異次元緩和 失敗明らか 宮本岳志議員 日銀の姿勢ただす 衆院財金委 (しんぶん赤旗)
異次元緩和 失敗明らか 日銀の姿勢ただす (動画)
第192回国会 財務金融委員会 第7号
平成二十八年十一月二日(水曜日)
午前九時一分開議
出席委員
委員長 御法川信英君
理事 井上 信治君 理事 土井 亨君
理事 藤丸 敏君 理事 宮下 一郎君
理事 山田 賢司君 理事 木内 孝胤君
理事 伴野 豊君 理事 伊藤 渉君
赤枝 恒雄君 石崎 徹君
大岡 敏孝君 大野敬太郎君
大見 正君 鬼木 誠君
勝俣 孝明君 神田 憲次君
斎藤 洋明君 坂井 学君
助田 重義君 鈴木 隼人君
竹本 直一君 津島 淳君
中山 展宏君 福田 達夫君
宗清 皇一君 村井 英樹君
山田 美樹君 青柳陽一郎君
重徳 和彦君 高井 崇志君
古川 元久君 古本伸一郎君
前原 誠司君 松田 直久君
鷲尾英一郎君 上田 勇君
浜地 雅一君 宮本 岳志君
宮本 徹君 丸山 穂高君
小泉 龍司君
…………………………………
財務大臣
国務大臣
(金融担当) 麻生 太郎君
内閣府副大臣 越智 隆雄君
財務副大臣 木原 稔君
防衛副大臣 若宮 健嗣君
内閣府大臣政務官 武村 展英君
財務大臣政務官 三木 亨君
文部科学大臣政務官 田野瀬太道君
農林水産大臣政務官 細田 健一君
政府参考人
(内閣官房内閣人事局人事政策統括官) 若生 俊彦君
政府参考人
(内閣官房内閣人事局内閣審議官) 稲山 文男君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 嶋田 裕光君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 籠宮 信雄君
政府参考人
(内閣府日本学術会議事務局長) 駒形 健一君
政府参考人
(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官) 酒巻 哲朗君
政府参考人
(財務省国際局次長) 土井 俊範君
政府参考人
(国税庁次長) 飯塚 厚君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 板倉 康洋君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 諏訪園健司君
政府参考人
(農林水産省農村振興局農村政策部長) 新井 毅君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 竹内 芳明君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 小瀬 達之君
政府参考人
(防衛装備庁技術戦略部長) 野間 俊人君
参考人
(日本銀行総裁) 黒田 東彦君
参考人
(日本銀行理事) 雨宮 正佳君
参考人
(日本銀行理事) 櫛田 誠希君
参考人
(日本銀行理事) 武田 知久君
財務金融委員会専門員 駒田 秀樹君
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委員の異動
十一月二日
辞任 補欠選任
石崎 徹君 赤枝 恒雄君
今井 雅人君 高井 崇志君
前原 誠司君 松田 直久君
鷲尾英一郎君 青柳陽一郎君
同日
辞任 補欠選任
赤枝 恒雄君 石崎 徹君
青柳陽一郎君 鷲尾英一郎君
高井 崇志君 今井 雅人君
松田 直久君 前原 誠司君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
金融資本市場をめぐる情勢の変化に対応して金融の機能の安定を確保するための金融機能の強化のための特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)
財政及び金融に関する件
金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)
――――◇―――――
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず最初に、昨日の金融政策決定会合に関して質問をいたします。
物価上昇率二%の目標達成時期の見通しを、二〇一七年度中から一八年度ごろに先送りをいたしました。これまで、原油価格の下落とか消費税増税の影響など外的要因に責任を求めてまいりましたけれども、これは、そもそも日本銀行が物価上昇率というものを目標にしたことに問題があったのではないかと私は思いますけれども、総裁はいかがでございましょうか。
○黒田参考人 これは、日本銀行を含めて世界の中央銀行は全て物価の安定ということを最大の目標、目的にしておりまして、具体的には、先進国の中央銀行はほとんど、二%という物価安定目標を掲げて金融政策を運営しております。
日本銀行の場合も、日本銀行法自体で、物価の安定ということを金融の安定と並んで重要な目的、目標というふうにしておりまして、そのもとで物価安定目標を具体的に二%に定め、それをできるだけ早期に実現するということを決定し、それを実行しているということでありまして、物価上昇率を政策目標に掲げたこと自体に問題があるということはないと思っております。
○宮本(岳)委員 物価や金融の安定、それは大事なことでしょう。しかし、物価上昇率二%というものを掲げて異次元緩和方針を進める、私は、そのこと自身の失敗が明らかになったと思うんです。しかも、その失敗は、今現在の日本銀行は、財政ファイナンスをしているのではないかと言われても仕方がないところまで事態を深刻化させていると思います。
黒田総裁は就任直後に、量的・質的金融緩和、いわゆる異次元緩和を決定してから、常に、財政ファイナンスではないと説明をされてまいりました。
そこで改めて聞くんですけれども、黒田総裁が言う財政ファイナンスというのはどういう事態のことを意味し、何が判断基準となるのか、日銀の金融緩和が財政ファイナンスではないと言い切るその理由を説明していただけますか。
○黒田参考人 この財政ファイナンスという言葉はさまざまな文脈で使われておりますけれども、通常は、中央銀行が通貨発行権を利用して、政府の資金調達を助ける目的で国債の引き受けなどを行うということを意味していると理解しております。
このような財政ファイナンスを行わないということは、日本銀行を含めて、世界の中央銀行で一致した考えであるというふうに思います。
○宮本(岳)委員 総裁は読売国際経済懇話会の講演で、二〇一三年四月十二日、今のお話にもあるような、金融政策上の目的で日本銀行自身の判断で行うものだから財政ファイナンスではない、こうおっしゃっているわけですけれども、改めて、つまりそれは、一つは、自身の判断で行っているかどうか、二つは、金融政策上の目的として購入しているかどうか、これが重要な判断基準である、こう受けとめてよろしいでしょうか。
○黒田参考人 先ほど申し上げたとおりでありまして、中央銀行が通貨発行権を利用して、政府の資金調達を助ける目的で国債の引き受けなどを行うことが財政ファイナンスということでありますので、当然のことながら、日本銀行があくまでも二%の物価安定の目標の実現という金融政策上の目的のために実施している国債の買い入れといった政策は、財政ファイナンスには当たらないというふうに思っております。
○宮本(岳)委員 日本銀行自身の判断かどうか、これは極めて主観的な問題なんです。なぜなら、他の審議委員同様に日本銀行総裁は国会の同意人事でありまして、提案するのは時の政権であります。政権の意を酌む方が総裁となり、あうんの呼吸で国債買い入れをふやした場合に、自身の判断かどうかは余り意味を持ちません。このようなケースでは、決定会合の議事録を見たところで、日銀自身の判断かどうかを確認するすべはないんです。
日本銀行が自身の判断で決めたと幾ら主張しても、内外の投資家が日本銀行自身の判断ではないと判断し、一たび財政ファイナンスだとみなせば、大変な事態が起こることになります。
つまり、内外の投資家にどう見られるかが大事なのではありませんか。
○黒田参考人 諸外国の中央銀行も含めまして中央銀行が財政ファイナンスはしないというのは、先ほど来申し上げているようなことでありまして、日本銀行が現在行っている長期国債の買い入れというものも、金融政策上の目的のために行っているわけでありまして、財政ファイナンスではないということであります。
他方で、マーケットでどういうふうに思われるかという話はまた別な話でありますけれども、この点につきましては、各国の中央銀行は常に、金融政策の目的のために行っているということを明確にしております。
他方で、我が国においてそういった懸念を惹起させないためにも、政府が中長期的な財政健全化について市場の信認をしっかりと確保するということは確かに重要だと思いますが、我が国において日本銀行が何か財政ファイナンスをしているということは全くございません。
○宮本(岳)委員 外国の例も含めて、財政ファイナンスをしない、それは大原則で、そう中央銀行自身が述べていることはわかっているんです。しかし、その基準、それがどう見られるかということがまさに問題だと。
一般に財政ファイナンスの基準として、中央銀行が国債を政府から直接購入しているかどうか、市場を通じて購入しているか、あるいは、日銀が保有する国債の量や保有割合等々が客観的な基準というふうに私は思うんですけれども、総裁は余りそういうことは関係ないとお考えですか。
○黒田参考人 日本銀行も含めまして中央銀行が政府の国債を直接引き受けるといったことは、財政ファイナンスと見られますので、そういうことは行わないということであります。
他方で、各国の中央銀行も、日本銀行もそうでございますけれども、市場から長期国債を買い入れて保有しているということについて、その保有割合とか金額について制限があるわけではありませんし、また、そういったもの自体が財政ファイナンスかどうかを判断するものになるとは思っておりません。
○宮本(岳)委員 否定をされましたね。制限もないというふうに今お話がございました。
改めて、少しその財政ファイナンスの原点を確認したいんですが、日銀のホームページに「教えて!にちぎん」というQアンドAが掲載されております。日本銀行が国債の引き受け、つまり、財政ファイナンスを行わないのはなぜですかという質問に対して、これは理事でいいですけれども、どう回答しておりますか。
○雨宮参考人 御指摘のございました私どものホームページの中の「日本銀行が国債の引受けを行わないのはなぜですか?」という問いに対する答えでございますけれども、読み上げますと、
これは、中央銀行がいったん国債の引受けによって政府への資金供与を始めると、その国の政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがあるからです。そうなると、その国の通貨や経済運営そのものに対する国内外からの信頼も失われてしまいます。これは長い歴史から得られた貴重な経験であり、わが国だけでなく先進各国で中央銀行による国債引受けが制度的に禁止されているのもこのためです。
以上でございます。
○宮本(岳)委員 つまり、財政ファイナンスで政府の財政節度が失われ、悪性のインフレーションを引き起こすことを防ぐというのが目的なんです。
財政ファイナンスを防ぐとの視点で見れば、中央銀行の金融政策により政府の財政規律を失わせていないかどうか、これが非常に重要なポイントになるのではありませんか。
○黒田参考人 中央銀行が政府の財政運営を助ける目的で国債引き受けなどを行うようになりますと、財政節度を失わせて、インフレ率の上昇にも歯どめがかからなくなるリスクがあるわけであります。
それに対して日本銀行の国債買い入れは、二%の物価安定の目標の実現という金融政策上の目的のために実施しているものでありまして、こうした状況とは全く性格が異なるというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 安倍首相はさきの参議院選挙の自民党の選挙公約において、ゼロ金利を活用し、財投により、今後五年間で三十兆円を目途に事業規模を確保すると公約をいたしました。その結果、二次補正では、リニア中央新幹線を初めとする公共事業に対して財投の活用を決め、約三兆円の財投債が追加発行されることになりました。
黒田総裁は、この政府の対策について、政府の財政節度が緩んだと思いませんか。
○黒田参考人 財政政策は、もちろん、政府、国会の責任において行われるものであります。
その上で申し上げますと、日本銀行が二%の物価安定の目標の実現のために、緩和的な金融環境を整えるもとで政府が積極的な財政支出を実施すれば、両者がいわば相乗的な効果をもたらすことになるということで、これは通常ポリシーミックスと呼ばれておりまして、企業や家計の経済活動を刺激し、雇用・所得環境を改善する上で有効なマクロ経済政策であるというふうに考えられております。
いずれにいたしましても、財政政策は政府、国会の責任において行われるものであるというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 先ほどの公約では、このゼロ金利を活用した財投での投資というものを、超低金利活用型財政投融資と名前までつけているんです。
二〇一三年四月に異次元の金融緩和を導入して以来、国債全体の利回りが低下しております。日本銀行は先月の金融政策決定会合で検討された総括的な検証の中で、異次元の金融緩和政策やマイナス金利政策の効果により国債金利及び貸出・社債金利の低下が起こったと述べておられます。
つまり、安倍政権、自民党が掲げるこの超低金利活用型財政投融資というものの前提となる低金利環境は、アベノミクスの第一の矢である日銀の金融政策によってもたらされたというのが政府及び日銀の見解ではありませんか。
○黒田参考人 金利を引き下げて、これによって経済を刺激するというのが金融緩和の本質でありまして、そういう意味では、もちろん、名目金利を引き下げ、そして、物価上昇期待を引き上げて実質金利を引き下げる、これが経済に対するプラスの効果をもたらすということが、まさに、日本のみならず、全世界の金融緩和政策の本質であるというふうに思っております。
○宮本(岳)委員 アベノミクスの第一の矢で異次元の金融緩和を日本銀行が行う、国債の金利全体を引き下げる、超長期の財投債という国債を大量に発行し、その財源で公共事業を三十兆円もふやす。決して日銀の金融政策がそれを意図したものではない、そうおっしゃるでしょうけれども、日本銀行の金融政策なしにはこれはやれなかったことであります。
こういうことをやっていると、内外の投資家からいずれ、財政節度を失っているのではないか、こう見られて、日銀引き受け、つまり財政ファイナンスとみなされても仕方がなくなるのではありませんか。
○黒田参考人 この点につきましては、先ほど来繰り返して申し上げておりますとおり、現在の日本銀行の金融緩和政策の一環として、二%の物価目標をできるだけ早期に実現するために国債を市場から買い入れているというのは、これはあくまでも物価安定目標を実現するための金融政策として行っているわけであります。
そうしたもとで、金利が低下しているということは事実ですから、そのもとで財政政策を行って、それが相乗効果を持つということは、これはポリシーミックスとして通常知られていることであります。
その上で、先ほど来申し上げておりますとおり、国債の信認を確保するということは政府自身にとって重要なことでありまして、その意味で、政府は中期的な財政の健全化の目標というのを掲げておられまして、二〇一五年度で、ちょうど中間の目標、プライマリーバランスの赤字を半減するということをほぼ達成しておるわけでありまして、次の目標は二〇二〇年度までにプライマリーバランスの赤字を解消するということでありまして、それは、現在、政府の課題となっておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、財政政策については、まさに、政府、国会において議論をされ、それに基づいて政府が実施していく。その際には、当然のことながら、財政の持続可能性、これを確保することは、国債の信認を確保する上でも非常に重要であるというふうに思っております。
○宮本(岳)委員 相乗効果ということもおっしゃるわけでありますけれども、実際、金利低下のもと、ゼロ金利環境のもとで今やられようとしていることはどのようなものか。
私、昨日も委員会で取り上げましたけれども、財投の活用第一弾でもあるリニア中央新幹線は、事業そのものの収益性や将来需要などをとても精査したとは言いがたい事業であります。政府の財政が厳しい中で、長期国債残高の対象から外れる財投債を追加発行して財源を集め、鉄道・運輸機構を通じてJR東海のリニア中央新幹線事業に三兆円もの財投資金を、厳密な精査もなしに、超長期、低利、固定の超優遇条件で貸し付ける、こういうことなんです。これをまさに参議院選挙政策では、三十兆円まで膨らまそうという話になってきているわけです。
一例でありますけれども、東京都下のモノレール建設の促進協議会の総会で、ある与党衆議院議員は、政府は二十八兆円の景気対策を立ち上げた、そこではリニアに財投を投入することになっている、モノレールは銀行借り入れで利子がばか高い、財投は格段に安い、モノレールにこそ財投が使えないかと発言した、そういうふうにも聞いております。
このように、どんどんスキームを緩めて拡大させていったら、またぞろ、財投改革で否定した第二の予算が復活し、国の財政が悪化し、再度、国民に莫大な借金を肩がわりさせ、ひいては悪性インフレーションを引き起こす懸念さえ高まるというふうに私は思いますけれども、これはゆゆしき事態だと総裁はお感じになりませんか。
○黒田参考人 財投政策も含めまして、財政政策につきまして具体的に私から申し上げることは適切でないと思いますが、これは、いずれにせよ、あくまでも政府、国会の責任において行われるものであるというふうに認識をしております。
その上で、先ほど来申し上げているとおり、国債に対する信認を引き続き確保していくためにも、財政の持続可能性を確保する、健全性を高めるということは非常に重要である。それに沿ってこれまでのところ、政府は財政の健全化を進めてきているわけですけれども、二〇二〇年の目標はまだ先でありますので、引き続き、そういった目標に向けてしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思っております。
○宮本(岳)委員 では次に、ETFの購入についてお伺いしたいと思うんです。
二〇一三年四月に量的・質的金融緩和を導入するときに、ETF、指数連動型上場投資信託と、J―REIT、不動産投資信託の保有残高をそれぞれ、年間約一兆円、年間約三百億円のペースで増加するよう買い入れを行うことを決定いたしました。その理由について、資産価格のプレミアムに働きかける観点と日銀は説明をしておられます。
基本的なことを聞きたいんですけれども、この資産価格のプレミアムに働きかける観点というのはどういう意味ですか。
○雨宮参考人 お答え申し上げます。
プレミアムとは何かという御質問でございますが、ETFあるいはJ―REIT、こうした株価、資産価格の価格は、基本的には、株であれば先行きの企業収益、あるいは一般的な資産であれば、その資産を利用することによって将来得られる収益や経済に対する見方によって決まる部分が基本にあるわけでございますが、それ以外に、そうした経済や企業収益の先行きに対する不確実性ですとかリスクにも影響されるわけでございます。こういう不確実性ですとかリスクが強く意識されると、その分価格は低下するということになるわけでございまして、これが一般的にリスクプレミアムと呼ばれている部分でございます。
日本銀行がETFやJ―REITを買い入れることによって、市場に言ってみれば安心感を与えるということを通じて、こうしたリスクに対応する部分、リスクプレミアムが拡大するのを食いとめる、あるいは縮小することを狙っているということでございます。
○宮本(岳)委員 なかなか一般の人にわかりにくい話なんですけれども、黒田総裁は、二〇一三年の四月十二日、読売国際経済懇話会、先ほどの話でありますけれども、そこで、「長期国債やETFやJ―REITの買入れは、長めの金利の低下を促し、資産価格のプレミアムに働きかける効果を持ちます。これが、資金調達コストの低下を通じて、企業などの資金需要を喚起すると考えられます。」と説明をされました。
つまり、ETFで考えた場合、これは、日銀の買い入れにより株価が上がり、企業の資金調達コストが低下する、こういう意味でございますか。
○黒田参考人 先ほど雨宮理事から御説明しましたように、ETFの買い入れによって資産価格のプレミアムに働きかけるということであります。具体的に何か特定の株価水準を念頭に置いたり、そうした水準を実現するために実施しているわけではありません。
もちろん、リスクプレミアムの拡大を防ぐ、あるいはリスクプレミアムを縮小させるということを通じて株価にも影響があるとは思いますけれども、全体としてリスクプレミアムが縮小すれば、企業の株式による資金調達も容易になるということでありまして、あくまでも、資産価格のリスクプレミアム、これに働きかけるということが政策の狙い、それを通じて企業の資金調達をより容易にするということであります。
○宮本(岳)委員 私、幾らその説明を聞いても、どう考えても、株価を引き上げる、あるいは、株の下げ圧力を買い入れで緩和するというふうにしか聞こえないわけです。
また、日銀の中曽副総裁はこの間の講演で、年間約六兆円というETF購入の規模について、「この規模は、アベノミクス開始から最初の三年間で、外国の投資家が株を買い越した金額が約十六兆円であったことを考えても、きわめて大きなもの」と述べておられます。これはどういう意味ですか。
○雨宮参考人 お答え申し上げます。
この間、外国の投資家の買い越し額は、この中曽副総裁の講演で申し上げているとおり、三年間で約十六兆円だったわけでございまして、これに対しまして日本銀行の一年間で約六兆円という買い入れペースは、かなり大きなものであるという評価を申し上げたものというふうに理解してございます。
○宮本(岳)委員 現在の実は日銀のETFの保有額、十兆円なんです。そこに六兆円買い足しますとちょうど十六兆円になりまして、先ほどの三年間の十六兆円とほとんど同じ規模になるんです。
ですから、実は今はもう外国の投資家は、株を買い越してきたのが引いていっているわけでありまして、その点では、どう考えてもその分を日銀が買い支えるというふうにしか私は考えられません。
このETFの買い入れを行う、六兆円に引き上げる本年七月の政策決定会合で、二名の審議委員がこれに反対を表明されました。その理由です、御紹介いただけますか。
○雨宮参考人 お答え申し上げます。
このとき、佐藤委員、木内委員の二名の委員が反対をいたしました。反対理由でございますが、佐藤委員は、「約六兆円の買入れは、市場の価格形成や日本銀行の財務健全性に及ぼす悪影響などを踏まえると過大である」として反対いたしました。木内委員は、「財務健全性への影響のほか、株式市場のボラティリティを高める、株価を目標にしているとの誤ったメッセージになる等」として反対いたしました。
○宮本(岳)委員 佐藤委員もその意見の中で、市場の価格形成をゆがめる、また木内委員も、市場をゆがめ、ボラティリティーの上昇につながる、こういう指摘をされておられます。つまり、反対理由の一つが、市場の価格形成機能をゆがめるというものでありました。
黒田総裁は、ETFの買い入れは市場の価格形成機能に影響を与えない、こう考えておられますか。また、そう考えておられるならば、その理由を説明していただけますか。
○黒田参考人 日本銀行によるETFの買い入れ、これは、先ほど申し上げたとおり、特定の株価水準を念頭に置いて、そうした水準を実現するために実施しているわけではありません。もとより、日本銀行によるETFの買い入れが株価の上昇に寄与することにはなろうかと思いますけれども、これはあくまでも資産価格のプレミアムに働きかけるということを通じてでありまして、私を含む多くの政策委員会メンバーは、これが市場の価格形成に悪影響を及ぼすというふうには考えておりません。
なお、日本のみならず、欧米もそうでございますけれども、金融を大幅に緩和するという中では、貸出金利が低下するということもありましょうし、それだけでなく、いわゆるポートフォリオリバランスという形で、投資家が確定利付の金融資産から株式あるいはREITその他にシフトしていくというポートフォリオリバランスもあり得るわけでありまして、そういうことを通じて資産価格が上昇しますと、企業にとっては資金調達がより容易になる、あるいはビジネスチャンスが生まれるということがありまして、金融政策全体として、そもそも、金利の低下を促し、資産価格の上昇を通じて、金利の低下のみならず、資産価格の上昇ということも金融緩和の一つの経路である。それはポートフォリオリバランスという形で起こっている。
ETFの買い入れについては、リスクプレミアム自身が不確実性とかリスクによって大きくなり過ぎているものを縮小する、そこに働きかけるということであります。
○宮本(岳)委員 一般論ですけれども、株式市場の中でETFの比重が高まれば、市場の価格形成機能が低下すると私は思います。
例えば、日経二二五の銘柄に選ばれた企業であっても、全ての企業が一律に営業実績を改善させたり悪化させたりするわけではありません。企業個々の事情が反映されてこそ、市場の株価が形成されるんだと思うんです。しかし、ETFの比重が高まり、買い入れだけが行われれば、日経二二五の銘柄企業は、業績が悪化した企業も株式の買い取引が行われ、上昇圧力がかかってきます。
このようなメカニズムで市場の価格形成機能を低下させるということになるのではありませんか。
○黒田参考人 そもそもこのETFというのは、個々の株式を中央銀行がいわば評価して買うということは市場に対して過度な介入になるということを踏まえまして、ETFという形で、市場全体を代表するようなものを通じてリスクプレミアムを全般的に引き下げていくというような政策であります。
したがいまして、リスクプレミアムの縮小ということが最も重要な政策効果でありまして、先ほど申し上げたように、ETFという形で個別の株式には介入しないということになっているわけです。
その上にさらに、日本の株式市場の代表的な指標でありますTOPIX、あるいは日経二二五、JPX日経四〇〇といったものに連動するETFを買い入れているわけですが、九月の決定会合においてさらに、日本の株式市場全体を対象にしておりますTOPIXに連動するETFの買い入れのウエートを高めるなどしまして、市場への影響については十分点検しながら買い入れを行っております。
○宮本(岳)委員 投資信託協会の統計を見ますと、本年九月末のETF総資産額は約十七兆円であります。同じ九月末の日銀のETF保有残高は九・八兆円、約十兆円ですから、発行総額に対して日銀は約六割のETFを保有しているということになります。私は、こういう買い入れが市場価格形成機能をゆがめる、明瞭だと言わなければならないと思います。
昨日の記者会見でこのETFの買い増しについて、市場がゆがめられていることはないと総裁は否定をされました。本日の日経には「いつまで続く日銀相場」という記事が掲載されております。ある証券トレーダーによると、「日銀がETFを買う日中時間帯に日本株が上昇しやすい傾向を利用したもので、午前の早い時間帯に買って、午後の取引終了間際に決済してしまう。」という取引が注目されているというんです。試算では、「日本株を夜間帯まで持ち続けるより高い収益が得られる」そうであります。「日本株全体の売買が低調な中で、一度に七百億円程度を買う日銀の存在感が増している」との指摘であります。ニッセイ基礎研究所のアナリストは、「個別銘柄の価格形成にはゆがみが出ている」と指摘しております。総裁が幾ら否定しても、市場関係者は既に、ゆがみが出ている、こういう認識が広がっている証左だと思うんです。「日経平均は日銀の買いによって一〇〇〇~二〇〇〇円程度押し上げられている」と記事には書かれてありました。
ゆがみがないと言うのであれば、具体的な検証をして、市場関係者や国民に説明するべきではありませんか。
○黒田参考人 御案内のとおり、このETFといいますのは、運用の対象となる株式が存在すれば、新規に幾らでも組成することが可能なものであります。この点、例えばTOPIXに連動するETFは東証一部上場株式を運用の対象としておりますけれども、東証一部上場株式の時価総額は五百兆円程度であります。その意味では、今後日本銀行が買い入れを進めても、ETF市場における日本銀行のプレゼンスが大き過ぎるということはないと考えております。
なお、個別の銘柄に対する介入は避けるために、ETFという形で、いわば市場全体を対象とした形で資産価格のプレミアムに働きかけているわけでありまして、そういう意味では、市場の価格形成をゆがめているということはないと思います。
ただ、金融政策自体がそもそも、金融緩和によって金利を下げる、あるいは、そういうもとでポートフォリオリバランスが起こって資産価格が変わるということは、全世界どの国の金融政策であっても全く同じでありまして、それは、まさに経済にプラスの影響を与えるために実質金利を下げ、金融資産の価格を上げるということを通じて経済にプラスの影響を及ぼそうとしているわけでありまして、そういう意味では、中央銀行がなくて金融政策がないときと違うではないかということはそのとおりなんですけれども、まさにそういう形で経済にプラスの影響を及ぼそうとしている。
その中で、個別の銘柄であるとか個別の株式に介入しないような形で、市場にゆがみを生じないような形で金融緩和を行っているということはぜひ御理解いただきたいと思います。
○宮本(岳)委員 現在、日銀の所有するETF総額は約十兆円です。このまま買い入れが続けば、一年後には十六兆円、総裁の任期が切れるころには約二十兆円に膨らむことになります。それは、間接的な企業支配を強化することになり、企業の実績とは関係なく大株主が株式を購入し続けて、株価を高めることになるでしょう。
市場の価格形成機能を崩壊させかねないETFの大量買い入れはやめるべきだとはっきり指摘をして、私の質問を終わります。