不公正取引招く危険 宮本岳志氏 銀行法改定案に反対 (しんぶん赤旗)
《金融とIT融合:フィンテック、ビットコイン等》【衆議院 国会中継 財務金融委員会】2016年4月27日 (動画)
第190回国会 財務金融委員会 第16号
平成二十八年四月二十七日(水曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 宮下 一郎君
理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君
理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君
理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君
理事 古川 元久君 理事 伊藤 渉君
井上 貴博君 井林 辰憲君
岩田 和親君 越智 隆雄君
大岡 敏孝君 大野敬太郎君
勝俣 孝明君 國場幸之助君
助田 重義君 鈴木 隼人君
田中 英之君 田野瀬太道君
竹本 直一君 中山 展宏君
根本 幸典君 野中 厚君
福田 達夫君 務台 俊介君
宗清 皇一君 山田 賢司君
小川 淳也君 落合 貴之君
玄葉光一郎君 鈴木 克昌君
高井 崇志君 宮崎 岳志君
鷲尾英一郎君 上田 勇君
斉藤 鉄夫君 宮本 岳志君
宮本 徹君 丸山 穂高君
小泉 龍司君
…………………………………
財務大臣
国務大臣
(金融担当) 麻生 太郎君
内閣府副大臣 福岡 資麿君
内閣府大臣政務官 牧島かれん君
財務大臣政務官 大岡 敏孝君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 向井 治紀君
政府参考人
(内閣官房日本経済再生総合事務局次長) 広瀬 直君
政府参考人
(内閣府地方創生推進事務局次長) 川上 尚貴君
政府参考人
(公正取引委員会事務総局経済取引局長) 松尾 勝君
政府参考人
(公正取引委員会事務総局審査局長) 山田 昭典君
政府参考人
(警察庁刑事局組織犯罪対策部長) 樹下 尚君
政府参考人
(金融庁総務企画局長) 池田 唯一君
政府参考人
(金融庁総務企画局総括審議官) 小野 尚君
政府参考人
(金融庁監督局長) 遠藤 俊英君
政府参考人
(金融庁公認会計士・監査審査会事務局長) 天谷 知子君
政府参考人
(消費者庁審議官) 福岡 徹君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 金子 修君
政府参考人
(財務省主税局長) 佐藤 慎一君
政府参考人
(国税庁次長) 星野 次彦君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 中山 隆志君
財務金融委員会専門員 駒田 秀樹君
―――――――――――――
委員の異動
四月二十七日
辞任 補欠選任
井上 貴博君 岩田 和親君
助田 重義君 田中 英之君
前原 誠司君 小川 淳也君
宮崎 岳志君 高井 崇志君
同日
辞任 補欠選任
岩田 和親君 井上 貴博君
田中 英之君 助田 重義君
小川 淳也君 前原 誠司君
高井 崇志君 宮崎 岳志君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)
――――◇―――――
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず、仮想通貨についてお伺いいたします。
マウントゴックスのような詐欺事件が起こっていながら、仮想通貨について法的規制もなく、いわば野放しの状態であることを考えれば、本法案で通貨交換業者の登録制が導入されることは、適正な規制への第一歩として評価できると思っております。
しかし、既に始まっている仮想通貨の活用形態を調べると、商品先物やさまざまな金融商品を利用した過去の金融被害と同じ手口が見受けられ、過去の経験を反映した仮想通貨の規制ルールとは言いがたい面もあると思うんですね。
本日は、法案に従って、本法案の規制について質問したいと思います。
まずお聞きしますけれども、本法案で初めて仮想通貨について法律上の定義が与えられます。仮想通貨は、電子マネーのような通貨なのか、金融商品なのか。仮想通貨とは何か。その定義と、現在広く決済に利用されている手段との違いを簡単に説明していただけますか。
○麻生国務大臣 この法案におきまして、仮想通貨というものは、いわゆるマネーロンダリングとかテロ資金供与の対策のために国際基準というものをつくらねばいかぬということで、多国間の枠組みでありますファイナンシャル・アクション・タスク・フォース、FATFというものの定義というのがございますので、それを踏まえて、不特定の者に対して対価の弁済に使用でき、かつ、不特定の者を相手方として法定通貨と相互に交換できる、二、電子的に記録され、移転ができる、三、法定通貨または法定通貨建ての資産ではないとの性質を有する財産的価値と定義をいたしております。
したがいまして、プリペイドカードなどの前払い式の支払い手段とか、その他、企業が発行しますポイントカードなどにつきましては、例えば、それらを使用可能な店舗というものが特定の範囲に限られておりますので、不特定の者に対して対価の弁済に使用できないものであるならば、これは基本的には仮想通貨には該当しない、そういうように定義をされております。
○宮本(岳)委員 現在、仮想通貨を利用した既存のデリバティブを模倣したハイリスク・ハイリターンのサービスがふえております。
大手取引所のビットバンクが昨年七月に始めたビットコインFXは、複数の通貨での売買で差益を得る外国為替証拠金取引、いわゆるFXの手法をまねて、円などの通貨とビットコインを売買しております。また、ビットコインを証拠金として、その最大二十倍まで運用できるレバレッジまであるわけです。既に、月間取引額は四十億円を超えると言われております。
仮想通貨を使った証拠金取引と金商法で規制されるFX取引と、取引の形態や利益を得る方法など、消費者にとってリスクに違いがあるのかどうかを確認したいと思うんです。
金融庁は、ホームページにおきまして、「いわゆる外国為替証拠金取引について」、こういうものを掲載しておられます。そこには五つのリスクについて書かれてあるわけです。
一つ目が、相場変動リスクというものであります。「外国為替証拠金取引は、外国為替相場や金利が自分の想定と逆の方向に動いた場合には、短期間のうちに差し入れた保証金以上の損失が発生する可能性があります。」こう書かれてあります。
仮想通貨の取引に相場変動リスクはあるのか、その理由も含めて、金融庁、御説明いただけますか。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のFX取引のような仮想通貨を使ったデリバティブ取引というものがどのような取引なのかということを、必ずしも詳細を把握しているところではございませんので、完全に正確にお答えすることは困難でありますが、現在、業者が提供していますホームページなどを見ますと、その業者自身が価格変動リスクがあるという説明をしているところでございますので、そういうふうに認識をされているんだろうというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 正確に把握しているわけではないが、業者自身がそう言っているからそうなのだろうと考えているという御答弁でありました。
あわせまして、あとの四つですね。その他、金利変動リスク、流動性リスク、システムリスク、信用リスク、この四つが挙げられているわけでありますけれども、仮想通貨を使った取引ではこのようなリスクは発生するのかどうか、その理由についてもあわせて、金融庁、お答えいただけますか。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど申し述べました業者のホームページなどでは、先ほど申しました価格変動リスク以外にも、御指摘の、流動性リスク、信用リスク、システムリスク、そうしたものの存在が説明されているところでございます。また、他の業者におきましては、こうしたことに加えて、金利変動リスクの存在についても記載されている業者もございます。
それぞれの商品にどういう差があるのか、取引の詳細を必ずしも把握しておりませんので正確にお答えすることは困難ですが、そうした説明がされているという状況でございます。
○宮本(岳)委員 基本的にはあるという御答弁だったと思うんですね。
仮想通貨は通貨ではないけれども、外国為替証拠金取引のような通貨を利用した金融商品と同等のリスクを監督官庁である金融庁は認識をしておられます。
ならば、なぜ今回、FX業者と同等の規制を導入しなかったのか、その理由について御答弁いただけますか。
○麻生国務大臣 御審議をいただいております法案におきましては、資金の決済面から、仮想通貨と法定通貨の交換業者に対しまして登録制というものを導入させていただいております。これは基本的には、マネロン対策とかテロ資金供与規制及び利用者の保護のための規制というものを課すこととしております。これは、実際に投資家に被害が生じました例のマウントゴックスの破綻を踏まえますと、こうした規制の導入がいわゆるFATFなどで国際的に合意されたということにつきましてその対応を図るものであります。
これに加えまして、いわゆるFX業者に対するものと同様の規制、例えば、先ほど言われましたレバレッジをかけたというレバレッジの規制などを課すべきかにつきましては、これは仮想通貨の既存の有価証券との類似性の程度、また、仮想通貨を用いました取引の実態やトラブルの状況、また、何らかの規制を導入するということになりました場合は、具体的にどのような類似とか内容の規制がふさわしいのかなどなど、多種多様な論点をちょっと整理をしてみないといかぬという段階にまだあるんだと思います。
したがいまして、このため、今回の法案では、全部整理するまで待っているほど時間がないのかなという感じがしますので、早急な対応を図るということにしつつ、宮本先生御指摘のように、仮想通貨を用いた取引についても、この実態というものを今後よく注意をしながら、法案というものをさらに柔軟に対応させなきゃいかぬということになり得る可能性はあろうと思います。
○宮本(岳)委員 週刊東洋経済、二〇一六年四月九日号によれば、マウントゴックス以外にも仮想通貨によるトラブルが生じております。
金を担保とする仮想通貨、XNFというもので、二〇一四年一月に売り出されたこの仮想通貨は、発行会社は米国の企業でありまして、一時は価格が当初の二十倍近くに上がりましたけれども、七月には、日本で購入した顧客が換金できない事態となっております。ある代理店がウエブ上で公表している資料では、約二億円が日本からXNFの購入代金として送金されたとされております。XNFの発行会社の代表者は現在、消息不明ということなんですね。
すぐにでも対応すべき問題は、このレバレッジ規制だと。一九九八年の外為法の改正により、外国為替取引が自由化されて始まったFXでは、詐欺事件の続発と規制強化のイタチごっこをしてきた歴史があります。
金融庁は、顧客保護、業者のリスク管理、過当投機の観点から問題があると、二〇一〇年八月からFXにレバレッジ規制をかけました。レバレッジに上限を設けた理由、そして、その背景について御説明いただきたいと思います。
○麻生国務大臣 個人顧客というものを相手にいたしますいわゆるFX取引、外国為替証拠金取引につきましては、これは、売買できる金額の上限というか限度を証拠金として、証拠金一〇〇に対して二十五倍にまで制限をするという、レバレッジ規制というものを二十二年八月から導入させていただいておるところです。
規制の導入される前には、わずかな証拠金で多額の取引というものを顧客に勧誘する、勧めるということも行われておりまして、高いレバレッジの取引が多数見られたところでありますけれども、極めて高いレバレッジのフォーリンエクスチェンジ取引につきましては、為替がちょっと動いただけで顧客は膨大な損害をこうむるおそれがありますので、こういった業者のリスク管理の観点からもこれは問題があるということなどを踏まえまして規制が導入されたというのがその経緯であります。
○宮本(岳)委員 現在、仮想通貨の取引にはそのレバレッジの規制はないわけですね。ネット上で自由に取引が行われております。ビットバンクのホームページを見ていただきますと、「ビットバンクトレード 世界最高レベルの取引量と信頼性 国内唯一追証なしのビットコインFX、ビットバンクトレードは二十倍レバレッジのビットコインFX取引を提供しています。土日にできる・登録から最短三十分で取引開始・二十四時間三百六十五日投資可能、という特徴を持つ先進的なトレードサービスです。」と、二十倍のレバレッジがうたわれております。シンプルFXというものは、五百倍のレバレッジでFXができると書かれてあります。FXのような詐欺事件が発生する可能性は極めて高いと言わなければなりません。
そういう事件が発生することは想定していないのか、それとも、大規模な事件が発生するまでは放置しておくということなのか。いかがですか。
○麻生国務大臣 これは宮本先生、先ほども申し上げましたとおり、この仮想通貨を用いた取引というのを法令上どのように規制するかということにつきましては、仮想通貨と既存のいわゆる有価証券等々との類似性の程度とか、また、仮に仮想通貨を用いた取引につきましても、何らかの規制を導入する場合には、具体的にどのような類型があるかとか、また、内容の規制がふさわしいかといったことなど、これはいろいろな論点というものをもう少し整理してみる必要と、その時間も要るんだと思っております。
したがいまして、今回の法案では、実際に投資家に被害の生じましたマウントゴックス社の破綻というものを踏まえまして、早急に仮想通貨と法定通貨との交換業者に対する登録制と、マネロンとテロ資金供与規制を導入するということにしつつ、宮本先生の言われましたように、仮想通貨を用いた取引というものを法令上どのように規制するのかということにつきましては、これは今しばらく時間をいただいて、今後とも、継続して検討させていただきます。
○宮本(岳)委員 過去の例を考えれば、FX取引相当の規制をかけなければ、仮想通貨を利用した詐欺事件が起こる可能性は高いと思います。
消費者団体のフォスター・フォーラムの永沢裕美子さんは、「消費者被害を防ぐためにレバレッジ上限を共通化するなど業界一丸で取り組むべきではないか」とおっしゃっております。
事件が起こって被害者が発生するのを待っているわけにいきませんから、大臣も御検討いただけるということでありますから、早急にレバレッジ規制についても御検討をお願いしたいと思っております。
次に、仮想通貨の取引で得た利益に対する課税について。先ほど来、議論もされておりました。
税大ジャーナル二〇一四年五月号に、大阪国税不服審判所次席国税審判官の土屋雅一さんが「ビットコインと税務」という論文を発表しておられます。論文では、二〇一四年当時、米国会計検査院、GAOが、ビットコインを含む仮想通貨に係る税務コンプライアンスのリスクについて取りまとめた報告書を公表いたしました。
二〇一四年三月二十五日に、米国の内国歳入庁、IRSは、ビットコインを初めとする仮想通貨を用いた取引に現行の租税法がいかに適用されるかについて、十六問のよくある質問に回答する形式で解説したガイダンスを公表したようであります。
これは政府参考人でいいんですけれども、その後、国内向けの解説資料などを公表しているかどうか、お答えいただけますか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。
米国の内国歳入庁が、仮想通貨の課税上の取り扱いにつきまして、ガイダンスの形式で二〇一四年三月二十五日に公表したということは承知しております。
その後、内国歳入庁が仮想通貨についての解説資料等をさらに公表したとは承知しておりません。
○宮本(岳)委員 そうですか。
次に、欧州を聞きますけれども、欧州では、二〇一五年十月二十二日に、EUの司法裁判所が、ビットコインは通貨等の支払い手段と同様の機能を有するものであり、VAT、付加価値税ですけれども、これを課すべきではないとの判決を下して、欧州各国でもその方向で国内法が整備されていると聞いております。
現在、日本についてはどうかといいますと、これは参議院の質問主意書に対する答弁書、あるいは、二〇一五年五月十九日の参議院財政金融委員会における質疑で財務省の見解が述べられております。しかし、仮想通貨に関する課税上の対応についてまとまったものはまだ公表されておりません。
本法案で規制されると、仮想通貨の利用が一層拡大していく、この可能性がございます。課税上の扱いについても、財務省で、きちんとした見解もしくは解説書などをはっきり出すべきではないかと私は思うんですが、財務大臣、いかがですか。
○麻生国務大臣 これは、今般のこの法案で定義いたします仮想通貨の一つでありますいわゆるビットコインというものの課税上の取り扱いにつきましては、これまで国会でいろいろ議論が行われておりましたが、一般論としては、ビットコインの譲渡は、消費税法上、資産の譲渡などに該当し、消費税の課税の対象となる。また、ビットコインの譲渡によりまして利益が生じた場合は、所得税または法人税の課税の対象となるという旨を説明させていただいております。
いずれにしろ、仮想通貨の課税関係については個々の事実関係に基づいて判断されるものでありますから、まずは、仮想通貨の取扱業者からの照会などに対して国税庁において適切に対応していくことが基本となるものだと考えてはおります。
なお、お尋ねの、先ほどありました解説書といったものが必要になるかどうかにつきましては、これは、仮想通貨の取り扱い実態なども踏まえて、今後必要になってくるかどうかにつきましては、必要に応じて検討していくことになることもあり得るとは思っております。
○宮本(岳)委員 仮想通貨は、通貨のように決済に使われたり、FXのように投資対象として売買されたりするわけでして、しかし同時に、通貨でもなく、有価証券でもない、こういうことでありますから、一般の国民には課税関係が極めてわかりにくいことになると思うんですね。
昨年の参議院の財政金融委員会の答弁をもう一遍なぞりますけれども、麻生財務大臣は、ビットコインは法定通貨ではない、「課税上の取扱いについて一般論として申し上げさせていただければ、ビットコインの譲渡というものは、これは消費税法上の資産の譲渡等に該当するということになろうと思いますので、消費税の課税の対象となります。また、ビットコインの譲渡により、キャピタルゲイン、いわゆる譲渡利益が出た場合は、当然のこととして所得税または法人税課税の対象となります。」こう述べておられます。
本法案によって、この見解に変更はございませんね。
○麻生国務大臣 今の御質問は、民主党の、ずらっとおられませんけれども……(宮本(岳)委員「衆議院ですから」と呼ぶ)右代表一人ね。この法案は、大久保先生の質問に対して、仮想通貨を支払い手段、いわゆる法定通貨とか小切手などや、物品切手に位置づけるものではないということから、さきに述べた見解に変更はございません。
いずれにいたしましても、仮想通貨の課税上の取り扱いにつきましては、仮想通貨の取引実態などを踏まえながら、税制改正のプロセスにおいて検討をさらにされるべきものだと考えております。
○宮本(岳)委員 仮想通貨そのものの取引に消費税は課税されるということでありますから、先ほど取り上げた仮想通貨を利用するFXのような取引を行った場合でも、仮想通貨と円との売買ごとに消費税がかかることになるのではないか、こう思うんですね。
それで、個人のトレーダーのケースを考えますと、仮想通貨を購入するときに消費税を払い、仮想通貨で円を買う際には消費税を取り、最終的に消費税課税業者として納税しなければならないということになるんでしょうか。これは事務方でいいです。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。
消費税は、事業者が国内において行う資産の譲渡等に対して課税されるものでありまして、ビットコインのような仮想通貨の譲渡も消費税の課税対象になります。
そのため、消費税の課税事業者である個人のトレーダーが仮想通貨を購入する行為、これは課税仕入れということになりますし、逆に、仮想通貨で円を買うという行為は仮想通貨の販売になりますので、課税売り上げということになります。
したがって、他の取引とあわせて、課税売り上げに係る消費税額から課税仕入れに係る消費税額を差し引いた額を納税するということになります。
○宮本(岳)委員 そうなりますと、次に、トレーダーは、国内の個人や取引所と売買するだけじゃないですね。国内のトレーダーが国内の個人や取引所と売買する場合と海外の相手と仮想通貨の売買をするケースとで、消費税の課税は変わるんですか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。
消費税は、国内において事業者が行った資産の譲渡等に課されることとされておりまして、仮想通貨の売買が国内において行われたか否かの判定は、その譲渡を行う者の当該譲渡に係る事務所等の所在地が国内であるかどうかにより行うこととなります。
したがって、仮想通貨の譲渡を行う者の当該譲渡に係る事業所等の所在地が、国内にあれば課税取引、国外にあれば課税取引に該当しないということになります。
具体的に整理して申し上げると、国内の事業者が行う仮想通貨の譲渡、売る行為につきましては、相手の事務所の所在地が国内であっても国外であっても課税取引となりますし、国内の事業者が行う仮想通貨の譲り受け、買うという行為につきましては、相手の事業所の所在地が国内であれば課税取引となる一方、その所在地が国外であれば課税取引に該当しないということになります。
○宮本(岳)委員 仮想通貨の特徴の一つは、クロスボーダーでの決済や送金などの取引が容易に行われるということにあります。
消費税法は、国内における資産の譲渡、貸し付け、役務の提供について消費税を課すとしているため、クロスボーダーの取引への課税が非常に複雑になることが予想されます。これは消費税がかかるのか、かからないのかというような混乱が後から生じないように、早く周知徹底していただく必要があるということもぜひ申し上げておきたいと思います。
次に、銀行法の規制緩和について質問をいたします。
本法案の一つの柱が、金融グループによる金融関連IT企業への出資を容易にすることにある。この場合の金融グループというのは、銀行持ち株会社を中心とするグループ、あるいは、銀行とその子会社で構成されるグループのことでありますけれども、その金融グループが、IT技術の革新に対応するため、事業会社に出資する際の規制を緩和するということでございます。
この規制緩和を考える場合、大きな問題が私は二つあると思うんです。
一つは、他業禁止規定にかかわる問題であります。
銀行には、預金業務、貸付業務といった銀行本来の業務以外の業務を行うことが厳しく制限をされております。言うまでもなく、国民の預金を取り扱って貸し付けをするという経済のかなめをなす活動がリスクにさらされれば、経済全体の不安定化につながるためなんですね。この他業禁止規定の緩和がどのような影響をもたらすのかという問題を考えなければなりません。
もう一つは、独占禁止法に基づく規制であります。
きょうは、こちらの独占禁止法、独禁法に基づく規制について質問したいと思います。
独禁法十一条では、銀行による一般の事業会社の株式保有については、五%以上の保有を禁止しております。なぜ禁止しているのか。この規制を緩和するとどのような弊害がもたらされるおそれがあるのか。公正取引委員会にお答えいただけますか。
○松尾政府参考人 お答えいたします。
独占禁止法第十一条第一項は、銀行に対し、他の国内の会社の議決権を五%を超えて取得または保有することを原則として禁止しております。
このような規制が設けられている趣旨につきましては、豊富な資金力を有し、かつ、融資を通じて他の会社に大きな影響力を有している銀行が事業会社の株式を保有した場合には、企業支配の可能性はさらに高まるものと考えられ、また、銀行が特定の事業会社と結びついた場合には、融資条件について差別的な取り扱いが行われたり、出資による結びつきのある事業会社の取り扱う商品の購入を取引先に対しまして要請する等の不公正な取引が行われる素地が形成されることとなるためでございます。独占禁止法第十一条は、このような弊害を防止するために設けられているものでございます。
したがいまして、同規制を緩和した場合には、今申し上げたような弊害が生じる可能性が大きくなるものというふうに考えてございます。
○宮本(岳)委員 そういう弊害が大きくなると今御答弁がありました。
以上のような弊害を招く危険が現にあるわけでして、今回の改正で、銀行や銀行持ち株会社の出資できる対象は大きく広がります。
つまり、現行制度では、出資先は、金融関連業務あるいは従属業務を行っている企業に限定されております。リース業、サービサー業など、金融業に近い業務、銀行規則、内閣府令に具体的に列挙されているそういう業務に限定をされております。新たな業務に出資する場合は、内閣府令の改正が必要というのがこれまでの法令の扱いでありました。
しかし、今回の改正によって、銀行が出資できる業務範囲は、当該銀行の利用者の利便の向上に資する業務またはこれに資すると見込まれる業務を営む会社にまで広がるということになります。内閣府令を改正して業務をつけ加えるのではなくて、出資する企業ごとに金融庁が個別に認可する仕組みとなります。
銀行の利用者利便の向上に資する業務というのは、非常に包括的でありまして、幾らでも広げられる上に、内閣府令の改正も必要なくなるわけです。
このように、業務範囲は現行制度から飛躍的に広がると考えられるわけですけれども、先ほど公正取引委員会から御答弁あったように、独禁法にかかわる弊害が起こる可能性が高まるのではないかと思うんですが、どうこれを規制しようとされるのか、金融庁にお答えいただきたいと思います。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
今回の改正案は、あくまで、ITイノベーションなどの成果を取り込みながら、利用者利便の高い金融サービスを提供していくことが重要だ、そういう観点から、御指摘のとおり、銀行業の高度化、利用者利便の向上に資すると見込まれる業務を行う企業を対象に、当局による認可を前提に出資を可能とするというものでございます。
したがいまして、その対象は、銀行業の高度化、利用者利便の向上に資すると見込まれる業務という限定があり、または、当局による認可を前提にしているということで、銀行による産業支配を招くような広範な出資を許容しようとするものではございません。
さらに、当該出資に係る認可に際しましては、銀行が当該企業を子会社とすることにより優越的地位の濫用といったもののおそれがないかといったことについてはしっかりと確認することとし、そうしたことを通じて、御指摘の独禁法にかかわる弊害が高まるということにならないような運用をしていくものと考えております。
○宮本(岳)委員 いろいろおっしゃいましたけれども、そもそも、これほど大がかりな規制緩和をする必要があるのかということなんです。
まず、金融庁からは、フィンテック企業の側、特にフィンテックベンチャー企業の側から正式に要請があるわけではない、こう聞いております。金融審議会でも、メガバンクの担当者が参加し、規制緩和の必要性を説いておりますけれども、要求しているのは金融業界だけではないでしょうか。
しかも、フィンテックは、今やブームとなっておりまして、投資額も急激に伸びて、関係者からは、ITバブルのときと似たような状況ではないかといった懸念の声まで出るありさまであります。
経産省の審議会に提出された資料を見ますと、日本でもフィンテック企業の資金調達は倍々ゲームで伸びております。また、大手ベンチャーキャピタルのSBIインベストメントが運営するフィンテックファンドには、横浜銀行の二十億円等、多数の銀行の出資を含めて三百億円を目標としていると言われております。つまり、銀行は、現行法のもとででも、ベンチャーファンドを通じれば事業会社に出資できるんですね。
また、銀行がフィンテック企業と連携協力していく方法は出資だけじゃありません。業務提携という方法もあります。滋賀銀行とフィンテック企業のマネーフォワードは先月に業務提携を行い、フィンテック分野での新たなサービス、新技術の共同開発に合意をいたしました。既に銀行とフィンテック企業の業務提携も始まっているわけですね。
リスクマネーは既に十分に供給されている。さらに、イノベーションのための銀行とフィンテック企業の連携も既に始まっている。この上、なぜ銀行の出資規制の緩和が必要なのか、はっきりと御答弁いただけますか。
○池田政府参考人 お答えを申し上げます。
金融グループとそれ以外のフィンテック企業などが連携をして、相互にそれぞれの持っているノウハウを共有しながら、イノベーションにより新しい金融サービスを提供していくということは極めて重要なことであり、このことの意義は、金融グループのみならず、フィンテック企業などの金融機関以外の方からも、そうしたものの重要性についての指摘はあるものと考えております。
金融グループと金融関連IT企業との連携の仕方については、先生御指摘のとおり、さまざまな方法があるとは考えますが、両者の間の連携を進めていく上では、出資を行って関係を強化するということも重要な選択肢の一つであり、現に欧米では、金融機関による金融関連企業への出資が活発に行われ、両者が連携したイノベーションというものがいろいろ行われているということでございます。
そういうことでございまして、金融とITの融合が進む中、利用者保護あるいは不正の防止、そうした観点には留意しながらも、ITイノベーションの成果を金融の分野に生かしながら、利用者利便の高い金融サービスを提供していく、そういう課題に対応するべく、今回、こうした出資の緩和ということを提案させていただいているところでございます。
○宮本(岳)委員 余り聞いてもよく理解できないんですね。フィンテック企業は既に資金には困っていないんです。それから、業務提携は既に始まっているんです。
欧米をおっしゃいましたけれども、アメリカでは、少なくとも法制度上は、出資対象を日本の今回の改正ほど広げてはおりません。金融業務の範囲内に限定をしております。
海外の事情に詳しいエコノミストの意見を一つ紹介したい。
野村資本市場研究所の淵田康之氏は、先月に公表された「フィンテックの意義と日本の課題」という論文の中で次のように述べております。少し長いですけれども、引用したいと思います。
日本のフィンテック振興策では、米英とは異質な議論も目立つ。冒頭述べたように、フィンテックのキーワードの一つはディスラプション、破壊であり、米英は、フィンテックが既存の金融業を破壊する点に意義を見出し、期待しているのである。ところが、我が国では、既存の金融業者、特に銀行の観点からフィンテックが語られることが多く、銀行がフィンテックをいかに取り込むかという論評が目立つ。
既存の銀行によるフィンテックへの出資を促進することと、フィンテックに既存の金融を破壊するようなイノベーションの実現を期待することは、ベクトルを異にする。
既存の金融を革新する点にフィンテックの意義がある。変革を主導するはずのフィンテックを、既存の金融業の傘下に置くのが良策なのであろうか。
こう述べているんですね。
要するに、フィンテック企業が出資規制緩和によって銀行の影響のもとに入ってしまったら、生み出されつつある革新的なイノベーションの芽を摘み取ってしまうのではないか、金融の世界を大きく変える技術進歩が抑え込まれてしまうのではないかという御意見なんです。まあその正否はともかくですよ。
フィンテック分野に今必要なのは、私は、バブルが起きないような環境整備であるとか、企業間の公正な競争の確保であるとか、国民から見て、本当に役立つような、金融の技術進歩が進められるような環境の整備ということであろうと思うんです。
別に、銀行業界に肩入れをして、フィンテック業界を金融業界の傘下に入れるというふうなことを進めることではないように思いますけれども、これは大臣、いかがですか。
○麻生国務大臣 今、アメリカの例を、学者だか誰かの例を引かれましたけれども、銀行業務の破壊であるという発想からして、我々とは全然違うと思っておりますので。
あの国では、例えば航空業を自由化したときには、パンアメリカンをぶっ潰し、TWAをぶっ潰し、いろいろなことをやったような国ですから、こっちもあれをやりますかと言われたら、それはなかなか乗ってこられぬと思いますね。
だから、そういった意味では背景がかなり違うんだと思いますが、いわゆるITとか、インフォメーションテクノロジーというものを背景にした金融を活用したサービスというものは、いわゆるファイナンシャルテクノロジー、略してフィンテックという名前の造語ができてきたというのは、従来なかったような高度化されたもの、すごいスピードの高いもの、そういった利便性というものから見れば、質の高い金融サービスの提供をもたらし得るという状況になりましたものですから、金融というものの姿を、ビットコインに見られるように、いろいろな形で将来的な姿を大きく変化させる可能性があるという状況になりつつあることはもう確かなんだ、私どももそう思っております。
こうした中にあって、今回の我々の出させていただいた法案の内容というのは、こういったフィンテックの動きとか、また利用者保護、また、不正の防止等々の観点というものを十分に考えながら、利用者の利便性とか高い金融サービスというものにつきまして、それをきちんと提供していくというようなことで我々がある程度やっていかないと、法律が今の現状に追いついていっていないということになっているのではないかということでありまして、銀行業界に肩入れしていく必要が今あるような状況に銀行はないと思っております。
いずれにいたしましても、金融を取り巻く環境が変化していきます中で、これは銀行だけに頼らず、多様ないろいろな人の、プレーヤーというか参加する人が、銀行に限りませんけれども、産業のイノベーションとかいろいろな表現が使われていますけれども、さらなる生産性の向上に向けた取り組みを図っていくことこそが重要なのであって、それは銀行業界、金融業界においてもその例外ではないということだと思っております。
したがいまして、引き続き、公正な取引、公正な競争のもとに、いわゆる国民の金融というものに対する技術の進歩というものがどんどんなされておりますので、それに合わせまして、私どもとしては、必要な環境整備というのを整えていくことによって、もって安全であり、そして信用、そういったようなものをきちんと高めておき、日本の金融力というものを国際的な中においても決して見劣りすることのないよう、おくれることのないようにしていきたいと思っております。
○宮本(岳)委員 いや、私、別に、銀行を破壊するということを言ったつもりはないんですね。こういう関連の論文を読みますと、デジタルディスラプションというのはよく出てくる言葉ですよ。
それで、このフィンテック業界は既に資金に困っていない、そういうファンドもいっぱいできて。だから、そういう中で、わざわざ銀行の出資を可能にしなければこの業界がやっていけないということはないのじゃないかということを申し上げたわけです。
それで、銀行が出資をした件で、さまざまな問題というのをこの間、現に引き起こしてまいりました。銀行は、金融仲介機能という本来の社会的責任を負い、そのために大きな社会的影響力を持っております。
しかし、これまでの銀行のあり方を振り返ると、残念ながら、その力を企業のために使うのではなく、みずからの利益のために行使し、とりわけ中小企業を抑圧してきたような事例がいっぱいありました。
公正取引委員会に聞きますけれども、三井住友銀行は、融資先の企業に対し、金利スワップというリスクの高い金融商品を押しつけ販売をして、二〇〇五年末に公取の処分を受けております。この事件の概要と公取の対応を簡潔に御説明いただけますか。
○山田政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの、三井住友銀行に対する件と申しますのは、同行が、その取引上の地位が自行に対して劣っている融資先の事業者に対しまして、融資に係る手続を進める過程において、金利スワップを購入することが融資を行うことの条件である旨を明示することなどによりまして、金利スワップの購入を余儀なくさせていたという事案でございます。
公正取引委員会は、このような行為が優越的地位の濫用に該当し、独占禁止法の規定に違反するものとしまして、平成十七年の十二月二日、三井住友銀行に対して、その行為を取りやめて今後同様の行為を行わないこと、その旨を融資取引先関係にある事業者に周知すること、また、独占禁止法遵守の観点から、金利スワップの取り扱いに関する内部規定を整備することなどを勧告いたしました。
同行がこの勧告を応諾いたしましたため、同年十二月二十六日、勧告と同趣旨の審決、すなわち行政処分を行ったところでございます。
○宮本(岳)委員 そういう中小企業に大変大きな被害をもたらした事件を引き起こしたんですね。この件では、金融庁も三井住友に一部業務停止の処分をいたしました。
これだけの被害があり、重い処分を受けたにもかかわらず、その処分を受けているさなかにも、ハイリスク商品を中小企業に押しつけ販売し、大問題になったのが、みずほ銀行を中心に多数の銀行が販売していた通貨オプション、為替デリバティブの問題であります。
この事件の概要についても、簡潔に、金融庁、御説明いただけますか。
○遠藤政府参考人 御指摘の件は、銀行が主に中小企業向けに販売いたしました為替デリバティブ取引契約におきまして、リーマン・ショック後の歴史的な円高によって、特に平成十六年から十九年度までの契約に関して、損失をこうむった等の多数の苦情相談が寄せられた問題であるというふうに承知しております。
この問題に関しましては、金融庁といたしましては、平成二十二年四月、監督指針を改正し、発生し得る損失について顧客の説明を徹底すること、契約締結後の適切なフォローアップなどを行うように金融機関に求めるとともに、金融機関におきましても、苦情等の解決に向けて丁寧な相談体制、あるいは、平成二十二年十月に開始されました金融機関自身による裁判外紛争解決制度を活用し、迅速かつ円滑な解決に向けた取り組みを進めてきたところでございます。
金融庁といたしまして、苦情相談の発生状況などについて、三メガバンクなど主要行に定期的な報告を求めるなどのフォローアップを継続しているところでございます。
足元の苦情相談件数はほぼなくなっている、僅少で推移しているということでございます。
今後とも、その動向について注視していく予定でございます。
○宮本(岳)委員 この通貨オプションの事件では多数の銀行がかかわりましたけれども、多数の被害者を出したみずほ銀行含め、処分された銀行は一件もないんです。
これらの事件が示すのは、日本の銀行には法令遵守の姿勢が弱く、とりわけ中小企業との関係では抑圧的な関係にあるということであります。
こういう体質が払拭されたとは到底考えられず、こういう状況のもとで、銀行の出資規制を緩和し、独禁法上のリスクを高めるような改正は行うべきではないということを申し上げて、私の質問を終わります。