府参考人 有識者会議の第一次まとめ素案に即してお話をさせていただきたいと思います。
返還者が専業主婦等の被扶養者である場合、返還月額の決定に当たっては、その配偶者等の扶養者の収入を勘案して返還額を決定する仕組みとすることが適当とされております。
一方、返還猶予の申請可能所得については、新制度においても、現行制度と同じく、返還者本人の年収が三百万円以下の場合には猶予が可能となる制度とする方向で検討が行われているという状況でございます。
○宮本(岳)分科員 猶予の申請については家族主義をとらないということだと思うんですけれども、私はやはり、そもそもの場合でも、家庭というのはさまざまでありますから、この制度設計についてはさらなる改善の余地があるということを申し上げておきたいと思うんですね。
さて、奨学金制度の改善という点では、馳大臣も冒頭おっしゃった、有利子奨学金の無利子転換、とりわけ、無利子奨学金を受ける資格があるのに、予算の不足から有利子奨学金を借りざるを得ない残存適格者という方々の一掃は急務だと思います。
文部科学省に聞きますけれども、おわかりであれば大臣でもいいんですけれども、今年度予算が成立したとして、残存適格者はなお何人残るのか、また、あとどれだけの予算があれば残存適格者を一掃できるのか、お答えいただけますか。
○常盤政府参考人 お答え申し上げます。
平成二十八年度の見込みの残存適格者でございますが、二万四千人というふうに考えてございます。
平成二十六年度の無利子奨学金の平均貸与月額が五万六千円でございます。これを十二カ月貸与するということになりますので、二万四千人掛ける五万六千円掛ける十二カ月ということで、初年度は、単年度で約百六十一億円となるわけでございます。
なお、長期的には、一定額を措置し、最終的には返還金で事業規模を維持するということが可能となるということになります。
○宮本(岳)分科員 百六十一億円ですよ、財務副大臣。
予算案の中には、例えば、私たちが反対しているF35という戦闘機、これは一機二百億近いんですね。それから、我が党は一切受け取ったことはありませんけれども、政党助成金というものが我が党以外の党に出ております。三百二十億円ですから、半額ですよ。三百二十億円の半額があればこれは一掃できるわけですね。
事は、残存適格者というのは何かといったら、無利子奨学金を受ける資格がちゃんとある、適格で、しかし、予算措置がされていないから、無利子で受けられず有利子の奨学金になっているという、ひどい話なんですよ。
何でこの百六十一億円が、財務省、出せないんですか。財務副大臣。
○岡田副大臣 無利子奨学金の残存適格者を解消するためには、ただいまも答弁がございましたとおり、約百六十一億円が必要となる計算でございますけれども、これは、一年生のときから四年生のときまで通算して考えますと、大学四年で卒業するとしたら、その百六十一億円の四倍、そういう負担であると思います。
また、返還金だけで賄えるようになるまでの中長期間は国費負担を続ける必要がありまして、これは厳しい財政状況を踏まえるとなかなか重い財政負担であるというふうに考えております。
○宮本(岳)分科員 いやいや、返還金でまた貸与するわけですから、毎年毎年別に出ていくわけじゃないんですよ、それは。だから、ちゃんとそれだけの手当てをすれば残存適格者を一掃することができる。
大体、そういうことを言っているから、どんどん少子化が進んで、大学まで行かせるのに経済的に負担だ、だから子供をつくるのに非常にちゅうちょしている人も多いわけですね。結局、人口が減っちゃえば、税金だって集まらなくなって、自分の首を絞めるということになるわけですから、ちゃんとそういうところにしっかり金を使うのは当たり前だと申し上げておきたいと思うんですね。
ちなみに、これは有利子というんですけれども、今は財投の金利はわずか〇・一%ですよ。日銀は、御承知のとおり、マイナス金利政策というのをやりまして、今どんどん金利を下げる方向に政策が進んでいます。
現状の有利子奨学金全てを仮に利子補給して、〇・一が上がったらまた変わりますけれども、今は〇・一ですから、今の有利子の奨学金を全て無利子にする、あるいは、せめて、先ほどの残存適格者二・四万人を利子補給で無利子にする場合、必要な金額は幾らになるか、文部科学省、お答えいただけますか。
○常盤政府参考人 お答え申し上げます。
経済情勢等によりまして返還利率等の条件は変動いたしますので、所要額を予測して計算することは困難であると考えてございます。
その上で、文部科学省の試算ということではなく、委員御提示の計算方法に従って計算した結果を申し上げさせていただきますと、二万四千人に平均貸与額実績を乗じた数字に、さらに委員御提示の〇・一%を機械的に乗じると、その計算結果は約六億四千万円となります。また、利率固定方式の過去五年間の平均利率ですと、一%ですので、約六十四億円となります。
なお、先ほどの計算と違いまして、事業規模を維持するためには、この額が毎年度継続的に、ずっと必要となるという経費となります。
○宮本(岳)分科員 わずか六・四億ですね。ひとまず残存適格者に、資格があるのに申しわけないな、利子は〇・一%だからその分ぐらいは利子補給しようといってみたって、六億余りなんですよ、毎年かかるか知らぬけれども、とりあえず。
大臣、新たな所得連動返還型奨学金制度の制度設計に当たっても、シミュレーションしてみて五百億足らぬ、一千億足りぬとなれば、たちまち、年収ゼロから返済を迫る、猶予年限も制限する。無利子転換ですら、わずか百六十一億円のお金が足りないばかりに、いまだに残存適格者、本来、無利子を受ける資格がありながら、利子つき奨学金に回されております。それでも、わずか六・四億円利子補給すれば、二種ではあるが無利子にできる。それもやらない。
これでは、いつまでたっても、冒頭述べた、学生等の学びを社会全体で支えるというようなことにならないんじゃないですか、大臣。
○馳国務大臣 利率固定方式の平均値をとれば、過去十年ほどで一%ということですから、六十四億円ということになりますので、六億円ちょっとという言い方はちょっと過ぎるのではないかと思いますが、いずれにせよ、やはり、学生諸君が経済的な負担を過度に与えられずに、意欲と能力に応じて高等教育を受ける機会を提供することは我々の責任である、このように考えております。
○宮本(岳)分科員 日本共産党は、奨学金を全て無利子に、既卒者の奨学金返済の減免制度をつくり、返済猶予や減額期間の上限撤廃などの救済制度を充実することを求めます。また、保証料、保証人制度、延滞金の廃止など、借金取り立て最優先のような姿勢を改めることを強く要求します。そして、返済不要の給付制奨学金を直ちに導入することを提案して、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○石原主査 これにて宮本岳志君の質疑は終了いたしました。