出国税 観光立国に逆行 IRの財源か追及 宮本岳議員
衆院国土交通委員会は20日、日本から出国する際、1人当たり1000円を徴収する国際観光旅客税(出国税)の使途を定める国際観光振興法改定案を自民、公明、希望、維新の賛成多数で可決しました。日本共産党と立憲民主党は反対しました。
日本共産党の宮本岳志議員は、政府が訪日外国人旅客の受け入れ施設整備を口実に大規模開発を加速・推進しようとしていると指摘し、「住んでよし、訪れてよしの国づくり」を掲げた「観光立国推進基本法」の理念にも反すると批判。出国税の使途について、政府が観光政策の〝目玉〟とするカジノを含む統合型リゾート(IR)に使われることはないのか、とただしました。
田村明比古観光庁長官は、IRの制度は内閣官房で「設計中」だとして「現時点でお答えするのは困難」と明確に否定できませんでした。
宮本氏は、2016年の共同通信の世論調査で居住地域でのカジノ建設計画への反対が75%にのぼったことを紹介し、「地域住民が望まない施設だ。『住んでよし』の理念とはまったく相いれない」と批判。石井啓一国交相は「IRが整備されれば、魅力ある観光資源になる」と強弁しました。
宮本氏は「国民が余暇をとり、観光に出かけ、観光地で消費し、地域が活性化するような観光政策を進めるべきだ」と強調しました。(赤旗2018/3/22)
動画 https://www.youtube.com/watch?v=Y5tdZFzC2lo&index=66&list=PL3M7AtnZgh3UwBngS4JL1lVJplHH5b_A4&t=0s
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず、前回の質問の最後にお伺いした財務省の改ざん問題で、国土交通省には改ざん前のものがあったという二つの債権発生通知を国土交通省はいつ受け取ったか、その後調べていただいて、おわかりになりましたか、大臣。
○石井国務大臣 まず、貸付契約に伴う債権発生通知につきましては、平成二十七年六月九日から六月二十三日の間に本省航空局において受領していると考えられます。
また、売買契約に伴う債権発生通知につきましては、平成二十八年の六月の二十日に本省航空局において受領していると考えられているところでございます。
○宮本(岳)委員 お調べをいただきまして、ありがとうございました。
これらの問題は引き続きお伺いをしていきたいと思っておりますが、きょうは法案について質疑を行いたいと思います。
我が党は、日本の文化や歴史などの魅力が広がり、訪日外国人がふえることは歓迎すべきであり、訪日客が何度でも訪れてみたいと思うような日本の魅力を広げる取組を進めることは、もちろん必要なことであると考えております。
前回の本委員会で石井大臣は、趣旨説明において、「観光は我が国の成長戦略と地方創生の大きな柱」、こう述べられました。その目的の背景には、安倍政権の成長戦略や、二〇一六年三月三十日閣議決定の明日の日本を支える観光ビジョンなど、政府が進めてきた観光政策の数値目標の達成があるとこう思いますけれども、これは間違いないですね。
○田村政府参考人 今回の改正法案でございますけれども、改正前の国際観光振興法、今から二十年前、インバウンドが現在ほど盛んでなくて、旅行費用の低廉化等が課題となっていることを背景に制定されたものでございます。
現在では、国際観光をめぐる状況というのは大きく変化をいたしまして、本格的な少子高齢化、人口減少を迎える中で、外国人観光旅客の来訪の促進というのが、我が国に対する理解の増進はもとより、我が国の成長戦略と地方創生の大きな柱となってきております。
このため、平成二十八年三月に策定いたしました明日の日本を支える観光ビジョンにおきまして、この二〇二〇年訪日外国人旅行者数四千万人等の大きな目標を掲げまして、観光先進国の実現に向けた観光基盤の拡充強化を図るため、政府一丸となって取り組むこととされております。
こうした背景を踏まえまして、今般、外国人観光旅客の来訪を促進するための措置及び国際観光施策の財源に関する措置を講ずることによりまして、もって我が国の観光関連産業の国際競争力の強化及び地域経済の活性化等の向上を目的として、国際観光振興法の改正法案を提出させていただいているところでございます。
○宮本(岳)委員 長々と答弁していただきましたが、つまり、観光ビジョン、こういうものの数値目標、これもそこに含まれると。当然のことだと思うんです。
では、そもそも我が国の観光政策、政府観光政策の基本理念とはいかなるものかを議論したいと思うんです。
政府の観光政策の基本理念の前提として、観光立国推進基本法があるわけでありますけれども、この法律の基本理念について、第二条第一項と第二項には何と書いてあるか。観光庁長官、お述べいただけますか。
○田村政府参考人 観光立国推進基本法の第二条におきましては、観光立国の実現に関する施策の基本理念について規定しているところでございます。
このうち、第一項におきましては、いわゆる、住んでよし、訪れてよしの国づくりの認識の重要性というのが規定されておりまして、具体的には、「観光立国の実現に関する施策は、地域における創意工夫を生かした主体的な取組を尊重しつつ、地域の住民が誇りと愛着を持つことのできる活力に満ちた地域社会の持続可能な発展を通じて国内外からの観光旅行を促進することが、将来にわたる豊かな国民生活の実現のため特に重要であるという認識の下に講ぜられなければならない。」というふうに記載されているところでございます。
また、第二項におきましては、国民の観光旅行の促進の重要性というのが規定されておりまして、具体的には、「観光立国の実現に関する施策は、観光が健康的でゆとりのある生活を実現する上で果たす役割の重要性にかんがみ、国民の観光旅行の促進が図られるよう講ぜられなければならない。」というふうに規定されているところでございます。
○宮本(岳)委員 まさに、住んでよし、訪れてよしの国づくりの理念、そして、国民の観光旅行の促進ということが我が国の政策の根本なわけであります。
ところが、明日の日本を支える観光ビジョン、二ページ目には「「観光先進国」に向けて」というものがついておりますけれども、これも観光庁長官、上から十行目から後の三行、観光について何と述べてありますか。
○田村政府参考人 明日の日本を支える観光ビジョンの前文、「「観光先進国」に向けて」、今先生御指示のありました十行目からでございますけれども、「観光は、まさに「地方創生」への切り札、GDP六百兆円達成への成長戦略の柱。 国を挙げて、観光を我が国の基幹産業へと成長させ、「観光先進国」という新たな挑戦に踏み切る覚悟が必要である。」というふうに書いてあります。
○宮本(岳)委員 私は、ここには一つの大きな開きがあると思うんです。
地方創生への切り札と言いますけれども、私はこの観光ビジョンを読んでみて、後に続く「視点一 観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に」というところを読んで驚きました。国立公園に民活を導入することや、「「文化財」を、「保存優先」から観光客目線での「理解促進」、そして「活用」へ」などの表現、記述があったからであります。
今国会の総理の施政方針演説においても、安倍首相は、観光立国は地方創生の起爆剤だとして、文化財保護法を改正してまで文化財の活用促進や、美しい環境を守りつつと言いながらも、その反面、自然に恵まれた国立公園についても、民間投資を呼び込み、観光資源として生かします、こういう演説を行いました。
そこできょうは文化庁に来ていただいておりますけれども、ここで言われている文化財保護法の改正というものは、ここに言われる文化財の活用促進というものは、文化財の保存を二の次にするということでございますでしょうか。
○山崎政府参考人 お答え申し上げます。
文化財保護法では、文化財の保存と活用の両方が目的とされているところでございます。
このような文化財保護の意義と社会状況の変化を踏まえ、文化審議会において、将来にわたり文化財保護を確固なものとするとの観点から文化財保護制度について検討が行われ、昨年十二月に文化審議会の答申がまとめられたところでございます。
この答申を踏まえて、文化財の次世代への確実な継承のため、文化財保護法の改正法案を今国会に提出したところであります。
文化庁としましては、文化財を観光資源として活用するためにも、修理など文化財の保存もしっかりと行い、文化財の保存と活用の両面から適切に取り組んでまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 文化財の保存を二の次にするということでは決してないという答弁だったと思いますが、文化庁はそう答弁しておりますけれども、では、観光庁はどうなのか。
たくさん観光客を呼び込むことさえできれば、文化財や自然は破壊されてもよい、こうお考えですか。
○田村政府参考人 明日の日本を支える観光ビジョンにおきましては、「「文化財」を、「保存優先」から観光客目線での「理解促進」、そして「活用」へ」という文言が掲載されております。
これは、我が国の重要な観光資源である文化財が良好な状態で保存されているということを大前提として、文化財の価値を内外の観光客に理解してもらうことが重要であるとの認識のもと、適切でわかりやすい多言語解説の整備充実を推進するとともに、効果的な情報発信等を行い、文化財の観光資源としての魅力を最大限に開花させるという趣旨であるというふうに考えております。
このため、観光庁といたしましては、これまで、文化庁と連携しながら、英語解説の改善充実に当たってのガイドラインの策定等に取り組んできたところでございます。
また、今般の国際観光旅客税の税収を充てる施策の一つとして、平成三十年度予算におきましても、地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上に係る施策として、文化財等に関する多言語解説の整備に取り組むこととしております。
このように、明日の日本を支える観光ビジョンに基づき、文化財の保存と理解促進、活用を両立するべく取り組んでいるところでございまして、文化財が傷むこともいとわないというようなことは全くございません。
○宮本(岳)委員 最後のところだけでいいんですよ。
国は、本来、観光資源に利益優先の企業が参加して自然や文化財が壊されることに歯どめをかけ、守るべき立場でなければなりません。
私は、先日、私自身、籍を置いたことのある和歌山大学を訪ねました。この大学の観光学部は、国連世界観光機構から、世界の観光学教育、研究をリードする大学、研究機関が受けるTedQual認証を日本で初めて受けている大学であります。藤田武弘学部長も、日本の文化財など大切なものを守ってこそ真の観光振興になりますとおっしゃっておりました。大変重要だと思います。
今、文化庁と観光庁は、文化財や自然保護を二の次にするものではないと答弁をされました。その約束をくれぐれも忘れないで、しっかり守っていただきたいと思います。
さて、そういうもとで今政府の進めていることは何かと。
首相は施政方針演説で、IR推進法に基づき、世界じゅうから観光客を集める滞在型観光を推進してまいりますと述べました。そこで、複合観光施設、いわゆるカジノIRについて問いたいと思います。
本法案の新税の使い道からカジノIRは排除されておりますか、観光庁長官。
○田村政府参考人 お尋ねのIRにつきましては、現在、内閣官房におきまして具体的な制度設計に関する検討がなされておりまして、現時点ではその具体的な内容が明らかになっていないものと理解しておりますので、お尋ねの点につきまして現時点で確定的にお答えすることは困難であるというふうに考えております。
いずれにいたしましても、国際観光旅客税の使途につきましては、毎年度の予算編成の中で、受益と負担の関係や、先進性、費用対効果等の観点からしっかりと精査してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 端的に答えてくださいよ。
角度を変えて聞きましょう。法文上、本法案には、カジノIRには使えないという規定がございますか。
○田村政府参考人 使途につきましては、ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備、我が国の多様な魅力に関する情報入手の容易化、地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上、この三つの分野に充当するというふうに規定されているところでございます。
○宮本(岳)委員 ちゃんと聞いてくださいよ。これを排除する法文はないと思うんです。
この新税はMICEには使うんですね、観光庁長官。
○田村政府参考人 三十一年度以降の使途につきましては、基本方針に基づきまして、十分精査して決めてまいりたいというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 いや、MICEには使えるんですね。
○田村政府参考人 国際会議、あるいは展示会、こういうものの誘致というのは非常に観光の促進にも重要でありますので、はなから排除するものではないというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 きょうは内閣府のこのIRの担当の部局にも来ていただいております。
お伺いしますが、カジノIRにはMICEは必置ではありませんか。
○高橋政府参考人 お答えを申し上げます。
IR推進法を踏まえまして、IR推進会議の取りまとめにおきましては、委員御指摘のMICE施設につきまして、IR施設を構成すべき中核施設の一つとすべきとされておるところでございます。
○宮本(岳)委員 まさにIR推進法第二条により、MICEは必置なんです。中心的な施設として求められるわけです。
カジノIRにMICEは中心的施設として必置であり、そしてMICEには新税が投入できる、今そういう答弁でありました。それでどうして、カジノIRに使わない、こう言い切れるのか。これは言い切れませんね、観光庁長官。
○田村政府参考人 カジノIRという御質問、何を指すのかというのは必ずしも明らかでございませんけれども、今内閣官房で制度設計をしておりますのは、いわゆるIRでございます。
これにつきましては、現時点でその具体的な内容が明らかになっていないというふうに理解しておりますので、お尋ねの点について現時点で確定的にお答えすることはできないというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 カジノIRが何を意味するのかは、たった今内閣府がお答えになったとおりですよ。それは、これから計画ですから確定的にお答えできないのはわかっているんですが、排除されないことは少なくとも認めざるを得ないでしょう。いかがですか。
○田村政府参考人 繰り返しになって大変恐縮でございますけれども、現時点でその具体的な内容が明らかになっていないものと理解しておりますので、現時点で確定的にお答えすることは困難であるというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 よっぽどお答えしたくないほどカジノというのは、評判の悪い、そういうものに使われるというふうに言われると非常に困るようなものであるというようなことが何となく伝わってはまいりました。
共同通信、世論調査を紹介したい。二〇一六年十二月十七、十八日、カジノを中心とする統合型リゾート施設整備推進法の成立を踏まえ、カジノ解禁の賛否を尋ねた問いであります。
賛成が二四・六%、反対は六九・六%に上っておりますけれども、さらに、あなたの住んでいる地域につくる計画が持ち上がったらどう思うかとこう問いましたら、一般論以上に反対が高くなりまして、七五%が反対ということでありました。
地域住民にとったら、日本のどこかにつくる話には反対ではなくても、自分の住んでいるところにつくるのには反対というのは、やはり七割五分まで高いんです。地域住民が望まない施設であることは明らかだと。
観光立国推進基本法の住んでよしという理念とは残念ながら全く相入れないと私は思うんですが、これはひとつ大臣に御見解をお伺いしたい。
○石井国務大臣 統合型リゾート、IRは、カジノ施設のみならず、宿泊施設、会議場施設、展示施設、レクリエーション施設等が一体となった複合的な施設であるという特徴がございます。
このため、十分な国際競争力を有する施設を備えたIRが整備されれば、魅力ある新たな観光資源となるとともに、滞在型観光の拠点となり得るものと考えておりまして、さらには、新たなインバウンド需要の創出、MICE開催の誘致競争力の強化、全国各地への送客等が期待をされます。
また、IR推進法では、カジノを含むIRの整備の推進は、「地域の創意工夫及び民間の活力を生かした国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現し、地域経済の振興に寄与する」ということを基本といたしまして、「地方公共団体の申請に基づき」行うこととされております。
こういったことから、カジノを含むIRの整備の推進は、観光立国推進基本法第二条第一項の、「地域における創意工夫を生かした主体的な取組を尊重しつつ、地域の住民が誇りと愛着を持つことのできる活力に満ちた地域社会の持続可能な発展を通じて国内外からの観光旅行を促進する」とされた理念に沿うものでありまして、地域を含めた観光振興に寄与するものと考えております。
○宮本(岳)委員 随分、観光庁長官とトーンの違う御答弁でしたので、では大臣は、このMICEを含むカジノIRにこの観光税の税収を充てるということは、当然あってしかるべしとお考えですか。
○石井国務大臣 今、IRは、まだ世の中に認められている、存在しているものではありません。法案も提出をしておりません。それに充てるということは当然あり得ない、現状では、ないということであります。
○宮本(岳)委員 いや、不思議な答弁ですね。
そういうことであれば、先ほどのように、とうとうと結構なものだという答弁もまたしなければよいのに、結構だと御答弁になるから、使うことも結構だとお考えなのかと私は聞いたまででありまして、私は、この世論調査結果に明瞭なように、住んでいる方々にとったら反対が高い。これはもう動かざる事実だと言わざるを得ないと思います。
「ここからはじめる観光学」というこの本でありますけれども、以前、母校を訪問したときに購入したものであります。和歌山大学観光学部では教科書にも使われているということでありました。
「第十三章 観光と地域再生」という論考は大浦由美和歌山大学観光学部教授が書いておられますけれども、以下のようにこの中に書かれております。
「現在の「観光立国」政策のもとでの観光振興は、国際観光における競争力の強化を強調するあまりに、インバウンド増大や受入体制整備が政策的に偏重されている傾向にある。そのなかにはカジノを含むIR構想など、かつてのリゾート構想を想起させるような巨大プロジェクトが含まれていることにも注意する必要があるだろう。また、昨今の地方創生政策においても観光は重視されているが、事業の申請に際してあらかじめ「重要業績評価指標(KPI)」という数値目標の決定が義務づけられているため、交流人口の増加や観光消費額増加など、数値目標としやすい分野だけが強調されることも問題である。」中略でありまして、「個性的で魅力的な観光地域づくりと、その基盤となる農林漁業や地場産業などの地域産業の振興は、一体的に進められていくべきであろう。」
大浦教授が指摘するように、インバウンド増大や受入れ体制整備にのみ偏重するのではなく、日本国民が観光を楽しめるようにしなくてはならないことは当然だと思います。
そこで聞きますけれども、世界観光倫理憲章第七条一項には何と書かれているか。観光庁長官、お答えいただけますか。
○田村政府参考人 お尋ねの世界観光倫理憲章第七条でございます。第一項におきまして、「直接的に、個人的に、地球の魅力を発見し、楽しむという側面は、全世界の住民に平等に開かれている権利である。ますます広がる国内、国際観光への参加は、持続的に増大している自由時間の最も良い表れのひとつであると見做されるべきであり、この観光への参加に障害となるものは取り除かれるべきである。」というふうに規定されているところでございます。
○宮本(岳)委員 まさに全ての人に観光権を保障する、これが世界のいわば基準なわけです。
今、手元に資料を配付いたしました。二〇一〇年から二〇一七年までの訪日外国人旅行者数と日本人国内延べ旅行者数の推移であります。
訪日外国人旅行者は、これはもうウナギ登り、右肩上がりでありますけれども、国内旅行者は残念ながら伸びておりません。これはなぜですか、観光庁長官。
○田村政府参考人 背景にありますのは、本格的な人口減少時代を迎えた我が国におきまして、やはりインバウンドの場合には、急速な経済成長とともに中間層がどんどんとふえておりまして、この海外旅行の需要というものが急速に拡大をしている。
それを取り込んでいるからインバウンドというのはふえているわけでありますけれども、国内旅行の場合には、この本格的な人口減少時代を迎えた我が国において、なかなか現状のままでは大きく成長が期待できない状況にあるということでございます。
○宮本(岳)委員 それは人口減少だけでは理由は説明できないと思うんです。
先ほどの世界観光倫理憲章は、読んでいただいたところ、「観光への参加に障害となるものは取り除かれるべきである。」障害となっているものを取り除かなければならぬわけですよ。
それで、原因が知りたいと調べておりましたら、公益財団法人日本交通公社のデータがございました。二〇一七年、「旅行の阻害要因」というデータですが、この阻害要因の上位四つを御答弁いただきたい。
○田村政府参考人 財団法人日本交通公社が二〇一七年の六月に実施したJTBF旅行意識調査の調査結果におきまして、旅行の阻害要因として挙げられた要因のうち上位四つでございますけれども、「仕事などで休暇がとれなかった」、「家計の制約がある」、「何となく旅行しないままに過ぎた」及び「家族、友人等と休日が重ならなかった」というふうになっております。
○宮本(岳)委員 トップが「仕事などで休暇がとれなかったので」、二つ目が「家計の制約があるので」、そして、四つまでに入っていないですが、「介護しなければならない家族がいた」、これが阻害要因なんですよ。こういうものを解決することが、国内でも誰もが観光に親しめる権利、これを保障する道なんです。
石井大臣に最後にお伺いいたしますけれども、観光庁を所管する大臣として、インバウンド政策も大事ですけれども、国民が観光を楽しむ権利を行使できるように、労働時間の短縮、休暇の取得、所得の底上げ、これこそ省庁横断的に進めていかなければならない真の観光振興政策だと私は思いますが、いかがですか。
○石井国務大臣 旅行消費額全体から見ますと、依然として国内観光は約八割を占めておりまして、国内観光の振興を図ることは極めて重要と考えております。
平成二十九年におけます日本人の延べ旅行者数は前年度比で約一%の増加、国内旅行消費額は前年比で約〇・七%の増加となっておりますけれども、本格的な人口減少時代を迎えた我が国におきましては、現状のままでは大きな成長は期待ができないところでございます。
このため、明日の日本を支える観光ビジョンにおきましても、日本人が旅行しやすい環境をつくるため、休暇改革を施策の柱の一つとして掲げており、来年度から本格実施をいたします、大人と子供が一緒にまとまった休日を過ごす機会を創出するキッズウイークなどの取組をより一層推進をしてまいりたいと考えております。
また、この観光ビジョンに盛り込まれまして、現在政府一丸となって取り組んでおりますインバウンド観光促進のための施策の多くも、国内観光の振興に資するものと考えております。
引き続き、観光ビジョンの施策の推進によりまして、外国人のみならず、日本人にとりましても魅力ある観光地域づくりの推進や、観光サービスの改善等によりましてインバウンドの観光促進とあわせて国内観光のさらなる振興を図ってまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 観光政策を口実に観光を成長戦略の柱の一つに位置づけ、大企業の利益を最優先に、地域住民が迷惑や不安を感じ、住みづらくなるようなインバウンド偏重は、我々自身がつくった観光立国推進基本法の、住んでよし、訪れてよしの観光政策の理念とも無縁のものであります。観光振興を語るなら、国民が余暇をとり、観光に出かけ、観光地で消費し、その地域が活性化する政策こそとるべきだと思います。
政府や観光庁は観光立国推進基本法の理念に立ち返ることを強く求めて、私の質問を終わります。
反対討論
○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表して、外国人観光旅客の旅行の容易化等の促進による国際観光の振興に関する法律の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。
本法案は、国際観光旅客税、いわゆる出国税の使途に係る規定を整備するものであります。
そもそも出国税は、その政策決定プロセスに国民的合意がなく、政府税制調査会での審議もされないまま、拙速に提出されたものです。一旦財源の枠を決めてしまえば、政府の都合で使い道が広がり、予算の無駄遣いの温床になりかねません。
また、法案に規定する個別の施策について、必ずしも否定するものではありませんが、首都圏空港の国際線増便計画や民泊解禁などを始めとした、地域住民が迷惑や不安を感じ、住みづらくなるようなゆがんだ施策に予算を充てることは排除されておりません。
新設される協議会については、地域や住民の参加と合意形成の手続など、生活環境を守るための規定が不十分で、住民の意向が反映するかどうか明確ではありません。
政府が成長戦略の一環として推進する訪日外国人旅客受入れ施設整備等の政策は、二〇二〇年に四千万人など目標ありきで、規制緩和と大規模開発を加速、推進する口実にするものにほかなりません。観光地の住民が誇りと愛着を持つことのできる地域社会の持続可能な発展を前提にする、住んでよし、訪れてよしの観光まちづくりの理念に全く反するやり方です。
住んでよし、訪れてよしの理念に立ち返り、地域住民を置き去りにしない観光政策をとるべきことを重ねて強く主張し、討論といたします。