“借金し納税”迫るな 宮本岳志氏、国税庁ただす 衆院財務金融委(しんぶん赤旗)
第190回国会 財務金融委員会 第8号
平成二十八年二月二十六日(金曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 宮下 一郎君
理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君
理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君
理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君
理事 古川 元久君 理事 伊藤 渉君
井上 貴博君 井林 辰憲君
越智 隆雄君 大岡 敏孝君
大野敬太郎君 勝俣 孝明君
國場幸之助君 笹川 博義君
白須賀貴樹君 新谷 正義君
助田 重義君 鈴木 隼人君
田野瀬太道君 竹本 直一君
中山 展宏君 長尾 敬君
根本 幸典君 野中 厚君
橋本 英教君 福田 達夫君
宮路 拓馬君 務台 俊介君
山田 賢司君 落合 貴之君
玄葉光一郎君 鈴木 克昌君
前原 誠司君 宮崎 岳志君
鷲尾英一郎君 上田 勇君
斉藤 鉄夫君 宮本 岳志君
宮本 徹君 丸山 穂高君
小泉 龍司君
…………………………………
財務大臣
国務大臣
(金融担当) 麻生 太郎君
財務副大臣 坂井 学君
厚生労働副大臣 竹内 譲君
財務大臣政務官 大岡 敏孝君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 井野 靖久君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 籠宮 信雄君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 増島 稔君
政府参考人
(財務省主計局次長) 美並 義人君
政府参考人
(財務省主税局長) 佐藤 慎一君
政府参考人
(財務省理財局長) 迫田 英典君
政府参考人
(財務省国際局長) 門間 大吉君
政府参考人
(国税庁次長) 星野 次彦君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 梅田 珠実君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 樽見 英樹君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 森 和彦君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 堀江 裕君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 谷内 繁君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 伊原 和人君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 保坂 伸君
政府参考人
(国土交通省大臣官房建設流通政策審議官) 海堀 安喜君
参考人
(日本銀行総裁) 黒田 東彦君
財務金融委員会専門員 駒田 秀樹君
―――――――――――――
委員の異動
二月二十六日
辞任 補欠選任
國場幸之助君 新谷 正義君
助田 重義君 笹川 博義君
根本 幸典君 橋本 英教君
福田 達夫君 白須賀貴樹君
宗清 皇一君 宮路 拓馬君
同日
辞任 補欠選任
笹川 博義君 助田 重義君
白須賀貴樹君 福田 達夫君
新谷 正義君 國場幸之助君
橋本 英教君 根本 幸典君
宮路 拓馬君 長尾 敬君
同日
辞任 補欠選任
長尾 敬君 宗清 皇一君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)
所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)
○宮下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。宮本岳志君。
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
本日は、税金の納付制度について質問いたします。
まずは国税庁に、徴収の基本姿勢について確認をしたい。
納税者から納税相談や徴収の現場の話を聞きますと、税金の納付が困難な納税者に対して、サラ金から金を借りてでも納税しろ、あるいは借金の金利より滞納税の利率は高いぞなどといった、まるで税金は借金をしてでも払うものだと言わんばかりの指導がなされた、こういう声も時々耳にいたします。
まさかとは思うんですけれども、国税庁は、税務職員に対して、サラ金から金を借りてでも納税させろというような指導や教育をしているかどうか、また、そのようなことは言ってもいいとの姿勢なのかどうか、これはまず確認で、お答えいただきたい。
○星野政府参考人 お答えいたします。
国税の滞納整理に当たりましては、納税者から一括納付が困難との相談があった場合には、個々の実情を十分把握した上で、猶予制度を適用し、分割納付を認めるなど、法令等に基づき適切に対応することとしておりまして、先生が御指摘になられたような指導等は行っておりません。
○宮本(岳)委員 それは当然だと思うんですね。もしそんなことをしていたら、とんでもないことだと思うんです。
しかし、本法案には、国税通則法の改正内容として、国税のクレジットカード納付制度の導入が盛り込まれました。これは、昨年六月二十二日にまとめられたマイナンバー制度の活用等による年金保険料・税に係る利便性向上等に関するアクションプログラム(報告書)、これをもとに法案化されたものであると聞いております。ここには、導入の目的は国民の利便性の向上としか書かれてありません。しかしながら、クレジットカードは、クレジットカード会社が立てかえ払いで納税し、後に納税者に納税額を請求するというものであります。請求する方法には、リボ払いのような金利をつけた分割払いもあります。これは、まさに借金でもあるわけですね。
導入の目的は、借金をしてでも納税させようという意図、先ほど現場ではそういうことはやっていないというお答えでありましたが、今回のこの制度にそのような意図は含まれないと私は思うんですけれども、御答弁をいただきたいと思うんです。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
今先生御指摘のとおり、そういう意図はございません。
専ら、納税者の利便向上のため、納付手段の多様化を図るという観点でございます。
○宮本(岳)委員 資金が不足をして滞納せざるを得ない場合と、クレジットカード納付の後にクレジットカードの決済日までに入金ができないという場合では、実は納税者にとって大きく意味が変わってくるわけであります。
そこで一点確認をしたいんですけれども、クレジットカード会社から納税者への請求、つまり、クレジットカード会社が納税した後、クレジットカード会社から納税者にする請求は、税務署にかわって徴収する代理執行に当たるのか。それとも、金銭消費貸借契約に基づく単なる借金の請求ということになるのか。どちらでございましょうか。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、国が国税債権の徴収をクレジット会社に代理執行する、依頼する、そういうものではもとよりございません。
位置づけといたしましては、クレジット会社からの納税者への請求というのは、クレジットカード会社と納税者との間での立てかえ払い契約に基づく債務の請求という位置づけでございます。
○宮本(岳)委員 代理執行ではない。代理納付をした後は民民の契約だという御答弁だったと思うんですね。
そういたしますと、インターネットでクレジット納付の手続をした後に、資金繰りが苦しくなって、クレジットカード決済日までにお金を調達できないという場合、納税は済んでいるわけでありますけれども、クレジットカード会社の請求に対して、なかなか払う段取りが困った。
冒頭のやりとりでは、滞納者に対して、猶予その他の手続をしっかり紹介もしながら丁寧にやっている、借金してでも払えということはやっていない、こういう話でありましたけれども、クレジットカード会社が払って、その後、クレジットカード会社からの請求に対してちょっと払えないという場合に、納税の猶予あるいは換価の猶予などの税法上の納税緩和措置というものは適用されますでしょうか。
○星野政府参考人 お答えいたします。
納税の猶予、換価の猶予につきましては、税務署が納税者から国税を徴収する場合に適用されるものでございまして、クレジットカード会社からの請求に対して適用されることはございません。
また、クレジットカード納付では、納税者が納付受託者、クレジットカード会社でございますけれども、納付受託者に国税の納付を委託し、納付受託者が税務署に納付することにより、国税債権は消滅をいたします。
したがって、国税の未納を前提とした措置の対象とはならないということでございます。
○宮本(岳)委員 そういう措置の対象にならない。
クレジットカード納付の手続を行った場合、税金の納付はその時点で納税が終わるんですけれども、その後のクレジットカード会社からの請求に対しては、税法上の納税緩和措置などは適用されなくなる。ですから、利便性が高まる。そういう利便性を考えて、ぜひクレジットカードでという納税者がいらっしゃる。それは私も認めますけれども、納税者にとり、逆に不利益をこうむる可能性も、そうやってクレジットカード会社から払ってもらった後、クレジットカード会社の請求に対して払えないという事態になった場合には、税務署との関係で今さまざまな緩和措置があるようなことはもうなくなっちゃうわけですから。
そういう点では、納税者にとり、大変不利益をこうむる可能性もこの場合はあると私は思うんですが、いかがですか。
○星野政府参考人 お答えいたします。
国税庁といたしましては、クレジットカード納付が導入された場合には、チラシ、ホームページ等により、その仕組みや利用方法などをわかりやすく広報、周知していきたいと考えております。また、手続面におきましても、クレジットカード納付をするためのウエブ画面上にその仕組みや利用方法などを表示し、その内容を確認した上でクレジットカード納付を行う手順となるような手続を考えております。
いずれにいたしましても、クレジットカード納付につきましては、納税者の利便性向上のために納付手段の多様化を図る観点から導入しようとするものでございまして、これを利用するかどうかというのはあくまでも納税者御自身が判断することだと考えております。
○宮本(岳)委員 納税職員の心得である税務運営方針というものを見せていただきました。そこには、「納税者の主張には十分耳を傾けるとともに、法令や通達の内容等は分かりやすく説明し、また、納税者の利益となる事項を進んで知らせる心構えが大切である。」こう書かれてあります。この視点からも、税務相談や徴収の現場などで、税務職員が滞納している納税者に何をどう話すかは極めて重要な問題だと思うんですね。
例えば、東京の杉並税務署で次のようなことがございました。二〇一四年のことであります。ある事業者が税務調査を受け、修正申告をさせられました。分割で払えるから安心しなさいとの指導を信頼し、修正申告書に印鑑を押しました。ところが、直後に職員の態度が急に変わった。修正申告書を持って銀行への借り入れをするように、銀行で借り入れてこい、こう言って、その職員は返済を強要する言葉を浴びせた、こう訴えが寄せられています。
当然、その職員は、そのようなやりとりを税務署に報告はしておりません。事実確認ができないとの理由で異議申し立ては却下されております。
第三者も立ち会わず、税務署の職員と納税者のみで、密室で相談や調査が行われることもあります。一般的に、納税者がそういうことを言われたという内容を証明することは難しい、不可能なことが多いです。
一部の職員の問題かもしれないんですけれども、ゆめゆめ銀行への借り入れをせよというようなことを納税者に迫ることは絶対にあってはならない、これはもう当然のことだと思うんです。
今回の制度の導入により、もし誤った行政が行われる場合、懸念というのは、可能性としては起こり得るわけです。その可能性は高まるわけです。導入にあわせてしっかりと職員への教育がなされなければならないというふうに思うんです。
ですから、納付相談、徴税の現場で、本人が進んでクレジットカード払いを希望したような場合はともかく、滞納者に対してクレジットカード払いを勧めるようなことは絶対にあってはならないと思います。借金させて納税させる指導がなされないよう、税務職員への指導は徹底していただきたい。
麻生財務大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
○麻生国務大臣 これは、宮本先生、クレジットカードによります納付というのは、あくまでも納税者の利便性というものの向上のために、いわゆる納付の手段の多様化というものを図る観点から導入をしようといたしているものであります。したがいまして、これを利用するかどうかというのは、これはあくまでも納税者自身の判断によるものであろうと存じます。
したがいまして、御懸念のように、国税の滞納の整理に当たって、いわゆる滞納者に対してクレジットカードによる納付を強要するというようなことはありません。
また、クレジットカードによる納付に当たりましても、これは国税庁におきましても、今申し上げたような点も含めまして、星野の方から制度導入の趣旨等々いろいろ説明しておりましたけれども、職員への周知徹底というものはきちんといたしたいと考えております。
○宮本(岳)委員 それは、強要なんということは論外でありますけれども、滞納を既にされている方に対しては、これは勧めることも控えるべきだ、それよりも、最初に丁寧に御答弁をいただいたように、猶予の制度、さまざまな緩和制度を親切に説明して、こういう形で支払うことができますよというのが当たり前であって、クレジットカードだったら一発で立てかえ払いになりますよというようなことは言うべきではないというふうに思います。御本人が、もうそういう心配はないから、私は利便性のためにそうしたいという人には、それはやっていただいても構わないというふうに思っております。くれぐれも、ぜひよろしくお願いしたいと思っております。
さて、先日に続いて、きょうは日銀総裁にお越しいただきました。引き続き、マイナス金利の効果について総裁と議論したいと思います。
石田浩二委員は、先日も言いましたように、イールドカーブをさらに引き下げても経済に対する刺激効果は限定的、こう考える理由について、貸出金に対応する金融機関の調達コストの低下幅はもともと限られており、他に経費率という経費もかかっているので、貸出金利の下げ余地は限られる、こう述べられました。
それに対して黒田総裁は、金融機関の現在の貸出金利にまだ下げる余地があるとして、その理由として、マイナス金利導入後、実際に金融機関の金利が下がっているというふうに御答弁されました。
メガバンクはどれくらい貸出金利を下げましたでしょうか。具体的な例を提示していただきたい。
○黒田参考人 住宅ローン金利については、十年固定で見て、平均すると〇・二%程度低下しております。
また、貸出金利については、基準金利として広く用いられているTIBOR三カ月物で見て、〇・一%弱低下しております。
○宮本(岳)委員 メガバンクが貸出金利をすぐに引き下げたということに若干の違和感があるんです。
配付資料を見ていただきたいんです。
先日の二月十六日に公表された日本銀行の業態別の日銀当座預金残高の一月分から作成をした資料であります。
いわゆる都市銀行、三メガバンク、プラスりそなに当たると思いますけれども、これを見ますと、当座預金残高が九十六兆五千五百六十億円、これに対して、マイナス金利適用残高というのは一兆六千三百十億円であります。率にすると、全体のうち、たったの一・六九%でありまして、付利がわずかばかり減少するだけだということになると思うんですね。単純に計算すると、都市銀行が得る付利はそれでも七百九十七億円となると思うんです。
一方、超過準備残高は九十二・七兆円でありますから、従来の方法であれば得るべき付利は九百二十七億円となります。九百二十七億円と先ほど計算した七百九十七億円、その差は百三十億円、これだけ利子の分が低下する、マイナス金利導入によって。これが都市銀行の状況なんですね。
ですから、各行で割れば、ざっと二十億円とか三十億円、ごくわずかのマイナスでしかないわけですよ。収益減でしかないわけですよ。役員に一億円を超えるような給与を支払っているメガバンクが、この程度の減収で貸出金利を引き下げてリスクのある貸出先をふやすとは到底思えないんですけれども、本当にこの先、都市銀行からの貸出先はふえるんですか。
○黒田参考人 今回のマイナス金利につきましては、御案内のとおり、階層構造を適用しておりまして、当座預金の一部にマイナス金利が適用されるわけですけれども、その場合でも、金融市場に対してはマイナス金利としての効果を持っているわけであります。
すなわち、金利など、金融取引の価格というものは、新しい取引を行うことに伴う限界的な損益によって決まってまいります。マイナス金利が当座預金全体に、残高の全体に適用されなくても、限界的に上積みされる部分に適用されるのであれば、新しい取引によって当座預金が増加することに伴うコストはマイナス〇・一%となりますので、それを前提として金利あるいは相場形成が行われるということでありまして、現に、先ほど申し上げたように、住宅ローンの金利あるいは企業への貸出金利につきましても明確に低下をしているということでございます。
○宮本(岳)委員 もう一つ納得のいかない答弁なんですけれども。
私の資料を見ていただいて、一方で、マイナス金利適用残高の約五三%を占めているのが、都市銀行ではなくて、その他の準備預金制度適用先というものであります。その他の準備預金制度適用先というのは、具体的にはどのような金融機関が含まれますか。
○黒田参考人 その他の準備預金制度適用先には、ゆうちょ銀行、農林中央金庫など、さらには信用金庫もここに含まれております。
○宮本(岳)委員 ここにゆうちょ銀行、それから農林中金、信用金庫、あるいはネット銀行等々が含まれるということでありました。
これは、総裁は、マイナス金利を導入すれば金融機関が貸し出しをふやす、こういうお話でありますけれども、マイナス金利適用残高の約半分がゆうちょ銀行を含むその他の準備預金制度適用先で占められている。ゆうちょ銀行というのはそもそも企業への融資を行わないと思うんですけれども、ゆうちょ銀行などは一体どうやって貸出先をふやすのか。それとも、貸し出すのではなく、ゆうちょ銀行は株式などのリスク資産で運用せよ、こういうことなのか。これはいかがですか。
○黒田参考人 先ほど来申し上げておりますように、三層構造をとっておりますので、金融機関によっては、マイナス金利の適用を受けるものが大きい銀行もありますし、他方で、マイナス金利を適用されるほど準備預金を持っていない、ゼロ金利、あるいはプラスの金利が適用される金融機関もございます。そうした金融機関相互で当然取引が行われて、全体としては、マイナス金利が適用される準備預金というのは十兆円プラスアルファぐらいになると思います。
そうしたもとで、当然、マイナス金利が適用される準備預金が大きい金融機関は資金を放出してまいりますので、そういった調整は行われていくというふうに思っております。
その上で、マイナス金利つき量的・質的金融緩和というのは従来の量的・質的金融緩和を強化したものでありまして、量的・質的金融緩和と同様に、イールドカーブ全体を下げ、実質金利を下げ、それによって投資あるいは住宅投資等をふやしていく。当然、金融機関の貸し出しもふえていくということでございます。
○宮本(岳)委員 いや、そこが解せないんですね。大きい金融機関も小さい金融機関もある。マイナス金利適用が大きいところも小さいところもある。そうおっしゃるから、具体的に中身を見てみたら、都市銀行は小さいですね、わずか一・数%ですね、そして、半分ぐらいマイナス金利が適用される大きいところは、ゆうちょ銀行を含むその他の準備預金制度適用先ですね、こういう話ですよね。
先ほど、貸出金利は確かに下がった、住宅ローン金利は下がったとおっしゃるんだけれども、この先、こんなわずかなことで都市銀行がどんどん貸し出していくということは考えにくいんじゃないですか。そして、一番マイナス幅の大きいゆうちょ銀行などはそもそも企業向け貸付融資はやれないんじゃないですか。では、ゆうちょなどはそういう大きなマイナスがあるからといってどういう運用をさせるんですか。こう聞いたんですよ。
○黒田参考人 先ほど来申し上げているとおり、このマイナス金利というのは限界的なところにかかってくるわけでして、都市銀行等の残高の総額のうち、マイナス金利がかかる部分は小さくても、限界的な取引にはそれが影響してくるからこそ、彼らの住宅ローン金利や企業への貸し出しの基準金利も下がってきているわけです。
こういった金利が下がり、それは実質金利も下がるわけですので、設備投資や住宅投資等を刺激するし、金融機関としても融資をさらに積極的に進めていくということになろうということでございます。
昨年の準備預金の平残については従来どおり〇・一%の金利をつけておりますので、年度末というか年末にかけて準備預金を非常に大きく積み上げたところは当然マイナス金利がより幅広くついてくるということになるわけですけれども、先ほど来申し上げていますように、マイナス金利が非常に大きくついてくる金融機関というのは当然そういった資金を市場を通じて放出いたしますので、それは、ゼロ金利あるいはプラス金利の枠が残っている金融機関もたくさんありますので、そういうところに資金を放出していく形で、金融機関全体としてはバランスがとれた形になっていくと思いますけれども、そうした中で、マイナス金利というのは基本的に十兆円プラスアルファぐらいついていくという形で、限界的には、マイナス金利の影響が十分出て、貸出金利の引き下げにつながっていくということでございます。
○宮本(岳)委員 そうおっしゃるわけですけれども、一月の二十九日の日銀資料を見ますと、どの程度の政策金利残高があれば十分に機能するか、実際のマイナス金利を運営した上で判断する必要がある、マクロ加算の運営はこうした市場金利への実効性と金融機関収益への影響を踏まえて今後も決定するんだ、こう説明されております。
次回の決定会合で、こういうマイナス金利導入後の状況も検討課題になると思うんですけれども、効果が薄いということになれば、さらに大胆なマイナス金利政策に踏み込むということもあり得るということですね。
○黒田参考人 この点につきましては、いわゆるマクロ加算額というものがございまして、何度も申し上げておりますように、マイナス金利というのは、限界的にそういうものがつけば金利の決定に影響が出てくる。現に大きな影響が出ているわけでございます。
他方で、量的・質的金融緩和は継続してまいりますので、日銀の当座預金残高は増加していきます。しかし、マイナス金利がつく準備預金をどんどんふやしていく必要はありませんので、何カ月かごとに、適宜のタイミングで、ゼロ金利が適用される部分をふやしていく。つまり、マイナス金利が適用される部分を一定の範囲内にとどめるということにするということが、今回の三層構造の基本的な考え方でございます。
その際、どのようにマクロ加算額というゼロ金利の適用する部分をふやしていくかというのは、まさにその時点の金融資本市場の動向等を見ながらやっていくということでありますけれども、マイナス金利の効果が不明確だということではなくて、マイナス金利の効果は明確であるというふうに考えておりますし、現に市場において、貸出金利が低下してきているということでございます。
その上で、お尋ねの点につきましては、マイナス〇・一%というマイナス金利の政策効果の浸透度合いをしっかりと今後見きわめていきたいと思っておりますので、何かスケジュールを決めて、どんどんマイナス金利を下げていくというような考えは全くございません。
○宮本(岳)委員 ぜひ慎重な検討をお願いしたいですし、できるだけ議論の中身を早く公開していただきたいと思っております。
次に、銀行の預金金利について日銀総裁にお伺いしたいんです。
日銀のマイナス金利導入以降、民間金融機関の金利はどんどん引き下げられております。先ほど指摘したように、大手銀行のマイナス金利による影響はまだまだ少ないにもかかわらずであります。
三菱東京UFJ銀行は十九日、普通預金金利を年〇・〇二%から〇・〇〇一%に引き下げると発表いたしました。みずほ、三井住友も既に普通預金の金利を〇・〇〇一%に引き下げており、三メガバンクは全て過去最低水準になりました。ゆうちょ銀行も、二十二日、普通預金に相当する通常貯金の金利を〇・〇二%から〇・〇〇一%に引き下げると発表し、二十三日から適用しております。
これは、個人の預金についても、結局、預貯金から、リスク資産もしくは住宅ローンなどへシフトすることを期待したマイナス金利つき量的・質的金融緩和政策の政策効果というふうに見ておられますか。
○黒田参考人 このマイナス金利つき量的・質的金融緩和、これは従来の量的・質的金融緩和と同様な波及効果を考えておりまして、基本的に、実質金利が下がり、これが投資を含む経済活動を刺激するということであります。
もちろん、その波及効果の一つに、いわゆるポートフォリオリバランスがあるということは事実でありまして、これまで長期国債の運用を行っていた投資家あるいは金融機関が株式などのリスク資産へ運用をシフトさせたり、貸し出しをふやしていくということを、このポートフォリオリバランスとして念頭に置いているわけでございます。
もとより、このマイナス金利つき量的・質的金融緩和が、先行き一段と効果を発揮して、雇用や所得の改善を伴いながら物価上昇率が高まっていくという好循環が実現すれば、当然、個人の支出行動や資産選択についても、それに応じた変化が生ずるものというふうに思っておりますけれども、先ほど来申し上げましたように、いわゆるポートフォリオリバランスという観点からは、主として、機関投資家、金融機関等のポートフォリオを変えていくという効果を認識しているわけでございます。
○宮本(岳)委員 二月四日の予算委員会で、黒田総裁は、一般の方々が金融機関に預けた預金にマイナス金利があり得るのかどうか、こう問われて、その可能性も当然否定いたしませんと答弁されました。一方で、個人預金にマイナス金利がつくというようなことはないだろうと思っているともおっしゃっております。
個人預金にマイナス金利はつかないと思われる根拠を御説明いただきたい。
○黒田参考人 マイナス金利の可能性について云々したのは、いわゆる政策金利といいますか、日本銀行の、金融機関の準備預金に対する金利について申し上げたわけでございます。金融機関の個人向け預金の金利につきましては、マイナスになるとは全く考えておりません。
これは、中央銀行が既にマイナス金利を採用してかなりになる、あるいは相当な幅のマイナス金利を採用している欧州の例も見ましてもそうでありますので、個人向け預金の金利がマイナスになるということは考えておりません。
ちなみに、個人向け預金の金利がマイナスにならない背景の一つとしては、各金融機関が顧客との長期的な取引関係を考えることと、仮にマイナス金利を適用した場合、現金を保有する方が有利であるといった事情があろうかと思います。
○宮本(岳)委員 既にマイナス金利を導入しているECBなどの経験を検討して判断されているということだと思うんですね。
そもそも、中央銀行のマイナス金利政策自体が誰も想定していなかった未知の世界なんですよ。その効果も副作用も、想定はするんだけれども、やってみなければわからないという世界なんですね、これは。
国民は、預金金利がマイナスにならなくても、口座維持手数料が取られるのではないか、こういった別の手段での国民負担、これへの懸念も持っておられます。
仮に、個人預金にマイナス金利がつくというような事態が起こった場合に、日本銀行は、現在の金融政策を変更するなどの対応策をとるんですか、あるいは何もしないんですか。いかがですか。
○黒田参考人 日本銀行の金融政策の目的は、あくまでも物価の安定でございます。また、預金金利は、各金融機関が市場金利を参照しつつ経営判断で設定するものであると考えております。
その上で申し上げますと、繰り返しになりますけれども、中央銀行が既にマイナス金利を採用している欧州諸国の例を見ましても、金融機関の個人向け預金の金利がマイナスになるとは考えておりません。
○宮本(岳)委員 根拠じゃないんですよね、何度聞いても。それは、欧州では、やってみたら、今のところそういうことは起こっていないとおっしゃるだけであって、起こるかもわからない。そこにみんなが不安を持っているわけでしょう。これも国民生活に大きな影響を与えるわけですから、これからもしっかり議論をしていきたいと思っております。
次に、金融政策の為替への影響をお尋ねしたいんです。
総裁は、この間、当委員会でも、為替レートをターゲットにして金融政策を運営することはないと繰り返し答弁されております。一方で、安倍首相は、円安がアベノミクスの成果であるかのように答弁することがございます。
この三年間で起こった円安の原因について、黒田総裁はどのように分析しておられますか。
○黒田参考人 この三年間で為替の円安方向の動きが進んで、過度な円高水準が修正されたということは御指摘のとおりであります。
為替相場に影響を与える要因にはさまざまなものがございますので、その時々の状況によって、原因、理由は異なってくるとは思いますが、その上で、一般論として、特に、長期的な為替の動向という面では、昔から購買力平価説というのがございまして、物価上昇率の低い国の通貨は物価上昇率の高い国の通貨に対して為替レートが上がっていく傾向があるというふうに言われております。
この点、我が国では、九〇年代の末から十五年ほどデフレ状況が続いておりましたので、そういったことも、長期的に見ればある程度影響はあったのかもしれないというふうに思っております。
その上で、二〇一三年の一月に、二%の物価安定目標というのを日本銀行は導入いたしました。そして、同じ年の四月に、その早期実現を目指して量的・質的金融緩和を開始いたしました。そのもとで、物価の基調は着実に改善してきております。こういった物価情勢の変化も、過度な円高水準の修正に、長い目で見れば貢献したのではないかと思います。
先ほど来申し上げておりますように、為替レートの短期的な動きというのはさまざまな要因によって左右されますので、常に特定して御説明するというのは難しいと思いますが、そのときそのときの内外の経済情勢あるいは金融市場の動向その他、最近でいうと地政学的な問題とか、いろいろなことが絡んで為替レートは動いていくと思いますけれども、ある程度長い期間をとれば、先ほど申し上げたような購買力平価説の言うとおりに動く傾向はあろうというふうに思っております。
○宮本(岳)委員 本当にそういうことなのかということをきょうは論じたいんですね。
金融政策決定会合のあった一月二十九日正午過ぎですけれども、零時半過ぎに、日銀、マイナス金利導入を検討、こういう臨時ニュースが流れた後、ヘッジファンドなどの投機筋に加えて、決済用ドルを必要とする輸入企業からドル買い・円売り注文が殺到し、円相場は一時一ドル百二十一円と、発表直前に比べて一気に三円近く円安・ドル高が進みました。
金融政策決定会合では、また黒田総裁自身は、マイナス金利政策の導入がこのような為替相場に影響を与える、円安・ドル高が進むということを想定していたかどうか、いかがですか。
○黒田参考人 これも先ほど来申し上げておりますとおり、マイナス金利つき量的・質的金融緩和というのは、あくまでも二%の物価安定の目標を早期に実現するために導入したものでありまして、為替相場を目的としたものではございません。
いずれにいたしましても、為替相場は、経済や金融のファンダメンタルズを反映して、安定的に推移することが望ましいというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 では、その後、円安傾向はもちろん続きませんでした。再び円高・ドル安に振れて、現在、一ドル百十二円というところで取引をされております。
その後、なぜこのように円高が進んだか、総裁はどうごらんになっておりますか。
○黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、その時々の為替の動きというのはいろいろな要因によって影響されますけれども、最近の為替相場の動きの背景としては、しばしば、原油価格下落や中国経済の先行き不透明感に加えまして、欧州銀行セクターに関する懸念や米国金融政策の先行きに対する不透明感が強まっているという中で、世界的に投資家のリスク回避姿勢が過度に広まっているというふうに言われておりますし、それはそのように私どもも認識しております。
そうしたもとで、いわゆる安全資産として認識されている日本円が買われたのではないかと思っておりますが、これも、あくまでも市場の関係者の見方とか、あるいはさまざまな要因が発現した後の為替の動きをフォローしてそういうふうに見ているということであります。
○宮本(岳)委員 私は、先ほどもお伺いしたように、このマイナス金利政策というものが為替レートに影響を与えるということは、日銀の皆さん、総裁も含めて、これは御存じないということはなかったと思うんですね。
マイナス金利を導入しているデンマーク、スウェーデン、スイスでありますけれども、第一生命経済研究所の主席エコノミストの田中理氏は、週刊東洋経済、二〇一六年二月十三日号に次のように書いております。
マイナスの政策金利を導入したデンマークでは、「欧州債務危機の深刻化により、欧州内でユーロの代替投資先として魅力が増した同国には資金流入が加速、継続的な通貨高圧力に見舞われてきた。資金流入を抑制しユーロとのペッグ制を維持するため、ECBに追随して金融緩和を強化、マイナスの政策金利導入が必要となった。デンマーク同様、通貨高圧力の抑制を目的にマイナスの政策金利を導入したのが、スイスだ。」まさに、デンマークもスイスも通貨高を抑制するために導入したと述べておられるんですね。
配付した資料を見ていただきたい。日本銀行に作成していただいた資料であります。
スイスは、安全資産需要が高まる中、スイス・フラン建ての投資に対する魅力を低下させ、為替の増価圧力を緩和するためにマイナス金利を導入したとここに書いていますから、欧州ではまさに為替レートをターゲットにしてマイナス金利政策をやっているということがわかった上でやっておられるんですね。違いますか。
○黒田参考人 御案内のとおり、スイスあるいはデンマークといったいわゆるスモール・オープン・エコノミー、経済規模が非常に小さい、しかし大変オープンだというところでは、為替の安定と物価の安定というのがほぼ表裏一体というところが多いわけでございます。もっと極端な例を言いますと、例えば香港などは、ドルに完全にペッグするという形で、為替の安定と物価の安定をほぼイコールに見てやっておられるわけでございます。
スイスあるいはデンマークが、そういった経済の動向を踏まえて、物価の安定のために為替の安定を狙ってマイナス金利をされたということはそのとおりだと思いますが、この表にもございますとおり、一方、ユーロ圏の中央銀行であるECBは、実際の物価上昇率がインフレ目標を下回る水準に長期にわたってとどまる可能性があるというもとで、中長期の予想インフレ率をインフレ目標にアンカーさせるためにマイナス金利政策を行っておりまして、その旨を対外的にも説明をいたしております。
日本銀行も、マイナス金利政策を導入いたしましたのは物価安定の目標を達成するためでありまして、この点、ECBと共通しております。
○宮本(岳)委員 円安がターゲットでないと幾ら強調されても、その政策を選択すれば結果として円安圧力となると多くの市場関係者が認識していれば、それはもうターゲットでやっていると言われても仕方がないわけですよ。
週刊エコノミスト、二〇一六年三月一日号、スフィンクス・インベストメント・リサーチ代表取締役の藻谷俊介氏は、「当初から一貫して述べてきたように、アベノミクスの本質は量的緩和を呼び水にした円安誘導であり、それ以上でもそれ以下でもない。円安になれば、企業の円換算の利益は自動的に増えるし、内外価格差に起因するインフレも発生する。」と指摘をしております。さらに、「円安誘導策であることが見透かされ、内外の市場に「通貨戦争」が意識されてしまったのが今回の失敗だった。」とも指摘をしております。
総裁は、既に通貨戦争が起こりつつある、こういう認識をお持ちですか。
○黒田参考人 そうした認識は持っておりません。
日本銀行の金融政策の目的は物価の安定でありまして、為替レートの水準を目標として金融政策運営を行うことはございません。この点、G20では、金融政策について、各国における中央銀行のマンデート、物価の安定というマンデートと整合的な形で経済活動をサポートするという考え方が共有されておりまして、為替レートについては、通貨の競争的な切り下げを回避して、あらゆる形の保護主義に対抗するという考え方が共有をされております。この点は、昨年九月のアンカラでのG20コミュニケでも明確に示されております。
したがいまして、御指摘のような考え方は全くとっておりません。
○宮本(岳)委員 二月二十四日付ロイターの配信によれば、アメリカ大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官が、日本や中国及びその他のアジア諸国が過去数年にわたり為替操作で人為的に輸出価格を抑えてきたと名指しで批判をいたしました。
先ほど指摘いたしましたように、日銀が幾ら為替操作をターゲットとしていないと繰り返しても、公然と批判されるほどに通貨戦争の様相を帯びてきております。金融政策により円安や株高を装い、景気回復を演出するにすぎないアベノミクス及び黒田バズーカなどという金融緩和政策は、国民に重大な負担を負わせる懸念が高まってきたわけでありまして、早急に改めることを求めて、本日の質問を終わります。