日本共産党議員の国会質問 住民置き去り再開発 宮本岳氏、特措法の問題指摘
宮本岳志議員は6日の衆院国土交通委員会で、人口減少社会などへの対応を盛り込んだ都市再生特措法改定案が大規模開発に利用されかねない点などを指摘して反対しました。
宮本氏は都市再生特措法が2002年の制定以来、16年で9回も改定されてきたにもかかわらず、「都市再生」という目的をいまだ達成できていないことを指摘。さらに、国立社会保障・人口問題研究所が公表している将来推計人口で示された人口減少予測の回避を政府が目指す一方、自治体には同予測を使った将来展望を求めるなど矛盾があることをただしました。国交省の栗田卓也都市局長は「(自治体には)厳しい現実論に立って地域の将来像を展望してもらうことが重要」としか答えられませんでした。
また、宮本氏は神戸市では、特措法に盛り込まれた「立地適正化計画」を使って、住民を置き去りにした三宮駅前の再開発が進められていることを示し、「(まちづくりは)議会や市民の意見を聞き、住民合意で進めるべきだ」とただしました。石井啓一国交相は「立地適正化計画は、それぞれの地元のみなさんの意見を聞いて適切につくってもらいたい」と答えました。
(赤旗2018/4/13)
動画 https://youtu.be/O1kqmH1_3q0
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
都市再生特別措置法は二〇〇二年に制定されましたが、特別措置法という名前がついておりますように、時限立法であります。
第一条にある、「近年における急速な情報化、国際化、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に我が国の都市が十分対応できたものとなっていない」という現状をどうにかしようというものであります。
都市局長に聞きますけれども、その目的は達成しましたか。
○栗田政府参考人 この法案では、法律の目的としまして、都市機能の高度化、都市の居住環境の向上、こういったことを掲げております。
これに関しましては、これまで累計千四十八市町村で、また、その中の二千八百八十地区におきまして、都市再生整備計画に基づく交付金の活用により、地域住民の生活の質の向上と地域経済、社会の活性化を図るための取組が行われてまいりました。
また、優良な民間都市開発事業につきまして百十三計画を認定し、その結果、良好な都市環境の確保が期待される、広場や緑地を始めとする公共施設の整備を伴った事業が行われてまいりました。
また、防災機能の確保につきましても努力してきておりますが、都市再生制度につきましては、その効果が着実に出てきているとは思いますが、既に目的が達成されたとまでは言えず、今後とも、時代のニーズに合わせた取組を進める必要があると考えております。
○宮本(岳)委員 達すれば特別措置は必要なくなるんですから、達していないから今回も改正するわけです。
法律ができて十六年たつんです。今回の改正で何回目の改正になりますか。
○栗田政府参考人 制定以来、九回目の改正になると思います。形式的な改正は除いております。
○宮本(岳)委員 二〇〇四年、五年、七年、九年、一一年、一二年、一四年、一六年、そしてことし一八年と、改正が繰り返されてまいりました。
次々と改正して新制度をつくっても、使われていない制度も多いという答弁もありました。また、なくてもやっているところがあるという答弁もありました。
大臣、これほど頻繁に改正しなければならないのは、よっぽどできの悪い法律だったということではないですか。
○石井国務大臣 できがいいからこそ、次々と改正をして中身をブラッシュアップしているんだと思います。
○宮本(岳)委員 では、本当にそうか、議論してみたいと思うんです。
あなた方は、都市のスポンジ化がコンパクト・プラス・ネットワークの推進に重大な障害になるとして今回の改正案を出してまいりました。
しかし、その制度は、人口減少社会では開発意欲が低減し、望ましい土地利用がされないという強烈な危機意識であります。
国土交通省の都市計画運用指針においては、自治体が立地適正化計画を検討するに当たっては、おおむね二十年後の都市の姿を展望することとあわせて、その先の将来も考慮せよとしております。
これは間違いないですね。
○栗田政府参考人 立地適正化計画の作成については、国としての一定の考え方を運用指針として示しております。
この中で、立地適正化計画の検討に当たっては、「一つの将来像として、おおむね二十年後の都市の姿を展望することが考えられる」としているところです。
○宮本(岳)委員 二十年、さらにはその先の将来を展望して決める、こう自治体に向かって言っているわけですけれども、あなた方自身が、この法律をつくってわずか十六年の間に九回改正してきているわけです。まだそれで都市再生というこの目的を達成することさえできていない。先ほど来聞いていると、使われていない制度も多い、また、なくてもやっていることもある、こういうことであります。
大臣、自分たちもできないような二十年先のことを自治体に決めろというのは、これは無理難題じゃないんですか。
○石井国務大臣 法律の改正は、その都度さまざまなニーズが寄せられて、それに応える形で改正をしてきているわけでございます。
自治体に対しては、やはり都市の姿というのは、ある程度やはり中長期的な将来像を見据えた上でつくっていくというのが私は当然のあり方ではないかというふうに思っています。
○宮本(岳)委員 では聞きましょう。
この二十年先の人口等の将来の見通しということについて、第八版都市計画運用指針では何と書いてありますか。三十七ページの「留意すべき事項」の四行目から七行目まで、局長、読んでいただけますか。
○栗田政府参考人 当該部分、「なお、」のところ以降を読ませていただきますと、「人口等の将来の見通しは、立地適正化計画の内容に大きな影響を及ぼすことから、国立社会保障・人口問題研究所が公表をしている将来推計人口の値を採用すべきであり、仮に市町村が独自の推計を行うとしても国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口の値を参酌すべきである。」当該箇所かと思います。
○宮本(岳)委員 要するに、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口の値を使え、こう言っているわけです。
私は地方創生特別委員会の委員ですから、まさにこの人口減少問題の解決に取り組んでまいりました。
きょうは、まち・ひと・しごと創生本部に来ていただいております。
まち・ひと・しごと創生法第一条の目的には、「我が国における急速な少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかける」ということが掲げられております。
この法の目的と取組は、この社人研の日本の将来推計人口が予測する結果を回避するために取り組んでいると私は理解しておりますが、まち・ひと・しごと創生本部、間違いないですか。
○服部政府参考人 お答えさせていただきます。
仮に近年の低い出生率が続いた場合、今後、日本の人口減少は急速に進むことから、将来人口の推計について分析を行い、平成二十六年十二月二十七日に、まち・ひと・しごと創生長期ビジョンを閣議決定したところでございます。
この長期ビジョンでは、合計特殊出生率が、二〇三〇年に、若い世代の結婚、出産に関する希望がかなった場合に見込まれる一・八程度となり、そして、二〇四〇年に二・〇七程度まで上昇すると、長期的には人口減少や高齢化を相当程度緩和することができる見通しとしております。
こうした見通しも踏まえ、引き続き、平成二十九年十二月二十二日に閣議決定しましたまち・ひと・しごと創生総合戦略に基づき、人口問題克服に向けた施策への取組を進めてまいっているところでございます。
○宮本(岳)委員 重ねて聞きますが、では、まち・ひと・しごと創生本部のその取組というものは、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口、これが予測する結果を回避するために行われているんじゃないんですか。
○川合政府参考人 お答え申し上げます。
まち・ひと・しごと創生法第一条におきまして、「我が国における急速な少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくために」「まち・ひと・しごと創生に関する施策を総合的かつ計画的に実施することを目的とする。」とされておるところでございまして、この法律に基づきます総合戦略におきましても、「地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする」、「地方への新しいひとの流れをつくる」、「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」、「時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する」という四つの基本目標を掲げて、達成に向けて取組を推進しているところでございます。
○宮本(岳)委員 いや、まともに答えないですね。この社会保障・人口問題研究所が発表する日本の将来推計人口では、今世紀半ばには人口が一億人を下回ると予測されておりますが、あなた方の取組は一億人を下回るんですか。
○服部政府参考人 お答えさせていただきます。
先ほど、合計特殊出生率につきまして、二〇三〇年に一・八程度、そして二〇四〇年に二・〇七程度まで上昇するということについて申し上げましたが、その場合、二〇六〇年には総人口一億人程度を確保し、二〇九〇年ごろには人口が定常状態になると見込まれる、こういうことを盛り込んでいるものでございます。
○宮本(岳)委員 それを答えればいいんですよ。社人研の予測どおりにならないように頑張っているんじゃないですか。そのままいくんだったら何の努力も必要ないじゃないですか。
大臣、この社人研のこの予測結果どおりになったら、「地方消滅」という増田レポートのような事態になる、えらいことだ、この予測どおりにならないように内閣を挙げて取り組もうとしているときに、国土交通省は、社人研の予測結果の値を使え、幾ら地方創生の取組をやっても社人研の予測どおりになるんだ、こう言っているに等しいわけです。
大臣、国土交通省は、まち・ひと・しごと創生本部は無力である、梶山地方創生担当大臣は無能であると言っているように聞こえるんですが、違いますか。
○栗田政府参考人 地方創生の努力をもろもろ行い、人口の拡大を図っていくということは大変大事なことだと思っておりますけれども、将来の人口推計は、立地適正化計画の内容に大変大きな影響を及ぼしますので、客観的かつ科学的な推計に基づいて行われることが必要と考えております。
これまでの地方のもろもろの計画の作成の実態については、ともすれば楽観的な期待に基づいて、実際には困難な人口増大を前提としているなどの問題も指摘されてまいりました。政策努力によって合計の特殊出生率が上昇する場合には人口減少の影響は長期的には緩和されるということにはなりますけれども、社人研の推計を少なくとも参酌していただくということは、厳しい現実論に立って、そういう視点から地域の将来像を検討いただく、そういうことが重要ではないかというような考え方によっているものでございます。
したがって、地方が独自の推計を行うということを否定しているわけでもありませんで、その場合には、「参酌すべきである」というように運用指針の中に定めておるということでございます。
○宮本(岳)委員 いやいや、参酌とも書いていますが、値を使えと書いているじゃないですか。そうおっしゃるんだったら、そういう決めつけのような表現を改めていただきたい。
事ほどさようにこの地方創生という取組は、私は、そもそもがいいかげんだと言わなければならぬと思っております。しかも、その中に、大規模開発に利用されかねないようなスキームまで潜り込ませているという問題があります。
今、神戸では、都市再生特別措置法の立地適正化計画のスキームを使って、神戸三宮の駅前に巨大なバスターミナルや市役所を集中する神戸三宮「えきまち空間」基本計画や、新たな中・長距離バスターミナルの整備に向けた雲井通五・六丁目再整備基本計画というようなものが動き始めております。
まず事実を確認したいんですが、この法律の立地適正化計画には、こういった大規模開発を盛り込むことも、都市局長、可能ですね。
○栗田政府参考人 立地適正化計画には、その区域等のほか、都市機能誘導区域における誘導施設の整備に関する事業や、それと一体となってその効果を増大させるために必要な事業等について記載するものとされています。
一般論として申し上げれば、御指摘のような駅前の再開発事業が、立地適正化計画に定める誘導施設の整備に関するものである場合や、それと一体となって効果を増大させるために必要なものである場合には、立地適正化計画に記載することができることとなります。
○宮本(岳)委員 結局使えると。ただ、現場で結局行われていることというのは、住民を置き去りにしたままの拙速な大規模開発であります。
配付資料を見ていただきたい。神戸市議会未来都市創造に関する特別委員会の議事録であります。
三宮の再整備は、今の市長になってからトップダウンでやられている。何でこんな絵が出てくるんですかと聞いても、当局も答えられない。一体全体市長は何をここでやろうとしていて、誰の言うことを聞いてやってんねんと、市議から厳しい指摘が出ております。これは議事録、公開されているものであります。
大臣、この御発言をされている議員はどこの党の議員か御存じですか。
○石井国務大臣 先ほど資料を拝見しまして、承知をしておりません。
○宮本(岳)委員 吉田謙治元議長、公明党の市議団長であります。
都市局長に確認しますけれども、この立地適正化計画の作成に当たって、国土交通省は決して大規模開発を推奨しているというわけではありませんね。また、計画はあくまで自治体が任意に作成するものであって、変更することもまた可能ですね。
○栗田政府参考人 立地適正化計画の具体的な記載内容は、その都市の即地的な状況を勘案して、作成主体たる市町村において判断されるものであります。また、市町村の判断により計画内容を変更することは可能であります。
○宮本(岳)委員 最後に大臣にもお伺いしたいんです。
この立地適正化計画というものが決して大規模な開発を上から奨励するものではないということ、拙速に事を進めるのではなく、よく議会や市民の意見を聞き、住民合意で進めるべきものであるということは当然のことだと思うんですけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○石井国務大臣 立地適正化計画につきましては、それぞれの自治体でよく地元の皆様の意見を伺って、適切につくっていただきたいというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 私どもは、この都市再生法というものはさまざまな問題点を持っていると。ただ、今回の改正について、もちろん評価できる面もあるというふうに考えております。
ただ、全体の枠組みとして、十六年間に九回の改正をしながら、結局使われていない制度も多い、また、なくてもやっていることがある。これでは真の都市再生を導くことにならない。こういう立場でこの法案には反対せざるを得ないということを申し上げて、私の質問を終わります。
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○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表して、都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。
本法案は、都市のスポンジ化対策や遊休空間の活用により、都市と地方の格差拡大や人口減少社会の是正を図ることを掲げています。確かに、住民参加でまちづくりのための創意工夫が行われ、市町村も積極的に関与する取組を後押しする側面もあります。
しかし、大都市圏では、二〇〇二年の都市再生特措法の施行以来、民間事業者による開発が政府のお墨つきを得て、住民参加もなく進められてきました。本法案は、そうした現状についての反省もなく、更に新たな開発手法を提供し、規制緩和と優遇策による再開発事業を促進することになりかねません。
低未利用土地権利設定等促進計画制度や立地誘導促進施設協定制度は、住民参加により地域の実情に即した運用をしない限り、大手不動産ディベロッパーなど民間事業者が進める大規模開発事業に新たな開発メニューを与えるものとなりかねません。
都市計画協力団体制度は、住民団体や商店街組合などが都市計画を提案できる住民参加の手法とされます。しかし、市町村が進める都市計画に協力しない団体には指定の取消しができます。事業者が住民に対し開発への協力を促すことに公的位置づけを与え、反対する団体を排除した開発事業を促進させかねない懸念があります。
都市計画法第一条は、「都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」と規定しています。国際競争力の強化を口実に、都心部への一極集中を加速し、財界のもうけのみに奉仕する再開発はやめるべきです。住民の意思に基づき、住民自身が町のあり方を決定するという住民自治の理念を基本にしたまちづくりを推進すべきことを主張し、討論を終わります。