道路の安全を脅かす 宮本岳議員、道路法等改定案に反対
衆院国土交通委員会は16日、道路法等一部改定案を与党などの賛成多数で可決しました。日本共産党は反対しました。
同法案が創設する重要物流道路は、物流の効率性・生産性向上を口実に、国際海上コンテナ車(12㍍背高、長さ16・5㍍、車両総重量60㌧)が空港・港湾から物流施設まで一気に通行できるよう、高速道路並みの道路に改築・新設するとともに、特殊車両に義務付けられている道路の通行許可を不要とするものです。
採決に先立つ質疑で日本共産党の宮本岳志議員は、国際海上コンテナ車は、発着地を届け出る必要がなくなることから、一般道や強度の足りない橋梁(きょうりょう)を通行して損傷する可能性があると指摘。損傷の可能性を否定できない国交省の石川雄一道路局長に対し、「道路の安全を脅かしかねない」と批判しました。
宮本氏は「重要物流道路の指定の対象には、三大都市圏環状道路も排除されないのか」と質問。石井啓一国交相は「高速道路は重要物流道路の基幹的役割を果たすものだ」と認めました。宮本氏は「高速道路の新規建設を加速・推進するものだ」と指摘し、同法案で新設される特定連絡道路(高速道路と民間施設を直結する道路)への無利子貸付制度は、大型物流倉庫をもつ大企業への優遇策だと批判しました。(赤旗2018/3/18)
動画 https://www.youtube.com/watch?v=hZok1xgFhCM&list=PL3M7AtnZgh3UwBngS4JL1lVJplHH5b_A4&index=77
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず冒頭、昨日午後四時十六分ごろ、私の地元である大阪府枚方市の新名神高速道路の工事現場で、作業員の男性が約五メートル下の河川に鋼材とともに転落し、死亡するという痛ましい事故が発生いたしました。亡くなられた方の御冥福を心からお祈りいたします。
新名神高速道路の工事現場では、二〇一六年四月以降も、四件の事故で五名が亡くなっております。なぜ事故がなくならないのか。事故原因の究明、責任の所在、再発防止策など、国土交通省としても全力を挙げていただきたいと思います。このことを申し上げて質問に入ります。
特殊車両の通行に許可を義務づけている。これには理由があるわけでありまして、それは、道路構造の保全と交通の危険防止のためである、こういうことであります。要するに、重量や寸法の制限を超える車両が通行することで道路が傷むことがないように、また、特殊車両は一旦事故を起こすと一般車両とは比較にならない重大な事故になりかねないから、それを防止するために許可が義務づけられている。
ここに通行許可の意義があると考えますが、大臣、これは間違いないですね。
○石井国務大臣 道路は、一定の重量、寸法の車両を想定して設計されておりまして、当該重量、寸法を超える車両は、原則、通行が禁止をされております。
一方、実際の社会経済活動におきましては、長大物の運搬など、やむを得ず当該規格を超える車両、すなわち特殊車両を通行させる必要が生じることがございます。
このため、道路の構造を保全をし、交通の危険を防止する観点から、車両の構造と積載する貨物の特殊性を審査し、やむを得ないと道路管理者が認める場合に限りまして、必要な条件を付して通行を許可する制度を設けているものでございます。
○宮本(岳)委員 今度の法案では、重要物流道路を通行する国際海上コンテナ車は許可を不要にするということでありますけれども、そうすると、これまで行ってきた道路管理者による審査は全くなされなくなります。
それでは、二〇一六年度の直轄国道における特殊車両の取締り実績はどうなっているか、また、都道府県道における取締り実績はどうなっているか、道路局長にお伺いいたします。
○石川政府参考人 お答えいたします。
平成二十八年度における直轄国道の特殊車両の現地取締り実績は、取締り回数が六百二十一回、引込み台数が三千八台、違反件数が千四百六十九件となっておりまして、千四百六十九件のうち、警告が千三百八十九件、措置命令が八十件となっております。
また、平成二十八年度におけます都道府県道の特殊車両の現地取締り実績につきましては、国土交通省で調査いたしましたところ、取締り回数が三十回、引込み台数が百十七台、違反件数が五十八件となっております。違反件数は全て警告でございます。
○宮本(岳)委員 特車の取締りは、大体月に一回、限定した路線で二時間程度、道路を通行する特車で違反が疑われる車両を引き込んで、違反があるかどうかを確認するということでやっておられます。
都道府県については、そもそも母数が非常に少ない。それでも、直轄国道で引込み台数に対する違反件数、これはもう四割程度が出ておりますし、今の、都道府県道ではさらに五割程度の違反件数が出ているということだと思います。
それでは、国際海上コンテナ車の二〇一一年から二〇一六年までの転覆、転落、又は路外逸脱の事故件数と、そのうち、通行許可をとっていなかった件数はどうなっているか。それぞれ六年間の合計で自動車局長にお答えいただけますか。
○奥田政府参考人 お答え申し上げます。
事業用の貨物自動車の事故につきましては、貨物自動車運送事業法及び自動車事故報告規則におきまして、事故を起こした事業者が国土交通省に事故内容を届け出ることとされております。
具体的には、事故の種類、車体の形状、許可等の取得状況を含めまして、事故の概要について、所定の様式に従って届け出ることとされております。
この自動車事故報告規則に基づきまして、二〇一一年から二〇一六年の六年間において事業者から報告のあったもののうち、国際海上コンテナ輸送に係るもので事故の種類の欄が転覆、転落、又は路外逸脱に該当した事案は、七十件あったものと承知をいたしております。
また、このうち、「許可等の取得状況」の欄の「特殊車両通行許可」の欄において、なしとされていたものの件数は、二十六件あったものと承知をいたしております。
○宮本(岳)委員 いずれにしても、事故に占める無許可件数、約四割に及んでおりまして、事故防止のために通行許可をとることが重要であることがわかると思うんです。
こうした現状を見たときに、国際海上コンテナ車の通行許可を不要にして違反や事故が減少するのか、さらに、国際海上コンテナ車が一旦重要物流道路に入り、その先の重要物流道路に指定されていない枝道や強度が足りない橋梁を通行する、その可能性について否定できるのか。法文上、それを防止する保証がありますか、道路局長。
○石川政府参考人 お答えいたします。
国際海上コンテナ車、四十フィート背高コンテナにつきましては、平成二十八年七月の海上人命安全条約、SOLAS条約の改正によりまして、国際海上コンテナ、四十フィート背高コンテナの総重量が厳格に管理されております。
また、国際海上コンテナ車につきましても、他の特殊車両通行許可を受けている車両と同様に、道路法第四十七条の四に基づきます道路管理者による指導取締まりの対象でございます。実際の走行時に重量や経路などの違反が確認された場合、道路管理者が警告等を行うことになります。
さらに、国際海上コンテナ車が定められた重量以下で指定された通行経路を確実に通行するということが重要でございます。重量につきましては、コンテナ総重量を証明するための書類の携行、通行経路につきましては、経路の捕捉が可能なETC二・〇の機能を活用して確認をすることを検討してまいります。
いずれにいたしましても、今回の制度の趣旨を踏まえまして、トラック事業者等との連携を図りながら、法令を遵守した走行がなされるよう努めてまいります。
○宮本(岳)委員 条文上には何らないわけですよ。私の質問にも、そういう意味では、法文上あるかという問いには答えられなかったと思うんです。国交省は現場の実態を御存じなのかと首をかしげたくなります。
私は、この間、トラック運転手の方々からもお話を伺いました。そもそも荷主は、特車が道路を通行するためには許可が必要であるということもほとんど知りません。運送業者に荷物を運んでくれと頼めばすぐに運んでくれると思っております。
ところが、荷主の届け先が幹線道路沿いにあれば問題がないのですけれども、枝道を通らなければならないとなれば、そこの区間は通行許可がおりないということがあらかじめわかります。許可をとらずに枝道を通行する、こうしたことが常態化しておりまして、許可を不要にすれば、こうした違法行為がまかり通らないとも限りません。
本法案は、道路の安全を脅かしかねないものだということをまず指摘しておきたいと思います。
次に、重要物流道路制度は、三大都市圏環状道路のような高速道路を指定の対象として排除しておりますか。していませんね、大臣。
○石井国務大臣 重要物流道路は、物流の効率化等を図るため、物流上重要な道路ネットワークについて指定するものであります。
例えば、昨年の二月に圏央道の茨城県区間が開通したことによりまして、東名高速、中央道、関越道、東北道、常磐道の六つの放射状の高速道路が圏央道を通じてつながりました。この開通によりまして、都心部を通過せずに地方間を結ぶことが可能になるとともに首都圏から各地への物流の効率化につながることから、圏央道沿線における物流施設の年間立地件数が、二十年前と比較をいたしまして四・六倍に増加をしております。
このように、高速道路は物流の効率化の観点から大きな効果を発現するものでありまして、全道路延長に占める割合は約〇・七%程度ではございますけれども、貨物輸送量は約三割を占めております。重要物流道路において高速道路は基幹的な役割を担うものと考えております。
○宮本(岳)委員 なるほど、高速道路をそういう役割で進めていくということが確認されました。
ということは、重要物流道路の指定の対象には、既存の道路の改築だけではなくて、東京外環道の東名―湾岸間など未整備計画路線も排除されていないと思いますが、間違いないですね。
○石川政府参考人 お答えいたします。
重要物流道路の指定は、計画路線も含めて指定をするという考えでございます。
○宮本(岳)委員 新たな道路の建設にもこれは利用されるということが明らかになりました。
重要物流道路の創設は、結局、高速道路の新規建設を加速、推進する口実を与えかねないと思います。今緊急に求められるのは、道路の老朽化対策であることを指摘しておきたいと思います。
次に、特定連絡道路についてでありますけれども、これは既に二〇一七年七月に民間施設直結スマートインターチェンジ制度として具体化をされ、募集が開始されておりますけれども、現在、この整備方針が認定されたのは一件、三重県多気町の整備方針が初めて認定されたと聞いております。
この一件は観光施設のようでありますけれども、特定連絡道路は、高速道路から物流施設等に直結する道路、こうなっておりますから、この物流施設には、大型の物流倉庫、まあ、大企業の物流倉庫なども含まれると考えますが、道路局長、間違いないですね。
○石川政府参考人 お答えいたします。
大規模物流施設に直接連絡する道路も対象となります。
○宮本(岳)委員 なぜ、そのような大型物流倉庫を持つ民間企業の道路建設にまで国が無利子貸付けができる法をつくる必要があるのか。これは政策判断の問題でありますので、大臣にひとつ御答弁をいただきたいと思います。
○石井国務大臣 今回の法案では、大規模物流施設に直接連絡する道路も無利子貸付けの対象となるところでございますが、この民間施設直結スマートインターチェンジの運用に当たりまして、高速道路と直結する施設は、地元の地方公共団体の定める地域活性化のための計画等に位置づけられた民間施設としているところでございます。
○宮本(岳)委員 特定の民間施設への交通のためだけではないとおっしゃるわけでありますけれども、主たる目的は、特定の物流倉庫に物を運搬する専用の道路を建設することになります。
結局、大型商業施設やレクリエーション施設、物流倉庫などを持つ大手民間企業のもうけのために無利子貸付制度を新設するものになりかねず、そのような大手企業への優遇策は認められないということを申し上げておきたいと思うんです。
さて、残された時間でありますけれども、先ほど来少し質疑を聞いておりまして、通告しておりませんけれども、大臣に幾つか、決裁文書の問題をお伺いしたいと思うんです。
決裁文書というものは、実は一体の文書でありまして、我々はその決裁文書をこの間追い求めてきましたから、どのようなものがあるかはよくよくわかっておるわけでありますが、先ほど来、大臣の御説明では、国土交通省が持っていた決裁文書は一部が欠落していたというふうに御答弁がありました。
なるほど、文面が違うということもおかしいわけでありますけれども、決裁文書の一部が欠落しているというのもおかしな話でありまして、大臣はこれをおかしいとはお感じになりませんでしたか。
○石井国務大臣 御通告がございませんでしたので、詳細は改めて航空局長がいる場でお答えをできればと思いますけれども、今回、近畿財務局から本省の航空局になされたものは、債権発生通知と呼ばれる会計手続上の通知でありまして、この通知に貸付決議書が添付をされていたものでありますが、その貸付決議書の書類の中で、財務省の方で決議書の添付書類の一部は添付をされていなかったということでありますけれども、その件については私はよく承知をしておりませんけれども、恐らくそれは財務省の方にお聞きいただければと思うのですが、この会計手続上必要な部分で送ってきたのかなとも想像しておりますが、詳しいことは承知をしておりません。
○宮本(岳)委員 通告なくお聞きしているのでそこは御容赦いただきたい。また追って、事務方がおられるときにもお伺いしたいと思うんですけれども、私たちお伺いしていますと、会計検査院に出ている文書も、財務省から出ているものと国土交通省から出ている決裁文書と、これは食い違っているということを会計検査院が認識されたということが検査院からの報告でされております。
私たち解せないのは、同じ決裁文書なのに二つ違うものがあるわけがないのであって、なぜそのときに会計検査院は大問題だと受けとめなかったのかというふうに思うわけでありますけれども、そもそも、違う決裁文書が国土交通省に渡っているということ自身が非常に解せない。もとのものだとすれば、欠落しているのがよく解せないということになるわけなんです。なぜかということは、また追って、事務方の方で調べていただいてお答えいただけたらいいと思います。
最後に一つだけ。それらの文書は、一体いつ大阪航空局は受け取ったと認識されておりますか。
○石井国務大臣 それは、債権発生通知をいつ受け取ったかということでございますか。
これについては、まず、貸付契約締結に伴う債権発生通知は平成二十七年六月九日付でございます。また、売買契約締結に伴う債権発生通知は平成二十八年六月二十日付でございます。
○宮本(岳)委員 その通知の日付はそういう日付だともちろんわかっているんですが、それを大阪航空局が近畿財務局から、つまり財務省からいつ受け取ったのかということについては、少し調べていただいて、後ほど私の方にお知らせいただければありがたいというふうに思っております。
きょうは通告しておりませんので、何もこれ以上、突然の質問をして大臣を困らせようというつもりは毛頭ございませんので、以上で私の質問を終わらせていただきます。
反対討論
○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表して、道路法等一部改正案に対し、反対の討論を行います。
第一は、重要物流道路の創設は、近年増加する四十フィート背高の国際海上コンテナ車を拠点的な空港、港湾から物流施設まで一気に通行できるよう高速道路並みに改築するとともに、特殊車両に義務づけられている道路の通行許可を不要とするものです。これは、物流の効率化を口実に、重要物流道路については国際海上コンテナ車を道路管理者による審査なく通行させる規制緩和策であり、国際海上コンテナ車が一旦重要物流道路に入れば、道路構造上安全ではない道路への通行を許しかねないものです。
さらに政府は、物流の生産性向上を掲げ、その具体化として総合物流施策大綱の推進プログラムを決定しています。そこでは、国際海上コンテナ車、四十フィート背高の特殊車両通行許可必要台数を二〇一六年度約三十万台から二〇二六年度おおむね半減などの目標だけでなく、三大都市圏環状道路整備率を二〇一六年度七四%から二〇二〇年度八〇%に引き上げるなどの目標も明記されています。これはまさに、大規模化する物流施設と空港、港湾などを結ぶ新規の高速道路建設を加速、推進するものであり、私の質問に対しても、本法案がそれを進めるものであることをはっきり認めました。
今必要なことは、新規の高速道路建設ではなく、老朽化した橋梁の修繕や通学路の歩道整備など、国民の命と安全にかかわる事業を最優先することです。
第二は、特定連絡道路への無利子貸付制度の新設は、民間企業が建設した大型商業施設や物流倉庫などに人と物の流れを誘導することを主眼としたものです。公共の道路を大企業のもうけのために利用促進させる優遇策は容認できません。
特定連絡道路は、民間企業の発意と負担で建設することとなっています。これは、これまで国や地方自治体の発意と負担で整備されてきた公共道路の建設を民間企業に委ねる新たな手法です。民間企業が発注者となれば、公共工事入札契約適正化法や情報公開法の適用を外れ、入札価格を始め工事にかかわる情報を非公開とするおそれがあり、認められません。
以上、反対討論を終わります。