「特区」政策は誤り 宮本岳志氏 「ウィッツ校」問題追及 (しんぶん赤旗)
第190回国会 地方創生に関する特別委員会 第13号
平成二十八年四月二十六日(火曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 山本 幸三君
理事 後藤 茂之君 理事 佐藤ゆかり君
理事 新藤 義孝君 理事 寺田 稔君
理事 山口 俊一君 理事 篠原 豪君
理事 宮崎 岳志君 理事 桝屋 敬悟君
秋本 真利君 井上 貴博君
伊藤 達也君 江藤 拓君
大隈 和英君 大野敬太郎君
岡下 昌平君 勝俣 孝明君
神山 佐市君 菅家 一郎君
小泉進次郎君 今野 智博君
笹川 博義君 菅原 一秀君
鈴木 馨祐君 田中 英之君
谷川 とむ君 辻 清人君
中谷 真一君 野中 厚君
鳩山 邦夫君 平井たくや君
福田 達夫君 牧島かれん君
村井 英樹君 山下 貴司君
山田 賢司君 青柳陽一郎君
井坂 信彦君 緒方林太郎君
柿沢 未途君 吉良 州司君
佐々木隆博君 鈴木 克昌君
高井 崇志君 寺田 学君
福田 昭夫君 角田 秀穂君
樋口 尚也君 田村 貴昭君
宮本 岳志君 椎木 保君
…………………………………
国務大臣
(地方創生担当)
(まち・ひと・しごと創生担当) 石破 茂君
内閣府副大臣 福岡 資麿君
文部科学副大臣 義家 弘介君
農林水産副大臣 齋藤 健君
内閣府大臣政務官 牧島かれん君
法務大臣政務官 田所 嘉徳君
財務大臣政務官 大岡 敏孝君
厚生労働大臣政務官 三ッ林裕巳君
経済産業大臣政務官 星野 剛士君
国土交通大臣政務官 津島 淳君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 向井 治紀君
政府参考人
(内閣官房内閣参事官) 蔵持 京治君
政府参考人
(内閣府大臣官房参事官) 中村裕一郎君
政府参考人
(内閣府規制改革推進室次長) 刀禰 俊哉君
政府参考人
(内閣府地方創生推進事務局長) 佐々木 基君
政府参考人
(総務省大臣官房審議官) 亀水 晋君
政府参考人
(総務省総合通信基盤局電波部長) 渡辺 克也君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 佐々木聖子君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 松尾 泰樹君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 小松親次郎君
政府参考人
(文化庁長官官房審議官) 磯谷 桂介君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 樽見 英樹君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 森 和彦君
政府参考人
(厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長) 福田 祐典君
政府参考人
(厚生労働省職業安定局雇用開発部長) 広畑 義久君
政府参考人
(農林水産省大臣官房審議官) 川島 俊郎君
政府参考人
(農林水産省大臣官房審議官) 大角 亨君
政府参考人
(農林水産省大臣官房審議官) 山北 幸泰君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 前田 泰宏君
政府参考人
(国土交通省大臣官房審議官) 持永 秀毅君
政府参考人
(国土交通省大臣官房審議官) 佐南谷英龍君
政府参考人
(国土交通省大臣官房審議官) 杉藤 崇君
政府参考人
(国土交通省航空局次長) 重田 雅史君
政府参考人
(国土交通省航空局航空ネットワーク部長) 和田 浩一君
政府参考人
(観光庁観光地域振興部長) 加藤 庸之君
衆議院調査局地方創生に関する特別調査室長 佐々木勝実君
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委員の異動
四月二十六日
辞任 補欠選任
池田 道孝君 神山 佐市君
江藤 拓君 笹川 博義君
大野敬太郎君 村井 英樹君
勝俣 孝明君 秋本 真利君
小泉進次郎君 今野 智博君
菅原 一秀君 辻 清人君
谷川 とむ君 岡下 昌平君
中谷 真一君 山下 貴司君
宮川 典子君 井上 貴博君
青柳陽一郎君 井坂 信彦君
柿沢 未途君 高井 崇志君
佐々木隆博君 鈴木 克昌君
同日
辞任 補欠選任
秋本 真利君 勝俣 孝明君
井上 貴博君 大隈 和英君
岡下 昌平君 谷川 とむ君
神山 佐市君 池田 道孝君
今野 智博君 小泉進次郎君
笹川 博義君 江藤 拓君
辻 清人君 菅原 一秀君
村井 英樹君 大野敬太郎君
山下 貴司君 中谷 真一君
井坂 信彦君 青柳陽一郎君
鈴木 克昌君 佐々木隆博君
高井 崇志君 柿沢 未途君
同日
辞任 補欠選任
大隈 和英君 宮川 典子君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)
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○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
私はこれまで、当委員会で、あなた方の地方創生なるものが結局失敗に終わるのは、地方を疲弊させてきたみずからの政治や政策に対する総括も反省もないところにその最大の原因がある、こういうふうに一貫して指摘をしてまいりました。
特区をめぐっても、この間、構造改革特区とか総合特区とか国家戦略特区とか名前はいろいろ変わるわけですけれども、その結果についての総括も反省もないままに進められております。今回も、相も変わらぬ繰り返しにすぎないと思うんですね。
この特別区域政策というものは、私はその最初から、つじつまの合わない、原理的におかしい政策だと思ってまいりました。本当によいことだというのであれば、特区限定などと言わず、全国全てで大手を振ってやればよいではないか。そうならないのは、つまり、特区で限定的に始めなければならない理由は不安や危険があるからにほかなりません。しかし、全国でやることに不安や危険があるのならば、特区だからといってやってよいというものでもなかろうと思うんですね。
大臣、そもそも、全国的にやるには不安も危険もあるものを、なぜ限定された地域でならやってよいのでしょうか。
○石破国務大臣 それを不安とか危険とかというネガティブな言葉で捉えるのか、それとも懸念される事項というのか。別に私は言葉の遊びをするつもりはないんですけれども。
例えば、今御審議をいただいておる農地の問題、あるいは服薬指導のお話、有償旅客運送のお話にしても、こういうことって懸念されるよねというのはあるわけでございます。企業が農地を持っちゃうとごみ捨て場にするんじゃないんですかとか、テレビ電話を使って服薬指導というものをやるとすれば、顔色がちゃんと判断できなかったらどうしますかとか、それがやがてひいてはライドシェアというのか、そういうものを認めることになるんじゃないんですかとか、そういう懸念があるわけでございます。
そういうものがどうなのかという実証はしていかねばならないものだと思いますし、例えば農地のお話でいえば、これは養父市が非常に積極的に御提案をいただいているものでございます。そうだとすれば、いろいろな懸念に対して私どもとして今回の法律でもいろいろな措置を講じております、あるいは運用でもそうであります。そういうものを講じてなおかつそういうような懸念というものが払拭されないとするならば、そんなものは全国展開をしてはいけません。それが懸念が払拭されたというふうに得心のいくものであるならば、全国展開をやらないという理由はどこにもないということであって、実験台にしてみようとか、そういうようなふらちな考えは全く持っていないものでございます。
○宮本(岳)委員 特区というものは全国でやるには懸念があるものをある地域に限定して試してみようというわけでありますから、実証という言葉を使われましたけれども、しかし、実証する政府はそういう意図でやるんでしょうが、実証されるその地方、それから地域住民はたまったものではない。失敗すれば、その結果、その地域の住民の命と暮らしにもかかわる事態さえ起こり得るわけですね。
きょうは、子供たちを実験台にし、失敗によって最も重大な事態を生んだ、あなた方の失敗策の典型例、伊賀市意育教育特区というものについて議論したいと思うんです。
三重県伊賀市の伊賀市意育教育特区は、それまでは禁じられていた株式会社による学校経営を特区のみ可能とする二〇〇二年施行の構造改革特別区域法に基づいて、内閣府及び文部科学省の認定を受けて設立されました。ここに株式会社立高等学校として二〇〇五年九月に開校したのが、ウィッツ青山学園高等学校であります。
このウィッツ青山学園高校が、昨年十二月八日、東京地検特捜部の捜索を受けて大事件となりました。
きょうは、この問題の対応に当たってきた義家弘介文部科学副大臣に来ていただいております。副大臣、地検特捜部の捜索を受けた容疑はどのようなものですか。
○義家副大臣 ウィッツ青山高等学校に在籍する生徒の高等学校就学支援金に関する詐欺容疑と聞いております。
○宮本(岳)委員 高校授業料無償化、就学支援金支給制度は、二〇一〇年の通常国会に当時の民主党政権により法案が提出され、私も修正案の提案に加わり、民主、公明、共産の三党で修正した上で可決、成立した法律であります。その後、自公政権に戻り、公立高校の無償化に所得制限が導入されるとともに、低所得者世帯の私立高校生への給付金は増額をされました。
高等学校の学費を軽減することで学習機会の均等に寄与することを目的としたこの制度が詐欺に使われるというようなことは、到底看過できるものではありません。
馳文部科学大臣も記者会見で、私自身、大臣として憤りを禁じ得ない、こういう人が教育を語る資格があるのか、ふざけているのか、公教育をなめているのかと怒りをあらわにされたのも当然のことであります。
その後、伊賀市を通じて実態の報告を求め、義家副大臣を座長とするタスクフォースで教育上の問題点を明らかにしてきたようでありますけれども、どのような問題が明らかになっておりますか。
○義家副大臣 文部科学省では、ウィッツ青山高等学校の在学生徒の高等学校等就学支援金に関する詐欺の疑いについての東京地検特捜部の強制捜査に端を発し、昨年十二月二十四日に私を座長とする広域通信制高校緊急タスクフォースを設置し、同校の問題への対応も含め、広域通信制高校の運営実態の把握、適正化や指導監督体制の改善等について検討を行ってきたところであります。
先ほど委員が御指摘のように、本来、特区の中で行う教育という形で認可しているわけですが、サポート校という名前で、把握できない、管理できない形で全国展開されている、その中から出てきたものが、今回、東京で東京地検特捜部が動いたものの中の一つなわけです。
その中で、まず同校の実態については、これまでの伊賀市からの報告をまとめますと、まずは、同校みずからが通信制課程において完全に人員不足であり、生徒の管理ができていない。具体的には、それぞれのサポート校、LETSと呼んでいますけれども、LETSに聞かないと実態はわからない。
続きまして、校長を含む全ての役員に学校を経営するために必要な知識経験を有する者がおりません。これは、特区学校審議会の中でもウィッツみずからが認めているところでございます。
また、通信制課程の標準シラバス、年間指導計画も作成していない。サポート校に丸投げという状況である。
さらには、学習指導要領に基づいた指導をしてこなかったという形を認めたほか、同校の通信制課程の教育は、実質的には、同校と契約関係にある全国各地の民間施設において、同校の校長の監督が直ちには行き届かない形で行われていたこと、特に面接指導において、同校における不適切な管理運営に起因して、学校指導要領が示す各教科、科目の目標、内容等に照らして著しく不適切な活動を行ってきたことが判明しております。
また、所管庁である伊賀市においても、このウィッツに対して専任スタッフが置かれていなかった、それから、それぞれの協力校の実態を明らかにするようなマンパワーもなかなかないという状況の中で課題がございました。
文部科学省としましては、伊賀市に対して所轄庁としての適正な指導監督の実施及びそのために必要な体制の強化等について現在指導しているところでありまして、今この時間も特区学校審議会が開かれている状況でございます。
○宮本(岳)委員 配付資料一を見ていただきたい。ウィッツ青山学園高校が伊賀市に提出した資料であります。
後期スクーリングでユニバーサル・スタジオ・ジャパンにバスツアーに出かけております。途中、名阪上野ドライブインに立ち寄り生徒が伊賀の名産に触れたから家庭科、宿泊先周辺を散策したから社会、USJで土産物を買い、おつりの計算をしたから数学、さまざまな職業を見たから総合、舞台セットを鑑賞したから美術などという単位認定をしております。
このようなスクーリングが高校教育の内容として到底単位認定できるようなものでないことは明らかですね、義家副大臣。
○義家副大臣 明らかであり、言語道断であろうと思います。
○宮本(岳)委員 後期スクーリングだけではないですよ。
二枚目、配付資料二は前期スクーリングのものであります。
同じように、バスの中で洋画鑑賞をして英語と国語、ジャージーアイスクリーム手づくり体験が家庭科と社会、散策、自然観察、スケッチをしたら理科と体育と芸術。毎回この調子であります。
内閣府地方創生推進事務局のホームページを見ますと、構造改革特区の説明として「実情に合わなくなった国の規制が、民間企業の経済活動や地方公共団体の事業を妨げていることがあります。 構造改革特区制度は、こうした実情に合わなくなった国の規制について、地域を限定して改革することにより、構造改革を進め、地域を活性化させることを目的として平成十四年度に創設されました。」と書かれてあります。
大臣、バスの中で洋画を鑑賞して英語や国語の高校の単位に認定したり、USJで土産物を買い、おつりの計算をして高校の数学の単位に認定したりしてはならない、これが民間企業の経済活動や地方公共団体の事業を妨げている文部科学省の規制なのか、地域の活性化を実現するためには取り除かなければならない規制なのか。いかがですか。
○石破国務大臣 これは主に文科省においてお答えすべきものかと思いますが、委員がおっしゃったようなお話は、私も報告を受けて、仰天という言葉はこのためにあるような言葉であって、幾ら何でもひどかろうというものだと思っております。
したがって、この制度にこの学校の運営そのものが合致しているとは到底思えないものでありまして、これは悪用というのか何というのか、言葉の形容のしようがございませんが、それは当事者のお話を聞いてみないとよくわかりません。私自身は当事者のお話を聞いたわけではございませんが、文面で見る限り、報道で知る限り、このようなものはこのような特区にはなじまないのではないかという感想を私自身は持っております。
実際、文科省において、伊賀市とも協議の上、それなりに厳しい措置をおとりになるのではないかというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 では、そもそもこの問題がどういう問題なのか、たまたま特異な事例なのか、それとも、地域限定とはいえ本来営利を目的とする株式会社に学校経営をやらせたことから、ある意味必然的に生じたものなのかということを考えてみたいと思うんですね。
そもそも株式会社による学校経営は、平成十五年、二〇〇三年以前には長く許されておりませんでした。文部科学省でも副大臣でもいいですが、それはどういう理由からですか。
○義家副大臣 学校は、言うまでもなく、教育基本法第六条にも定められているとおり、公の性質を有するものでありまして、公共性、継続性、安定性が不可欠であります。そこで、それらを担保するための制度として学校法人制度が設けられております。一方で、株式会社は学校法人に比べてこれらの点の確保について懸念があることから、学校の設置主体としては国、地方公共団体及び学校法人を基本としてきたところであります。
その後、総合規制改革会議等においてさまざまな議論があり、株式会社による学校設置について、情報公開や第三者評価、セーフティーネットの構築などの条件を整えることによって検討し得るのではないかという指摘が行われてまいりました。そこで、このような議論を踏まえて検討した結果、特区制度の趣旨に鑑み、特別なニーズがある場合において、特区申請自治体により公共性、継続性、安定性が確保される場合は株式会社による学校の設置を認めることとしたものであります。
一方で、全国でアメーバのように、あたかも特区の中の学校教育の教室があるかのような展開をしていくということはまさに想定していなかったことでありまして、この部分において起こってきている今の負の部分に対しては現在厳しく対応しているところでございます。
驚くべきことに、これは委員御指摘のとおり卒業とは認められないと言いつつも、この三月に卒業予定者が約四百名いたわけですけれども、全通研に加盟の学校等に協力をいただきながら緊急回復措置という形でさまざまな授業を行ってきたんですが、一方、同時に、二月のこの問題が発覚して議論している最中に、生徒たちに卒業認定書と卒業証書をそのまま公印を押して送ってしまっている。結果として生徒は卒業できないと言われていたけれども卒業できたじゃないかという形に今なっているので、現在行われている特区審議会においてこの部分についてしっかりとお話ししているところでございます。
○宮本(岳)委員 学校は公の性質を有するものであり、その設置と運営は極めて公共性の高いものであります。
にもかかわらず、二〇〇三年の通常国会、この株式会社立学校を解禁する特区法の改正を進めたとき、遠山文部科学大臣はこう答弁をしております。構造改革特区は、地方公共団体あるいは民間団体の発想を重視し、いろいろなアイデアを生かして日本を活性化しようというものだ、私どもとしては、本来あるべき学校教育の持つ公共性、安定性、継続性といったものはしっかりと守りながら、いいアイデアで、しかもそういったセーフティーネットがしっかり保たれるようなものについて認めたんだ、こう言うんですね。しかし、実際はこういう事例が発生した。
実は、歴史を振り返ると、この直前、二〇〇二年から二〇〇三年にかけて文部科学省と総合規制改革会議の間で激しい応酬がありました。
文科省が学校の公共性を理由に、営利目的で事業を行う株式会社は学校の設置者になることにはなじまない、こう主張したのに対して、総合規制改革会議側は、通常の競争的な市場では、株式会社は利益最大化のためには結局、教育の質を高め価格を抑えて市場競争で生き残るほかなく、株式会社だからといって公共性の高い事業を担えないということはないと反論いたしました。
また、教育への再投資が確保できないおそれを指摘する文科省に対して、配当は間接金融における利息支払いと同じで、配当後は利益剰余金として積み立てられ、将来の教育投資に向けられるはずだ、こういう反論が総合規制改革会議の方からあったわけであります。
これは事務方でいいですが、こういう議論があったことは事実ですね。
○刀禰政府参考人 お答えいたします。
当時の総合規制改革会議におきまして、教育を担う主体の多様化を図り、消費者の選択肢の拡大と競争的環境を通じた教育サービスの質的向上を目指すという観点などから、教育分野において株式会社参入について議論が行われたものと承知をしております。
平成十四年十二月に規制改革の推進に関する第二次答申がございましたが、そこにおきまして、株式会社などの民間主体による教育分野への参入については、情報開示制度、第三者評価による質の担保及びセーフティーネットの整備等を前提に、教育の公共性、安定性、継続性の確保に留意しつつ、特に大学院レベルの社会人のための職業実務教育等の分野についてそのあり方を検討すべきであるとし、平成十五年度中に検討、結論とされたところでございます。
これを踏まえて関係府省において検討が行われ、平成十五年七月、構造改革特区において株式会社による学校の設置が認められたと承知しております。
○宮本(岳)委員 いやいや、公共性も安定性も継続性も守られていないんですよ。
今回のウィッツ青山学園高校事件は、このときの議論に決着をつけたと思います。
資料三を見ていただきたい。これは、文部科学省提出資料をもとに私の事務所でつくったグラフであります。
左の青い棒グラフが、ウィッツ青山学園高校の広域通信制生徒数。二〇〇六年、開校時の八十九人から、二〇一五年、千二百人近くへと激増しております。右の赤い棒グラフは全日制の生徒数。二十一人で始まった全日制は、二〇〇九年の五十一人をピークにまた減少し、二〇一五年には二十一人と、毎年定員割れが続いている。きょう資料が届きましたが、うち入寮生徒数に至っては、ここ二年連続わずか三人ですよ。結局、全日制の赤字は明白で、専ら広域通信制の生徒をふやしてきたわけであります。
その結果、資料四の折れ線グラフを見ていただきたい。青いグラフ、売上高は二〇一〇年の一億三千九百万円から二〇一四年の二億円近くに急増。その最大の要因は、八千二百万円から一億六千百万円へと倍増した緑のグラフ、就学支援金収入であります。一方、赤の折れ線グラフ、人件費、教材費、経費は一億千二百万円から八千二百万円へと三割近くも減らされております。
これは既にNHKの番組でも放送されましたけれども、全国四十五カ所に設置されたLETSなるサポート校を通じて、就学支援金目当てで、なりふり構わぬ通信制の生徒の勧誘をやってきたということですね、義家副大臣。
○義家副大臣 勧誘マニュアル等、報道されている内容に鑑みれば、まさにそういう意図があるというふうに断じざるを得ないと思っております。
○宮本(岳)委員 では、その売上金、もっとはっきり言えば国民の税金を原資とする就学支援金は何に使われたのか。
この間、二〇一二年度から二〇一五年十二月にかけて、学校を運営する株式会社ウィッツは親会社である東理ホールディングスに経営指導料名目で二億円近くを支払ってまいりました。年次を追って、幾ら支払われたかお答えいただけますか、文科省。
○小松政府参考人 お答えを申し上げます。
年次を追いまして、平成二十四年に三千百五十万円、平成二十五年に三千六百万円、平成二十六年に六千万円、以上がウィッツから株式会社東理ホールディングスへ支払われました経営指導料と聞いております。
○宮本(岳)委員 平成二十七年に七千百万円というものもお聞きをしたわけでありますね。総額では一億九千八百五十万円になると思います。何が配当後は利益剰余金として積み立てられ、将来の教育投資に向けられるだと言わなければなりません。親会社が吸い上げているわけであります。
資料五を見ていただきたい。昨年六月二十五日に発表された東理ホールディングスの第十一期有価証券報告書の関係会社の状況欄であります。下から四段目に株式会社ウィッツがあります。赤い線を引いておきました。経営管理に関する契約を締結している。この契約に基づいて経営管理料というものが払われているということであります。
文科省に聞きますけれども、このウィッツ青山学園の設置主体である株式会社ウィッツというものは、開校時からこの東理ホールディングスの子会社でありましたか。
○小松政府参考人 お答え申し上げます。
所轄庁である伊賀市から聴取したところによりますと、東理ホールディングスがウィッツを子会社とした時期については、平成十九年三月と承知しております。
ちなみに、東理ホールディングスにつきましては、平成十六年に株式会社東京理化工業所の株式移転による完全親会社として純粋持ち株会社を設立し、東証二部に上場し、社名を株式会社東理ホールディングスとしたものと承知しております。
○宮本(岳)委員 私は決して、株立学校を設立する株式会社が全て金もうけ主義だと決めつけるつもりはないんです。しかし、設立した後から金もうけ主義の別の企業に子会社化されてしまえば同じことなんですね。学校設立会社が他の企業に買収されないという保証などどこにもない。現に、このウィッツは東理ホールディングスに買収されて子会社になったわけですね。
したがって、株式会社に学校経営を任せたことが間違っていたと言わざるを得ません。
資料六を見ていただきたい。これは、今じゃないですよ、二〇一四年、二年前の三月二十七日の第十八回伊賀市意育教育特区学校審議会記録の二ページであります。
二〇一四年には、自公政権が高校無償化に所得制限を導入し、そのかわり低所得家庭の私立高校生への支援金を上積みする法改正を行いました。年収二百五十万円以下の住民税非課税世帯なら二・五倍、二十九万七千円の支援金を学校設置者に給付することになりました。
このとき、ウィッツ青山学園は伊賀市に単位認定料の値上げを申し出ております。下線部。開校時に単位認定料は二十一万円であったが、この就学支援金制度ができたときに、低所得者が二十一万円までしか受け取れないため現在の二十三万七千円に変更した、今回、低所得者への就学支援金が最大二十九万七千円となるので増額を行いたいと言っております。
低所得者が受け取れないのではありません。株式会社ウィッツが受け取れないということじゃありませんか。さすがにこれには委員から、就学支援金が上がるから単位認定料も上げるとしか聞こえない、こういう異論が出て、審議会はこれを認めませんでした。
この審議会で副校長は、会社としては通信制の充実のために収益を上げていく、収益を上げるために増額を行うとはっきり述べております。これはつまり、就学支援金が増額されたから会社の収益のために目いっぱいもらおう、どうせもらえるんだったら最高額までもらおうと。
義家副大臣、これは就学支援金の趣旨に照らして全く不適切な運用の仕方ではありませんか。
○義家副大臣 全くおっしゃるとおりでございまして、就学支援金という制度そして低所得者に対する配慮というものを、ある意味冒涜するようなありようであろうというふうに思っております。
そして、この就学支援金制度と特に特区の学校の周りにあるサポート校との兼ね合いが、かなりはまってしまったというか、非常にあしき広がりを見せてしまった。と申しますのも、学校にできるだけ来なくて向学意識がなくて在籍だけしている人がそのまま本校に代理受給されるわけですから、それがどんどんどんどん広がっていくような懸念というのは当然存在します。
本来、離れていればいるほど手がかかるのが通信制教育でありまして、現在もそのように一生懸命汗を流している通信制学校がある一方で、このような運用が行われている学校があらわれてしまったことは大変遺憾であると思っております。
○宮本(岳)委員 このサポート校というのは、フランチャイズのような形で、早い話が塾ですよ。塾のフランチャイズみたいなものでありまして、これは学校教育とは全く別物であります。
週刊朝日、昨年十二月二十五日号によると、ウィッツ青山学園のサポート校の一つ、これは一番問題になっているところですけれども、四谷キャンパスの幹部は、一人につき二十四万円の紹介料などをちらつかせながら、年収三百五十万円未満の方を御紹介ください、年収がそれを超えると就学支援金が減ってしまうので、うちのビジネスモデルが成り立たなくなるなどと、入学者獲得に奔走していたと報じました。
もはやビジネスモデルにすらなっていたということなんですね。驚くべき不適切な事態でありますけれども、それが構造改革特区の名でまかり通っていたわけです。
しかし、文部科学省も、これを知らなかったということでは済まされないと思うんですよ。
文部科学省は、この間、数度にわたって、学校設置会社による学校設置事業の調査を行い、結果を発表してまいりました。二〇一一年度の調査結果報告書によると、教育研究面で株式会社立の高等学校にはどのような実態が見られましたか。
○小松政府参考人 お答え申し上げます。
二〇一一年の調査結果報告書でございますけれども、株式会社立の高等学校につきまして調べましたもので、添削レポートの大部分を多肢選択式としている例あるいは添削に際して解説を付さない例、面接指導におけるメディア利用の際に成果の評価を行っていない例、試験を自宅で実施している例、学校の教員ではないサポート校の職員が添削指導を行っている例、特区の区域外に設置する教育施設で試験を実施している例などの不適切な教育活動等の事例が見られたことを記載しております。
○宮本(岳)委員 ここまでつかんでいるんですね。
このとき既に文部科学省は、ウィッツ青山学園高校の、全部じゃないですよ、全部でないにしても、今回明らかになったような不適切な教育研究面の実態はつかんでいたんじゃないですか。
○小松政府参考人 お答えをいたします。
先ほど申し上げましたのは、お尋ねのありました二〇一一年の調査結果は学校設置会社による学校設置事業の全般としてつかんでおります。その中で、ウィッツ青山高校も含めて設置会社として捉えておりますけれども、今お尋ねのウィッツ青山学園高校における今般明らかになった面接指導等の具体的な実態等につきましては、ことしの二月に、地検の捜査等をきっかけとした調査の中で所轄庁である伊賀市からの報告を受けて把握したという状況にございます。
○宮本(岳)委員 いや、これはちょっと納得いかぬのですね。
二〇一一年に調査した、添削レポートが選択式だ、あるいは面接指導におけるメディア利用の際に成果の評価を行っていない、見ているかどうかもわからない、試験を自宅で実施している、学校の教員でないサポート校の職員が添削している、まさにこの間、LETSとウィッツ青山学園高校で起こっている事例なんですけれども。それじゃないんだ、全国でこれがあったんだというんだったら、では、このウィッツ青山学園みたいな事態は、さっきみんな驚いたと思うんですが、驚くに当たらず、全国の広域通信制株立学校で幾らでもあるということですか。
○小松政府参考人 お答えを申し上げます。
先ほど少し申し上げましたが、二〇一一年度に実施いたしました調査の中で、ウィッツ青山学園高校につきましては先ほどの幾つかの事項が当てはまるということでございました。そのほかにも是正を含むべき事項が見られたことは事実でございます。
そこで、文部科学省といたしましては、ウィッツ青山高校を含みます学校設置会社による学校設置事業に関するこの調査結果をもとに、その翌年八月に、構造改革特区推進本部、全閣僚で構成しておりますけれども、そこにおいて是正の方針が決定されるということになりまして、その全体として、個別の事例もございますけれども、トータルとして是正が必要であろうということで、学校設置会社への改善指導を促す通知を発出するなどして所轄庁も含めて指導を行ってきた、こういう経過でございます。
○宮本(岳)委員 手元にありますが、文部科学省としては、当時の城井大臣政務官の通知というのが出ております。しかし、ウィッツ青山学園の副校長は、ことし二月十日の第二十二回伊賀市意育教育特区学校審議会で、このときの文科省調査のことについて、過去に文部科学省が調査に来られた際に一つはスクーリング計画書などを提出させていただいて、それで大丈夫だという認識を、その当時は注意をされなかったので、それに基づいて実施をしてきたと語っております。
これは内閣府に聞くんですけれども、そういう決定をしたという話が今ありましたからね。これは内閣府で、多分本部で決定したんだと思うんですが、平成二十四年八月二十一日に構造改革特別区域推進本部が出した評価・調査委員会の評価意見に関する今後の政府の対応方針では、学校設置会社による学校設置事業八一六についてどのような是正措置が決められましたか、内閣府。
○佐々木(基)政府参考人 ただいまお話のありました、推進本部におきまして決定された措置について御説明を申し上げます。
一つは、内閣府は面接指導等が特区区域内で行われるよう認定団体に対して周知、指導すること、二番目が、規制所管省庁は適切な教育活動が実現するよう認定団体に対して周知、指導する、三番目が、内閣府及び規制所管省庁は学校に対する助言指導体制の確保を認定団体に対して要請するということでございます。
○宮本(岳)委員 この文書によりますと、弊害が生じていても、規制の特例措置の要件または手続を見直すことで弊害の予防等の措置が確保され、是正または追加された予防等の措置について特区における検証を要すると認められる場合に該当するため、是正し、運用を見直した、こうなっております。
それに添付された別紙を見て愕然といたしました。各株立学校が掲げる教育の目的、内容にも十分留意しつつ、画一的に新たな基準を課すなど過度の規制強化につながらないようにしなければならないと、まるで現状追認ともいうべき文書まで添付されているわけですね。政府がそんな対応では、先ほど紹介したように、ウィッツ青山学園が何も注意されなかったのでそれで大丈夫だというお墨つきをもらったと考えるのも不思議ではないと思うんですね。
文部科学省に聞くんですけれども、なぜあの時点で国としてしっかりと現場に踏み込んで徹底的に是正しなかったんですか。
○義家副大臣 私自身もずっとこの問題に問題意識を持って取り組んでまいりましたけれども、特区の株式会社立学校の難しさでありまして、設置者は教育委員会ではなくて例えば特区の申請をした首長なんですね。文部科学省がその首長に対して何かができるかといえばできませんで、結局、教育というのは一年間、三年間というように経過を見ていくものでありますけれども、調査した点の状態でしか把握できないという制度上の文部科学省の権能の限界というものもございます。
しかしながら、このような事態が発生したことを重く受けとめた上で、今後、全国の広域通信制学校を対象とした調査の実施や、それから質の確保、向上、あるいは改めていろいろなところに伺っていくというような取り組みを中間取りまとめとしてまとめたばかりでございます。
○宮本(岳)委員 先ほど紹介した二〇〇三年三月二十六日の参議院文教科学委員会で、当時の遠山文科大臣は構造改革特区による株式会社立学校について、そこに学ぶ子供たちについては一回限りの人生でその時期学ぶわけでございますから、その子供の利益に十分配慮した上で、条件もつけた上でこのプランについて私どもとして協力していくという判断をとったと答弁をされました。
しかし、今日、ウィッツ青山学園の生徒たちに学校は非常識にも卒業証書を出したというふうに今御報告がありましたが、それは正式な卒業とは認められません。卒業見込みの生徒だけで四百人、その他も含めれば六百人以上の生徒たちが単位認定されず、追加スクーリングを受けなければ卒業証書も本来は受け取れない事態となっております。教育はやり直しがきかないから、学校の設置については厳しい規制がかかってきたんですね。
今、全国にある株式会社立の通信高校、これをちょっと見てみますと、十九校のうち十二校は廃校になった学校を活用しております。ウィッツ青山学園高校の三重県伊賀市を初め、福島県川内村、茨城県大子町、熊本県山都町、北海道和寒町など、過疎化している自治体が、子供がいなくなった学校に高校生がスクーリングに来てくれるなら大歓迎とばかりに、町おこし、村おこしとしてこの制度に飛びついた面があるんです。
しかし、このような過疎化している町や村に、広域通信制の高等学校を所轄庁として指導監督することは不可能です。なぜなら、そもそも高等学校を指導監督した経験など全くないじゃありませんか。義家副大臣、そうじゃないですか。
○義家副大臣 全くそのとおりでありまして、千人を超えるような生徒、あるいは、どこに通信制サポート校があるのかの把握も自治体を超えて把握していかなきゃならないという意味では、人員として監督指導体制が脆弱であるということは明らかであろうというふうに思います。
○宮本(岳)委員 大臣、文科省や政府が実験的に教育特区というようなものを認めて、営利目的で事業を行う株式会社に学校の設置を認めた結果が、一回限りの子供たちの人生に取り返しのつかない傷を残したと言わなければなりません。
構造改革特区、とりわけ株式会社立学校については問題が多く、これは誤りであったとお認めになりますか、大臣。
○石破国務大臣 聞けば聞くほどひどい話で、委員がおっしゃるように教育というのはやり直しがきかないので、誰が一番の被害者かといえば、それは子供たちが一番の被害者であることは間違いないということだと思っております。
今、義家副大臣から答弁がございましたように、それぞれがどこでどのように展開しているのかという実態を文科省においてきちんと把握していただき、是正すべき点は是正をしなければならない。
これが制度が引き起こした構造的な問題であるのか、それとも、私はウィッツ青山学園の経営者を存じませんが、制度を悪用した悪逆非道なやり方なのか。やはり、制度自体に構造的な問題があったというよりも、これを悪用した、そういうような人の問題ではないかと思います。こういうものをいかにして排除するかについては文科省においてまた御検討いただくことだと思いますが、私ども内閣府といたしましても、こういうことが起こらないように、私は余り二度と起こらないようにという言葉を多用するのは好きじゃないんですけれども、こういうことが起こらないためにどういうようなことができるのかということは文科省ともよく協議をしてまいりたいと思っております。
○宮本(岳)委員 私は、当委員会で一貫して、これまでの自民党政治の誤りから目をそらさず、これを直視し、その総括と反省に立つことなくして地方創生などおぼつかないと指摘をしてまいりました。
しかし、石破大臣は、平成の大合併も、地域再生も、三位一体改革も、地方分権改革の名による規制緩和も、構造改革特区も、制度としては、私がこれだけ事実を示しても、その誤りさえお認めになりません。結局、総括も反省もしようとしませんでした。そして、相も変わらず、また新手の一層悪い特区を押し売りしようとしている。
もはやこのような政権に未来はないということを申し上げて、私の質問を終わります。