日本共産党議員の国会質問 移動の権利明記訴え 法改正で参考人 宮本岳氏質問
衆院国土交通委員会は13日、バリアフリー化推進へ公共交通事業者や市町村が計画を作成することなど盛り込んだバリアフリー法改正案で、参考人質疑を行いました。参考人らは、法律に「移動の権利」を明記してほしいと求めました。
竹下義樹・日本盲人会連合会長は、視覚障害者にとって「駅の中のバリアフリー化が進んでいても、駅と道路の間の点字ブロックがちょっとでも切れていると役に立たない」と述べ、動線の連続性を要求。また、地方の格差解消が必要だと訴えました。
佐藤聡・DPI日本会議事務局長は、車いす利用者の外食についてバリアフリー化が進んだ外国での体験を述べ、「何を食べるかではなく、どの店なら入れるかで選ぶ」日本と違い「食べたいもので自由に店を選ぶことができ、人間とは本来こんなに自由なのかと初めて気付いた」と語りました。その上で、小規模店舗のバリアフリー化には数値目標が必要だと求めました。
宮本岳志議員は、障害者の接遇に当たる従業員の教育をどう進めるかと質問。森すぐる社会構想研究所代表取締役は「従業員を教育するには時間がかかり、労働報酬を払わなければならない」と指摘。標準化した教育の仕組みづくりと費用の助成が必要だと述べました。
( 赤旗2018/4/20)
動画 https://youtu.be/0DNU3-HcRfs
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、四人の参考人の皆様方、本当にありがとうございます。私からもお礼を申し上げます。
私は、実は二〇〇〇年のバリアフリー法制定のときに、大阪から出していただいて参議院議員をやっておりまして、交通・情報通信委員会で私が実は修正案を提案をした経験がございます。このとき、六点ほど修正を提案をさせていただきました。
一つは、目的や理念に移動の自由と安全は基本的権利と明記すること。二つは、国の基本方針で全ての施設等を対象に整備計画と目標を明確にすること。第三に、地方公共団体もバリアフリー化対策の計画を策定することにすること。第四に、交通事業者が講ずべき責務を明確にすること。第五に、利用者、障害者等の積極的参加を保障するための制度化を図ること。そして六つ目が、バリアフリー化されても移動困難な人のための代替輸送の確保をするという六点でありましたけれども、今回の改正で、利用者の方々の参加であるとか、あるいは自治体、地方公共団体での計画の策定とか、随分ここに近づく前進があるということはよく理解をいたしております。
ただ、一番最初、イの一番に提起をした、理念に移動の権利ということを提起したわけでありますが、なかなかこれが今日まだ実現していない、そういうことを明記することが。
ただ、きょうの質疑を聞かせていただいて、与党、野党、立場が違ってさまざまな事情があることはわかるんですが、与党の先生方の思いもほとんど同じ、やはりこれは基本的な権利というところに向かわねばならぬのじゃないか、こういう思いで御質問もされておりましたし、参考人の方々もほとんど同じ思いでお答えになっておられたというふうに思っております。
それで質問でありますけれども、やはり、インクルーシブ、ユニバーサルデザインということは非常に大事だというふうに思うわけです。
私、この二〇〇〇年のときにも随分勉強したんですけれども、例えば駅のバリアフリーというものをエスカレーターでやりますと、車椅子の方々は、健常者の方を排除して、特別にエスカレーターを車椅子が乗せられるようにしていかなきゃならない。つまり、それが健常者の方々からは実に迷惑だという目で見られる、それだけでも権利が保障されていることにならない、だから、やはりエレベーターでぜひしてもらいたいんだ、こういう声を本当にいただきました。
その点で、インクルーシブ、つまりユニバーサルデザイン、障害者に優しいものというのは、健常者にも、また、どんどん我々も高齢化していくわけでありますから、高齢者にも優しいわけでありますから、こういう方向でしっかり整備するということについての、これは竹下参考人及び佐藤参考人から少し御意見をいただきたいと思っております。
○竹下参考人 ありがとうございます。非常に大事な指摘をいただいたと思っております。
例えばホームドアの転落防止柵ですけれども、これは視覚障害者のためにという意識が非常に強いわけでありますが、私は、そういう狭いものではないというふうに理解しています。
今数字はちょっと見つけられませんでしたけれども、国交省の発表によっても、年間二千人から三千人の方がホームから線路に落ちているんだそうです。その中で視覚障害者は二十人から五、六十人なんですけれども、そして、もちろん、死亡している方はその中のごく一部ではありますけれども、これだけたくさんの方が線路に落ちるという危険にさらされているわけです。
そういうことを考えますと、このバリアフリー化というのは、ホームドア一つとってみても、それは全ての乗客にとっての安全輸送に結びつくという、そういう大きな課題を解決するものだというふうに思っております。
その点で、バリアフリー化というのは、ひとり障害者のためという発想ではなかなか前へ進まないのであって、今回の理念で、共生社会というわざわざ理念も示されるように、全ての人が乗客であるということがここに理念として明確にされたわけでありますから、ぜひ、その安全対策が全ての人に共通しているという思いの中で、安全対策、バリアフリー化を進めていただくことをお願いしたいと思っております。
以上でございます。
○佐藤参考人 ありがとうございます。
鉄道のフリースペースの話を先ほどしましたけれども、ここは本当に、車椅子だけでなくて、多様な方が使われます。スーツケースを持った方、ベビーカーの方、あるいは、大きい自転車を畳んで乗っていらっしゃる方もいて、それは僕はすごくいいと思うんです。いろいろな人が社会にどんどん出ていけるようになって、そのためにどんどん整備を進めることは非常に大切だと思います。
ただ、時代とともに生活スタイルも変わってニーズもふえていっていますので、例えばフリースペースをふやすということもそうですし、エレベーターも、今、例えば新幹線で東京駅に着いてホームからおりようと思ったら、ずらっと並んでいます。二、三回待たないとおりられません。それは、エレベーターが小さい、それと一つしかない。利用者がもっと今はふえてしまいましたので、その時代に合わせて大型化、複数化ということが必要だと思います。
障害者だけでなくて、いろいろな人が使っていける、そういうユニバーサルな社会をぜひ進めていっていただきたいと思います。
○宮本(岳)委員 ありがとうございます。
それで、少しきょうは三星先生にもお伺いしたいんですけれども、私も大阪なものですから、大阪の取組が随分進んできたということで心強く思うんですけれども、特に市営地下鉄が頑張ってきたということなんでありますけれども、このたび、その市営地下鉄が民営化されるというような形になりました、大阪の場合。
それで、これまで、そういう役割を果たす上で、公営交通、公共交通の役割というものが非常に大きかったと思うんですよ。そういう中でしっかり、例えば少々お金がかかったとしても、それはやはり確保すべきである、やるべきであるということで、随分、公営交通がそういう立場で頑張ってきた。
この点で、大阪の取組を通じて公営交通の役割をどのようにお考えか。これは、三星先生と同時に森先生にもひとつお答えいただきたいと思います。
○三星参考人 三星でございます。
大阪市交通局の問題につきましては、民営化して、私の見るところ、バリアフリーのペースが落ちたり、ユニバーサルデザインのせっかくの獲得したレベルが下がるということは当分は考えにくいですが、長期的には懸念があります。
理由は簡単です。収支がよいときには、今申しましたように、やる余裕はありますけれども、やはり厳しくなったとき、あるいは、お金だけではなくて、大きな別の困難が出てきたときにどれだけ対処できるかになりますと、今までの経験上、全国の公営交通は明らかに一般の私鉄とは違います。これは、一つは財源で税金が入るということがあります。
それから、もう一つ無視できないのは、大阪市交通局の方針は、一九八〇年代から、大阪市の福祉部局と交通局と、私ども、ずっと長く委員なんですが、議論し合ってきているんです。ここにいらっしゃる佐藤さんの上司じゃないのか、尾上さんとか今そこにいらっしゃいますけれども、一緒にやってきたわけですが、そういう市の方針です。
だから、今回もマスタープランの中でそこをどう展開していくかというのは最大の課題になりますが、マスタープランの中で市はこうしていくんだという方針を持ったら、それがダイレクトに公営交通の場合は入れやすいんです。その点で懸念はあります。
以上でいいでしょうか。
○森参考人 これまでの経緯で申し上げますと、例えば、日本で初めて公衆用のエレベーターが一般の駅でついたのが、大阪市営地下鉄の喜連瓜破という駅だとされています。これはやはり、京都と大阪で、誰でも乗れる地下鉄をつくる運動という市民運動が、交渉やそれからフィールドワークを続ける中で実現したとされています。
それから、経緯はわからないんですが、車椅子対応のエスカレーター、これは横浜市営地下鉄の岸根公園駅、これにつけられたのが最初だそうです。
また、ノンステップバスでいいますと、今、東京都の交通局の都営バスは一〇〇%ノンステップになりましたけれども、これもやはり、ノンステップバスの普及の過程において、東京都交通局、横浜市交通局などの公営交通が一体となってノンステップバスを導入するという方向性を出した。そのことによって開発と普及、標準化が進んで、これだけ大きく広がったといいます。
だから、新しい技術ですとかそういった施策を実現する上で、やはり公営の交通機関というのは一定大きな役割を果たしてきたと思っています。
以上です。
○宮本(岳)委員 そういう後退ということがないように、私たちもしっかり見守っていきたいと思いますし、その点で、公的な支援ということが非常に大事だと思うんです。
大阪でも、私たち随分、バリアフリー、ユニバーサルデザインということを事業者の方々に申し上げるわけですけれども、水間鉄道とか能勢電鉄とか、なかなか鉄道事業者でも財政力に乏しいところがあるわけで、そういうところにしっかりやってもらうためには、もっともっと国の支援というか、それを事業者にしてもらうための支援が必要だと思うんですけれども、このあたり、三星参考人のひとつ御意見をお伺いしたいと思います。
○三星参考人 先ほども申しましたように、やはり、国、国民全体の合意として、公共交通、特にその中でも体の不自由な方々、みんな年をとるわけですから、そういったことの施策に必要な財源に関しては、これは真剣に考えなきゃいけないと思います。
私は、今の現状の財源というのは、今までの中で、現場的必要からやはり政府は考えなきゃいかぬでやってきておるので、どうしても制約があるんです。もっと大きな枠組みで、ちゃんと公共交通を維持していく。
ただしそれは、よく言われるように、垂れ流しであってはもちろんいけませんし、しっかりとした国民的、市民的監視が必要でありますし、あるいは専門家の合理的な配分等、あるいは方法に関する意見反映は必要でありますけれども、基本の考え方として、財源は、日本は必要に応じてずるずるとふやすだけで、これでは限界があるということを申し上げておきたいと思います。
○宮本(岳)委員 佐藤参考人は、先ほど、やはり店舗のバリアフリー化が日本は本当におくれているというお話がございました。
実は、私たち、ずっと地域でも運動してきまして、住宅リフォーム助成制度というものは随分全国の自治体で広がっているわけです。ただ、これが店舗に適用されないということで、店舗にもぜひ適用してよという声が随分高いんですよ。
そういう助成制度をしっかり整備をして、そして、そういうバリアフリー化のリフォームである場合には、しっかり住宅リフォームと同じように助成が出るようにするというようなことがいいんじゃないかと私は思うんですけれども、御意見いかがでしょうか。
○佐藤参考人 ありがとうございます。
いろいろな助成制度を拡充していただくということはすごく大切だと思います。
ただ、もちろん改修でどんどん進めていただきたいんですけれども、事業者の御負担が大きくなる場合が多いですから、私は、最初につくるときに基準を明確につくって、それを必ずクリアしてつくっていくということをやっていけば、十年、二十年たったらもう全く違う町並みになると思うんです。
ですので、改修の助成制度と同時に、新しく建てる建物に関しての一定のバリアフリー基準の義務化ということもぜひお願いしたいと思います。
○宮本(岳)委員 次に、事業者責任という点では、従業員の方々の教育をどう進めるかというのは、これはなかなか大事な問題だと思います。
そこで、ちょっとこの点にかかわってどのように、先ほど竹下参考人からは、マニュアルどおりやれと言われていてショックを受けたという話もありましたけれども、ただただマニュアルどおりやればいいというものでもないんだろうと思うんです。
ちょっとこの点を森先生と竹下参考人に、ぜひ御意見をお伺いしたいと思っております。
○森参考人 やはり、現場のそれぞれの係員、職員が利用者と接するときに、例えば、問題発言があったり不適切な取扱いがあったりということで問題になることが多いんです。なので、やはり従業員の教育というのがきちんとされる必要がある。ただし、そのためには、つまり教育するにも時間がかかる、時間があれば、きちんとそこに対しては労働報酬を払わなければならない。
そういう意味でいうと、そういう実際の従業員教育のための仕組みづくりというのは必要でしょう。あるいは、きちんと大きな会社であればとれるけれども、中小の会社、例えば小規模のタクシーの会社などではやはり自前で教育することができない。そうであれば、標準化した教育というものの仕組み、それから、その教育を受けることによってのインセンティブ、教育のための費用を助成するとか、そういうのが必要だと思います。
もう一つ、これは実は調べる中でおもしろかったという言い方はあれかな、埼玉県の川越市に塙保己一特別支援学校というのがあるんですが、そこの学生さんが、まさに上野さんが亡くなった翌年に通学途中に転落死亡事故を起こしている。そのことを教訓に、毎年五月に、埼玉盲学校と言っていましたから、埼盲交通安全の日というのをやる。そこのところに、五、六年前からJR東日本の人が来る、あるいは東武鉄道の人が来るという形をする。あるいは、塙保己一学園の生徒たちが西武鉄道の車両工場に行って、実際にホームの下におりてみて、ホームまではこの高さがあるとか、あるいはホームに身を寄せればいいとか、そういうことを実際に学んでいる。
その意味でいうと、当事者と事業者が交流する中で、そういう学びとかが生まれてくると思います。そのための仕組みづくりというのは有効だと思っています。長くなりました。
○竹下参考人 ありがとうございます。
今先生御指摘のように、従業員の方、職員の方の理解というものがなければ、本当のバリアフリーは私は進まないと思っております。ただ、この間の大きな前進というか変化は実感しております。
一つは、障害者差別解消法が制定されたこともあるわけですけれども、企業の方々が障害当事者を講師に招いて研修会を繰り返していただくようになりました。これは非常に有効な研修だと思っております。
もう一つは、これは私、京都のことでしか今すぐ例は挙げられないんですが、近鉄とか阪急が我々視覚障害者とともに、職員の方だけじゃなくて、乗客に対する啓発活動を一緒にやってくれるようになりました。
こういう形で研修が進むことによって、私たち自身が一つ一つの駅を利用するときの安心感が本当に生まれてきているわけですので、そういう研修というものが今後更に充実することをお願いしたいと思います。
○宮本(岳)委員 もう時間が参りましたので終わりますけれども、四人の方々の御意見は本当に参考になりますし、今後、この法案の審議に役立てていきたいと思うんです。
二〇〇〇年に私は修正案を提案いたしましたが、否決をされました。そして、政府案にもちろん賛成をいたしました。今回の法案も、もちろん反対するような法案ではないと思っておりますが、できるだけよりよいものに、党派を超えて努力をしてまいりたいというふうに思っております。
理念というのはさりとて大事なことでありまして、権利ということをやはりはっきりさせないと、例えば、ワンルートの確保は保障するけれども、二ルート以上やってもらいたかったら利用者負担でやろうじゃないかとか、こういう議論も出かねないという状況がありまして、しっかり全ての人々の権利をやはり保障していく当たり前の姿にしていく、こういう立場で党派を超えて議論を深めたいと思っております。
本日は、まことにありがとうございました。