税制改定/「大企業栄え民細る」/宮本岳・田村貴両議員が告発/衆院本会議(赤旗)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-02-17/2017021702_01_1.html
動画 https://www.youtube.com/watch?v=zqu_l4AwLow
議事録
○宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、所得税法等一部改正案について、安倍総理に質問いたします。(拍手)
さきに成立した二〇一六年度第三次補正予算では、国の税収が一・七兆円も下方修正され、一・九兆円の赤字国債の追加発行を余儀なくされました。
さらには、足元の消費を見ても、GDP統計で、昨年十月から十二月の個人消費がマイナスになるなど、アベノミクスの破綻はもはや明白であります。にもかかわらず、総理は施政方針演説で、アベノミクスにより経済の好循環が拡大していると強調しました。
税収が大幅に落ち込んでいながら、日本の経済はよくなっていると言われるのはどうしてか、その落ち込みの原因を具体的にお答えいただきたい。
個人消費の低迷は、GDP統計を見ても明白です。第二次安倍政権の四年間で、日本のGDPは、名目で約四十四兆円、実質では約二十五兆円ふえ、最高水準になったなどと誇っていますが、その中身は、国民にとって単純に喜べるものではありません。
物価上昇を加味した実質GDPは、約二十五兆円の増加で、約五%伸びたのに対し、GDPの六割を占める個人消費の実質的な伸びは一・六兆円の増加。わずか〇・六六%の成長にすぎません。これでどうして経済の好循環が実現していると言えるのか。これで国民が豊かになったと言えるのか。しかとお答えいただきたい。
総理は、政権発足前の二〇一二年総選挙で、行き過ぎた円高を是正すると各地で訴え、政権発足後は、経済政策の柱として、大胆な金融緩和を中心とするアベノミクスを進めてまいりました。
同時に、円・ドルの為替相場は、一ドル八十円台から百二十円台へと急激に円安に振れたことは、確かに事実であります。
急激な円安は、自動車産業など輸出大企業の収益を大きく改善させ、史上最高の収益をもたらす一方、食料品や、電気、ガスなどの輸入価格を押し上げ、多くの国民が消費を抑制せざるを得なくなったのであります。
個人消費の低迷の背景には、二〇一四年四月の消費税増税、社会保険料の負担増、円安による輸入食品やエネルギー価格の上昇など、庶民への負担の増加、社会保障改悪による将来不安などがあります。そして、それはまさに政治の責任ではありませんか。総理の答弁を求めます。
円安により海外での利益を膨らませ、まさに過去最高の利益を上げている大企業は、その利益を労働者の賃金に回さず、配当や内部留保にふやし続けています。
労働分配率の低下は、それを証明しています。
内閣府の平成二十七年度国民経済計算年次推計によれば、二〇一一年、二〇一二年と七〇%を超えていた労働分配率は、二〇一三年、六八・一%、二〇一四年は六八・六%、二〇一五年が六七・八%と、安倍政権下で落ち込んだままであります。
賃金がふえなければ、当然、労働者の個人消費がふえるはずがありません。なぜ、安倍政権下で労働分配率の低下が起こり、いまだ改善のめどが立たないのか、総理の認識をお聞きしたい。
総理は、日米首脳会談後の記者会見で、大統領の成長戦略に貢献できる、米国に新しい雇用を生み出すことができると述べました。
その上、昨日の参議院本会議で、総理は、米国から兵器を購入することが米国の雇用にも貢献するとまで答弁しました。事もあろうか、兵器を買って米国の雇用に貢献するなど、言語道断であります。総理の見識を厳しく問うものです。
総理はアメリカの雇用を心配しますが、日本国内では、低賃金に置かれている非正規労働者は働く人の四割にも迫ります。非正規労働者を正規労働者とし、真っ当な賃金が払われる労働環境をつくることこそ、力を注ぐべきではありませんか。
次に、税収と税制のあり方についてお聞きします。
安倍政権で国と地方の税収が二十二兆円ふえた、このアベノミクスの成果を国民に還元すると総理は成果を誇ります。しかし、二十二兆円は本当にアベノミクスの成果と言えるのでしょうか。
二〇一六年度第三次補正予算後の一般会計税収見込み額は、国と地方を合わせて九十七・七兆円、これが現在の我が国の実力です。結局、補正後の税収見込み額から消費税増税分を除くと、国と地方の税収合計は、リーマン・ショック前の二〇〇七年の税収、九十二兆円にさえ届いておりません。
安倍政権で税収がふえたといっても、これがアベノミクスの成果の実態ではありませんか。総理の答弁を求めます。
我が国の税制は、安倍政権の四年間で大きく変わりました。
消費税は、税率五%から八%へと約九兆円の増税が実施され、その一方で、法人税は、実効税率が三七・〇〇%から二九・七四%へと大幅に引き下げられました。この結果、大企業が過去最高の収益を上げているにもかかわらず、相当する法人税収の増加は全く見られません。
国税庁の統計によれば、二〇一五年度の法人企業の税引き前当期純利益は、バブル期の三十八・九兆円を大きく上回り、約一・六倍の六十・六兆円に達しました。しかし、法人税収は、当時の約半分の、わずか十・八兆円にすぎません。我が国の税制の現状は、まさに大企業栄えて民が細る、こういう税制であります。
近代税制の原則である、担税力に応じて負担するという応能負担を土台に据えて、法人税の引き下げ政策を見直さなければ、税による再配分機能の回復も国の財政の再建も、とてもおぼつかないのではありませんか。答弁を求めます。
そもそも、大企業の税負担割合は実効税率よりさらに低いことが財務省の統計から明らかになっています。
その主な要因が租税特別措置にあり、中でも研究開発減税は、毎年六千億円の減税が適用され、その九割程度が資本金十億円超の大企業の減税となっています。
報道によれば、大企業は五社に一社が今期最高益の更新を見込み、内部留保は毎年二十四兆から二十五兆円も拡大しています。それだけの資金力がある大企業に対し、なぜ研究開発費の増額をわざわざ誘導しなければならないのでしょうか。国際競争力を高めるために、みずからの判断で必要な投資を行う資金力を日本の大企業は十分持っています。
例えば、研究開発減税一位のトヨタ自動車は、営業利益二兆九千億円、当期純利益二兆三千億円を誇る国際的大企業です。九百四十億円の減税をしなければトヨタは研究開発投資を減らしてしまうなどというのは、あり得ない話ではありませんか。答弁を求めます。
他方で、防衛省は、大学などの研究を軍事研究に動員する制度をつくり、来年度予算では予算額を十八倍に増大させようとしています。こうした軍学共同は、戦後の日本が憲法九条のもとで戦争を目的とする科学研究は行わないとしてきた日本学術会議の方針に反すると、大問題になっています。
こうした中、日米首脳会談での共同声明には、防衛イノベーションに関する二国間の技術協力を強化すると盛り込まれました。日本の研究や技術を兵器の共同開発に動員しようというのですか。断じて許されません。
総理の答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)