「廃業率」目標ただす 宮本岳志議員 金融緩和「悪影響」 衆院財金委 (しんぶん赤旗)
「廃業率」目標ただす 11/16衆院 ・財務金融委員会 (動画)
第192回国会 財務金融委員会 第8号
平成二十八年十一月十六日(水曜日)
午前九時一分開議
出席委員
委員長 御法川信英君
理事 井上 信治君 理事 土井 亨君
理事 藤丸 敏君 理事 宮下 一郎君
理事 山田 賢司君 理事 木内 孝胤君
理事 伴野 豊君 理事 伊藤 渉君
理事 上田 勇君
石崎 徹君 岩田 和親君
大岡 敏孝君 大野敬太郎君
大見 正君 鬼木 誠君
勝俣 孝明君 神田 憲次君
斎藤 洋明君 坂井 学君
助田 重義君 鈴木 隼人君
津島 淳君 中山 展宏君
福田 達夫君 宗清 皇一君
村井 英樹君 山田 美樹君
今井 雅人君 重徳 和彦君
中島 克仁君 古川 元久君
古本伸一郎君 前原 誠司君
浜地 雅一君 宮本 岳志君
宮本 徹君 丸山 穂高君
小泉 龍司君
…………………………………
財務大臣
国務大臣
(金融担当) 麻生 太郎君
内閣府副大臣 越智 隆雄君
内閣府大臣政務官 武村 展英君
政府参考人
(金融庁総務企画局長) 池田 唯一君
政府参考人
(金融庁監督局長) 遠藤 俊英君
参考人
(日本銀行総裁) 黒田 東彦君
参考人
(日本銀行理事) 桑原 茂裕君
財務金融委員会専門員 駒田 秀樹君
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委員の異動
十一月十六日
辞任 補欠選任
竹本 直一君 岩田 和親君
鷲尾英一郎君 中島 克仁君
同日
辞任 補欠選任
岩田 和親君 竹本 直一君
中島 克仁君 鷲尾英一郎君
同日
理事伊藤渉君同日理事辞任につき、その補欠として上田勇君が理事に当選した。
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十一月十四日
消費税増税の中止を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三九二号)
同(池内さおり君紹介)(第三九三号)
同(梅村さえこ君紹介)(第三九四号)
同(大平喜信君紹介)(第三九五号)
同(笠井亮君紹介)(第三九六号)
同(穀田恵二君紹介)(第三九七号)
同(斉藤和子君紹介)(第三九八号)
同(志位和夫君紹介)(第三九九号)
同(清水忠史君紹介)(第四〇〇号)
同(塩川鉄也君紹介)(第四〇一号)
同(島津幸広君紹介)(第四〇二号)
同(田村貴昭君紹介)(第四〇三号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第四〇四号)
同(畑野君枝君紹介)(第四〇五号)
同(畠山和也君紹介)(第四〇六号)
同(藤野保史君紹介)(第四〇七号)
同(堀内照文君紹介)(第四〇八号)
同(真島省三君紹介)(第四〇九号)
同(宮本岳志君紹介)(第四一〇号)
同(宮本徹君紹介)(第四一一号)
同(本村伸子君紹介)(第四一二号)
消費税増税の中止に関する請願(宮本徹君紹介)(第五二三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の辞任及び補欠選任
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
金融資本市場をめぐる情勢の変化に対応して金融の機能の安定を確保するための金融機能の強化のための特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)
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○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
金融機能強化法改正案について質問いたします。
まず、本改正案提出の目的について確認をしたいんですけれども、本改正案は三度目の延長を行うものであります。一度目は〇八年、世界的な金融危機、二度目は一一年の東日本大震災の特殊要因があり、延長いたしました。
そこで大臣にお伺いするんですが、今回延長するのはどういった理由でございましょうか。
○麻生国務大臣 金融機関というものは、御存じのように、金融仲介機能というものを安定的に発揮して、そして地域における経済の活性化というのを図っていくためには重要な制度的な枠組みなんだ、そう理解をいたしております。
現在の金融経済情勢は、今言われましたように、二〇〇八年のリーマン・ブラザーズとか二〇一一年の東北大震災といったような状況とは異なりますけれども、現状の景気につきましては、これは御存じのように、少子化の問題とか、地域格差とか、潜在成長力の低下といった構造要因もいろいろ抱えております。加えて、世界経済を見ましても、世界的な需要の低下とか、極めて先が見えにくいとか、成長の減速リスクとか、いろいろなものが存在いたしております。
こうした金融とか経済情勢の変化というのを考えたときにおいて、金融機関というものが金融仲介機能というものを安定的に発揮していくためには引き続きこういった金融機能強化法のような枠組みが必要であろうと考えて、五年間の延長ということをさせていただこうといたしております。
○宮本(岳)委員 大臣がお触れになったように、中小企業の景況感は、二〇一四年四月の消費税の増税以降、悪化を続けております。
日銀にお伺いしますけれども、日銀短観における業況判断の推移について、中小企業の製造業と非製造業の傾向を、二〇一四年三月調査と二〇一六年九月調査でどう変化したか。お答えいただけますか。
○桑原参考人 お答え申し上げます。
短観の中小企業製造業の業況判断DIは、二〇一四年三月調査ではプラス四、二〇一六年九月調査ではマイナス三でございました。また、中小企業非製造業のDIは、二〇一四年三月調査ではプラス八、二〇一六年九月調査ではプラス一でございました。
○宮本(岳)委員 どちらもマイナス七ポイントなんです。とりわけ、中小企業の製造業でDIはマイナスにまで下がっております。深刻な事態であります。
全国中小企業団体中央会の中小企業月次景況調査、これによりますと、景況感を示す指数、DIは、ことし七月にマイナス三〇・五で、異次元の金融緩和が始まった二〇一三年四月のマイナス二一・三%よりも悪化をしております。
資料一につけておきましたけれども、毎日、九月十五日付のインタビューで、全国中小企業団体中央会の大村功作会長は、「少なくとも緩和後も中小企業には景気回復の実感は全く及んでいない。大規模緩和を「評価できる」と言える状況ではない。」と述べております。
麻生大臣にお伺いしますけれども、中小企業の景況感についてどのような御認識をお持ちでしょうか。
○麻生国務大臣 これは御存じのように、経常利益というのは過去最高であります。平成二十三年十一兆五千億、平成二十四年十二兆、二十五年十四兆、二十六年十五兆、そして二十七年度は十五兆五千億ということで、これは間違いなく経常利益はずっと継続して増加をしておりますし、倒産件数も減少傾向に推移することなど、全体としては改善方向にあるんだと思っておりますので、こうしたことを見まして、先ほどの日銀短観におきましても、景況感というのは大企業に比べて伸び悩んでおることは確かでありますけれども、少なくとも改善傾向にはあるというように承知をいたしております。
○宮本(岳)委員 ちょっと認識が違うんですよ。
異次元緩和の導入から三年半が経過したものの、中小企業にアベノミクスの恩恵が広がったという実感はないと思うんです。中小企業の設備投資が大きくふえているとはとても言えない状況でありますし、金利が幾ら下がっても資金需要が生まれてこなかったというのが実態ではないか。
先ほどのインタビューで大村会長はマイナス金利政策について、「大企業は低金利で資金を調達できるようになったが、中小企業にはそうした恩恵がほとんどなく、大企業との貸出金利の差が開いている。」こういう認識を示しております。つまり、信用力の高い大企業は、銀行の融資だけじゃありません、社債など市場からの資金調達を行っており、低金利環境の恩恵を十分に受けることができるんですけれども、銀行の融資に頼らざるを得ない中小企業はそれだけの恩恵を感じないということだと思うんです。
大企業と中小企業との間で金利や手数料など資金調達の負担の差が開いている、こういう認識は大臣もお持ちでしょうか。
○麻生国務大臣 企業規模の資金調達費用というのを一つ一つ知っているわけではありません。ただ、貸し手側のデータというのを見ますと、中小企業向けの貸し出しの割合が多い地域の金融機関の貸出金利というものは、大企業向け貸出資金の割合の多い都市銀行等々の貸出金利よりも一般的に高い傾向にあるのははっきりいたしております。地方銀行で一・〇九、信用金庫で一・七二等々、差があるのは間違いない事実だと私どもも理解をしております。
ただし、地域の金融機関の貸出金利は趨勢的には低下をしてきておるという傾向にあることもまた確かです。さらにまた、金融庁が地方中小企業に直接ヒアリングをした結果を見ますと、中小企業自身は、金利の高低よりも、我々としては、みずからの事業に対する金融機関の理解、また、金融機関からのアドバイスというものを重視しているという実態にもこれは留意をしておかねばならぬことだと思っております。
○宮本(岳)委員 九月十五日に公表された金融庁の金融レポートですけれども、各方面に大きな衝撃を与えました。二〇一五年三月期において、地域金融機関の本業の利益率は四割の金融機関でマイナスであります。十年後の推計では六割がマイナスになるとの結果でございました。金融レポートは、本業マイナスの原因について、地域金融機関の二〇一六年三月期決算から「株式等売却益の増加等により、当期純利益は高水準となっている。 一方、資金利益は、貸出金利回りの低下を貸出残高の単純な増加による収益増では補えないことを主因に低迷している。」こう指摘をしております。
大臣に聞きますけれども、日銀の金融政策によって地域金融機関にマイナス金利政策の影響を含めて深刻な副作用が起こっている、こういう指摘について認識を共有しておりますか。
○麻生国務大臣 この金融レポートにおいてお示しをさせていただきましたとおり、金融庁におきましては、二〇二五年三月期における顧客向けサービス業務の内容の利益率を試算した結果、六割を超える地域銀行がマイナスとなる結果となっております。
このように、地域金融機関を取り巻く経営環境は極めて厳しい状況になっておるという理解はいたしております。
○宮本(岳)委員 金融機能強化法改正案は、マイナス金利等により本業の収益を悪化させた地域金融機関に対して公的資本の注入をし、収益性と効率性を引き上げていくというものであります。しかも、政府が経営に関与するなど非常に強力な仕組みも盛り込まれております。金融機関が自主的に申請するという形をとっておりますけれども、アベノミクスの恩恵もない地域経済を支え、マイナス金利等で苦しんでいる地域金融機関は申請に追い込まれる可能性も指摘をされております。
例えば、金融機関に収益性と効率性の向上を求めれば、貸し出しをふやせない金融機関は既存の貸出金利の引き上げを図ることになるのではないかと思うんですけれども、金融庁はそのような認識をお持ちですか。
○遠藤政府参考人 先生御指摘のように、人口減少でありますとか低金利の継続など厳しい経営環境のもとで、各金融機関はみずからの経営のありようというものを検証し、その創意工夫によって持続可能なビジネスモデルを構築すること、これが求められております。我々も、彼らとの議論の中でそういったことを彼らに要請しているところでございます。
先生御指摘の、貸し出しをふやさない金融機関は既存貸し出しの金利を引き上げるのではないかという御指摘でございますけれども、今のように、人口減少などによって借り入れ需要の減少が予想される中、あるいは金融機関間の競争が非常に激しい中、金融機関の一方的な都合で一方的な金利引き上げを行うことはなかなか難しいのではないかなというふうに考えております。
むしろ金融機関は、顧客の事業の内容や成長可能性を適切に評価して、企業価値の向上につながるアドバイス、ファイナンスを提供し、企業側の評価を得ることで、金融機関もその対価として手数料や金利を確保するということが、持続可能なビジネスモデルの一つの有力な選択肢ではないかなというふうに考える次第でございます。
○宮本(岳)委員 日銀の金融緩和政策によって地域金融機関の体力は非常に低下をしている、既にそういう指摘は出ているわけですよ。先ほどの中小企業中央会の大村会長ですけれども、同じこの毎日新聞のインタビューで、「マイナス金利幅が拡大して金融機関がますます疲弊すれば、中小企業に対する融資の判断が厳しくなり、貸出先の選別が始まるかもしれない」、「貸出金利がかえって上がる可能性もある。」と危惧をされております。
金融庁は、このような影響に対して何らかの対応をしておられますか。
○遠藤政府参考人 議員御指摘の貸出先の選別の懸念ということに関しましては、私どもの本事務年度の行政方針の中で、日本型金融排除という問題意識を掲げております。
これは、人口減少などによって借り入れ需要の減少が予想される中で、担保、保証などで保全がなされている先とか信用力に問題のない企業などに金融機関の融資が過当競争的に集中してしまっているのではないか、個別の金融機関はそういった安全な先に単純に貸し出しを増加させているのではないかといったことで、こういったビジネスモデルは今やもう限界に近づいているのではないかなという問題意識でございます。
十分な担保、保証がない先でありますとか信用力が劣る先に対しても、コンサルティングなどの支援を通じて企業価値の向上に貢献することによって新たな融資先を獲得することができるのではないかという問題意識を持っておりまして、私ども、この実態を把握しようというふうに考えている次第でございます。
貸出金利が引き上がるということに関しましては、先ほど答弁させていただきましたけれども、これも、一方的な金利の引き上げというのはなかなかやはり困難ではないかなと思います。むしろ、先ほど申しました企業価値の向上につながるアドバイスでありますとかファイナンスというものを提供することによって、企業側にそれを評価してもらって、一定の手数料とか金利を確保するというのが持続可能なビジネスモデルではないかなというふうに考える次第でございます。
○宮本(岳)委員 今のお話にあった金融行政方針、これでありますけれども、この金融行政方針によって金融機能強化法がどう運用されていくかということがいよいよ問題だと思うんです。
地域金融機関に収益性と効率性の向上を求めれば、先ほど指摘したように、既存の利益を上げるために金利を引き上げるか、さもなくば、収益にならない、利益にならない企業への融資を打ち切るという蓋然性が高まります。つまり、地域金融機関が赤字中小企業の廃業を推し進めることになりかねないと思うんです。
事実、安倍内閣が六月二日に閣議決定した日本再興戦略二〇一六年では、中小企業等の開業率が廃業率を上回る状態にし、廃業率、開業率が一〇%になることを目指すと明記をされております。
これは、長年地域で必死に頑張ってきたような中小零細業者に、見込みのないところは早目に潰れてくれと言わんばかりの話でありまして、私は、きょう内閣府に来ていただいておりますから聞くんですが、開業率はともかく、なぜ政府が廃業率を目標にしなければならないのか。廃業するかどうかは事業主本人が判断すべきことではありませんか。
○越智副大臣 経済再生担当の副大臣としてお答えを申し上げます。
宮本委員から、日本再興戦略二〇一六の中で開業率、廃業率の記述があったということで御質問いただきましたが、まず基本的なところで一点目ですけれども、委員御指摘のとおり、廃業するかどうかということについては、あくまで事業主本人が判断すべきことであるというふうに考えております。
一方、我が国経済の活性化のためには、産業の新陳代謝を円滑に進めて新たな産業を創出し、成長力のある分野に経営資源をシフトしていくことも重要な課題であって、そのためのKPIとして開廃業率に関する目標を定めているということであります。
この開業率と廃業率についてですけれども、まず一つは、我が国の開業率、廃業率はおおむね五%程度、欧米はおおむね一〇%程度、数字の差はありますけれども、日本でも欧米でも開業率と廃業率が同じような動きをしていて、一般論としては、開業率、廃業率には相関関係があるというふうにまず考えています。
もう一つは、産業の新陳代謝が活発な社会ほど開業率が高くなるというふうに認識しておりまして、再興戦略の中でも、起業に対する意識改革が必要だというふうに述べています。でも、だからといって、廃業率を高めることで開業率を高めるというアプローチはとっているわけではございません。
いずれにしましても、成長戦略に掲げた目標の達成に向けて、さまざまな政策を総動員して取り組んでまいりたいというふうに考えています。
○宮本(岳)委員 それは当たり前なんです。
先ほど大臣は、社会主義だったらまるで事業主が決められないかのような、そういう答弁のときには私の方を向いておっしゃるわけでありますが、そういう御答弁がありましたけれども、決してそんなことはありません。これまでのにせものの社会主義はいざ知らず、我が党の掲げる社会主義というのはそういうものじゃありませんで、党の綱領もきょうはお持ちいたしましたけれども、国民の消費生活を統制したり画一化したりするいわゆる統制経済とは全く無縁で、個人の発意を第一に尊重するということもはっきり掲げているわけです。
それで、金融仲介の改善に向けた検討会議のメンバーに、多胡秀人さんという、地域の魅力研究所代表理事さんがいらっしゃるんですが、その方が「金融財政事情」十一月七日号にこういうふうに書いておられました。「借手の財務内容がすべてではない。それ以上に重要な視点がある。借手の事業実態や経営者の資質はもとより、当該借手の地域における存在意義(雇用や地域商流など)が融資を行う際の非常に重要な決定要因となる。」こう述べておられまして、ただただ収益がどれだけ上がっているかどうかだけで選別するものじゃないんだということを多胡さんは、この方は検討会議のメンバーでありますけれども、指摘をしておられます。
これは大臣にお伺いするんですが、こういう考え方、これは大臣も共有されますか。
○麻生国務大臣 御指摘のように、雇用とか地域の商売の流れ、商流というものを考えたときにおいては、地域において不可欠な企業というのはあるんだと思っています。
わかりやすい例はやはり、疲弊していった地域を比べられると、和歌山と違って私ども筑豊は、極端に言ったらわかりやすい例がいっぱいありますので、そこを見ますと、その中で地域としてのそこそこの企業が、銀行の理解も得てきちっと残った企業はそこで雇用を継続しましたし、もちろん経営者の才能もあったんだと思いますが、立て直した結果、そこの中でどんどんなくなっていってその地域から出ていった企業に比べて、そこに企業をとどまらせた企業、とどまらせた金融機関等々のあったところは、今でもその地域において人口が余り減っておりませんし、事実、その地域においては、確実な地盤というものをこの数十年間でさらに確立したという事実が幾つか散見されます。
そういった意味では、やはり金融機関というものは、その事業の内容とかそういうものをよく見た上で、ファイナンスだけでもうかる、もうからないという話以外のところも考えないと、地域銀行としてはいかがなものかという感じがいたしておりますので、珍しく意見が合っておると思います。
○宮本(岳)委員 金融庁が五月二十三日に発表した「企業ヒアリング・アンケート調査の結果について」というものを見ますと、中小企業からは、金融機関の「融資スタンスに対する厳しい声が圧倒的に多い。」とされております。担保や公的な信用保証がつかなければお金を貸そうとしないという金融機関の姿が浮き彫りにされております。
これまでも政府は、二〇〇二年の金融再生プログラムあるいはリレーションシップバンキング等々で、地域金融政策の中心課題として、地域経済の再生とか地域経済の活性化、多胡さんが主張される内容に近いことを言ってまいりました。しかし、金融庁が実際に進めたのは、不良債権の処理として今強硬に、地域金融機関を再編したり、やはり潰したりということでありました。
アンケート結果は、金融庁が目指した方向とは違い、現在の地域金融の姿が中小企業の経営に寄り添った支援となっていなかったということを示していると思うんです。これまでの金融庁のあり方、金融行政のあり方に問題があった、この点は大臣もお認めになりますか。
○麻生国務大臣 これは宮本先生御指摘のあれは、中小企業から金融機関は担保、保証に依存した融資スタンスをとっているとの御意見があるということだと、このことに関してのものだと思いますが、これは、従来の厳格な資産査定等々を見ますと、その中心となっております検査とか監督というものが、これは先ほど御質問のあった九七年また二〇〇八年等々の不良債権の問題というのは、もうお忘れかと思いますが、あのときは住専なんて言葉もあった、もう誰も覚えていない言葉ですけれども、住専なんて言葉もありまして、そういった不良債権の問題の克服というのにあれは一定の成果があったことは間違いないと思います。
ただし、そのまま機械的に継続すると、これは担保とか保証とか必要以上の重視をする副作用を生むということなんだということを申し上げて、銀行は融資をやっておるので、質屋をやっているんじゃありませんから。
そういった意味では、我々としてはきちんと認識をしてもらいたいということで、金融担当大臣着任以来、いわゆる金融処分庁というような経緯があのころはありましたので、銀行をどんどん、九七年、八年、先ほど質問が、UFJに勤めたとか言われた方が何か言っておられましたけれども、あの方の時代は間違いなくそうです。そういった時代と違って、今は金融育成庁というイメージに変えろということを最初に四年前に言って、四年間連続、一月の話はこの話しかしていないんですが。
今年、金融仲介機能のベンチマークというのを、これは本の中にそういうのをきちんと書かせていただいておりますが、金融機関との対話を通じて、いわゆる担保とか保証とかいうものに過度に依存しない、加えて、経営者というものを見た上で融資の転換と促進というものをぜひ進めろという方向をはっきり、今まで口で言っていたものを紙に出してきちんと出したという形にしておりますので、そういった傾向はなかなか簡単には直らないとは思いますけれども、時間がかかると思いますが、その方向で事を進めたいと思っております。
○宮本(岳)委員 大臣のお気持ちはわかるんですけれども、しかし、では今回の新しい方針で地域金融機関のその姿勢が変わるかどうかということなんです。むしろ、あなた方政府の政策変更、これは別の違う面が強調されて受けとめられていると思います。
資料二を見てください。十一月一日に開催されたらしい、与信管理DAYと銘打った日本経済新聞社主催のフォーラムの広告であります。本文の冒頭、「現在、金融庁と経済産業省は「事業性評価」を大きなテーマに掲げています。これによりリーマン・ショック後の企業倒産抑制の流れが変わる可能性があります。「事業性評価」は企業を財務面だけでなく、非財務面からも分析し「事業の将来性」を判断するものです。将来性が期待される企業には支援を強化する一方で、先行きが見通せない企業には廃業も選択の一つとしています。」こう言って、倒産減少時代終えんの可能性を指摘しております。
赤字の中小企業を廃業に追いやる、これが現在の金融庁と経済産業省の考え方だと受けとめられているのではないかと思いますが、いかがですか。
○遠藤政府参考人 委員おっしゃいました事業性評価というのは、金融機関がまさに企業の実態というものをよく見て、担保、保証がなくてもその企業の実態、企業の将来性、あるいはその経営者の資質、そういうものに基づいてきちっと融資を決めろという話でございます。企業は、それぞれライフステージがあって、そのライフステージに応じた事業性評価、企業に対するコンサルタントとかアドバイスというのが必要だと思います。
従来も、債務整理などを前提とした顧客企業の再起に向けた適切な助言とか、顧客企業が自主的な廃業を選択する場合の取引先対応等も含めた円滑な処理等への協力など、ライフステージがかなり終わりの部分にあるような企業に対して、顧客企業自身とか関係者にとって真に望ましいソリューションというのは、これは金融機関というのは積極的にやるべきではないかということは我々は彼らと議論しております。
一方的に、金融機関側の一方的な論理によって、あるいは企業側の実態というものを踏まえずに廃業に追いやるというようなことを金融機関がもちろんやるべきではございませんし、そういったことではなくて、企業の実態をそのライフステージに応じて常に見て、事業性評価、コンサルティング機能というものを発揮してほしいという議論をしているところでございます。
○宮本(岳)委員 あなた方が昨年十二月十八日に設置した金融仲介の改善に向けた検討会議、その議事要旨を見ますと、そうおっしゃるけれども、実際にやはり、効率の悪いところは潰せという意見が出ているわけです。四月四日に開催された第三回検討会議では、メンバーから、「そのような中で、地域金融機関が果たさなければならない役割は大きい」「産業全体の伸びが期待しにくい時代には、強い産業を伸ばしていくことが重要であり、競争力に劣る企業は転廃業を進めることも必要である。」という意見が出されております。六月二十七日、第五回検討会議であるメンバーは、「日本の場合、とりわけ新陳代謝が遅れているのがサービス産業であり、もっと廃業等を増やさないと生産性は上がらない。問題は、本来競争から生ずるべき一定レベルの廃業がこの国で起きず、かつ、倒産を一生懸命止めてきたことにあると思う。その結果、金融機関、信用保証協会、経営者あるいはそこで働いている人全員にとって、多分この国は倒産コストの世界で一番高い国となった。」とまで言い放っているんです。
それで、もう時間がないので資料三も行きますけれども、資料三にちょっとセンセーショナルな週刊誌の記事をつけておきました。週刊現代十月十五日、二十二日合併号であります。「このままでは銀行が潰れる」という見出しが躍っております。
問題は記事の冒頭でありますけれども、「「この国には銀行の数が多すぎる。しかも、担保を取って貸し出すだけで何の工夫もしていないし、知恵もない。これだけ金融緩和をしているのに、融資を必要としている起業家たちにカネが回っていないのはどういうことだ。金融機関がまともに機能していないから、日本ではアップルのようなイノベーションが生まれないんだ。 自己保身しか考えない愚かな金融機関を潰さなければ、日本が滅びる。そうなる前に、一刻も早い銀行の淘汰と再編が必要だ」」、こうかぎ括弧でくくった後、「森信親金融庁長官はこう考えている。」と書いているんですから、言ったことじゃなくて、考えているようだという記事のようであります。
確認しますが、金融庁はこのように考えているんですか、いないんですか。
○遠藤政府参考人 「こう考えている。」ということでございますので、その内容について、ちょっと敷衍した我々の考え方を申し述べさせていただきます。
ちょっと繰り返しになりますけれども、我々が金融機関と議論しておりますのは、今のような金融機関の経営環境が厳しい中で、金融機関はみずから問題意識を持って、自主的な創意工夫のもとで持続可能なビジネスモデルの構築に向けた取り組みを行ってくれということでございます。再編統合ありきの議論は金融機関とはしておりません。
金融庁といたしましては、これまで金融機関に対して、担保、保証に過度に依存することなく、取引先企業の事業の内容とか成長可能性を適切に評価して、企業価値の向上につながる融資あるいは本業支援の取り組みを促してきたところでございます。
先ほど申し述べました日本型金融排除ということに関しても、こういう日本型の金融排除が生じているのではないか、企業に対する貸し出しの選別が行われているのではないかということについても、これは鋭意、本事務年度、その実態把握に努めてまいりたいというふうに思っております。
それから、先ほど申しました事業性評価を行う場合には、企業のライフステージに応じた、その企業の状態にふさわしいアドバイス、まず評価をして、その状態を把握して、それからサポートをする、コンサルティング機能を発揮するということでございますので、そのライフステージに応じたサポートを行えているかどうかということについて金融関係とよく議論して、その実態を把握したいというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 最後にちょっと大臣に確認だけしたいんです。
そういう意味では、あくまでそんなことは考えていないと言うのであれば、地元企業を生み育てるという本来の仕事を地域金融機関にきちっとさせるべきだと思うんです。中小企業にとって金融は命綱ですから、中小企業金融円滑化法の精神を生かして実践していくことが、今の地域経済の再生や活性化に必要だと思います。
とりわけこれから年末に向けて、急な資金需要や年越しのための資金が必要になります。こうしたことにきちんと対応する御決意をお伺いして、私の質問を終わります。
○麻生国務大臣 直接金融をやれます大企業に比べて、間接金融に頼らざるを得ない零細中小企業等々の立場というのを考えましたときに、今言われましたように、私どもとしては、金融機関のあり方というものを先ほど局長の方から答弁いたしましたように、その方向できちんと対応してまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 終わります。