地方疲弊 総括が必要 宮本岳志氏 地域活性化参考人質疑 (しんぶん赤旗)
第190回国会 地方創生に関する特別委員会 第14号
平成二十八年五月二十六日(木曜日)
午前九時四十分開議
出席委員
委員長 山本 幸三君
理事 後藤 茂之君 理事 佐藤ゆかり君
理事 新藤 義孝君 理事 寺田 稔君
理事 山口 俊一君 理事 篠原 豪君
理事 宮崎 岳志君 理事 桝屋 敬悟君
安藤 裕君 井上 貴博君
伊藤 達也君 池田 道孝君
江藤 拓君 勝俣 孝明君
神山 佐市君 菅家 一郎君
小泉進次郎君 小林 鷹之君
菅原 一秀君 鈴木 馨祐君
田野瀬太道君 谷川 とむ君
中谷 真一君 中山 展宏君
野中 厚君 鳩山 邦夫君
平井たくや君 福田 達夫君
福山 守君 牧島かれん君
宮川 典子君 山田 賢司君
青柳陽一郎君 緒方林太郎君
柿沢 未途君 吉良 州司君
佐々木隆博君 福田 昭夫君
角田 秀穂君 樋口 尚也君
田村 貴昭君 宮本 岳志君
椎木 保君
…………………………………
内閣府大臣政務官 牧島かれん君
参考人
(慶應義塾大学商学部教授) 樋口 美雄君
参考人
(特定非営利活動法人ふるさとの夢と文化を育てる会理事長) 帆足 秀樹君
参考人
(金沢大学人間社会学域経済学類教授) 碇山 洋君
衆議院調査局地方創生に関する特別調査室長 佐々木勝実君
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委員の異動
五月二十六日
辞任 補欠選任
大野敬太郎君 神山 佐市君
小泉進次郎君 田野瀬太道君
田中 英之君 安藤 裕君
宮川 典子君 井上 貴博君
同日
辞任 補欠選任
安藤 裕君 中山 展宏君
井上 貴博君 宮川 典子君
神山 佐市君 小林 鷹之君
田野瀬太道君 小泉進次郎君
同日
辞任 補欠選任
小林 鷹之君 大野敬太郎君
中山 展宏君 福山 守君
同日
辞任 補欠選任
福山 守君 田中 英之君
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五月二十四日
地域住民本位の地方創生に関する請願(田村貴昭君紹介)(第三二三〇号)
同月二十五日
地域住民本位の地方創生に関する請願(真島省三君紹介)(第三三六八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
地方創生の総合的対策に関する件
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○山本委員長 これより会議を開きます。
地方創生の総合的対策に関する件について調査を進めます。
この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
本件調査のため、本日、参考人として慶應義塾大学商学部教授樋口美雄君、特定非営利活動法人ふるさとの夢と文化を育てる会理事長帆足秀樹君及び金沢大学人間社会学域経済学類教授碇山洋君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○山本委員長 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
それでは、まず樋口参考人、お願いいたします。
○樋口参考人 慶應大学の樋口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
配付しております資料「地方創生の本格的な事業展開としての「働き方改革」」、これに基づきましてお話をさせていただきたいと思います。
地域によってそれぞれ、労働時間でありますとかあるいは働き方といったものは非常に大きく違っております。そして、出生率引き下げの大きな要因として、やはり長時間労働の問題といったものがあるのではないかというふうに思っております。
また、働き方改革の必要性というのは、出生率の引き上げだけではなく、人口の移動ということにつきましても非常に大きな影響を与えているんではないかというふうに私は思っておりまして、これについての改革、特に長時間労働是正、こういったもの、働き方改革地方版というものを取り上げまして、地域の実情に応じた改革に取り組むことの重要性についてお話をさせていただきたいというふうに思っております。
人口の移動でございますが、言うまでもなく、地方において人口の減少といったものが進んでいるところが非常に多いというふうに思いますが、従来に比べて幾つかの点において大きな変化といったものがまた起こっているのも事実だろうというふうに思います。
一枚めくっていただきますと、そこに東京都における人口の流入の変化というものが出ております。例えば、左側の図でございますが、男性、右側が女性ということで、そして年齢別に、一九八〇年から八五年、あるいは八五年から九〇年と、それぞれ五年置きにとりました変化といったものが出ております。
これを見ますと、例えば男性、十五から十九歳のところは約二十万人ということで、ゼロよりも上の方に来ておりますから、東京にそれだけこの間人口が流入したというようなことになるかと思います。その流入の人数自身、年次とともに大きく低下してきているというようなことが見てとれるかと思います。
十五から十九歳の中でも、特に十八歳の春というふうに言われております、高校を卒業して就職するとか、あるいは大学、専門学校へ進学する、その時点において東京に入ってくる人たちが非常に多いということでございますが、この左側、男性につきましてはその人数が大きく低下してきているということがあります。
これだけであれば、地元に残る人が多いということになりますから、地方の人口減少といったものにはストップがかかるはずだというふうに考えられますが、一方において、今度は二十から二十四歳、あるいは二十五から二十九歳というような大学を卒業した年次から見てみますと、かつては十万人を超える人たちが地元に戻っていたということが言えるかと思います。逆にその人たちが大きく減少しまして、赤い線、直近の二〇〇五年から一〇年になりますとゼロを上回るということでございますから、地方の大学を卒業して東京の企業に就職するというような、こういった動きが起こってきているということだろうと思います。また、三十から三十四歳というところまで見ましても、赤い線、直近の数字においてはやはりゼロを上回るということですから、人口の流入が続いていく。
要は、Iターンというもの、あるいはUターンというものが減少しながら、そして一方において、むしろ地方からまたこの年齢になってもふえてくる、流入してくるということがございます。
一方、右側の女性について見ますと、男性と大分様相が違っております。
かつて、十五から十九歳というところは例えば十万人しか流入していなかったということでありますから、左側の男性と二対一の割合ということで、男性はたくさん東京に出てきたわけですが、女性の方は地元に残っていましたということで、地元においては女性の方が多いということがございました。
男性の方は減少しているわけですが、女性についてはそのまま横ばいということでありまして、人口自身が大きく変わって減っておりますので、比率で見ますと、むしろ女性において流入率が上がっているというようなことになります。そしてまた、Iターン、Uターンの年齢になりましても、かつては戻っていたものが戻らなくなっているというような、この点については男性と同じということになるかと思います。
もう一枚めくっていただきますと、そこに資料二というのがございます。これは、住民台帳に基づきまして、昭和の時代から直近の平成二十六年まで、それぞれの都道府県における人口の流入、流出といったものがどう推移してきたかというのが出ております。
左側、昭和の時代を見ますと、一番上のブルーの線がオレンジの線を上回っているということでございますから、男性の方が東京圏にたくさん入ってきたということになります。ところが、右側に行きますとその様相が逆転しておりまして、むしろオレンジの方がブルーの線を上回るということですので、女性の方が、ネットの数で見ても、男性を上回る数、東京圏に集中してきているというようなことがわかります。
こういったことが、ある意味ではやはり地方における二十代女性、三十代女性の数といったものを大きく減らしてきているということが言えます。そのことは、出生率が同じであったとしても一年間に地方で生まれてくる子供の数それ自身が減っているというような、まさに私ども日本創成会議で提案しました地方消滅といったところは二十代、三十代の女性に着目した議論をしてきたわけでありますが、特に最近それがさらに進んできているというようなことを意味するのではないかというふうに思います。
さらに、Iターン、Uターンについて内閣官房の方で調査しましたのが資料三という形で出ておりまして、東京在住者について、地方への移住を希望しているかどうかというような比率を見ますと、五十代の男性については五割ぐらいが、仕事があるのであれば地方に移住したいというふうに答えております。しかし、女性について見ますとそれが三四%ということでありますから、明らかに男性と女性において移住に対する考え方が違っているということが確認できるかと思います。
これを見ますと、やはり女性が地方を離れているというような、この問題を重視して考えていかなければならないのではないかというふうに思っております。
そこで、私の提案でございますが、次の資料四というのを見ていただきますと、そこに、地域における働き方改革をいかに進めていくか。これは、男性も女性も働きやすい職場というようなものをつくっていく必要性を強調したものでございます。
そこでは、それぞれの地域で自治体あるいは経済界、労働界の代表者が集まって働き方改革を進めるということでありまして、特にそこにおいては女性の声を聞いてもらうというような、そういったスタイルも必要になってくるのではないかと思います。
ただ会議を開きましてもなかなか改革というものは進んでいかないのが現状でございますので、具体的に申し上げますと、そこに例えばアドバイザーの派遣でありますとか、そういった者に個別の企業に行ってもらって、働き方改革を進めようというような企業をサポートしていく、そういった仕組みというのをつくったらどうかというふうに思います。
それは、アウトリーチ支援というような形で進め、また企業認証ということで、これを進めている企業に対して認証し、そして成功事例として公表する。今回、公共入札におきまして、こういった認証を受けている企業に対して加点をするというような仕組みもつくられましたが、これを引き金としてそういったものを進めていったらどうかというのが提案でございます。
まさに地域によって働き方というのは違っておりますので、やはり主体は地域だろうというふうに思いますので、それを進めていく会議体といったものをつくり、そして実際にそれが効果を上げるようにというようなものを提案しているわけでございます。
もう一枚めくっていただきますと、どうしても地域における雇用の創出といったものが重要になるわけでありますが、それを働き方改革とセットでやっていく。
具体的に、例えば東京の大学に進学した者あるいは専門学校に進学した者、そういった人たちを対象に地元での企業のインターンシップ制といったものを導入することによって、やはり東京にいますとなかなか地元の情報といったものが入ってきません、また働き方というものが想像できないということになりますので、こういったものをつくって仕組み的に地方への人材の還流あるいは地方への定着といったものを進めるような、そういった施策をとっていったらどうだろうかというのが私の提案でございます。
以上、私の意見を申し上げました。どうもありがとうございます。(拍手)
○山本委員長 ありがとうございました。
次に、帆足参考人、お願いいたします。
○帆足参考人 おはようございます。
私は、NPOをやらせていただいておりますが、NPOの仕事のほかにといいますか、本業が旅行業でございます。旅行業の方の観点と、地域おこしというふうな観点から少し話をさせていただきたいと思います。
今まで活動してきましたものの中で、チラシというか、皆様のお手元に行っておりますこういったイベントをやらせていただきました。「はいやくまもと」といいます。
この「はいや」といいますのは、実は牛深はいや節という古い民謡がございまして、この民謡に関連した民謡というのが全国に百三十曲ほどあるというふうに言われております。その中に佐渡おけさですとか阿波踊りですとか、そういったいろいろな広範囲にわたる民謡のイベントがありまして、これを着地型の企画、イベントにしようということで活動したり、これをNPOとしてずっとやっておりました。
これがたまたま二〇一一年の震災で中断をいたしまして、その中断をしたときに、それではということで、現地にこの民謡の団体を連れて慰問に走ったり、翌年には陸前高田にお祭りの山車をプレゼントしたり、そんなことをいろいろやらせていただいておりました。
そういったものが今までの経歴でございますが、ことしの四月、大震災によりまして、今度は私どもが被災者というふうな形になってまいりました。被災する中で、いろいろな皆さんを被災地へ御案内したりして、これも観光の一助になるのかどうだかわかりませんが、そういったことから、今、きょうの話を少し進めさせていただきたいと思います。
実は、地図があります。地図は一部主要な部分だけを抜き取ったものなんですが、この部分、青い線があります、この青い線の部分が断層帯が走っているところでございます。益城から西原村を経由して阿蘇の入り口、立野というところまでが断層帯が走っているところでございまして、ここの上だけが非常に被害を受けております。これ以外のところはほとんど、建物にひびが入ったとか瓦が落ちたとかその程度の被害状況なんですけれども、被害を受けたところが極端にひどいものですから、そういったところに今支援の手を相当伸べていただいているということが現状でございます。
まず、阿蘇の状況から御案内をいたしますと、立野大橋というのが崩落をいたしまして、これはもうニュースでさんざん流れておりますが、この立野大橋のすぐ下、川を下りましたところにもう一つ、長陽大橋というこの地図に出ているところがありますが、これも通れなくなっております。長陽大橋が、前後、橋そのものは残っているんですけれども、手前それから先の方が崩落と土砂をかぶっておりまして、通れなくなっております。
もう一つ、俵山という山があります。この俵山の部分も、橋それから近くに大切畑ダムというのがありまして、崩落の危険があるということで、ここも通れなくなっております。南阿蘇へ通じます道路が三本、これが主要道路なんですけれども、三本ともだめになっております。それで、非常な大回りをして、今まで三十分足らずで行けていた、熊本空港からですと二十分ぐらいで行けていたところが、一時間強かかるようになっております。
そんなことで、復旧につきまして、南阿蘇村の方からも、どれか一本でいいから極力早く直してほしいと。それが見えないというふうなこともあって、もう既に離村をしている方がふえてきているというふうな話を役場の方からちょっと聞いてまいりました。
そんなことがありますので、ぜひこちらの方のお力添えをお願いしたいということでございます。
次に、阿蘇でなくて熊本市内の状況なんですが、これは余りひどいものですから皆様の方にお配りをしておりませんけれども、熊本城の天守閣が今こういった状況です。(写真を示す)瓦が全部飛びまして、一番上層階それから次の階、この三層目ぐらいまでが特にひどいんですけれども、全部瓦が落ちてなくなっているというふうな状況です。
これに関して、私どもも、これが完成するのを待っていたら何年先になるか何十年先になるかわからぬというふうなお話があるものですから、瓦だけでも、特に天守閣に関しては、実は鉄筋コンクリートの建物なんです。中身はほとんど壊れておりませんで、外見だけがこういうふうなひどい状況なので、それを直せたらなということで、ちょっと先走りというか、地元ではちょっと早いんじゃないのというふうなことを言われておりますけれども、形に見える寄附を募っていただこうということで、熊本城天守閣瓦寄贈というふうなことを今、計画を始めたところでございます。
それから、これもこれに関してなんですけれども、今、熊本城周辺、二の丸広場というところから先、それから下の城彩苑というところから全て立入禁止になっております。この立入禁止というのがまた私にしてみると非常にもったいないというか、今でないと被災した現場というのは見られないんですよね。この被災した現場を逆に観光として生かして、見ていただく。ダークツーリズムというふうな言葉でよく説明をいたしますけれども、このダークツーリズムというのをこの際フルに生かすべきかなというふうに考えております。
この中には、これは熊本ではございませんが、長崎の軍艦島とか今話題になっている観光資源というのがいっぱいありますけれども、こういったものが規制によりまして見られない、それから、せっかく観光資源として非常に価値の高いものが無駄になっているというふうなことがありますので、そういったこともこの際お考えいただけたらなというふうに考えております。
最後に、着地型観光ということで申し上げますと、先ほどの防災と一緒に絡む話なんですけれども、この写真も、実は熊本の阿蘇山を観光している昔の写真でございます。阿蘇観光のこの場所が、先ほどの岩盤規制じゃないですけれども、それによりまして全部立入禁止になっています。今現在、人の歩いているこの部分というのは、全て入れない場所になっております。
こういったことをやっておりますと、海外から来たお客様、インバウンドというのが非常に話題になっておりますけれども、このインバウンドに関しましても、実は東京、大阪周辺だけで、七〇%以上の観光客はそこだけでとまっている。それ以外の観光地にはその三割以下、九州でいきますと一〇%ぐらいしか来ていないというふうに聞いておりますけれども、こういった非常に少ない観光客に魅力をアピールすることがさらに難しくなるというふうに考えておりまして、できるものでしたらこういったものを逆に規制緩和していただいて、それで観光客をふやすというふうなことをお考えいただけたらありがたいと思っております。
ほぼそういったところでございますが、そのほかに、熊本市内のホール、熊本市民文化会館とかこういったものがたくさんありますけれども、今現在、こういうものがほとんど全て使えなくなっております。こういったものに関しましても、観光客が来ないというか、そういったイベントができないということが非常に重なりまして、今、試算だけでこの半年間で三千億円、そのくらいの損失が出るのではなかろうかというふうに、これも熊本市の方から聞いてまいりました。
そういったことに関しましてお力添えをいただけることがありましたら、私を呼んでいただいたことが熊本の人間にとりまして役に立てたというふうに考えております。
以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
○山本委員長 ありがとうございました。
次に、碇山参考人、お願いいたします。
○碇山参考人 参考人として意見を申し述べます。
まず第一の柱でございますが、地方の疲弊の原因は何かということです。
一つは、これまでの誤った農林水産業政策であると考えます。国際競争力に制約のある産業部門で輸入自由化を進めたということが大きな問題と考えます。地域の基幹産業においてその方向性を誤ったということは大きな問題であると考えます。
二つ目は、リゾート法の失敗の問題であります。各地で同様の開発計画が乱立したということに大きな問題があると考えます。
次に、大規模店舗出店攻勢による地元商店街の衰退です。シャッター通りと言われるような光景が各地に現出しております。
四つ目に、二〇〇〇年代以降の地方での公共事業の無秩序な大幅削減です。いわゆる無駄で有害な公共事業という問題はありますけれども、二〇〇〇年代以降は、大規模な公共事業が温存される中で、地方における小規模な公共事業が大幅に削られました。財政の地域間所得再分配機能が低下したことが問題だと考えております。
五つ目に、他方での東京一極集中です。集積の利益を大企業が独占する一方で、集積の不利益が中小企業や住民に転嫁されてきたということが問題であります。ここには開発規制の緩和ということが大きくきいているというふうに考えております。
全体として条件不利な地方の経済に、規制緩和、自由化、民活路線を適用してきたわけであります。そして、二〇〇〇年代以降、そうした基本線を継承しながら、異質とも言える段階に入ってきました。大企業の多国籍企業化の進展、それに伴う国民経済保全への関心の著しい低下ということが、とりわけ、地方での公共事業の削減というところに見られるように、大きくきいているということがあるというふうに考えております。
二つ目の柱としてお話ししたいのは、地方創生政策は地方が抱える問題を解決できるかということであります。
そもそも、地方の衰退、疲弊を引き起こしてきた過去の政策の総括と反省が十分になされていないという問題があると思います。そうしたことですから、正しい処方箋が書けないことになっているのではないかと危惧しております。
一つは、地方創生は地方再生とは異なるということを強調したいと思います。地方再生というのは衰退した地域経済社会の復興、再建であるのに対して、地方創生というのは地方統治機構の再編ということでありまして、両者は似て非なるものであります。
これは、石破担当大臣の御発言にも見られます。明治以降連綿としてつくってきた国家の形を変えるものという御発言や、地方再生でなく地方創生と言っているのは、中央と地方、あるいは民間と政府の関係を全く違うものにしていきたいからだと。こういった御発言にも見られるように、地方創生というのは地方再生とは異なるものだというふうに考えるべきだと思います。
二つ目の問題として、地方創生の方法の問題であります。
第一段階としては地方版総合戦略を策定するわけでありまして、第二段階としてKPIに対する事後査定が行われます。KPIは、形式上は地方自治体の自主的な数値目標でありますが、達成できたか否かを自治体の自己責任とするわけでありますから、端的に言えば、やる気のない自治体、頑張らない自治体は衰退、消滅してもやむを得ないという構造になっています。これは大きな問題であると考えます。
三つ目に、国家の役割の回避という問題があります。
人口減少問題、総人口対策は、本来、国家の役割であります。総人口減少の原因は何かといえば、非正規雇用の拡大や、低賃金、長時間労働、超過密労働といった問題がありますし、居住環境の悪化、子育ての困難、それから人々の社会からの孤立化、将来展望のなさといったことが総人口減少の原因であると考えます。
特に問題なのは、合計特殊出生率が最低である東京に対する対策がないことであると思います。東京一極集中の是正といいながら、年間十万人の流入を想定していることに、それはあらわれていると思います。
地方人口の増加策というのが、地方間競争、地方自治体への責任と負担の転嫁となっていると考えます。
移住策としては、連携中枢都市圏での雇用づくりが中心政策となっており、これは若者のニーズと不適合になっているというふうに考えます。
現在進んでいるUターン、Iターンの実態というのは、いわゆる田舎の田舎への田園回帰が多いということです。この田舎の田舎というのは、村役場だとか学校だとかそういう村の中心部への移住ではなくて、村の中でもさらに不便な田舎のそのまた田舎といったところへの移住がふえているというところに注目しなければいけないと思います。そして、移住目的としては、生きがいや働きがい、子育て、そういったことが中心となっておりますので、求められる条件というのは、その人たちが頑張れる地域のステージをつくること、それから集落での助け合いということが大事になってくると思います。
大きな柱の二番目の四つ目ですけれども、小さな拠点の問題について申し述べたいと思います。
小さな拠点というのは現在の地方の状況を考えると必要な政策であるかというふうに考えますけれども、拠点が集約化されて、どんどんと住民から遠いものになっていくことが懸念されます。そうしたことがないような政策が望まれます。また、拠点地域と周辺地域の対等、平等の確認、相互の自治の保障、圏域全体の住民生活向上を基本に据えることが不可欠であるというふうに考えます。
さて、三つ目の大きな柱ですけれども、では目指すべき方向はどこにあるかということです。
これは先ほども申しましたが、大きな流れとして田園回帰が始まっているというふうに認識しております。そして、先ほども申しました田舎の田舎への人の流れができてきているわけです。
この背景としては、やはり大震災それから原発事故を契機とした安全神話、成長神話の崩壊ということがありますし、それから大都市圏での構造的格差社会の矛盾と生きづらさといったことがあるというふうに考えます。
そして、田園回帰を求める人たちは、働きがいと生きがいを求めている、これが一つです。それから二つ目には、安心して子育てできる地域を求めているということです。そして三番目に、安心できる地域共同社会を求めているということです。特に、集落での人々のつながりといったことを求めているというのが現実であるというふうに思います。
そうしたときにどういう政策が求められるかというと、一つは重層的自治の保障であります。
自治の中に自治を築くというふうに言っておりますが、集落、コミュニティーを基礎にして、普通でいいますとその上に市町村があるわけですけれども、その集落、コミュニティーと市町村の間に、合併前の旧町村単位などの自治の単位で自治の機構を置く、つくるということであります。そうすることによって、地元の人たちが実質的な自治に参加することができるということであります。
そしてもう一つは、これが決定的に大事だと思うわけですけれども、集落、コミュニティーの活性化こそが全ての基本であるということです。集落、コミュニティーというのは、その地域を支える最も大事な基礎単位でありまして、そこでの地縁的共同体の役割ということを重視する必要があります。そして、そこでの相互扶助の意義を認めていく、そしてそれを支援するということが政策としては求められているというふうに考える次第です。
今、衰退しつつある地方を支援するということは、非常に大きな意義があると考えています。
一つには、やはり日本は非常に災害が多い国でありまして、とりわけ地震のリスクというのが大きいわけです。そうしたときに、都市部の人たちを受け入れる地方が衰退している、疲弊しているという状況では、都市部で被災した人たちを受け入れる余地がないということになってしまう。それでは大変困るわけです。それが一つです。
それからもう一つは、私が考えるのは食料問題です。
というのは、発展途上国や新興国で、今後いよいよ経済成長が進み、そして人口もふえる、また世界で民主化が進んでいくということになりますと、当該国での食料の消費というものが非常に大きくなっていきますし、また付加価値の高いものが求められるということになってきます。日本は食料の四〇%しか自給できないわけでありまして、そうしたときに、そうした諸外国での食料の必要性というものが高まってきますと、日本の食料安全保障というのが非常に危ういものになっていくというふうに考えます。
これは、経済学でも、絶対地代の理論の中で、最劣等地であっても耕作しなければいけないという話がありますけれども、地方で今放棄されつつある、あるいは放棄された農地を復活させて、それをまた維持していくということが、今後あり得べき食料問題に対応する非常に大きな担保になるというふうに考えております。
全体として、地方に対して財政的な移転を行って地方を支えていくということの重要性を強調しまして、私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○山本委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○山本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池田道孝君。
○池田(道)委員 おはようございます。自由民主党の池田道孝でございます。
参考人の皆様方には、大変お忙しい中、御出席を賜りまして貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございます。
特に、帆足参考人におかれましては、先般起きました熊本地震によります災害の状況等を含めてお話しいただきました。一刻も早い復興を願っておるところでございます。
地方創生、いわゆる地域の活性化ということにつきましては、もう今まで、とりわけ地方の市町村におきましては、大きな命題としていろいろな施策を展開してまいりました。
御承知のように、地方自治体では、総合計画あるいはまちづくり計画、福祉計画、いろいろな名称がございますけれども、その計画に沿っていろいろな施策を展開してきておったわけでございますが、地方版の総合戦略をことしの三月までに提出ということで、半ば義務づけられておるわけでございます。
作成の方法は、自治体によりましていろいろな形でやっておられたと思いますが、それがこれから、この時期に国の方で採択されれば、基本計画、総合計画にのっとった形で地方自治が進められるわけでございますが、そうでない、もし採択されなかった場合におきましては、まちづくり計画が、極端な言い方で申し上げますと狂ってくるというようなことになろうかと思います。
個別な問題につきましては時間があればまたお話をさせていただきたいんですけれども、地方自治体のまちづくりをやっていく上で大きな指針となりますそうした総合計画における地方版総合戦略の位置づけ、意味合いというものにつきましてどのようにお考えか、樋口参考人、碇山参考人のお二人にお尋ねしたいと思うんですが、よろしくお願いをいたします。
○樋口参考人 私の意見を述べさせていただきます。
私も、まち・ひと・しごと創生会議のメンバーの一人というようなことで、いろいろな仕組みづくりにつきまして発言をしてまいりました。
そこにおきましても、やはり、地域の独自性の重要性というのは、これまでのいろいろな対策の中で確認してまいってきたところかというふうに思います。
その点、やはり地域によって実情が大いに違っているというようなことでありまして、全国一律の、従来でいいますと、国の方が戦略を考え、そして、この指とまれ方式ではございませんが、それに賛同する自治体は支援をしていきますというようなやり方というのはやはり限界があるというふうに思ってまいりました。
その点、やはり地域の実情をよく知っている、そしてまた地域のそれぞれの必要性、必需性といったものをよく知っている人たちがみずから町をどのようにしていくのかというようなことについては考えていくべきことだろうということで、総合戦略につきましてもそれぞれの地域で考えてほしいというのが、まさに地域版の総合戦略というものだったというふうに思います。
それが三月に策定され、多くの自治体が提案をなさってまいりました。相当に力の入った、そしてまた有効だろうなと考えることのできるような総合戦略というのも、客観的に見てあるかというふうに思います。
たくさんそういったものが出てきたというふうに思いますが、中には必ずしも、自分たちの考えを取りまとめたというか、今まで行政にお任せっきりというようなことも自治体においてあったということでございまして、今回については、総合戦略をつくる段階においても、住民の声、そしてまた地元の企業とか、あるいは中には金融界の意見とか情報といったものを活用しながらつくってくださいというようなものであったわけですが、そういったものが多い中において、そうでないところもあるのかなというふうに私は思っております。
いずれにしましても、この四月からは、それが実行段階、次の局面に入ってきているかというふうに思いますので、ぜひその総合戦略に沿った展開をしていってほしいというふうに願っているところでございます。
○碇山参考人 意見を申し述べます。
地方版総合戦略の全体的な構図につきましては、今ほど樋口参考人の方からお話があったような大枠であろうと考えております。
何といっても、これまで、いわゆる上からの計画を各地域に適用していくというふうなことが長年続いてきたわけですけれども、地域からいわゆる内発的な形で戦略をつくっていくということは、これは意義のあることだというふうに考えています。
内発的というのは、環境経済学や地域経済学の分野で内発的発展ということが随分長く強調されておりますけれども、その文脈に沿ったものであるというふうに考えます。
ただ、地域ごとに、そうした計画、戦略を十分に持てないところ、十分な展開ができないところ、そうしたところが取り残されてしまうという可能性といいますか、危惧も持つわけであります。
先ほど申しましたように、自己評価を行って、それで方向性を再確認していくということでありますから、いわば自分で目標を決めて、それを自分で採点して、そして、それがうまくいったかいかないかということによって今後の方向が決定づけられてしまうということでは、やはり大きな問題を残すであろうというふうに考える次第であります。
いずれにしましても、地域の発展ということを考えたときには、地域の内発性ということを最優先にする、そして、それをきちんと財政的にも支援して、実現の方向に向かっていただくということが肝要であろうかというふうに考えます。
以上です。
○池田(道)委員 ありがとうございました。
人口動態の件につきまして樋口参考人の方からもお話がございましたが、今、国の方では、国の機関を地方に移転、あるいは企業の本社機能の地方移転、これは国だけでなしと、地方自治体においてもいろいろな優遇措置を設置して企業の地方移転を促しておりますけれども、とりわけそうした国の機関の移転も、これからのことでございますが、余りスムーズにいっているようにも思えないわけでございますし、地方にとりましては、経済効果もそうでございますし、人口増もそうでございますが、非常にいい一つの地方移転になろうかと思います。その点につきまして、三人の参考人の方々の御意見をお伺いできればなというふうに思います。
○樋口参考人 海外におけるいろいろな事例を見ましても、やはり、地方に国のいろいろな機関があるとか、本社があるとか、研究所があるとか、こういったものは非常に人口の移動に対しても重要な役割を果たしているというふうに思っております。
そういったものが一極集中ということになりますと、それに追随する形で人口の方も、そういった仕事のあるところに人が移ってくるというような形で、どうしてもそういう一極集中が進展しているんだろうというふうに思います。
したがいまして、基本的には、地方への中央官庁の移転もございますし、本社であるとかあるいは研究所の移転といったものも重要だろうというふうに思います。そういったものを促進していくような基盤、例えば税制における支援であるとかというようなことも施策として有効ではないかというふうに思っております。
ただ、今東京に集中している現状におきまして、やはり東京に来ることが地方のいろいろな声を聞く上でも便利であるというようなことがあって、それに対するいろいろな反対意見というようなものは聞かれてくるわけでありますが、そこのところはまさにバランスをとって、どういったものが地方に行ってもほかの国民に対して利益を阻害しないかというようなことも考えてやっていくべきではないかというふうに思っております。
○帆足参考人 今お尋ねの件ですけれども、実は、東京に一極集中ということで申し上げますと、ホテル関係、宿泊関係が東京は非常に今不足の状況になっております。つくってもつくっても間に合わない、オリンピックに向けて不足の状態が非常に続くというふうに言われております。
実は、今回の被災のこともありますが、東京に向けてということではないんですけれども、阿蘇地区の南阿蘇の旅館、ホテルはもう既に廃業を始めているところが三軒、四軒ほどと話を聞いております。
そういった旅館に関しては、今回の震災の影響で実はキャンセルが物すごい数になっておりまして、七万件とか、話によりますと、九州全域でいきますと二十万件とか三十万件とかいうふうなキャンセルが出ているようでございます。
これが、先ほどの一極集中、東京へということと非常に逆行した結果になっていると思うんですけれども、実は、その一つの原因が、先ほども学生さんあたりが国会見学とかいうふうなことで、東京には修学旅行その他も合わせて非常に観光客が安定的にというか確定的に来るわけですね。これが九州、特に私は九州なので九州のことで申し上げますと、今回の震災のことで、阿蘇はもちろんですが九州全域の修学旅行、そういったものが激減しております。
この激減したものが、先ほど私、話の中でちらっと申し上げましたダークツーリズムというふうなことも含めて、今でないと見られない被害の状況があるわけですけれども、こういったものを教育現場なりなんなりで、危ないからという理由だけでキャンセルしてとめてしまうというのが非常に目につくというか、私としては残念でならない。この時期だからこそ、この時期でないと見られない被災した現場だとかなんとかというのは逆に積極的に見せるべきだというふうに感じておりまして、これが、先ほど先生のおっしゃる一極集中を避けるという意味でも、また、実は、そういったダークツーリズムの観光商品というのは、東京でなくて地方にこそたくさんあるんです。このたくさんあるものを十分に生かせるような規制緩和とか施策をぜひお願いできたらと思っております。
ありがとうございます。
○碇山参考人 東京への一極集中問題と、それから地方への分散の問題について意見を申し述べたいと思います。
一つは、いわゆる中央官庁の地方への分散でありますけれども、日本は、先ほども申しましたように災害の多いところでありますが、東京の場合には首都圏直下型地震のリスクも高いですし、それから、諸外国との比較で申しましても、東京ほど行政、政治等々の一極集中が進んでいるところはないわけでありますから、当然、地方への分散ということが考えられるべき課題であろうとは思います。
ただ同時に、やはり国会のチェックということが十分にきかなければいけないので、地方への移転ということに関しては非常に慎重な検討が必要であることも言うまでもないことだと思います。やはり、国民的な議論を踏まえた上でのものでなければいけないというふうに考えます。
それから、企業等の地方移転でありますけれども、諸外国との競争を考えるとなかなか難しいことがあるのは事実であります。むしろ、過疎地域の現状を考えると、仕事をつくってそこに人に来てもらうというよりは、今発展している、発展しつつある過疎地域においては、人が来て、そしてその人が仕事をつくるということがどんどん進んでいるわけであります。そうした仕事をつくる人が集まってお互いに刺激し合う、そこでまた新たな仕事がつくられる、そういった循環が非常に重要ではないかと考える次第です。
以上です。
○池田(道)委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。
○山本委員長 次に、桝屋敬悟君。
○桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。
三人の参考人の皆様方には、貴重な御意見に心から感謝申し上げたいと思います。
早速、順番に、先ほどのお話を伺いながら、改めて質問させていただきたいと思います。
最初に、樋口参考人にお伺いしたいと思います。
一つは、資料を見せていただきまして、まさにそのとおりだと思っておりますが、出生率、人口減少等の問題であります。
何とか二十七年の出生率が一・四六。出生数が百万を切るのではないかと懸念しましたが、三十代の女性に頑張っていただいたということもあったりして何とか百万を達成し、一・四六。希望出生率一・八からすると、まだまだ乖離があるのでありますが。
今後の少子化対策、出生率対策という言葉はなかなか難しいのでありますが、国民希望出生率一・八を目指そうということで今頑張っておりますが、よく考えてみますと、既に一・八を達成している自治体が百以上あるわけでありまして、それも、何でこんな地域でというところがあるわけであります。
今後の少子化対策を進める上でどういう対策が求められるか、特に希望出生率一・八を目指してという観点で、御見解をお伺いしたいと思います。
○樋口参考人 意見を申し上げたいと思います。
少子化対策ということを考えたときに、特に希望出生率を実現していくというような、それぞれ子供を産むかどうかというのはあくまでも個人の選択というようなことになりますから、もし希望しないのであれば、実は出生率を強制的に上げるというようなことはいかがなものかというふうに思います。
希望しながらも子供を持てないというような原因、やはりその原因を究明してというようなことになってくるかと思いますが、それぞれの地域によってその原因というのは大きく違っているというふうに思います。
例えば、今、待機児童の問題ということで、保育所の増設というようなことが施策的に議論されていると思いますが、全国の地域において待機児童がいるかというと、やはり大都市を中心としたところでありまして、逆に今度は保育所の定員を満たさないような地域というのも存在するわけであります。
特に、地方におけるこの問題、出生率の引き上げを阻害している要因ということを考えますと、やはり若者の雇用の安定、所得の安定といったものが一つあるのではないかというふうに思います。
私もこれまで研究してまいりましたが、例えば学校を卒業して非正規雇用として働いていた、有期雇用ですというような人と、一方において正社員ですというような人について、十年後の結婚、婚姻率であるとかあるいは子供を持っているというのを調べてみますと、やはり大きな違いがあるということであります。そこにおいては所得の安定といったものが、結婚したいというような者がそれを実現できるということにも重要ですし、さらにはその後、子供を持ちたい、二人、三人持ちたいというような人にも、それを実現していくという上では必要ではないかというふうに思っております。
そこにおいては、やはり働き方改革というものもあるのではないかというふうに思います。多くの場合、日本の現状として、子供を育てるのは女性の役割だというようなことがどうも考えられているようで、なかなか男性がそういったものに参画していない。その原因を見ますと、労働時間の問題というようなものとも関連しているところでありまして、やはり夫婦で子供を育てていく、あるいは地域として子供を育てていくというような環境の整備といったものが、実情が違うだけにそれぞれの地域がやはり主体的に考え、それを国がサポートしていくというようなものが、ローカル版が必要ではないかというふうに思っております。
○桝屋委員 ありがとうございます。
昨日、我々は、この委員会でオガール紫波を見てまいりました。私が一番感じた言葉は、まち・ひと・しごと創生の前から我々は取り組んできた、やっと今こんな動きになった、遡及して評価してもらいたいという先駆者の悩みのような声を伺いました。
何を言いたいかというと、先生はまち・ひと・しごと創生に大変影響をお持ちでありますから、既に希望出生率一・八を達成している地域はなぜできているのかということを、我々もやりますけれども、しっかり評価し、横展開するということも大事だろうと思っておりまして、お願いをしておきたいと思います。
それから、二点目でありますが、先生のきょうの資料でも明確になりましたように、まち・ひと・しごと創生本部を立ち上げたら、ますます東京一極集中が進んでいる、その危機感でやっているわけであります。
とりわけ人口の移動を見ておりますと、きょうの先生の資料どおり、地方都市、県庁所在地であるとか政令市あたりが周辺の町からしっかり若い者を集めて、バキューム効果で、そして最後は東京へどっと送り出しているというようなこともあって、今後の地方創生の取り組みは、地域特性別のモデルをつくったり、特に今のような自治体を対象にモデルをつくり、政策メニューというものをこれからつくり上げていく必要がある、そんな段階に入ってきていると思うのであります。
特に、人口のダム機能じゃなくてバキューム機能を果たしているところは余り危機感がないんですよね。そうしたところに今後どう取り組んだらいいのか、御見解をお伺いしたいと思います。
○樋口参考人 私どももいろいろな自治体の声というのを聞いておりまして、そこにおける切実感あるいは危機感というようなことについても感じるところがございます。
委員がおっしゃいましたように、例えば県庁所在地でありますとかあるいは政令指定都市、こういったところというのは周辺部の方から人口を吸収している。ただ、それが、もともとそこに住んでいた人たちが今度は東京に移るというような、押し出しといいますか、そういった感じになっておりますので、少なくとも人口規模は今維持しているというようなことから、そういったものに対する危機感というのは弱いのではないかというふうに思っております。
ここはやはり、中核都市ということですから、そういった周辺から人口を吸収してくるということも重要かもしれませんが、そこの今後の行政における取り組みあるいは地域における取り組みというようなものは、これをサポートするような仕組みというのがどうしても必要になってくるのではないかというふうに思います。一定以上の都市でありますとそういった人材も十分にいるかというふうに思いますので、その人たちが考え出したような戦略といったものを支援していくことも重要になってくるだろうというふうに思います。
○桝屋委員 ありがとうございました。
地方創生もいよいよ本格実施の段階に来たというふうに思っておりまして、我々、この特別委員会でもしっかり取り組みを進めてまいりたいと思います。
続きまして、帆足参考人にお伺いしたいと思います。
きょうは非常に大事な御提言をいただきました。ただ、ダークツーリズム、このピンチを生かそうというようなお話はなかなか難しいな、きょう参考人がおっしゃるようなことができるかなというのも、悩みながら聞いておりました。
そこで、参考人がおっしゃいました着地型の観光、この観光のあり方。これから地方創生を考えるときに、DMOとかいろいろな取り組みをしておりますが、観光というのは極めて大事だと思っておりまして、この着地型観光ということをもう少し我々にわかるように、どういう取り組みを進めればいいのか、御教示いただきたいと思います。
○帆足参考人 着地型観光ということでお尋ねでございます。
先ほど私、配付だけお願いしまして御説明をいたし損ないましたものが実はあるんですけれども、皆様のお手元にあります資料の中でこれが挟まっていると思います。大名庭園サミット、これは企画倒れ、震災で結局中止になってしまいまして、できないということで延びてしまったんですけれども、これもそうです。
実は、日本全国に大名庭園と名のつくお庭というのが五十幾つかあるということなんです。中には、今現在、この東京にありますイタリア大使館のお庭とかフランス大使公邸とか、こういった、とても立ち入りのできないような場所もたくさんあるんです。そういったものをのけてもいっぱいありまして、それぞれが訪問し合うとか、それぞれが地元の宝として磨き直すとか、こういったことをやることによって観光客をふやすというふうなこともありますし、それぞれのお庭の特徴だとかなんとかをあわせた上で、たしかこの一番最後についていると思うんですけれども、水戸商工会議所からの御提案で、大名庭園というものを世界遺産にしようというふうな動きがあったりしております。
こういったものというのはすぐに効果が出るものではないんですけれども、これが今形になっていけば、着地型というふうなことで、世界から観光客の呼び込みができるということにつながると思っております。
また、先生方の中には、自分のところの地元にも大名庭園があるよという方も多分何人もいらっしゃると思うんですけれども、そういったところの方にしても、この大名庭園は、今民間でやっておりますけれども、十庭園が参加しているだけなんです。残りの庭園をお持ちのところからぜひとも御参加いただくようなことでこれを盛り上げることが着地型観光につながるというふうに思います。
また、それと、済みません、もう一つ申し上げたいんですけれども、もう一枚、復興市というのが入っていると思います。これもまだ企画段階なのであれですが、先ほどの、地方から人がいなくなるという流れの中で、被災地はさらにこれがひどくなりまして、被災地のお百姓さんは収穫ができない、それからお店は営業する場所がないというふうなことがいろいろありまして、私どもの熊本市の中心街に新市街というアーケードがあるんですけれども、そこを丸々開放して、そういったお店ができなくなった人たちに店を続けてもらうことで地元に残ってもらおうというふうな動きを今仕掛けているところです。これも地元へ残るという一つの流れになればというふうに考えております。
以上でございます。よろしくお願いします。
○桝屋委員 ありがとうございます。
広域連携ということが非常に大事だと思いまして、今の着地型観光ということも我々は心してまいりたいと思います。
最後に、碇山参考人に一点だけ。
先ほど、集落、コミュニティー、地縁的な共同体の必要性をずっと言われたのでありますが、重層的自治というお話をなさいました。私も、集落単位のコミュニティー組織をしっかりつくり上げるというのは今大きな課題だと思っていますが、その上に旧村単位の役割があるのではないか、そして上に市町村と。
重層的とおっしゃったけれども、それは要るのかなというのをちょっと疑問に感じたのでありますが、重層的というのは二段階ではだめでしょうかね。
○碇山参考人 もちろん地域によって条件は違うと思いますので、必ず重層的にしなければいけないということではないと思います。
ただ、地域に入っていくと、やはり旧町村の規模というのが非常に大きな一体感を持って日々生活しておられるということです。昔の村役場であったりだとか、廃校になった小学校だとか、あるいは場合によっては中学校だとか、そういった範囲というのが地元で生活している上で非常に大きな一体感をつくっておりますし、また、その規模でともに生活できるという一体感を失ってしまうと、人々の中で誇りの空洞化というのが起こってくる、地元に対する愛着というのが弱まってしまうというのが実態でありますので、やはりそうした旧町村の規模での自治の単位というものは強化していく必要があると思います。
以上です。
○桝屋委員 ありがとうございました。
市町村合併、平成の大合併以降十年、私の地元の中国地方は、本当に旧町村単位での大変苦しい中を経て新しい地方創生の動きができている地域でありまして、必ずしも旧村単位での連携が要るのかな、むしろ、一つ一つの集落、コミュニティーが生き残りをかけて懸命に動いている、それを市町村がしっかりカバーしている、こういう流れかなというふうに思っているものですから、重ねてお伺いしました。
きょうは、お三方、ありがとうございました。
○山本委員長 次に、宮崎岳志君。
○宮崎(岳)委員 民進党・無所属クラブの宮崎岳志でございます。
本日、参考人の皆様には、大変お忙しいところ当委員会にお越しをいただきまして、ありがとうございました。また、特に帆足参考人には、民進党・無所属クラブの推薦ということでおいでをいただいたわけでありますが、みずから被災者でありながら、地元を離れてこの東京、国会まで足を運んでいただいたことに心より感謝を申し上げます。
まず、地方創生についての質問ということで、樋口参考人に質問をさせていただきます。
先ほどの御講義を聞かせていただきまして、その中で、男女の移住希望者の割合が、五十代で、男性の方が五〇・八%あるのに対して、女性の方は三四・二%しかいないというお話がありました。この原因は那辺にあるのかなというふうに感じております。
私が素人考えでぽっと思うところによると、やはり男性の地方移住というものに対しては、緑豊かなふるさとに戻りたいというようなイメージがあるんじゃないか。一方で、女性の方には、田舎に戻って旦那の親の介護をやらされるんじゃないかとか、どうもそういうことがあるのではないかなと素人考えではちょっと思ったんですが、先生はどのようにお考えでしょうか。
○樋口参考人 御指摘の点、私もあるのではないかというふうに、同感であります。
特に、女性にとってそれぞれの地方といったものはどういうような位置づけになっているんだろうかということを考えますと、やはりそこにおいては性別役割分担というのが割とはっきりしている。それだけ、例えば家のためにというようなことで我慢してきたという女性も多いのではないかというふうに思います。
例えば、娘が東京に行くというようなことに対してどういうような反応をしているかというと、自分と同じような生活を繰り返しさせたいというような、そういった人たちもいるかと思いますが、総じてそういった人は少ないというようなことから、地域差というものが生まれてきているのかなというふうに思います。
その上で、もう一つ、やはり男性の場合には仕事があるところで輝きたいというような気持ちが非常に強いわけでありまして、先ほどの移住比率の違い、五〇%ということの前提には、地方に雇用がある、自分が輝くところがあるようなところであれば移りたいということがあるわけでありまして、その前提条件がどれだけ満たされていくのか。
逆を言えば、例えば東京に勤めている人たち、一都三県ということで通勤圏が非常に広くなっているということでございますので、例えば定年であるとかそういったものによって、今まで東京の会社へ通勤していた人が地元にその後帰ってくるといったときに、果たしてその町が好きだからそこに住んでいるのかということを考えてみますと、必ずしもそれだけではなくて、やはり仕事があるからそこに住んでいた。では、その仕事がなくなったらどうなっていくのかということを考えると、ある意味では、どこでも、そういったものがあるところに住んでいきたいというような特性もあるのかなというふうに思います。
女性につきましても、最近はまさに仕事というようなことも非常に重要な選択肢でございますので、やはり地方における男女共同参画をいかに進めていくかということも女性の住みやすい町あるいは住みたい町というようなものをつくっていく上では重要な課題で、先ほどはそれを仕事としてという提案をさせていただきましたが、まちづくりにおいては基本的な考え方になっていくのではないかというふうに思います。
○宮崎(岳)委員 大変重要な御指摘かなというふうに思います。
やはりどうしても、全ての地方がそうだというわけではないんでしょうけれども、恐らく田舎というのは、男女の性的分担とか、家に関するある意味封建的な因習と言われるものが残っていて、都会の自由な空気が田舎にはない、女性の権利というものが抑制されてしまう、そういった危機感を持っている女性の方がある意味多いんじゃないか。
逆に言えば、地方において女性の権利がしっかり守られる、共同参画が可能である、男女が対等な働き方あるいは社会参加ができるということになれば、むしろ女性の方が地方に行きたいという気持ちを持つんじゃないかな、そういうふうに今のお考えを伺いまして思いました。ありがとうございました。
さて、碇山参考人に質問させていただきます。
先ほどのお話の中で、今は田舎の中の田舎への移住が多いというお話がありました。町役場周辺というような、つまりその自治体の中心的な集落ではなくて、さらに郊外の集落という意味だと思うんですが、こういった状況はなぜ起こっているんでしょうか。どういう理由で田舎の中でも田舎のところに移住するという方が出てきているのか、その点についてお伺いできますでしょうか。
○碇山参考人 直接的には、空き家が多いということですね。移住する受け皿があるということが、まずは直接的な要因だと思います。
しかし、ただ単に家があるからということでは移住は進まないわけで、先ほど申しましたように、農業をやりながら例えば工芸に取り組むだとか、あるいは近所の人たちが求めているような仕事を自分の持っている資格等を生かしながらやっていくだとか、いわゆる半農半Xという生き方、そういったことに憧れる、あるいはそういった生活をしたいという人がふえてきているということだと思います。
ですから、やはりこの場合、田園回帰という言葉がぴったりくると思うんですね。生きがい、働きがい、それから自然の中で地域の人たちに見守られながら子育てをしたい、そういうことだと思います。
○宮崎(岳)委員 ありがとうございます。
今の先生のお話にもありましたとおり、やはり人間はどうしても緑を求めるとか自然を求めるという気持ちが心の中にもあるんだと思います。ですから、できれば地方に、あるいは緑豊かな地域に住みたい、しかし、そこには仕事がない、あるいは便利さがない、この両者をいかに地方で確立することができるかということが重要な点なのかなというふうに思いました。
さて、帆足参考人にお伺いをいたします。
私も、熊本の地震発生以来、当委員会においても被災地の復旧復興についていろいろ御提言も申し上げてまいりました。段ボールベッドの問題あるいは医療用ストッキング、自衛隊テントの活用等のお話については、さまざま政府のところにも提言をし、対応していただきました。
それで、今月の初めのころでございますが、私も実際に熊本に行きまして、現地の状況も確認をさせていただきました。私は新聞記者の出身でございますので、中越地震のときにも現地に取材に入っております。今回も一人で行って、向こうでランドクルーザー、四輪駆動の車を借りて、本当に被害の大きかった例えば西原村の大切畑、古閑、風当、そういう集落が壊滅的な状況になっているところに行って、状況も拝見をさせていただいたところでございます。
まず、帆足参考人御自身も被災をされているかと思いますが、御自身の被災の状況について一言お伺いできますでしょうか。
○帆足参考人 私の自宅に関して言いますと、私の住所というのは熊本市東区というところですけれども、壁にクラックが入りまして、瓦が五、六十枚落ちましたかね。それで、自分でどうにかできるといっても、瓦が手に入るわけではありませんので、一階の部分の瓦を二階まで持ち上げて、二階の落ちた部分をとりあえず補修して、一階の部分はブルーシートでカバーしていく、そんなふうなことで、とりあえず応急処置が何とかできたという状態です。
以上の状態で、私の周りもほとんどそういった状況が延々と続いているというふうなところでございます。
○宮崎(岳)委員 その中で、きょう参考人にも資料をおつけいただいているようですが、御説明がなかった資料の中に「朝日新聞デジタル「耕論」より」と。どうも内容を拝見しますと、中越地震に襲われた被災者の方で、みずから被災者に配る弁当を地元でつくるというようなお仕事をされたというエピソードかと思うんですが、これについて御説明をお願いできますでしょうか。
○帆足参考人 済みません。時間ばかり気にしまして走ってしまいまして、申しわけありませんでした。
実は、その部分で一番申し上げたかったのが、地元に仕事を与えてほしいというのが一番大事なところでございます。
被災地にいて、何もしなくてごろごろしているという言ってみれば成人病のもとになるようなことをして、カロリーの高いお弁当を食べてじっとしておる、そんな人が、今もそうなんですが、ふえているんですね。
やはり仕事を与えて、少しでも、復旧活動でも復興でも瓦れき片づけでもいいですから、千円でも二千円でも構わないので、日当を渡して仕事をしてもらうというふうなのが非常に大事なところだと。
特に熊本に関して言いますと、津波と違いまして、崩れた家の中にほとんどの財産だったり何だったりが現実に残っているわけですね。残っているものですから、余りいい話ではないんですが、非常に泥棒が横行しておりまして、泥棒が心配で家を離れられない、離れられないので仕事もできないというふうな何か悪循環になっているような状況がありますので、家でもできるような仕事を、それから、お店ですと、仮の場所で結構ですので、先ほど復興市と申し上げましたようなことでお店をやる、そういったものを提供していただけると非常にありがたいという意味で、資料としておつけしたものでございました。
失礼いたしました。
○宮崎(岳)委員 特に御自身が観光の仕事をされているということで、先ほど、地元の観光業が非常に危機に瀕している、もう既に何軒もの旅館や民宿が廃業の方針を固めているというお話がございました。
被害の当面の復旧というのはできたとしても、私も中越のときなんかを思いますと、その地域の産業や人口というのが中長期で減少していって、立ち直れないという自治体も過去の災害では多くあったというふうに思います。特に今回、熊本市は別としまして、益城町、西原村また南阿蘇、そういった地域は財政力も必ずしも強くないというふうに思っております。そういった中で、どうやって再び活性化をするのかというのが重要な課題だというふうに感じております。
帆足参考人にお伺いをいたしますが、先ほど着地型観光というお話もありました。東京から連れてくるというよりは、現地で待っている形の観光なのかなというふうに思うんですけれども、今後、熊本の観光をどのように発展させていくかというアイデア、先ほど大名庭園の話もありましたけれども、ほかに何かあれば、幾つかお伺いできますでしょうか。
○帆足参考人 熊本に限ってというつもりも余りないんですけれども、実は熊本で今、先ほども申し上げましたように、国が今度何十億かお金をかけて、三十年ぐらいの予定で熊本城を完全に復興するんだという方針は出たというふうに聞いておりますけれども、この方針に沿って、復興の過程を順次見ていただく。非常に有名になりました、石垣の隅石という端っこの石だけでもっているやぐらとかああいったものも、文化財保護委員の先生と話をしますと、一旦上物を解体して石垣を組み直して、さらに上の建物を復興すると。
それに、重要文化財の東十八間とか北十八間とか見事なやぐらがあったんですけれども、こういったものも完全に崩れております。崩れた下に実はお宮が二つありまして、熊本大神宮というお宮と熊本城稲荷神社というのがありますが、この熊本城稲荷神社の方は特に被災を受けているわけではないんですけれども、こういったところはある意味、復元してみると、非常に失礼な言い方なんですが、邪魔というか、本来熊本城にあったものではないものがあったりするんです。
それに、もう一つ申し上げますと、その昔、修復のときに、陸軍の第六師団というのが、熊本城鎮台というのがあるときに、壊れた建物を復元する、外観復元というようなことをやりまして、実を申しますと、今回残りました宇土櫓というものの中身は鉄骨だらけなんです。
こういったものも本来ならもう一つ手を入れて、どうせ解体をしますので、完全復元をしてもらうというふうなことをすれば、宇土櫓に関してだけ申し上げますと、多分国宝になってもおかしくない建物だと私は思っているんです。そういったものを復元、復旧していく過程を観光資源として生かすというふうなことだと思うんです。
また、先ほど申しました阿蘇というふうなところも、ふだん、危ないからとバリアを張ってしまうようなことをやっては観光としては非常にマイナスの部分が多いので、難しいとはいいながら、規制緩和の方向でぜひお考えいただけたらと。
地元にしかない観光資材、観光商品がこういった部分の中にたくさんあるんです。これをぜひ生かすようなことをお考えいただけたらと思っております。よろしくお願いします。
○宮崎(岳)委員 時間となりました。改めて熊本の復興をお祈り申し上げて、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○山本委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょう、三人の参考人の方々の御意見は大変参考になって、私もしっかり勉強させていただきました。私からも心からお礼を申し上げたいと思っております。
今、宮崎委員とのやりとりを聞いておりまして、ちょっと順番を入れかえまして、僕は帆足参考人にお伺いしたいと思うんです。
ダークツーリズムというお話、僕も非常にうなずきながら聞かせていただいたわけでありますけれども、熊本城に関して言えば、なるほど、今お話があったような形でしっかり、被災の現状だとかあるいはこれから復興の道のりをみんなの共有財産にするというのは非常に大事なことだと思うんです。一方では、やはり被災地の感情として、それを観光資源にする、見せ物ではないぞという被災者の方々の思い、町中に出れば、もちろんさまざまな被害を受けられた方々がいらっしゃるわけで、このあたりの感情との関係というのはどんなふうにお考えでしょうか。
○帆足参考人 今ちょうど、私の方でも経験のある話のところをお尋ねいただきましたので申し上げますと、実は、東北の大震災のときに、私ども、応援団というふうな名前をつけまして、踊りの団体を東北に、四月の二十八日だったですか、から熊本を出発しまして、貸し切りバスで、まだ復興の道半ばというふうなところの被災地をあちこち、観光ではなくて慰問という形でお連れして回ったんです。
そういったときに、実は、先ほど申し上げたように、避難所の中ですることがなくてじっと、目をうつろにされている方がたくさんいらっしゃる中でそういった踊りを見せたりなんかしますと、目が生き上がってくるんですよ。本当にがあっと顔色が変わって喜んでいただいて、最後には涙を流して手を握りに来られるという光景を何度も耳にしまして。見せ物ではないぞという部分は確かにおっしゃるとおりなんですけれども、それはそれとして、気持ちを伝えるということに関しては、それはもう全く関係ない。
被災をされた方が被災した場所、建物を見られたからといって、それは決して恥ずかしいことではないというふうに私は考えておりますので、今回も、実は、徳島の阿波踊りの団体さんが応援に入りたいというふうなことが既にあっておりまして、その応援については、六月の十八日に一日限りなんですけれども、避難所をめぐるということで今準備をしている最中でございます。
○宮本(岳)委員 本当に国の総力を挙げて、熊本の地震災害の復興ということは進める必要があります。我々、復興という場合に、生活となりわいの再建、やはり産業まで、生活まで含めてきちっと立ち直らせる、そういう意味で、しっかり力を合わせて進めていきたいと思っております。
それでは、樋口参考人にお伺いするんですけれども、働き方の改革というのは、私どもは非常に大事だと思っております。実は、参議院選挙に向けての我が党の今回の政策でも、税の集め方の改革、税の使い方の改革とあわせて働き方の改革というのが必要だ、こう考えるわけですね。
地方創生、地方を考える場合でも、やはり地方の働き場所がないとか労働条件が非常に悪いということがネックになっている、これは議論の余地のないところだと思うんですが、その点で、非正規から正社員への働き方の流れをつくっていくこと、それから、中小企業にもちろん支援が必要ですけれども、全国一律で最低賃金を引き上げるとこの間議論してきたんですが、地域別最賃に差があるものですから、どうしても人の流れがそれに伴って動いてしまうということがあります。
それから、もちろん残業の規制ということが大事ですけれども、インセンティブを与えて、先ほどいろいろ御紹介がありましたけれども、私たちはやはり法的規制ということがないと、なかなかインセンティブだけでいかない。ですから、上限三百六十時間というものを明記した法改正をやはりやる必要がある、こういうことも提案をさせていただいているところです。
このあたりについて、参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
○樋口参考人 地域によって、やはり働き方というのは大きく違っておりますし、働き方だけではなく、例えば通勤の時間、こういったものも大きく違っているかというふうに思います。
例えば、女性の就業率を考えたときに、第一子、一番目の子供を産んだ後の継続就業率を見ますと、都会の方が高いんではないかというふうに思われがちなんですが、実は必ずしもそうではない。例えば都道府県単位で見たときに、継続就業率が一番低いのが神奈川県でありましたり、あるいは兵庫県であったり、あるいは千葉県、埼玉県という大都市周辺のところで、今まで、独身の時代、あるいは子供ができるまでは東京あるいは大阪というようなところで勤めていた、その分だけ通勤時間というのも非常に長いというようなことがございまして、そこでの問題は、やはり通勤も含めた拘束時間の問題というようになるかと思います。
一方、地方においては、働いている女性というのは非常に多い。それはパートの人たちも含めて多いわけでございますが、近所に親がいるとか子供の面倒を見てくれる人がいるとかというようなこともありますし、通勤時間が短いということもあるんですが、就業率が高い一方で、例えば、会社の経営者あるいは幹部になっている女性というのが総じて少ない。これも地域によってかなり違いがあるというようなことがあるんではないかと思います。
でありまして、やはり正社員として働ける、仕事をし続けることができるというような環境を整えていくことは、これは会社だけではなく、もちろん会社の問題もありますが、地域として重要な課題になっているんではないかというふうに思います。
その上で、例えば最低賃金の問題というのは、私も最低賃金についてはいろいろな研究をやってまいりました。二〇〇七年までは、前の年に比べて一円の最低賃金を引き上げるのも大変というようなことであったわけですが、政策的な支援もあって、そこについて引き上げを行ってきたこともあるかというふうに思います。そのことは、特に女性を中心とする低賃金の人たちにとっては、追い風という形で賃金の引き上げというものに大いに貢献してきたというふうに思います。
その一方で懸念されるのが、賃金が上がっていくと、今度は雇用を失うんじゃないかというようなところが懸念されるわけでありますが、今のところ、幸いに、景気の回復というのもあったかと思いますが、雇用が失われるというよりも、むしろ人手不足というような状況になってきておりますので、この最低賃金の引き上げというのはやはり重要な課題となっていくんじゃないかというふうに私は思います。
ただ、全国一律というのが果たしていいのかどうかということについては、まさに地域事情が大いに違っているというようなことがございますので、現行の都道府県の地域最賃というような方法というのは、やはりこれを継続することは必要ではないかというふうに思います。
一方、労働時間の問題ということでございますが、残業が長いというのも、特に長時間労働の人たちの比率が都市部で高いというのもあるんですが、地域でもやはり長時間労働という問題はあるわけであります。本来であれば、これはそれぞれの企業の個別労使でやはり改善を考えていくことが求められるかというふうに思いますが、それのインフラストラクチャーという形で、それを支える、それを促進するということ、労働時間の短縮ということを進めていくようなところについては、いろいろな制度的なバックアップというようなものも必要になってきているのかなと。
それを具体的にどうするかというようなところでは、まずはやはり三六協定の問題が今あるわけでありまして、そこについて今回検討していくというのが当面必要かなというふうに思っております。
○宮本(岳)委員 まさにおっしゃるとおりでして、三六協定の問題は、しっかり抜け穴にならないようにする必要があると思いますし、最低賃金も、上がったとはいえ、なかなか微々たるものでありまして、私たちは、今すぐ千円程度には、そして、本来は千五百円程度まで引き上げるべきだということを申し上げているところです。
そういう労働条件の確保ということが当然必要なんですが、地方へ行かれている人たちの流れを見ると、ただただ経済的なものだけではないということで、碇山参考人の方からは、働きがいと生きがいを求めて移住される方がふえているという話がございました。
碇山参考人から、やはり今、こういう移住していく方々が生きがいや働きがいを求めている、その背景にどういう問題があるのかということを、ちょっとお話しいただきたいと思っております。
○碇山参考人 先ほども申しましたけれども、やはり、都市部、大都市部での生きづらさ、それが大きくきいていると思います。長時間過密労働だとか、あるいは住宅難であるだとか、とりわけ、今日でいえば子育てが極めて難しいといったことですね。逆に、そうしたことから解放されるといいますか、そういった地域への移住の意欲は高まっている。
やはり働きがいがある。そして、自分で仕事をつくる人がふえているわけなんですけれども、労働時間を自分でコントロールできることが非常に大きなメリットだというふうに言われています。その時間を、先ほど申しました半農半Xというような形で、農業に使ってみたり、あるいは少しのお金とつながるような創作活動に使ってみたりだとか、そういったことがやはり地方での生活の魅力だと。それはやはり田舎の田舎でこそ実現できるということだろうと思います。
○宮本(岳)委員 非常によくわかる話でありますけれども、逆に言いましたら、都市部がいつまでも生きづらいような場所であっていいのかということが問われてきます。だから、地方にどんどん行かれて生きづらさから解放された、それはそれでいいでしょうけれども、では都市部はどうなのかということになっていきますね。
それでは、樋口参考人の資料で、愕然とする事実でありますけれども、五十代の方々で、地方に行ってもいいというのは、男性では五〇・八%あるのだが、女性が三四・二%にとどまっていると。私も、さまざま聞くと、男の人は、では地方に行くぞと言うんですけれども、ではあなた一人で行ってきてと言われて、単身で行かざるを得ないというような状況がふえていると聞くんです。このあたりのところは、樋口参考人、いかがでしょうか。
○樋口参考人 先ほども申し上げたことと関連するんですが、やはり男性の場合に、仕事中心ということで、仕事がどこにあるのかというようなことで、地方に仕事があるんだったら、必ずしも東京にいる必要もない。特に、四十代、五十代となってきますと、自分の会社に残った場合の将来というのが見えてくるというようなこともございまして、それであれば、地方へ行ってみずから業を立てるとかというようなことも生き方としてあるのかなというふうに考えている人が多いのではないかと思います。
その一方、日本の場合、働き方の一つとして、特に大手企業あるいは役人もそうかというふうに思いますが、転勤という問題が非常にあるかというふうに思います。大きなところで、これは新入社員のときから三年に一遍ぐらい転勤という形で、いろいろな地域を回っていくというようなことがあります。その分だけ地方になれているといえばそれまでなんですが、一方、例えば、夫婦で子供を育てていくということに、特に女性の就業している人たちもふえてきているという中において、夫も妻もそれぞれ転勤というふうになったら、まさに子供がどういうふうに行ったらいいんだろうかというようなこともあって、ある意味では、転勤制度というものが本当に必要なものであるのか。
転勤というのは、ある意味では、例えば、得意の顧客との癒着といったものを阻止するとか、あるいは公平な対応といったものを全ての顧客にというようなこともあるかと思います。また、本人の能力開発にとっていろいろな経験というのは必要なんだというようなことがあるわけですが、逆にこれが、例えば女性の就業ということを考えると、継続就業というのをかなり難しくしているというようなこともあって、ある意味では、ほかの国でも転勤はありますが、日本のような、入社してすぐから転勤があってということもございませんし、あるいは、辞令一本で一週間後、一カ月後に転勤、そういった、働き方が選べないというようなところというのも、ここ現代の働き方改革の中では必要なのかな。
何といっても、地方に行ったときに、大手企業の声を聞きますと、みんな東京から来ているというような人たちがかなりいるわけですね。ですので、地域の実情といったものをどれだけ反映、わかっているのかというようなこともしばしば問題になりますし、雇用の場をつくっていくというようなことでも、例えば地域限定社員であるとかいったものを今後ふやしていくことも検討していいのではないかというふうに私は思っております。
○宮本(岳)委員 同じ趣旨を碇山参考人にも聞こうと思ったんですが、時間が来てしまいました。
それでは、やはりその点でも、碇山参考人が冒頭述べられたように、そういう地域的なコミュニティー、受けとめるものが地域にやはり必要だというふうにも私は思うんですね。男性の場合は創造的活動とかそういうことがあって、一人でも行くというわけですけれども、女性は都市部で既にコミュニティーを持っていますから、行った先でもそれを温かく受け入れるコミュニティーがやはりなければならない。そこが壊されてきているところに一つの困難があるんじゃないかというふうにも受けとめました。
三人の参考人の方々、本当にありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。