地方大を追い込むな 最先端研究競争を批判 宮本岳氏 衆院地方創生特
宮本岳志議員は20日の衆院地方創生特別委員会で、地方大学振興・若者雇用促進法案について、地方大学の振興には基盤的財政の抜本的拡充が欠かせないと主張しました。
同案は東京一極集中是正を理由に、自治体が地方大学振興と若者の雇用機会創出の計画を策定し、計画が国の認定を受けた自治体に交付金を交付するものです。
認定の基本指針は国が定め、先導的研究基盤・技術を活用した最先端研究には補助率を引き上げます。宮本氏は「政府の成長戦略に沿った最先端技術の開発を競わせるものだ」と批判しました。
梶山弘志地方創生相は「あくまで大学が自主的に判断するもの」と答弁。宮本氏は「大学は競争的資金獲得に追われる。実態はやらざるを得ない状況に追い込まれている。これを放置していいのか」と迫りました。
宮本氏は地方国立大学の危機的貧困の実態を示し、同法案は地方大学の財政的危機を解決するものではなく、地方大学を地方創生に貢献させるものだと指摘。梶山氏は大学への予算削減には触れず、「有識者会議で、地方大学は総花主義で特色がないと指摘を受けた。危機を脱するために、魅力ある大学にするため改革を進めていただく」と述べました。(赤旗2018/3/26)
動画 https://www.youtube.com/watch?v=JAQM10DxUIc&index=13&list=PL3M7AtnZgh3UwBngS4JL1lVJplHH5b_A4&t=0s
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、地方大学振興、若者雇用促進法案について質問をいたします。
大臣は、趣旨説明で、まち・ひと・しごと創生総合戦略の中間年に当たり、掲げられた基本目標や施策の重要業績評価指標の進捗状況を点検したところ、依然として東京圏一極集中が是正されていない、そのため、ライフステージに応じた政策メニューの充実強化に取り組むために本法案を提案した、こう述べられました。
この大臣の説明では、財政的に深刻な地方大学の現状を解決するために提案されているということではなくて、あたかも、まさに政府の地方創生の施策がうまくいっていないから、地方大学を地方創生に貢献させようとしているように聞こえるわけですね。大臣、そうじゃないんですか。
○梶山国務大臣 地方にいろいろ大学がありますけれども、その大学も地方の資源の一つとしてどう地方創生に活用をしていくかということも一つ意味があると思っております。
地方の産業がある、それに関連する学部、学科があるところもある。また、新たにそういう取組をしようとする大学が出てくれば、そのことによって地域の産業にプラスになり、また新たな展開が見られるかもしれない、また新たな雇用ができるかもしれないという思いでこの法案を出させていただいているところでもあります。
○宮本(岳)委員 今、地方大学の現状は本当に深刻なんです。
ことし二月十日付の週刊東洋経済、地方国立大学の悲惨な実情を特集して、表紙にはこのように、「大学が壊れる」と極めてセンセーショナルな言葉が躍っております。
ここでは、いびつな大学改革と競争制度で地方国立大学の危機的貧困が進んでいるということを研究者たちが生々しく語っております。
生化学が専門の田中智之岡山大学教授は、僕らぐらいの陣容の研究室だったら、最低限の実験機材、試薬代などで年間五百万円はないと回らへんと言いつつ、大学から定期支給される研究費はたかだか年五十万円、四百五十万円足りないと語っております。
遺伝子組み換え植物を研究する静岡大学の本橋令子教授は、私は毎週末、外部資金の申請書を書いている、二十回出して当たるのは三つぐらいと語っております。
十年ほど前、研究室のエアコン類に料金メーターを取り付けられた、運営費交付金が削減されて懐事情が厳しくなった大学本部から、各研究室の電気代はおのおの半額負担してほしいとの通達が来たそうであります。閉鎖系の植物室を保有する本橋教授の研究室にとってこれは死活問題で、温度を一定に保って栽培する必要があるために電気代負担は重く、年約百八十万円かかっているそうであります。
教員一人につき年五十万円近く定期配分されていた個人研究費も四十万円に引き下げられ、二〇一七年度から三十万円になった。電気代にすら到底届かなくなった研究資金不足を補うために、外部資金の獲得に血眼になっている、そういう本当に赤裸々な実態があります。研究に回せていたはずの時間を使って一体私は何をやっているのかとふと思うときがある、こう語っておられます。
きょうは文科省に来ていただいておりますが、このような地方大学の悲惨な状況を認識しておりますか。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
地方創生の実現には地方国立大学の役割は極めて重要であり、文部科学省としても、地域で活躍する人材の育成など、地方大学の活性化に向けた支援を行うことは重要と考えております。
しかしながら、委員がただいま引用された雑誌の中でも、文科省自身が行ったアンケート調査で、国立大学の個人研究費が十年前と比べて減ったと答えた者の割合が六割近くにも上がっていたり、あるいは、研究に割ける時間が、従前と比べてその割合が低下しているといったデータも示されているところではございまして、私どもとして、地方国立大学を含めた国立大学への支援の充実が必要と考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 地方国立大学の困難でいえば、基盤的経費である国立大学運営費交付金が年々減らされてきたことが最大の要因である、これはもう誰もが否定できない厳然たる事実だと思います。
文科省に聞きますけれども、今参議院で審議中の来年度予算で、国立大学法人運営費交付金と私立大学等経常費補助金について、それぞれ概算要求額と予算額を示していただけますか。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
国立大学法人運営費交付金等につきましては、平成三十年度の概算要求において一兆一千四百九億円を要求し、現在御審議いただいている予算案においては一兆九百七十一億円を計上してございます。
また、私立大学等経常費補助につきましては、三十年度の概算要求において三千二百八十三億円を要求し、現在の提出させていただいている予算案におきましては三千百五十四億円をそれぞれ計上させていただいているところでございます。
以上です。
○宮本(岳)委員 国立大学法人の運営費交付金で四百三十八億円、概算要求よりも減らされ、私学の補助金は百二十九億円、概算要求よりも減らされているわけですね。
そもそも、概算要求というものは、文部科学省として、今の大学の現状に照らしてどうしても必要だからこそ要求しておられるんだと思うんですよ。念のために聞くんですけれども、文部科学省が概算要求において不必要なものやぜいたくなものまで入れたような要求を行ったことがございますか。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
文部科学省としましては、国立大学の運営費交付金につきましても私学の補助金につきましても、それぞれ必要というものにつきまして概算要求をさせていただいたということでございます。
○宮本(岳)委員 当然のことでありまして、必要ないものまで要求するはずがないんです。だから、財務省との折衝で、大学の基盤的予算は、先ほども申し上げたように、国立、私立合わせれば五百六十七億円も削減された、必要な額からは減らされた、予算においても。
今日の地方大学の危機が運営費交付金等の基盤的経費の削減、私学助成の圧縮によってもたらされているというこの現状については、文部科学省も共有していただけますね。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
国立大学法人運営費交付金は、法人化以降、千四百四十五億円減額されてきたところであり、私立大学等経常費補助金についても、平成十八年度以降、減少ないし横ばい傾向にございます。
また、常勤の教職員人件費が圧迫され、特に若手教員の安定的なポストが減少するとともに、先ほども触れさせていただきましたが、文科省が実施した個人研究費等の実態に関するアンケートによれば、国立大学教員について、年間の個人研究費が五十万円未満の者が約六割という結果も出るなど、国立大学の教育研究基盤の強化が大きな課題となっております。
文科省としては、今後とも、各大学が継続的、安定的に教育研究活動を実施できるよう、運営費交付金等の基盤的経費の確保に努めてまいりたいと考えております。
以上です。
○宮本(岳)委員 きょうお配りした資料の一と二を見ていただきたい。
国立大学の運営費交付金は、二〇〇四年度の一兆二千四百十五億円から今日の一兆一千億円弱へ、一千四百億円以上も減らされてまいりました。私学の経常費補助金も、二〇〇六年度の三千三百十三億円から今日の三千百五十四億円へ、百八十億円も減らされております。昨年度に比べて今年度の運営費交付金、前年度同額確保ということでありますけれども、これは、先ほど紹介したような大学が壊れるような事態が、ことしもその程度の額は確保したというにすぎないわけであって、必要額だとは到底言えないと思うんですね。
そこで、地方創生担当大臣に伺いたいんです。本法案は、このような地方大学の財政的危機を解決するものになるんでしょうか。
○梶山国務大臣 地方大学の課題に関しましては、私のもとで開催してきた地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議の最終報告において、地方大学は、総花主義、平均点主義のため、特色が見えないと言われている場合が少なくないという指摘がされたところであります。
地方大学を魅力化するためには、そこから脱却して、強みのある分野の強化に取り組むなど、特色のある地方大学づくりを進めることが重要であり、それによって地方への新しい人の流れをつくることになります。
本法案では、産官学連携により、地域の中核的産業の振興や専門的人材育成などを行うすぐれた取組を新たな交付金等により重点的に支援をし、特色ある大学組織改革の実施などを進めていくということで、最初に、大学が瀕死の状況にあるのを戻せるかということになると、これらの取組を通じて活力を得ていくということになろうかと思います。地域の活力も含めてということであります。
○宮本(岳)委員 いや、それはならぬと思うんですね。この十年余りで千四百億円も減らされてきた運営費交付金。必要だとして要求した額から、国立、私立合わせて五百六十七億円も減らされた大学に、わずか百億円の地方大学・地域産業創生事業をやったからといって、救われるはずがないと言わなければなりません。
では、具体的にお聞きしたい。
資料三を見ていただきたい。これは政府の説明の資料であります。
この法案では、国が策定する基本方針を踏まえ、首長主宰のコンソーシアムを構築し、地域の産業振興、専門人材育成の計画を策定いたします。この計画に位置づけられた自治体や地方大学の事業のうち、国の有識者委員会の審査を経てすぐれた事業として認定を受ければ、原則五年間、新たな交付金を受けられるという制度であります。
そこで、これは事務方でいいんですが聞きますけれども、事業イメージにある首長主宰のコンソーシアムというものは、法案第十条にある、地域における大学振興・若者雇用創出推進会議のことですか。
○末宗政府参考人 お答えします。
御指摘のとおりでございます。
○宮本(岳)委員 先ほど、わずか百億円の交付金では救われようがないと指摘をいたしましたが、この百億円のお金は全て地方大学に交付されるのですか。
○末宗政府参考人 お答えいたします。
この交付金につきましては、百億円のうち七十五億円が内閣府計上分でございますけれども、内閣府計上分につきましては、委員の資料の左下にございますように、国から地方公共団体に交付されることになります。ただ、コンソーシアムを組んで共同研究などをすることになりますと、地方公共団体から大学の方にも交付金が行くということになろうかと思います。
○宮本(岳)委員 つまりは、この百億円は全て大学に行くわけではありません。
もう一枚めくっていただいて、資料四をごらんいただきたい。これは、対象経費と補助率を示した、これも政府提出の図表であります。
(一)で示された地方大学・地域産業創生交付金、一件当たり国費上限目安額二億円というものは、基盤構築分、すなわち計画策定経費やコンソーシアム運営経費等に補助されるわけでありますけれども、これらは自治体に対する補助であります。下の4と5が大学に対する交付金ということになるわけでありますけれども、これらを受けようと思えば、魅力ある大学組織改革とか先導的研究基盤というような一定の方向に誘導されざるを得なくなります。
既に現在、大学間でコンソーシアムというものには取り組まれております。これは複数の大学が自主的に参加して連携するものでありますけれども、本法案の推進会議は、自治体が計画を作成し、資金を提供するというものでありまして、大学はその下請機関にならざるを得ないと思うんです。現在のコンソーシアムとは似て非なるものであることは明らかだと思うんです。
大臣、これは大学の自治や学問の自由を侵しかねない、政策誘導になりかねないと思うんですが、いかがですか。
○梶山国務大臣 この交付金制度に大学が参画するかどうかというのは、大学が主体的に判断をすることであります。
知事等が地方大学に対して改革を主導するものではなくて、むしろ、その取組に対して、地方大学がみずからその強みや特色を伸ばすために主体的に改革を行う地域を支援するものでありまして、大学の自主性、自律性の侵害という指摘は当たらないと思っております。
○宮本(岳)委員 いや、それは、入るときには、参加するときには自主的に参加するんでしょうが、一たび参加してしまえば、自治体の掲げる事業計画に基づいて進めなければならなくなるんです。しかも、その中身というのは、この間国が進めてきた大学改革の方向に誘導されるのは火を見るより明らかだということを指摘したいと思います。
もう一度、今の資料四に戻ってください。
(二)の地方創生推進交付金活用分、一件当たり国費標準額五億円の方では、1の産官学連携事業は補助率二分の一でありますけれども、2の大学組織改革による質の高い教育の提供、リスクの高い先端研究では補助率三分の二、3の先導的研究基盤、技術を活用した最先端研究等では補助率四分の三と大きく傾斜がつけられております。
これは事務方でいいですけれども、これは一体なぜですか。
○末宗政府参考人 お答えいたします。
今回の交付金につきましては、昨年、大臣のもとで有識者会議でさまざまな議論をいたしまして、産官学連携でこういったハイリスクの先端研究も実施していく、その際に、地方公共団体の方から、二分の一ではなくて、より高率な支援制度も設けてほしい、そういうような強い御要望もございましたので、本来ですと地方創生推進交付金は原則二分の一でございますが、ここにもございますように、1は二分の一にしておりますけれども、よりレベルの高いもの、ここにおいては地方の御要望も踏まえて率を高くしたというところでございます。
なお、先ほど私の答弁の中で、内閣府分七十五億と申し上げましたのは七十億でございましたので、訂正をさせていただきます。
○宮本(岳)委員 いやいや、レベルの高いもの、こういうふうにおっしゃって、補助率を上げているわけですね。それが、私が言うように、大学を政策的に誘導することになりかねないと私は指摘をしたいと思うんです。
例えば、この一番補助率の高い先導的研究基盤というものですけれども、どのようなものか。共用可能な大容量情報ネットワークや大型研究施設、共用プラットホーム等、こうなっておりまして、その中身ですけれども、学術情報ネットワーク、SINET、大型放射光施設、SPring8、エックス線自由電子レーザー施設、SACLA、革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ、HPCI、大強度陽子加速器施設、J―PARC、ナノテクノロジープラットフォーム等というものが例示されております。地方大学の振興と若者の雇用機会の創出などというけれども、この実態は、交付金に傾斜をかけて、政府の成長戦略に沿った最先端技術の開発を競わせようというものにほかならないと思うんですね。
この対象経費でありますけれども、(一)の4や(二)の2は、これは大学改革関係に限定された対象経費となると思うんですけれども、にもかかわらず、これを地方自治体に交付する仕組みにしているのは、これはなぜなんですか、内閣府。
○松尾政府参考人 お答えいたします。
この新たな交付金でございますけれども、これはあくまでも、地方における新たな産業の創出でありますとかそれに対応する人材の養成、これについての計画を、自治体が主体となって、これは当然、大学の自主的な判断などで入ってもらいながら、自主的な計画をつくってもらう、そういうものでございます。したがいまして、この交付金の対象経費でございますが、委員御指摘のような形で、さまざまなレベルの交付対象、それと交付率を定めているものでございます。
こういった中で、例えば地方の大学が改革をするといったときに、基盤的経費だけではできないような、そういったみずからのリソースだけでは進められないような思い切った改革もする、そういったことで、こういった経費も含めているところでございます。
したがいまして、外からの予算と大学みずからの改革とうまくマッチングさせるということ、そしてまた、大学から見れば、みずからの基盤的経費だけではできない思い切った改革をしていただくこと、地方から見れば、その振興と人材育成、そういったものを合わせわざで行う、そういった経費でございます。
○宮本(岳)委員 二言目には自主的な判断でと言うんですけれども、今、全国の大学は、大学が壊れるというような財政的な深刻な困難にあるわけですよ。文部科学省も認めましたよね。そういう状況のもとで、これに加われば、百億円というお金があって、交付されますよ。ただし、自治体が、首長が主宰して、こういう形でやります、それにちゃんと乗っかってくれれば、こういうことがぶら下げられているわけですよ。
それは、自主的な判断といったって、そんなもの、とれるものならば、もらえるものならば加わっていくという方向に行くのは当然であって、だって、先生方は、毎週末になったら書類を書いて、いかに競争的経費をとってくるか必死になっているんですから、このお金だって、当然、とってこようということになるわけですよ。
だから、入り口が自主的だといったって、実態は、それはやらざるを得ない状況に追い込まれていっている、そういう状況を放置していると言わざるを得ないと思うんですね。
そこで、文部科学省に改めてもう一度聞きたいと思うんです。
この事業の百億円には、先ほどお話があった内閣府のお金とともに、文部科学省計上分の二十五億円という予算も含まれております。この文部科学省計上分という予算は一体どこから持ってくるんですか。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
地方大学・地域産業創生事業につきましては、内閣府交付金分の七十億円のほか、当該交付金の対象となる大学においては、国立大学の運営費交付金及び私立大学等改革総合支援事業のうち二十五億円分を文部科学省において計上をしているところでございます。
○宮本(岳)委員 つまり、国立大学運営費交付金と私学助成のお金で二十五億円、これに充てるということですね。
それで、文科省に聞くんですけれども、先ほどの、来年度予算ではふえずに、前年度同額の一兆九百七十一億円、運営費交付金、答弁があったわけでありますけれども、この額の外で新たに二十五億円の予算措置が講じられるということになりますか。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
地方大学・地域産業創生事業における文部科学省計上分の二十五億円については、既存の国立大学運営費交付金及び私立大学等改革総合支援事業に含んで計上しているものでございます。
○宮本(岳)委員 ふえるわけじゃないんですね、今答弁があったとおり。それどころか、国立大学運営費交付金が前年度比同額にとどまるもとで、むしろ、これに認定されましたら、国から配賦された既存の運営費交付金も先導的研究基盤、技術の活用や大学改革の推進に振り向けざるを得なくなるわけですよ、これにおつき合いをして。交付金が仮に同額ならば、自由に使える基盤的経費はむしろ減ってしまうということになります。このようなものが地方大学の振興に役立つわけがないではありませんか。
先日、私は久しぶりに母校和歌山大学を訪ねました。副学長以下大学の関係者からも話を聞かせていただきました。
もちろん、地域連携は大切だと認識しておられました。地域経済や地場産業の振興、中小企業の技術力向上のための取組を、既に地域の産業界や自治体と連携しながら進めてきておられます。
しかし一方で、そこに割く人、金がままならない、競争的資金を得るため、申請書書きやKPIに追われている、そういう実情も率直に出されました。長期的な資金獲得の見込みがないために、プロジェクトごとの短期雇用にならざるを得ず、若い研究者がじっくり研究できる処遇にない等々、極めて深刻な状況であります。
最後に、文部科学省に確認したいんですけれども、地方国立大学の持つ役割は、その地方の学術の中心であって、我が国の知的基盤として、社会の知的、文化的な発展、国民生活の質の向上や地域経済に大きな役割を果たすものだと思います。それは決して地方自治体の下請機関といったものではないはずでありますけれども、改めて、地方国立大学の役割を、文科省、述べていただきたいと思います。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
国立大学は高等教育の発展のために大きな役割を担っており、その中でも、全国に設置されております地方国立大学は、教育の機会均等や、あるいは、地域と連携しながら、地域課題の解決も含めて、人材育成や地域における学術振興のために大きな役割を担っているものであり、大変重要な役割を果たしている主体と考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 大学の役割について、京都大学の山極寿一学長は、読売の「異見交論」で、ずばり国立大学とは何かと問われて、以下のように述べております。
国立大学は公共財という考え。国民の税金でつくっていただいたもので、国民の税金で運営させていただいたものだ。だから、大学の知は、一私企業に利用されてはいけない。国民全体の資産にならなければならない。今のやり方は、組織と組織を競争させているが、それは間違い。大学同士は、戦うのではなく、むしろ連携しなくてはいけない。
地方大学の振興を考えるに当たり、実に示唆に富む発言をされております。
質疑で明らかなように、本法案は地方大学を、内閣総理大臣が定めた基本指針に沿う地方創生の下請機関として競わせるものにほかなりません。
大学は、学術の中心であり、学問の自由が保障されてこそ、多彩な学問研究が進むものであります。地方大学の振興というのであれば、基盤的経費の削減をやめて、その役割にふさわしく予算を拡充することを強く求めて、私の質問を終わります。