施設の民間一任は危険 コンセッション方式 住民に被害
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-05-22/2017052205_11_1.html
動画 https://youtu.be/zcP8J2Ha0Zo
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
国家戦略特区法案について質問をいたします。
本改正案は、附則第二条第一項で、コンセッション事業者の施設経営の自由度向上について、公共施設等の運営事業者がこれを利用させる第三者をみずから決定できるよう、具体策について一年以内に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることを定めております。
まず、大臣にお伺いしますけれども、このコンセッション事業者の施設経営の自由度向上とはどのようなことを言っているんですか。
○山本(幸)国務大臣 お答え申し上げます。
現行では、公の施設であります展示場や文教施設等において、コンセッション事業者が特定の第三者に施設を使用させる場合には、地方自治法上の指定管理者の指定も受けること、つまり二重適用になるわけですが、が必要であります。
この場合、PFI法と地方自治法のそれぞれの手続を経る必要があり、煩雑であること、また、利用料金について地方公共団体の承認を受ける必要があり、利用料金の決定に関するコンセッション事業者の裁量が狭くなることといった問題が指摘されているところであります。
そのために、コンセッション事業者が指定管理者の指定を受けることなく、特定の第三者に公の施設を使用させることが可能となるよう、必要な措置を講ずる旨を意味しているところであります。
○宮本(岳)委員 コンセッション方式というものは、PFI法が二〇一一年六月に改正されまして、公共施設等運営権という権利が新たに創設されたことで、コンセッション方式を実施するための法制度が初めて整備をされました。利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共主体が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定するという方式であります。
そこで、配付資料の一を見ていただきたい。福岡市が第二十五回国家戦略特区諮問会議に提出した資料であります。
下に赤線を入れておりますけれども、「PFI法に基づく「コンセッション方式」は、民間事業者による利用料金の設定・収受が前提であるにも関わらず、施設を誰に使用させるかを決定する使用許可権限が付与されていない!」と書いてあります。そして、現状は、「指定管理者との二重適用が必要となるが、手続きが煩雑となり、かつ、民間事業者の運営(料金設定等)の裁量が狭くなるため望ましくない。」と書かれてあります。
今回、一年以内に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講じるというのは、福岡市も含めたこのような声に応えてのことでありますか、大臣。
○山本(幸)国務大臣 福岡市は、既存のMICE施設の運営について、指定管理者からコンセッションに転換することを目指して、今準備を進めております。コンセッション事業者が指定管理者の指定を受けることなく、展示会主催者等の特定の第三者に施設を使用させられるようにしてほしいと要望しているわけであります。
制度改正が必要な措置については、引き続き、提案者である福岡市と相談しながら検討を進めてまいりたいと思っておりますが、そうした要望は福岡市だけではなくて他の自治体からもあるわけでありまして、そういうことを踏まえて、今回の法案になっているわけであります。
○宮本(岳)委員 私は、この福岡市の言い分を見て驚いたんです。コンセッション事業者がもっと自由にやらせてくれと内閣府に要望を上げたのであればともかく、事もあろうに、地方自治体みずからが事業者の勝手にやらせてくれと意見を出すなどというのは、自治体の魂を失ったものとしか言いようがないと私は思います。
総務省に聞きますけれども、地方自治法には指定管理者制度が定められております。地方自治法上の指定管理者制度は、PFI法に定めるコンセッション方式とは違い、指定管理者に施設の使用許可権限を与えてまいりました。この指定管理者制度というのはどのようなものでございますか。
○宮地政府参考人 お答え申し上げます。
指定管理者制度は、普通地方公共団体が、公の施設の設置の目的を効果的に達成するために必要があると認めるときに、条例の定めるところにより、当該普通地方公共団体が指定する法人その他の団体に当該公の施設の管理を行わせるものでございます。
この制度は、公的主体以外の民間主体においても十分なサービス提供能力が認められるものが増加していること、また、多様化する住民ニーズに対して効率的に対応するためには、民間事業者が有するノウハウを活用することが有効であるということを踏まえまして、公の施設の管理を一般の株式会社を含めた民間事業者に行わせることができるようにするために導入されたものでございまして、使用許可などの行政処分を含めて管理を行わせる制度となっております。
○宮本(岳)委員 地方自治法上の指定管理者制度というものは、もともと行政が直営で行っていた公の施設の管理を、コスト削減などを口実に指定管理者に行わせようという制度であります。
この間、私は大臣と、図書館や博物館など本来自治体が直接責任を負うべき施策を指定管理者に委ねることは、その本来の趣旨をゆがめるものだという議論をしてまいりました。
それでも、もともと地方自治法には管理委託制度というものもありましたけれども、それには、主体に、公共団体、公共的団体、出資法人に限るという制約があったんです。それを、二〇〇三年の地方自治法改正で、公の施設の管理主体を民間事業者、NPO法人等に広く開放して、出資法人とイコールフッティングで参入できるようにするというのが説明でありました。だからこそ、地方自治法は、指定管理者について管理期間を定めるとともに、利用料金を徴収する場合には自治体の承認が必要だという歯どめをかけているわけなんですね。
総務省、確認いたしますけれども、地方自治法第二百四十四条の二の九にはどのように定められてありますか。
○宮地政府参考人 お答え申し上げます。
地方自治法第二百四十四条の二第九項におきましては、指定管理者が管理する公の施設の利用料金について、「公益上必要があると認める場合を除くほか、条例の定めるところにより、指定管理者が定めるものとする。この場合において、指定管理者は、あらかじめ当該利用料金について当該普通地方公共団体の承認を受けなければならない。」と規定されているところでございます。
○宮本(岳)委員 指定管理者が料金を徴収する場合には、あらかじめ当該利用料金について当該地方公共団体の承認を受けなければならない、こう定められているわけですね。
つまり、指定管理者は、本来自治体が行ってきた公の施設の管理運営業務を自治体に成りかわって行うのであるから、何でもよいということにならないんです。そこには一定の縛りがかかっております。だからこそ、使用許可権限もその指定管理者に与えることとなっているわけであります。
一方、PFI法第十七条六号において、市町村がコンセッション事業者を選定しようとする場合には、利用料金に関する事項を実施方針で定めることとされております。実施方針は条例によって定められるわけでありますけれども、ガイドラインでは、利用料金の上限、幅、変更方法などを定めるとしております。
内閣府に確認しますが、この枠内の料金の値上げに自治体の承認は必要ですか。
○木下政府参考人 お答えいたします。
コンセッション事業の場合は、利用料金を改定する場合には、PFI法第二十三条二項に基づきまして、あらかじめ、公共施設等の管理者等にその利用料金を届け出るということがされてございます。
○宮本(岳)委員 届け出るとされているわけですが、自治体の承認は必要ですか。
○木下政府参考人 自治体の承認までは要することはございません。
○宮本(岳)委員 つまり、この福岡市の提案文書が言っている、コンセッション事業者の料金設定等の裁量が狭くなるため望ましくないというのは、もう指定管理者の枠を外して、届け出だけで料金値上げを認めてやってくれということであります。
その一方で、それだけの枠がかかっているからこそ指定管理者には認められている使用許可権限を、コンセッション事業者にも与えてやってくれと言っているわけですね。
大臣、これはつまり、コンセッション事業者によいとこ取りをさせてやってくれ、こういう要望を出しているに等しいのではありませんか。
○山本(幸)国務大臣 それは、それぞれメリット、デメリット等があるというふうに思います。
PFI、PPPなどのコンセッション事業で期待しているのは、やはり、民間事業者の創意工夫をできるだけ活用する、そのことによって、従来できなかったようないろいろな新しい発想でビジネスができる、そのことによって、また集客もふえる、そういう形を期待しているわけでありまして、その意味では、自由度を高めることによって、そうしたことが期待できるということだろうというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 本来、地方自治体は、地方自治法に定められた地方自治の本旨に立って、コンセッション事業者に向き合う場合でも、住民の立場で事業者をチェックし、監督するのが務めのはずであります。それを、あなた方は、地方自治体の魂まで投げ捨てて、コンセッション事業者のもうけのためなら自治体としてのチェック機能まで、もう結構です、放棄しますと、みずから提案するような自治体をつくり出してきたわけであります。愚の骨頂だと言わなければなりません。
さて、このコンセッション方式なるものを、事もあろうに、水道事業にまで導入しようというのが今の政府の方針であります。
二〇一六年五月十八日に民間資金等活用事業推進会議が決定したPPP、PFIの抜本改革に向けたアクションプランでは、二〇二二年度までにPPP、PFIの事業規模を二十一兆円に拡大することとしております。コンセッション事業の重点分野として、具体的にどのような分野が挙げられておりますか、大臣。
○木下政府参考人 お答えいたします。
コンセッション事業の重点分野につきましては、昨年五月に決定いたしましたPPP、PFI推進アクションプログラムにおいて、平成二十六年度から二十八年度までを集中期間とする重点分野として空港、水道、下水道、道路を、また、平成二十八年度から三十年度までを集中強化期間とする重点分野として文教施設、公営住宅を挙げてございます。
○宮本(岳)委員 ここにはっきりと、水道、下水道が挙げられているわけですね。
聞きますけれども、水道事業にコンセッション方式を導入するのはなぜか。一石三鳥という説明も受けましたけれども、これは一体どういうことでありますか。
○木下政府参考人 お答えいたします。
水道は、御案内のように、近年、施設の老朽化や職員数の減少、それから人口減に伴う料金収入の減少に直面しておりまして、水道事業の基盤強化が喫緊の課題となってございます。そのため、民間事業者の技術や経営ノウハウを活用するコンセッション事業も基盤強化の有効な方策の一つとなり得るものと承知してございます。
このコンセッション事業の実施によりまして、公的主体にとっては、財政負担の軽減を図りつつ公的サービスを提供でき、財政健全化に資すること、利用者にとっては、民間の創意工夫を生かした良好なサービスを享受できること、地域経済にとっては、新たな民間の事業機会の創出につながることといったような効果が期待できるものと考えてございます。
○宮本(岳)委員 さあ、本当にその石は三羽の鳥を落とせるか、これから議論をしてみたいと思います。
言うまでもなく、我が国の水道事業の整備には、コレラなど水系伝染病との闘いの長い歴史がございました。
配付資料の二を見ていただきたい。これは、国土交通省の水資源部が出している「日本の水」に掲載されたグラフであります。
赤い棒グラフはコレラ発生数であります。とりわけ、明治十二年の大流行では、十六万人以上が罹患し、十万六千人近くが死亡いたしました。明治十九年の大流行では、十五万六千人が罹患し、十万八千人が亡くなっております。この水系伝染病との闘いを通じて、衛生対策としての近代的な水道設備の整備、普及が進んできた、皆さんも御存じのとおりであります。
厚生労働省に聞きますけれども、水道法第二条一項には、水道に関する国及び地方自治体の責務をどのように定めておりますか。
○北島政府参考人 お答えいたします。
現行水道法の第二条第一項は、「国及び地方公共団体は、水道が国民の日常生活に直結し、その健康を守るために欠くことのできないものであり、かつ、水が貴重な資源であることにかんがみ、水源及び水道施設並びにこれらの周辺の清潔保持並びに水の適正かつ合理的な使用に関し必要な施策を講じなければならない。」と規定しております。
○宮本(岳)委員 水道法は、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与することを目的にしております。
これをコンセッション方式などという形で民間事業者に明け渡すというのは、厚生労働省、水道法が定めた国と自治体の責務を投げ捨てることにはなりませんか。
○北島政府参考人 水道事業においてコンセッション方式を導入する場合には、地方自治体においては、PFI法に基づき、実施方針に関する条例の制定や運営権設定等の各段階において議会の議決を経ることとされております。
また、今国会に提出している水道法改正案では、コンセッション方式を導入する場合におきましても、地方自治体は水道事業者としての位置づけを維持し、引き続き最終的な給水義務を負うものとしております。
さらに、改正水道法案に基づき、地方自治体からコンセッション事業設定の許可申請があった際には、厚生労働省において、事業計画の確実性及び合理性があるか、コンセッション事業者の設定する利用料金が総括原価主義によって適正に設定されているか、当該事業の実施により水道の基盤の強化が見込まれるか等の観点から厳格に審査を行うこととしております。
こうしたことから、コンセッション制度を導入したといたしましても、国及び地方自治体が水道事業に関する責務を民間事業者に丸投げするようなことにはならないと考えております。
○宮本(岳)委員 水道事業にコンセッション方式を導入し民営化すれば、とてもそういう歯どめにならない。
例えば、水道法が定める豊富低廉な水の供給が担保されるかどうかという問題であります。
資料三を見ていただきたい。これは、大和総研経営コンサルティング部主任コンサルタントの鈴木文彦氏が発表した「水道料金は「原価割れ」しているのか 官民連携/PFIにあたって課題となる料金設定の論点」と題したレポートに付されたグラフであります。
今日の水道事業は、事業体ベースで見れば、おおむね給水料金は水道料金で賄われております。しかし、公営の水道事業者の多くは、使用水量がふえればふえるほど使用水量当たりの料金単価が高くなる逓増制の料金体系を採用しており、小口利用に絞ってみると、給水原価の九割以上を料金収入で賄っている事業体は全体の四割にすぎず、多くのケースで原価割れを起こしております。
特に、上の図表三にあるように、小口利用の原価割れは、大都市に顕著だということであります。下の図表四は、大都市の典型、大阪市水道局における、水量区分別に見た使用水量一立米当たり料金単価であります。使用水量五十立米以下では原価割れでありまして、百立米を超える大口使用者、つまり、主に事業者の水道料金で小口の原価割れを埋め合わせている構図がはっきりと見てとれます。
厚労省に聞きますけれども、公営の水道事業者の多くがこのような逓増制の料金体系を採用しているということは事実ですね。
○北島政府参考人 公益社団法人日本水道協会が発行する水道料金表において、使用量の増加に伴い従量料金単価が高額となる料金体系を逓増制としております。
また、この水道料金表によれば、平成二十八年四月一日現在で、調査対象の水道事業者千二百六十四事業者のうち、八百五十一事業者、約六七%が逓増制を採用しているものと承知しております。
○宮本(岳)委員 この大和総研のレポートでは、この大阪市の水道料金体系を、「つまり、上位二・四%の大口利用者から得た利用料金の差益分をもって、残り九七・六%の赤字を補てんしているような構図である。」と結論づけております。
私は、これを決して問題だと思わないんですよ。公衆衛生の論理、あるいは所得再配分の政策、それがこのような料金体系を定着させてきたわけです。ところが、これをコンセッション方式で民間企業に委ねればどうなるか。小口利用に係る原価割れの料金体系は、民間の行動原理と相入れないことは明らかであります。
大臣、これを進めたら、圧倒的多数の家庭、小口利用者には料金値上げになることは火を見るより明らかではありませんか。
○山本(幸)国務大臣 その料金がどのようになるかどうかについては、ちょっと所管外でありますので、お答えは差し控えたいと思います。それは、いろいろな事情によって変わってくるものだと思います。
○宮本(岳)委員 厚労省、いかがですか。
○北島政府参考人 先ほどお答えを申し上げましたとおり、コンセッション方式であっても、利用料金の幅につきましては条例で定めるということになっておりますので、それが適切に定められた範囲内での料金設定となると承知しております。
○宮本(岳)委員 幅を定めるけれども、その幅の上限までは届け出だけで引き上げられるということになるわけですね。
コンセッション方式により水道事業への参入を目指すある企業は、ニュースリリースで、「老朽施設の更新や耐震化推進の為、料金の上昇は避けられない状況と見受けられますが、自治体としては、可能な限り料金の上昇を抑え、市民や地域経済への影響を最小限に抑えたいところです。また、水道料金で利益を出すなど怪しからん、利益が出るなら値下げをするべきと思われる方もいらっしゃると思います。余談ですが、この考えが現在の耐震化や更新投資に対応できない低料金を招いた一因と指摘する方も少なからずいらっしゃいます。」などと、今までが不当に安過ぎたのだと主張しております。なるほど、企業にとっては新たなもうけ口ができるでしょう。
インフラシステム輸出戦略平成二十八年度改訂版では、我が国のすぐれた上下水道の技術やノウハウを生かした国際展開を図るため、国、地方公共団体、民間企業などの連携を強化し、途上国や水資源に乏しい地域等での案件発掘等の段階から関与し、本邦企業の海外展開を支援するとしております。
きょうは経産省に来ていただいていますが、この我が国ビジネスの海外展開では、二〇二〇年の世界の水ビジネスの市場規模をどれだけと予測しておりますか。
○三田政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の我が国水ビジネスの海外展開では、二〇二〇年の世界の水ビジネスの市場規模を約百兆七千億円と予測しております。
○宮本(岳)委員 百兆七千億円ですよ。何が一石三鳥ですか。
海外展開で市場規模百兆円という予測が出されております。そのために、自治体が持つ上下水道の技術やノウハウを企業に明け渡せということではありませんか。そして、自治体にとっても、清浄にして豊富低廉な水の供給という本来の役割を投げ捨てれば、確かに身軽になるのかもしれません。しかし、住民にとっては踏んだり蹴ったりではありませんか。
企業のもうけと自治体の役割の放棄によって住民に水道料金値上げを押しつけ、安全な水の安定供給をないがしろにする水道事業へのコンセッション方式の導入は直ちにやめること、そして、コンセッション方式の自由度拡大の検討を白紙委任する本法案には反対だということを申し上げて、私の質問を終わります。