消費税10%増税やめよ 宮本岳志議員 首相判断ただす 衆院財金委(しんぶん赤旗)
第190回国会 財務金融委員会 第10号
平成二十八年三月一日(火曜日)
午後一時開議
出席委員
委員長 宮下 一郎君
理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君
理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君
理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君
理事 古川 元久君 理事 伊藤 渉君
青山 周平君 井上 貴博君
井林 辰憲君 越智 隆雄君
大岡 敏孝君 大野敬太郎君
勝俣 孝明君 國場幸之助君
助田 重義君 鈴木 隼人君
瀬戸 隆一君 田野瀬太道君
竹本 直一君 中山 展宏君
根本 幸典君 野中 厚君
福田 達夫君 務台 俊介君
宗清 皇一君 山田 賢司君
落合 貴之君 玄葉光一郎君
鈴木 克昌君 前原 誠司君
宮崎 岳志君 鷲尾英一郎君
上田 勇君 斉藤 鉄夫君
宮本 岳志君 宮本 徹君
丸山 穂高君 亀井 静香君
小泉 龍司君
…………………………………
内閣総理大臣 安倍 晋三君
財務大臣
国務大臣
(金融担当) 麻生 太郎君
財務副大臣 坂井 学君
内閣府大臣政務官 高木 宏壽君
財務大臣政務官 大岡 敏孝君
農林水産大臣政務官 加藤 寛治君
政府参考人
(財務省主計局次長) 美並 義人君
政府参考人
(財務省主税局長) 佐藤 慎一君
政府参考人
(農林水産省大臣官房参事官) 橋本 次郎君
財務金融委員会専門員 駒田 秀樹君
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委員の異動
三月一日
辞任 補欠選任
大野敬太郎君 青山 周平君
田野瀬太道君 瀬戸 隆一君
同日
辞任 補欠選任
青山 周平君 大野敬太郎君
瀬戸 隆一君 田野瀬太道君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)
所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)
○宮下委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、総理に質問いたします。
まず、消費税増税中止の政治判断について聞きたいと思うんです。
総理は、二月二十四日、当委員会で、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態について、「世界経済の大幅な収縮といったことが実際に起こっているかどうかということについて、専門的な見地から行われる分析も踏まえて、そのときの政治判断において決められる」と答弁されました。
では、この世界経済の大幅な収縮とはどういう事態か。これには少なくとも、株価の変動、下落幅も考慮される基準の一つとして含まれるかどうか、お答えいただけますか。
○安倍内閣総理大臣 御指摘の私の発言は、先日の財金委において、リーマン・ショックのような重大な事態とはどういったものを指すのかを問われた際にお答えしたものでありますが、まさに、重大な事態とは、例えば株価の変動幅ということのみではなくて、世界経済の大幅な収縮といったことが実際に起こっているかどうかということについて、専門的な見地から行われる分析も踏まえ、そのときの政治判断において決める事項でございます。
つまり、世界経済の大幅な収縮というのはどういうものかといえば、これはまさに、実際にそれが起こっているのか、あるいは、どういうものかということについて専門家の皆さんの御意見を伺う必要がある、こう考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 市場の変動のみではないにしても、株価の変動、下落幅も考慮される基準の一つなのかどうか。
麻生大臣は、二十四日の当委員会で私に対して、「株価というものもその中の一つだろうとは存じます。」と答弁をされました。全部ではないにしても、株価も含まれる、これは総理もよろしいですね。
○安倍内閣総理大臣 今の答弁において申し上げましたように、これは、株価が全てではなくて、株価もその要素の一つであるという意味で申し上げたところでございます。
○宮本(岳)委員 含まれるということはよろしいですね。
○安倍内閣総理大臣 含まれるということでございます。
○宮本(岳)委員 二月二十二日に、ブルームバーグは、「原油相場が一バレル当たり三十―四十ドルのレンジにとどまれば、世界の政府系ファンドが今年、四千四十三億ドル(約四十五兆八千億円)を株式市場から引き揚げる可能性があると、ソブリン・ウェルス・ファンド・インスティチュートが指摘した。」という報道を行いました。
政府系ファンドは二〇一五年に上場株式を約二千百三十四億ドル相当売却したとも言われておりまして、仮にことしじゅうに、この報道どおり、四千四十三億ドルの株式が売却されれば、二〇一五年の倍のインパクトで株式市場の下落を招くことになります。
万一このような事態が生ずるならば、それは世界経済の大幅な収縮だと判断すべき事態だと私は思いますが、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 世界的にリスク回避の動きが金融市場で広がる中、我が国の市場でも変動が見られるわけであります。
今の仮定の御質問に対して具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、現在の変動につきましては、中国の景気減速への懸念や原油価格の低下、米国の利上げの動向等の海外要因が背景と見られているわけでありまして、今般のG20の声明においても、「最近の市場の変動の規模は、その根底にある世界経済の現在のファンダメンタルズを反映したものではない」との認識が示されたところでございますが、いずれにせよ、市場の動きはしっかりと注視をしていきたいと考えております。
○宮本(岳)委員 先日、日銀の黒田総裁は、この場で私に、近年、国際金融市場において政府系ファンドのプレゼンスが大きくなっているということは事実、このところの世界的な株価下落の背景として、原油価格の下落を受けて産油国の政府系ファンドが株式の売却に動いていることがあるという見方が市場にあるということも認識していると答弁をされました。これは決して根も葉もない話ではないんですね。
同時に、総理は、個人消費について、個人消費がどれだけ落ち込んでも消費税増税中止の判断をすることはないということかと問われて、「もちろん、日本経済自体が危うくなるようなことは、そういう道はとってはならないのは当然のこと」とも答弁をされました。
そこで、配付資料を見ていただきたいんです。
これは、昨日、当委員会の参考人質疑に参考人としてお招きした三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社経済・社会政策部の片岡剛士主任研究員が配付された資料であります。
「落ち込みが深刻な家計消費」と表題がついております。特に左下のグラフ。「過去十年間のトレンドから有意に下ぶれた消費」というグラフを見ると、家計最終消費支出の実績値が、家計消費のトレンドの九五%信頼区間、赤い破線部でありますけれども、これを突き破って下振れしたのは、この十年間で三回。二〇〇九年のリーマン・ショックと、二〇一一年の東日本大震災と、そして現在ということになっております。
片岡氏は、昨日の参考人質疑でも、二〇一七年四月の消費税増税の凍結だけではなく、この際、消費の喚起のためには、消費税を八%から六%に減税すべきだとの御意見でありました。
総理、まさに総理の言うリーマン・ショックや大震災と同じレベルの消費の落ち込みが今生じている。増税を中止するのは当然ではありませんか、総理。
○安倍内閣総理大臣 繰り返しになりますが、今般のG20の声明においても、「最近の市場の変動の規模は、その根底にある世界経済の現在のファンダメンタルズを反映したものではない」との認識が示されたわけであります。
こうした中、我が国の実体経済を見れば、三本の矢の政策によって、もはやデフレではないという状況をつくり出す中、企業も最高の収益を上げております。
また、個人消費については、昨年、初夏の低温や記録的な暖冬などの天候要因、昨年夏に生鮮食品など身近なものの値上がりが見られたこと、消費税率引き上げを含む物価上昇に賃金上昇が十分に追いついていないこと等を背景に力強さに欠けておりますが、雇用・所得環境の改善が続く中、消費者マインドとともに持ち直していくことが期待されるわけであります。
より強化した経済政策のもとにおいても、経済再生なくして財政健全化なしという方針に変わりはないわけでありまして、現在のところ、来年、消費税一〇%に引き上げていくという方針に変わりはございません。
○宮本(岳)委員 「日本経済自体が危うくなるようなことは、そういう道はとってはならない」、こうおっしゃるならば、私は、今この一〇%引き上げを中止すべきだ、やれば間違いなく日本経済自体が危うくなるということを指摘しておきたいと思います。
先ほど三本の矢ということもおっしゃいましたから、次に、三本の矢の一本目の異次元緩和について少し議論をしたいと思うんですね。
麻生大臣にまず聞きますけれども、G20では通貨安競争のことが議論されたようでありますけれども、協議の結果、どのような合意に至りましたか。
○麻生国務大臣 いわゆる通貨切り下げ競争というものに関しては、そうした対応によって国際経済の不安定性がもたらされることを回避するべきだという認識がG20の議論として共有されたと思っております。結果として、通貨の競争的な切り下げを回避することがG20で改めて確認されましたので、今回のG20のコミュニケにもこれが盛り込まれておりますのは、お読みになったとおりだと存じます。
なお、G20において他国の発言というのは、どう言ったかというのは言わないことになっておりますので、日本に関する議論について詳しく説明することはできませんが、私の方からは、足元の為替市場を含めた金融市場における変動と不確実性が高まっているという認識を示した上で、いろいろ議論した結果、今回の共同声明においては、為替市場における過度の変動や無秩序な動きは悪影響を与えるというもので、為替レートの安定が重要という認識はこのコミュニケの中にも入れられるようになったという背景です。
○宮本(岳)委員 ブルームバーグの報道によりますと、ユーロ圏財務相会合、ユーログループのデイセルブルム議長は、記者会見で、「正直に言って、日本についても討議された。競争的な通貨切り下げの状況に陥るのではないかとの多少の懸念があった」という御発言がありました。さらに加えて、「他が追随し、競争的な切り下げとなるリスクは非常に大きい」と述べられたとも報じられております。
また、デイセルブルム議長は、「為替相場の下落につながるような政策決定を行う際に事前に通知することで合意したことを明らかにした。」とも報道されております。
そういう合意になった、これは本当かどうか。また、ここで言う為替相場の下落につながるような政策決定とはどのようなことを指しているのか。これも財務大臣にお答えいただきたい。
○麻生国務大臣 御指摘の報道というのは承知しておりますので、ユーロ圏のデイセルブルムの話なんだと思いますけれども、どのような趣旨で発言されたか、これはわかりません。しかし、発言内容に関して具体的にコメントすることは、先ほど申し上げたような理由で差し控えさせていただきます。
なお、今回の議論を通じて、為替相場におきます変動の高まりを踏まえて、各国は、為替の動向や、また、市場についての意見交換を行っていくこととか、政策動向を適切にコミュニケートしていくことは、間違いなくその重要性が共有されたということは、これは指摘できると思います。これはやっていこうと。これだけ全部一緒になったというのはなかなかありませんでしたので、その意識をみんなで共有できたというのは今回大きかったんだと思っております。
少なくとも、「為替市場に関して緊密に協議する。」という文がこのG20の共同声明の中に盛り込まれておりますので、こういったセンテンスが盛り込まれたことも過去ないと思いますので、そういった意味では、私どもとしては、G20において、必要に応じ、引き続きこうした対応というものを綿密に行っていく必要があろうかと存じております。
○宮本(岳)委員 先日も私、この場で議論いたしました。日銀の黒田総裁にも来ていただきました。日本で金融緩和政策を実施した場合に、その結果として、金利差が拡大するために、為替相場は円安・ドル高への圧力になる、大半の市場関係者はそのように認識をしているわけであります。
つまり、日銀の金融緩和策、政府のとっている金融緩和策というのは、為替相場の下落につながるような政策決定と言えるんじゃないでしょうか。
○麻生国務大臣 日本銀行の主たる目的というものは、インフレターゲット二%のためにどうするかということを主眼に置いておりますので、その他いろいろ、マイナス金利だ、金利を下げるだということで、全体として、長短の金利が下がってくる、イールドカーブと言われるものが下がってくるということは、間違いなく結果として今起きていることだと思っておりますが、それによって為替が上がるとか下がるとかいうことに関しては、一概に言えないと思っております。
○宮本(岳)委員 為替をターゲットにやったことはない、こういう話だと思うんですね。
そこで、安倍総理に聞きたいと思うんです。
総理は、二〇一四年十一月二十一日、解散した後の記者会見で、この解散はアベノミクス解散だ、アベノミクスを前に進めるのか、それともとめてしまうのか、それを問う選挙だ、こうした上で、次のように述べました。
「行き過ぎた円高は、多くの企業を海外へと追いやり、空洞化が進みました。私の地元山口県でも、若者たちを五百人以上雇用していた大きな工場が行き過ぎた円高のために工場を閉めざるを得なくなりました。どんなに頑張っても、どんなに汗を流しても、どんなに良いアイデアを出しても、行き過ぎた円高のために競争に勝てない。」「しかし、アベノミクスが始まって、行き過ぎた円高が是正されました。そうした中で、空洞化の時代が終わり、仕事がいよいよ国内へと戻ってまいりました。」
ここで総理は、アベノミクスが始まって、行き過ぎた円高が是正されたとの認識を示されたわけでありますけれども、アベノミクスがどう作用してこの行き過ぎた円高が是正されたと言えるのか、総理、お答えいただけますか。
○安倍内閣総理大臣 まず、目的はデフレからの脱却であります。デフレからの脱却の中においては、金融政策としては、大胆な金融緩和を黒田総裁のもとに実行したのでございます。
これは、二%のインフレターゲットに向かって、しっかりとデフレから脱却をして、そこに大体安定させるという政策でありますが、それによって、結果として、政権交代前の行き過ぎた円高が是正されたのは事実であります。また、日本銀行による大胆な金融緩和が、固定化したデフレマインドの払拭にもつながったものと考えるわけでございます。
こうした中、仕事や投資が国内に戻り始め、倒産は三割減少し、対内直接投資額は十倍以上増加をした、こう考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 結果としてとおっしゃるわけですけれども、総理はまた、二〇一三年三月七日、衆議院予算委員会で、こうもおっしゃいました。「長い間ずっと続いてきたデフレ、と同時に、行き過ぎた円高というのもあったんですよ。それを変えていく。まさに今変わりつつあるじゃないですか。変わりつつあるんですよ。それは、一つはやはり金融政策なんですね。」「要は、金融政策あるいは財政政策においてどういう変化が出てくるかということにおいては、大胆な金融政策を進めていくことによって、まずは為替とそして株価に変化が出てきますよ。」総理は、アベノミクスの金融政策を進めれば円安の変化が出てくると認識して、この答弁をしておられます。
「大胆な金融政策を進めていくことによって、まずは為替とそして株価に変化が出てきますよ。」と、はっきりこう述べているわけですから、そう考えているわけですね、総理。
○安倍内閣総理大臣 いわば私たちのターゲットはデフレ脱却であり、二%というインフレターゲットに向けて、安定的にデフレから脱却をしていくということが目標でございます。
その中において、金融政策によって大胆な金融緩和を行っていくことによって、結果としてそれは理論的に導き出されるものでもあるわけでございますが、結果において円高が是正され、そして、先ほど申し上げましたような成果が出てきているということを申し上げたところでございます。
○宮本(岳)委員 しつこいようでありますけれども、目的ではない、ターゲットではない、こうおっしゃるわけですね。それならば、行き過ぎた円高の是正は起こらなくてもよかったとお考えですか。
○安倍内閣総理大臣 これはいわば、ターゲットはあくまでもデフレ脱却であります。そして、副次的に、結果として行き過ぎた円高が是正されたということでございますが、これは、先ほど申し上げましたように、大胆な金融政策によって、理論的にはそういう効果が出てくるということだったんだろうと思いますが、あくまでも目的は、為替ではなくて基本的にはデフレからの脱却であったということでございます。
○宮本(岳)委員 幾らターゲットではないとおっしゃっても、現在の金融緩和政策を進めると円安への圧力になるということは、これはもうまさに市場関係者もみんな認識をしているわけであります。
財務大臣、デイセルブルム議長の言うとおり、G20で、「為替相場の下落につながるような政策決定を行う際に事前に通知することで合意した」と言うのであれば、アベノミクスによる金融緩和をさらに進めていく際には、事前にG20諸国に通知しなければならなくなるんじゃありませんか。
○麻生国務大臣 まず最初にお断りしておきますけれども、金融政策というのはあくまでも日銀の所管ですからね。これはちょっと忘れぬようにしていただかぬと、いかにも俺がやっているように言われると話が込み入りますので、これは日本銀行の所管ですから。
ただ、一般論で言えば、私どもも、今言われたように、いろいろなことを電話でしょっちゅうやっていますので、そういった意味ではいろいろな話がありますけれども、少なくとも、宮本先生、この二週間で十一円円高になっているんですよ。円安になっているときに言われるならともかく、円高になっているときに言われることはまずありません。
○宮本(岳)委員 いや、それは日銀がやることはわかっているんですよ。でも、アベノミクスと呼ばれる政策パッケージの中にはそれが入って、しかも、それを政府が進めていると言っているわけですから、それを論じているわけですよ。
さらなる金融緩和は、国際的な通貨安競争を引き起こしかねないことは明白だと思います。それは恐らく、国際的にも指弾される結果となるでしょう。
日本銀行の金融緩和政策に依存するアベノミクスの三年間をきちんと総括して、真っ当な道に進むことを主張して、私の質問を終わります。